特許第5997222号(P5997222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5997222-インジェクタ駆動装置 図000002
  • 特許5997222-インジェクタ駆動装置 図000003
  • 特許5997222-インジェクタ駆動装置 図000004
  • 特許5997222-インジェクタ駆動装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997222
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】インジェクタ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/36 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   F02D41/36 B
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-181091(P2014-181091)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-56693(P2016-56693A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】秋山 博志
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3573001(JP,B2)
【文献】 特開2012−159025(JP,A)
【文献】 特開2007−146721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00−45/00
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数気筒を有する内燃機関の各気筒に燃料をそれぞれ噴射するインジェクタに駆動電力を供給するインジェクタ駆動装置であって、
前記複数気筒は少なくとも第1の気筒群及び第2の気筒群を有する複数のグループに分けられ、
外部電源から供給される電力の電圧を昇圧する昇圧回路と、
前記第1の気筒群の前記インジェクタに供給される電力を蓄積する第1のコンデンサと、
前記第2の気筒群の前記インジェクタに供給される電力を蓄積する第2のコンデンサと、
前記昇圧回路の出力を前記第1のコンデンサ又は前記第2のコンデンサに選択的に供給するスイッチ素子と、
前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの充電量がいずれも所定値以下である場合に、前記昇圧回路の出力を次回に予定される燃料噴射開始までの期間が短い側のコンデンサに対して優先的に供給するよう前記スイッチ素子を切り替える制御手段と
を備えることを特徴とするインジェクタ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒内燃機関の各気筒のインジェクタに開弁電圧を供給するインジェクタ駆動装置に関し、特に異なる気筒間で噴射時期が隣接する場合における噴射時期の設定自由度を向上したものに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧されたガソリンを、直接燃焼室内(シリンダ筒内)に噴射するガソリン用直噴インジェクタの駆動装置においては、高い燃料圧力でも噴射弁の開弁を安定して行えるよう、バッテリからの電圧を昇圧させる高電圧電源が組み込まれている。
このようなインジェクタ駆動装置においては、開弁開始時に一時的に高電圧を印加し、電流量を増やして電磁石で弁を開き、その後は電圧を低下させて通常の電装品駆動用バッテリ(例えばDC12V)から供給される電力によって、電流を減らしながら開弁状態を維持する制御を行なっている。
【0003】
一般に上述したような高電圧電源は、DC−DCコンバータである昇圧回路、及び、電力を一時的に蓄積可能なコンデンサを有して構成されている。
昇圧回路は比較的高価かつサイズも大きいため、複数の気筒を有し各気筒にインジェクタを装着するエンジンであっても、6気筒程度のエンジンまでは一組の昇圧回路及びコンデンサから各気筒に高電圧を供給する場合が多い。
このような場合に、高電圧電源は、インジェクタ開弁時に一時的に利用するのみであり、昇圧回路を高電圧で複数気筒に連続して大電流を流せるように設計を行うと非常に高価かつサイズが大きいものとなるため、昇圧回路及びコンデンサの容量を最適化し、充放電を繰り返して利用する設計とすることが一般的である。
例えば、等間隔燃焼(等間隔点火)の多気筒エンジンにおいて、1サイクル中に1回しか噴射しない場合は、噴射開始時期が重なることはありえず、一般に最高回転数で上記した充放電サイクルが成立するように電源要求能力の最低値を求め、高電圧電源の仕様を決定している。
【0004】
しかし、最近では燃料噴射期間に対して行程期間が長い場合には、筒内での燃料混合、混合気形成の観点から、複数回に分割して噴射を行う場合がある。
例えば3気筒以上の複数気筒を有するエンジンで複数回噴射を、例えば吸気行程と圧縮行程の2行程にまたがるようにして噴射する場合、噴射タイミングの設定によっては噴射開始時期が重なり、高電圧電源を実質的に同時に利用しなければならない状況が発生する。
3気筒の240°CA(クランクシャフト角度)等間隔燃焼のエンジンでは複数回噴射のそれぞれの噴射に対し噴射間隔が240°CAとなる噴射が含まれる場合、4気筒の180°CA等間隔燃焼のエンジンでは複数回のそれぞれの噴射に対し噴射間隔が180°CAとなる噴射が含まれる場合がこれに該当する。
【0005】
このように高電圧電源を複数の気筒で同時に使う場合や、短期間に連続して高電圧電源を使う場合には、インジェクタ通電電流や印加電圧が変動し、開弁特性が変化して燃料噴射量にばらつきが生じるため、噴射タイミングの設定に制約が生じる。
しかし、燃費や排ガス等のエンジン性能の最適化を図る場合、このような制約を受けるタイミングが最適値であることがあり、こうした場合にはインジェクタ駆動の制約のためにエンジンの性能を最適化することができない事態となる。
【0006】
このような問題に対処するための従来技術として、例えば特許文献1には、動作の重ならないインジェクタをグループ化し、グループ毎に電力を溜めるコンデンサを配置することが記載されている。
また、特許文献2には、コンデンサの上流にスイッチ素子を設けて、放電されていないコンデンサを選択して充電可能な回路構成とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3573001号
【特許文献2】特開2000−345898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、コンデンサ放電中に昇圧回路を利用すると、電源電圧に変動が生じ問題が発生するため、放電中は昇圧を停止させることになる。
この場合、単発の重なりでは問題が発生しないが、短期間に複数回動作させるためには、グループ間の充電サイクル干渉の課題が生じる。
これに対し、特許文献2に記載された技術のように、コンデンサを選択的に充電可能とすれば昇圧回路の利用時間を増加でき、グループ間の充放電サイクル干渉の制約をある程度緩和することはできるが、十分ではない。
以上説明した問題に鑑み、本発明の課題は、異なる気筒間で噴射時期が隣接する場合における噴射時期の設定自由度を向上したインジェクタ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、複数気筒を有する内燃機関の各気筒に燃料をそれぞれ噴射するインジェクタに駆動電力を供給するインジェクタ駆動装置であって、前記複数気筒は少なくとも第1の気筒群及び第2の気筒群を有する複数のグループに分けられ、外部電源から供給される電力の電圧を昇圧する昇圧回路と、前記第1の気筒群の前記インジェクタに供給される電力を蓄積する第1のコンデンサと、前記第2の気筒群の前記インジェクタに供給される電力を蓄積する第2のコンデンサと、前記昇圧回路の出力を前記第1のコンデンサ又は前記第2のコンデンサに選択的に供給するスイッチ素子と、前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの充電量がいずれも所定値以下である場合に、前記昇圧回路の出力を次回に予定される燃料噴射開始までの期間が短い側のコンデンサに対して優先的に供給するよう前記スイッチ素子を切り替える制御手段とを備えることを特徴とするインジェクタ駆動装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次回放電までの時間の短い気筒群のコンデンサを優先して充電し、充電完了後に他方のコンデンサを充電することによって、気筒群間の充放電サイクルの干渉の影響を低減することができる。
また、複数のコンデンサを独立して充放電させることができるため、複数気筒のインジェクタを同時に開弁することや、一方のコンデンサの放電中に他方のコンデンサを充電することも可能となる。
これによって、異なる気筒間で噴射時期が隣接する場合における噴射時期の設定自由度を向上したインジェクタ駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の参考例であるインジェクタ駆動装置の構成を示す図である。
図2】4気筒エンジンにおける各気筒の噴射時期の一例を示すタイミングチャートである。
図3】本発明を適用したインジェクタ駆動装置の実施例の構成を示す図である。
図4】実施例のインジェクタ駆動装置におけるコンデンサの充電制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、異なる気筒間で噴射時期が隣接する場合における噴射時期の設定自由度を向上したインジェクタ駆動装置を提供する課題を、点火順序が360°間隔となる2気筒を組み合わせるようグループ分けされた気筒群のそれぞれに、インジェクタ開弁時に高電圧を供給するコンデンサを設けるとともに、各コンデンサがいずれも充電必要な状態である場合に、次回に予定される燃料噴射開始までの期間が短い側のコンデンサを優先的に充電することによって解決した。
【0013】
先ず、本発明を適用したインジェクタ駆動装置の実施例の説明に先立ち、本発明の参考例であるインジェクタ駆動装置について説明する。
図1は、参考例のインジェクタ駆動装置の構成を示す図である。
参考例のインジェクタ駆動装置は、例えば、乗用車等の自動車に走行用動力源として搭載される4気筒の直噴ガソリンエンジンのインジェクタを駆動するものである。
このエンジンは、180°CA等間隔燃焼をするものであり、点火順序は、例えば、第1気筒−第3気筒−第2気筒−第4気筒の順となっている。
【0014】
インジェクタ駆動装置1は、図示しない燃料ポンプによって加圧され、蓄圧容器内で蓄圧された燃料が供給される第1気筒インジェクタ11、第2気筒インジェクタ12、第3気筒インジェクタ13、第4気筒インジェクタ14の電磁石に電力を供給し、所定の開弁時期にニードルバルブを駆動して開弁させ、シリンダ筒内に燃料を噴射させるものである。
インジェクタ駆動装置1は、昇圧回路20、コンデンサ30、バッテリ40、昇圧電力供給素子50、高電圧供給素子61,62、低電圧供給素子71,72、インジェクタ通電素子81〜84、エンジン制御ユニット90等を有して構成されている。
【0015】
第1気筒インジェクタ11、第2気筒インジェクタ12、第3気筒インジェクタ13、第4気筒インジェクタ14は、それぞれ図示しないエンジンの第1気筒、第2気筒、第3気筒、第4気筒の燃焼室内(シリンダ筒内)に直接燃料を噴射するものである。
各インジェクタ11〜14は、開弁時には昇圧回路20によって昇圧され、コンデンサ30に蓄電された高電圧電力を供給されるとともに、一旦開弁した後は、一般電装品駆動用のバッテリ40から供給される低電圧電力(例えば12V)によって開弁状態を維持し、その後通電停止に伴い閉弁されるようになっている。
各インジェクタ11〜14は、燃焼時期(点火時期)が360°CA異なった2気筒を組み合わせて2つのグループ(気筒群)に分けられている。
本実施例においては、第1気筒インジェクタ11、第2気筒インジェクタ12が第1の気筒群のインジェクタ、第3気筒インジェクタ13、第4気筒インジェクタ14が第2の気筒群のインジェクタとなっている。
【0016】
昇圧回路20は、バッテリあるいはオルタネータから供給される比較的低電圧の電力を昇圧して出力するDC−DCコンバータである。
コンデンサ30は、昇圧回路20が出力する高電圧の電力を蓄える蓄電手段である。
バッテリ40は、車両の各種電装品に電力を供給する二次電池である。
なお、図1においては、図示を容易とするためバッテリ40を二か所図示しているが、実際にはこれらは単一のバッテリとなっている(後述する図3において同じ)。
バッテリ40は、例えば、DC12Vの定格出力を有する鉛バッテリであって、オルタネータが発電する電力によって充電される。
【0017】
昇圧電力供給素子50、高電圧供給素子61,62、低電圧供給素子71,72、インジェクタ通電素子81〜84は、それぞれエンジン制御ユニット90からの信号に応じて通電をオンオフ切替可能なFET等を有するスイッチ素子である。
【0018】
昇圧電力供給素子50は、昇圧回路20からコンデンサ30への電力供給をオンオフするものである。
昇圧電力供給素子50は、コンデンサ30の充電が不要(蓄電された電力量が所定値以上)である場合、及び、コンデンサ30が放電中にはオフされ、その他の場合にはオンされてコンデンサ30を充電するようになっている。
なお、一般的に用いられているフライバック昇圧回路においては、昇圧電力供給素子50は設けられていない場合も多い。
【0019】
高電圧供給素子61は、コンデンサ30が出力する高電圧電力を、第1の気筒群のインジェクタである第1気筒インジェクタ11及び第2気筒インジェクタ12に供給するものである。
高電圧供給素子62は、コンデンサ30が出力する高電圧電力を、第2の気筒群のインジェクタである第3気筒インジェクタ13及び第4気筒インジェクタ14に供給するものである。
【0020】
低電圧供給素子71は、バッテリ40が出力する低電圧電力を、第1の気筒群のインジェクタである第1気筒インジェクタ11及び第2気筒インジェクタ12に供給するものである。
低電圧供給素子72は、バッテリ40が出力する低電圧電力を、第2の気筒群のインジェクタである第3気筒インジェクタ13及び第4気筒インジェクタ14に供給するものである。
【0021】
インジェクタ通電素子81〜84は、それぞれ第1気筒インジェクタ11〜第4気筒インジェクタ14の接地側に設けられたスイッチ素子であり、各インジェクタ11〜14への通電オンオフを個別に切り換えるものである。
【0022】
エンジン制御ユニット(ECU)90は、エンジン及びその補器類を統括的に制御するものである。
ECU90は、例えば、CPU等の情報処理手段、RAMやROM等の記憶手段、入出力インターフェイス及びこれらを接続するバス等を有して構成されている。
ECU90は、昇圧電力供給素子50、高電圧供給素子61,62、低電圧供給素子71,72、インジェクタ通電素子81〜84などの各スイッチ素子を、所定の燃料噴射タイミングに応じて個別にオンオフ切替する機能を有している。
【0023】
例えば第1の気筒群の第1気筒インジェクタ11が噴射を行う場合、開弁時には高電圧供給素子61をオン、低電圧供給素子71をオフ、インジェクタ通電素子81をオンとして、コンデンサ30から高電圧電力を供給する。
その後、開弁動作が完了後、高電圧供給素子61をオフ、低電圧供給素子71をオン、インジェクタ通電素子81をオンとして、バッテリ40からの低電圧電力に切り換え、開弁状態を維持する。
所定の開弁期間を経過後は、インジェクタ通電素子81をオフとして、第1気筒インジェクタ11への通電を停止し、閉弁させる。
【0024】
次に、4気筒ガソリン直噴エンジンにおける噴射時期制御について説明する。
図2は、4気筒エンジンにおける各気筒の噴射時期の一例を示すタイミングチャートである。
図2に示す例においては、1サイクルあたりの噴射回数は例えば4回であり、分割比は例えば0.25(各回等分)である。また、各回の噴射パルス幅は、例えば、600usである。
【0025】
第1噴射、第2噴射、第3噴射、第4噴射の噴射開始時期は、クランク角度にして、吸気開始時の上死点から、それぞれ90°、160°、280°、310°である。
図2において、第1気筒の第1〜第4噴射に、それぞれ#1 1st〜#1 4thの符号を付して図示している。
また、第4気筒の第3、4噴射に、それぞれ#4 3rd、#4 4thの符号を付して図示している。
また、第3気筒の第1、第2噴射に、それぞれ#3 1st、#3 2ndの符号を付して図示している。
なお、各噴射時期において、実線は噴射期間(開弁期間)を示し、これに引き続く破線は噴射後におけるコンデンサ30の充電に必要な期間を示している。
また、噴射期間内において、噴射開始から一点鎖線までの部分は高電圧電力の供給期間(開弁動作期間)を示し、その後の部分は低電圧電力の供給期間(開弁維持期間)を示している。
コンデンサ30の充電に必要な期間は、一点鎖線の高電圧電力の供給期間終了後から破線期間で示される。
【0026】
図2に示すように、第1気筒の第1噴射の直後には、第4気筒の第3噴射、第4噴射が順次行われ、その後第1気筒の第2噴射が行われる。
また、第1気筒の第3噴射の直前には、第3気筒の第1噴射が行われ、第1気筒の第4噴射の後には、第3気筒の第2噴射が行われる。
参考例のインジェクタ駆動装置においては、このように第1の気筒群と第2の気筒群のインジェクタとが短い時間間隔で順次噴射を行う場合には、コンデンサ30の充電を十分に行うことができず、開弁時の電圧、電流が変動して動作が不安定となることが懸念される。
【0027】
次に、本発明を適用したインジェクタ駆動装置の実施例について説明する。
上述した参考例と実質的に共通する箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図3は、実施例のインジェクタ駆動装置の構成を示す図である。
実施例のインジェクタ駆動装置1は、参考例におけるコンデンサ30に代えて第1コンデンサ31、第2コンデンサ32を設け、参考例における昇圧電力供給素子50に代えて、各コンデンサ31,32に個別に電力を供給する昇圧電力供給素子51,52をそれぞれ設けたものである。
第1コンデンサ31は、第1気筒インジェクタ11、第2気筒インジェクタ12に開弁時の高電圧電力を供給するものである。
第2コンデンサ32は、第3気筒インジェクタ13、第4気筒インジェクタ14に開弁時の高電圧電力を供給するものである。
昇圧電力供給素子51は、昇圧回路20から第1コンデンサ31への電力供給をオンオフするものである。
昇圧電力供給素子52は、昇圧回路20から第2コンデンサ32への電力供給をオンオフするものである。
【0028】
また、実施例においては、高電圧供給素子61は、第1コンデンサ31が出力する電力を第1の気筒群のインジェクタである第1気筒インジェクタ11、第2気筒インジェクタ12に供給し、高電圧供給素子62は、第2コンデンサ32が出力する電力を第2の気筒群のインジェクタである第3気筒インジェクタ13、第4気筒インジェクタ14に供給するようになっている。
【0029】
実施例においては、ECU90は、昇圧電力供給素子51,52のオンオフを相互に反転させつつ同期して切り替えることによって、第1コンデンサ31、第2コンデンサ32のいずれか一方を選択的に充電できるようになっている。
以下、この充電制御について詳細に説明する。
【0030】
図4は、実施例のインジェクタ駆動装置におけるコンデンサの充電制御を示すフローチャートである。
以下ステップ毎に順を追って説明する。
【0031】
<ステップS01:第1コンデンサ充電要否判断>
ECU90は、第1コンデンサ31に蓄えられている電力量を検出し、所定値未満である場合には充電が必要であるとしてステップS02に進む。
一方、電力量が所定値以上である場合には充電は不要であるとしてステップS04に進む。
【0032】
<ステップS02:第2コンデンサ充電要否判断>
ECU90は、第2コンデンサ32に蓄えられている電力量を検出し、所定値未満である場合には充電が必要であるとしてステップS03に進む。
一方、電力量が所定値以上である場合には充電は不要であるとしてステップS05に進む。
【0033】
<ステップS03:次回放電タイミング判断>
ECU90は、それ自体が保持している燃料噴射時期制御マップ等を参照して、第1の気筒群のインジェクタである第1気筒インジェクタ11、第2気筒インジェクタ12のうち次回噴射時期が早いほうの噴射開始時期が、第2の気筒群のインジェクタである第3気筒インジェクタ13、第4気筒インジェクタ14のうち次回噴射時期が早いほうの噴射開始時期に対して早く到来するか否かを判別する。
第1の気筒群のインジェクタのほうが第2の気筒群のインジェクタに対して早く次回噴射開始時期が到来する場合にはステップS07に進み、その他の場合にはステップS08に進む。
【0034】
<ステップS04:第2コンデンサ充電要否判断>
ECU90は、第2コンデンサ32に蓄えられている電力量を検出し、所定値未満である場合には充電が必要であるとしてステップS06に進む。
一方、電力量が所定値以上である場合には充電は不要であるとして、一連の処理を終了(リターン)する。
このときは、昇圧電力供給素子51,52はいずれもオフとされ、第1コンデンサ31、第2コンデンサ32はともに充電されない。
【0035】
<ステップS05:第1コンデンサ充電>
ECU90は、昇圧電力供給素子51をオン、昇圧電力供給素子52をオフとして、第1コンデンサ31を充電する。
その後、一連の処理を終了する。
【0036】
<ステップS06:第2コンデンサ充電>
ECU90は、昇圧電力供給素子51をオフ、昇圧電力供給素子52をオンとして、第2コンデンサ32を充電する。
その後、一連の処理を終了する。
【0037】
<ステップS07:第1コンデンサ充電>
ECU90は、昇圧電力供給素子51をオン、昇圧電力供給素子52をオフとして、第1コンデンサ31を充電する。
その後、一連の処理を終了する。
【0038】
<ステップS08:第2コンデンサ充電>
ECU90は、昇圧電力供給素子51をオフ、昇圧電力供給素子52をオンとして、第2コンデンサ32を充電する。
その後、一連の処理を終了する。
【0039】
以上説明した実施例によれば、第1コンデンサ31、第2コンデンサ32のうち、次回放電までの時間の短い側のコンデンサを優先して充電し、充電完了後に他方のコンデンサを充電することによって、気筒群間の充放電サイクルの干渉の影響を低減することができる。
また、第1、第2コンデンサ31,32を独立して充放電させることができるため、異なる気筒のインジェクタ11〜14を同時に開弁させたり、一方のコンデンサを放電させながら他方のコンデンサを充電することも可能となる。
これによって、異なる気筒間で噴射時期が隣接する場合における開弁動作を安定化したインジェクタ駆動装置を提供することができ、燃料噴射時期の設定自由度を高めて排ガスや燃費といったエンジンの性能を最適化することができる。
また、実施例の構成とした場合、参考例に対してコンデンサ及びスイッチ素子を各一個追加すればよいため、追加する電気素子が少なく、コストアップを抑制することができる。
【0040】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施例においてはエンジンは例えば4気筒であるが、本願発明は6気筒など異なる排気量のエンジンにも適用することができる。また、インジェクタのグループ化も、実施例のような2グループに限らず、3以上のグループに分けることができる。例えばV型8気筒エンジンの場合には、各バンクの気筒をそれぞれ2グループに分け、バンク毎に上述した実施例と同様の制御を行ってもよい。
(2)コンデンサ、スイッチング素子の配置など回路構成は実施例の構成に限らず、適宜変更することが可能である。
(3)実施例においては、エンジンは例えばガソリン直噴エンジンであったが、本発明はこれに限らず他の燃料を用いるエンジンにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 インジェクタ駆動装置
11 第1気筒インジェクタ 12 第2気筒インジェクタ
13 第3気筒インジェクタ 14 第4気筒インジェクタ
20 昇圧回路 30 コンデンサ
31 第1コンデンサ 32 第2コンデンサ
40 バッテリ 50〜52 昇圧電力供給素子
61,62 高電圧供給素子 71,72 低電圧供給素子
81〜84 インジェクタ通電素子 90 エンジン制御ユニット(ECU)
図1
図2
図3
図4