(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0005】
固体又は相変化インク組成物は、典型的には約20℃を下回らない融点、例えば約50℃乃至約160℃又はそれ以上の融点を有する。インク組成物は、約60℃乃至約140℃、例えば約70℃乃至約100℃の融点を有するものとすることができる。
【0006】
本明細書に記載の固体又は相変化インクは、一般に約60℃乃至約110℃、例えば約60℃乃至約90℃の温度で噴射される。噴射温度は、組成物の熱安定性の範囲内でなければならない。噴射の時点で、固体又は相変化インクは、一般に、約4mPa−s乃至約50mPa−s、例えば約4mPa−s乃至約22mPa−s及び・又は9mPa−s乃至約12mPa−sの粘度を有する。
【0007】
本明細書に記載の固体又は相変化インクは、直接印刷インクジェット・プロセスのための装置で用いることができ、その場合、溶融インクの小滴が記録用基材上に画像のパターンで噴出されるとき、その記録基材は最終記録基材である。固体又は相変化インクを第一の温度又はそれを超える温度まで加熱し、受像基材上に直接印刷することができる。受像基材は、一般に、第二の温度又はそれを下回る温度に維持される。基材は、約20
oC乃至約80
oC、例えば約30℃乃至約60℃の温度に維持することができる。基材温度は、低くとも10℃としなければならないが、50℃を超えることはなく、第一の温度を下回らなければならない。インクが照射線硬化型である場合、インクの重合性成分の重合を開始するために、インクは基材上で照射エネルギーに暴露される。
【0008】
本明細書に記載の固体又は相変化インクは、間接(オフセット)印刷インクジェット用途において用いることもでき、その場合、溶融インクの小滴が記録用基材上に画像のパターンに噴出されるとき、その記録基材は中間転写部材であり、画像のパターンの固体又は相変化インクは、その後、中間転写部材から最終記録基材へと転写される。
【0009】
本明細書に記載の固体又は相変化インクは、中間転写基材、例えば、中間転写ドラム又はベルト上に噴射されるのに適する。
中間転写部材は、一般的にはドラム又はベルトであるが、任意の適切な形態をとることができる。部材表面は室温であってもよいが、実施形態において、広範囲の環境条件にわたってインクの粘度特性を制御するために、狭い温度範囲内に表面温度が維持されるように部材を加熱することが好ましい。この温度は、一般に第二の温度又はそれを下回る温度である。この方式において、固体又は相変化インクは受像基材への転写まで転写部材の表面上に保持される。
【0010】
一旦、中間転写部材表面上に乗せられたら、噴射された固体又は相変化インクは、中間部材表面上でインクが限定された硬化を達成するように、限られた程度までの照射に露光することができる。所望のレオロジーをインク小滴に与えるには通常は相変化で十分であるので、この中間硬化段階は必ずしも必要ではない。
【0011】
中間転写部材への噴射及びその後の随意の中間硬化に続き、固体又は相変化インクはその後、受像基材に転写される。基材への転写に続き、基材上の画像を適切な波長の放射線に露光することができる。照射線露光は、例えば、約0.05乃至約10秒間、例えば約0.2乃至約2秒間にわたるものとすることができる。これらの露光時間は、インクがUVランプ下を通過する基材速度として表されることが多い。例えば、マイクロ波で励起されるドープされた水銀電球(UV Fusion)を10cm幅の楕円鏡組組立体の中に配置し、複数のユニットを直列で配置することができる。それゆえ、0.1ms
-1のベルト速度では、画像の一点が単一のユニット下を通過するのに1秒を要するのが、一方、ベルト速度4.0ms
-1では、4つの電球を有する組立体の下を通過するために0.2秒を要することになる。インクの重合性成分を硬化するための放射線は、一般に、キセノンランプ、レーザ光、D又はH電球、LED、UV光源などの種々の可能な技術によって提供される。硬化光を濾光することができる。インクの硬化性成分が反応して、硬化した又は架橋した適切な硬度のネットワークを形成する。一般に、硬化が実質的に完了し、即ち、硬化性成分の少なくとも75%が硬化(重合及び/又は架橋)すると、インクは実質的に硬くなり、それによって、耐引掻性がはるかに高くなり、また、基材上の透き通しの量を適切に制御することも可能になる。
【0012】
間接印刷プロセスが用いられる場合、中間転写部材は、ドラム又はローラ、ベルト又はウェブ、平面又は圧盤などのような、任意の所望の又は適切な構成とすることができる。特許文献1に開示のように、中間転写部材上に溶融インクの小滴の噴出させることに先立ち、随意に犠牲液体の層を中間転写部材に塗布し、それにより、溶融インク小滴が中間転写部材上の犠牲液体層上に噴出されるようにすることができる。中間転写部材から最終記録基材への転写は、中間転写部材と、ドラム又はローラ、ベルト又はウェブ、平面又は圧盤などのような任意の所望の又は効果的な構成とすることができる背面部材(back member)とにより形成されるニップを通して、最終記録基材を通過させることのような、任意の所望の又は適切な方法により行うことができる。
【0013】
本明細書で用いられる場合、「粘度」という用語は、複素粘性率のことを指し、これは、試料に定常せん断ひずみ又は小振幅の正弦波変形を与えることができる機械式分光計による典型的な測定値である。あるいは、せん断応力を与えて得られたひずみを測定する、制御された応力装置を用いることもできる。レオメータは、例えば毛細管粘度計のような一過性の測定値ではなく、種々のプレート回転数ωにおける粘度の周期的測定値を与えることができる。複素粘性率η
*は、η
*=η’−iη”として定義され、式中、η’=G”/ω、η”=G’/ωであり、iは√−1である。あるいは、粘度計は、例えば、毛管粘度又はずり粘度の一過性の測定値のみを測定することができる。
【0014】
本開示の組成物は、本開示に包含される物理的性質及び特性を満たす限りは任意の成分の組み合わせを含むことができる、固体又は相変化インクジェット用インクである。組成物は、固体又は相変化インクであるので、相変化を与える少なくとも1つの成分又は2、3、4、5、6若しくはそれ以上の主成分の組み合わせを含む。この相変化をもたらす薬剤を以下「相変化剤」と称する。
【0015】
この相変化剤は、組成物の他の成分と混和し、かつ、インクが、例えば60℃と110℃との間の噴射温度から一般に20℃と50℃との間である基材温度まで冷却するにつれてインクの粘度の上昇を促進する、いずれかの成分とすることができる。相変化剤の種類の例として、固体アルコール、ワックス及びゲル化剤が挙げられる。
【0016】
ワックスは相変化剤として作用することができ、例えば、単一のワックス又は2若しくはそれ以上の異なったワックスの混合物である。ワックスという用語は、天然ワックス、改質天然ワックス及び合成ワックスを含む。硬度、光沢、オフセット特性のような特定の性質を改善するために、単一のワックスを配合物に添加することができる。あるいは、組成物に複数の性質を与えるために、ワックスの組み合わせを添加することができる。
【0017】
本開示の固体又は相変化インクは、インクの極性及び紙に対するインクの付着力を改善する、少なくとも1つの極性ワックスを含む。極性ワックスは酸性とすることができる。理論に束縛されることを意図しないが、酸性度及び/又は極性を高めることで、主としてアルカリ性の紙に対するインクの付着力が改善されると考えられる。極性酸性ワックスの例としては、Licowax(登録商標)SW及び同様の極性酸性ワックス(Clariant)、並びに一連のモンタン酸の範囲のモンタン酸の他の誘導体、例えば脂肪族長鎖を含むものが挙げられる。「脂肪族長鎖」という用語は、14又はそれ以上の炭素原子を有する鎖である。
【0018】
極性酸性ワックスの粘度は、120℃において約10乃至50mPa−sとすることができ、熱特性、例えば融点は、約60℃乃至約100℃又は約70℃乃至約90℃、又は約80℃(示差走査熱量測定で計測)とすることができる。他の所望の特性は、直径1cmの平坦な円形の金属スタンプを23℃においてワックス試料を貫いて押しつけるために必要な圧力をbarで表したものであり、Clariant GmbH内部試験及び検査手順を用いるものとして非特許文献1に記載されているような、流動硬度である。実施形態において、ワックス試料の流動硬度値は、約300bar乃至約1000bar、又は500bar乃至約1000barとすることができる。
【0019】
インク組成物中に含まれる個々の極性酸性ワックスの酸価は、個々の極性酸性ワックスの各々について異なるものであり得る。酸価という用語は、ワックス1グラム中に含まれる遊離酸を中和するために必要とされるKOHのミリグラム数である。酸価は、双極子的性質によるワックスの極性の量を求めるために用いられる。極性基の数及び強度並びに分子の非極性部分の長さが、酸価に影響を与える。インク組成物は、単一の酸価を有する個々の極性酸性ワックスを含むことができる。実施形態において、ワックスの酸価は、約0乃至約160mgKOH/g、例えば約100乃至約160mgKOH/g、又は約127乃至約160mgKOH/gの範囲とすることができる。
【0020】
極性酸性ワックスの適切な例は、直鎖、飽和、脂肪族ワックス、例えば末端官能基化カルボン酸を有した脂肪族ワックスである。極性酸性ワックスの他の適切な例としては、約30%酸官能基化を超える、例えば約50%酸官能基化を超える、又は約70%酸官能基化を超える高い酸含有量を有するワックスが挙げられる。極性酸ワックスの他の例は、約15mgKOH/gを超える、例えば約85mgKOH/gを超える、又は約115mgKOH/gを超える酸価(酸価)を有したものである。代替的な実施形態において、極性ワックスの酸価は、約5mgKOH/gの最大値を有するものとすることができる。
【0021】
実施形態において、極性酸性ワックスは、C
22−C
34の脂肪族鎖長分布を有し、C
26−C
28範囲に最大値を有する、約100%酸官能基化されたモンタン・ワックス誘導体、例えばn−オクタコサン酸、CH
3(CH
2)
26COOHである。そのような適切なモンタン・ワックスの例としては、Licowax(登録商標)S、Licowax(登録商標)SW、Licowax(登録商標)、UL及びLicowax(登録商標)X101が挙げられる。他の適切な極性酸性ワックスとしては、酸末端の一部がエステル化された部分的にエステル化されたモンタン酸ワックス、例えばLicowax(登録商標)Uが挙げられる。モンタン酸の誘導体は、一般に、粗製モンタン・ワックスを酸化漂白し、得られた酸ワックスをアルコール若しくはアミドと反応させ、及び/又はアルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ土類金属水酸化物で加水分解することにより調製される。
【0022】
実施形態において、極性ワックスの例としては、蜜ろう酸、C
10−C
40ヒドロキシアルキル酸、C
10−C
40イソアルキル酸、ココナッツ酸、コーン酸、水素化獣脂酸、水素化ココナッツ酸、水素化パーム酸、ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、アマニ酸、米ぬか酸、パーム酸、パーム核酸、トール油酸、獣脂酸、ウンデカン酸、ウンデシレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リノール酸、C
18−C
36の酸、C
20−C
40の酸、C
29−C
70の酸、C
30−C
50の酸、C
40−C
60の酸、及びその混合物、例えば、以下の酸、即ち、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、モンタン酸、Licowax(登録商標)S、Licowax(登録商標)LP、Licowax(登録商標)SW及びその混合物のうちのいずれかの組合せを挙げることができる。
【0023】
極性酸性ワックスのけん化価は、約0mgKOH/gを超える、例えば約97mgKOH/gを超える、又は約140mgKOH/gを超えるものとすることができる。代替的な実施形態において、極性ワックスのけん化価は、約15mgKOH/gの最大値を有するものとすることができる。「けん化価」という用語は、ワックス1グラム中の遊離酸とエステルから放出される酸とを中和するために必要とされるKOHのミリグラム数である。けん化価は、存在する遊離酸及び分解可能なエステルの量の尺度である。エステルは、アルコール性KOHで分解され、未消費のKOHが酸で滴定される。けん化価と酸価との間の相違は、エステル価である。エステル価は、酸価と同様に、ワックスの極性量を決定するために用いることができる。
【0024】
実施形態において、極性ワックスは、例えば0mgKOH/gを超える、又は約15mgKOH/gを超える、例えば約25mgKOH/g乃至約95mgKOH/gの酸価、及び0mgKOH/gを超える、例えば約97mgKOH/gを超える、又は約120mgKOH/gを超える、例えば約130mgKOH/g乃至約182mgKOH/g、又は約140mgKOH/gを超える、又は約140mgKOH/g乃至約182mgKOH/gのけん化価を有する。ある種の酸ワックスは、クロム酸溶液によるけん化及び酸化により誘導されるモンタン・ワックスの誘導体である。酸を一価及び多価アルコールでエステル化して、エステルワックスを得ることもできる。金属水酸化物を用いたけん化によって、金属せっけんを得ることができる。従って、部分けん化エステルワックスは、エステル化プロセスとけん化プロセスとを組み合わせることによって得ることができる。上記のワックスの例としては、以下の表1に示されるように、エステルワックスとしてLicowax(登録商標)E及びLicowax(登録商標)KPS、部分けん化エステルワックスとしてLicowax(登録商標)OP及びLicowax(登録商標)Oなどが挙げられる。表1は、本開示の固体又は相変化インクに用いるのに適したClariantから入手可能な数種の例示的な極性ワックス、及びそれらのワックスの種々の性質を列記する。
【0025】
表1:Clariantから入手可能な例示的な極性ワックス
【0026】
極性酸性ワックスは、少なくともインクの約5wt%、例えばインクの約5wt%乃至約90wt%、又はインクの約10wt%乃至約40wt%又は約20wt%乃至約30wt%を構成することができる。
【0027】
ワックスの他の適切な例としては、官能基化ワックス;天然植物性ワックス類:カルナバ・ワックス、カンデリラ・ワックス、木ろう、及びベーベリ・ワックス;天然動物性ワックス類:蜜ろう、プニカ(punic)ワックス、ラノリン、ラック・ワックス、シェラック・ワックス、及び鯨ろう;ミネラル・ワックス類:パラフィン・ワックス、マイクロクリスタリン・ワックス、モンタン・ワックス、オゾケライト・ワックス、セレシン・ワックス、ペトロラタム・ワックス、及び石油ろう;及び合成ワックス類:フィッシャー−トロップシュ・ワックス、アクリレート・ワックス、脂肪酸アミド・ワックス、シリコーン・ワックス、ポリテトラフルオロエチレン・ワックス、ポリメチレン・ワックス、ポリエチレン・ワックス、及びポリプロピレン・ワックス、並びにその混合物が挙げられる。
【0028】
特許文献2に記載の適切な相変化剤を用いることもできる。
【0029】
インク組成物はまた、1つの展色剤材料又は2若しくはそれ以上の展色剤材料の混合物を含むこともでき、これらは相変化剤と同じものであってもよく又は同じものでなくてもよい。固体又は相変化インクジェット用インク組成物の場合には、展色剤は、1つ又はそれ以上の有機化合物を含むことができる。そのような固体インク又は相変化組成物のための展色剤は、典型的には室温(約20℃乃至約25℃)において固体であるが、プリンタ動作温度において、印刷面上への噴出のために液体となる。
【0030】
インク組成物はまた、樹脂、ポリマー、コポリマーなど、例えばエチレン/プロピレンポリマー又はコポリマーを含むこともできる。ポリマー又はコポリマーは、約70℃乃至約150℃、例えば、約80℃乃至約130℃又は約90℃乃至約120℃の融点、及び約500乃至約4,000の分子量範囲を有することができる。そのようなコポリマーの例としては、Petrolite CP−7(Mn=650)、Petrolite CP−11(Mn=1,100)、Petrolite CP−12(Mn=1,200)が挙げられる。
【0031】
他の適切な展色剤材料としては、酸化された合成又は石油ワックスのウレタン、尿素、アミド及びイミド誘導体が挙げられる。ウレタン、尿素、アミド及びイミド誘導体は、直鎖、分岐鎖、環状又はそのいずれかの組み合わせとすることができる。これらの材料は、約60℃乃至約120℃、例えば、約70℃乃至約100℃又は約70℃乃至約90℃の融点を有することができる。そのような材料としては、Baker PetroliteのPETROLITE CA−11(登録商標)、PETROLITE WB−5(登録商標)及びPETROLITE WB−17(登録商標)などのようなビス−ウレタンが挙げられる。例として、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6に開示されているウレタン、尿素、アミド及びイミド誘導体も挙げられる。
【0032】
固体又は相変化インク組成物において用いることのできる他の適切な展色剤材料としては、イソシアネート誘導体樹脂及びワックス、例えば、ウレタンイソシアネート誘導体材料、尿素イソシアネート誘導体材料、ウレタン/尿素イソシアネート誘導体材料、及びその混合物などが挙げられる。
【0033】
インク展色剤の別のタイプは、典型的には約5乃至約100、例えば約20乃至約180又は約30乃至約60炭素原子を有する、n−パラフィン系、分岐鎖パラフィン系、及び/又は芳香族炭化水素系、例えば、分子量(Mn)が約100乃至約5,000、又は約250乃至約1,000又は約500乃至約800の、BE SQUARE 185及びBE SQUARE 195とすることができる。
【0034】
高度に分岐した炭化水素、例えば、VYBAR 253(Mn=520)、VYBAR 5013(Mn=420)を含むVYBAR材料(Petrolite)を用いることもできる。インク展色剤は、一般式
【化1】
[式中、xは、約1乃至約50、例えば、約5乃至約40又は約11乃至約24の整数であり、かつyは、約1乃至約70、例えば、約1乃至約50又は約1乃至約40の整数である]のエトキシ化アルコールとすることができる。この材料は、約60℃乃至約150℃、又は約70℃乃至約120℃若しくは約80℃乃至約110℃の融点、及び約100乃至約5,000、又は約500乃至約3,000若しくは約500乃至約2,500の分子量(Mn)範囲を有することができる。例としては、UNITHOX 420(Mn=560)、UNITHOX 450(Mn=900)、UNITHOX 480(Mn=2,250)、UNITHOX 520(Mn=700)、UNITHOX 550(Mn=1,100)、UNITHOX 720(Mn=875)、UNITHOX 750(Mn=1,400)が挙げられる。
【0035】
脂肪アミド、例えば、特許文献7に記載のようなモノアミド、テトラ−アミド、その混合物などを用いることができる。適切なモノアミドは、少なくとも約50℃、例えば約50℃乃至約150℃の融点を有することができる。適切なモノアミドの例としては、第一級モノアミド及び第二級モノアミドが挙げられる。植物原料由来のステアルアミド、ベヘンアミド/アラキドアミド、オレアミド、工業用オレアミド及びエルカミドが、適切な第一アミドの例である。ステアリルステアルアミド、ステアリルエルカミド、オレイルパルミトアミド及びエルシルステアルアミドが、適切な第二級アミドの例である。更なる適切なアミド材料としては、精製植物オレアミド、精製植物ステアルアミド、エチレンビス−オレアミド(N,N’−エチレンビスオレアミド)、植物ベースの材料(高エルカ酸菜種油)から誘導されたもの、例えば、Crodamide E、Crodamide ER、Crodamide VRX、 Crodamide SRV、Crodamide BR、Crodamide 203、Crodamide 212、Crodamide EBO、及び随意にエチレンビス‐ステアルアミドであるCrodamide EBSVが挙げられる。
【0036】
一般式
【化2】
[式中、xは、約1乃至約50、例えば、約5乃至約35又は約11乃至約23の整数である]のものを含む高分子量直鎖アルコールをインク展色剤としてもちいることもできる。これらの材料は、約50℃乃至約150℃、例えば、約70℃乃至約120℃又は約75℃乃至約110℃の融点、及び約100乃至約5,000、例えば、約200乃至約2,500又は約300乃至約1,500の分子量(Mn)範囲を有することができる。市販品の例としては、UNILIN材料が挙げられる。
【0037】
例としてはまた、一般式
【化3】
[式中、xは、約1乃至約200、例えば、約5乃至約150又は約12乃至約105の整数である]のポリエチレンのホモポリマーのような炭化水素ベースのワックスも挙げられる。これらの材料は、約60℃乃至約150℃、例えば、約70℃乃至約140℃又は約80℃乃至約130℃の融点、及び約100乃至約5,000、例えば、約200乃至約4,000又は約400乃至約3,000の分子量(Mn)を有することができる。ワックスの例としては、POLYWAX 500、655、850、1000のようなワックスの系列が挙げられる。
【0038】
その他の例としては、グラフト共重合で調製されるポリオレフィンの修飾無水マレイン酸炭化水素付加物、例えば、一般式
【化4】
[式中、Rは、約1乃至約50、又は約5乃至約35若しくは約6乃至約28の炭素原子を有するアルキル基であり、R’は、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、又は約5乃至約500、若しくは約10乃至約300若しくは約20乃至約200の炭素原子を有するアルキル基であり、xは約9乃至約13の整数であり、かつyは約1乃至約50、又は約5乃至約25若しくは約9乃至約13の整数である]であって、約50℃乃至約150℃、又は約60℃乃至約120℃若しくは約70℃乃至約100℃の融点を有するもの、
一般式
【化5】
[式中、xは約1乃至約50、又は約5乃至約25若しくは約9乃至約13の整数であり、yは1又は2であり、かつzは約1乃至約50、又は約5乃至約25若しくは約9乃至約13の整数である]のもの、及び一般式
【化6】
[式中、R
1及びR
3は炭化水素基であり、かつR
2は一般式
【化7】
のうちのいずれか一方であるか又はその混合物であり、R’はイソプロピル基である]であって、約70℃乃至約150℃、又は約80℃乃至約130℃若しくは約90℃乃至約125℃の融点を有することができる材料が挙げられ、修飾無水マレイン酸コポリマーの例としては、CERAMER 67(Mn=655、Mw/Mn=1.1)、CERAMER 1608(Mn=700、Mw/Mn=1.7)などが挙げられる。
【0039】
固体インクジェット用インクのための適切なインク展色剤の更なる例としては、ポリアミド、二量体酸アミド、脂肪酸アミド、エポキシ樹脂、流動パラフィン・ワックス、流動マイクロクリスタリン・ワックス、フィッシャー−トロプシュ・ワックス、ポリビニルアルコール樹脂、ポリオール、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリビニルピリジン樹脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリスルホンアミド、安息香酸エステル、フタル酸エステル可塑剤、クエン酸エステル可塑剤、マレイン酸エステル可塑剤、ポリビニルピロリジノン・コポリマー、ポリビニルピロリジノン/ポリ酢酸ビニル・コポリマー、ノボラック樹脂、及び天然物ワックス、直鎖第一級アルコールと長直鎖アミド又は脂肪酸アミドとの混合物、及び約4乃至約16の炭素原子を有する長直鎖スルホンが挙げられる。
【0040】
インクのために選択されるポリマー樹脂及びプロセスの例としては、同時係属中の米国特許出願番号第12/131,356号に記載のインクポリマー樹脂が挙げられる。
【0041】
結晶性樹脂は約30℃乃至約120℃、又は約50℃乃至約90℃の種々の融点を有することができる。結晶性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)での測定で、約1,000乃至約50,000、及び・又は約2,000乃至約25,000の数平均分子量(Mn)を有することができる。樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を用いたGPCによって求めると、約2,000乃至約100,000、又は約3,000乃至約80,000であり得る。結晶性樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は約2乃至約6、又は約2乃至約4であり得る。
【0042】
加えて、特許文献2及び特許文献8に記載されたインク展色剤を用いることもできる。例えば特許文献9に開示されているような液晶性材料でもまた、インク成分として適切なである。
インク展色剤は、前述の適切な材料のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。
インク展色剤は、インク重量の約20%乃至約99.5%、又はインク重量の約50%乃至約95%若しくは約70%乃至約80%を構成することができる。
【0043】
固体インクの多くのインク展色剤は、電気伝導率が実質的にゼロである。それゆえ、インクに一貫した伝導性を与えるために伝導率強化剤をインクに添加することができる。
特許文献10に記載のように、インクが顔料及び染料のような着色料、並びにドデシルベンゼンスルホン酸であるならば、固体インクの従来構成成分は、電気伝導率に寄与することができる。
【0044】
本明細書に開示される固体インクは、成分として、1つの有機塩、又は1つ若しくはそれ以上の適切な有機塩の混合物、例えば、約1乃至約10の有機塩、又は約1乃至約4若しくは約1乃至約2の有機塩を含むことができる。それぞれの有機塩は、任意の有効量、例えば、インクの約0.001重量パーセント乃至約8重量パーセント、又は約0.1重量パーセント乃至約5重量パーセント、若しくは約0.25重量パーセント乃至約5重量パーセントで、インク中に存在する。
【0045】
伝導率強化剤をその中に有する固体インクの伝導率は、約0.01μS/cm乃至約5μS/cm、例えば、約0.05μS/cm乃至約4μS/cm、又は約0.09μS/cm乃至約2.5μS/cmであり得る。
【0046】
固体又は相変化インクの場合、インク成分を一緒に混合し、続いて典型的には約60°乃至約140℃の温度まで加熱し、均質なインク組成物が得られるまで撹拌することができる。
【0047】
インク組成物はまた、一般に着色料を含むこともできる。着色料がインク展色剤中に溶解又は分散することができるという条件で、染料、顔料、その混合物などを含む任意の所望の又は有効な着色料をインク中で用いることができる。組成物は、カラーインデックス(C.I.)ソルベント染料、分散染料、修飾酸染料及び直接染料、塩基性染料、硫化染料、建染め染料などのような従来のインク着色料材料と組み合わせて用いることができる。
【0048】
適切な染料の例としては、Usharect Blue 86、Intralite Turquoise 8、Chemictive Brilliant Red 7BH、Levafix Black EB、 Reactron Red H8B、D&C Red #28、Direct Brilliant P ink B、Acid Tartrazine、Cartasol Yellow 6GF、Carta Blue 2GLNeozapon Red 492、Orasol Red G、Direct Brilliant P ink B、Aizen Spilon Red C−BH、Kayanol Red 3BL、Spirit Fast Yellow、Aizen Spilon Yellow C−GNH、Cartasol Brilliant Yellow 4GF、Pergasol Yellow CGP、Orasol Black RLP、Savinyl Black RLS、Morfast Black Conc.A、Orasol Blue GN、Savinyl Blue GLS、Luxol Fast Blue MBSN、Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs)、Basacid Blue 750、 Neozapon Black X51、Sudan Blue 670、Sudan Yellow 146、及びSudan Red 462が挙げられる。
【0049】
顔料もまた、インクに適した着色料である。適切な顔料の例としては、Violet PALIOGEN Violet 5100、PALIOGEN Violet 5890、HELIOGEN Green L8730、LITHOL Scarlet D3700、Sunfast(登録商標)Blue 15:4、Hostaperm Blue B2G−D、Permanent Red P−F7RK、Hostaperm Violet BL、LITHOL Scarlet 4440、Bon Red C、ORACET Pink RF、PALIOGEN Red 3871 K、Sunfast(登録商標)Blue 15:3、PALIOGEN Red 3340、Sunfast(登録商標)Carbazole Violet 23、LITHOL Fast Scarlet L4300、Sunbrite Yellow 17、HELIOGEN Blue L6900, L7020、Sunbrite Yellow 74、Spectra Pac(登録商標)C Orange 16、HELIOGEN Blue K6902,K6910、Sunfast(登録商標)Magenta 122、HELIOGEN Blue D6840,D7080、Sudan Blue OS、NEOPEN Blue FF4012、PV Fast Blue B2GO1、IRGALITE Blue BCA、PALIOGEN Blue 6470、Sudan Orange G、Sudan Orange 220、PALIOGEN Orange 3040、PALIOGEN Yellow 152、1560、LITHOL Fast Yellow 0991 K、PALIOTOL Yellow 1840、NOVOPERM Yellow FGL、Lumogen Yellow D0790、Suco−Yellow L1250、Suco−Yellow D1355、Suco Fast Yellow Dl 355、Dl 351、HOSTAPERM Pink E02、Hansa Brilliant Yellow 5GX03、Permanent Yellow GRL 02、Permanent Rubine L6B 05、FANAL Pink D4830、CINQUASIA Magenta,PALIOGEN Black L0084、Pigment Black K801、及びカーボンブラック、その混合物などが挙げられる。
【0050】
着色料は、一般に、例えば、インク重量の約0.1乃至約15%、例えば、インク重量の約0.5乃至約6%の量でインクに含まれる。
【0051】
固体又は相変化インクは硬化性インクとすることができ、この場合、組成物は一般に硬化性モノマーを含む。モノマーの硬化は、ラジカル的に又はカチオン的に開始することができる。適切な硬化性モノマー及び開始剤は特許文献2に記載されている。
【0052】
組成物は、噴射粘度を低減するための低粘度添加剤を更に含むことができる。例としては、VEctomers(登録商標)4230、3080及び5015、即ち
【化8】
が挙げられる。その他の適切な低粘度添加剤は、ドデカン二酸ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]
【化9】
である。
【0053】
付加的な随意の添加剤としては、界面活性剤、光安定剤、入射UV放射線を吸収しそれを最終的には消散される熱エネルギーに変換するUV吸収剤、抗酸化剤、画像の外観を改善して黄変を隠すことができる蛍光増白剤、チキソトロープ剤、ディウェッティング剤、スリップ剤、起泡剤、消泡剤、流動剤、ワックス、オイル、可塑剤、バインダ、電気伝導剤、防カビ剤、殺菌剤、有機及び/又は無機充填材粒子、均染剤、例えば、異なる光沢レベルをつくり出すか又は減少させる薬剤、乳白剤、帯電防止剤、分散剤などが挙げられる。組成物は、保存の間のオリゴマー及びモノマー成分の重合を妨げるか又は少なくとも遅延させることにより組成物を安定化し、それゆえ組成物の貯蔵寿命を延ばすことができる、ヒドロキノンのような阻害剤を含むことができる。しかしながら、添加剤は硬化速度に悪影響を与える可能性があり、それゆえ、随意の添加剤を用いて組成物を配合する場合には注意が必要となる。
【0054】
インク組成物は、随意に抗酸化剤を含むこともできる。インク組成物の随意の抗酸化剤は、酸化から画像を保護することに役立ち、インク調製プロセスの加熱工程の際の酸化からインク成分を保護することにも役立つ。適切な抗酸化剤の例としては、NAUGUARD(登録商標)シリーズの抗酸化剤445、524、76、及び512、IRGANOX(登録商標)1010のようなIRGANOX(登録商標)シリーズが挙げられる。存在する場合、随意の抗酸化剤は、任意の所望量の又は有効量、例えば、少なくともインクの約0.01乃至約20wt%、例えばインクの約0.1乃至約5wt%、又はインクの約1乃至約3wt%の量でインク中に存在することができる。
【0055】
インク組成物は、粘度調節剤を含むことができる。粘度調節剤の例としては、ステアロンのような脂肪族ケトンなどが挙げられる。存在する場合、随意的な粘度調節剤は、任意の所望量の又は有効量、例えばインクの約0.1乃至約99wt%、例えば、約1乃至約30wt%又は約10乃至約15wt%の量でインク中に存在することができる。
【0056】
インク組成物は、随意に、清澄剤:UNION CAMP(登録商標)X37−523−235;粘着剤:FORAL(登録商標)85、FORAL(登録商標)105、CELLOLYN(登録商標)21、ARAKAWA KE−311樹脂、合成ポリテルペン樹脂NEVTAC(登録商標)2300、NEVTAC(登録商標)100、及びNEVTAC(登録商標)80、WINGTACK(登録商標)86など;接着剤:VERSAMID(登録商標)757、759又は744、可塑剤:UNIPLEX(登録商標)250、SANTICIZER(登録商標)、SANTICIZER(登録商標)278、KP−140(登録商標)、MORFLEX(登録商標)150、トリメリット酸トリオクチルなどを含むこともできる。そのような添加剤を、その通常の目的のための従来の量で含まれるものとすることができる。
【0057】
インク組成物はまた、随意に、インク中に存在することができる分散剤又は界面活性剤を、典型的には重量の約0.01乃至約20重量%の量で含むことができる。用いることができる可塑剤としては、テトラ安息香酸ペンタエリスリトール、BENZOFLEX S552、くえん酸トリメチル(trimethyl titrate)、CITROFLEX 1、N,N−ジメチルオレアミド、HALCOMID M−18−OL、フタル酸ベンジル、SANTICIZER 278などが挙げられ、インク展色剤に添加することができ、インクのインク展色剤成分の約1乃至40%を構成することができる。可塑剤は、インク展色剤として機能するか、又はインク成分間の相溶性を与えるための薬剤として作用するかのいずれかであり得る。
【0058】
インク組成物は、酸化から画像及びインク成分を保護するために、随意にインク中に抗酸化剤を含むこともできる。抗酸化剤の例としては、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(IRGANOX 1098、Ciba−Geigy Corporation)、2,2−ビス(4−(2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル)プロパン(TOPANOL−205、ICI America Corporation)、イソシアヌル酸トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)(CYANOX 1790、41、322−4、LTDP、Aldrich)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスホニット(ETHANOX−398、Ethyl Corporation)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホニット(ALDRICH)、テトラステアリン酸ペンタエリスリトール(TCI America)、次亜リン酸トリブチルアンモニウム(Aldrich)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(Aldrich)、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(4−メトキシベンジル)フェノール(Aldrich)、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール(Aldrich)、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール(4-bromo-3,5-didimethylphenol)(Aldrich)、4−ブロモ−2−ニトロフェノール(Aldrich)、4−(ジエチルアミノメチル)−2,5−ジメチルフェノール(Aldrich)、3−ジメチルアミノフェノール(Aldrich)、2−アミノ−4−tert−アミルフェノール(Aldrich)、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール(Aldrich)、2,2’−メチレンジフェノール(Aldrich)、5−(ジエチルアミノ)−2−ニトロソフェノール(Aldrich)、2,6−ジクロロ−4−フルオロフェノール(Aldrich)、6−ジブロモフルオロフェノール(Aldrich)、α−トリフルオロ−o−クレゾール(Aldrich)、2−ブロモ−4−フルオロフェノール(Aldrich)、4−フルオロフェノール(Aldrich)、4−クロロフェニル−2−クロロ−1,1,2−トリ−フルオロエチルスルホン(Aldrich)、4−ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich)、3−フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、3,5−ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2−フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(Aldrich)、エチル−2−(4−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェノキシ)プロピオネート(Aldrich)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニルジホスホニット(Aldrich)、4−tert−アミルフェノール(Aldrich)、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルアルコール(Aldrich)、NAUGARD 76、NAUGARD 445、NAUGARD 512、及びNAUGARD 524(Uniroyal Chemical Company)など、並びにその混合物が挙げられる。抗酸化剤は、存在する場合、任意の所望量又は有効量、例えば、インク重量で約0.15%乃至約10%又は約0.2%乃至約3%の量でインク中に存在することができる。
【0059】
インクは、随意に、UV吸収剤を含むこともできる。本開示のインク及びプロセスのために選択される随意のUV吸収剤の例としては、同時係属中の米国特許出願番号第12/131,356号に記載のUV吸収剤が挙げられる。
【0060】
インクは、直接印刷インクジェット・プロセスのための装置において用いることができ、その場合、溶融インクの小滴が記録基材上に画像のパターンで噴出されるとき、その記録基材は最終記録基材である。あるいは、インクを間接(オフセット)印刷インクジェット用途に用いることもでき、その場合、溶融インクの小滴が記録基材上に画像のパターンに噴出されるとき、その記録基材は中間転写部材であり、画像のパターンのインクは、その後、中間転写部材から最終記録基材へと転写される。
【0061】
インクは好ましくは紙上でのイメージの形成に用いられるが、基材は、紙、ボール紙、厚紙、布、トランスペアレンシー、プラスチック、ガラス、木などの任意の適切な材料とすることができる。
【0062】
本開示は、本明細書に記載のインクを含むプリンタにも向けられる。特に、本開示は、本明細書に記載のインクを含むプリンタ・カートリッジ、並びにそのプリンタ・カートリッジを含むプリンタに関する。
【0063】
本開示は、画像を形成するためにインクを塗布する方法にも関する。実施形態において、この方法は、第一の温度又はそれを超える温度においてインクを準備すること、インクを基材に塗布して画像を形成することを含み、基材は第二の温度又はそれを下回る温度である。好ましい実施形態において、組成物は、インクジェット印刷によって画像上に塗布される。
【実施例】
【0064】
Licowax(登録商標)SWは、Clariantより入手可能な酸性ワックスであり、示差走査熱量測定(DSC)で計測した融点は約80℃であり、115−135mgKOH/gの酸価を有する。調製されたインクの組成を表2に示す。すべてのインクは、インク成分を予備溶融し、続いて溶融物を加熱容器中で徐々に染料を加えながら4時間撹拌することによって調製した。すべてのインクは、その後、0.45ミクロンのParkerフィルタを通して濾過し、評価した。市販の固体インクジェット用インクを対照として測定した。
【0065】
表2:改善された引っ掻き傷及び折り目のためのインクの組成
【0066】
(表2続き)
構成成分A: メチルアミド、長鎖脂肪カルボン酸(C28カルボン酸)の塩である、Unicid 425
構成成分B: 特許文献11に記載のような分岐鎖トリアミド
構成成分C: 種々のロジンをエステル化し、得られたエステルを水素化又は精製に付すことにより調製される製品である、KE 100 Pinecrystal、
構成成分D: S180、ステアリルステアルアミド
構成成分E: 特許文献12の実施例1に記載のようなジ−ウレタン樹脂製品
構成成分F: ポリエチレン・ワックス
構成成分G: 特許文献6の実施例4に記載のようなウレタン製品
構成成分H: Blue Mustang Dye
構成成分I: 4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンである、NAUGARD 445、
【0067】
インク組成物の詳細な説明
インクIにおいて、市販で入手可能な固体インクジェット用インク(対照)において用いられているポリエチレン・ワックスの半量をLicowax(登録商標)SWで置き換えた。後述のように、インクIは劇的に改善された引っ掻き及び折り目特性を示した。引っ掻き及び折り目の性能を、スキャナをベースとした画像品質評価ルーチンを用いて定量化した。画像をスキャンし、引っ掻き傷又は折り目がついた領域を測定した。引っ掻き傷及びしわができた領域が広いことは、性能が低いことを示す。
【0068】
インクIIはインクIの複製である。インクIIIもまた、市販の固体インクジェット用インクをベースとしている。インクIの場合のように、インクIIIの中のポリエチレン・ワックスの半量は、Licowax(登録商標)SWで置き換えられている。他の4つのインク、IV、V、VI及びVIIも、改善された特性に影響を与えることなく、Licowax(登録商標)SWの濃度を低下させる一方でポリエチレン・ワックス含量を増加させることにより調製した(表2に記載)。Licowax(登録商標)SWの濃度は、それぞれ、20%、15%、10%及び5%まで減らした。
【0069】
印刷の評価
最終的に濾過されたインクを、市販の固体インクジェット用インクのプリンタで評価した。印刷プロセス/画像品質のパラメータを、低エネルギーインクで動作するように改造されたPhaser 8400プリンタを用いて決定した。パラメータを、同一のプリンタにて同一の動作条件で印刷された市販の低エネルギー固体インクジェット用インクと比較する。小滴の大きさ(dropmass)、ドラム温度、予熱温度、及びトランスフィックス速度(transfix velocity)、印刷解像度のような動作条件を、必要に応じ調節した。全ての測定は、75gsm/20ポンド紙(Xerox)を用いて行った。
【0070】
評価方法及び定量基準(quantification metrics)が表3に記載されており、それらはXeroxで開発されたスキャナに基づくIQ定量基準及び目視による定量の両方によって行われた。
【0071】
表3:前述のインクのための試験標的及び定量基準
【0072】
印刷評価
上記インクの全てを、既存のインク開発方法を用いて濾過した。最終的に濾過されたインクを、Phaser 8400のシアンインク用タブの中に注入し、評価した。印刷プロセス/画像品質パラメータを、Lance低エネルギーインクで動作するように改造されたPhaser 8400プリンタを用いて決定した。パラメータを、同一のプリンタにて同一の動作条件で印刷された市販の固体インクジェット用インクと比較する。印字ヘッド発射頻度、予熱温度、トランスフィックス速度、及び印刷解像度のような動作条件を、必要に応じて調整した。全ての測定は75gsm/20ポンド紙(Xerox)を用いて行う。
【0073】
インクIを市販の固体インクジェット用インク(対照)と比較した。市販の固体インクジェット用インクと比較して、インクIの引っ掻き特性及び折り目特性の顕著な改善が観察された。
【0074】
さらに、Oce ColorWave 600 TonerPearlsインクの例を評価した。Oceによる印刷物のインク被覆率は不明であるが、これは大まかな参照としての役割を果たす。印刷物を手で折りたたんだ。機械による折りたたみは、手による折りたたみよりも過酷であるが、印刷物を手で折りたたんだ試験は、Oceによる印刷物との比較を目的とする。
【0075】
印刷物をさらに、各々が特定の重量下にある鋭利な三つの金属フィンガと固定された圧盤とからなる装置を用いて引っ掻いた。この試験において、印刷物は圧盤上に固定される。続いて、フィンガを印刷物に接触するまで降下させる。次いで、フィンガをモータによって一定速度で動かす。異なるフィンガが、重度、中程度、及び軽度の3つのレベルの引っ掻き傷を作り出す。
【0076】
インクIにおいて、市販の固体インクジェット用インクと比べて顕著な改善が観察された。インクIにおいて、中程度の引っ掻き傷はほとんど存在しなかったのに対し、市販の固体インクジェット用インクでは、中程度の引っ掻き傷は明確であった。
【0077】
インクの評価の結論
インクIはまた、Oce試料に匹敵する最良の引っ掻き性能も有していた。インク22及び24はインクIと同様であり、改善された引っ掻き及び機械折り目特性を示す。