(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アラミド心線の未処理糸を、ゴム変性エポキシ樹脂およびゴム未変性エポキシ樹脂を含む第1の処理剤で処理する第1の処理工程を少なくとも含む、アラミド心線の製造方法であって、前記ゴム未変性エポキシ樹脂が、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、製造方法。
ゴム未変性エポキシ樹脂が、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂と他のビスフェノール型エポキシ樹脂とを含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
ゴム変性エポキシ樹脂がニトリルゴム変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、ゴム未変性エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とを含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂と他のビスフェノール型エポキシ樹脂との割合が、前者/後者(質量比)=95/5〜10/90である請求項4又は5記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<心線の製造方法>
本発明の心線は、アラミド心線の未処理糸(心線本体)を特定の第1の処理剤で処理(被覆処理、浸漬処理、含浸処理)する工程(第1の処理工程)を少なくとも経て、製造される。
【0033】
[第1の処理工程]
(アラミド心線の未処理糸)
第1の処理剤で処理するためのアラミド心線の未処理糸は、撚りが加えられていない原糸の状態であってもよく、原糸に撚りを加えた撚糸の状態であってもよい。撚糸は、フィラメントが撚り合わされているため、処理剤が内部のフィラメント間に侵入し難い性質を有している。そのため、撚糸では、通常、処理剤が強固に内部のフィラメントに付着できずにゴムとの密着性が低下し易い。一方、原糸を処理剤で処理してから撚りを加えて撚糸を作製し、さらに処理剤で処理する方法があるが、ホツレや接着性は改善されるものの、アラミド繊維の柔軟性が損なわれて屈曲疲労性が低下し易い。また、撚糸前と後に処理工程を設けるため工程が複雑になる上に、原糸に処理液が付着すると粘着性が増して撚糸作業時の取り扱い性も低下する。これに対して、本発明では、処理剤の浸透性が優れているためか、撚糸であってもゴムとの密着性を向上できる。そのため、本発明では、アラミド心線の未処理糸が原糸、撚糸のいずれであっても優れた効果を発現するが、撚糸である場合に、特に効果的である。
【0034】
(原糸)
アラミド心線の原糸としては、例えば、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)のモノフィラメント糸、又はアラミド繊維を含むフィラメント群を無撚りでリボン状(又はテープ状)に引き揃えたアラミド系マルチフィラメント糸などが例示できる。
【0035】
アラミド繊維としては、例えば、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維などが例示できる。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、帝人(株)の「トワロン(登録商標)」、東レ・デュポン(株)の「ケブラー(登録商標)」など)、ポリパラフェニレンテレフタルアミドと3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体繊維(例えば、帝人(株)の「テクノーラ(登録商標)」など)などが例示できる。メタ系アラミド繊維としては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(例えば、帝人(株)の「コーネックス(登録商標)」など)などが例示できる。これらのアラミド繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアラミド繊維のうち、高モジュラス性を有するなどの点から、パラ系アラミド繊維が好ましい。
【0036】
心線は、強度などの点から、通常、複数の原糸を撚り合わせた撚糸で形成されているため、原糸もアラミド系マルチフィラメント糸として調製される。原糸において、アラミド系マルチフィラメント糸は、アラミド繊維のモノフィラメント糸を含んでいればよく、必要であれば、他の繊維(ポリエステル繊維など)のモノフィラメント糸を含んでいてもよい。本発明では、特定の第1の処理剤で未処理糸を処理するため、未処理糸がアラミド繊維のマルチフィラメント糸(アラミド繊維のモノフィラメント糸のみからなるマルチフィラメント糸)であっても伝動ベルト側面でのホツレを防止でき、かつ伝動ベルトの耐屈曲疲労性を向上できる。
【0037】
アラミド系マルチフィラメント糸は、複数のモノフィラメント糸を含んでいればよく、伝動ベルトの耐久性の点から、例えば、100〜5000本、好ましくは500〜4000本、さらに好ましくは1000〜3000本程度のモノフィラメント糸を含んでいるのが好ましい。
【0038】
モノフィラメント糸の平均繊度は、例えば、1〜10dtex、好ましくは1.2〜8dtex、さらに好ましくは1.5〜5dtex程度であってもよい。
【0039】
アラミド系マルチフィラメント糸は、モノフィラメント糸同士を集束させることなく(例えば、無撚りでリボン状に引き揃えて)使用してもよく、複数のモノフィラメント糸を集束手段(例えば、交絡、結束など)により集束して使用してもよい。本発明では、アラミド系マルチフィラメント糸が集束されていても、アラミド心線の耐ホツレ性と耐屈曲疲労性とを両立できる。このように、本発明では、アラミド心線の原糸を予め集束できるため、複数の種類の処理剤で処理する場合でも、連続して処理することができ、生産性にも優れている。
【0040】
(撚糸)
このような原糸に撚りを加えた撚糸(又はコード)は、複数のモノフィラメント糸を単糸として、少なくとも1本の単糸を右撚り(S撚り)又は左撚り(Z撚り)した方撚糸であってもよい。単糸は、強度の点から、例えば、10〜2000本、好ましくは100〜1800本、さらに好ましくは500〜1500本程度のモノフィラメント糸を含んでいてもよい。単糸の平均繊度は、例えば、500〜3000dtex、好ましくは1000〜2500dtex、さらに好ましくは1500〜2000dtex程度であってもよい。
【0041】
方撚糸は、通常、1〜6本、好ましくは1〜4本、さらに好ましくは1〜3本(例えば、1〜2本)程度の単糸を含んでいる場合が多い。なお、方撚糸が複数の単糸を含む場合、複数の単糸を束ねて(引き揃えて)加撚されている場合が多い。
【0042】
方撚糸は、例えば、甘撚糸又は中撚糸(特に、甘撚糸)であってもよい。方撚糸の撚り数は、例えば、20〜200回/m(例えば、20〜180回/m)、好ましくは20〜150回/m(例えば、25〜120回/m)、さらに好ましくは30〜120回/m(例えば、30〜110回/m)程度であってもよい。方撚糸において、下記式(1)で表される撚り係数(T.F.)は、例えば、0.01〜3、好ましくは0.1〜2程度であってもよい。
【0043】
撚り係数(T.F.)=[撚り数(回/m)×√トータル繊度(tex)]/960 (1)
【0044】
撚糸は、さらに強度を向上させる点から、複数の方撚糸を下撚り糸として上撚りした糸(例えば、諸撚糸、駒撚糸、ラング撚糸など)であってもよく、方撚糸と単糸とを下撚り糸として上撚りした撚糸(例えば、壁撚糸など)であってもよい。これらの撚糸を構成する下撚り糸の数は、例えば、2〜5本、好ましくは2〜4本、さらに好ましくは2〜3本程度であってもよい。また、方撚り方向(下撚り方向)と上撚り方向とは、同一方向(ラング撚り)及び逆方向のいずれであってもよい。
【0045】
上撚りの撚り数は、特に制限されず、例えば、30〜200回/m、好ましくは40〜180回/m、さらに好ましくは50〜150回/m(特に80〜120回/m)程度であってもよい。上撚りにおいて、式(1)で表される撚り係数(T.F.)は、例えば、0.5〜6.5、好ましくは0.8〜5、さらに好ましくは1〜4程度であってもよい。
【0046】
上撚りされたアラミド心線未処理糸の平均径は、例えば、0.2〜3.5mm、好ましくは0.4〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2.5mm程度であってもよい。
【0047】
(第1の処理剤)
第1の処理剤(又は前処理剤)は、ゴム変性エポキシ樹脂とゴム未変性エポキシ樹脂(ゴムで変性されていないエポキシ樹脂又はゴム非含有エポキシ樹脂)とを含む。
【0048】
ゴム変性エポキシ樹脂は、ゴムで変性したエポキシ樹脂又はゴムをエポキシ樹脂由来のエポキシ基(グリシジル基など)で変性したエポキシ樹脂である。
【0049】
このようなゴム変性エポキシ樹脂において、ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ニトリルゴム(NBR)、カルボキシル基末端NBRなどが挙げられる。ゴムは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの中でも、アラミド心線を埋設するゴムに対する接着性などの観点から、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体であるNBRが好ましい。
【0050】
ゴムは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0051】
また、ゴム変性エポキシ樹脂のベースとなるエポキシ樹脂としては、特に限定されず、脂肪族エポキシ樹脂[脂肪族ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類、グリセリンなどのトリオール類など)とハロゲン含有エポキシ化合物(例えば、エピクロロヒドリンなど)との反応物]、脂環族エポキシ樹脂(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂など)、芳香族エポキシ樹脂などのいずれであってもよい。
【0052】
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂[ビスフェノール類(又はそのアルキレンオキサイド付加物)とハロゲン含有エポキシ化合物(エピクロロヒドリンなど)との反応物など]、ナフタレン型エポキシ樹脂(例えば、ジグリシジルオキシナフタレンなど)、ベンゼンジオール(例えば、ヒドロキノン)とハロゲン含有エポキシ化合物(エピクロロヒドリンなど)との反応物、ノボラック型エポキシ樹脂[ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)とハロゲン含有エポキシ化合物(エピクロロヒドリンなど)との反応物など]などが挙げられる。
【0053】
ビスフェノール型エポキシ樹脂において、ビスフェノール類としては、例えば、ビフェノール類(4,4’−ジヒドロキシビフェニルなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C
1−10アルカン類]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類(例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テルなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドなど)などが挙げられる。
【0054】
エポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0055】
これらの中でも、芳香族エポキシ樹脂(多価フェノール類とハロゲン含有エポキシ化合物との反応物など)が好ましく、特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)が好ましい。さらに、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂は、処理液の粘度を低下させて処理剤の浸透性を向上できるためか、アラミド心線の未処理糸が撚糸であっても、内部のフィラメント間に処理剤が浸透でき、ホツレの改善効果やゴムとの密着性を向上できる。
【0056】
ゴム変性エポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0057】
ゴム変性エポキシ樹脂は、通常、分子中に2個以上のエポキシ基を有していてもよい。このようなゴム変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、エポキシ樹脂の種類にもよるが、例えば、100〜1000g/eq、好ましくは120〜800g/eq、さらに好ましくは150〜600g/eq、特に200〜500g/eqであってもよい。
【0058】
なお、ゴム変性エポキシ樹脂の分子量[ポリマー型である場合には、平均分子量(質量又は重量平均分子量など)]は、特に限定されず、例えば、300〜3000程度の範囲から選択できる。なお、本発明では、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で測定してもよい。
【0059】
なお、ゴム(NBR)変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、EPR−4030((株)ADEKA製)、EPR−4033((株)ADEKA製)、EPB−13(日本曹達(株)製)などが挙げられる。
【0060】
ゴム変性エポキシ樹脂(NBR変性エポキシ樹脂など)は、接着処理した心線の可撓性を向上させ、屈曲時の接着被膜の破壊を抑制して耐屈曲疲労性を改善する。また、カット後の心線のフィラメントの収束性を維持し、ホツレ対策に有効になる。しかし、接着被膜が柔らかになるため、ゴム変性エポキシ樹脂だけでは、被着体であるゴム組成物との接着力が低下しやすく、また、ホツレ対策も十分なものとは言えなかった。
【0061】
そこで、本発明では、ゴム変性エポキシ樹脂とゴム未変性エポキシ樹脂とを組み合わせる。ゴム未変性エポキシ樹脂(ゴムで変性されてないエポキシ樹脂)としては、前記ゴム変性エポキシ樹脂の項で例示のゴムで変性されていないエポキシ樹脂などが使用できるが、代表的にはゴムで変性されていない芳香族エポキシ樹脂(ゴム未変性芳香族エポキシ樹脂)を使用することが好ましい。
【0062】
本発明では、ゴム未変性芳香族エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂を好適に使用してもよい。そのため、ゴム未変性エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0063】
また、ビスフェノール型エポキシ樹脂は、特に、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)を含んでいてもよい。このようなエポキシ樹脂は、心線のフィラメント間に浸透しやすいためか、ホツレの改善効果が高いようである。特に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いると、アラミド心線の未処理糸が撚糸であっても、ホツレの改善効果やゴムとの密着性を向上できる。なお、耐ホツレ性と耐屈曲疲労性とを両立できる点から、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂を含むゴム未変性エポキシ樹脂と、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂を含むゴム変性エポキシ樹脂とを組み合わせてもよい。
【0064】
さらに、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂と、他のエポキシ樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂、特に、他のビスフェノール型エポキシ樹脂)とを組み合わせてもよい。このような組み合わせにより、耐ホツレ性と耐屈曲疲労性と(さらにはゴムに対する接着性と)をより一層バランス良く改善又は向上しやすい。
【0065】
他のエポキシ樹脂としては、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂であれば限定されず、前記例示のビスフェノール型エポキシ樹脂などが好ましく、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
【0066】
ビス(ヒドロキシフェニル)メタン類をビスフェノール類とするビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)と他のエポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの他のビスフェノール型エポキシ樹脂)とを組み合わせる場合、これらの割合は、例えば、前者/後者(質量比)=99/1〜5/95(例えば、95/5〜10/90)、好ましくは95/5〜20/80(例えば、93/7〜25/75)、さらに好ましくは90/10〜30/70(例えば、88/12〜40/60)程度であってもよく、99/1〜40/60(例えば、95/5〜50/50、好ましくは90/10〜55/45)程度であってもよい。このような割合で組み合わせると、耐屈曲疲労性、ゴムに対する接着性、耐ホツレ性をバランスよく改善しやすい。また、粘度調整がしやすく、所定の粘度を得やすいというメリットもある。
【0067】
ゴム未変性エポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂など)のエポキシ当量は、例えば、80〜1000g/eq、好ましくは100〜800g/eq、さらに好ましくは120〜600g/eq、特に150〜500g/eqであってもよい。
【0068】
なお、ゴム未変性エポキシ樹脂の分子量[ポリマー型である場合には、平均分子量(質量又は重量平均分子量など)]は、特に限定されず、例えば、100〜10000、好ましくは120〜7000、さらに好ましくは150〜5000程度であってもよい。特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂の分子量(質量又は重量平均分子量などの平均分子量)は、150〜2000(例えば、180〜1500)、好ましくは200〜1000、さらに好ましくは250〜700程度であってもよい。
【0069】
ゴム未変性エポキシ樹脂の性状は、常温で、固体、液体のいずれであってもよく、特に、液体(液状、粘性液体)であってもよい。
【0070】
また、ゴム未変性エポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂など)の粘度は、ゴム未変性エポキシ樹脂の種類に応じて選択でき、例えば、25℃において、例えば、300mPa・s以上(例えば、500〜200000mPa・s以上)であってもよい。特に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の粘度は、25℃において、500〜30000mPa・s、好ましくは1000〜10000mPa・s、さらに好ましくは1500〜7000mPa・s、特に2000〜5000mPa・s程度であってもよい。
【0071】
第1の処理剤において、ゴム変性エポキシ樹脂とゴム未変性エポキシ樹脂(特に、ゴムで変性されていない芳香族エポキシ樹脂)との割合は、例えば、前者/後者(質量比)=90/10〜0.5/99.5(例えば、80/20〜1/99)、好ましくは70/30〜2/98(例えば、60/40〜3/97)、さらに好ましくは50/50〜4/96程度であってもよく、通常50/50〜1/99(例えば、45/55〜2/98、好ましくは40/60〜3/97、さらに好ましくは35/65〜5/95)程度であってもよい。このような割合で組み合わせると、耐屈曲疲労性およびゴムに対する接着性(さらには耐ホツレ性)をバランスよく改善しやすい。
【0072】
第1の処理剤は、反応性希釈剤を含んでいてもよい。反応性希釈剤としては、エポキシ樹脂の特性を損なうことなく低粘度化できる成分であればよく、例えば、低粘度のポリグリシジルエーテル[例えば、ポリオールポリグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど)]、モノグリシジルエーテル(例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル)、モノグリシジルエステル(例えば、第3級カルボン酸モノグリシジルエステル)などが挙げられる。反応性希釈剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。本発明では、第1の処理剤に反応性希釈剤を含有させることにより、処理剤の粘度を低下できるためか、アラミド心線の未処理糸が撚糸であっても、内部のフィラメント間への処理剤の浸透性を向上でき、ゴムとの密着性を向上できる。
【0073】
反応性希釈剤の割合は、ゴム変性エポキシ樹脂およびゴム未変性エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、例えば、0.5〜20質量部、好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは2〜10質量部(例えば、3〜8質量部)程度であってもよい。
【0074】
第1の処理剤は、硬化剤(又は硬化促進剤)を含んでいてもよい。硬化剤としては、エポキシ樹脂用の硬化剤(又は硬化促進剤)であれば、特に限定されず、例えば、アミン類{第1又は第2級アミン類[例えば、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなど)、脂環式アミン(例えば、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなど)、芳香脂肪族ポリアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど)など]、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1など)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのアリールイミダゾールなど)など}、酸無水物(無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸など)、ホスフィン類(トリフェニルホスフィンなど)などが挙げられる。硬化剤(又は硬化促進剤)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらのうち、特に、第3級アミン類を好適に使用してもよい。
【0075】
硬化剤(又は硬化促進剤)の割合は、ゴム変性エポキシ樹脂およびゴム未変性エポキシ樹脂の総量100質量部に対して、例えば、1〜40質量部、好ましくは2〜35質量部、さらに好ましくは3〜30質量部(例えば、5〜20質量部)程度であってもよい。
【0076】
なお、第1の処理剤は、必要に応じて、溶媒(溶剤)を含んでいてもよい。溶剤としては、特に限定されず、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトン;シクロヘキサノンなどの環状ケトン)、エステル類(例えば、酢酸エチルなどの酢酸エステル)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は混合溶媒としてもよい。
【0077】
溶媒を含む第1の処理剤において、固形分濃度は、例えば、1〜70質量%、好ましくは2〜60質量%(例えば、3〜50質量%)、さらに好ましくは4〜40質量%、特に5〜30質量%程度であってもよい。
【0078】
アラミド心線の未処理糸に第1の処理剤を処理する方法としては、特に制限されず、例えば、噴霧、塗布、浸漬などが例示できる。これらの処理方法のうち、浸漬が汎用される。浸漬時間は、例えば、1〜20秒、好ましくは2〜15秒程度であってもよい。
【0079】
アラミド心線の未処理糸を第1の処理剤で処理した後、必要に応じて乾燥してもよい。乾燥温度は、例えば、100〜250℃、好ましくは110〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃程度であってもよい。乾燥時間は、例えば、10秒〜30分、好ましくは30秒〜10分、さらに好ましくは1〜5分程度であってもよい。さらに、乾燥は、アラミド心線の未処理糸に対して張力を作用させて行ってもよい。張力は、例えば、5〜15N、好ましくは10〜15N程度であってもよい。張力の作用下で乾燥させると、アラミド心線の未処理糸に対して処理剤が馴染み易くなり、アラミド心線の未処理糸が撚糸である場合、撚りムラを低減でき、撚りムラによって生じる撚糸の径のばらつきを小さくすることができる。
【0080】
第1の処理剤で処理したアラミド心線の未処理糸に付着した第1の処理剤の付着率[(第1の処理剤による処理後の質量−第1の処理剤による処理前の質量)/第1の処理剤による処理後の質量×100]は、0.5〜5質量%、好ましくは0.7〜4質量%、さらに好ましくは1〜3質量%程度であってもよい。
【0081】
第1の処理剤により形成される被膜の平均厚みは、0.001〜5μm、好ましくは0.01〜3μm、さらに好ましくは0.05〜2μm程度であってもよい。
【0082】
[第2の処理工程]
第1の処理剤で処理したアラミド心線の第1の処理糸は、そのままアラミド心線として用いてもよいが、通常、さらに、レゾルシンとホルマリンとラテックスとを含む第2の処理剤で処理してもよい。このような第2の処理剤で処理する工程(第2の処理工程)を経ることにより、アラミド心線と伝動ベルト本体との接着性をより一層向上できる。
【0083】
第2の処理剤(未加硫のゴム組成物又はRFL液)は、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)とゴム又はラテックス(L)とを含んでいる。レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)とは、これらの縮合物(RF縮合物)の形態で含まれていてもよい。
【0084】
RF縮合物としては、特に制限されず、例えば、ノボラック型、レゾール型、これらの組み合わせなどが例示できる。RF縮合物は、メチロール基濃度が高く、エポキシ化合物との反応性に優れる点から、レゾール型であるのが好ましい。
【0085】
RF縮合物は、例えば、水及び塩基触媒(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属塩;アルカリ土類金属塩;アンモニアなど)の存在下、レゾルシンとホルムアルデヒドとを反応することにより得られる反応生成物(例えば、初期縮合物又はプレポリマー)であってもよい。なお、本発明の効果を阻害しない限り、レゾルシンと共に、フェノール、クレゾールなどの芳香族モノオールを併用してもよく、カテコール、ハイドロキノンなどの芳香族ジ又はポリオールを併用してもよい。また、ホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒドの縮合体(例えば、トリオキサン、パラホルムアルデヒドなど)を使用してもよく、ホルムアルデヒドの水溶液(ホルマリンなど)を使用してもよい。
【0086】
レゾルシンとホルムアルデヒドとの割合(使用割合)は、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.5〜1/5、好ましくは1/0.6〜1/4、さらに好ましくは1/0.7〜1/3程度であってもよい。なお、レゾルシンに対してホルムアルデヒドを過剰に用いると、レゾール型を効率よく得ることができる。
【0087】
ラテックスを構成するゴムとしては、アラミド心線に柔軟性を付与できる限り特に制限されず、例えば、ジエン系ゴム[例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、これらのジエン系ゴムの水添物など]、オレフィン系ゴム[例えば、エチレン−α−オレフィン系ゴム(エチレン−α−オレフィンエラストマー)、ポリオクテニレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴムなど]、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0088】
なお、ゴムとして、心線を埋設するゴムと同じ又は同系統のゴムを好適に使用することもできる。
【0089】
RF縮合物100質量部に対して、ラテックスの割合は、固形分換算で、40〜700質量部程度の範囲から選択でき、例えば、45〜600質量部、好ましくは50〜500質量部、さらに好ましくは55〜400質量部程度であってもよい。
【0090】
第2の処理剤は、通常、水を含んでいる場合が多い。また、第2の処理剤は、必要であれば、第3の処理剤の項で例示する添加剤(例えば、加硫剤、加硫促進剤、共加硫剤、接着性改善剤、充填剤、老化防止剤、滑剤など)を含んでいてもよい。
【0091】
第2の処理剤の全固形分濃度(RF縮合物の固形分質量とラテックスの固形分質量との合計質量を処理剤の質量で除した濃度)は、例えば、0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%(例えば、1〜11質量%)、さらに好ましくは1.5〜10質量%(例えば、2〜10質量%)程度であってもよい。このような割合とすることにより、アラミド心線の第1の処理糸に対する固形分付着量を適度な範囲に調整し、アラミド心線の特性を効率よく改善しやすい。
【0092】
なお、第2の処理剤による処理方法は、第1の処理剤による処理方法と同様である。
【0093】
第1の処理剤及び第2の処理剤で処理したアラミド心線の第2の処理糸に付着した第2の処理剤の付着率[(第2の処理剤による処理後の質量−第2の処理剤による処理前の質量)/第2の処理剤による処理後の質量×100]は、例えば、1〜20質量%、好ましくは1.5〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%程度であってもよい。
【0094】
なお、第1の処理剤の付着量と、第2の処理剤の付着量との比率(質量比)は、固形分換算で、例えば、前者/後者=0.5/1〜20/1、好ましくは0.6/1〜10/1、さらに好ましくは0.7/1〜5/1(例えば、0.8/1〜2/1)程度であってもよい。
【0095】
第2の処理剤により形成される被膜の平均厚みは、1〜30μm、好ましくは2〜25μm、さらに好ましくは5〜20μm程度であってもよい。
【0096】
[第3の処理工程]
第2の処理剤で処理したアラミド心線の第2の処理糸は、さらに、ゴムを含む第3の処理剤(未加硫のゴム組成物又はゴム糊)で処理してもよい。このような第3の処理剤で処理する工程(第3の処理工程)を経ることにより、アラミド心線と伝動ベルト本体との接着性をより一層向上できる。
【0097】
ゴムとしては、第2の処理剤に含有されるゴムの種類、伝動ベルトでアラミド心線を埋設するゴム層のゴムの種類などに応じて適宜選択でき、第2の処理剤の項で例示したゴム、例えば、オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(又はエチレン−α−オレフィン系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)など)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴムなど)、ジエン系ゴム(例えば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムなど)などが例示できる。これらのゴムは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0098】
なお、ゴムとして、心線を埋設するゴムと同じ又は同系統のゴムを好適に使用することもできる。
【0099】
第3の処理剤は、ゴムに加えて、必要により、慣用の添加剤、例えば、加硫剤(又は架橋剤)、共加硫剤(又は共架橋剤)、加硫促進剤(又は架橋助剤)、加硫遅延剤、接着性改善剤、充填剤、老化防止剤、粘着付与剤、安定剤、カップリング剤、可塑剤、滑剤、着色剤、溶媒などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。添加剤のうち、加硫剤、共加硫剤、加硫促進剤、接着性改善剤、充填剤、老化防止剤、滑剤、溶媒などが汎用される。
【0100】
加硫剤は、硫黄系加硫剤と非硫黄系加硫剤とに分類できる。硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄(例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄など)、硫黄化合物(例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄などの塩化硫黄など)などが例示できる。
【0101】
非硫黄系加硫剤としては、例えば、有機過酸化物[例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド(例えば、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなど)など]、オキシム類[例えば、キノンジオキシムなど]、マレイミド類[例えば、ビスマレイミド、フェニルマレイミド、N−N’−m−フェニレンビスマレイミドなど]、アリルエステル類[例えば、DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)、TMAIC(トリメタリルイソシアヌレート)など]、(メタ)アクリレート類[例えば、メチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジ乃至テトラオールのジ乃至テトラ(メタ)アクリレートなど]などが例示できる。
【0102】
加硫剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。加硫剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜15質量部(例えば、0.5〜10質量部)程度であってもよい。
【0103】
共加硫剤としては、金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが例示できる。共加硫剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。共加硫剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部(例えば、1〜10質量部)程度であってもよい。
【0104】
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤(例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)など)、チアゾ−ル系促進剤(例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル又はその塩など)、スルフェンアミド系促進剤(例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなど)、ウレア系促進剤(例えば、エチレンチオウレアなど)、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0105】
加硫促進剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部(例えば、1〜10質量部)程度であってもよい。
【0106】
接着性改善剤としては、例えば、第2の処理剤の項で例示したRF縮合物、メラミン類とアルデヒド類との縮合物(例えば、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサC
1−4アルコキシメチロールメラミンなど)、エポキシ化合物(例えば、アルカントリ乃至ヘキサオールポリグリシジルエーテル、ポリC
2−4アルキレングリコールジグリシジルエーテル、C
6−8ポリアルカントリ乃至テトラオールポリグリシジルエーテルなど)、イソシアネート化合物(例えば、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなど)、これらの組み合わせなどが例示できる。なお、接着性改善剤は、市販の接着剤、例えば、ロード社製の「ケムロック402」などを使用してもよい。
【0107】
接着性改善剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは0.1〜40質量部、さらに好ましくは0.5〜30質量部(例えば、1〜20質量部)程度であってもよい。
【0108】
充填剤(補強剤も含む)としては、有機又は無機充填剤、例えば、粉粒状充填剤[例えば、カーボンブラック(例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRFなどのファーネスブラックなど)、シリカ(乾式シリカ、湿式シリカ)、炭酸カルシウム、タルクなど]、繊維状充填剤[例えば、ポリアミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの短繊維など]、これらの組合せなどが例示できる。充填剤のうち、無機充填剤(例えば、カーボンブラック、シリカなどの粉粒状充填剤)が汎用される。
【0109】
充填剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、1〜80質量部、好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは10〜60質量部程度であってもよい。
【0110】
老化防止剤としては、例えば、アミン系老化防止剤[例えば、芳香族第2級アミン類(例えば、N−フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミンなど)、ケトン−アミン反応生成物(例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物、アセトンとジフェニルアミンとの縮合物、アセトンとN−フェニル−2−ナフチルアミンとの縮合物など)など]、フェノール系老化防止剤[例えば、モノフェノール類(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなど)、ビスフェノール類(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)など]、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0111】
老化防止剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部(例えば、1〜10質量部)程度であってもよい。
【0112】
滑剤としては、例えば、高級飽和脂肪酸又はその塩(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩など)、ワックス、パラフィン、これらの組み合わせなどが例示できる。滑剤の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部(例えば、1〜10質量部)程度であってもよい。
【0113】
溶媒としては、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロアルカン類)、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルカノール類)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、エステル類(例えば、酢酸エチルなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトン、シクロヘキサノンなどの環状ケトン)、セロソルブ類、カルビトール類などが例示できる。溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用してもよい。
【0114】
溶媒の割合は、ゴム1質量部に対して、例えば、0.5〜50質量部、好ましくは1〜20質量部程度であってもよい。
【0115】
代表的な第3の処理剤としては、ゴムとRF縮合物と添加剤(例えば、加硫剤、共加硫剤、加硫促進剤、接着性改善剤、充填剤、老化防止剤、滑剤)とを含む組成物を溶媒に溶解させたゴム糊などが挙げられる。なお、ゴム糊に対するゴム濃度は、特に限定されず、例えば、1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%程度であってもよい。
【0116】
第1の処理剤と第2の処理剤と第3の処理剤とで処理したアラミド心線の第3の処理糸に付着した第3の処理剤の付着率[(第3の処理剤による処理後の質量−第3の処理剤による処理前の質量)/第3の処理剤による処理後の質量×100]は、例えば、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%程度であってもよい。
【0117】
第3の処理剤により形成される被膜の平均厚みは、特に制限されず、例えば、1〜20μm、好ましくは5〜15μm程度であってもよい。
【0118】
<アラミド心線>
本発明のアラミド心線は、伝動ベルト用途に適しており、通常、伝動ベルトのゴム層に埋設して利用される。なお、ゴム層は、伝動ベルトの用途等に応じて適宜選択でき、例えば、ラップドVベルトでは、アラミド心線を、ジエン系ゴム(天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴムなど)、オレフィン系ゴム(EPDMなど)などのゴム(又はその組成物)で形成されたゴム層に埋設してもよい。
【0119】
伝動ベルト用アラミド心線は、前記の製造方法により得られるアラミド心線であってもよい。すなわち、伝動ベルト用アラミド心線は、第1の処理剤で(さらに必要に応じて、第2の処理剤、又は第2の処理剤および第3の処理剤で)処理(例えば、被覆又は含浸)したアラミド系マルチフィラメント糸(例えば、撚糸)であってもよい。さらに、伝動ベルト用アラミド心線は、第1の処理剤(さらに必要に応じて第2の処理剤、又は第2の処理剤および第3の処理剤)で処理(例えば、被覆又は含浸)した後、加硫されたアラミド系マルチフィラメント糸であってもよい。
【0120】
アラミド心線の平均径は、例えば、0.3〜3.6mm、好ましくは0.5〜3.1mm、さらに好ましくは0.6〜2.7mm程度であってもよい。
【0121】
<伝動ベルト>
伝動ベルトは、上記のアラミド心線を含んでいればよく、通常、ベルトの長手方向(又は周方向)にアラミド心線(特に複数のアラミド心線)を埋設したゴム層を備えた伝動ベルトである場合が多い。隣接する心線の間隔(スピニングピッチ)は、例えば、0.5〜4mm、好ましくは0.6〜2.5mm、さらに好ましくは0.7〜2.3mm程度であってもよい。
【0122】
伝動ベルトは、ベルトの長手方向に沿って、アラミド心線を埋設するゴム層を備えていればよく、代表的には、接着ゴム層と、この接着ゴム層の一方の面に圧縮ゴム層とを有し、接着ゴム層がアラミド心線を埋設する伝動ベルトであってもよい。なお、接着ゴム層の他方の面には伸張ゴム層を設けてもよい。また、伝動ベルトは、ゴム層からなるベルト本体の一部(例えば、伸張ゴム層及び/又は圧縮ゴム層の表面)又は全部を補強布で被覆(又は積層)していてもよい。
【0123】
このような伝動ベルトとしては、ラップドVベルト、ローエッジVベルトなどのVベルト、Vリブドベルト、平ベルト、歯付ベルトなどが挙げられる。
【0124】
特に、本発明の伝動ベルトは、前記の通り、ゴムが未加硫状態でカットされる場合でも、ホツレを抑制又は防止できるため、ラップドVベルトのように、ゴム層を未加硫状態でカットする工程を経て製造される伝動ベルトであってもよい。
【0125】
なお、ラップドVべルトは、通常、アラミド心線を埋設した未加硫ゴム層(ベルトスリーブ)を所定の幅にカット(輪切り)する工程(カット工程)、カットしたベルトの下方両端部のエッジを切断する工程(スカイブ工程)、スカイブ工程後のベルトの全周囲に帆布を巻き付ける工程(カバーリング工程)、カバーリング工程を経たベルトを加熱・加圧する加硫工程を経て得られるベルトであり、ベルト内周側にコグ部を有するラップドコグドVベルトも含まれる。
【0126】
なお、心線を埋設した未加硫ゴム層は、例えば、圧縮ゴム層と、接着ゴム層と、アラミド心線と、伸張ゴム層とを、この順に積層することで得ることができる。
【0127】
また、本発明の伝動ベルトは、ベルト両側面(摩擦伝動面)に圧縮ゴム層を露出させたローエッジVベルトであってもよい。ローエッジVベルトは、通常ベルト下面(内周面)からベルト上面に向かって順に、下補強布、圧縮ゴム層、ベルト長手方向に心線を埋入した接着ゴム層、上補強布を積層して構成されるものであり、ベルトを曲げやすくするためにベルト内周側にコグ部を有するローエッジコグドVベルトや、内周側及び外周側にコグ部を有するローエッジダブルコグドVベルトが含まれる。
【実施例】
【0128】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0129】
[原料]
ゴム変性エポキシ樹脂:NBR変性エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、「EPR−4030」
芳香族エポキシ樹脂1(ゴム未変性):ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製、「JER828」
芳香族エポキシ樹脂2(ゴム未変性):ビスフェノールF型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、「EP−4901」
反応性希釈剤:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
硬化剤:2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、大都産業(株)製、「ダイトクラールHD−Acc43」
短繊維:アラミド短繊維、帝人(株)製、「トワロン」、カット糸、平均繊維長3mm、平均繊維長12μm
シリカ:東ソー・シリカ(株)製「Nipsil VN3」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
ナフテン系オイル:(株)DIC製「RS700」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」
加硫促進剤:テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)
レゾルシン・ホルマリン共重合物(レゾルシノール樹脂):レゾルシノール20%未満、ホルマリン0.1%未満のレゾルシン・ホルマリン共重合物。
【0130】
[アラミド繊維コードの作製]
1670dtex(フィラメント数1000本)のアラミド繊維(帝人(株)製「テクノーラ(登録商標)」)からなる無撚りでリボン状に引き揃えたアラミド繊維フィラメントの束(アラミド繊維単糸という)2本を、下撚り数を10.5回/10cm、撚り係数を1.9で下撚り(S撚り)し、この下撚り糸を3本束ね、上撚り数を10.6回/10cm、撚り係数を3.5で下撚りと反対方向に上撚り(Z撚り)し、アラミド繊維コードを作製した。
【0131】
[処理液]
(第1処理液)
表1に示す成分をトルエンに混合し、室温で10分攪拌し、各種第1処理液(前処理液)A〜Iを作製した。
【0132】
【表1】
【0133】
(第2処理液)
レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン(株)製)17.2質量部、水78.8質量部を、室温で10分攪拌し、第2の処理液(RFL液)を得た。
【0134】
(第3処理液)
後述の表2に示すゴム組成物を、固形分濃度10%でトルエンに溶解して第3処理液(ゴム糊)を作製した。
【0135】
[剥離試験]
後述の表2に示すゴム組成物の未加硫ゴムシート(厚み4mm)の上に、アラミド心線を、幅が25mmとなるように複数本平行に並べ(繊維間隔0.1mm)、プレス板で2.0MPaの圧力をかけ、160℃で30分間加硫して、剥離試験用の短冊試料(幅25mm×長さ150mm×厚み4mm)を作製した。そして、JIS K6256(1999)に従って、引張速度50mm/分で剥離試験を行い、心線と接着ゴムとの接着力(加硫接着力)を室温雰囲気下で測定した。
【0136】
[ホツレ試験]
アラミド心線のホツレ性を評価するため、次の方法で平ベルトを作製した。まず、表2に示すゴム組成物で形成された厚さ0.5mmの未加硫の接着ゴム層用シートと、表3に示すゴム組成物で形成された厚さ4mmの未加硫の圧縮ゴム層用シートを積層したゴムシートとを、前記圧縮ゴム層用シートが下側になるようにマントルに巻き付けた後、前記接着ゴム層用シートの上からアラミド心線をスピニングして巻き付け、さらにこの上に、表3に示すゴム組成物で形成された厚さ2mmの未加硫の伸張ゴム層用シートをこの順に巻き付けた。
【0137】
得られたベルトスリーブを16.5mm幅に周方向に切断して個々の平ベルト(ラップドVベルトの仕掛かり品)をマントルから取り出してサンプルにした。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
上記のように作製した平ベルトについて、ベルト側面におけるアラミド心線のホツレの状態を以下の基準で評価した。なお、評価がS又はAの場合を良好と判定した。
【0141】
S:ベルトカット時に端面にホツレはなく、端面を擦ってもホツレが生成しない
A:ベルトカット時に端面にホツレはなく、端面を強く擦っても、数箇所ホツレが生成する程度である
B:ベルトカット時に端面にホツレはないが、端面を普通に擦ってもホツレが生成し、強く擦るとホツレが多数生成する
C:ベルトカット時に端面にホツレが生成する。
【0142】
[屈曲疲労試験]
屈曲疲労試験用の試験片を次のようにして作製した。まず、表2に示す組成の未加硫のゴムシート(厚み0.5mm)を円筒状の金型に巻き付け、この上にアラミド心線をスパイラル状に巻き付け、さらにこの上に表2に示す組成の未加硫ゴムシート(厚み0.5mm)を巻き付け、このゴムシートにジャケットを被せて加熱することよって加硫し、加硫ゴムスリーブを作製した。アラミド心線が2本埋設され、かつカットした側面にアラミド心線が露出しないように加硫ゴムスリーブを周方向にカッターでカットし、幅3mm、長さ50cm、厚み1.5mmの試験片21を作製した。
【0143】
屈曲疲労試験は、
図1に示すように、上記のように作製した試験片21を、上下に配置した一対の円柱形の回転バー(直径30mm)22a,22bに屈曲させて巻き掛け、試験片21の一端をフレーム23に固定すると共に、試験片21の他端に2kgの荷重24を作用させ、一対の回転バー22a,22bを相対距離を一定に保ったまま、上下方向に30万回往復(ストローク:100mm、サイクル:100回/分)させることによって、回転バー22a,22bへの試験片21の巻き付け・巻き戻しを繰り返し、屈曲疲労させた。オートグラフ((株)島津製作所製「AGS−J10kN」)を用いて、屈曲後の試験片を引張速度50mm/分の条件で引張り、試験片の破断時の強力を測定した。一方、屈曲前の試験片の破断時の強力を予め測定しておき、下記式に基づいて強力保持率を算出した。
【0144】
強力保持率(%)=(屈曲後の強力/屈曲前の強力)×100
【0145】
[実施例1〜
5、参考例1及び比較例1〜3]
アラミド繊維コード(撚糸)を、表1に示す各種第1処理液(A〜Iのいずれか)に10秒間通過させることにより浸漬処理し、180℃、4分間の条件で乾燥処理した。
【0146】
第1処理液で処理したアラミド繊維コードを、第2処理液に浸漬処理し、乾燥処理した。浸漬条件及び乾燥条件は、第1処理液の場合と同じである。
【0147】
第2処理液で処理したアラミド繊維コードを、第3処理液に3秒間通過させることにより浸漬処理し、170℃、1.5分間の条件で乾燥処理することによって、アラミド心線を得た。
【0148】
得られたアラミド心線のそれぞれについて、剥離試験、屈曲疲労試験、およびホツレ試験を行った。結果を表4に示す。
【0149】
【表4】
【0150】
表4の結果から明らかなように、第1処理液において、ゴム変性エポキシ樹脂と芳香族エポキシ樹脂とを組み合わせることで、耐屈曲疲労性を低下させることなく、剥離力を向上できた。
【0151】
しかも、未加硫状態におけるホツレを有効に防止できた。このことより、ラップドVベルトのように、未加硫状態で、カット工程、スカイブ工程やカバー工程を要するベルトの製造におけるホツレを防止できることがわかる。
【0152】
そして、これらの効果は、特に、第1処理液において、少なくともビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いる(特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂)を用いること、より一層顕著であった。
【0153】
[実施例
6〜10、参考例2及び比較例4〜6]
アラミド繊維コードの作製において、下撚りを加える前のアラミド繊維単糸(原糸)を、実施例1と同様に、各種第1処理液を用いて浸漬及び乾燥処理した。得られたアラミド繊維単糸(無撚りでリボン状に引き揃えたアラミド繊維フィラメントの束)。2本を、下撚り数を10.5回/10cmで下撚り(S撚り)し、この下撚り糸を3本束ね、上撚り数を10.6回/10cmで下撚りと反対方向に上撚り(Z撚り)し、アラミド繊維コードを作製した。
【0154】
さらに、このアラミド繊維コードを、実施例1と同様に、第2処理液及び第3処理液で処理し、アラミド心線を得た。
【0155】
得られたアラミド心線のそれぞれについて、剥離試験、屈曲疲労試験、およびホツレ試験を行った。結果を表5に示す。
【0156】
【表5】
【0157】
表5の結果から明らかなように、実施例
6〜10及び参考例2は、撚糸へ適用した場合(表4)と比較して、剥離力及びホツレ性は同等であるが、原糸に処理剤を付着させて撚糸にするとコードが剛直になり柔軟性が低下して、屈曲疲労試験における強力保持率が若干低下した。
【0158】
比較例4〜6では、原糸を第1処理剤で処理したため、フィラメント同士が収束して耐ホツレ性は良好であった。しかし、第1処理剤がゴム変性エポキシのみの比較例4は剥離力が低く、芳香族エポキシのみの比較例5及び6は、剥離力は良好であるが、処理剤被膜が硬くなるため、コードが剛直になり柔軟性が低下し、強力保持率が低下した。