(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重鎖可変領域がCDRアミノ酸配列CDR1 (SEQ ID NO: 1)、CDR2 (SEQ ID NO: 3)、およびCDR3 (SEQ ID NO: 5) を含み、軽鎖可変領域がCDRアミノ酸配列CDR1 (SEQ ID NO: 9)、CDR2 (SEQ ID NO: 10)、およびCDR3 (SEQ ID NO: 11) を含む、請求項1または2記載の抗体。
SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、またはSEQ ID NO: 8に対し少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗体。
SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 15、またはSEQ ID NO: 16に対し少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項20記載のポリヌクレオチド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
態様の説明
「抗体」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または上記の組合せなどの標的を、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも一つの抗原認識部位によって認識しかつ特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味するために用いられる。ある態様では、本発明の抗体には、癌幹細胞マーカータンパク質に特異的に結合し、かつ、例えばリガンド結合、受容体の二量体化、癌幹細胞マーカータンパク質の発現、および/または癌幹細胞マーカータンパク質の下流のシグナル伝達を妨害するアンタゴニスト抗体が含まれる。ある態様では、開示された抗体には、癌幹細胞マーカータンパク質に特異的に結合し、かつ、例えばリガンド結合、受容体の二量体化、および/または癌幹細胞マーカータンパク質によるシグナル伝達を促進するアゴニスト抗体が含まれる。ある態様では、開示された抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質の生物活性を妨害も促進もしないが、例えば免疫系による抗体内在化および/または認識によって、腫瘍成長を阻害する。本明細書で用いられる「抗体」という用語は、抗体が所望の生物活性を示す限り、無傷の(intact)ポリクローナル抗体、無傷のモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片など)、一本鎖Fv(scFv)突然変異体、少なくとも二つの無傷の抗体から生成された二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む任意の他の修飾された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれるその重鎖定常ドメインの同一性に基づいて、五つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のいずれかであり得る。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造および三次元構造を有する。抗体は、裸であっても、または毒素、放射性同位元素などの他の分子に結合していてもよい。
【0018】
本明細書で用いられる「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部を指し、かつ無傷の抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、直鎖状抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が、非限定的に含まれる。
【0019】
「Fv抗体」とは、一本の重鎖可変ドメインと一本の軽鎖可変ドメインが非共有結合性の二量体を形成している二本鎖として、あるいは、二本の鎖が同様の二量体構造で会合するように、一本の重鎖可変ドメインと一本の軽鎖可変ドメインが柔軟なペプチドリンカーによって共有結合している一本鎖(scFv)として、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む、最小の抗体断片を指す。この構成では、各可変ドメインの相補性決定領域(CDR)が相互作用して、Fv二量体の抗原結合特異性を規定する。あるいは、一般的に親和性はより低いが、単一の可変ドメイン(あるいはFvの半分)を用いて抗原を認識および結合することができる。
【0020】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」とは、単一の抗原決定基、即ちエピトープの極めて特異的な認識および結合に関与する、均一な抗体集団を指す。これは、異なる抗原決定基を対象とした異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル抗体」という用語は、無傷でありかつ全長であるモノクローナル抗体、ならびに抗体断片(Fab、Fab'、F(ab')2、Fvなど)、一本鎖(scFv)突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。さらに、「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え体発現、およびトランスジェニック動物による手法を非限定的に含む、多様な手法によって作製される抗体を指す。
【0021】
本明細書で用いられる「ヒト化抗体」という用語は、最小の非ヒト配列を含む、特異的な免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン、またはそれらの断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形を指す。典型的には、ヒト化抗体とは、抗体鎖の可変領域の抗原決定領域(または超可変領域)内の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDR由来の残基により置き換えられている、ヒト免疫グロブリンである。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンの可変鎖フレームワーク領域(FR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種由来の抗体中の対応する残基で置き換えられる。ヒト化抗体を、可変フレームワーク領域中および/または置き換えられた非ヒト残基の中の別の残基の置換によってさらに修飾して、抗体の特異性、親和性、および/または能力を、改良し、最適化することができる。一般にヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するすべてまたは実質的にすべてのCDR領域を含む、少なくとも一つ、典型的には二つまたは三つまたは四つの可変ドメインの実質的にすべてを含みうる。しかし一方で、すべてまたは実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部、通常はヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含むことができる。米国特許第5,225,539号に、ヒト化抗体を産生するために用いられる方法の例が述べられている。
【0022】
本明細書で用いられる「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって産生された抗体、または当技術分野で公知の任意の技術を用いて作製された、ヒトによって産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、無傷または全長の抗体、その断片、ならびに/または、例えばマウスの軽鎖およびヒトの重鎖ポリペプチドを含む抗体などの少なくとも一つのヒト重鎖および/もしくは軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。
【0023】
「ハイブリッド抗体」とは、得られる四量体が二つの異なるエピトープまたは二つの異なる抗原を認識および結合することができるように、異なる抗原決定領域を有する抗体由来の重鎖と軽鎖の対が組み合わされている免疫グロブリン分子である。
【0024】
「キメラ抗体」という用語は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が二つまたはそれ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変領域は、所望の特異性、親和性、および能力を有する一つの哺乳動物種(例えばマウス、ラット、ウサギなど)由来の抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域は、別の種(通常ヒト)に由来する抗体中の配列と相同であり、上記の種において免疫応答を誘発することを回避する。
【0025】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、かつ、特定の抗体により認識されて特異的に結合することができる抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、連続したアミノ酸、およびタンパク質の三次元的折り畳みによって近接して並べられた非連続アミノ酸の両方から形成することができる。連続するアミノ酸から形成されているエピトープは、タンパク質が変性した場合にも典型的には維持されるが、三次元的折畳みによって形成されたエピトープは、タンパク質が変性すると典型的には失われる。エピトープは、独特の空間配置中に典型的には少なくとも3アミノ酸、より通常は少なくとも5または8〜10アミノ酸を含む。
【0026】
抗体間の競合は、共通の抗原との参照抗体の特異的結合を被験免疫グロブリンが阻害するアッセイ法によって判定される。多くのタイプの競合的結合アッセイ法、例えば、固相直接的または間接的放射免疫アッセイ法(RIA)、固相直接的または間接的酵素免疫アッセイ法(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ法(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242-253 (1983)参照); 固相直接的ビオチン-アビジンEIA法(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614-3619 (1986)参照); 固相直接的標識アッセイ法、固相直接的標識サンドイッチアッセイ法(Harlow and Lane,「Antibodies, A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Press (1988)参照); I-125標識を用いる固相直接標識RIA法(Morel et al., Molec. Immunol. 25(1):7-15 (1988)参照); 固相直接ビオチン-アビジンEIA法(Cheung et al., Virology 176:546-552 (1990)); および直接標識RIA法(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77-82 (1990))が公知である。典型的には、このようなアッセイ法では、固体表面に結合された精製抗原またはこれらのいずれかを持つ細胞、非標識被験免疫グロブリン、および標識参照免疫グロブリンの使用が必要になる。競合的阻害は、被験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞に結合された標識の量を判定することによって測定される。通常、被験免疫グロブリンは過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同一のエピトープに結合する抗体、および、参照抗体が結合するエピトープに対して、立体障害が生じるのに十分な近さにある隣接エピトープに結合する抗体などがある。通常、競合抗体が過剰に存在すると、共通抗原との参照抗体の特異的結合が少なくとも50%または75%阻害される。
【0027】
抗体が「選択的に結合する」または「特異的に結合する」とは、抗体がエピトープに対し無関係なタンパク質を含む他の物質とよりも、より頻繁に、より急速に、より長期間、より高い親和性で、または上記のいくつかの組合せで、反応または結合することを意味する。「選択的に結合する」または「特異的に結合する」とは、例えば抗体が、少なくとも約0.1mM、しかしより通常は少なくとも約1μMのK
Dでタンパク質に結合することを意味する。場合によっては、「選択的に結合する」または「特異的に結合する」とは、抗体が、ある場合は少なくとも約0.1μM以上のK
Dで、別の場合には少なくとも約0.01μM以上のK
Dでタンパク質に結合することを意味する。異なる種における相同タンパク質間の配列同一性のために、特異的結合は、二種以上の種における癌幹細胞マーカータンパク質を認識する抗体を含み得る。
【0028】
本明細書において、「非特異的結合」および「バックグラウンド結合」という用語は、抗体とタンパク質とのまたはペプチドとの相互作用について用いられる場合、特定の構造の存在に依存しない相互作用(即ち、抗体がエピトープなどの特定の構造ではなくタンパク質全般に結合している)を指す。
【0029】
「単離された」または「精製された」という用語は、その天然状態で通常はそれに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。純度および均一性は、典型的にはポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて決定される。調製物中に存在する主な種である本開示のタンパク質(例えば抗体)または核酸は、実質的に精製されている。詳細には、単離された核酸は、本来その遺伝子に隣接し、かつその遺伝子によってコードされるタンパク質以外のタンパク質をコードする、オープンリーディングフレームから分離されている。単離された抗体は、他の非免疫グロブリンタンパク質から、および異なる抗原結合特異性を有する他の免疫グロブリンタンパク質から分離されている。これはまた、核酸またはタンパク質がいくつかの態様では少なくとも80%純粋であり、いくつかの態様では少なくとも85%純粋であり、いくつかの態様では少なくとも90%純粋であり、いくつかの態様では少なくとも95%純粋であり、そしていくつかの態様では少なくとも99%純粋であることを意味しうる。
【0030】
本明細書で用いる「癌」および「癌性」という用語は、ある細胞集団が無秩序な細胞増殖により特徴付けられる哺乳動物の生理的症状を指すかまたは説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が、非限定的に含まれる。そのような癌のより詳細な例には、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、ヘパトーマ、膀胱癌、肝臓癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、および様々な型の頭頸部癌が含まれる。
【0031】
「増殖性障害」および「増殖性疾患」という用語は、癌などの異常な細胞増殖に関連した障害を指す。
【0032】
本明細書で使用する「腫瘍」および「新生物」とは、過度の細胞成長または増殖に起因する、前癌病変を含む良性(非癌性)病変または悪性(癌性)病変の任意の組織塊を指す。
【0033】
本明細書で使用する「転移」とは、癌が、新しい位置で同様の癌性病変の発生を伴って、身体の発生部位から他の領域へと拡張または移行するプロセスを指す。「転移性の」または「転移する」細胞とは、近傍の細胞との付着性接触を失い、疾患の原発部位から血流またはリンパ液によって移動して、近傍の身体構造へと侵入する細胞である。
【0034】
「癌幹細胞」、「腫瘍幹細胞」、または「充実性腫瘍幹細胞」という用語は、本明細書で互換的に用いられ、かつ、(1) 高い増殖能を有し;(2) 非対称細胞分裂を行い、増殖能力または発生能力の低下した一つまたは複数種類の分化した後代細胞を産生することができ;かつ(3) 自己複製または自己維持のための対称細胞分裂を行うことができる、充実性腫瘍由来の細胞集団を指す。「癌幹細胞」、「腫瘍幹細胞」、または「充実性腫瘍幹細胞」のこれらの特性によって、免疫無防備状態のマウスへの累代移植の際に、これらの癌幹細胞は、腫瘍を形成できない大多数の腫瘍細胞と比較して触診可能な腫瘍を形成できる。癌幹細胞は、無秩序な様式で分化と自己複製を起こし、突然変異が生じるにつれて経時的に変化することができる異常細胞型を含む腫瘍を形成する。充実性腫瘍幹細胞は、米国特許第6,004,528号によって提供される「癌幹細胞系(cancer stem line)」とは異なる。上記特許では、「癌幹細胞系」を、それ自体は殆ど突然変異を有さないが、細胞環境に生じる腫瘍形成性変化の結果として非対称細胞分裂ではなく対称細胞分裂を行う、ゆっくりと増殖する前駆細胞型であると定義している。したがってこの「癌幹細胞系」仮説は、高度に突然変異され急速に増殖している腫瘍細胞が主に異常な環境の結果として生じ、この異常な環境が、比較的正常な幹細胞を蓄積させてその後突然変異を起こし、これらを腫瘍細胞にすることを提唱している。米国特許第6,004,528号は、そのようなモデルを用いて癌の診断を促進できると提唱している。充実性腫瘍幹細胞モデルは、「癌幹細胞系」モデルと根本的に異なり、かつ結果として「癌幹細胞系」モデルでは与えられない有用性を示す。第1に、充実性腫瘍幹細胞は、「突然変異を免れて」はいない。米国特許第6,004,528号によって記載された「突然変異を免れた癌幹細胞系」は前癌病変と考えることができるが、一方、充実性腫瘍幹細胞は、前癌段階から後期段階癌まで腫瘍形成の原因となる突然変異をそれら自身が含みうる、癌細胞である。即ち、充実性腫瘍幹細胞(「癌幹細胞」)は、米国特許第6,004,528号の「癌幹細胞系」とは区別される高度に突然変異された細胞に含まれうる。第2に、癌をもたらす遺伝子突然変異は、環境的なものだけではなく、大部分は充実性腫瘍幹細胞内の内因性のものであり得る。充実性腫瘍幹細胞モデルは、単離された充実性腫瘍幹細胞が移植時にさらなる腫瘍を生じうることを予測しており(これにより転移が説明される)、その一方で「癌幹細胞系」モデルは、腫瘍形成性であるその異常な環境のため、移植された「癌幹細胞系」細胞が新しい腫瘍を生じさせることができないことを予測すると考えられる。確かに、解離され、表現型によって分離されたヒト充実性腫瘍幹細胞をマウスに(通常の腫瘍環境とは大きく異なる環境中へ)移植して、そこでも新しい腫瘍を形成しつづける能力は、本発明を「癌幹細胞系」モデルから区別するものである。第3に、充実性腫瘍幹細胞は、対称的分裂および非対称的分裂の両方を行う可能性が高く、したがって対称細胞分裂は絶対的な特性ではない。第4に、充実性腫瘍幹細胞は、多くの変数に依存して、急速にまたはゆっくりと分裂することができ、したがって遅い増殖速度は決定的な特性ではない。
【0035】
「癌細胞」、「腫瘍細胞」という用語、およびその文法上の等価物は、腫瘍細胞集団の大部分を含む非腫瘍形成性細胞および腫瘍形成性幹細胞(癌幹細胞)の両方を含む、腫瘍または前癌病変に由来する細胞の全集団を指す。
【0036】
本明細書で用いる「腫瘍形成性」とは、充実性腫瘍幹細胞が腫瘍を形成することを可能にする、自己複製(さらなる腫瘍形成性癌幹細胞を生ずる)および、他の全ての腫瘍細胞を産生するための増殖(分化しかつしたがって非腫瘍形成性である腫瘍細胞を生ずる)という特性を含む、充実性腫瘍幹細胞の機能的な特徴を指す。
【0037】
本明細書に用いる「幹細胞癌マーカー」、「癌幹細胞マーカー」、「腫瘍幹細胞マーカー」、または「充実性腫瘍幹細胞マーカー」という用語は、単独でまたは他の遺伝子と組み合わせたその発現レベルが、非腫瘍形成性細胞と比較して腫瘍形成性癌細胞の存在と相関関係にある、一つもしくは複数の遺伝子、または該遺伝子により発現されるタンパク質、ポリペプチド、あるいはペプチドを指す。この相関関係は、遺伝子の増加したまたは減少した発現(例えば、遺伝子によってコードされるmRNAまたはペプチドの増加したまたは減少したレベル)のどちらとも関連しうる。
【0038】
本明細書に用いる「生検」または「生検組織」という用語は、試料が癌性組織を含むかどうかを判定する目的で被験体から取り出された組織または流体の試料を指す。いくつかの態様では、被験体が癌を有する疑いがあるため生検組織または流体を得て、次に該生検組織または流体を、癌の有無について検査する。
【0039】
本明細書で用いられる「被験体」という用語は、特定の処置のレシピエントとなるべき、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類などを非限定的に含む任意の動物(例えば哺乳動物)を指す。典型的には、ヒト被験体に関して、本明細書では「被験体」と「患者」という用語を互換的に用いる。
【0040】
「薬学的に許容される」とは、ヒトを含む動物への使用が、連邦政府または州政府の監督官庁によって承認されたかまたは承認可能なこと、あるいは米国薬局方または他の一般に認められた薬局方に記載されていることを指す。
【0041】
「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、かつ親化合物の望ましい薬理活性を有する化合物の塩を指す。
【0042】
「薬学的に許容される賦形剤、担体、またはアジュバント」とは、本開示の抗体の少なくとも一つと共に被験体に投与することができ、かつ該抗体の薬理活性を破壊せず、かつ治療量の化合物を送達するのに十分な用量で投与したときに無毒である、賦形剤、担体またはアジュバントを指す。
【0043】
「薬学的に許容されるビヒクル」とは、本開示の抗体の少なくとも一つと共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体を指す。
【0044】
「プロドラッグ」とは、治療上有効な化合物を産生するためには身体内での変換を必要とする、治療上有効な化合物の誘導体を指す。治療上有効な親化合物へと変換されるまで、プロドラッグは薬理学的に不活性であり得る。
【0045】
「治療的有効量」という用語は、被験体または哺乳動物の疾患または障害を「処置する」のに有効な、抗体、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機低分子、または他の薬物の量を指す。癌の場合には、治療的有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させること;腫瘍の大きさを縮小すること;例えば、軟組織および骨の中への癌の拡散を含む、辺縁の器官への癌細胞浸潤を阻害または停止させること;腫瘍転移を阻害および停止させること;腫瘍成長を阻害および停止させること;癌に関連した一つまたは複数の症状をある程度軽減させること;罹患率と死亡率を低下させること;生活の質を改善すること;あるいは、そのような効果の組合せが可能である。薬物が既存の癌細胞の増殖を防止しかつ/またはこれを死滅させるという点で、薬物を、細胞増殖抑制性および/または細胞障害性であると言うことができる。
【0046】
本明細書に用いる「診断の提供」または「診断情報」とは、患者が疾患もしくは症状を有するかどうか判断する際に、および/あるいは、疾患または症状を表現型のカテゴリーに分類する際に、あるいは疾患または症状の予後または処置(処置全般または任意の特定の処置のいずれか)に対する予想される応答に関する重要な任意のカテゴリーに分類する際に有用な、例えば癌幹細胞の存在を含む、任意の情報を指す。同様に、診断とは、被験体が症状(例えば腫瘍)を有する可能性があるかどうかの情報、被験体の腫瘍が癌幹細胞を含むかどうかの情報、例えばリスクの高い腫瘍もしくはリスクの低い腫瘍のような腫瘍の性質もしくは分類に関する情報、予後に関する情報、および/または適切な処置を選択するのに有用な情報を非限定的に含む、任意の型の診断情報を提供することを指す。処置の選択には、特定の化学療法剤または手術もしくは放射線などの他の処置様式の選択、あるいは療法を保留するか提供するかに関する選択が含まれ得る。
【0047】
本明細書に用いる「予後の提供」、「予後情報」、または「予測情報」という用語は、例えば被験体の腫瘍における癌幹細胞の存在を含む、被験体の将来の健康(例えば予期される罹患率または死亡率、癌に罹る可能性、および転移のリスク)に対する(例えば本発明の診断法によって決定されるような)癌の存在の影響に関する情報を提供することを指す。
【0048】
「処置する」または「処置」または「処置すること」または「軽減する」または「軽減すること」などの用語は、1) 診断された病理的症状または障害を治癒し、遅らせ、その症状を減少させ、かつ/またはその進行を停止させる治療的方策、および 2) 標的とする病理的症状または障害の発生を防止しかつ/または遅延させる予防的または防止的方策の両方を指す。したがって、処置を必要とする人々には、既に障害を有する人々;障害を有しやすい人々;および障害が防止されるべき人々が含まれる。患者が下記の一つまたは複数を示せば、本発明の方法による被験体の「処置」は成功である:癌細胞の数の減少またはその完全な非存在;腫瘍サイズの縮小;例えば軟組織および骨の中への癌の拡散を含む、辺縁器官への癌細胞浸潤の阻害または非存在;腫瘍転移の阻害または非存在;腫瘍成長の阻害または非存在; 特定の癌に関連する一つまたは複数の症状の軽減;罹患率および死亡率の低下;生活の質の改善;あるいは、効果のいくつかの組合せ。
【0049】
本明細書に用いられる「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、リン酸ジエステル結合によって連結された多数のヌクレオチド単位(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、または関連する構造変種)から構成されるポリマーを指し、DNAまたはRNAを非限定的に含む。この用語は、4アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、プソイドイソシトシン、5(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル2チオウラシル、5カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6イソペンテニルアデニン、1メチルアデニン、1-メチルプソイドウラシル、1メチルグアニン、1メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2メチルアデニン、2メチルグアニン、3-メチルシトシン、5メチルシトシン、N6メチルアデニン、7メチルグアニン、5メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル2チオウラシル、ベータDマンノシルキューオシン、5'メトキシカルボニルメチルウラシル、5メトキシウラシル、2メチルチオN6イソペンテニルアデニン、ウラシル5オキシ酢酸メチルエステル、5オキシ酢酸ウラシル、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2チオシトシン、5-メチル-2チオウラシル、2-チオウラシル、4チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル5オキシ酢酸メチルエステル、5オキシ酢酸ウラシル、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、および2,6ジアミノプリンを含むが、これらに限定されない、DNAおよびRNAの公知の塩基アナログのいずれかを含む配列を包含する。
【0050】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、プローブが、典型的には核酸の複合混合物中でその標的の部分配列にはハイブリダイズするが他の配列にはハイブリダイズしないような条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、環境によっても異なるであろう。より長い配列はより高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範なガイドは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)の中に見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度、pHでの特定配列の熱融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。このTmは、標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(標的配列が過剰に存在する場合、Tmで、プローブの50%が平衡状態である)(規定のイオン強度、pH、および核酸濃度の下での)温度である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合、正のシグナルは少なくともバックグラウンドの2倍、好ましくは、バックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。例となるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下でありうる: 50%ホルムアミド、5×SSC、および1% SDS中にて42℃でインキュベートし、または5×SSC、1% SDS中にて65℃でインキュベートして、65℃の0.2×SSCおよび0.1% SDS中にて洗浄する。
【0051】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチド、前駆体、またはRNA (例えばrRNA、tRNA)の産生に必要なコード配列を含む核酸(例えばDNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長または断片の配列の望ましい活性または機能特性(例えば酵素活性、リガンド結合、シグナル伝達、免疫原性など)を保持する限り、全長のコード配列またはコード配列の任意の部分によってコードされることができる。この用語はまた、構造遺伝子のコード領域、ならびに5'端および3'端の両方においてコード領域に隣接して位置する配列であって、遺伝子が全長のmRNAの長さに対応するように、いずれかの端において約1kbまたはそれ以上の距離に及ぶものを包含する。コード領域の5'に位置しかつmRNA上に存在する配列は、5'非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3'即ち下流に位置しかつmRNA上に存在する配列は、3'非翻訳配列と呼ばれる。「遺伝子」という用語は、遺伝子のcDNA形態およびゲノム形態の両方を包含する。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と名付けられた非コード配列によって中断されたコード領域を含む。イントロンは核RNA (hnRNA)へ転写される遺伝子のセグメントであり;イントロンは、エンハンサーなどの調節エレメントを含むことができる。イントロンは、核転写産物または一次転写産物から除去され、即ち「切り出され」;したがって、イントロンはメッセンジャーRNA (mRNA)転写産物中には存在しない。mRNAは翻訳中に機能して、合成途中のポリペプチド中のアミノ酸の配列即ち順序を指定する。イントロンを含むことに加えて、遺伝子のゲノム形態は、さらにRNA転写産物上に存在する配列の5'および3'端の両方に位置する配列を含み得る。これらの配列は、「隣接」配列または「隣接」領域と呼ばれる(これらの隣接配列は、mRNA転写産物上に存在する非翻訳配列の5'または3'に位置する)。5'隣接領域は、遺伝子の転写を制御するかまたはそれに影響を及ぼすプロモーターおよびエンハンサーなどの調節配列を含むことができる。3'隣接領域は、転写の終結、転写後の切断およびポリアデニル化を指示する配列を含むことができる。
【0052】
「組換え体」という用語は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターに関して用いられる場合、異種の核酸もしくはタンパク質の導入によって、天然の核酸もしくはタンパク質の改変によって、細胞、核酸、タンパク質もしくはベクターが修飾されていること、または、細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞中には見出されない遺伝子を発現し、または、過剰発現するかそうでなければ異常発現する、例えば、非天然断片もしくはスプライスバリアントとして発現する、天然の遺伝子を発現する。本明細書では、「組換え核酸」という用語は一般に、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる核酸の操作によって、本来はインビトロで形成される、天然には通常見出されない形式の核酸を意味する。このような様式で、異なる配列の機能的な連結が達成される。したがって、通常結合されないDNA分子のライゲーションによりインビトロで形成された、単離された直鎖状の核酸分子または発現ベクターはどちらも、本発明の目的のためには組換え体であるとみなされる。一旦組換え核酸が作製されて宿主の細胞または生物体に導入されると、これは非組換え的に、即ち、インビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボの細胞機構を用いて複製することが、理解される。しかし、そのような核酸は、一旦組換え的に産生されると、その後非組換え的に複製されるとしても、本発明の目的に関しては依然として組換え体であるとみなされる。同様に、「組換えタンパク質」とは、組換え技術を用いて、すなわち上に記載したような組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。
【0053】
本明細書で用いる「異種遺伝子」という用語は、その天然環境には存在しない遺伝子を指す。例えば、異種遺伝子は、ある種から別の種へ導入された遺伝子を含む。異種遺伝子はまた、何らかの方法で改変された(例えば、突然変異された、複数コピーで添加された、非天然調節配列へ連結されたなど)、生物体にとっては天然である遺伝子を含む。異種遺伝子配列が、染色体中で該遺伝子配列との結合を天然には認められないDNA配列に典型的には結合しているか、または天然には認められない染色体部分(例えば通常は遺伝子が発現されない遺伝子座で発現した遺伝子)と結合しているという点で、異種遺伝子は内因性遺伝子と区別される。
【0054】
本明細書で用いる「ベクター」という用語は、DNAセグメントを一つの細胞から別の細胞へと移動させる核酸分子について用いられる。「媒体」という用語は、「ベクター」と互換的に用いられることがある。ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、あるいは植物または動物ウイルスに由来することが多い。
【0055】
「ライゲーション」とは、二つの二重鎖核酸断片間にリン酸ジエステル結合を形成するプロセスを指す。別段の定めのない限り、公知の緩衝液および条件を用いて、ほぼ等モル量のライゲーションされるべきDNA断片0.5ugにつき10単位のT4DNAリガーゼ(「リガーゼ」)により、ライゲーションを遂行することができる。核酸のライゲーションは、二つのタンパク質をインフレームで互いに連結させて、単一タンパク質、即ち融合タンパク質を生成する役割を果たすことができる。
【0056】
本明細書で用いる「遺伝子発現」という用語は、遺伝子中にコードされた遺伝情報を、遺伝子の「転写」を通じて(例えば、RNAポリメラーゼの酵素作用により)、RNA (例えば、mRNA、rRNA、tRNAまたはsnRNA)へ変換するプロセス、および、タンパク質をコードする遺伝子については、mRNAの「翻訳」を通じてタンパク質へ変換するプロセスを指す。遺伝子発現を、プロセス中の多くの段階で調節することができる。「アップレギュレーション」または「活性化」とは、遺伝子発現産物(例えばRNAまたはタンパク質)の産生を増加させる調節を指し、一方で「ダウンレギュレーション」または「抑制」とは、産生を減少させる調節を指す。アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションに関係する分子(例えば転写因子)は、それぞれ「アクチベーター」および「リプレッサー」と呼ばれることが多い。
【0057】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」および「タンパク質断片」という用語は本明細書で互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーはもとより、一つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0058】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成のアミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされたアミノ酸、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、例えば水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素のような、天然アミノ酸と同じ基礎的化学構造を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有することができるが、天然アミノ酸と同じ基礎的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0059】
「保存的修飾変異体」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。「アミノ酸変異体」はアミノ酸配列を指す。特定の核酸配列について、保存的修飾変異体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、あるいは、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列または関連した(例えば、本来隣接している)配列を指す。遺伝暗号の縮退のために、多数の機能的に同一の核酸が大部分のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、コドンがアラニンを指定するすべての位置で、コードされるポリペプチドを改変することなく、該コドンを前述の対応する別のコドンに改変することができる。そのような核酸変異は「サイレントな変異」であり、これは、保存的に修飾された変異の一種である。本明細書においてあるポリペプチドをコードする全ての核酸配列は、該核酸のサイレントな変異も記載している。特定の文脈において、核酸中の各コドン(通常はメチオニンのただ一つのコドンであるAUGおよび通常はトリプトファンのただ一つのコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができることを、当業者は認識するであろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸のサイレントな変異は、発現産物については、記載される配列中に潜在しているが、実際のプローブ配列ではそうではない。アミノ酸配列については、改変が化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸置換をもたらす場合を含め、コード配列中の単一アミノ酸または数パーセントのアミノ酸を改変するか、追加するか、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列への個々の置換、欠失または追加が「保存的に修飾された変異体」であることを、当業者は認識するであろう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表が、当技術分野において周知である。そのような保存的修飾変異体は、本発明の多型変異体、異種間ホモログ、および対立遺伝子に含まれるものであって、それらを除外するものではない。典型的には、保存的置換には以下のものが含まれる:1) アラニン(A)、グリシン(G);2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4) アルギニン(R)、リジン(K);5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7) セリン(S)、スレオニン(T);および8) システイン(C)、メチオニン(M) (例えば Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。
【0060】
本明細書に用いる「エピトープタグを付けた」という用語は、「エピトープタグ」に融合された癌幹細胞マーカータンパク質、あるいはそのドメイン配列またはその一部を含むキメラポリペプチドを指す。エピトープタグポリペプチドは、抗体による認識用のエピトープを提供するためには十分なアミノ酸残基を含むが、それでも癌幹細胞マーカータンパク質の活性を邪魔しない程度に十分に短い。適当なエピトープタグは、一般に少なくとも6アミノ酸残基、通常約8〜約50アミノ酸残基、そして時には約10〜約20アミノ酸残基を有する。一般に使用されるエピトープタグには、Fc、HA、His、およびFLAGタグが含まれる。
【0061】
本発明は、癌を研究、診断、特徴付け、および処置するための組成物および方法を提供する。具体的には、本発明は、固形腫瘍幹細胞マーカーに対する抗体、ならびにヒト患者において腫瘍増殖を阻害するためにおよび癌を処置するためにこれらの抗体を使用する方法を提供する。ある態様において、本発明の抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質に特異的に結合し、かつ、例えば、リガンドの結合、受容体の二量体化、癌幹細胞マーカータンパク質の発現、および/または癌幹細胞マーカータンパク質のシグナル伝達を妨害するアンタゴニスト抗体を含む。ある態様において、開示する抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質に特異的に結合し、かつ例えば、リガンドの結合、受容体の二量体化、および/または癌幹細胞マーカータンパク質によるシグナル伝達を促進するアゴニスト抗体を含む。ある態様において、開示する抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質の生物活性を妨害または促進しないが、例えば、内部移行および/または免疫系による認識によって腫瘍増殖を阻害する。ある態様において、本抗体は二つ以上の固形腫瘍幹細胞マーカータンパク質を特異的に認識する。
【0062】
ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合する単離抗体を提供するが、該抗体は腫瘍の増殖に影響を与える。ある態様において、抗体はモノクローナル抗体である。ある態様において、抗体はキメラ抗体である。ある態様において、抗体はヒト化抗体である。ある態様において、抗体はヒト抗体である。本開示の抗体および薬学的に許容される媒体を含む薬学的組成物を、さらに提供する。
【0063】
本開示の抗体または薬学的組成物の治療上有効量を投与する段階を含む、癌を処置する方法を、さらに提供する。ある態様では、抗体は細胞障害性部分に結合される。ある態様では、本方法は、さらに併用療法を行うために適切な、少なくとも一つの追加の治療剤を投与する工程を含む。ある態様では、腫瘍細胞は、乳腺腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、および頭頸部腫瘍より選択される。
【0064】
充実性腫瘍は、それらが生ずる組織と同様に、異種の細胞の集団から成る。これらの細胞の大多数が腫瘍形成能を欠くことが、充実性腫瘍の発生および維持もまた、増殖しかつ、さらなる腫瘍幹細胞(自己複製)および腫瘍形成能を欠くより分化した腫瘍細胞の大多数(即ち非腫瘍形成性癌細胞)の両方を効率的に生じる能力を有する幹細胞小集団(即ち腫瘍形成性癌細胞)に依存していることを示唆した。癌幹細胞の概念は、造血幹細胞(HSC)の発見の直後にまず導入され、急性骨髄性白血病(AML)において実験的に確立された(Park et al., 1971, J. Natl. Cancer Inst. 46:411-22; Lapidot et al., 1994, Nature 367:645-8; Bonnet & Dick, 1997, Nat. Med. 3:730-7; Hope et al., 2004, Nat. Immunol. 5:738-43)。充実性腫瘍由来の幹細胞は、より最近になって、その細胞表面受容体発現の独特なパターンならびに培養中および異種移植片動物モデル中での自己複製および増殖特性の評価に基づいて、単離された。分画されていない腫瘍細胞と比較して50倍を上回る腫瘍形成能を有するESA+CD44+CD24-/low系列集団が発見された(Al-Hajj et al., 2003, Proc. Nat'l. Acad. Sci. 100:3983-8)。大量の非腫瘍形成性腫瘍細胞から腫瘍形成性癌幹細胞を単離できる能力が、マイクロアレイ分析を用いた、癌幹細胞マーカーである、非腫瘍形成性腫瘍細胞または正常な乳房上皮と比較して癌幹細胞中で差示的発現を有する遺伝子の同定につながった。本発明は、これらの同定された癌幹細胞マーカーの知識を利用して、癌を診断し、処置を行う。
【0065】
本発明の癌幹細胞マーカーはヒトDLL4、つまりNotch受容体リガンドに関する。Notchシグナル伝達経路は胚のパターン形成、後胚期の組織維持および幹細胞生物学に関するいくつかの重要な制御因子のうちの一つである。より具体的には、Notchシグナル伝達は、隣接細胞運命(adjacentcell)間の側方抑制の過程に関与し、非対称細胞分裂中の細胞運命決定に重要な役割を果たす。未制御のNotchシグナル伝達は多数のヒト癌に関連しており、ここでこれは腫瘍細胞の発生的運命を変化させて、未分化の増殖状態で維持することができる (Brennan and Brown, 2003, Breast Cancer Res. 5:69)。したがって、幹細胞集団による正常な発達および組織修復を制御する恒常性維持機構を奪うことにより、発癌は進行しうる(Beachy et al., 2004, Nature 432:324)。
【0066】
Notch受容体はショウジョウバエ(Drosophila)変異体において最初に同定された。ショウジョウバエNotchのハプロ不全によって翅末端(wing margin)にV字の切り込みが起こるが、機能喪失によって、表皮細胞の運命が神経組織へと切り替わる胚致死的な「神経原性」の表現型が生じる(Moohr, 1919, Genet. 4:252; Poulson, 1937, PNAS 23:133; Poulson, 1940, J. Exp. Zool. 83:271)。Notch受容体は、大きな細胞外ドメイン内に多数の上皮増殖因子(EGF)様タンデムリピートおよびシステインリッチなNotch/LIN-12リピートを含有する1回膜貫通型受容体である(Wharton et al., 1985, Cell 43:567; Kidd et al., 1986, Mol. Cell Biol. 6:3094; reviewed in Artavanis et al., 1999, Science 284:770)。四つの哺乳類Notchタンパク質が同定されており(NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、およびNOTCH4)、これらの受容体における突然変異は、以下に詳述するようにいくつかの癌を含むヒト病変および発達異常を必ず引き起こす(Gridley, 1997, Mol. Cell Neurosci. 9:103; Joutel & Tournier-Lasserve, 1998, Semin. Cell Dev. Biol. 9:619-25)。
【0067】
Notch受容体はDelta, Serrated, Lag-2 (DSL)ファミリーの1回膜貫通型リガンドによって活性化される。哺乳類における公知のNotchリガンド・デルタ様1 (Dll1)、デルタ様3 (Dll3)、デルタ様4 (Dll4)、Jagged 1、およびJagged 2は、細胞外ドメイン内のDSLドメインおよびEGF様タンデムリピートによって特徴付けられる。Notch受容体の細胞外ドメインは、典型的には隣接細胞上の、そのリガンドの細胞外ドメインと相互作用し、Notchの2回のタンパク質分解的切断、つまりADAMプロテアーゼによって媒介される細胞外切断およびガンマセクレターゼによって媒介される膜貫通ドメイン内での切断を引き起こす。この後者の切断によってNotch細胞内ドメイン(NICD)が生ずる。次いでNICDが核に入り、そこで主要な下流エフェクタとして転写因子のCBF1/Suppressor of Hairless [Su(H)]/Lag-2 (CSL)ファミリーを活性化し、Hairy and Enhancer of Split [E(spl)]ファミリーの核塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子の転写を増大する(Artavanis et al., 1999, Science 284:770; Brennan and Brown, 2003, Breast Cancer Res. 5:69; Iso et al., 2003, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23:543)。ショウジョウバエにおいて同定された細胞質タンパク質Deltexが関与する別の細胞内経路も哺乳類において存在する可能性があり(Martinez et al., 2002, Curr. Opin. Genet. Dev. 12:524-33)、このDeltex依存的経路はWnt標的遺伝子の発現を抑制するように作用しうる(Brennan et al., 1999, Curr. Biol. 9:707-710; Lawrence et al., 2001, Curr. Biol. 11:375-85)。
【0068】
造血幹細胞(HSC)は、最もよく理解されている体内の幹細胞であり、Notchシグナル伝達は、それらの正常な維持および白血病性形質転換の両方に関係している(Kopper & Hajdu, 2004, Pathol. Oncol. Res. 10:69-73)。HSCは、成人の骨髄内の間質間隙に存在する僅かな数の細胞である。これらの細胞は、独自の遺伝子発現プロファイル、ならびにより分化した始原細胞を継続的に生みだして造血システム全体を再構成する能力の両方によって、特徴づけられる。HSCおよび前駆細胞におけるNotch1シグナル伝達の構成的活性化により、インビトロにおいておよび長期再構築アッセイにおいてリンパ球細胞と骨髄性細胞の両方を生じる不死化細胞株が樹立され(Varnum-Finney et al., 2000, Nat. Med. 6: 1278-81)、Jagged 1の存在はHSCに富むヒト骨髄細胞集団の生着を高める(Karanu et al., 2000, J. Exp. Med. 192:1365-72)。つい最近、Notchシグナル伝達がインビボのHSCにおいて実証され、HSC分化の阻害に関与することが明らかにされた。さらに、Notchシグナル伝達はWntを介したHSCの自己再生に必要であるように思われる(Duncan et al., 2005, Nat. Immunol. 6:314)。
【0069】
Notchシグナル伝達経路は同様に、神経幹細胞の維持において中心的な役割を果たし、その正常な維持にも脳腫瘍にも関与している(Kopper & Hajdu, 2004, Pathol. Oncol. Res. 10:69-73; Purow et al., 2005, Cancer Res. 65:2353-63; Hallahan et al., 2004, Cancer Res. 64:7794-800)。神経幹細胞は発達の間に哺乳類神経系において全てのニューロンおよびグリア細胞をもたらし、つい最近では、成体脳において同定された(Gage, 2000, Science 287:1433-8)。Notch1、Notch標的遺伝子Hes1、3、および5、ならびにNotchシグナル伝達経路の制御因子プレセニリン1 (PS1)の欠損マウスは、胚性神経幹細胞数の減少を示す。さらに、PS1ヘテロ接合体マウスの脳において成体神経幹細胞が減少する(Nakamura et al., 2000, J. Neurosci. 20:283-93; Hitoshi et al., 2002, Genes Dev. 16:846-58)。神経幹細胞の減少はニューロンへのその未成熟な分化から生じているようであり(Hatakeyama et al., 2004, Dev. 131 :5539-50)、Notchシグナル伝達が神経幹細胞の分化および自己再生を調節することを示唆している。
【0070】
異常なNotchシグナル伝達はいくつかのヒト癌に関与している。ヒトでのNOTCH1遺伝子は、一部のT細胞性急性リンパ芽球性白血病でNotch経路の活性化をもたらす転座遺伝子座として最初に同定された(Ellisen et al., 1991, Cell 66:649-61)。マウスモデルにおけるT細胞でのNotch1シグナル伝達の構成的活性化は同様にT細胞リンパ腫を生じ、このことは、その原因としての役割を示唆するものである(Robey et al., 1996, Cell 87:483-92; Pear et al., 1996, J. Exp. Med. 183:2283-91; Yan et al., 2001, Blood 98:3793-9; Bellavia et al., 2000, EMBO J. 19:3337-48)。最近、異常なNOTCH1シグナル伝達をもたらすNOTCH1の点突然変異、挿入、および欠失が、小児と成人の両方のT細胞性急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫において高い頻度で存在していることが見出されている(Pear & Aster, 2004, Curr. Opin. Hematol. 11:416-33)。
【0071】
乳腺腫瘍においてNotch1およびNotch4の両遺伝子座にマウス乳癌ウイルスが頻繁に挿入されており、得られた活性化Notchタンパク質断片が、Notchシグナル伝達を乳癌に最初に結び付けるものであった(Gallahan & Callahan, 1987, J. Virol 61:66-74; Brennan & Brown, 2003, Breast Cancer Res. 5:69; Politi et al., 2004, Semin. Cancer Biol. 14:341-7)。トランスジェニックマウスにおけるさらなる研究から、正常な乳腺発達の間の管分岐におけるNotchの役割が確認されており、乳房上皮細胞でのNotch4の構成的活性化型は上皮分化を阻害し、腫瘍形成を引き起こす(Jhappan et al., 1992, Genes & Dev. 6:345-5; Gallahan et al., 1996, Cancer Res. 56:1775-85; Smith et al., 1995, Cell Growth Differ. 6:563-77; Soriano et al., 2000, Int. J. Cancer 86:652-9; Uyttendaele et al., 1998, Dev. Biol 196:204-17; Politi et al., 2004, Semin. Cancer Biol. 14:341-7)。現在、ヒト乳癌におけるNotchの役割に関する根拠は、乳癌におけるNotch受容体の発現および臨床転帰とのその相関関係に限定されている(Weijzen et al., 2002, Nat. Med. 8:979-86; Parr et al., 2004, Int. J. Mol. Med. 14:779-86)。さらに、Notch経路の過剰発現が子宮頸癌(Zagouras et al., 1995, PNAS 92:6414-8)、腎細胞癌(Rae et al., 2000, Int. J. Cancer 88:726-32)、頭頸部扁平上皮癌(Leethanakul et al., 2000, Oncogene 19:3220-4)、子宮内膜癌(Suzuki et al., 2000, Int. J. Oncol. 17:1131-9)、および神経芽細胞腫(van Limpt et al., 2000, Med. Pediatr. Oncol. 35:554-8)において認められており、いくつかの新生物の発生におけるNotchの潜在的な役割を示している。興味深いことに、Notchシグナル伝達は結腸のApc変異体新生細胞の未分化状態の維持に関与している可能性がある(van Es & Clevers, 2005, Trends Mol. Med. 11:496-502)。
【0072】
Notch経路は同様に、増殖、移動、平滑筋分化、血管形成、および動脈-静脈分化を含む血管発生の複数の局面に関与している(Iso et al., 2003, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 23:543)。例えば、Notch-1/4およびJagged-1でのホモ接合性のヌル突然変異ならびにDll4のヘテロ接合性の喪失は動脈の発生および卵黄嚢血管形成における深刻な、しかし可変的な欠陥を引き起こす。さらに、Dll1欠損およびNotch-2低形質のマウス胚は、血管構造の発生不良から生じる可能性が高い出血を示す(Gale et al., 2004, PNAS, 101:15949-54; Krebs et al., 2000, Genes Dev. 14:1343-52; Xue et al., 1999, Hum. Mel Genet. 8:723-30; Hrabe de Angelis et al., 1997, Nature 386:717-21; McCright et al., 2001, Dev. 128:491-502)。ヒトの場合、JAGGED1における突然変異は、血管障害を含む発達障害であるアラジール症候群と関係しており、NOTCH3における突然変異は、血管恒常性に欠陥のある遺伝性血管性認知症(CADASIL)に関与している(Joutel et al., 1996, Nature 383:707-10)。
【0073】
DLL4が正常乳房上皮と比べて癌幹細胞において発現されていることが同定され、非腫瘍形成性癌細胞の大部分だけでなく固形腫瘍の形成および再発に関与する腫瘍形成性細胞の除去のためにもNotch経路が標的となることが示唆された。さらに、腫瘍の形成および維持における血管形成の重要な役割のため、DLL4に対する抗体によりNotch経路を標的化することで、血管形成を効果的に阻害し、癌から栄養素を奪い、その除去に寄与することもできる。
【0074】
このように本発明は、その発現を分析することにより、癌に関連した疾患を診断またはモニターすることができるような、癌幹細胞マーカーを提供する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーの発現は、例えば癌幹細胞マーカーをコードするmRNAなどのポリヌクレオチド発現によって、決定される。ポリヌクレオチドは、当業者に周知の多数の任意の手段により、検出および定量することができる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーをコードするmRNAは、例えば患者の生検からの組織分画のインサイチューハイブリダイゼーションによって検出される。いくつかの態様では、RNAを組織から単離し、例えばノーザンブロット、定量的RT-PCR、またはマイクロアレイによって検出する。例えば、全RNAを組織試料から抽出し、特異的にハイブリダイズして癌幹細胞マーカーを増幅するプライマーを用いて、癌幹細胞マーカーポリヌクレオチドの発現を、RT-PCRを用いて検出することができる。
【0075】
ある態様では、癌幹細胞マーカーの発現を、対応するポリペプチドの検出により、決定することができる。当業者に周知の多くの任意の手段により、ポリペプチドを検出し定量することができる。いくつかの態様では、例えば電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)のような分析的生化学的方法を用いて、癌幹細胞マーカーポリペプチドを検出する。単離したポリペプチドを、標準技術によって配列決定することもできる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカータンパク質を、タンパク質に対して作製された抗体により、例えば、組織片への免疫蛍光法または免疫組織化学を用いて検出する。または、癌幹細胞マーカーに対する抗体により、例えば、ELISA、FACS、ウエスタンブロット、免疫沈降法またはタンパク質マイクロアレイを用いて、発現を検出することができる。例えば、癌幹細胞を患者の生検から単離し、FACSを用いて、癌幹細胞マーカータンパク質の発現を、蛍光標識抗体により検出することができる。別の方法では、インビボにおいて、標識抗体を用いて癌幹細胞マーカーを発現する細胞を典型的な画像システム中で検出することができる。例えば、常磁性同位体で標識された抗体を、磁気共鳴イメージング(MRI)に用いることができる。
【0076】
本発明のいくつかの態様では、診断用分析は、例えば免疫組織化学、インサイチューハイブリダイゼーションまたはRT-PCRを用いて、腫瘍細胞中の癌幹細胞マーカーの発現の有無を決定することを含む。他の態様では、診断用分析は、例えば定量的RT-PCRを用いて癌幹細胞マーカーの発現レベルを決定することを含む。いくつかの態様では、診断用分析は、例えば正常な上皮などの対照組織と比較して、癌幹細胞マーカーの発現レベルを決定することをさらに含む。
【0077】
癌幹細胞マーカー発現の検出を用いて、次に予後診断を提供し、治療法を選択することができる。予後診断は、癌幹細胞マーカーが表示できる任意の公知の危険表現に基づくことができる。さらに、癌幹細胞マーカーの検出を用いて、例えば検出された癌幹細胞マーカータンパク質に対する抗体による処置を含む、適切な治療法を選択することができる。ある態様では、抗体は、Notch受容体リガンドDLL4のような癌幹細胞マーカータンパク質の細胞外ドメインへ特異的に結合する。
【0078】
本発明の文脈においては、適切な抗体は、例えば以下の効果の一つまたは複数を有しうる作用物質である:癌幹細胞マーカーの発現の妨害;例えば癌幹細胞マーカーと、そのリガンド、受容体または共受容体との間の相互作用を立体的に阻害することによる、癌幹細胞シグナル伝達経路活性化の妨害; 例えばリガンドとして働くかまたは内在的なリガンドの結合を促進することによる、癌幹細胞シグナル伝達経路の活性化;あるいは、癌幹細胞マーカーへの結合および、腫瘍細胞増殖の阻害。
【0079】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、細胞外で作用して、癌幹細胞マーカータンパク質の機能を調節する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体の細胞外の結合は、例えば、癌幹細胞マーカーの内因性の活性化(例えばキナーゼ活性)を阻害することにより、および/または、例えば、癌幹細胞マーカーの、リガンドとの、受容体との、共受容体との、または細胞間マトリックスとの相互作用を立体的に阻害することにより、癌幹細胞マーカータンパク質のシグナル伝達を阻害することができる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体の細胞外の結合は、例えば、癌幹細胞マーカータンパク質の内在化、または癌幹細胞マーカーの細胞表面輸送の減少などによって、癌幹細胞マーカーの細胞表面発現をダウンレギュレーションすることができる。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体の細胞外の結合は例えば、おとりのリガンドとして働いて、またはリガンド結合を増加させて、癌幹細胞マーカータンパク質のシグナル伝達を促進することができる。
【0080】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質に結合して、以下の効果の一つまたは複数を有する:腫瘍細胞の増殖を阻害する、腫瘍細胞の細胞死を引き起こす、腫瘍形成性の低い細胞型へと腫瘍細胞が分化するのを促進するまたは腫瘍細胞の転移を妨げる。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、結合されている毒素、化学療法剤、放射性同位元素、または他のそのような薬剤により細胞死を引き起こす。例えば、癌幹細胞マーカーに対する抗体は毒素に結合されており、それがタンパク質内在化により、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍細胞中で活性化される。
【0081】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、癌幹細胞マーカータンパク質を発現している細胞の細胞死を、抗体依存性細胞性細胞障害性(ADCC)によって媒介する。ADCCは、抗体のFc部分を認識するエフェクター細胞による細胞溶解を伴う。例えば多くのリンパ球、単球、組織マクロファージ、顆粒球、および好酸球は、Fc受容体を有しており、細胞溶解を媒介することができる(Dillman, 1994, J. Clin. Oncol. 12:1497)。
【0082】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、補体依存性細胞障害性(CDC)を活性化することによって、癌幹細胞マーカータンパク質を発現している細胞の細胞死を引き起こす。CDCは、血清補体の抗体Fc部分への結合、およびそれに続く補体タンパク質カスケードの活性化を伴い、細胞膜損傷および最終的な細胞死に帰着する。抗体の生物活性は、抗体分子の不変領域、即ちFc領域によって大部分が決定されることが知られている(Uananue and Benacerraf, Textbook of Immunology, 2nd Edition, Williams & Wilkins, p. 218 (1984))。異なるクラスおよびサブクラスの抗体はこの点で異なる。同じサブクラスのしかし異なる種からの抗体も同様である。ヒト抗体のうち、IgMは、最も効率的に補体と結合するクラスの抗体であり、IgG1、IgG3およびIgG2がこれに続く。しかしIgG4は、補体カスケードの活性化が全くできないようである(Dillman, 1994, J. Clin. Oncol. 12:1497; Jefferis et al., 1998, Immunol. Rev. 163:59-76)。本発明により、所望の生物活性を有するクラスの抗体が調製される。
【0083】
癌幹細胞に対する任意の特定の抗体が補体活性化および/またはADCCによる標的細胞溶解を媒介する能力を分析することができる。関心対象の細胞を、インビトロで成長させて標識する;抗体を、抗原抗体複合体によって活性化される血清補体または免疫細胞と一緒に、細胞培養液に加える。標的細胞の細胞溶解は、例えば溶解された細胞からの標識の放出によって検出される。実際、患者自身の血清を補体および/または免疫細胞の供給源として用いて、抗体をスクリーニングすることができる。インビトロの試験で補体を活性化することができるまたはADCCを媒介できる抗体を、次にその特定の患者で治療に用いることができる。
【0084】
ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、血管形成を阻害する細胞死を引き起すことができる。血管形成は、既存の血管から新しい血管が形成されるプロセスであり、例えば胚発生、創傷治癒の間の、および排卵に応答した、正常な成長に必要な基本的プロセスである。1〜2mm
2を上回る充実性腫瘍の成長もまた、栄養源および酸素を供給するために血管形成を必要とし、それがなければ腫瘍細胞は死滅する。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、例えば内皮細胞、平滑筋細胞を含む、癌幹細胞マーカーを発現する血管細胞または血管の構築に必要な細胞間マトリックス成分を標的とする。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体は、血管細胞の補充、構築、維持、または生存に必要な成長因子シグナル伝達を阻害する。
【0085】
癌幹細胞マーカーに対する抗体は、本明細書に記載される診断および治療方法での用途が見出される。ある態様では、例えば患者の組織生検、胸水または血液試料などの生体試料中の癌幹細胞マーカータンパク質の発現を検出するために、本発明の抗体を用いる。組織生検を切片にし、例えば免疫蛍光法または免疫組織化学を用いて、タンパク質を検出することができる。さらに試料から個々の細胞を単離し、次に固定したまたは生きた細胞で、FACS分析によってタンパク質発現を検出することができる。ある態様では、抗体をタンパク質アレイ上で用いて、癌幹細胞マーカーの発現を、例えば腫瘍細胞上で、細胞溶解物中で、または他のタンパク質試料中で検出することができる。ある態様では、インビトロの細胞ベースの分析法、インビボの動物モデルなどにおいて抗体を腫瘍細胞と接触させることにより、本発明の抗体を用いて腫瘍細胞の成長を阻害する。ある態様では、癌幹細胞マーカーに対して治療的有効量の抗体を投与することによって、抗体を用いて患者の癌を処置する。
【0086】
本発明の抗体は、当技術分野で公知の任意の従来手段により調製することができる。例えば、キーホールリンペットヘモシニアン(KLH)、血清アルブミンなどに任意で結合され、滅菌食塩水で希釈され、アジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)と組み合わせて安定した乳剤に形成された、関連の抗原(精製されたペプチド断片、全長の組換えタンパク質、融合タンパク質など)の複数回の皮下または腹腔内注射によって、動物(例えばウサギ、ラット、マウス、ロバなど)を免疫することにより、ポリクローナル抗体を調製することができる。次に、そのように免疫された動物の血液、腹水などからポリクローナル抗体を回収する。集めた血液を凝結させ、血清をデカントし、遠心分離によって透明にして、抗体価を分析する。ポリクローナル抗体を血清または腹水から、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などを含む当技術分野の標準的方法によって精製することができる。
【0087】
モノクローナル抗体を、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495によって記載されたハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法を用いて、マウス、ハムスターまたは他の適当な宿主動物を、上述のように免疫し、免疫に用いた抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生を誘発させる。リンパ球はまた、インビトロで免疫することもできる。免疫化に続いてリンパ球を単離し、例えば、ポリエチレングリコールを用いて適当なミエローマ細胞系と融合させてハイブリドーマ細胞を形成させ、それらを次に、融合していないリンパ球およびミエローマ細胞から分離して、選択することができる。免疫沈降、免疫ブロッティング、またはインビトロの結合分析(例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着分析(ELISA))によって決定される、選択された抗原に特異的に指向されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、次に標準的方法(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, 1986)を用いるインビトロの培養で、またはインビボで動物中の腹水癌として、増殖させることができる。次に、モノクローナル抗体を、ポリクローナル抗体について上述したように、培養培地または腹水から精製することができる。
【0088】
または、モノクローナル抗体を、米国特許第4,816,567号に記載されている組換えDNA法を用いて作製することができる。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを用いるRT-PCRなどによって単離し、それらの配列を従来の手続きを用いて決定する。単離された重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、次に、適当な発現ベクター中へクローニングし、それを、さもなくば免疫グロブリンタンパク質を産生することのない大腸菌(E. coli)細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはミエローマ細胞などの宿主細胞へトランスフェクションすれば、宿主細胞はモノクローナル抗体を産生する。さらに、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはその断片を、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリーから、記載されたように(McCafferty et al., 1990, Nature, 348:552-554; Clackson et al, 1991, Nature, 352:624-628; およびMarks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581-597)単離することができる。
【0089】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを、組換えDNA技術を用いる多数の異なる手法で修飾して、別の抗体を生成することができる。いくつかの態様では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常領域を、1) キメラ抗体を生成するために、例えばヒト抗体の定常領域と、あるいは 2) 融合抗体を生成するために非免疫グロブリンポリペプチドと、置換することができる。いくつかの態様では、定常領域を切り詰めるかまたは除去して、モノクローナル抗体の所望の抗体断片を生成する。可変領域の部位特異的または高密度突然変異生成を用いて、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0090】
本発明のいくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対するモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト(例えばマウス)抗体からの最小の配列を可変領域内に含む抗体である。そのような抗体を治療的に用いて、ヒト被験体に投与したときの抗原性およびHAMA (ヒト抗マウス抗体)応答を低下させる。実際には、ヒト化抗体は、典型的には非ヒト配列が最小であるか存在しないヒト抗体である。ヒト抗体は、ヒトによって産生された抗体、またはヒトによって産生された抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。
【0091】
当技術分野で公知の様々な技術を用いて、ヒト化抗体を産生することができる。(Jones et al., 1986, Nature, 321:522-525; Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-327; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534-1536)の方法に従って、ヒト抗体のCDRを、所望の特異性、親和性、および能力を有する非ヒト抗体(例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)のCDRと置換することにより、抗体をヒト化することができる。可変ヒトフレームワーク領域中および/または置き換えられた非ヒト残基内のさらなる残基の置換によって、ヒト化抗体をさらに修飾し、抗体特異性、親和性、および/または能力を改善し、最適化することができる。
【0092】
ヒト化抗体を作製する際に使用されるヒト重鎖および/または軽鎖可変ドメインの選択は、抗原性を低減するのに重要でありうる。「最良適合」法によれば、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメインアミノ酸配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。したがって、ある態様において、CDRを入手したげっ歯類抗体のアミノ酸配列に対して最も高い相同性を有するヒトアミノ酸配列を、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として使用する(Sims et al., 1993, J. Immunol, 151 : 2296; Chothia et al., 1987, J. Mol. Biol., 196:901)。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定の部分群の全ヒト抗体の共通配列に由来する特定のFRを使用し、かつこれをいくつかの異なるヒト化抗体のために使用することができる(Carter et al., 1992, PNAS, 89;4285; Presta et al., 1993, J. Immunol., 151:2623)。ある態様において、方法の組み合わせを使ってヒト可変FRを選抜し、ヒト化抗体の作製に用いる。
【0093】
ヒト化される抗体(例えば、げっ歯類)は抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持していなければならないことが、さらに理解されよう。この目標を達成するため、ヒト化されるげっ歯類抗体由来の親配列および種々の候補ヒト化配列の解析の過程によって、ヒト化抗体を調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルが利用可能であり、かつ当業者によく知られている。コンピュータプログラムを用いて、選択した候補抗体配列の予想される三次元立体構造を例示および表示することができる。そのようなモデルを用いることで、残基の、ヒト化される抗体の機能における可能性の高い役割の解析、すなわち、候補抗体がその抗原に結合する能力に影響を与える残基の解析が可能になる。このようにして、所望の抗体特性が達成されるように、FR残基を親抗体から選択して受容ヒト化抗体に結合させることができる。一般に、抗原決定領域のCDR (すなわち超可変領域)中の残基は、抗原結合用のヒト化抗体において親抗体(例えば、所望の抗原結合特性を有するげっ歯類抗体)から保持されている。ある態様において、可変FR内の少なくとも1つのさらなる残基がヒト化抗体において親抗体から保持されている。ある態様において、可変FR内の最大6つのさらなる残基がヒト化抗体において親抗体から保持されている。
【0094】
免疫グロブリンの成熟重鎖および成熟軽鎖の可変領域由来のアミノ酸は、それぞれHxおよびLxと表され、ここでxは、Kabatのスキーム(Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1987, 1991)にしたがってアミノ酸の位置を指定する番号である。Kabatは各部分群の抗体に対する多くのアミノ酸配列を列挙し、共通配列を作製するために該部分群における各残基位置に最も一般的に存在するアミノ酸を列挙している。Kabatは、列挙した配列中の各アミノ酸に残基番号を割り当てるための方法を使用し、残基番号を割り当てるための方法は該分野において標準となっている。保存アミノ酸を参照してKabatにおける共通配列の1つと問題の抗体とを整列することによって、Kabatのスキームをその概論に含まれていない他の抗体にも拡張することができる。Kabat番号付与システムを用いることで、異なる抗体における等価な位置のアミノ酸が容易に同定される。例えば、ヒト抗体のL50位のアミノ酸は、マウス抗体のアミノ酸位L50と同等の位置を占める。さらに、例えば同一性の割合を判定するため、一方の抗体配列中の各アミノ酸がもう一方の配列中の同じKabat数を有するアミノ酸と整列するようにKabat番号付与システムを用いることにより、任意の二つの抗体配列を一意的に整列させることができる。整列後、対象抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の成熟可変領域全体)を参照抗体の同一領域と比較する場合には、対象抗体領域と参照抗体領域との間の%配列同一性とは、対象抗体領域と参照抗体領域の両方において同じアミノ酸が占める位置の数をこの二つの領域の整列位置の総数(ギャップはカウントしない)で割り、100を乗じて割合に変換したものである。
【0095】
以下の実施例1では、本開示の癌幹細胞マーカーである、ヒトDLL4に特異的に結合する例示的なヒト化抗DLL4抗体(2007年5月10日付で寄託した21M18 H9L2, ATCC寄託番号PTA-8427および21M18 H7L2, ATCC寄託番号PTA-8425; (American Type Culture Collection (ATCC) 10801 University Blvd., Manassas, VA 20110-2209 USA))の産生について説明する。ある態様において、ヒト化抗体は、マウスモノクローナル抗体21M18に由来する非ヒト抗原決定領域を含む。具体的には、ある態様において、親げっ歯類抗体由来の重鎖CDR、つまりCDR1 (SEQ ID NO: 1)、CDR2 (Kabat位置52aで異なるSEQ ID NO: 2; SEQ ID NO: 3; もしくはSEQ ID NO: 4)、およびCDR3 (SEQ ID NO: 5)の1つまたは複数がヒト化21M18抗体において保持される。ある態様において、親げっ歯類抗体由来の軽鎖CDR、つまりCDR1 (SEQ ID NO: 9)、CDR2 (SEQ ID NO: 10)、およびCDR3 (SEQ ID NO: 11)の1つまたは複数がヒト化21M18抗体において保持される。ある態様において、ヒト化抗体は、重鎖または軽鎖のいずれかのヒト可変領域中に少なくとも1つのFR置換をさらに含む。
【0096】
ある態様において、本発明は、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体を提供し、該抗体は腫瘍の増殖に影響を与える。ある態様において、ヒト化抗体は無傷のIgG抗体である。ある態様において、ヒト化抗体は無傷のIgG
2抗体である。ある態様において、ヒト化抗体は抗体断片である。ある態様において、ヒト化抗体はFab断片である。
【0097】
ある態様において、本発明のヒト化抗体は、非ヒト抗原決定領域およびヒト可変フレームワーク領域を含んだ重鎖可変(V
H)領域を含む。ある態様において、非ヒト抗原決定領域はげっ歯類起源の相補性決定領域(CDR)を含む。ある態様において、非ヒト抗原決定領域はマウス抗体由来のCDRを含む。ある態様において、げっ歯類CDRはモノクローナル抗体21M18に由来し、ここで21M18はSEQ ID NO: 6と称する重鎖可変領域を含む。ある態様において、ヒト化抗体は、(a) CDR1 (SEQ ID NO: 1)、CDR2 (SEQ ID NO: 2; SEQ ID NO: 3; もしくはSEQ ID NO: 4)、およびCDR3 (SEQ ID NO: 5)または(b) SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7もしくはSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列を含んだV
H領域を含む。
【0098】
ある態様において、ヒト重鎖可変フレームワーク領域は発現ヒト配列を含む。ある態様において、ヒト可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が置換される。ある態様において、Kabat番号付与システムに基づき、ヒト重鎖可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が、残基番号16、20、27、28、38、および48からなる群より選択される位置にある。ある態様において、Kabat番号付与システムに基づき、残基番号16、20、27、28、38、および48の位置が置換される。ある態様において、ヒト可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が、非ヒト抗原決定領域を含む抗体中の対応する位置を占める残基と置換される。
【0099】
ある態様において、ヒト重鎖可変フレームワーク領域はIGH(V)1-18を含む。ある態様において、ヒト可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が置換される。ある態様において、Kabat番号付与システムに基づき、ヒト重鎖可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が、残基番号20H、28H、38H、48H、および69Hからなる群より選択される位置にある。ある態様において、Kabat番号付与システムに基づき、残基番号20H、28H、38H、48H、および69Hの位置が置換される。ある態様において、ヒト可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が、非ヒト抗原決定領域を含む抗体中の対応する位置を占める残基と置換される。
【0100】
ある態様において、本発明のヒト化抗体は、非ヒト抗原決定領域およびヒト可変フレームワーク領域を含んだ軽鎖可変(V
L)領域を含む。ある態様において、非ヒト抗原決定領域はげっ歯類起源のCDRを含む。ある態様において、非ヒト抗原決定領域はマウス抗体由来のCDRを含む。ある態様において、CDRはモノクローナル抗体21M18に由来し、ここで21M18はSEQ ID NO: 12と称するV
L領域を含む。ある態様において、V
L領域は、(a) CDR1 (SEQ ID NO: 9)、CDR2 (SEQ ID NO: 10)、およびCDR3 (SEQ ID NO: 11)または(b) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列を含む。
【0101】
ある態様において、ヒト軽鎖可変フレームワーク領域はIGK(V)4-1を含む。ある態様において、ヒト軽鎖可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が置換される。ある態様において、Kabat番号付与システムに基づき、ヒト可変フレームワーク領域中の少なくとも1つの残基が、位置22Lおよび36Lからなる群より選択される位置にある。ある態様において、Kabat番号付与システムに基づき、位置22Lおよび36Lの位置が置換される。ある態様において、ヒト可変フレームワーク領域由来の少なくとも1つの残基が、非ヒト抗原決定領域を含む抗体中の対応する位置を占める残基と置換される。
【0102】
ある態様において、本発明の抗体は、ヒトDLL4への特異的結合について抗体21M18と競合する抗体であり、ここで21M18抗体は(a) SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7またはSEQ ID NO: 8と称する可変領域を有する重鎖および(b) SEQ ID NO: 12と称する可変領域を有する軽鎖を含む。ある態様において、抗体はヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0103】
ある態様において、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSLドメイン(SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体は、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、またはSEQ ID NO: 8に対し少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域およびSEQ ID NO: 12に対し少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、重鎖可変領域はSEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、またはSEQ ID NO: 8に対し少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 12に対し少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、重鎖可変領域はSEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、またはSEQ ID NO: 8に対し少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ軽鎖可変領域はSEQ ID NO: 12に対し少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0104】
ある態様において、本発明は、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体をコードする単離ポリヌクレオチド分子を提供し、該抗体は、CDR1 (SEQ ID NO: 1); CDR2 (SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3もしくはSEQ ID NO: 4); およびCDR3 (SEQ ID NO: 5)をコードする非ヒト抗原決定領域ならびにIGH(V)1-18をコードするヒト可変フレームワーク領域を含んだV
H領域を含む。ある態様において、本発明は、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体をコードする単離ポリヌクレオチド分子を提供し、該ポリヌクレオチド分子は、(a) SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 7、またはSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド分子および(b) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で(a)によるポリヌクレオチド分子の相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド分子からなる群より選択される。ある態様において、本発明は、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体をコードする単離ポリヌクレオチド分子を提供し、該ポリヌクレオチド分子は、(a) SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 14、またはSEQ ID NO: 15および(b) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で(a)によるポリヌクレオチド分子の相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド分子からなる群より選択される。
【0105】
ある態様において、本発明は、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体をコードする単離ポリヌクレオチド分子を提供し、該抗体は、CDR1 (SEQ ID NO: 9); CDR2 (SEQ ID NO: 10); およびCDR3 (SEQ ID NO: 11)をコードする非ヒト抗原決定領域ならびにIGK(V)4-1を含むヒト可変フレームワーク領域を含んだV
L領域を含む。ある態様において、本発明は、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体をコードする単離ポリヌクレオチド分子を提供し、該ポリヌクレオチド分子は、(a) SEQ ID NO: 12のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド分子および(b) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で(a)によるポリヌクレオチド分子の相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド分子からなる群より選択される。ある態様において、本発明は、ヒトDLL4 N末端領域(SEQ ID NO: 27)およびヒトDSL (SEQ ID NO: 26)の組み合わせによって形成されるヒトDLL4エピトープに特異的に結合するヒト化抗体をコードする単離ポリヌクレオチド分子を提供し、該ポリヌクレオチド分子は、(a) SEQ ID NO: 16および(b) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で(a)によるポリヌクレオチド分子の相補体にハイブリダイズするポリヌクレオチド分子からなる群より選択される。
【0106】
ある態様において、本発明の単離ポリヌクレオチド分子を含む発現ベクターが提供される。ある態様において、本発明の単離ポリヌクレオチド分子を含む発現ベクターを含んだ宿主細胞が提供される。
【0107】
ある態様において、本発明は、本開示のヒト化抗体の治療上有効量を患者に投与する段階を含む、患者における癌を処置する方法を提供する。ある態様において、癌は乳癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、または頭頸部癌を含む。
【0108】
ある態様において、本発明は、容器およびその中に含有されている組成物を含むキットを提供し、該組成物は、本開示のヒト化抗体を含み、かつ、この組成物を用いて癌を処置できることを示す添付文書をさらに含む。
【0109】
さらに、完全(fully)ヒト抗体を、当技術分野で公知の様々な技術を用いて直接調製することができる。標的抗原に向けられた抗体を産生する、インビトロで免疫された、または免疫された個人から単離された、不死化ヒトBリンパ球を生成することができる(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985); Boemer et al., 1991, J. Immunol., 147 (1):86-95; および米国特許第5,750,373号を参照のこと)。さらに、ヒト抗体を、ヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択することができる(Vaughan et al., 1996, Nat. Biotech., 14:309-314; Sheets et al., 1998, Proc. Nat'l. Acad. Sci., 95: 6157-6162; Hoogenboom and Winter, 1991, J. Mol Biol., 227:381; Marks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581)。免疫されると、内在的免疫グロブリン産生が存在しない状態でヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む遺伝子組換えマウス中で、ヒト抗体を作製することもまた可能である。この手法は、米国特許第5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;および5,661,016号に記載されている。
【0110】
本発明はまた、特異的に癌幹細胞マーカーを認識する二重特異性抗体を包含する。二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なるエピトープを特異的に認識し、結合することができる抗体である。異なるエピトープは、同じ分子内(例えば同じ癌幹細胞マーカーポリペプチド)に存在しても良いし、あるいは異なる分子の上に存在して、例えば抗体は、癌幹細胞マーカー、ならびに、例えば、1) T細胞受容体(例えばCD3)またはFc受容体(例えばCD64、CD32、もしくはCD16)などの、白血球上のエフェクター分子、あるいは 2) 詳細に下に記載する細胞障害性作用物質の両方を特異的に認識し結合することができる。二重特異性抗体は、無傷の抗体または抗体断片でよい。
【0111】
例示的な二重特異性抗体は二つの異なるエピトープに結合することができ、その内の少なくとも一つは本発明のポリペプチドに由来する。または、免疫グロブリン分子の抗抗原アームを、T細胞受容体分子(例えばCD2、CD3、CD28またはB7)、またはIgGへのFc受容体などの、白血球上の引き金分子に結合するアームと組み合わせて、細胞の防衛機構を特定の抗原を発現する細胞へ集中させるようにすることができる。さらに二重特異性抗体を用いて、細胞障害性作用物質を、特定の抗原を発現する細胞に指向させることもできる。これらの抗体は、抗原を結合するアーム、およびEOTUBE、DPTA、DOTAまたはTETAなどの、細胞障害性作用物質または放射性核種キレート剤を結合するアームを所持する。二重特異性抗体を作製するための技術は、当技術分野において一般的なものである(Millstein et al., 1983, Nature 305:537-539; Brennan et al., 1985, Science 229:81; Suresh et al, 1986, Methods in Enzymol. 121:120; Traunecker et al., 1991, EMBO J. 10:3655-3659; Shalaby et al., 1992, J. Exp. Med. 175:217-225; Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547-1553; Gruber et al., 1994, J. Immunol. 152:5368; および米国特許第5,731,168号)。2以上の価数を有する抗体もまた意図する。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991))。
【0112】
ある態様では、例えば腫瘍浸透性を増大させるための抗体断片が提供される。抗体断片の産生のための様々な技術が公知である。従来から、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク質消化によって導出されている(例えば、Morimoto et al., 1993, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117; Brennan et al., 1985, Science, 229:81)。ある態様では、抗体断片は組換えによって産生される。Fab、Fv、およびscFv抗体断片を、すべて大腸菌または他の宿主細胞で発現させ、分泌させることができ、したがって、これらの断片の大量産生が可能である。そのような抗体断片を、上に議論した抗体ファージライブラリーから単離することもできる。抗体断片はまた、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているように直鎖状抗体であってもよく、またそれは単一特異性、もしくは二重特異性であってよい。抗体断片産生のための他の技術は、当業者には明白であろう。
【0113】
本発明によれば、本技術を、本発明のポリペプチドに特異的な一本鎖抗体の産生に適合させることができる(米国特許第4,946,778号参照)。さらに、本方法を、Fab発現ライブラリー(Huse, et al., Science 246:1275-1281 (1989))の構築に適合させて、Notch受容体リガンドDLL4またはその誘導体、断片、もしくはホモログに対して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ有効な同定を可能にすることができる。本発明のポリペプチドに対するイディオタイプを含む抗体断片を、(a) 抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab')2断片;(b) F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成されるFab断片;(c) 抗体分子のパパインおよび還元剤による処理によって生成されるFab断片、および(d) Fv断片を非限定的に含む、当技術分野の技術によって産生することができる。
【0114】
特に抗体断片の場合には、その血清半減期を増大させるために抗体を修飾することがさらに望ましい可能性がある。これは例えば、抗体断片中の適当な領域の突然変異による、抗体断片中へのサルベージ受容体結合エピトープの組み込みにより、あるいは、ペプチドタグにエピトープを組み入れて、それを次に抗体断片のいずれかの端にまたは中間に(例えばDNAまたはペプチド合成によって)融合することにより、行うことができる。
【0115】
ヘテロ結合抗体もまた、本発明の範囲内である。ヘテロ結合抗体は、共有結合した二つの抗体から成る。そのような抗体は、例えば免疫細胞が望ましくない細胞を標的とするように提唱された(米国特許第4,676,980号)。架橋剤を必要とする方法を含む、合成タンパク質化学で公知の方法を用いて、抗体を、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエテール結合を形成させて、免疫毒素を構築することができる。この目的に適している試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0116】
本発明の目的のためには、修飾抗体が、抗体とヒトDLL4のポリペプチドとの会合を提供する任意の型の可変領域を含むことができることが認識されよう。この点で、可変領域は、液性応答の開始および所望の腫瘍に関連する抗原に対する免疫グロブリンの生成を誘起することができる、任意の型の哺乳動物からなるかまたは由来するものであってよい。このように、修飾抗体の可変領域は、例えばヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル、マカクなど)またはオオカミ起源であり得る。いくつかの態様では、修飾された免疫グロブリンの可変および定常領域の両方がヒト由来である。他の態様では、適合性を有する抗体(通常非ヒト供給源に由来する)の可変領域を操作するかまたは特異的に調整して、結合特性を改善するかまたは分子の免疫原性を減少させることができる。この点に関して、移入されたアミノ酸配列を含めることにより、本発明に役立つ可変領域をヒト化するかまたはそうでなければ改変することができる。
【0117】
重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインを、一つまたは複数のCDRの少なくとも一部の置き換えによって、また必要な場合には、部分的なフレームワーク領域の置き換えおよび配列変更によって改変する。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラスまたはさらに同じサブクラスの抗体に由来してもよいが、CDRが異なるクラスの抗体、好ましくは異なる種からの抗体に由来することが想定される。一つの可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すためには、CDRの全てを、供与側の可変領域からの完全なCDRで置き換えることは必要でない可能性がある。むしろ、抗原結合部位の活性を維持するのに必要な残基を移すことのみが必要な可能性がある。米国特許第5,585,089号、第5,693,761号および第5,693,762号で述べられた説明を考慮すれば、型通りの実験作業を行なって、または試行錯誤によって、減少した免疫原性を有する機能的な抗体を得ることは、十分に当業者の能力内のことであろう。
【0118】
可変領域の改変にかかわらず、本発明の修飾抗体が、天然または未改変の定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較した場合に、腫瘍局在化の増大または血清半減期の減少などの望ましい生化学的特性を提供するように、抗体または、一つもしくは複数の定常領域ドメインの少なくとも何分の一かが除去されたかさもなくば改変されたその免疫反応性断片を含むことを、当業者は認識するであろう。いくつかの態様では、修飾抗体の定常領域は、ヒト定常領域を含む。本発明に適合する定常領域の修飾は、一つまたは複数のドメインにおける一つまたは複数のアミノ酸の追加、欠失、または置換を含む。即ち、本明細書に開示される修飾抗体は、三つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)の一つまたは複数の、および/または軽鎖定常部(CL)の、改変または修飾を含んでよい。本発明のいくつかの態様では、一つまたは複数のドメインが部分的にまたは完全に欠失された、修飾定常領域を意図する。いくつかの態様では、修飾抗体は、CH2ドメイン全体が除かれたドメイン欠失構築物または変異体(ΔCH2構築物)を含む。いくつかの態様では、除去される定常領域ドメインは、短いアミノ酸スペーサー(例えば10残基の)と置換され、それは通常は定常領域(この場合は存在しない)によって与えられる分子的柔軟性のいくらかを提供する。
【0119】
それらの形状の他に、定常領域がいくつかのエフェクター機能を媒介することが当技術分野において公知である。例えば、抗体への補体C1成分の結合は、補体系を活性化する。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解に重要である。補体の活性化はまた炎症反応を刺激し、自己免疫過敏症に関係し得る。さらに、抗体は、Fc領域を介して細胞に結合し、この時抗体Fc領域上のFc受容体結合部位が、細胞上のFc受容体(FcR)へ結合している。IgG (γ受容体)、IgE (η受容体)、IgA (α受容体)およびIgM (μ受容体)を含む、種々のクラスの抗体に特異的な多数のFc受容体が存在する。細胞表面上のFc受容体への抗体の結合は、抗体に覆われた粒子の飲込みおよび破壊、免疫複合体の除去、抗体に覆われた標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介細胞障害性、またはADCCと呼ばれる)、炎症伝達因子の放出、胎盤通過および免疫グロブリン産生の制御を含む、キラー細胞による多くの重要で多様な生体応答を引き起こす。様々なFc受容体および受容体部位がある程度研究されてきたが、それらの位置、構造、および機能に関して、依然として多くで未知である。
【0120】
本発明の範囲を限定するわけではないが、本明細書に記載するように修飾された定常領域を含む抗体は改変されたエフェクター機能を提供し、それが次に、投与された抗体の生物学的プロファイルに影響を与えると考えられる。例えば、定常領域ドメインの欠失または不活性化(点突然変異または他の手段による)は、循環している修飾抗体のFc受容体への結合を減少させ、そのために腫瘍への局在化を増大させる可能性がある。他の場合では、本発明に適合した定常領域の修飾は、補体結合を調節し、したがって血清半減期および結合された細胞毒素の非特異的結合を減少させると考えられる。定常領域のさらに他の修飾を用いて、ジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を除去することができ、これによって、増大した抗原特異性または抗体柔軟性により、局在化を促進することができる。同様に、本発明による定常領域の修飾を、完全に当業者の範囲内の周知の生化学的技術または遺伝子操作技術を用いて容易に行うことができる。
【0121】
修飾抗体を操作して、CH3ドメインをそれぞれの修飾抗体のヒンジ領域へ直接融合させることができることに留意されたい。他の構築物では、ヒンジ領域と修飾されたCH2および/またはCH3ドメインの間にペプチドスペーサーを与えることが望ましい。例えば、CH2ドメインが欠失され、残りのCH3ドメイン(修飾されたまたは未修飾の)がヒンジ領域に5〜20個のアミノ酸スペーサーで連結された、適合性を有する構築物を発現することができる。そのようなスペーサーを付加することにより、例えば定常ドメインの調節エレメントを、遊離状態でアクセス可能に保つこと、またはヒンジ領域が柔軟なままであることを保証してもよい。しかし、アミノ酸スペーサーは、ある場合には免疫原性を有することが判明しており、構築物に対する望ましくない免疫応答を誘発する場合があることが認識されるべきである。従って、構築物に加える任意のスペーサーは、比較的非免疫原性でなければならず、あるいは修飾抗体の望ましい生化学特質が維持される場合は全体を除くことさえしなければならない。
【0122】
定常領域ドメイン全体の欠失の他に、部分的欠失または少数のもしくは単一のアミノ酸の置換によっても、本発明の抗体を提供することができることが認識されよう。例えば、CH2ドメインの選択された区域の単一のアミノ酸の突然変異が、実質的にFc結合を減少させ、それによって腫瘍の局在化を増大させるのに十分である可能性がある。同様に、一つまたは複数の定常領域ドメインの、調節されるべきエフェクター機能(例えば補体CLQ結合)を制御する部分を単に欠失させることが望ましい可能性がある。定常領域のそのような部分的欠失は、当該定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能をそのままにしておく一方で、抗体の選択された特性(血清半減期)を改善する可能性がある。さらに、上に示唆されるように、開示された抗体の定常領域は、一つまたは複数のアミノ酸の突然変異または置換によって修飾され、その結果生ずる構築物のプロファイルを向上させる可能性がある。この点で、修飾抗体の構成および免疫原プロファイルを実質的に維持する一方で、保存された結合部位(例えばFc結合活性)によって提供される活性を妨害することが可能でありうる。ある態様は、定常領域へ一つまたは複数のアミノ酸を追加して、エフェクター機能のような望ましい特性を増強することまたはより多くの細胞毒素もしくは炭水化物接着を提供することを含む。そのような態様では、選択された定常領域ドメインに由来する特異的配列を、挿入するかまたは複製することが望ましい可能性がある。
【0123】
本発明はまた、本明細書に述べるキメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体、またはそれらの抗体断片に実質的に相同の変異体および等価物に関する。これらは、例えば、保存的置換突然変異、即ち一つまたは複数のアミノ酸の類似のアミノ酸による置換を含むことができる。例えば、保存的置換とは、例えば一つの酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸と、一つの塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸と、または一つの中性アミノ酸を別の中性アミノ酸と置換するなどの、あるアミノ酸を同じ一般クラスの別のアミノ酸と置換することを指す。保存的アミノ酸置換によって何が意図されるかは、当技術分野において周知である。
【0124】
本発明はまた、細胞障害剤に結合された抗体を含む免疫結合体に関する。細胞障害剤には、化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、または動物由来の酵素活性を有する毒素、あるいはそれらの断片)、放射性同位体(即ち、放射性結合体)などが含まれる。そのような免疫結合体の生成に有用な化学療法剤には、例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他のインターカレート剤が含まれる。酵素活性を有する毒素およびそれらの用いることができる断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ニガウリ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、リストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテシン(tricothecenes)が含まれる。いくつかの態様では、抗体を、多くの周知のキレート化剤のいずれかを用いて、あるいは直接標識して、
90Y、
125I、
131I、
123I、
111In、
105Rh、
153Sm、
67Cu、
67Ga、
166Ho、
177Lu、
186Reおよび
188Reなどの放射性同位元素に結合させることができる。他の態様では、開示された組成物は、薬剤、プロドラッグ、またはインターフェロンなどのリンホカインに結合された抗体を含むことができる。抗体と細胞障害剤の結合体を、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能基誘導体(ジメチルアジプイミダートHCLなどの)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベラートなどの)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなどの)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなどの)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなどの)、ジイソシアネート(トリレン2,6-ジイソシアネートなどの)、およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなどの)などの、様々な二官能基性タンパク質カップリング剤を用いて、作製する。抗体と一つまたは複数の小分子毒素(例えばカリケアマイシン、マイタンシノイド(maytansinoids)、トリコテン(trichothene)、およびCC1065など、およびこれらの毒素の毒素活性を有する誘導体)との接合体もまた、用いることができる。いくつかの態様では、修飾抗体は、他の免疫的に活性を有するリガンド(例えば抗体またはその断片)と複合体を形成することができ、その結果生じる分子は、新生細胞およびT細胞などのエフェクター細胞の両方へ結合する。
【0125】
有用な量を得る方法にかかわらず、本発明の抗体を、多数の結合形(すなわち免疫結合体)または非結合形の中の任意の一つの形で用いることができる。または、本発明の抗体を非結合形即ち「裸の」形で用いて、補体依存性細胞障害性(CDC)および抗体依存性細胞性細胞障害性(ADCC)を含む被験体の自然の防御機構を利用して、悪性細胞を除去することができる。どの結合または非結合修飾抗体を用いるかという選択は、癌の種類および病期、補助療法(例えば化学療法または外部放射線)、および患者の症状に依存する。当業者が本明細書の教示を考慮して、容易にそのような選択をすることができることが認識されよう。
【0126】
当技術分野で公知の任意の方法により、本発明の抗体の免疫特異的結合を分析することができる。用いることができる免疫分析には、BIAcore分析、FACS分析、免疫蛍光法、免疫細胞化学、ウエスタンブロット、放射免疫定量法、ELISA、「サンドイッチ」免疫分析、免疫沈降分析、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散分析、凝集反応分析、補体結合分析、免疫放射定量分析、蛍光免疫分析、およびプロテインA免疫分析などの技術を用いる、競合的および非競合的分析システムが非限定的に含まれる。そのような分析は、当技術分野において決まったものであり、周知である(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1, John Wiley & Sons, Inc., New York を参照のこと;その全体は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0127】
いくつかの態様では、ELISAを用いて、癌幹細胞マーカーに対する抗体の免疫特異性を決定する。ELISA分析は、抗原を調製する工程、96ウェルのマイクロタイタープレートのウェルを抗原でコーティングする工程、酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼ)の基質などの検知可能な化合物に結合された癌幹細胞マーカーに対する抗体をウェルに加える工程、ある期間インキュベートして抗原の存在を検出する工程を含む。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体を検知可能な化合物に結合させずに、癌幹細胞マーカーに対する抗体を認識する二次結合抗体をウェルに加える。いくつかの態様では、抗原でウェルをコーティングする代わりに、癌幹細胞マーカーに対する抗体をウェルにコーティングし、コーティングされたウェルへ抗原を加えた後で、検知可能な化合物に結合された二次抗体を加えることができる。当業者は、検出されたシグナルを増加させるために調節することができるパラメーター、並びに当技術分野で公知のELISAの他の変形について、認識可能であろう(例えば、Ausubel et al, eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1, John Wiley & Sons, Inc., New York at 11.2.1を参照のこと)。
【0128】
癌幹細胞マーカー抗原への抗体の結合親和性および抗体抗原相互作用の解離速度を、競合的結合分析により決定することができる。競合的結合分析の一つの例は、漸増量の未標識の抗原の存在下での、標識(例えば
3Hまたは
125I標識)された抗原またはその断片もしくは変異体と、関心対象の抗体とのインキュベーション、それに続く標識抗原に結合した抗体の検出を含む放射免疫定量法である。抗体の癌幹細胞マーカーに対する親和性および結合の解離速度を、データからスキャチャードプロット分析により決定することができる。いくつかの態様では、BIAcore動力学分析を用いて、抗体の癌幹細胞マーカーに対する結合速度と解離速度を決定する。BIAcore動力学分析は、表面上に癌幹細胞マーカー抗原を固定されたチップに対する、抗体の結合と解離を分析する工程を含む。
【0129】
ある態様では、本発明は、ヒトDLL4に対する抗体またはその断片を含むポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを包含する。したがって、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、ポリペプチドに対するコード配列のみを含むポリヌクレオチド、ならびに追加のコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形またはDNAの形であり得る。DNAはcDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含み、二重鎖または一本鎖でよく、また一本鎖である場合は、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であってもよい。
【0130】
本発明はさらに、上述のポリヌクレオチドの、例えば、断片、アナログおよび誘導体をコードする変異体に関する。ポリヌクレオチドの変異体は、そのポリヌクレオチドの天然に存在する対立遺伝子変異体またはポリヌクレオチドの天然には存在しない変異体であり得る。ある態様では、ポリヌクレオチドは、開示したポリペプチドをコードする配列の天然対立遺伝子変異体であるコード配列を有することができる。当技術分野で公知であるように、対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチド配列の別の形であって、一つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失、または追加を有し、それはコードされるポリペプチドの機能を実質的に改変しない。
【0131】
ある態様では、ポリヌクレオチドは、例えば宿主細胞からのポリペプチドの発現および分泌を助けるポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に同一のリーディングフレーム中で融合された成熟ポリペプチドのコード配列を含む。リーダー配列を有するポリペプチドは前駆体タンパク質であり、宿主細胞によってリーダー配列が切断されて、成熟型のポリペプチドが形成される。ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質に追加の5'アミノ酸残基が加わったものであるプロタンパク質もコードすることができる。プロ配列を有する成熟タンパク質がプロタンパク質であり、タンパク質の不活性型である。プロ配列が切断されると、活性成熟タンパク質が残る。
【0132】
ある態様では、ポリヌクレオチドは、例えばコードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列に同一のリーディングフレーム中で融合された、成熟ポリペプチドのコード配列を含む。細菌宿主の場合、例えばマーカー配列は、pQE-9ベクターによって提供されるヘキサヒスチジンタグでよく、マーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供する。または、哺乳動物宿主(例えばCOS-7細胞)を用いる場合は、マーカー配列はインフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するヘマグルチニン(HA)タグでよい。
【0133】
ある態様では、本発明は、ヒトDLL4に対する抗体またはその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、およびいくつかの態様では、少なくとも96%、97%、98%、または99%同一のヌクレオチド配列を有する、単離された核酸分子を提供する。
【0134】
参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも例えば95%「同一の」ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の100ヌクレオチド当たり最大5%の点突然変異を含むことができることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味する。言いかえれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列のヌクレオチドの5%以下を欠失させるか、または別のヌクレオチドで置き換えるか、あるいは参照配列中の総ヌクレオチドの5%以下の数のヌクレオチドを参照配列に挿入することができる。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列のアミノ末端またはカルボキシ末端の位置で、またはそれらの末端位置の間の任意の位置で、参照配列中のヌクレオチドの間に個々に点在するか、あるいは参照配列内の一つまたは複数の連続する基に生じることができる。
【0135】
実際問題として、任意の特定の核酸分子が、参照配列と少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、およびいくつかの態様では、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかを、従来通りに、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)などの公知のコンピュータープログラムを用いて決定することができる。Bestfitは、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482 489 (1981)の局部相同アルゴリズムを用いて、二つの配列間の相同性の最良の区分を見つける。Bestfitまたは他の配列アラインメントプログラムを用いて、特定の配列が本発明による参照配列と例えば95%同一であるかどうかを判断する場合には、参照ヌクレオチド配列の全長に亘って同一性パーセントを計算し、参照配列中のヌクレオチド総数の5%以内のホモロジーの間隙を許容するようにパラメーターが設定される。
【0136】
ポリヌクレオチド変異体は、コード領域、非コード領域、または両方に改変を含むことができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド変異体は、サイレントな置換、付加、または欠失を産生するが、コードされたポリペプチドの特性または活性を変更しない改変を含む。いくつかの態様では、遺伝コードの縮退によるサイレントな置換により、ヌクレオチド変異体が産生される。ポリヌクレオチド変異体は、様々な理由のために、例えば、特定の宿主のコドン発現を最適化する(ヒトmRNA中のコドンを大腸菌のような細菌宿主に好まれるものへ変更する)ために産生することができる。
【0137】
本発明のポリペプチドは、ヒトDLL4に対する抗体またはその断片を含む組換えポリペプチド、天然ポリペプチド、または合成ポリペプチドであり得る。本発明のいくつかのアミノ酸配列を、タンパク質の構造または機能に対する有意な影響なしに変化させることができることは、当技術分野において認識されるべきである。したがって、本発明にはさらに、実質的な活性を示すポリペプチドの変異体、またはヒトDLL4タンパク質に対する抗体またはその断片の領域を含むポリペプチドの変異体が含まれる。そのような突然変異体には、欠失、挿入、逆位、反復、および型の置換が含まれる。
【0138】
ポリペプチドおよびアナログをさらに修飾して、通常はタンパク質の一部ではない追加の化学的部分を含ませることができる。それらの誘導体化された部分は、タンパク質の溶解度、生物学的半減期または吸収を改善することができる。その部分はまた、タンパク質の任意の所望の副作用を低減させるかまたは除去することなどができる。それらの部分についての概要は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 20th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (2000) 中に認められる。
【0139】
本明細書に記載される単離されたポリペプチドを、当技術分野で公知の任意の適当な方法により生成することができる。そのような方法は、直接タンパク質合成法から、単離されたポリペプチド配列をコードするDNA配列の構築および適切な形質変換宿主中でのその配列の発現まで、様々である。いくつかの態様では、組換え技術を用いて、関心対象の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離するかまたは合成することによりDNA配列を構築する。任意で部位特異的突然変異誘発により配列に突然変異を起こさせて、その機能的類似物を作ることができる。Zoeller et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 81:5662-5066 (1984) および米国特許第4,588,585号を参照のこと。
【0140】
いくつかの態様では、関心対象のポリペプチドをコードするDNA配列を、オリゴヌクレオチド合成機を用いる化学合成によって構築する。所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づき、関心対象の組換えポリペプチドを産生する宿主細胞中で好まれるコドンを選択して、そのようなオリゴヌクレオチドを設計することができる。標準的方法を適用して、関心対象の単離されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を合成することができる。例えば、完全なアミノ酸配列を用いて、逆翻訳された遺伝子を構築することができる。さらに、特定の単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの一部ずつをコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次にライゲーションすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは通常、相補的組み立てのために、5'または3'突出部を含む。
【0141】
(合成、部位特異的変異誘発、または別の方法により)組み立てられたら、特定の単離された関心対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、所望の宿主中でのタンパク質発現に適した発現制御配列に機能的に連結される。ヌクレオチド配列決定、制限酵素マッピング、および適当な宿主中における生物学的活性を持つポリペプチドの発現により、適切な組み立てを確認することができる。当技術分野において周知のように、トランスフェクションされた遺伝子を宿主中で高レベルで発現させるためには、その遺伝子を、選択された発現宿主中で機能する転写および翻訳の発現制御配列に機能的に連結しなければならない。
【0142】
組換え体発現ベクターを用いて、癌幹細胞マーカーポリペプチド融合体をコードするDNAを増幅および発現させることができる。組換え体発現ベクターとは、哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫の遺伝子に由来する適当な転写または翻訳の調節エレメントに機能的に連結された、癌幹細胞マーカーポリペプチド融合体または生物学的に同等なアナログをコードする、合成のまたはcDNA由来のDNA断片を有する、複製可能なDNA構築物である。転写ユニットは、一般に (1) 遺伝子発現において調節的役割を有する遺伝子エレメント、例えば転写プロモーターまたはエンハンサー、(2) mRNAへ転写されてタンパク質に翻訳される構造配列またはコード配列、および (3) 以下に詳述される適切な転写および翻訳の開始および終止配列の集合を含む。そのような調節エレメントは、転写を制御するオペレーター配列を含むことができる。通常は複製開始点によって与えられる宿主中での複製能、および形質変換体の認識を促進するための選択遺伝子を、さらに組込むことができる。DNA領域は、それらが互いに機能的に関連している場合には、機能的に連結されている。例えば、ポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現される場合には、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、ポリペプチド用のDNAに機能的に連結されており;プロモーターは、それが配列の転写を制御する場合は、コード配列に機能的に連結されており;またはリボソーム結合部位は、翻訳を可能にするように配列されている場合には、コード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されているとは連続的であることを意味し、分泌リーダーの場合には、連続的であることおよびリーディングフレーム中にあることを意味する。酵母発現系で用いることを意図した構造エレメントは、宿主細胞による翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。または、組換えタンパク質がリーダー配列または輸送配列なしで発現される場合、それはN末端メチオニン残基を含み得る。この残基を任意で次に、発現された組換え型タンパク質から切断し、最終生産物を提供することができる。
【0143】
発現制御配列および発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。種々様々の発現宿主/ベクターの組合せを使用することができる。真核生物宿主のための有用な発現ベクターには、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、およびサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターが含まれる。細菌の宿主のための有用な発現ベクターには、pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含む、大腸菌(Esherichia coli)由来のプラスミドなどの公知の細菌のプラスミド、M13およびフィラメント状一本鎖DNAファージなどのより広い宿主範囲のプラスミドが含まれる。
【0144】
癌幹細胞マーカータンパク質の発現に適した宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下の、原核生物、酵母、昆虫または高等真核細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば大腸菌または桿菌が含まれる。高等真核細胞には、下記に述べる哺乳動物由来の確立された細胞系が含まれる。無細胞翻訳系を使用することもできよう。細菌、真菌、酵母、および哺乳動物細胞の宿主での使用のための適切なクローニングおよび発現ベクターについてはPouwels et al. (Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, N. Y., (1985))に記載されており、関連する開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0145】
様々な哺乳動物または昆虫の細胞培養系も、組換えタンパク質を発現するために有利に使用される。組み換えタンパク質は一般に正確に折り畳まれ、適切に修飾され、かつ完全に機能的であるので、哺乳動物細胞におけるそのようなタンパク質の発現を行うことが可能である。適当な哺乳動物宿主細胞系の例には、Gluzman (Cell 23:175 1981)に記載されているサル腎細胞のCOS-7系、ならびに、例えばL細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、およびBHK細胞系を含む、適切なベクターを発現することができる他の細胞系が含まれる。哺乳動物発現ベクターは、例えば複製開始点、発現されるべき遺伝子に連結された適当なプロモーターおよびエンハンサーなど、および他の5'または3'隣接非転写配列、ならびに例えば必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングドナーおよびアクセプター部位などの5'または3'非翻訳配列、および転写終結配列などの非転写エレメントを含むことができる。昆虫細胞における異種タンパク質産生用のバキュロウイルスシステムが、Luckow and Summers, Bio/Technology 6:47 (1988)によって概説されている。
【0146】
形質変換宿主によって産生されたタンパク質は、任意の適当な方法により精製することができる。そのような標準的方法には、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、親和性、およびサイズ分別カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差異、またはタンパク質精製のための任意の他の標準技術によるものが含まれる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザ被覆配列、およびグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に付着させて適切なアフィニティカラムを通すことにより、容易な精製が可能になる。単離されたタンパク質を、タンパク質分解、核磁気共鳴、およびX線結晶学などの技術を用いて、物理的に特性決定することができる。
【0147】
例えば、培養培地へ組換えタンパク質を分泌する系由来の上清を、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて、最初に濃縮することができる。濃縮工程の次に、濃縮物を適当な精製マトリックスに供することができる。または、陰イオン交換樹脂、例えば側鎖ジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質を使用することができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に一般に使用される他の種類であってよい。または、陽イオン交換工程を採用することもできる。適当な陽イオン交換体には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む様々な不溶性マトリックスが含まれる。最後に、疎水性RP-HPLC材、例えば側鎖メチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲルを使用する、一つまたは複数の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)の工程を利用して、癌幹細胞タンパク質-Fc組成物をさらに精製することができる。前記の精製工程のうちのいくつかまたはすべてを色々な組み合わせで使用して、均質な組換え型タンパク質を提供することができる。
【0148】
細菌培養物中に産生された組換えタンパク質を、例えば最初の細胞沈殿物からの抽出、それに続く一つまたは複数の濃縮、塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーの工程により単離することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を最終の精製工程に採用することができる。組換えタンパク質の発現に使用した微生物細胞を、凍結融解の繰り返し、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む任意の便利な方法によって破壊することができる。
【0149】
本発明は、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍形成性細胞の成長を、本明細書に記載した癌幹細胞マーカーに対する抗体を用いて阻害するための方法を提供する。ある態様では、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍形成性細胞の成長を阻害する方法は、細胞を、癌幹細胞マーカーに対する抗体とインビトロで接触させる工程を含む。例えば、癌幹細胞マーカーを発現する不死化された細胞系または癌細胞系を、発現された癌幹細胞マーカーに対する抗体を加えた培地中で培養して、細胞成長を阻害する。ある態様では、例えば組織生検、胸水、または血液試料などの患者の試料から、腫瘍幹細胞を含む腫瘍細胞を単離し、癌幹細胞マーカーに対する抗体を加えた培地中で培養して、細胞成長を阻害する。
【0150】
いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーを発現している腫瘍形成性細胞の成長を阻害する方法は、細胞と、癌幹細胞マーカーに対する抗体とをインビボで接触させる工程を含む。ある態様では、腫瘍形成性細胞と癌幹細胞マーカーに対する抗体とを接触させる工程を動物モデル中で行う。例えば、癌幹細胞マーカーを発現している異種移植片を、癌幹細胞マーカーに対する抗体を投与された免疫無防備状態のマウス(例えばNOD/SCIDマウス)中で成長させて、腫瘍成長を阻害する。いくつかの態様では、例えば組織生検、胸水、または血液試料などの患者の試料から、癌幹細胞マーカーを発現する癌幹細胞を単離して、免疫無防備状態のマウスに注入し、次にそのマウスに癌幹細胞マーカーに対する抗体を投与して、腫瘍細胞成長を阻害する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体を、動物中への腫瘍形成性細胞の導入と同時に、または直後に投与して、腫瘍成長を防止する。いくつかの態様では、癌幹細胞マーカーに対する抗体を、腫瘍形成性細胞が所定の大きさに成長した後に治療剤として投与する。
【0151】
本発明は、さらに癌幹細胞マーカーを標的とする抗体を含む薬学的組成物を提供する。これらの薬学的組成物は、腫瘍細胞増殖の阻害およびヒト患者の癌の治療に用いることができる。
【0152】
製剤は、貯蔵および使用のために、精製された本発明の抗体を薬学的に許容されるビヒクル(例えば、担体、賦形剤)と組み合わせることにより調製される(Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Edition Mack Publishing, 2000)。適当な薬学的に許容されるビヒクルには、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの無毒な緩衝剤;塩化ナトリウムなどの塩;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール;ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量ポリペプチド(例えば、約10より少ないアミノ酸残基);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、グルコース、マンノースまたはデキストリンなどの炭水化物;EDTAのようなキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);およびTWEENまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が非限定的に含まれる。
【0153】
本発明の薬学的組成物を、任意の数の方法で局所処置または全身処置のために投与することができる。投与は、(膣および直腸への送達を含む粘膜などへの)局所的投与、例えば経皮貼付剤、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐剤、スプレー、液体および散剤など;肺内投与(例えば噴霧器によるものを含む、散剤またはエアロゾルの吸入または通気による;気管内、鼻腔内、表皮、および経皮的投与);経口的投与;または静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋肉内の注射または注入を含む非経口的投与;あるいは頭蓋内(例えば、髄膜下または脳室内)投与でよい。
【0154】
治療製剤は、単回投与剤形であってよい。そのような製剤には、経口、非経口、または直腸内投与のためのまたは吸入器による投与のための、錠剤、ピル、カプセル剤、散剤、果粒剤、水または非水性溶媒中の溶液または懸濁液、あるいは坐剤が含まれる。錠剤などの固形組成物では、主要な有効成分が薬学的担体と混合されている。従来の錠剤化成分には、本発明の化合物またはその無毒な薬学的に許容される塩の均一混合物を含む固体の予備処方組成物を形成するための、コーンスターチ、ラクトース、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、またはゴム、および他の希釈剤(例えば水)が含まれる。固体予備処方組成物を、次に上述の型の単回投与剤形へ細分する。新規組成物の錠剤やピルなどをコーティングするか、そうでなければ調合して持続作用の長所を与える剤形を提供することができる。例えば、錠剤またはピルは、外部成分によって覆われた内部組成物を含むことができる。さらに、分解に抵抗するよう働いて、内部成分にそのまま胃を通過させるかまたはその放出を遅らせることができる腸溶層によって、二つの成分を分離することができる。そのような腸溶層またはコーティングには様々な材料を用いることができるが、そのような材料は、多くのポリマー酸、および、ポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような物質との混合物を含む。
【0155】
薬学的製剤には、リポソームと複合体化された本発明の抗体が含まれる(Epstein, et al, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688; Hwang, et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030; ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号)。循環時間が増大されたリポソームが米国特許第5,013,556号に開示されている。いくつかのリポソームを、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発によって生成することができる。規定の孔径のフィルターを通してリポソームを押し出すことにより、所望の直径を有するリポソームを得る。
【0156】
抗体をマイクロカプセル中に封入することもできる。そのようなマイクロカプセルは、例えばコアセルベーション技術または界面重合法によって、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルが、コロイド状薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはRemington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000)に記載されているマクロエマルジョン中にそれぞれ調製される。
【0157】
さらに、徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適当な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、成形された物品(例えばフィルムまたはマイクロカプセル)の形をしている。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)などのヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT (商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、およびポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0158】
ある態様では、処置には本発明の抗体と化学療法剤または複数の異なる化学療法剤のカクテルとの組み合わせ投与が伴う。抗体による処置を、化学療法剤の投与の前に、それと同時に、またはその後に行ってもよい。本発明が意図する化学療法には、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソール、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチンおよびカルボプラチンなどの、当技術分野において公知である、市販の化学物質または薬物が含まれる。組合せ投与には、単一の薬学的製剤によるまたは別々の製剤を用いた同時投与、あるいは、いずれかの順序であるが通常は全ての活性薬剤がそれらの生物活性を同時に発揮できるような期間内での、連続投与が含まれ得る。そのような化学療法剤の調製および服薬スケジュールを、メーカーの指示に従って、あるいは、熟練した開業医が経験的に決定して用いることができる。そのような化学療法の調製および服薬スケジュールは、Chemotherapy Service Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992) にも記載されている。
【0159】
本発明のある態様において、処置は本発明の抗体と第2の治療剤との併用投与を伴う。本明細書において用いられる場合、「第2の治療剤」とは、化学療法剤、放射線療法、サイトカイン、および他の腫瘍関連抗原に対する抗体を含むが、これらに限定されることはない。
【0160】
他の態様では、処置には本発明の抗体と放射線療法とを組み合わせた投与を伴う。抗体による処置を、放射線療法の適用の前に、それと同時に、またはその後に行うことができる。そのような放射線療法の任意の処方スケジュールを、熟練した開業医が決定して用いることができる。
【0161】
他の態様では、処置には、本発明の抗体と、EGF受容体(EGFR)(Erbitux(登録商標))、erbB2受容体(HER2)(Herceptin(登録商標))、および血管内皮増殖因子(VEGF)(Avastin(登録商標))に結合する抗体を非限定的に含む、追加の腫瘍関連抗原に対する他の抗体との組み合わせ投与を伴い得る。さらに処置は、一つまたは複数のサイトカインの投与を含むことができ、また癌細胞の外科的除去、または治療する医師によって必要と認められる任意の他の療法を一緒に行うことができる。
【0162】
疾患の処置については、本発明の抗体の適切な用量は、処置するべき疾患の種類、疾患の重症度および経過、疾患の反応性、治療または予防のどちらの目的で抗体を投与するのか、以前の療法、患者の病歴、および治療医の判断による全てによって決まる。一度に、または、数日間〜数か月間継続する一連の処置に亘って、または、治癒が達成されるか病態の低減が達成される(例えば腫瘍の大きさの減少)まで、抗体を投与することができる。患者の体内の薬物蓄積の測定値から最適な投薬スケジュールを計算することができるが、これは個々の抗体の相対的効能に応じて変動する。投与する医師は、最適な用量、投薬方法、および反復回数を容易に決定することができる。一般に用量は、体重kg当たり0.01μg〜100mgであり、1日、1週間、1ヶ月、または1年間に1回または複数回与えることができる。処置する医師は、体液または組織中の薬物の測定された滞留時間および濃度に基づいて、投薬の反復回数を決定することができる。
【0163】
本発明は、本明細書に記載された抗体を含み、本明細書に記載された方法を実施するために用いることができるキットを提供する。ある態様では、キットは、一つまたは複数の容器中に少なくとも一つの癌幹細胞マーカーに対する精製された抗体を含む。いくつかの態様では、キットは、すべての対照、分析を行なうための説明書、および結果の分析および呈示のための任意の必要なソフトウェアを含めて、検出分析を行なうために必要および/または十分な構成要素のすべてを含む。本発明の開示された抗体が、当技術分野において周知の確立されたキット形式の一つに容易に組み入れられうることを、当業者は容易に認識するであろう。
【0164】
本開示の態様を、次の実施例を参照してさらに明確にすることができる。実施例は、本開示の抗体の調製および本開示の抗体を用いるための方法を詳述する。本開示の範囲から逸脱することなく、材料と方法の両方に多くの改変を行なうことができることは、当業者には明白であろう。同一のまたは同様の部分を指すために、可能な限り図面の全体にわたって同じ符番を用いる。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形の「1つの(a)」、「または(or)」および「その(the)」は、文脈上明らかに他の指示がない限り、複数の指示対象を含む。すなわち、例えば「抗体(an antibody)」に対する言及は、複数のそのような抗体または1つもしくは複数の抗体および当業者に公知のその等価物を含む。さらに、本明細書において使用される、成分の量、反応条件、純度、ポリペプチド長およびポリヌクレオチド長などを表す全ての数は、特に明記のない限り「約」という用語によって修飾される。したがって、本明細書および特許請求の範囲において記載されている数値パラメータは、本発明の所望の特性に応じて変化しうる概算値である。
【実施例】
【0165】
実施例
実施例1: モノクローナル抗体およびヒト化DLL4抗体の産生
抗原産生
ヒトDLL4の細胞外ドメインの組み換えポリペプチド断片を抗体産生用の抗原として作製した。標準的な組み換えDNA技術を用いて、DLL4のアミノ酸番号1〜522 (SEQ ID NO: 25)をコードするポリヌクレオチドを単離した。このポリヌクレオチドをヒトFcタグまたはヒスチジンタグのいずれかのN末端側にインフレームでライゲーションし、昆虫細胞におけるバキュロウイルス媒介性の発現のための移入プラスミドベクターにクローニングした。標準的なトランスフェクション、感染、および細胞培養のプロトコルを用いて、対応するDLL4ポリペプチドを発現する組み換え昆虫細胞を産生した(O'Reilley et al., Baculovirus expression vectors: A Laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994))。
【0166】
ヒトDLL4の内在性シグナル配列の切断は、切断予測のソフトウェアSignalP 3.0を用いて概算されたが、実際のインビボでの切断点は、どちらの方向にもアミノ酸2〜3個異なりうる。予測されたDLL4の切断はアミノ酸番号1と26との間であり、したがってDLL4抗原タンパク質はおよそアミノ酸番号27からアミノ酸番号522までを含む。プロテインAおよびNi
++キレートのアフィニティークロマトグラフィーを用いて、抗原タンパク質を昆虫細胞馴化培地から精製した。精製された抗原タンパク質を次にPBS (pH=7)に対して透析し、約1mg/mlに濃縮し、無菌濾過して免疫用に調製した。
【0167】
免疫化
標準技術を用いて、マウス(n=3)を、精製されたDLL4抗原タンパク質(抗体溶液;Mountain View, CA)で免疫した。抗原認識のための最初の免疫化の約70日後に、個々のマウスからの血液をELISAおよびFACS分析(下に詳述する)を用いてスクリーニングした。最も高い抗体価を有する2匹を選んで最終抗原追加免疫を行い、その後ハイブリドーマ産生のために脾臓細胞を単離した。ハイブリドーマ細胞を、ウェル当たり1細胞で96ウェルプレートに播種し、各々からの上清をELISAおよびFACS分析により抗原タンパク質についてスクリーニングした。高い抗体価を有するいくつかのハイブリドーマを選択し、静置フラスコ培養でスケールアップした。抗体を、プロテインAまたはプロテインGアガロースクロマトグラフィーを用いてハイブリドーマ上清から精製した。精製されたモノクローナル抗体を再びFACSによって試験し、IgGとIgMの抗体を選択するためにアイソトープ試験を行った。
【0168】
FACS解析
天然の細胞表面DLL4タンパク質を認識する、ハイブリドーマ・クローンによって産生されるモノクローナル抗体を選択するため、FACs解析を用いた。HEK293細胞にDLL4の全長cDNAクローンをコードする発現ベクターおよびトランスフェクションマーカーGFPをコードする発現ベクターを同時トランスフェクトした。トランスフェクションから24時間〜48時間後、細胞を懸濁状態で回収し、抗DLL4抗体または、バックグラウンドの抗体結合を検出するための対照IgGとともに氷上でインキュベートした。細胞を洗浄し、蛍光性発色団に結合した抗マウス二次抗体で一次抗体を検出した。次いで標識細胞をFACSにより選別して、天然の細胞表面DLL4タンパク質の細胞表面発現を特異的に認識する抗DLL4抗体を同定した。モノクローナル抗体21M14および21M18は、トランスフェクト細胞上のDLL4を認識した(
図1)。マウス抗体21M18をAmerican Tissue Culture Collectionに寄託した(No. X)。
【0169】
次いでDLL4を対象とした抗体がDLL4とNotchとの間の相互作用を妨害する能力を、フローサイトメトリーを用いて測定した。DLL4 cDNAを安定的に形質導入したHEK 293細胞を、抗DLL4抗体または対照抗体の存在下においてNotch1-EGF10-15-Fcまたは対照のタンパク質-Fcのいずれかとともにインキュベートした。DLL4を発現する細胞とのFc融合タンパク質の結合を、PE結合ヤギ抗Fc抗体およびフローサイトメトリーにより検出した。したがって抗DLL4抗体がDLL4とのNotchの結合を阻害する能力を蛍光強度の減少により測定した。
図2Aに示すように、Notch結合の阻害がマウス抗体21M14および21M18で認められたが、21M12では認められなかった。さらに、マウス21M18はマウスでなくヒトのDLL4に特異的に結合し、かつNotch1を発現する細胞とのヒトDLL4の結合を遮断するが、マウスDLL4の結合は遮断しない(
図2B)。これらのデータは、異種移植実験において21M18が、腫瘍細胞で発現したヒトDLL4を標的とし、血管系で発現したマウスDLL4を標的としないことを示している。
【0170】
エピトープマッピング
DLL4細胞外ドメインの特定領域を認識する抗体を同定するため、エピトープマッピングを実施した。Fcタンパク質に融合されたDLL4細胞外ドメインの一連の入れ子型欠失断片をコードするポリヌクレオチドの上流にCMVプロモーターを含む哺乳類発現プラスミドベクターを、標準的な組み換えDNA技術を用いて作製した。Fcタンパク質に融合されたヒトおよびマウスのDLL4キメラであるDLL4断片をコードするさらなる構築物も、標準的な組み換えDNA技術を用いて作製した。特定のアミノ酸置換を含むさらなる一連のDLL4-fc融合タンパク質を設計した。これらの組み換え融合タンパク質を、一過的にトランスフェクトしたHEK293細胞において発現させ、ELISAのために、トランスフェクションから24時間〜48時間後にここから馴化培地を回収した。抗ヒトFc抗体でコーティングしたプレートで該DLL4融合タンパク質断片を捕捉した。次いで抗DLL4抗体を、結合したDLL4断片と相互作用させ、その後のHRP結合抗マウス抗体とのインキュベーションおよびHRP活性の検出によって結合を測定した(
図3A)。
図3に示されるように、マウスモノクローナル抗体21M14および21M18は、DLL4のアミノ酸番号1〜217内に含有されるエピトープを認識する。この領域は、いくつかのNotchリガンドにおいて存在する「DSL (Delta/Serrate/lag-2)」ドメインと呼ばれるモチーフを含有する(Tax et al., 1994, Nature 368:150-4)。さらに、ウエスタンブロット解析により抗DLL4 mAbをDLL4融合タンパク質断片との結合について試験した(
図3B)。本研究は、アミノ酸番号155〜217内に存在するDSLドメインの存在下でのアミノ酸番号1〜154内のDLL4との21M18のヒト特異的な結合を実証している。これは、過去には認められていないDLL4機能に対するこのN末端配列の重要性を実証している。本研究は略図の形態で要約しており(
図3C)、21M18の結合または結合の欠如をそれぞれ「+」または「-」によって示している。ヒトDLL4アミノ酸と対応するマウスアミノ酸とを交換した特定のアミノ酸置換を含有する一連のDLL4タンパク質断片(DLL4dom1-6)に対する21M18の結合の試験によって、21M18の結合をさらに特徴付けた。ELISAによりこれらの融合タンパク質を21M18との結合についてスクリーニングした。示されたように(
図3D)、いくつかの位置が21M18結合に重要であると同定された。21M18は、アミノ酸番号68、69、および71で置換された(バリン、バリン、およびプロリンの交換)またはアミノ酸番号142および144で置換された(リジンおよびアラニンの交換)DLL4タンパク質断片との結合の低下を示す。対照的に、別個の抗体21M21はDSL領域内に含有されるエピトープに結合するが(
図3E)、しかしこの抗体は
図6に示されるようにDLL4の機能に影響を与えず、このことは、DSLとの結合が機能的な抗体を予測するものではないことを実証している。
【0171】
キメラ抗体
DLL4を特異的に認識するモノクローナル抗体を同定した後に、これらの抗体を修飾して、齧歯類抗体を治療剤として用いる場合の、ヒト抗マウス抗体(HAMA)免疫応答を克服する。ある態様において、選択されたモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を、ハイブリドーマ細胞からRT-PCRによって単離して、哺乳動物発現ベクター中で、ヒトIgG
1の重鎖とκ軽鎖の定常領域にそれぞれインフレームでライゲーションする。または、同じプラスミド上にヒトIgG
1重鎖およびκ軽鎖定常領域遺伝子を含む、TCAE 5.3などのヒトIg発現ベクターを用いる(Preston et al., 1998, Infection & Immunity 66:4137-42)。キメラ抗体産生のために、次にキメラ重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へ同時トランスフェクションする。キメラ抗体の免疫反応性および親和性を、ELISAおよびFACSによって親のマウス抗体と比較する。
【0172】
ヒト化抗体
ある態様においては、DLL4に対するヒト化抗体を作製する。本質的にはLarrick, J.M., et al., 1989, Biochem. Biophys. Res. Comm. 160:1250およびJones, S.T. & Bendig, M.M., 1991, Bio/Technology 9:88に記載されているように縮重PCRを用いてマウスモノクローナル抗体21M18の可変ドメインをハイブリドーマ株から単離し、配列決定した。次に親21M18抗体のアミノ酸配列に構造的に類似している可能性が高いヒト重鎖および軽鎖の可変フレームワーク領域を、ヒト化のためのヒトフレームワーク領域として選択する。候補ヒトフレームワーク領域を同定するため、Genbankに寄託されているヒト配列に対するBLAST検索を用いて、21M18のV
HおよびV
Lマウス可変ドメインによってコードされる予測タンパク質配列を、発現ヒトcDNAによりコードされるヒト抗体配列と比較する。この方法を用い、重鎖フレームワークを設計する際のさらなる解析のために発現ヒトcDNA配列(例えば、genbank AY393019、DC295533)を選択する。
【0173】
候補ヒト化フレームワーク重鎖と親マウスモノクローナル抗体21M18重鎖との間のアミノ酸の違いが重要である可能性が高いか評価し、位置の違いそれぞれが21M18抗体の適切な折り畳みに寄与するかどうかに関して判断する。この解析は、他の抗体断片の解析済み結晶構造(例えばTrakhanov et al, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, 1999, 55:122-28に記載されているようなfab 2E8の構造)の試験によって導かれる。Jmol、quick PDB、およびPymolを含むコンピュータソフトウェアを用いて構造のモデルを作る。βシートフレームワークのパッキング、重鎖および軽鎖可変ドメイン間の相互作用、アミノ酸側鎖の溶媒曝露の程度に及ぼす所与の位置のアミノ酸の潜在的な影響、ならびにアミノ酸がCDRループの位置決めに影響を与える可能性を考慮する。この解析から、ヒトIgG2定常領域にインフレームで融合された5つの候補V
H鎖を化学的に合成する。候補重鎖は、(i) 21M18の結合機能に及ぼす可能性が高い影響の解析に基づき合成フレームワーク領域内に選択した置換を含有する機能的なヒトフレームワークならびに(ii) 親21M18マウス抗体CDR (SEQ ID NO: 1、2、および5)を含む。
【0174】
同様に、選択したヒトフレームワークIGK(V)4-1軽鎖と親マウスモノクローナル抗体21M18軽鎖との間のアミノ酸の違いを同定し、次いで位置の違いそれぞれが21M18抗体の適切な折り畳みに寄与するかどうかに関して判断する。この解析から、5つの候補V
L鎖を化学的に合成する。最初の候補軽鎖は(i) 全IGK(V)4-1ヒトフレームワークならびに(ii) 親21M18マウス抗体CDR (SEQ ID NO: 9、10、および11)を含む。さらなる4つの候補軽鎖は(i) フレームワーク領域の中に保持される21M18マウス残基数が増加したIGK(V)4-1ヒトフレームワーク領域ならびに(ii) 親21M18マウス抗体CDR (SEQ ID NO: 9、10、および11)を含む。
【0175】
各候補変異ヒト化重鎖および軽鎖の機能性を哺乳類細胞への同時トランスフェクションによって試験する。上記の5つの候補ヒト化21M18重鎖のそれぞれをマウス21M18軽鎖cDNAとともにHEK293細胞へ同時トランスフェクトし、ELISAによりDLL4抗原結合活性について馴化培地を分析する。最も強い結合を示す21M18重鎖変異体を選択する。この変異体「21M18 H2」は、マウスCDRに加えて、Vhフレームワーク内の6つのフレームワーク位置であるKabat位置16、20、27、28、38、および48において置換を含む(
図4A)。次いで21M18 H2ヒト化重鎖を5つの候補ヒト化軽鎖のそれぞれとともにHEK293細胞へ同時トランスフェクトし、同じくELISAにより抗原結合について馴化培地を分析する。一つの軽鎖変異体、つまりKabat位置22および36にマウス残基を保持している「21M18 L2」は、他の候補よりも良好な結合を示すことが分かる(
図5)。
【0176】
次に、CDR2 H2 (SEQ ID NO: 2)中の単離システイン残基を変化させる。具体的には、Kabat位置52aのシステイン残基がセリン(変異体H7; SEQ ID NO: 3)残基またはバリン(変異体H9; SEQ ID NO: 4)残基に改変された、H2の2つの重鎖変異体を合成する。これらの重鎖をL2とともにHEK293細胞へ同時トランスフェクトし、同じく馴化培地を分析する。どちらの変異体(21M18 H7L2、および21M18 H9L2)もELISAによって特異的な抗原結合を示す。このように21M18重鎖CDR2は、Kabat位置52aの残基にシステイン、セリン、またはバリン残基が含まれるSEQ ID NO: 2、3、または4を含む。
【0177】
ある態様において、DLL4に対するヒト化抗体を作製した。本質的にはLarrick, J.M., et al., 1989, Biochem. Biophys. Res. Comm. 160: 1250およびJones, S.T. & Bendig, M.M., 1991, Bio/Technology 9:88に記載されているように縮重PCRを用いてマウスモノクローナル抗体21M18の可変ドメインをハイブリドーマ株から単離し、配列決定した。次に親21M18抗体のアミノ酸配列に最も類似しているヒト重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域を、ヒト化のためのヒトフレームワーク領域として選択した。最も類似しているヒトフレームワーク領域を同定するため、Genbankに寄託されているヒトゲノム配列に対するBLAST検索を用い、21M18のV
HおよびV
Lマウス可変ドメインによってコードされる予測タンパク質配列を、ヒトゲノムによってコードされるIg可変ドメインと比較した。この方法を用いて、IGH(V)1-18をヒト重鎖フレームワーク領域として選択し、IGK(V)4-1をヒト軽鎖フレームワーク領域として選択した。
【0178】
選択したヒトフレームワークIGH(V)1-18重鎖と親マウスモノクローナル抗体21M18重鎖との間のアミノ酸の違いを同定し、次いで位置の違いそれぞれが21M18抗体の適切な折り畳みに寄与したかどうかに関して判断した。この解析は他の抗体断片の解析済み結晶構造(例えばTrakhanov et al, Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, 1999, 55:122-28に記載されているようなfab 2E8の構造)の試験によって導かれた。Jmol、quick PDBおよびPymolを含むコンピュータソフトウェアを用いて構造のモデルを作った。βシートフレームワークのパッキング、重鎖および軽鎖可変ドメイン間の相互作用、アミノ酸側鎖の溶媒曝露の程度に及ぼす所与の位置のアミノ酸の潜在的な影響、ならびにアミノ酸がCDRループの位置決めに影響を与える可能性を考慮した。この解析から、ヒトIgG2定常領域にインフレームで融合された5つの候補V
H鎖を化学的に合成した。最初の候補重鎖には(i) 全IGH(V)1-18ヒトフレームワークならびに(ii) 親21M18マウス抗体CDR (SEQ ID NO: 1、2、および5)が含まれた。さらなる4つの候補重鎖には(i) フレームワーク領域の中に保持される21M18マウス残基数が増加したIGH(V)1-18ヒトフレームワーク領域ならびに(ii) 親21M18マウス抗体CDR (SEQ ID NO: 1、2、および5)が含まれた。
【0179】
同様に、選択したヒトフレームワークIGK(V)4-1軽鎖と親マウスモノクローナル抗体21M18軽鎖との間のアミノ酸違いを同定し、次いで位置の違いそれぞれが21M18抗体の適切な折り畳みに寄与したかどうかに関して判断した。この解析から、5つの候補V
L鎖を化学的に合成した。最初の候補軽鎖には(i) 全IGK(V)4-1ヒトフレームワークならびに(ii) 親21M18マウス抗体CDR (SEQ ID NO: 9、10、および11)が含まれた。さらなる4つの候補軽鎖には(i) フレームワーク領域の中に保持される21M18マウス残基数が増加したIGK(V)4-1ヒトフレームワーク領域ならびに(ii) 親21M18マウス抗体CDR (SEQ ID NO: 9、10、および11)が含まれた。
【0180】
各候補変異ヒト化重鎖および軽鎖の機能性を哺乳類細胞への同時トランスフェクションによって試験した。上記の5つの候補ヒト化21M18重鎖のそれぞれをマウス21M18軽鎖cDNAとともにHEK293細胞へ同時トランスフェクトし、次いでELISAによりDLL4抗原結合活性について馴化培地を分析した。最も強い結合を示した21M18重鎖変異体を選択した。この変異体「21M18 H2」には、マウスCDRに加えて、5つのフレームワーク位置であるKabat位置20、28、38、48、および69にマウス残基が含まれた(
図4)。次いで21M18 H2ヒト化重鎖を5つの候補ヒト化軽鎖のそれぞれとともにHEK293細胞へ同時トランスフェクトし、同じくELISAにより抗原結合について馴化培地を分析した。一つの軽鎖変異体、つまりKabat位置22および36にマウス由来残基を保持している「21M18 L2」は、他の候補よりも良好な結合を示すことが分かった(
図5)。
【0181】
次に、CDR2 H2 (SEQ ID NO: 2)中の単離システイン残基を変化させた。具体的には、Kabat位置52aのシステイン残基をセリン(変異体H7; SEQ ID NO: 3)残基またはバリン(変異体H9; SEQ ID NO: 4)残基に改変したH2の2つの重鎖変異体を合成した。これらの重鎖をL2とともにHEK293細胞へ同時トランスフェクトし、同じく馴化培地を分析した。どちらの変異体(21M18 H7L2および21M18 H9L2)もELISAによって特異的な抗原結合を示した。このように21M18重鎖CDR2は、Kabat位置52aの残基にシステイン、セリン、またはバリン残基が含まれるSEQ ID NO: 2、3、または4を含む。
【0182】
次いでヒト化21M18抗体をさらに特徴付けた。具体的には、プロテインAクロマトグラフィーによって精製したヒト化21M18抗体の結合親和性を、Biacoreを用いて測定した。親和性は21M18変異体H2L2の場合およそ0.33 nMであると測定された。
【0183】
ヒト化21M18抗体をATCCに寄託した(2007年5月10日付で寄託した、21M18 H9L2、 ATCC寄託番号PTA-8427および21M18 H7L2、ATCC寄託番号PTA-8425)。
【0184】
ヒト抗体
いくつかの態様において、DLL4の細胞外ドメインを特異的に認識するヒト抗体を、ファージディスプレイ技術を用いて単離する。ヒト抗体可変ドメインを含有する合成抗体ライブラリを、上記DLL4抗原の特異的かつ高親和性の認識についてスクリーニングする。抗体の最適化を目的に、固有の隣接制限部位を介してライブラリ中のCDRカセットを特異的に交換する。次いで最適化されたヒト可変領域を、哺乳類CHO細胞におけるヒト抗体の発現のためにヒトIgG
1重鎖およびκ軽鎖を含有するIg発現ベクターにクローニングする。
【0185】
実施例2:DLL4に対する抗体を評価するためのインビトロ分析
本実施例は、DLL4に対して産生された抗体の、細胞増殖、Notch経路活性化、および細胞障害性に関する活性を試験するための、代表的インビトロ分析について説明する。
【0186】
増殖分析
種々の癌細胞系によるDLL4の発現をTaqman分析を用いて定量する。DLL4を発現すると同定された細胞系を、96ウェル組織培養マイクロプレートに、ウェル当たり細胞10
4個の密度で播種し、24時間展開させる。続いて、細胞をさらに12時間、2%FCSを含む新鮮なDMEM中で培養し、その時点で抗DLL4抗体または対照抗体を10μmol/LのBrdUの存在下で培養培地に加える。BrdUで標識した後に、培養培地を除去し、細胞をエタノール中において30分間室温で固定し、ペルオキシダーゼ結合抗BrdUモノクローナル抗体(クローンBMG 6H8、Fab断片)と90分間反応させる。テトラメチルベンジジンを含む溶液中で基質を発色させ、15分間後に1mol/LのH
2SO
4 25μlによって停止させる。呈色反応を、自動ELISAプレートリーダー(UV Microplate Reader; Bio-Rad Laboratories, Richmond, CA)で450nmフィルターを用いて測定する。全ての実験を三つ組で行なう。対照抗体と比較した抗DLL4抗体が細胞増殖を阻害する能力を決定する。
【0187】
経路活性化の分析
ある態様において、DLL4に対する抗体がNotchシグナル伝達経路の活性化を遮断する能力をインビトロにおいて測定する。抗生物質および10% FCSを補充したDMEM中で培養したHeLa細胞に(1) DLL4リガンドに応じたNotchシグナル伝達レベルを測定するためにホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にHes1プロモーターを含有するHes1-Lucレポーターベクター(Jarriault et al., 1995, Nature 377:355-8)および(2) トランスフェクション効率に関する内部対照としてウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼレポーター(Promega; Madison, WI)を同時トランスフェクトした。次いでトランスフェクト細胞を、10 μg/ml DLL4-Fcタンパク質で一晩コーティングした培養プレートに添加した。次いでDLL4に対する抗体を細胞培養培地に添加した。トランスフェクションから48時間後に、ルシフェラーゼレベルをデュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega; Madison, WI)を用いて測定し、ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して標準化した。抗体がDLL4誘導性のNotch経路活性化を阻害する能力をこのようにして測定した。Notch経路活性化のためのDLL4活性化の阻害が抗DLL4マウス抗体21M14および21M18で認められた(
図6)。対照的に抗DLL4抗体21M21は、DLL4のDSLドメインとの結合にもかかわらず(
図3E)、Notch結合を阻害しなかった(
図6)。
【0188】
ある態様において、抗DLL4抗体が下流遺伝子の活性化を調節する能力を測定した。マウス21M18抗体で処置した動物由来のC8結腸腫瘍細胞(以下に詳述する)を単離し、Notch経路遺伝子であるHES1およびATOH-1の発現をRT-PCRによって測定した。腫瘍組織由来の総RNAを、製造元の使用説明書にしたがいRNeasy Fibrous Tissueキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて単離した。RNA試料の量を260 nm/280 nmの比で測定した。臭化エチジウム(EtBr)で染色した変性アガロースゲル上でRNA試料のアリコートを泳動することによって、RNAの完全性を判定した。AphaEasa FCソフトウェアとともに供給されるFluorChemカメラを用い、ゲル上で28s rRNAと18s rRNAとの比を可視化した。RNA試料をRNase不含水に溶出し、-80℃で貯蔵した。3'-TAMRA FAM (6-カルボキシフルオレセイン)レポーター色素および3'-TAMRA (6-カルボキシ-テトラメチルローダミン)を含有する非伸長性の二重蛍光プローブでリアルタイムRT-PCRを行った。逆転写酵素、1×Tagman緩衝液(Applied Biosystems, Foster City, CA)およびプライマー/プローブ混合物を含有する終容量25 μL中で、総RNA 100 μgを、リアルタイムPCRに用いた。以下の反応をABI 7900 HT Fast Real Time PCR System (Applied Biosystems, Foster City, CA)中で行った: 48℃で30分間、95℃で10分間、ならびに95℃で15秒間および60℃で1分間の40サイクル。SDS2.3ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて結果を解析した。プライマーおよびプローブセットは全てApplied Biosystems (Foster City, CA)から入手した。標的遺伝子の発現レベルをハウスキーピング遺伝子Gus Bの発現レベルに対して標準化し、相対量として表現した。抗DLL4マウス21M18抗体による処置は、対照処置腫瘍と比べて、HES1の発現を低減し、かつ、ATOH-1の発現を増大させた(
図7A)。
【0189】
いくつかの態様において、腫瘍形成性細胞をインビトロにおいて維持することが公知の培養条件を用いてマウス系統枯渇OMP-C11腫瘍細胞コロニーを樹立した。これらの腫瘍細胞コロニーに、10 μg/mLのマウス21M18または5 μMのγセクレターゼ阻害剤(GSI; すなわちDBZ)の存在下または非存在下において細胞表面で過剰発現されたヒトDLL4を含まない3T3細胞(3T3)またはそのヒトDLL4含有の3T3細胞(DLL4)を重層した。重層なしの対照も含めた。3T3-DLL4細胞はHES1を誘導しかつATOH1遺伝子発現を抑制したが(HES1:ATOH1の比として示した)、21M18またはGSIのいずれかだけでDLL4誘導性のNotch標的遺伝子の変化が阻害された。
【0190】
補体依存性細胞障害性の分析
ある態様では、DLL4を発現している癌細胞系または免疫無防備状態のマウス中で異種移植片として継代された患者試料から単離された癌幹細胞(詳細に下に記載する)を用いて、DLL4に対する抗体によって媒介される補体依存性細胞障害性(CDC)を測定する。細胞を、抗生物質および5% FBSを追加した200μlのRPMI 1640培養培地に10
6細胞/mlで懸濁する。懸濁した細胞を次に、DLL4に対する抗体または対照抗体を含む200μlの血清または熱不活性化血清と、三つ組で混合する。細胞混合物を37℃で1〜4時間5% CO
2中でインキュベートする。次に、処理した細胞を回収し、培養培地で希釈した100μlのFITC標識アネキシンVに再懸濁し、10分間室温でインキュベートする。HBSSで希釈した100μlのヨウ化プロピジウム溶液(25μg/ml)を加えて室温で5分間インキュベートする。細胞を回収して培養培地に再懸濁し、フローサイトメトリーによって解析する。FITC染色した細胞のフローサイトメトリーによって全細胞数が得られ、全細胞数に占める割合としての死細胞によるヨウ化プロピジウムの取込みは、熱不活性化した血清および対照抗体と比較した、血清およびDLL4に対する抗体の存在下での細胞死を測定するために用いられる。抗DLL4抗体が補体依存性細胞障害性を媒介する能力をこのように決定する。
【0191】
抗体依存性細胞性細胞障害性の分析
ある態様では、DLL4を発現している癌細胞系、または免疫無防備状態のマウス中で異種移植片として継代された患者試料から単離された癌幹細胞(詳細に下に記載する)を用いて、DLL4に対する抗体によって媒介される抗体依存性細胞性細胞障害性(ADCC)を測定する。細胞を、抗生物質および5% FBSを追加した、フェノールレッドを含まないRPMI 1640培養培地200μlに、10
6細胞/mlで懸濁する。エフェクター細胞として使用するために、末梢血単核細胞(PBMC)をヘパリン化末梢血からFicoll-Paque密度勾配遠心分離により単離する。次に96ウェルプレート中、少なくとも一種のDLL4抗体または対照抗体の存在下で、標的細胞(T)とPBMCエフェクター細胞(E)とを、25:1、10:1および5:1のE/T比率で混合する。対照には、抗体の存在下における、標的細胞単独およびエフェクター細胞単独のインキュベーションが含まれる。細胞混合物を、5% CO
2中37℃で1〜6時間インキュベートする。次に、細胞溶解の際に放出される安定な細胞質の酵素である放出された乳酸脱水素酵素(LDH)を、比色分析(CytoTox96 Non-radioactive Cytotoxicity Assay; Promega; Madison, WI)により測定する。490nmでの吸光度データを標準96ウェルプレートリーダーで集め、バックグラウンドを補正する。特異的細胞障害性の割合を次の式によって計算する:%細胞障害性=100×(実験でのLDH放出−エフェクターの自発的LDH放出−標的の自発的LDH放出)/(標的の最大LDH放出−標的の自発的LDH放出)。DLL4に対する抗体が抗体依存性細胞性細胞障害性を媒介する能力をこのように決定する。
【0192】
実施例3:抗DLL4抗体を用いる、インビボにおける腫瘍成長の防止
この実施例は、異種移植片モデル中の腫瘍成長を防止するための、抗DLL4抗体の使用について説明する。ある態様では、マウス中で異種移植片として継代されてきた患者試料(充実性腫瘍生検または胸水)からの腫瘍細胞を、実験動物へと再継代するために調製する。腫瘍組織を無菌条件下で取り出し、小片へ切断して、殺菌した刃を用いて完全に刻み、酵素消化および機械的破壊によって単細胞懸濁物を得る。具体的には、胸水細胞または得られた腫瘍片を、培養培地中で超純粋コラゲナーゼIII (1mL当たり200〜250単位のコラゲナーゼ)と混合し、10mLピペットにより15〜20分毎に上下にピペッティングしながら37℃で1〜4時間インキュベートする。消化された細胞を40μMのナイロンメッシュによって濾過し、2%熱不活性化ウシ血清(HICS)および25mM HEPES(pH7.4)を含むハンクス緩衝生理食塩水(HBSS)で洗浄する。次に、解離された腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスの乳房脂肪パッドへ皮下注射して、腫瘍成長を誘発する。
【0193】
ある態様では、実験動物への注入の前に、解離された腫瘍細胞を細胞表面マーカーに基づいて腫瘍形成性細胞と非腫瘍形成性細胞へ最初に分別する。具体的には、上述のように解離された腫瘍細胞を、2%熱不活性化仔ウシ血清(HICS)を含むHepes緩衝生理食塩水(HBSS)で2回洗浄し、100μl当たり10
6細胞で再懸濁する。抗体を加え、細胞を20分間氷上でインキュベートし、続いてHBSS/2% HICSで2回洗浄する。抗体には、抗ESA (Miltenyi Biotec, Auburn, CA)、抗CD44、抗CD24、および系列マーカーの抗CD2、抗CD3、抗CD10、抗CD16、抗CD18、抗CD31、抗CD64、および抗CD140b(Linと総称する;BD Biosciences, San Jose, CA)が含まれる。抗体を蛍光色素に直接結合させて、これらのマーカーを発現する細胞を陽性選択するか陰性選択する。H2Kd+細胞およびマウスCD45+細胞に対する選択を行うことによりマウス細胞を除去し、生死判別(viability)色素DAPIを用いて死細胞を除去する。フローサイトメトリーをFACSAria (BD Biosciences, San Jose, CA)で行なう。側方散乱および前方散乱のプロファイルを用いて、細胞塊を除去する。単離されたESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-腫瘍形成性細胞を、次にNOD/SCIDマウスへ皮下注射して、腫瘍成長を誘発させる。
【0194】
ある態様において、抗DLL4抗体がUM-C4結腸腫瘍細胞の増殖を低減する能力について、解析した。6〜8週齢NOD/SCIDマウスの右側腹部に解離UM-C4細胞(動物1匹につき10,000個)を皮下注射した。腫瘍細胞注射の翌日、実験の期間中、1週間に2回10 mg/kgのマウス21M18抗DLL4抗体(n=5)またはPBS (n=10)を動物に腹腔内注射(i.p.)した。増殖が検出されるまで腫瘍増殖を毎週モニターし、その時点から腫瘍増殖を計8週間にわたり週2回測定した。21M18抗体による処置はPBS注射対照と比べて腫瘍増殖を54%低下させた(
図8)。
【0195】
次いで抗DLL4抗体がインビボでの増殖に影響を与える能力を測定した。マウス21M18抗体または対照抗体で処置した動物由来のC8結腸腫瘍を単離し、細胞増殖マーカーであるKi67の発現を免疫細胞化学によって測定した。具体的には、ホルマリン固定してパラフィン包埋した腫瘍を切断して4 μm厚の切片とした。切片をキシレン中で脱パラフィン処理し、蒸留水中で再水和した。標準的な方法にしたがって免疫組織化学を実施した。手短に言えば、切片をDecokingチャンバ内の水浴中でクエン酸緩衝液(pH 6)に20分間浸漬し、抗原を回復させた。スライドを約45分間冷却し、PBS中ですすいだ。切片を室温で10分間過酸化水素(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)とともにインキュベートして、一次抗体の添加の前に内在性のペルオキシダーゼを除去した。ウマ希釈用緩衝液(PBS中、1%NHS、1%BSA、0.1%Tx-100、0.05%NaN3)中で50分の1希釈したウサギ抗ヒトKi67 (Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)を各切片に添加し、1時間または4℃で一晩インキュベートした。スライドを洗浄用緩衝液(PBS中、ゼラチン10%、Tx-100 10%)中で3回、各5分間すすいだ。HRPを結合した抗ウサギ二次抗体の溶液(Immpress 事前希釈済抗ウサギ抗体(anti-Rabbit pre-diluted), Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)をスライドに添加し、30分間インキュベートした。洗浄用緩衝液による徹底的な洗浄の後で、Vector Nova Red (Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)を添加した。スライドを水ですすぎ、ヘマトキシリンで対比染色し、永久封入剤(Vectamount, Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)で封入した。抗DLL4マウス21M18抗体での処置は、対照処置腫瘍と比べて、Ki67を発現する細胞の数を減少させた(
図9)。
【0196】
実施例4: 抗DLL4抗体を併用療法で用いた腫瘍増殖のインビボでの予防および処置
フルオロウラシルと組み合わせたDLL-4抗体
ある態様において、インビボでUM-C4結腸腫瘍細胞の増殖を低減する能力について抗DLL4抗体を化学療法と組み合わせて解析した。6〜8週齢NOD/SCIDマウスの右側腹部に解離UM-C4細胞(動物1匹につき10,000個)を皮下注射した。腫瘍細胞注射の翌日、1週間に1回投与される代謝拮抗化学療法剤フルオロウラシル(5-FU)による併用処置有りまたは無しで、実験の期間中1週間に2回10 mg/kgのマウス21M18抗DLL4抗体またはPBSを動物に腹腔内注射(i.p.)した。増殖が検出されるまで腫瘍増殖を毎週モニターし、その時点から腫瘍増殖を計8週間にわたり週2回測定した。5-FUと組み合わせた抗DLL4マウス21M18抗体による処置は、いずれかの処置のみよりもずっと大きく腫瘍増殖を低減した(
図10)。
【0197】
EGFR抗体またはVEGF抗体と組み合わせたDLL-4抗体
ある態様において、インビボで腫瘍獲得頻度に影響を与える能力について抗DLL4抗体を抗EGF受容体(EGFR)抗体と組み合わせて試験した。6〜8週齢NOD/SCIDマウスの右側腹部に解離UM-C4細胞(動物1匹につき10,000個)を皮下注射した。腫瘍細胞注射の翌日、10 mg/kgのマウス21M18抗DLL4抗体、抗EGFR抗体、抗DLL4抗体、および抗EGFR抗体の組み合わせ、またはPBSを動物(n=10)に腹腔内注射(i.p.)した。抗DLL4抗体または抗EGFR抗体で処置した全ての動物および対照動物10匹中9匹で腫瘍が検出された。対照的に、抗DLL4抗体と抗EGFR抗体との組み合わせで処置した動物10匹中2匹しか処置の数週間後に検出可能な腫瘍を有さなかった(
図11)。さらに、抗EGFR抗体と組み合わせた抗DLL4マウス21M18抗体による処置は、いずれかの処置のみと比べて腫瘍形成の頻度を低減した(
図11)。
【0198】
ある態様において、インビボで腫瘍獲得頻度に影響を与える能力について抗DLL4抗体を抗EGF受容体(EGFR)抗体と組み合わせて試験した。C17腫瘍細胞をマウスに移植し(1群あたりn=10)、2日後に対照抗体、マウス21M18抗体、抗VEGF抗体、または両抗体の組み合わせのいずれかで処置を開始した。各抗体を10 mg/kgで週2回投与した。21M18も抗VEGFもともに腫瘍増殖を低減し、その組み合わせはいずれかの抗体のみよりも効果的であった(
図18)。
【0199】
イリノテカンと組み合わせたDLL-4抗体
ある態様において、抗DLL4抗体を化学療法剤イリノテカンと組み合わせて試験した。いくつかの態様において、6〜8週齢NOD/SCIDマウスの右側腹部に解離OMP-C8腫瘍細胞(動物1匹につき10,000個)を皮下注射した。腫瘍細胞注射の翌日、投与量7.5 mg/kgで1週間に1回投与される化学療法剤イリノテカンによる併用処置有りまたは無しで、実験の期間中1週間に2回10 mg/kgのマウス21M18抗DLL4抗体または対照抗体を動物に腹腔内注射(i.p.)した。増殖が検出されるまで腫瘍増殖を毎週モニターし、その時点から腫瘍増殖を週2回測定した。イリノテカンと組み合わせた抗DLL4 21M18抗体による処置は、いずれかの処置のみよりもずっと大きく腫瘍増殖を低減した(
図12A)。さらに、7.5 mg/kgのイリノテカンのみによる週1回の処置の停止後にはほとんどの動物において腫瘍増殖が継続または加速したが、週2回の10 mg/kgの抗DLL4 21M18と週1回の7.5 mg/kgのイリノテカンとの併用では、56日目の処置停止から5週間以上にわたってさらなる結腸腫瘍増殖を阻害した(
図13)。
【0200】
ある態様において、ヒト化H7L2 21M18抗DLL4抗体をイリノテカンと組み合わせて試験した。いくつかの態様において、6〜8週齢NOD/SCIDマウスの右側腹部に解離C8腫瘍細胞(動物1匹につき10,000個)を皮下注射した。腫瘍細胞注射の翌日、投与量7.5 mg/kgで1週間に1回投与される化学療法剤イリノテカンによる併用処置有りまたは無しで、実験の期間中1週間に2回10 mg/kgのヒト化21M18 抗DLL4抗体、マウス21M18抗体、または対照抗体を動物に腹腔内注射(i.p.)した。増殖が検出されるまで腫瘍増殖を毎週モニターし、その時点から腫瘍増殖を週2回測定した。イリノテカンと組み合わせたヒト化抗DLL4 21M18抗体による処置は、腫瘍増殖に対してマウス21M18と同様の有効性を示した(
図12B)。
【0201】
いくつかの態様において、樹立結腸腫瘍を処置するために抗DLL4マウス21M18およびイリノテカン処置の組み合わせを使用した。6〜8週齢NOD/SCIDマウスの右側腹部に解離C8細胞(動物1匹につき10,000個)を皮下注射した。注射した細胞がおよそ60 mm
3の腫瘍を産生した時点で、処置を開始した。投与量7.5 mg/kgで1週間に1回投与される化学療法剤イリノテカンによる併用処置有りまたは無しで、実験の期間中1週間に2回10 mg/kgのマウス21M18 抗DLL4抗体または対照を動物に腹腔内注射(i.p.)した。イリノテカンと組み合わせた抗DLL4マウス21M18抗体による処置は、いずれかの処置のみよりもずっと大きく樹立結腸腫瘍の増殖を低減した(
図14)。
【0202】
いくつかの態様において、併用療法に続けて抗体処置を行うことで、腫瘍再発が遅延した。6〜8週齢NOD/SCIDマウスの右側腹部に解離C8細胞(動物1匹につき10,000個)を皮下注射した。注射した細胞がおよそ150 mm
3の腫瘍を産生した時点で、処置を開始した。毎週1回7.5 mg/kgのイリノテカンと組み合わせて1週間に2回10 mg/kgのマウス21M18 抗DLL4抗体または対照抗体を動物に計32日間腹腔内投与(i.p.)した。次いで併用処置を中止し、実験の残りの期間、動物(antibodies)をDLL4 21M18抗体または対照抗体で処置した。併用療法に続く抗DLL4 21M18抗体による処置は、対照処置動物と比べて腫瘍増殖の再発を大幅に遅延させた(
図16)。イリノテカン処置の終了後47日の時点での個々の腫瘍体積も示す(
図17)。
【0203】
DLL-4抗体による癌幹細胞頻度の低下はイリノテカンによって増強される
ある態様において、単独またはイリノテカンと組み合わせた抗DLL4 21M18抗体が癌幹細胞の頻度を低減する能力を、限界希釈解析法を用いて測定した。対照または、DLL4マウス21M18抗体、イリノテカン、もしくは上記のようにイリノテカンと組み合わせたDLL4マウス21M18抗体のいずれかで処置したマウスに由来するC8結腸腫瘍を38日間の処置後に単離した。単離した腫瘍(実験群あたりn=3)を下記のように処置した。腫瘍を取り出し、無菌のカミソリの刃で細かく切り刻んだ。単一細胞懸濁物を得るため、100分の1希釈のDNAseI (Worthington, Lakewood, NJ)とともにMEBM培地(Cambrex, East Rutherford, NJ)の中にコラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼ:ディスパーゼ(×10で1:1:8)を含有する消化溶液を腫瘍懸濁物と混合し、37℃で1時間インキュベートした。細胞を遠心分離し、2分間氷上でACK培地(蒸留水中0.15 MのNH
4Cl、10 mMのKHCO
3、0.1 mMのNa
2EDTA) 1 mlに再懸濁して赤血球を除去した。細胞を遠心分離し、FACS緩衝液中に細胞1×10
7個/mlの濃度で再懸濁し、次に30分間氷上でビオチン化マウス抗体(α-マウスCD45-ビオチンの200分の1希釈物およびラットα-マウスH
2Kd-ビオチンの100分の1希釈物, BioLegend, San Diego, CA)とともにインキュベートし、その後ストレプトアビジン(strepavadin)磁気ビーズ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を添加してマウス細胞を除去した。懸濁物中の残存ヒト細胞を回収して計数し、さらなる使用のために望ましい濃度まで希釈した。次いでヒト細胞の連続希釈物を免疫無防備状態のマウスに再注射した。具体的には、マウスの右側腹部に単離ヒト腫瘍細胞900、300、100、または50個を注射した(1群あたりn=10)。腫瘍体積を1週間に2回評価した。
【0204】
81日目の試験の終了時では、検出可能な腫瘍を有するマウスの割合は、DLL4 21M18抗体で処置した腫瘍細胞を注射した全群において減少し、またさらに、対照またはイリノテカンのみのいずれかで処置したものに比べてDLL4 21M18-イリノテカン処置腫瘍細胞において減少していた(
図15A)。これらの腫瘍発生頻度を利用し、L-Calc(商標)ソフトウェア(
http://www.stemcell.com/search/default.aspからダウンロード可能)によって与えられるポアソン統計を用いて幹細胞頻度を計算した。手短に言えば、ポアソン分布統計に基づくと、動物の37%で腫瘍が発生しないならば、既知数の注射細胞の中には厳密に1個の幹細胞が存在する。イリノテカンのみによる腫瘍の処置は、癌幹細胞の数を、対照処置腫瘍での93分の1から82分の1まで増大させた。対照的に抗DLL4抗体は、癌幹細胞頻度を、対照処置腫瘍での93分の1からDLL4抗体処置腫瘍での238分の1まで減少させ、DLL4 21M18-イリノテカン併用処置腫瘍細胞での573分の1まで減少させた(
図15B)。
【0205】
実施例5:抗DLL4抗体を用いる、腫瘍のインビボでの処置
この実施例は、異種移植片モデル中の癌を処置するための、ヒト化抗DLL4 21M18抗体の使用について説明する。ある態様では、マウス中の異種移植片として継代された患者試料(充実性腫瘍生検または胸水)からの腫瘍細胞を、実験動物へと再継代するために調製する。腫瘍組織を取り出し、小片へ切断して、殺菌した刃を用いて完全に刻み、酵素消化および機械的破壊によって単細胞懸濁物を得る。次に、解離された腫瘍細胞を、NOD/SCIDマウスの、乳腺腫瘍については乳房脂肪パッドへ、非乳腺腫瘍については横腹へ皮下注射して、腫瘍成長を誘発させる。または、ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-の腫瘍形成性腫瘍細胞を、詳細に上述したように単離して注入する。
【0206】
腫瘍細胞注入後、動物の腫瘍成長をモニターする。腫瘍が平均約100mm
3の大きさに達したら、抗体処理を開始する。各動物に、100μgのDLL4 21M18ヒト化抗体または対照抗体を、毎週2回〜5回、合計6週間腹腔内投与する。この6週間の間、毎週2回、腫瘍の大きさを評価する。対照抗体と比較してDLL4ヒト化抗体がさらなる腫瘍成長を防止するかまたは腫瘍の大きさを減少させる能力を、このように決定する。
【0207】
抗体処理の終了時点で、さらなる分析のために腫瘍を回収する。いくつかの態様では、腫瘍の一部を免疫蛍光法によって解析し、腫瘍への抗体の浸透および腫瘍応答を評価する。抗DLL4で処理されたマウスおよび対照抗体で処理されたマウスから回収された各腫瘍の一部を液体窒素中で新鮮なまま凍結し、O.C.T.に包埋し、クライオスタット上で10μm切片として切断して、スライドガラスに載せる。いくつかの態様では、各腫瘍の一部をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、ミクロトーム上で10μm切片として切断してスライドガラスに載せる。切片を後固定し、注入された抗体を特異的に認識する発色団標識抗体とインキュベートして、腫瘍生検中に存在する抗DLL4受容体抗体または対照抗体を検出する。さらに、種々の腫瘍および腫瘍に補充された(tumor-recruited)細胞の型を検出する抗体、例えば、血管内皮細胞を検出するための抗VEカドヘリン(CD144)または抗PECAM-1 (CD31)抗体、血管平滑筋細胞を検出するための抗平滑筋αアクチン抗体、増殖中の細胞を検出するための抗Ki67抗体、死滅中の細胞を検出するためのTUNEL分析、Notchシグナル伝達を検出するための抗細胞内ドメイン(ICD) Notch断片抗体などを使用して、例えば血管形成、腫瘍成長および腫瘍形態に対する抗体処理の効果を評価することができる。
【0208】
ある態様では、腫瘍細胞の遺伝子発現に対する抗DLL4ヒト化抗体処理の効果もまた評価する。DLL4抗体で処理されたおよび対照抗体で処理されたマウスから回収された各腫瘍の一部から全RNAを抽出し、定量的RT-PCRのために用いる。DLL4、Notch受容体、Notchシグナル伝達経路の構成要素、ならびに以前に同定された追加の癌幹細胞マーカー(例えばCD44)の発現レベルを、内部対照としてのハウスキーピング遺伝子GAPDHと比較して分析する。DLL4抗体処理による腫瘍細胞遺伝子発現の変化をこのように決定する。
【0209】
さらに、腫瘍中の癌幹細胞の存在に対する、抗DLL4抗体処理の効果を評価する。DLL4抗体または対照抗体で処理したマウスからの腫瘍試料を、小片へ切断して、殺菌した刃を用いて完全に刻み、酵素消化および機械的破壊によって単細胞懸濁物を得る。解離された腫瘍細胞を次に、FACS分析により、腫瘍形成性癌幹細胞の存在について、ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-表面細胞マーカーの発現に基づいて、上記に詳述したように分析する。
【0210】
抗DLL4抗体処理後のESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-発現に基づいて単離された細胞の腫瘍形成能を、次に評価することができる。DLL4抗体処理マウスまたは対照抗体処理マウスから単離されたESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-癌幹細胞を、NOD/SCIDマウスの乳房脂肪パッドへ再度皮下注入する。一貫した腫瘍形成に必要な注入細胞数に基づく癌幹細胞の腫瘍形成能を次に決定する。
【0211】
実施例6:ヒト化抗DLL4抗体を用いたヒト癌の処置
この実施例は、Notch受容体またはNotch受容体リガンドの発現が検出された癌幹細胞および/または腫瘍細胞を含む腫瘍を標的とするためにDLL4に対するヒト化抗体を用いて癌を処置するための方法について説明する。癌幹細胞マーカー発現の存在を、最初に腫瘍生検から決定することができる。癌と診断された患者由来の生検から、無菌条件下で腫瘍細胞を取り出す。いくつかの態様では、組織生検を液体窒素中で新鮮なまま凍結し、O.C.T.に包埋し、クライオスタット上で10μm切片に切断して、スライドガラスに載せる。いくつかの態様では、組織生検をホルマリン固定し、パラフィン包埋して、ミクロトーム上で10μm切片に切断してスライドガラスに載せる。切片をDLL4に対する抗体と共にインキュベートして、タンパク質発現を検出する。
【0212】
癌幹細胞の存在も決定することができる。組織生検試料を、小片へ切断して、殺菌した刃を用いて完全に刻み、細胞を酵素消化し、機械的に破壊して、単細胞懸濁物を得る。次に、解離された腫瘍細胞を抗ESA、抗CD44、抗CD24、抗Lin、および抗DLL4抗体と共にインキュベートして癌幹細胞を検出し、ESA+、CD44+、CD24-/low、Lin-、DLL4+腫瘍幹細胞の存在を、上記に詳述したようにフローサイトメトリーによって決定する。
【0213】
Notch受容体またはNotch受容体リガンドを発現していると診断された腫瘍をもつ癌患者を、ヒト化抗DLL4抗体で処置する。ある態様では、上述のように産生されたヒト化抗DLL4抗体を精製し、注入に適した薬学的ビヒクルと共に製剤化する。いくつかの態様では、少なくとも10週間にわたり少なくとも毎月一回、DLL4抗体で患者を処置する。いくつかの態様では、少なくとも約14週間にわたり少なくとも毎週一回、DLL4抗体で患者を処置する。抗体の各投与は、薬学的に有効な用量であるべきである。いくつかの態様では、約2〜約100mg/mlの抗DLL4抗体を投与する。いくつかの態様では、約5〜約40mg/mlの抗DLL4抗体を投与する。抗体を、標準放射線療法レジメン、あるいはオキサリプラチン、フルオロウラシル、ロイコボリンまたはストレプトゾシンなどの化学療法剤の一つまたは複数を用いる化学療法レジメンの前に、それと同時に、またはその後に投与することができる。患者をモニターして、そのような処置が抗腫瘍応答をもたらしたかどうかを、例えば、腫瘍の退縮、新しい腫瘍の発生率の低下、腫瘍抗原発現の低下、癌幹細胞数の減少、または疾患予後を評価する他の手段に基づいて決定する。
【0214】
本発明の他の態様は、本明細書の考察および本明細書に開示された本発明の実施から、当業者に明白であろう。明細書および実施例は単に例示的なものとして考えられるべきであって、本発明の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって明らかにされるものとする。本明細書で引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全文が参照により本開示に組み入れられる。