特許第5997181号(P5997181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997181ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、その製法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997181
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、その製法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20160915BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20160915BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20160915BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C08J9/18CES
   C08L23/04
   C08L23/10
   C08K3/04
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-551563(P2013-551563)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(86)【国際出願番号】JP2012081624
(87)【国際公開番号】WO2013099550
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-284855(P2011-284855)
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】千葉 琢也
(72)【発明者】
【氏名】及川 政春
(72)【発明者】
【氏名】篠原 充
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−023302(JP,A)
【文献】 特開2000−169619(JP,A)
【文献】 特開2004−083804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
C08K 3/04
C08L 23/04
C08L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂を主成分とする基材樹脂から形成されかつ導電性カーボンブラックを含む、静電気拡散性ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
該基材樹脂が、連続相を形成するポリプロピレン樹脂と、連続相に分散された分散相を形成するポリエチレン樹脂から構成され、
該導電性カーボンブラックが前記分散相側に偏在しており、
該ポリエチレン樹脂が、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数4〜6のα−オレフィンとの共重合体であり、
該ポリプロピレン樹脂と該ポリエチレン樹脂は、該ポリプロピレン樹脂と該ポリエチレン樹脂との重量比が98:2〜85:15となるような割合で存在し、
該発泡粒子の見掛け密度が10〜120kg/mである、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(ただし導電性カーボンブラックの含有量が5.0重量%未満であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を除く)
【請求項2】
前記ポリエチレン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記導電性カーボンブラックがケッチェンブラックであり、その配合量が前記基材樹脂100重量部に対して6〜14重量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が一体的に融着してなる、表面抵抗率が1×10〜1×1010Ωである成形体。
【請求項5】
ポリプロピレン樹脂98〜85重量%と、エチレンの単独重合体及びエチレンと炭素数4〜6のα−オレフィンとの共重合体から選択される1以上のポリエチレン樹脂2〜15重量%とを含む基材樹脂を、導電性カーボンブラックの存在下、溶融混練し、得られた混練物から樹脂粒子を形成し、該樹脂粒子を見掛け密度10〜120kg/mに発泡させることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法(ただし導電性カーボンブラックの含有量が5.0重量%未満であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を除く)
【請求項6】
前記ポリエチレン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項5に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂粒子が、連続相を形成するポリプロピレン樹脂と、連続相に分散された分散相を形成するポリエチレン樹脂から構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【請求項8】
前記導電性カーボンブラックがケッチェンブラックであり、その配合量が前記基材樹脂100重量部に対して6〜14重量部であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、その製法及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体に関し、詳しくは、静電気拡散性を示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を製造可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子、その製法および該発泡粒子を型内成形してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、機械的強度や耐熱性などのバランスに優れた樹脂である。このようなポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を型内成形してなる成形体は、ポリプロピレン系樹脂特有の優れた特性を有するだけではなく、緩衝性や圧縮歪み回復性などにも優れることから、電気・電子部品の包装材や、自動車用の緩衝材など幅広い分野で使用されている。
【0003】
しかし、ポリプロピレン系樹脂は電気抵抗が高い材料であるため、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡成形体は帯電しやすく、静電気を嫌う電子部品などの包装材用途には、帯電防止性能や導電性能を付与した発泡粒子成形体が用いられている(特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−304895号公報
【特許文献2】特開2009−173021号公報
【特許文献3】特開平9−202837号公報
【特許文献4】特開平10−251436号公報
【特許文献5】特開2000−169619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、特に性能の向上が著しい集積回路、ハードディスクなどの電子部品の包装材には、電子部品が静電気により破壊されることを防ぐために、表面抵抗率1×10〜1×1010Ωの静電気拡散性材料が要求されている。しかし、従来の帯電防止処理技術や導電処理技術では、表面抵抗率1×10〜1×1010Ωのポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を安定して製造することができなかった。
【0006】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体に、帯電防止性能を付与する方法としては、例えば、上記特許文献1のように、界面活性剤を配合した樹脂粒子を発泡させた発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を得る方法や、上記特許文献2のように、高分子型の帯電防止剤を含む層で被覆した樹脂粒子を発泡させた発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を得る方法がある。
【0007】
これらの方法は、帯電防止性能を有する発泡粒子成形体を得るためには有効な手段であるが、上記のような帯電防止剤をポリプロピレン系樹脂に配合する方法では、帯電防止剤自体の電気特性に限界があり、適性配合量で1×1010Ω以下の表面抵抗率を得ること自体が難しく、1×1010Ω以下の表面抵抗率を得ようと帯電防止剤を多量に配合すると、得られる発泡粒子の発泡性や成形融着性が著しく悪化してしまう。
【0008】
また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体に導電性を付与する方法としては、例えば、上記特許文献3〜5のように、導電性カーボンブラックや金属粉等の導電性無機物を基材樹脂に配合し、基材樹脂中に導電性無機物による導電性ネットワークを構築する方法がある。これらの方法によれば、1×10Ωよりも低い表面抵抗率を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を容易に得ることが可能となった。
【0009】
前記導電性無機物を用いる方法により、表面抵抗率1×10〜1×1010Ωの発泡粒子成形体を得るためには、導電性無機物の配合量を減らす方法が考えられる。しかし、導電性無機物の配合量を減らしていくと、ある配合量(パーコレーションしきい値)を境に、表面抵抗率が転移的に変化してしまう所謂パーコレーション現象が生じるので、1×10〜1×1010Ωの範囲の表面抵抗率を安定的に発現させるのは困難であった。
【0010】
特に、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体においては、パーコレーションしきい値付近での表面抵抗率の転移的変化が激しい。発泡粒子成形体を得るためには、樹脂粒子から発泡粒子へ発泡する工程、さらには発泡粒子を型内成形工程での二次発泡という、少なくとも二段階の発泡工程を経なければならないことが、その要因として考えられる。即ち、これらの工程で起きる発泡時において、ポリプロピレン系樹脂中の導電性カーボンブラック間の距離を制御することが難しく、表面抵抗率1×10〜1×1010Ωを安定して達成することは非常に困難になっていると考えられる。
【0011】
さらに導電性無機物の分散状態の若干の差異により、発泡粒子成形体の表面抵抗率が大きく変化してしまうため、発泡粒子成形体全体では所望の性能を発現していても、部分的には表面抵抗率が所望の性能範囲外となってしまうという問題もあった。
【0012】
本発明は発泡性、成形融着性に優れると共に、ポリプロピレン系樹脂特有の優れた特性を維持しつつ、表面抵抗率1×10〜1×1010Ωの範囲の静電気拡散性を安定して発現するポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を製造可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子、及び該発泡粒子を型内成形してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、以下に示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体が提供される。
[1] ポリプロピレン樹脂を主成分とする基材樹脂から形成されかつ導電性カーボンブラックを含む、静電気拡散性ポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
該基材樹脂が、連続相を形成するポリプロピレン樹脂と、連続相に分散された分散相を形成するポリエチレン樹脂から構成され、
該導電性カーボンブラックが前記分散相側に偏在しており、
該ポリエチレン樹脂が、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数4〜6のα−オレフィンとの共重合体であり、
該ポリプロピレン樹脂と該ポリエチレン樹脂は、該ポリプロピレン樹脂と該ポリエチレン樹脂との重量比が98:2〜85:15となるような割合で存在し、
該発泡粒子の見掛け密度が10〜120kg/mである、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(ただし導電性カーボンブラックの含有量が5.0重量%未満であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を除く)
[2] 前記ポリエチレン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンであることを特徴とする前記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[3] 前記導電性カーボンブラックがケッチェンブラックであり、その配合量が前記基材樹脂100重量部に対して6〜14重量部であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が一体的に融着してなる、表面抵抗率が1×10〜1×1010Ωである成形体。
[5] ポリプロピレン樹脂98〜85重量%と、エチレンの単独重合体及びエチレンと炭素数4〜6のα−オレフィンとの共重合体から選択される1以上のポリエチレン樹脂2〜15重量%とを含む基材樹脂を、導電性カーボンブラックの存在下、溶融混練し、得られた混練物から樹脂粒子を形成し、該樹脂粒子を見掛け密度10〜120kg/mに発泡させることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法(ただし導電性カーボンブラックの含有量が5.0重量%未満であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法を除く)
[6] 前記ポリエチレン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン及び/又は高密度ポリエチレンであることを特徴とする前記[5]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[7] 前記樹脂粒子が、連続相を形成するポリプロピレン樹脂と、連続相に分散された分散相を形成するポリエチレン樹脂から構成されていることを特徴とする前記[5]又は[6]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
[8] 前記導電性カーボンブラックがケッチェンブラックであり、その配合量が前記基材樹脂100重量部に対して6〜14重量部であることを特徴とする前記[5]〜[7]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。

【発明の効果】
【0014】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより、これまで安定して生産することが難しかった、1×10〜1×1010Ωの中抵抗領域の表面抵抗率(以下、静電気拡散性ともいう。)を示すポリプロピレン系発泡粒子成形体を安定して得ることが可能となる。また、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子から得られる成形体は、従来の導電性無機物を含むポリプロピレン系発泡粒子成形体に比較して成形条件や成形金型の変化による表面抵抗率の変化が小さいものであり、より複雑な形状であっても静電気拡散性を安定的に発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例3で得られた発泡粒子について、その気泡膜断面におけるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂との海島構造を示す顕微鏡写真である。
図2図2は、実施例3で得られた発泡粒子について、その気泡膜断面における導電性カーボンブラックの分散状態を示す顕微鏡写真である。
図3図3は、比較例1で得られた発泡粒子について、その気泡膜断面における導電性カーボンブラックの分散状態を示す顕微鏡写真である。
図4図4は、第1回加熱のDSC曲線の一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子について詳細に説明する。ここで、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレン樹脂を主成分とする樹脂組成物を意味し、より詳しくは、ポリプロピレン樹脂を主成分とし更にポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物を意味する。本発明の発泡粒子は、この樹脂組成物により構成される。この樹脂組成物を、本明細書では基材樹脂ともいう。説明を簡素化するために、以下、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は「発泡粒子」と、ポリプロピレン樹脂は「PP樹脂」と、ポリエチレン樹脂は「PE樹脂」と、導電性カーボンブラックは「CB」と、発泡粒子成形体は「成形体」と称することがある。
【0017】
発泡粒子は、PP樹脂とPE樹脂を含む基材樹脂から形成された気泡壁により画成された、複数の気泡を有する。発泡粒子は、PP樹脂とPE樹脂からなる基材樹脂から構成される。PP樹脂は連続相(マトリックス相)を形成し、PE樹脂は該連続相中に非連続に分散する分散相(ドメイン相)を形成する。即ち、発泡粒子の基材樹脂は、所謂「海島構造」を有している。上記分散相側にCBが偏在している。
【0018】
本発明におけるPP樹脂とは、樹脂中のプロピレン成分単位が50重量%以上の樹脂をいい、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと共重合可能な他のオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンと共重合可能な他のオレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテンなどの炭素数4以上のα−オレフィンが例示される。また上記共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、さらに二元共重合体のみならず三元共重合体であってもよい。また、これらのPP樹脂は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
本発明におけるPE樹脂とは、樹脂中のエチレン成分単位が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは90重量%以上である樹脂をいい、エチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数4〜6のα−オレフィンとの共重合体が用いられる。該PE樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、さらにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0020】
本発明におけるCBは、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が150〜700ml/100gのもの、より好ましくは200〜600ml/100g、さらに好ましくは300〜600ml/100g以上のものが好ましく、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどを挙げることができる。上記DBP吸油量は、ASTM D2414−79に準じて測定される値である。これらのCBは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも低添加量で高い導電性を示すことからファーネスブラックが好ましく、より好ましくはオイルファーネスブラックであり、さらに好ましくはケッチェンブラックである。
【0021】
一般に、PP樹脂などの熱可塑性樹脂中にCBを分散させた場合、隣接するカーボンブラック同士が一定の距離以下で存在することによって、CBによる導電性ネットワーク構造が形成され、導電性が発現する。
従来のCBを含む導電性のPP樹脂発泡粒子においては、CBが十分量添加されている場合には、発泡延伸後もPP樹脂中に分散したCBが近距離に多数存在するため、その導電性ネットワーク構造が維持され、その成形体は表面抵抗率が1×10Ωよりも低い導電性を発現する。
【0022】
一方、静電気拡散性を示す中抵抗領域を狙って、CBの添加量を減量すると、CB同士の距離が広がり、上記一定の距離内に存在するCBの数が少なくなり、発泡前の状態であっても、導電性ネットワークが形成されにくくなり、CB添加量の減量と共に、表面抵抗率が大きく上昇してしまう所謂パーコレーション現象が生じる。
さらに、発泡体においては、発泡時や型内成形時の気泡膜の延伸によりCB同士の距離がさらに広がってしまうため、導電性ネットワーク構造を維持することがさらに難しくなり、表面抵抗率の変化がさらに大きくなってしまい、静電気拡散性を達成することが難しくなる。
【0023】
本発明の発泡粒子は、上述したように、その基材樹脂がPP樹脂連続相とPE樹脂分散相とからなる海島構造を形成し、該分散相側にCBが偏在しているものである。
【0024】
CBの共存下で、PP樹脂とPE樹脂とを溶融混練すると、PP樹脂よりもガラス転移温度の低いPE樹脂側にCBが偏在し、PE相中のCBの濃度が、PP相中のCBの濃度よりも大きくなる。即ち、PP樹脂中にPE樹脂が分散する条件で、すなわちPP樹脂が海相をなし、PE樹脂が島相をなすような条件で三者を混練することにより、PP樹脂連続相中に分散したPE樹脂分散相側にCBを偏在させることができる。
【0025】
本発明の発泡粒子においては、CBが、主に、PP樹脂の連続相中に分散したPE樹脂分散相側に存在し、分散相中でCBが導電性ネットワーク構造を形成する。このとき、CBがPE樹脂に拘束されているので、発泡時におけるCBの移動が制限されてCB粒子間の距離が大きく広がらない。従って、発泡後も分散相中でCBの導電性ネットワーク構造が維持され、分散相の体積抵抗率は導電性を示すような低い値となると推察される。なお、本発明の所期の目的を阻害しない範囲において、PP連続相中にCBが少量存在していても良い。
【0026】
さらに、本発明におけるPE樹脂、すなわち、ポリエチレンの単独重合体、又はエチレンと炭素数4〜6のα−オレフィンとの共重合体は、PP樹脂と適度な親和性を有するが、完全な相溶性は示さないため、PE樹脂がPP樹脂連続相中に過度に細かく分散していないと考えられる。さらに、発泡時のPP樹脂連続相の変形に対しPE樹脂分散相が過度に変形することなく追従するために、分散相自体は導電性を示しつつ、静電気拡散性を発現するために必要な分散相間の距離を維持することができるものと考えられる。そのため、見掛け密度(発泡倍率)に大きく依存せずに、すなわち発泡倍率を変化させても静電気拡散性を安定して発現することができる。また、発泡時に気泡膜を破壊する虞が小さいので、得られた発泡粒子は所望の機械的強度を示す。
PE樹脂中の共重合成分であるα−オレフィンの炭素数が6を超えると、そのようなPE樹脂はPP樹脂への相溶性が高くなり、PP樹脂中でPE樹脂が微細に分散するようになるため、分散相同士の距離が近接しすぎて、静電気拡散性を達成することができない虞がある。
【0027】
上記PE樹脂の中でも、得られる成形体の機械的強度の観点から、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが好ましく、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンである。
直鎖状低密度ポリエチレン(PE−LLD)は、一般に、エチレンと、ブテン、ヘキセンなどのα−オレフィンとの共重合体であり、その密度は通常0.88g/cm以上0.94g/cm未満であり、好ましくは0.91g/cm以上0.94g/cm未満である。一方、高密度ポリエチレン(PE−HD)は、一般に、エチレンの単独重合体、又はエチレンとブテンとの共重合体であり、その密度は通常0.94g/cm以上であり、好ましくは0.94〜0.97g/cmである。
【0028】
前記PP樹脂とPE樹脂との配合割合は、重量比で99.5:0.5〜65:35である。PE樹脂の配合割合が少なすぎると、PE樹脂分散相中に偏在しないCBが多数存在することになり、さらにPE樹脂分散相間の距離も離れてしまい、所望される表面抵抗率が安定して得られなくなる。一方、PE樹脂の配合割合が多すぎると、PE樹脂が分散相を形成しにくくなり、さらに分散相間の距離が近づきやすくなるため、やはり所望される表面抵抗率が安定して得られなくなる。かかる観点から、PP樹脂の配合割合は、好ましくは重量比で99.5:0.5〜70:30であり、より好ましくは重量比で99:1〜75:25であり、更に好ましくは99:1〜80:20であり、特に好ましくは重量比で98:2〜85:15である。
【0029】
本発明の発泡粒子の基材樹脂には、PP樹脂及びPE樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーを、所期の目的を阻害しない範囲(特に、これらの熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーは前記海島構造の形成を阻害しない量及び種類である必要がある)において、配合することができる。前記熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのポリスチレン系樹脂や、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂等が例示でき、前記熱可塑性エラストマーとしてはエチレン−ヘキセン共重合体や、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体などのオレフィン系エラストマーや、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、それらの水添物などのスチレン系エラストマー等が例示できる。
【0030】
前記CBの配合割合は、CBの種類によってその導電性が異なるため、一概に決定することはできないが、例えば、1×10〜1×1010Ωの中抵抗領域の表面抵抗率を得るためには、前記CBがケッチェンブラックの場合、その配合割合は、基材樹脂100重量部に対して、6〜14重量部であることが好ましく、より好ましくは7〜13重量部、更に好ましくは8〜12重量部である。また、前記CBがアセチレンブラックの場合、その配合割合は、基材樹脂100重量部に対して、23〜27重量部であることが好ましく、より好ましくは24〜26重量%である。
これらの中でも、低添加量で所望の表面抵抗率を示すケッチェンブラックがより好ましい。
【0031】
該CBの平均粒径は、通常0.01〜100μmである。さらにPE樹脂の分散相中への分散性の観点から、好ましくは10〜80nmであり、より好ましくは15〜60nmである。
【0032】
前記カーボンブラックの平均粒径は、電子顕微鏡を用いて測定される。
具体的には、視野内に数百個の粒子を含む電子顕微鏡写真をとり、定方向径(Green径)を代表径として無作為に1000個測定し、得られた値より個数基準の積算分布曲線を作成し、個数基準の積算分布の50%径を平均粒径として採用する。
【0033】
本発明において上記分散構造を安定的に形成するためには、PE樹脂の融点は30〜150℃であることが好ましく、かつPP樹脂の融点よりも低いことが好ましい。PE樹脂の融点が上記範囲であることにより、発泡時の気泡膜の延伸にPE樹脂分散相が十分に追従できるため、発泡粒子の気泡構造を破壊することなく、PE樹脂分散相間の導電ネットワーク構造が構築しやすくなる。ここで、PE樹脂の融点が30℃未満であると、気泡構造の維持の観点からは問題ないが、得られる成形体の機械的強度が低くなりやすい。
【0034】
また、発泡粒子の基材樹脂のPE樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、PP樹脂のメルトフローレートの0.001〜15倍であることが好ましい。上記分散構造をより安定的に形成するためには、PE樹脂のMFRは、PP樹脂のMFRの0.001〜11倍であることがより好ましく、さらに好ましくは0.001〜10倍である。
【0035】
PP樹脂は、従来発泡粒子の基材樹脂として使用されている、メルトフローレイト(MFR)が0.1〜30g/10分程度のものを使用でき、MFRが2〜20g/10分のものがより好ましく、3〜15g/分のものがさらに好ましい。一方、PE樹脂のMFRは、通常、0.001〜100g/10分程度であり、好ましくは、0.01〜90g/10分である。
なお、上記PE樹脂のMFR及びPP樹脂のMFRは共にJIS K7210:1999の試験条件M(230℃/2.16kg荷重)で測定される値である。
【0036】
本発明の発泡粒子の見掛け密度は、10〜120kg/mであることが好ましい。該見掛け密度が上記範囲内であると、表面抵抗率1×10〜1×1010Ωを発現可能な分散相間の距離がより安定的に確保される。かかる観点から、発泡粒子の見掛け密度は、12〜90kg/mであることが好ましく、より好ましくは15〜60kg/mであり、さらに好ましくは20〜50kg/mである。
【0037】
発泡粒子の見掛け密度は、23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、このメスシリンダー内に、発泡粒子群(発泡粒子群の重量W[g])を、金網などを使用して沈め、水位の上昇分から発泡粒子群の体積V[cm]を求め、発泡粒子群の重量を発泡粒子群の体積で除し(W/V)、さらに[kg/m]に単位換算することにより求めることができる。
【0038】
見掛け密度の小さい発泡粒子を製造する方法としては、所謂分散媒放出発泡方法により発泡粒子を製造し、該発泡粒子をさらに所謂二段発泡させることが好ましい。二段発泡によれば、発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの気体により加圧処理して発泡粒子の内圧を0.01〜0.6MPa(G)に高める操作を行った後、該発泡粒子を該容器内から取り出し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱することにより、見掛け密度の小さい発泡粒子を容易に得ることができる。
【0039】
発泡粒子の平均気泡径は、20〜400μmが好ましく、40〜200μmがより好ましい。該平均気泡径が小さすぎると、気泡の膜厚が薄くなるため、成形時の加熱により破泡し易くなり独立気泡率が低下しやすくなる。その結果、成形時の回復性が悪化し、成形体の圧縮物性も低下する虞がある。一方、該平均気泡径が大きすぎると、気泡の膜厚が厚くなり、成形加熱時に樹脂表面を融解させるために大きな熱量が必要となる。その結果、成形融着性の低下を防ぐため、より成形圧を高める必要があり、生産性が低下する虞がある。
【0040】
発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして測定される。
発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めることができる。まず、発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで、前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求める。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総和Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0041】
また、前記発泡粒子の独立気泡率は、75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%以上である。独立気泡率が小さすぎると、発泡粒子の二次発泡性が劣るとともに、得られる成形体の機械的物性も劣ったものとなりやすい。
【0042】
発泡粒子の独立気泡率は、次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、嵩体積約20cmの養生後の発泡粒子を測定用サンプルとし下記の通り水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。そして、これらの体積Va及びVxを基に、下記の(4)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
【0043】
独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(4)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0044】
本発明の発泡粒子は、二次結晶を有し、該二次結晶の示差熱分析による融解熱量が1〜30J/gであることが好ましい。
即ち、前記発泡粒子2〜10mgを熱流束示差走査熱量測定法により、10℃/分の昇温速度で23℃から220℃まで加熱したときに得られるDSC曲線(第1回加熱のDSC曲線)が、PP樹脂に固有の吸熱ピークA(以下、単に「固有ピーク」ともいう)と、該固有ピークの高温側に、前記二次結晶に由来する1つ以上の吸熱ピークB(以下、単に「高温ピーク」ともいう)とを有し、該高温ピークの融解熱量(以下、単に高温ピーク熱量ともいう。)が1〜30J/gであることが好ましい。該高温ピーク熱量が上記範囲内であることにより、成形融着性に優れる発泡粒子となると共に、機械的強度に優れた成形体を得ることができる。
【0045】
該高温ピークの熱量の上限は、18J/gであることが好ましく、より好ましくは17J/g、更に好ましくは16J/gである。一方、該高温ピークの熱量の下限は、好ましくは4J/gである。尚、発泡粒子の高温ピークは周知の方法で調節可能であり、具体的には、その調節方法は、例えば特開2001−151928号等に開示されている。
【0046】
前記第1回加熱のDSC曲線と、固有ピーク熱量、高温ピーク熱量の測定は、JIS K7122:1987年に準拠する測定方法により次のように行なう。
まず、発泡粒子2〜10mgを採取し、示差走査熱量測定装置によって23℃から220℃まで10℃/分で昇温測定を行なう。かかる測定により得られたDSC曲線の一例を図4に示す。
【0047】
図4のDSC曲線には、発泡粒子を構成するPP樹脂に由来する固有ピークAと、該固有ピークの高温側に高温ピークBが示され、高温ピークBの熱量はそのピーク面積に相当するものであり、具体的には次のようにして求めることができる。
【0048】
まず、DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。尚、上記融解終了温度Tとは、高温ピークBの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。
次に上記の固有ピークAと高温ピークBとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をδとする。高温ピークBの面積は、DSC曲線の高温ピークB部分の曲線と、線分(δ−β)と、線分(γ−δ)とによって囲まれる部分(図4において斜線を付した部分)の面積であり、これが高温ピークの熱量に相当する。
【0049】
尚、高温ピークBは、上記のようにして測定した第1回加熱時のDSC曲線には認められるが、第2回目に昇温して得られたDSC曲線には認められない。第2回加熱時のDSC曲線には、発泡粒子を構成するPP樹脂に固有の吸熱曲線ピークのみが認められる。
【0050】
次に、本発明のPP樹脂発泡粒子の製造方法について説明する。
本発明の発泡粒子は、次のような方法により、製造することができる。
PP樹脂、PE樹脂及びCBを溶融混練してなる樹脂粒子を物理発泡剤等と共にオートクレーブ等の密閉容器内において水等の分散媒に分散させ、樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱し、樹脂粒子内に発泡剤を含浸させ、次に、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤を含有する発泡性樹脂粒子を水等の分散媒と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出して発泡させる、所謂分散媒放出発泡法によって得ることができる。また、物理発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を密閉容器から取り出し、スチーム等の加熱媒体で加熱して発泡させても良い。
さらに、押出機で樹脂粒子を作製する際に、押出機中に発泡剤を圧入して発泡性溶融樹脂組成物とし、該発泡性溶融樹脂組成物をダイから押出して発泡させる方法によっても得ることができる。
【0051】
前記樹脂粒子は、PP樹脂、PE樹脂及びCBを前記の配合で混合し、更に必要に応じて気泡調節剤等の添加剤を混合して押出機に供給して加熱、混練し、ダイから多数のストランドとして押出し、該ストランドを水中を通して冷却してから適宜長さに切断したり、ダイから溶融樹脂組成物を水中に押出すのと同時に切断・冷却する等の手段により製造することができる。
【0052】
本発明においては、PP樹脂が連続相であり、該連続相中にPE樹脂分散相が分散した構造を形成し、更にPE樹脂がCBを含有した構造を有するような樹脂粒子を製造する必要がある。そのためには、PP樹脂とPE樹脂とCBとを直接押出機に供給することもできるが、予めCBをPP樹脂に分散させたマスターバッチを作製し、該マスターバッチとPE樹脂、必要に応じてさらにPP樹脂を加えて押出機などを用いて混練することが好ましい。
【0053】
前記マスターバッチ中のCBの濃度としては、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは8〜30重量%、更に好ましくは9〜25重量%である。また、マスターバッチ中でのCBの分散性を向上させるために、マスターバッチにはオレフィン系エラストマーを添加することが好ましく、オレフィン系エラストマーの配合量はマスターバッチ中に3〜10重量%とすることが好ましい。オレフィン系エラストマーとしては、エチレン−オクテン共重合エラストマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合エラストマーなどが挙げられる。
【0054】
発泡粒子の気泡径を調節するために、気泡調節剤を添加することが好ましい。該気泡調節剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ミョウバン等の無機物が挙げられる。その添加量は、基材樹脂100重量部あたり、0.001〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましい。
尚、基材樹脂に気泡調節剤を添加する場合、気泡調節剤をそのまま配合することもできるが、通常は分散性等を考慮して気泡調節剤のマスターバッチとして添加することが好ましい。
【0055】
該樹脂粒子の重量は、型内への発泡粒子の均一な充填性を確保できることから、0.02〜20mgが好ましく、0.1〜6mgがより好ましい。
【0056】
分散媒放出発泡法の際、樹脂粒子が球状ではないものであっても、密閉容器中で加熱され可塑化された樹脂粒子を分散媒の樹脂粒子に対する表面張力の作用により、球状に変化させることができる。
【0057】
発泡が生じない高圧下から発泡の生じる低圧下へ放出する際の高圧下と低圧下の差圧は400kPa以上、好ましくは500〜15000kPaとすることが好ましい。
【0058】
分散媒放出発泡法で用いられる発泡剤としては、通常、プロパン、イソブタン、ブタン、イソペンタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、1−クロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン等の有機系物理発泡剤や、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機系物理発泡剤が挙げられる。これらの中でもオゾン層の破壊がなく且つ安価な無機ガス系発泡剤が好ましく、特に窒素、空気、二酸化炭素が好ましい。又、これらの発泡剤の二種以上の混合系にて使用することもできる。
【0059】
発泡剤の使用量は、得ようとする発泡粒子の見掛け密度と発泡温度との関係に応じて適宜に選択される。具体的には、窒素、空気を除く上記発泡剤の場合、発泡剤の使用量は通常樹脂粒子100重量部当り2〜50重量部である。また窒素、空気の場合は、密閉容器内の圧力が10〜70kgf/cmGの圧力範囲内となる量が使用される。
【0060】
密閉容器内において、樹脂粒子を分散させるための分散媒としては水が好ましいが、樹脂粒子を溶解しないものであれば使用することができ、このような分散媒としては例えば、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0061】
平均気泡径の大きさは、発泡剤の種類と量、発泡温度と気泡調節剤の添加量で調節される。また、見掛け密度(発泡倍率)は、発泡剤の添加量と発泡温度と、発泡時の上記差圧により調節される。適正な範囲内においては、一般的に、発泡剤の添加量が多いほど、発泡温度が高いほど、上記差圧が大きいほど、得られる発泡粒子の見掛け密度は小さくなる。
【0062】
密閉容器内において、基材樹脂粒子を分散媒に分散せしめて発泡温度に加熱するに際し、樹脂粒子相互の融着を防止するために融着防止剤を用いることもできる。融着防止剤としては水等に溶解せず、加熱によっても溶融しないものであれば、無機系、有機系を問わずいずれも使用可能であるが、一般的には無機系のものが好ましい。
【0063】
無機系の融着防止剤としては、カオリン、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の粉体が好適である。該融着防止剤としては平均粒径0.001〜100μm、特に0.001〜30μmのものが好ましい。また融着防止剤の添加量は樹脂粒子100重量部に対し、通常は0.01〜10重量部が好ましい。
【0064】
また分散助剤としてドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤や硫酸アルミニウムが好適に使用される。該分散助剤は樹脂粒子100重量部当たり、通常0.001〜5重量部添加することが好ましい。
【0065】
本発明の成形体は、必要に応じて従来公知の方法により、前記発泡粒子を成形型内に充填し、スチームで加熱成形することにより得ることができる。即ち、該発泡粒子を閉鎖し得るが密閉し得ない成形型内に充填した後、該成形型内にスチームを導入することにより、発泡粒子を加熱し発泡させ、相互に融着させて成形空間の形状に見合った成形体を得ることができる。また、必要に応じて上述した二段発泡における操作と同様の発泡粒子内の圧力を高める加圧処理操作を行なって発泡粒子内の内圧を0.01〜0.2MPa(G)に調整することもできる。
【0066】
尚、発泡粒子の加熱融着成形後、得られた成形体を成形型内において冷却するに当たっては、水冷方式を採用することもできるが、バキューム方式によりスチームの気化熱を利用して冷却することもできる。
【0067】
本発明においては、発泡粒子を、成形型内に圧縮率が4〜25体積%となるように、好ましくは5〜20体積%となるように充填した後、スチームにより型内成形する方法を採用することによっても目的とする成形体を得ることができる。
【0068】
圧縮率の調整は、発泡粒子を成形型内(キャビティー)に充填する際に、キャビティー体積を超える発泡粒子の量を充填することにより行なわれる。発泡粒子を成形型に充填する際に成形型内の空気を金型内から排気したり、発泡粒子の成形型内への充填を効率を良く行うために、成形型を完全に閉鎖させないようにする成形型の開き部分をクラッキングとよぶが、クラッキングは成形型内に発泡粒子を充填後、スチームを導入する際には最終的に閉じられ、その結果充填された発泡粒子は圧縮される。
【0069】
本発明の成形体の独立気泡率は、75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%以上である。独立気泡率が小さすぎると、低見掛け密度の成形体となりにくく、機械的物性が劣ったものとなりやすい。
【0070】
なお、成形体の独立気泡率は、次のようにして測定される。
得られた成形体を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に、該成形体から25×25×20mmの試料を切出し、該試料を用いて前記発泡粒子の独立気泡率と同様に測定する。
【実施例1】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0072】
実施例、比較例で用いたPP樹脂の種類、物性を表1に、PE樹脂の種類、物性を表2に、CBの種類、物性を表3に、オレフィン系エラストマーの種類、物性を表4に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】


なお、表中の「C4」はPE樹脂がコモノマーとして1−ブテンを含むこと、即ちエチレン−ブテン共重合体であること、「C6」はPE樹脂がコモノマーとして1−ヘキセンを含むこと、即ちエチレン−ヘキセン共重合体であること、「−」はPE樹脂がコモノマーを含まないこと、即ちエチレンの単独重合体であることを意味する。また、表中、LLDPEは直鎖状低密度ポリエチレンを、HDPEは高密度ポリエチレンを、LDPEは低高密度ポリエチレンを意味する。

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】



なお、表中の「C8」はオレフィン系エラストマーがコモノマーとして1−オクテンを含むこと、即ちエチレン−オクテン共重合エラストマーであることを意味する。
【0077】
実施例1〜31、比較例1〜9
〔CBマスターバッチの調製〕
MB1: PP樹脂として表1のPP1を80重量部、CBとして表3のCB1を15重量部、オレフィン系エラストマーとして表4のEO1を5重量部を内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを切断して、CBマスターバッチ(MB1)を得た。
MB2: PP樹脂として表1のPP1を85重量部、CBとして表3のCB1を15重量部を内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを切断して、CBマスターバッチ(MB2)を得た。
MB3: PP樹脂として表1のPP1を70重量部と、CBとして表3のCB2を30重量部とを内径30mmの二軸押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練してストランド状に押出し、該ストランドを切断して、CBマスターバッチ(MB3)を得た。
【0078】
〔導電性樹脂ペレットの調製〕
PP樹脂、PE樹脂、及びCBが表5、表6に示した割合となるように、PP樹脂、PE樹脂及び導電性カーボンブッラクマスターバッチを内径30mmの2軸押出機に供給し、設定温度200〜220℃に加熱、溶融、混練した後、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで切断して樹脂ペレットを得た。なお、CBマスターバッチとして、実施例1〜23及び比較例1、2、4、7においてはMB1を使用し、実施例24〜28及び比較例5、6においてはMB3を使用し、実施例29〜31及び比較例3、8、9においてはMB2を使用した。また、比較例8、9においてはオレフィン系エラストマーの配合量が表6に示した割合になるように、PP樹脂、PE樹脂及び導電性カーボンブッラクマスターバッチと共に、オレフィン系エラストマーとしてEO1を2軸押出機に供給した。
【0079】
[樹脂粒子製造]
前記樹脂ペレットを内径40mmの押出機に供給し、溶融混練して、ストランド状に押出し、押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで平均重量が略2mg、L/D=1.4になるように切断し乾燥して樹脂粒子を得た。なお、押出機には気泡調整剤としてホウ酸亜鉛の含有量が樹脂粒子中2000重量ppmとなるように供給した。
【0080】
[発泡粒子の製造]
前記樹脂粒子1kgを、分散媒体の水3Lと共に5Lのオートクレーブ内に仕込み、分散媒中に、分散剤としてカオリン3g、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04g、及び硫酸アルミニウム0.1gをそれぞれ添加し、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を表4、表5に示した容器内圧力になるように圧入し、撹拌下に発泡温度まで加熱昇温して同温度に15分間保持して、高温ピーク熱量を調整した後、オートクレーブ内容物を大気圧下に水と共に放出して発泡粒子を得た。
【0081】
[二段発泡粒子の製造]
実施例19〜21、比較例4においては、二段発泡を行なって、低密度の発泡粒子とした。尚、二段発泡は発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気により加圧処理して発泡粒子の内圧を0.5MPa(G)まで高める操作を行った後、発泡粒子を容器内から取り出し、スチームを用いて加熱することにより行なった。
【0082】
[成形体の製造例]
前記で得られた発泡粒子を縦250mm×横200mm×厚さ50mmの平板成形型のキャビティに充填し、スチーム加熱による型内成形を行って板状発泡成形体を得た。加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、本加熱圧力より0.04MPa(G)低い圧力で一方加熱を行い、さらに本加熱圧力より0.02MPa(G)低い圧力で逆方向から一方加熱を行った後、表5〜10に示す成形加熱蒸気圧力(成形圧)で加熱した。なお、成形圧は、成形体が大きく収縮せずに最大融着率を示す圧力とした。この成形圧よりも圧力を上げると、成形体が大きく収縮するか、もしくは融着率が低下するため良好な成形体が得られなかった。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷した後、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体を80℃のオーブン中で12時間養生して成形体を得た。得られた成形体の物性を表5〜10に示した。
【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
【表7】

【0086】
【表8】

【0087】
【表9】

【0088】
【表10】


【0089】
発泡粒子および成形体の物性評価方法は下記により行った。
[表面抵抗率]
成形体の表面抵抗率は、成形体を23℃、10%RH(雰囲気条件1)の条件下で製造直後から1日間、又は成形体を23℃、50%RH(雰囲気条件2)の条件下で製造直後から1日間養生した後に、JIS C2170(2004年)に準拠した以下の方法により、雰囲気条件1で養生した成形体については23℃、10%RHの条件下で、雰囲気条件2で養生した成形体については、23℃、50%RHの条件下で測定した。
まず、発泡成形体の中央部付近から縦100mm×横100mm×厚み:成形体の厚みのままの直方体状に切り出して測定試験片を作製した。測定装置として三菱化学社製「ハイレスタMCP−HT450」を使用し該試験片の成形スキン面の表面抵抗率を測定した。なお、該試験方法により測定された表面抵抗率が1×10Ω未満の場合には、測定装置として三菱化学社製「ロレスタMCP−T610」を使用し、あらためて該試験片の成形スキン面の表面抵抗率を測定した。
【0090】
[帯電圧減衰]
成形体の帯電圧減衰時間は、成形体を23℃、10%RH(雰囲気条件1)の条件下で製造直後から1日間、又は成形体を23℃、50%RH(雰囲気条件2)の条件下で製造直後から1日間養生した後に、以下の方法により、雰囲気条件1で養生した成形体については23℃、10%RHの条件下で、雰囲気条件2で養生した成形体については、23℃、50%RHの条件下で測定した。
発泡成形体の中央部付近から縦150mm×横150mm×厚み10mmをスキン面を残した状態で切り出して測定試験片とした。測定装置としてトレック・ジャパン社製「Model 159HH」を使用し、測定プレート上に測定試験片を置き、1300Vの電圧を荷電させた後、測定試験片の中央部(測定プレートに対して対面)から銅線を用いてアースに繋ぎ、電圧が1000Vから100Vに減衰する時間を測定した。
100Vまで減衰する時間が2秒以下であれば合格(○)、2秒より大きかったものは不合格(×)と評価した。
【0091】
[発泡粒子のモルフォロジー観察]
まず、PE樹脂のPP樹脂連続相中への分散状態を以下の方法により確認した。観察用のサンプルを該発泡粒子の表面部から切り出し、エポキシ樹脂に包埋し、四酸化ルテニウム染色後、ウルトラミクロトームにより超薄切片を作製した。この超薄切片をグリッドに載せ、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM1010)にて発泡粒子の気泡膜断面のモルフォロジーを倍率20000倍で観察した。実施例3の発泡粒子についての電子顕微鏡写真を図1に、比較例1の発泡粒子についての電子顕微鏡写真を図3に示す。図1から、PE樹脂2は、染色されて顕微鏡写真中では濃色を示し、ポリプロピエン系樹脂連続相1中に分散していることがわかる。一方、図3から、基材樹脂がPP樹脂のみからなる発泡粒子においては、CB3がPP樹脂1中に連なった状態で分散していることがわかる。
次に、CBの分散状態を確認するために、上記観察切片の四酸化ルテニウムを脱色した後、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM1010)を使用して倍率20000倍で観察した。実施例3の発泡粒子についての電子顕微鏡写真を図2に示す。図2から、基材樹脂がPP樹脂連続相とPE樹脂分散相とからなる発泡粒子においては、CB3が該分散相2(図1)と略同じ大きさの領域に局在していることがわかる。
上記モルフォロジー観察により、実施例1〜31の発泡粒子において、PP樹脂が連続相(マトリックス)を形成し、PE樹脂が分散相(ドメイン)を形成しており、かつCBが分散相中に偏在していることを確認した。
【0092】
[融着性]
融着性は下記の方法により測定し評価した。発泡成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて前記測定を5回行いそれぞれの材料破壊率を求め、それらの算術平均値を融着率とした。なお、破壊率80%以上を合格とし、表5〜10に○と表記した。それ以下を表5〜10に×と表記し、不合格とした。
【0093】
[発泡粒子の見掛け密度]
23℃、相対湿度50%、1atmの条件下に2日放置した約500cmの発泡粒子群の重量(g)を測定し、23℃の水を300cc入れた1Lのメスシリンダー内に該発泡粒子群を金網を使用して沈め、水位の上昇分の目盛りから発泡粒子群の体積V(cm)を求め、発泡粒子群の重量Wを体積Vで除した値(W/V)を[kg/m]に単位換算した。
【0094】
[成形体の見かけ密度]
成形体の重量を成形体の外形寸法から求めた体積により除した値を求め、[kg/m]に単位換算した。
【0095】
[圧縮物性]
JIS K7220:2006に準拠し、50%歪み時の圧縮応力を測定した。
【0096】
[独立気泡率]
成形体の独立気泡率は、前記方法により測定した。
【符号の説明】
【0097】
1 ポリプロピレン樹脂
2 ポリエチレン樹脂
3 導電性カーボンブラック
図1
図2
図3
図4