特許第5997238号(P5997238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997238複数のスピーカ及びマイクロホンアレイを測定するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997238
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】複数のスピーカ及びマイクロホンアレイを測定するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 29/00 20060101AFI20160915BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   H04R29/00 310
   H04R3/00 320
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-242972(P2014-242972)
(22)【出願日】2014年12月1日
(62)【分割の表示】特願2013-501821(P2013-501821)の分割
【原出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2015-80233(P2015-80233A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】10159914.0
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/319,712
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】ズィルズル アンドレーアス
(72)【発明者】
【氏名】ティールガルト オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】デル ガルド ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ラング マティーアス
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−069774(JP,A)
【文献】 特開平07−218614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 29/00
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3対のマイクロホン(R1、R2、R3、R4、R5、R6)と、
3つの直交する空間軸のうちの1つの空間軸において、マイクロホンの各対を支持するための機械的支持体であって、前記3つの直交する空間軸は、2つの水平軸および1つの垂直軸を有する、前記機械的支持体と
前記3つの直交する空間軸が互いに交差する位置に設置される第7のマイクロホン(R7)と、を含み、
前記機械的支持体は、第1の水平方向の機械軸(31)と、第2の水平方向の機械軸(32)と、前記第1および第2の水平方向の機械軸(31、32)の交点と交差する仮想の垂直軸に対して中心を外して設置される第3の垂直方向の機械軸(33)とを含み、
前記第3の垂直方向の機械軸(33)は、上部の水平方向のロッド(34a)および下部の水平方向のロッド(34b)に固定され、前記上部の水平方向のロッド(34a)および前記下部の水平方向のロッド(34b)は、前記第1の水平方向の機械軸または前記第2の水平方向の機械軸と平行であり、
前記第3の垂直の機械軸(33)は、連結場所(35)において、前記第7のマイクロホン(R7)の場所と、前記3対のマイクロホンのうちの1対の隣接するマイクロホン(R2)との間で、前記第1および第2の水平方向の機械軸のうちの1つに固定されることを特徴とする、マイクロホンアレイ。
【請求項2】
リスニングルームにおける前記マイクロホンアレイの位置決めのためのレーザ(30)であって、レーザ光線が前記水平軸(31、32)のうちの1つと平行である又は一致するように前記機械的支持体に固定して連結される、前記レーザ、
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロホンアレイ。
【請求項3】
マイクロホンの各対の前記マイクロホン間の距離が5cmと8cmとの間にあることを特徴とする、請求項に記載のマイクロホンアレイ。
【請求項4】
すべてのマイクロホンは、前記マイクロホンが同じ方向に方向付けられるように、前記機械的支持体に固定された音圧マイクロホンであることを特徴とする、請求項に記載のマイクロホンアレイ。
【請求項5】
3対のマイクロホン(R1、R2、R3、R4、R5、R6)と、
3つの直交する空間軸のうちの1つの空間軸において、マイクロホンの各対を支持するための機械的支持体であって、前記3つの直交する空間軸は、2つの水平軸および1つの垂直軸を有する、前記機械的支持体と、
リスニングルームにおける前記マイクロホンアレイの位置決めのためのレーザ(30)であって、レーザ光線が前記水平軸(31、32)のうちの1つと平行である又は一致するように前記機械的支持体に固定して連結される、前記レーザと、
を含むことを特徴とする、マイクロホンアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リスニングエリアの異なる位置に配置されたスピーカのための音響測定、特に、リスニングエリアにおいて三次元配置で配置された多数のスピーカの効率的な測定に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、ドイツのエルランゲンにあるフラウンホーファーIISのリスニングルームを示す。このリスニングルームは、リスニングテストを実行するために必要である。これらのリスニングテストは、オーディオコード体系を評価するために必要である。リスニングテストの比較可能かつ再現可能な結果を保証するために、図2に示されたリスニングルームなどの、標準化されたリスニングルームでこれらのテストを実行することが必要である。このリスニングルームは、勧告ITU―R BS 1116―1に準拠する。この部屋において、54個という多数のスピーカが、三次元スピーカ・セットアップとして載置される。スピーカは、天井から懸吊された2層全周性のトラス、および、壁上のレール・システムに載置される。多数のスピーカは、高い適応性を供給し、そのことは、学術的な研究と現在及び将来の音響フォーマットの研究の両方のために必要である。
【0003】
この種の多数のスピーカについて、それらが正しく動作していることやそれらが適切に接続されていることを検査することは、時間のかかる、煩わしいタスクである。一般的に、各スピーカは、スピーカボックスで個々の設定を有する。加えて、特定のオーディオ信号を特定のスピーカに移すことを可能にするオーディオマトリクス(audio matrix)が存在する。さらに、特定の支持体に固定して取り付けられたスピーカは別として、すべてのスピーカが正しい位置にあることを保証することはできない。特に、図2で床に立っているスピーカは前後にも左右にもシフトすることができて、従って、リスニングテストの始めに、すべてのスピーカがそれらがなければならない位置にあること、すべてのスピーカがそれらが有するべき個々の設定を有すること、そして、オーディオマトリクスが正しくスピーカ信号をスピーカに割り当てるために特定の状態にセットされることを保証することができない。このようなリスニングルームが複数の研究グループにより使用されることは別として、電気的および機械的な故障が時々起こりうる。
【0004】
特に、以下の典型的な問題が生じる。これらは、以下の通りである。
●スイッチを入れられない、あるいは、接続されないスピーカ
●誤ったスピーカに送られた信号、誤ったスピーカと接続された信号ケーブル
●オーディオ・ルーティング・システムで、あるいは、スピーカで誤って調節された1つのスピーカのレベル
●オーディオ・ルーティング・システムで、あるいは、スピーカで誤って設定された等化器
●マルチウェイ・スピーカの単一のドライバの破損
●スピーカが誤って位置付けられる、方向付けられる、あるいは、物体が音響経路を妨げている。
【0005】
通常、リスニングエリアのスピーカ・セットアップの機能を手動で評価するために、かなりの時間が必要である。この時間は、各スピーカの位置および方向を手動で検査するために必要である。加えて、各スピーカは、正しいスピーカ設定を見つけ出すために、手動で検査されなければならない。一方で信号ルーティングの電気的な機能性を、他方で個々のスピーカを検査するために、リスニングテストを行うのに非常に熟練した人が必要である。そのテストでは、一般的に、各スピーカがテスト信号によって励磁され、次に、熟練した聴取者が、彼の知識に基づいて、このスピーカが正しいかどうかを評価する。
【0006】
この手法が非常に熟練した人が必要であるという事実のために費用がかかることは、明らかである。加えて、この手法は、すべてのスピーカの検査が、一般的に、ほとんどまたは全てのスピーカが正しい位置に置かれ、正しくセットされることを表すという事実のため、時間がかかるが、他方で、発見されない1つの又はいくつかの欠陥がリスニングテストの意義を無効にしうるので、この手法を省くことができない。最後に、たとえ熟練した人がリスニングルームの機能解析を行う場合であっても、エラーは、それどもなお除外されない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ITU−R勧告−BS.1116−1、「マルチチャンネル音響システムを含むオーディオ・システムにおける微小音質劣化の主観評価の方法」、1997年、ITU:スイス、ジュネーブ、p.26(ITU−R Recommendation−BS.1116−1,“Methods for the subjective assessment of small impairments in audio systems including multichannel sound systems”,1997,Intern.Telecom Union:Geneva,Switzerland,p.26.)
【非特許文献2】A.ジルツレら著、「フラウンホーファーIIS オーディオ研究所の新しいスタジオ及びリスニングルームの背後にあるビジョンとテクニック」、第126回AESコンベンション、ミュンヘン、ドイツ、2009年(A.Silzle et al.,“Vision and Technique behind the New Studios and Listening Rooms of the Fraunhofer IIS Audio Laboratory”, presented at the AES 126th convention,Munich,Germany,2009.)
【非特許文献3】S.ミューラー、P.マッサラーニ著、「スイープを用いた伝達関数測定」、AES学会誌、第49巻、2001年6月(S.Mueller, and P.Massarani,“Transfer−Function Measurement with Sweeps”,J.Audio Eng.Soc.,vol.49(2001 June).)
【非特許文献4】音響測定技術、M.Mser編、2010年、ベルリン、ハイデルベルク、シュプリンガー(Messtechnik der Akustik, ed. M. Mser.2010,Berlin,Heidelberg:Springer.)
【非特許文献5】V.プルキ、「方向オーディオ符号化を用いた空間音響再生」、AES学会誌、第55巻、第6号、pp.503−516、2007年(V.Pulkki,“Spatial sound reproduction with directional audio coding”, Journal of the AES,vol.55,no.6,pp.503−516,2007.)
【非特許文献6】O.ティールガルト、R.シュルツ−アムリン、G.デル ガルド、D.マーネ、F.キュッヒ著、「方向オーディオ符号化パラメータに基づいた反響する環境における音源定位」、第127回AESコンベンション、ニューヨーク、USA、2009年10月9〜12日(O.Thiergart,R.Schultz−Amling,G.Del Galdo,D.Mahne, and F.Kuech,“Localization of Sound Sources in Reverberant Environments Based on Directional Audio Coding Parameters”, presented at the AES 127th convention, New York, NY, USA, 2009 October 9−12.)
【非特許文献7】J.メリマー、T.ロッキ、T.ペルトネン、M.カルヤライネン著、「方向室内応答の測定、解析及び視覚化」、第111回AESコンベンション、ニューヨーク、ニューヨーク州、アメリカ、2001年9月21〜24日(J.Merimaa, T.Lokki, T.Peltonen and M.Karjalainen,“Measurement, Analysis, and Visualization of Directional Room Responses,” presented at the AES 111th convention, New York, NY, USA,2001 September 21−24.)
【非特許文献8】G.デル ガルド、O.ティールガルト、F.キュッヒ著、「方向オーディオ符号化のためのネスト化マイクロホンアレイ処理」、オーディオ及び音響学への信号処理の応用に関するIEEEワークショップの学会誌(WASPAA)、ニューパルツ、ニューヨーク州、2009年10月(G.Del Galdo, O.Thiergart, and F.Keuch,“Nested microphone array processing for parameter estimation in directional audio coding”, in Proc. IEEE Workshop on Applications of Signal Processing to Audio and Acoustics (WASPAA), New Paltz, NY, October 2009, accepted for publication.)
【非特許文献9】F.J.フェイ著、音響インテンシティ、エセックス:エルゼビア・サイエンス株式会社、1989年(F.J.Fahy, Sound Intensity, Essex: Elselvier Science Publishers Ltd., 1989.)
【非特許文献10】A.ジルツレ、M.ライストナー著、「フラウンホーファーIISの新しいリスニングテストルームの室内音響特性」、第126回AESコンベンション、ミュンヘン、ドイツ、2009年(A.Silzle and M.Leistner,“Room Acoustic Properties of the New Listening−Test Room of the Fraunhofer IIS,” presented at the AES 126 convention, Munich, Germany,2009.)
【非特許文献11】ST350ポータブル・マイクロホン・システム、ユーザーマニュアル、“http://www.soundfield.com/”(ST350 Portable Microphone System, User Manual. “http://www.soundfield.com/”.)
【非特許文献12】J.アホネン、V.プルキ、T.ロッキ著、「方向オーディオ符号化のための通信会議の応用とBフォーマット・マイクロホンアレイ」、第30回AES国際学会:インテリジェントオーディオ環境、2007年3月(J.Ahonen, V.Pulkki, T.Lokki,“Teleconference Application and B−Format Microphone Array for Directional Audio Coding”, presented at the AES 30th International Conference: Intelligent Audio Environments, March 2007.)
【非特許文献13】M.カリンガー、F.キュッヒ、R.シュルツ−アムリン、G.デル ガルド、J.アホネン、V.プルキ著、「方向オーディオ符号化における応用のための平面マイクロホンアレイの解析及び調整」、第124回AESコンベンション、アムステルダム、オランダ、2008年5月17〜20日(M.Kallinger, F.Kuech, R.Schultz−Amling, G.Del Galdo, J.Ahonen and V.Pulkki,“Analysis and adjustment of planar microphone arrays for application in Directional Audio Coding”, presented at the AES 124th convention, Amsterdam, The Netherlands, 2008 May 17−20.)
【非特許文献14】H.バルツェルト著、ソフトウェア技術の教科書(ソフトウェア開発)、1996年、ハイデルベルク、ベルリン、オクスフォード:スペクトルアカデミシャー出版(H.Balzert, Lehrbuch der Software−Technik (Software−Entwicklung), 1996, Heidelberg, Berlin, Oxford: Spektrum Akademischer Verlag.)
【非特許文献15】“http://en.wikipedia.org/wiki/Nassi%E2%80%93 Shneiderman . . . diagram”、2010年3月31日アクセス(“http://en.wikipedia.org/wiki/Nassi%E2%80%93 Shneiderman . . . diagram”, accessed on March, 31st 2010.)
【非特許文献16】R.シュルツ−アムリン、F.キュッヒ、M.カリンガー、G.デル ガルド、J.アホネン、V.プルキ著、「方向オーディオ符号化を用いた空間音響の解析及び再生のための平面マイクロホンアレイ処理」、第124回AESコンベンション、アムステルダム、オランダ、2008年5月(R.Schultz−Amling, F.Kuech, M.Kallinger, G.Del Galdo, J.Ahonen, and V.Pulkki,“Planar Microphone Array Processing for the Analysis and Reproduction of Spatial Audio using Directional Audio Coding”, presented at the 124th AES Convention, Amsterdam, The Netherlands, May 2008.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、リスニングエリアの異なる位置に配置された複数のスピーカの機能を検査するための改良された手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、以下に記載される複数のスピーカを測定する装置、複数のスピーカを測定する方法、コンピュータ・プログラムまたはマイクロホンアレイによって達成される。
【0010】
本発明は、電気的装置を使用してリスニング空間に配置されたスピーカの機能の検査を適合させることによって、リスニングテストの効率および精度を非常に改善することができるという発見に基づく。この装置は、スピーカのためのテスト信号を発生させるためのテスト信号発生器と、複数の個々のマイクロホン信号を拾うためのマイクロホン装置と、マイクロホン装置によって記録された音響信号の集合が各スピーカと関連するように、スピーカ信号の発射を制御し、かつ、マイクロホン装置によって記録された音響信号の処理のための制御器と、スピーカごとに少なくとも1つのスピーカ特性を決定するために、スピーカごとに音響信号の集合を評価し、かつ、少なくとも1つのスピーカ特性を使用してスピーカ状態を示すための、評価器とを含む。
【0011】
評価器が、OK状態/OKでない(non−OK)状態を示し、訓練されていない人がOKでないスピーカを個々に検査することができて、機能する状態にあることが示されたスピーカを信頼することができるので、本発明は、それが訓練されていない人によってリスニング空間に位置付けられたスピーカの検査を実行することを可能にするという点で、有利である。
【0012】
加えて、本発明は、その個々に選択されたスピーカ特性の高い適応性を供給し、個々のスピーカのためのスピーカ状態の完全なピクチャを集めることができるように、好ましくは、いくつかのスピーカ特性を使用することができ、さらに計算することができる。これは、好ましくは順次的な方法で、各スピーカにテスト信号を供給することによって、そして、好ましくはマイクロホンアレイを使用して、スピーカ信号を記録することによってなされる。それ故、信号の到来方向を算出することができ、その結果、スピーカが三次元の方式で配置されるときでも、部屋のスピーカの位置を自動的に算出することができる。特に、後者の特徴は、好適な発明システムにより提供される高精度の観点からみて、一般的に、熟練した人によってさえ条件を満たすことができない。
【0013】
好ましい実施形態において、マルチスピーカテストシステムは、仰角および方位角に関して±3°の許容差の範囲内の位置を正確に決定することができる。距離精度は±4cmであり、各スピーカの振幅特性を、リスニングルームの個々のスピーカの±1dBの精度で記録することができる。好ましくは、そのシステムは各測定を参照と比較して、許容差外で作動しているスピーカを確認することができる。
【0014】
加えて、処理を含んでスピーカごとに10秒ほどという妥当な測定時間のため、本発明のシステムは、多数のスピーカが測定されなければならないときでも、実際に適用できる。加えて、スピーカの方向付けは、特定の構成に限られていないが、測定概念は、任意の三次元の方式のありとあらゆるスピーカ配置に関して適用できる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、図を参照して以下に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、複数のスピーカを測定するための装置のブロック図を示す。
図2図2は、9つのメイン・スピーカと、壁および異なる高さの2つの全周性トラス上の2つのサブ・ウーファおよび43個のスピーカのセットアップを有する典型的なリスニングテストルームを示す。
図3図3は、三次元のマイクロホンアレイの好ましい実施形態を示す。
図4a図4aは、DirACプロシージャを使用して音の到来方向を決定するためのステップを示すための系統図を示す。
図4b図4bは、図3のマイクロホンアレイのマイクロホンを使用して異なる方向の粒子速度信号を算出するための式を示す。
図4c図4cは、中心のマイクロホンがないときに実行される、Bフォーマットのための全方向性の音響信号の計算を示す。
図4d図4dは、三次元位置測定アルゴリズムを実行するためのステップを示す。
図4e図4eは、スピーカに関する実際の空間出力密度を示す。
図5図5は、スピーカおよびマイクロホンのハードウェア・セットの系統図を示す。
図6a図6aは、基準のための測定順序を示す。
図6b図6bは、テストのための測定順序を示す。
図6c図6cは、特定の周波数範囲で、許容差を満たされていない振幅特性の形で、典型的な測定出力を示す。
図7図7は、いくつかのスピーカ特性を決定するための好ましい実施態様を示す。
図8図8は、典型的なパルス応答および到来方向の決定を実行するための窓長を示す。
図9図9は、距離、到来方向およびスピーカのインパルス応答/伝達関数を測定するために必要なインパルス応答の部分の長さの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、リスニング空間の異なる位置に配置された複数のスピーカを測定するための装置を示す。その装置は、スピーカのためのテスト信号を発生させるためのテスト信号発生器10を含む。模範的に、N個のスピーカが、スピーカ出力10a、…、10bでテスト信号発生器と接続される。
【0018】
加えて、その装置は、マイクロホン装置12を含む。マイクロホン装置12は、複数の個々のマイクロホンを有するマイクロホンアレイとして実行することができ、あるいは、順次適合されたテスト信号に対するスピーカによる順次応答が測定される異なる位置間を順次移動することができるマイクロホンとして実行することができる。というのも、マイクロホン装置は、1つまたは複数のテスト信号に応答した複数のスピーカのうちの1つのスピーカによって発射された1つまたは複数のスピーカ信号に応答して音響信号を受信するために構成されるためである。
【0019】
加えて、制御器14は、マイクロホン装置によって記録された音響信号の集合が1つまたは複数のテスト信号に応答して複数のスピーカの各スピーカと関連するように、複数のスピーカによるスピーカ信号の発射を制御するために、そして、マイクロホン装置によって受信された音響信号を処理するために供給される。制御器14は、信号線13a、13b、13cを介してマイクロホン装置と接続される。マイクロホン装置が順次的な方法で異なる位置に移動可能なマイクロホンを1つ有するだけであるとき、1つの信号線13aで充分だろう。
【0020】
加えて、測定するためのその装置は、スピーカごとに少なくとも1つのスピーカ特性を決定するために、スピーカごとに音響信号の集合を評価し、かつ、その少なくとも1つのスピーカ特性を使用して、スピーカ状態を示すための評価器16を含む。評価器は、制御器から評価器への単方向接続でありえる、または、評価器が制御器に情報を供給するために実行されるとき、双方向接続でありえる接続線17を介して制御器と接続される。このように、評価器は、スピーカごとに状態表示情報、すなわち、このスピーカが機能するスピーカであるか、または、欠陥のあるスピーカであるかを供給する。
【0021】
好ましくは、制御器14は、特定のシーケンスがスピーカごとに適用される自動測定を実行するために構成される。具体的には、制御器は、テスト信号を出力するためにテスト信号発生器を制御する。同時に、制御器は、測定サイクルが始まるとき、マイクロホン装置およびマイクロホン装置と接続された回路により受信された信号を記録する。スピーカテスト信号の測定が完了するときに、マイクロホンの各々によって受信された音響信号は、それから制御器によって処理され、例えば、テスト信号を発射している、または、より正確には、テスト中の装置であった、特定のスピーカに関連した制御器によって保存される。前に述べたように、テスト信号を受信した特定のスピーカが、実際上、テスト信号に対応する音響信号を最後に発射した実際のスピーカであるかどうかが検査されることになる。これは、好ましくは指向性マイクロホンアレイを使用してテスト信号に応答してスピーカによって発射された音響の距離または到来方向を算出することによって検査する。
【0022】
あるいは、制御器は、いくつかのまたは全てのスピーカの測定を同時に実行することができる。この目的のために、テスト信号発生器は、異なるスピーカのための異なるテスト信号を発生させるために構成される。好ましくは、テスト信号は、少なくとも部分的に相互に直交的である。この直交性は、周波数多重で異なった重なりなしの周波数バンドを、符号多重で異なった符号を、または、その他この種の実施態様を含むことができる。評価器は、特定のタイムスロットが特定のスピーカに関連付けられる順次的な実施態様と類似して、特定のスピーカに特定の周波数バンドを、または、特定のスピーカに特定のコードを関連付けることなどによって、異なったスピーカのための異なったテスト信号を分離するために構成される。
【0023】
このように、制御器は、音響信号の集合が、マイクロホンアレイによって音響信号の集合の受信の直前に、スピーカテスト信号を発射した特定のスピーカと関連するように、テスト信号発生器を自動的に制御して、例えば順次的な方法で、テスト信号を発生させるために、そして、順次的な方法で音響信号を受信するために、マイクロホン装置により拾われた信号を処理する。
【0024】
オーディオ・ルーティング・システム、スピーカ、デジタル/アナログ変換器、アナログ/デジタル変換器、および三次元のマイクロホンアレイを含む完全系の系統図が、図5に示される。具体的には、図5はオーディオ・ルーティング・システム50、テスト信号入力をスピーカにデジタル/アナログ変換するためのデジタル/アナログ変換器を示す。ここで、デジタル/アナログ変換器が51で示される。加えて、三次元のマイクロホンアレイ12に配置された個々のマイクロホンのアナログ出力と接続される、アナログ/デジタル変換器52が与えられる。個々のスピーカは、54a、…、54bで示される。システムは、オーディオ・ルーティング・システム50を制御するための機能を有する遠隔制御55、および測定系のための接続されたコンピュータ56を含むことができる。好ましい実施形態の個々の接続は、図5で示され、「MADI」は、マルチチャンネル・オーディオ/デジタル・インターフェースを表し、「ADAT」は、アレシス・デジタル・オーディオ・テープ(Alesis−digital−audio−tape)(光ケーブル・フォーマット)を表す。他の省略は、当業者に周知である。図1のテスト信号発生器10、制御器14、および評価器16は、図5のコンピュータ56に好ましくは含まれる、または、図5の遠隔の制御プロセッサ55にも含まれうる。
【0025】
好ましくは、測定概念は、通常、スピーカおよび制御を供給しているコンピュータで実行される。従って、全部の電気的および音響的信号処理チェーンは、リスニング位置のマイクロホン装置が測定されるまで、コンピュータからオーディオ・ルーティング・システム、スピーカにわたる。これは、この種の信号処理チェーンにおいて生じうるすべてのありうるエラーを取り込むために好ましい。デジタル/アナログ変換器51からアナログ/デジタル変換器52への単一の接続57は、スピーカとマイクロホン装置との間の音響の遅延を測定するために使用されて、図1の評価器16に図7で示された基準信号Xを供給するために使用されうる。その結果、伝達関数または、代わりに、選択されたスピーカから各マイクロホンへのインパルス応答は当技術分野で周知のように畳み込み演算によって算出されうる。具体的には、図7は、図1に示された装置によって実行されたステップ70を示し、そこで、マイクロホン信号Yが測定され、基準信号Xは測定され、それは図5の短絡接続57を使用することによりなされる。その後、ステップ71において、伝達関数Hは、周波数領域値の除算によって周波数領域において算出されることができる、または、インパルス応答h(t)は、畳み込み演算を使用して、時間領域において算出されることができる。伝達関数H(f)は、すでにスピーカ特性であるが、模範的に図7で示されたような他のスピーカ特性も算出されうる。これらの他の特性は、例えば、時間領域インパルス応答h(t)であり、それは伝達関数の逆FFTを実行することによって算出されうる。代わりに、複素数の伝達関数のマグニチュードである振幅応答は、同様に算出されうる。加えて、周波数の関数としての位相、または、周波数に関する位相の一次微分であるグループ遅延τは、算出されうる。異なるスピーカ特性は、インパルス応答のエネルギー分布を示すエネルギー時間曲線などである。追加の重要な特性は、スピーカおよびマイクロホンの間の距離であり、DirACアルゴリズムを使用して算出され、マイクロホンの音響信号の到来方向は追加の重要なスピーカ特性である。そして、そのことは後ほど述べられる。
【0026】
図1のシステムは、各スピーカの位置および振幅特性を測定することによって、上述の様々な問題の発生を検査する、自動マルチスピーカテストシステムを示す。すべてのこれらのエラーは、図1の評価器16によって実行された後処理ステップによって検出可能である。この目的のために、評価器が、図3で示された三次元のマイクロホンアレイから個々の音圧マイクロホンによって記録されたマイクロホン信号から室内インパルス応答を算出することが好ましい。
【0027】
好ましくは、1つの対数的サインスイープが、テスト信号として使用される。ここで、このテスト信号はテスト中の各スピーカによって個々に再生される。この対数的サインスイープは、図1のテスト信号発生器10によって発生され、好ましくは考慮されたスピーカごとに等しい。全てのエラーに関してチェックするためのこの1つのテスト信号の使用は、そのことが、処理を含んでスピーカごとに約10秒までに全テスト時間を有意に減少させるので、特に利点がある。
【0028】
好ましくは、インパルス応答測定は、そのテスト信号が、低周波に関してもより良いSN比、高周波においてそれほど大きくないエネルギー(高音用スピーカが信号に破損を与えない)、より良い波高率(crest factor)、および小さい非線形性に関して重要でない挙動に関する実際の音響測定において最適であるので、対数的サインスイープが使用される図7に関連して述べられるように形成される。
【0029】
あるいは、最長系列(maximum length sequence)(MLS)も使用できるが、対数的サインスイープが、波高率および非線形性に対する挙動のため、好ましい。加えて、高周波における大量のエネルギーは、スピーカに損傷を与えるかもしれず、そのこともまた、この信号が高周波においてより小さいエネルギーを有するので、対数的サインスイープに有利である。
【0030】
図4a〜図4eは、到来方向の推定の好ましい実施態様を示すために後述される。但し、DirACは別として、他の到来方向アルゴリズムも同様に使用されうる。図4aは、7つのマイクロホン、処理ブロック40およびDirACブロック42を有するマイクロホンアレイ12を図式的に示す。具体的には、ブロック40は、各マイクロホン信号の短時間フーリエ解析を実行して、その後、全方向性の信号Wを有し、かつ、互いに直交する3つの空間方向X、Y、Zのための3つの個々の粒子速度信号X、Y、Zを有するBフォーマットへの、これらの好ましくは7つのマイクロホン信号の変換を実行する。
【0031】
方向オーディオ符号化(Directional audio coding)は、ダウンミックス信号および補助情報、すなわち到来方向(direction of arrival)(DOA)および音場の拡散度(diffuness of the sound field)に基づいて空間音響を取り込んで、再生する効率的なテクニックである。DirACは、離散短時間フーリエ変換(STFT)領域において機能する。そして、それは信号の時間的スペクトル表示を供給する。図4aは、DirAC解析を用いてDOAを得るための主ステップを示す。通常、DirACは、入力としてBフォーマット信号を必要とする。そして、それは空間の1点において測定された音圧および粒子速度ベクトルから成る。アクティブ・インテンシティ(active intensity)ベクトルを算出することは、この情報から可能である。このベクトルは、測定位置の音場を特徴づけているエネルギーの正味流量の方向およびマグニチュードを示す。音響のDOAは、その方向の反対をとることによってインテンシティ・ベクトルから得られ、例えば、標準球面座標系の方位角および仰角によって表される。当然、他の座標系は、同様に適用されうる。必要なBフォーマット信号は、図3において示された7つのマイクロホンから成る三次元のマイクロホンアレイを使用して得られる。DirAC処理のための圧信号は、図3の中心マイクロホンR7によって取り込まれるが、粒子速度ベクトルの成分は、3つの座標軸に沿った向かい合ったセンサ間の圧差から推定される。具体的には、図4bは、3つの成分Ux、Uy、およびUzを有する音響速度ベクトルU(k,n)を算出するための式を示す。
【0032】
模範的に、変数P1は、図3のマイクロホンR1の圧信号を表し、例えば、P3は、図3のマイクロホンR3の圧信号を表す。類似して、図4bの他のインデックスは、図3の対応数に対応する。kは周波数インデックスを示し、nは時間ブロックインデックスを示す。すべての量は、空間の同じ位置において測定される。粒子速度ベクトルは、2つ以上の次元に沿って測定される。Bフォーマット信号の音圧P(k,n)に関して、中心のマイクロホンR7の出力が使用される。あるいは、中心のマイクロホンが利用できない場合、図4cに示されたように、P(k,n)は、利用できるセンサの出力を結合することによって推定されうる。同式はまた二次元および一次元の場合に関しても効力を有する点に留意する必要がある。これらの場合、図4bの速度成分は、考慮された次元のために算出されるだけである。Bフォーマット信号が正確に同一の方法で時間領域において割り出されうる点に更に留意されたい。この場合、すべての周波数領域信号は、対応する時間領域信号によって置換される。マイクロホンアレイを有するBフォーマット信号を決定するという他の可能性は、粒子速度成分を得るために方向センサを使用することである。実際に、各粒子速度成分は、双指向性マイクロホン(いわゆる8の字マイクロホン)を用いて、直接測定されうる。この場合、図3の向かい合ったセンサの各対は、考慮された軸に沿って向いている双指向性センサに取って代わられる。双指向性センサの出力は、直接所望の速度成分に対応する。
【0033】
図4dは、一方で方位角、一方で仰角の形で、DOAを実行するための一連のステップを示す。第1のステップにおいて、マイクロホンの各々のためのインパルス応答を算出するためのインパルス応答測定は、ステップ43において実行される。最大値が80で示される図8に模範的に示されるように、各インパルス応答の最大値で窓関数処理(windowing)が次に実行される。窓を掛けた(windowed)サンプルは、次に図4dのブロック45で、周波数領域に変換される。周波数領域において、DirACアルゴリズムは、例えば、20個の周波数ビンまたはそれ以上の周波数ビンの各周波数ビンにおいてDOAを算出するために実行される。初期反射(early reflection)までの最大値80の直接音だけが、好ましくは初期反射を除いて、使用されるように、図8のFFT512で示されるように、好ましくは、例えば512サンプルだけのほんの短い窓長が、実行される。この手法は、より良いDOA結果を供給する。というのも、残響のない個々の位置からの音響だけが使用されるからである。
【0034】
46に示されるように、決定されたDOAごとに、測定された音響エネルギーを表すいわゆる空間出力密度(spatial power density)(SPD)は、それから算出される。
【0035】
図4eは、0°に等しい仰角および方位角に関するスピーカ位置のための測定されたSPDを示す。SPDは、測定されたエネルギーのほとんどが、スピーカ位置に対応する角度の周辺に集中されることを示す。理想的なシナリオ、すなわちマイクロホン雑音がない所では、スピーカ位置を得るためにSPDの最大値を決定することは十分であるだろう。しかしながら、実際の応用では、SPDの最大値が、測定最大誤差のため正しいスピーカ位置に必ずしも対応するというわけではない。従って、DOAごとに、平均ゼロの白色ガウス型分布マイクロホン雑音を仮定している理論的なSPDが、シミュレートされる。理論的なSPDを(模範的には、図4eで示される)測定されたSPDと比較することによって、対応するDOAが最も見込みのあるスピーカ位置を示す、最も適した理論的なSPDが決定される。
【0036】
好ましくは、反響しない環境で、SPDは、特定の方位角/仰角を有する時間/周波数ビンに関するダウンミックスオーディオ信号出力によって算出される。この手法が反響する環境において実行されるときに、または、初期反射が同様に使用されるときに、長期の空間出力密度は、時間/周波数ビンに関するダウンミックスオーディオ信号出力から算出される。そのために、DirACアルゴリズムによって得られた拡散度は、特定の閾値以下である。この手法は、2009年10月9日、AES学会誌7853、O.ティールガルトらの「方向オーディオ符号化パラメータに基づいた反響する環境における音源定位」で詳しく説明される。
【0037】
図3は、3対のマイクロホンを有するマイクロホンアレイを示す。第1の対は、第1の水平軸のマイクロホンR1およびR3である。マイクロホンの第2の対は、第2の水平軸のマイクロホンR2とR4からなる。マイクロホンの第3の対は、2つの直交の水平軸に直交である垂直軸を示しているマイクロホンR5およびR6からなる。
【0038】
加えて、マイクロホンアレイは、3つの直交の空間軸のうちの1つの対応する空間軸でマイクロホンの各対を支持するための機械的支持体からなる。加えて、マイクロホンアレイは、リスニング空間のマイクロホンアレイの位置決めのためのレーザ30を含み、レーザ光線が水平軸のうちの1つと平行または一致するように、レーザが機械的支持体と固定して連結される。
【0039】
マイクロホンアレイは、好ましくは、付加的に、3つの軸が互いに交差する位置に位置付けられた第7のマイクロホンR7を含む。図3に示したように、機械的支持体は、第1の機械的な軸31および第2の水平軸32および第3の垂直軸33を含む。第3の水平軸33は、マイクロホンR5およびマイクロホンR6とのコネクションによって形成された「仮想」垂直軸に関して、中心に位置付けられる。第3の機械的な軸33は、ロッドが水平軸31および32と平行である上部の水平ロッド34aおよび下部の水平ロッド34bに固定される。好ましくは、第3の軸33は、水平軸のうちの1つに固定されて、特に、接続点35の水平軸32に固定される。接続点35は、第7のマイクロホンR7および隣接したマイクロホン、例えば3対のマイクロホンのうちの1対のマイクロホンであるマイクロホンR2などに関する受信間に位置づけられる。好ましくは、マイクロホンの各対のマイクロホン間の距離は、4cmと10cmの間、あるいは、より好ましくは、5cmと8cmの間で、最も好ましくは、6.6cmである。この距離は、3つの対の各々に関して等しくありえるが、これは必要条件ではない。かなり小さいマイクロホンR1〜R7が使用され、細い取付け物が音響の透明性を確実にするために必要である。結果の再現性を供給するために、一つのマイクロホン、および、全体のアレイの精密な位置決めが必要である。後者の要件は、固定されたクロス・レーザ・ポインタ30を使用することによって満たされるが、前者の要件は安定した取付け物で達成される。正確な室内インパルス応答測定を得るために、平坦振幅応答によって特徴づけられるマイクロホンが好ましい。さらに、結果の再現性を提供するために、異なるマイクロホンの振幅特性は整合されるべきであり、時間において有意に変化するべきではない。アレイにおいて配置されたマイクロホンは、高品質全指向性マイクロホンDPA 4060である。この種のマイクロホンは、A特性重み付けの一般的26dBA、基準20μPaおよび97dBのダイナミックレンジの等価雑音レベルを有する。20Hzと20kHzとの間の周波数範囲は、名目上の曲線から2dBの間にある。取付け物は、真鍮で実現され、それは必要な機械的な剛性と、同時に、拡散の欠如を確実にする。双指向性8の字マイクロホンと比較した図3のアレイの全指向性音圧マイクロホンの使用は、個々の全指向性マイクロホンが、高価な双指向性マイクロホンと比較してかなり安価であるという点で、好ましい。
【0040】
測定系は、特に基準条件に対するシステムの変化を検出するために示される。従って、図6aに示したように、基準測定がまず実行される。図6aおよび図6bの手順は、図1において示される制御器14によって実行される。図6aは、サインスイープが再生され、7つのマイクロホン信号が61で記録される60でスピーカごとの測定を示す。停止62が次に行なわれ、その後、測定は、解析され63、保存される64。基準測定のために、すべてのスピーカが正しく調整されて、正しい位置にあるという点の手動の検査の後に、基準測定が実行される。これらの基準測定は、ただ一回だけ実行される必要があり、何度も使用することができる。
【0041】
テスト測定は、好ましくは、各リスニングテストの前に実行されなければならない。テスト測定の完全なシーケンスは、図6bに示される。ステップ65において、制御器の設定値は、読み取られる。次に、ステップ66において、各スピーカは、サインスイープを再生することによって、そして、7つのマイクロホン信号を記録することによって測定され、その後、停止する。その後、ステップ67において、測定解析は実行され、そして、ステップ68において、結果は基準測定と比較される。次に、ステップ69において、測定された結果が許容差範囲内にあるかどうかが決定される。ステップ73において、結果の視覚的表示を実行することができ、ステップ74において、その結果を保存することができる。
【0042】
図6cは、図6bのステップ73による結果の視覚的表示のための例を示す。許容差チェックは、基準測定のまわりに上下限を設定することによって実現される。許容値は、測定の初めのパラメータとして定義される。図6cは、振幅特性に関して測定出力を視覚化する。曲線3は基準測定の上限であり、曲線5は下限である。曲線4は、現在の測定である。この例において、範囲中央の周波数の誤差が示され、それは75で赤いマーカーでグラフィカル・ユーザー・インターフェイス(GUI)において視覚化される。下限のこの侵害は、フィールド2にも示される。同じように、方位角、仰角、距離および極性に関する結果は、グラフィカル・ユーザー・インターフェイスに示される。
【0043】
続いて、複数のスピーカを測定する際にスピーカごとに算出される3つの好ましい主なスピーカ特性を示すために、図9について説明する。第1のスピーカ特性は、距離である。距離は、マイクロホンR7によって発生したマイクロホン信号を使用して算出される。この目的のために、図1の制御器14は、基準信号Xの測定および中心のマイクロホンR7のマイクロホン信号Yを制御する。次に、ステップ71で概説されるように、マイクロホン信号R7の伝達関数が算出される。この計算において、ステップ71において算出されたインパルス応答の図8の80などの最大値のサーチが実行される。その後、最大値80が生じるこの時間は、対応するスピーカとマイクロホンアレイとの間の距離を得るために、音響速度vによって乗算される。
【0044】
この目的のために、マイクロホンR7の信号から得られたインパルス応答の短い部分だけが必要であり、それは図9の「第1の長さ」として示される。この第1の長さは、0から最大値80の時間まで及ぶのみであり、この最大値を含むが、初期反射または拡散残響を含まない。あるいは、他の同期もテスト信号とマイクロホンからの応答との間で実行することができるが、マイクロホンR7のマイクロホン信号から算出されたインパルス応答の第1の小部分を使用することは、効率および精度のため好ましい。
【0045】
次に、DOA測定のために、全7つのマイクロホンのためのインパルス応答が算出されるが、第1の長さより長いインパルス応答の第2の長さだけが、使用されて、この第2の長さは、好ましくは、初期反射まで及ぶだけであり、好ましくは、初期反射を含まない。あるいは、例えば窓形状81によって図8に示されるように、初期反射は、窓関数のサイド部分で決定された減衰した状態の第2の長さに含まれる。サイド部分は、1.0に近づく窓の中央の部分の窓係数と比較して、0.5より小さい、または、さらに0.3より小さい窓係数を有する。ステップ70、71によって示されるように、個々のマイクロホンR1〜R7のためのインパルス応答は、好ましくは算出される。
【0046】
好ましくは、窓は、各インパルス応答またはインパルス応答とは異なるマイクロホン信号に適用される。ここで、窓の中心、または窓の中心を中心として窓長の50パーセントの範囲内の窓の1点は、音響信号ごとに窓を掛けたフレームを得るために、各インパルス応答の最大値またはその最大値に対応するマイクロホン信号の時間に位置づけられる。
【0047】
スピーカごとの第3の特性は、マイクロホンR5のマイクロホン信号を使用して算出される。というのも、このマイクロホンは、図3で示されたマイクロホンアレイの機械的支持体によってそれほど影響を受けないからである。インパルス応答の第3の長さは、第2の長さより長くて、好ましくは、初期反射だけでなく、拡散反射も含み、リスニング空間のすべての反射を有するために、0.2ミリ秒など相当な時間にわたって及ぶ。当然、部屋が全く反響しない部屋であるとき、マイクロホンR5のインパルス応答は、かなり0に近いだろう。しかし、いずれにせよ、図9の下部で示されるように、距離測定のためには、短長のインパルス応答を使用すること、DOA測定のためには、中程度の第2の長さを使用すること、および、スピーカ・インパルス応答/伝達関数を測定するためには長い長さを使用することが、好ましい。
【0048】
いくつかの態様が装置に関連して説明されたにもかかわらず、これらの態様が対応する方法の記載を示すことも明らかである。ここで、ブロックまたは装置は方法ステップまたは方法ステップの機能に対応する。類似して、方法ステップに関連して説明された態様は、対応するブロックまたは項目の記載または対応する装置の機能を示す。
【0049】
特定の実現要求に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアにおいて、または、ソフトウェアにおいて実行することができる。実施態様は、各方法が実行されるように、プログラミング可能な計算機システムと協動する(または協動することができる)、そこに格納された電子的に読み込み可能な制御信号を有する、デジタル記憶媒体、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、DVD、CD、ROM、PROM、EPROM、EEPROMまたはFLASHメモリを使用して実行することができる。
【0050】
本発明によるいくつかの実施形態は、本願明細書において説明された方法のうちの1つが実行されるように、プログラミング可能な計算機システムと協動することができる電子的に読み込み可能な制御信号を有するデータキャリアを含む。
【0051】
通常、本発明の実施形態は、コンピュータ・プログラム製品がコンピュータ上で動作するときに、プログラムコードがその方法のうちの1つを実行するために機能するプログラムコードを有するコンピュータ・プログラム製品として実行することができる。プログラムコードは、例えば機械読み取り可能なキャリアに格納されることができる。
【0052】
他の実施形態は、機械読み取り可能なキャリアに格納され、本願明細書において説明された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムを含む。
【0053】
換言すれば、発明の方法の実施形態は、従って、コンピュータ・プログラムがコンピュータ上で動作するときに、本願明細書において説明された方法のうちの1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータ・プログラムである。
【0054】
従って、本発明の方法の更なる実施形態は、そこに記録されて、本願明細書に説明された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムを含んでいるデータキャリア(またはデジタル記憶媒体またはコンピュータ可能な媒体)である。
【0055】
従って、本発明の方法の更なる実施形態は、本願明細書において説明された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムを示しているデータ・ストリームまたは信号のシーケンスである。データ・ストリームまたは信号のシーケンスは、例えば、データ通信接続を介して、例えばインターネットを介して転送されるように構成されることができる。
【0056】
更なる実施形態は、本願明細書において説明された方法のうちの1つを実行するために構成されたまたは適合された、処理手段、例えばコンピュータまたはプログラム可能な論理回路を含む。
【0057】
更なる実施形態は、本願明細書において説明された方法のうちの1つを実行するためのコンピュータ・プログラムをそこにインストールしているコンピュータを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、プログラム可能な論理回路、例えば論理プログラミング可能デバイスは、本願明細書において説明された方法の機能のいくつかまたは全てを実行するために使用されうる。いくつかの実施形態では、論理プログラミング可能デバイスは、本願明細書において説明された方法のうちの1つを実行するために、マイクロプロセッサと協動することができる。通常、方法は、好ましくは、ハードウェア装置によって実行される。
【0059】
上記実施形態は、本発明の原理のために、単に図示しているだけである。装置および本願明細書において説明された詳細の修正変更が他の当業者にとって明らかであるものと理解される。従って、間近に迫った特許クレームの範囲のみによって制限され、本願明細書において実施形態の記載および説明として示された具体的な詳細によっては制限されないという意図である。
【0060】
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図1
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図2
図3