特許第5997240号(P5997240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997240
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】溶融材料を用いた穴の密封シール方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20160915BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20160915BHJP
   B23K 1/14 20060101ALI20160915BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20160915BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20160915BHJP
   B23K 101/40 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
   H01L23/02 C
   B81C1/00
   B23K1/14 C
   B23K1/00 330E
   H01L21/92 604A
   H01L21/92 604S
   B23K101:40
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-245040(P2014-245040)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-115607(P2015-115607A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2014年12月4日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2013/002989
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】WO
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ルイ ポーニン
(72)【発明者】
【氏名】アーノルドゥス デン デッカー
(72)【発明者】
【氏名】マルセル ギーゼン
(72)【発明者】
【氏名】フロラン グレコ
(72)【発明者】
【氏名】グードルン ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ レイ
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン サン−パトリス
【審査官】 石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−173063(JP,A)
【文献】 特開2009−147106(JP,A)
【文献】 特開平09−193967(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0190301(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0140146(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0235501(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0164787(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/54,21/60
23/00−23/04
23/06−23/10
23/16−23/26
H03H 3/007−3/06
9/00−9/135
9/15−9/24
9/30−9/40
9/46−9/62
9/66,9/70,9/74
B81B 1/00−7/04
B81C 1/00−99/00
B23K 1/00,1/1
B23K 101/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの層(102)の表面(104)にある穴(100)を、溶融材料を用いて密封シールする方法であって、
前記表面(104)の1つの領域に濡れ性材料の部分(108)を取り付けるステップであって、当該濡れ性材料の部分(108)が前記表面(104)を貫通して設けられた前記穴(100)を完全に包囲するように形成され、かつ全ての濡れ性材料(108)が前記穴(100)の外側に配置されるようにされて、前記濡れ性材料の部分(108)が、前記穴(100)が設けられる予定の位置に相当する前記表面(104)の第1の部分(132)を完全に包囲するようにするステップと、
前記濡れ性材料の部分(108)の少なくとも一部、および前記濡れ性材料の部分(108)に隣接あるいはこれを包囲する、前記表面(104)の少なくとも1つの第2の部分(114)に、少なくとも溶融材料の部分(112)を取り付けるステップであって、前記溶融材料の部分(112)が前記濡れ性材料の部分(108)に隣接して配設され、かつ前記濡れ性材料の部分(108)に接触しており、前記溶融材料の部分(112)の量が、前記穴(100)を密封封栓することになる溶融材料のバンプ(116)の量に相当するステップと、
前記溶融材料の部分(112)をリフローして、前記濡れ性材料の部分(108)にのみ固定、付着または結合される、前記穴(100)を密封封栓する球の一部に相当する形状を有する前記溶融材料のバンプ(116)を形成するステップと、
を備え、
前記穴(100)は、前記溶融材料の部分(112)をリフローする前に、少なくとも前記層(102)を貫通して設けられる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記濡れ性材料の部分(108)の外形すなわち上面からみた形状および/または前記溶融材料の部分(112)の外形は、円形,多角形,スリット形状,および非対称形状から選択されており、および/または前記穴を中心として配置されておらず、および/または異なる形状(109a,109b;111a,111b)が合体して設けられており、 前記穴(100)の外形は、前記表面(104)の上面から見て、円形,多角形または非対称形状であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記溶融材料の部分(112)のリフローは、制御された雰囲気で行われ、前記溶融材料の部分(112)のリフローの後で、少なくともシールされた前記穴(100)の雰囲気が当該制御された雰囲気となっていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法において、前記濡れ性材料の部分(108)を取り付けるステップは、
前記表面(104)に濡れ性材料の層(122)を堆積するステップと、
前記濡れ性材料の層(122)の一部をエッチングして、前記濡れ性材料の層(122)の残りの部分が、前記濡れ性材料の部分(108)となるようにするステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
最初に接着層(120)が前記表面(104)に堆積され、次に前記濡れ性材料の層(122)が当該接着層(120)の上に堆積されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記溶融材料の部分(112)は、電気化学的堆積によって取り付けられ、前記接着層(120)は、当該電気化学的堆積の際に前記溶融材料の成長のシード層を形成することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、前記溶融材料の部分(112)を取り付けるステップは、
前記表面(104)の上および前記濡れ性材料の部分(108)の上にフォトレジスト層(124)を堆積するステップと、
前記フォトレジスト層(124)をエッチングして、当該フォトレジスト層(124)を貫通する開口部(125)を形成するステップと、
を備え、
次に前記溶融材料の部分(112)が、前記開口部(125)への堆積によって、前記開口部(125)に形成され、
前記溶融材料の部分(112)を取り付けた後で、前記フォトレジスト層(124)が除去されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法において、
前記表面(104)は、前記層(102)の主表面に相当し、
前記穴(100)は、少なくとも前記層(102)の厚みの部分を貫通して設けられていることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記穴(100)が貫通して設けられる前記層(102)は、少なくとも1つのマイクロエレクトロニクスデバイス(128)が封入されるキャビティ(126)の壁、および/またはキャビティ(126)を覆蓋または閉鎖するメンブレンまたは当該キャビティ(126)を閉鎖するキャップに相当することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記穴(100)は、少なくとも1つのマイクロエレクトロニクスデバイス(128)が封入されるキャビティに相当し、前記溶融材料のバンプ(116)は、当該キャビティに壁を形成することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可融な材料あるいははんだ等の溶融材料を用いて穴を密封シールする、あるいは封栓(plugging)または閉鎖する方法に関する。本発明による方法は、1つ以上のマイクロエレクトロニクスデバイスを封入するためのパッケージ工程の間に行われる。これらのマイクロエレクトロニクスデバイスは、MEMSおよび/またはMOEMSおよび/またはNEMSおよび/またはNOEMSデバイス、あるいは音響型やセンサ型のデバイスであり、1つ以上のキャビティに配置される。
【背景技術】
【0002】
多種多様なマイクロエレクトロニクスデバイス、とりわけMEMSデバイスは、そのデバイスの所定の周囲雰囲気を維持して、信頼性のある動作および/または特性内の動作を保証するために密封パッケージされなければならない。多くのMEMSデバイス、たとえばRF−MEMSスイッチは、これらのデバイスが開放状態における場合のリンギング効果を最小にするための充分な制動力を発生するため、および/またはこれらのスイッチが閉じる時のこの閉鎖の衝撃の力を最小とするための、約100mbarより大きい特定の圧力の不活性ガスを必要とする。
【0003】
このようなパッケージングで2つの異なる可能性が知られている。1つ目のよく知られた可能性は、キャップ移動であり、ここではキャップウェーハにおいて微細機械加工することによってキャビティが形成されたキャップウェーハが用いられており、少なくとも1つのマイクロエレクトロニクスデバイスが配設されたサポートウェーハの上にこれを移動し、このキャップウェーハとサポートウェーハとの間のボンディング処理を行う。
【0004】
このボンディングステップは、マイクロエレクトロニクスデバイスが封入された封止されたキャビティにおける管理された雰囲気を得るために、管理された雰囲気(圧力およびこの雰囲気のガスの性質の管理)で行われてよい。
【0005】
薄膜キャッピング(TFP、「薄膜パッケージング」”Thin Film Packaging”とも呼ばれる。)は、キャップ移動パッケージングに比べて、パッケージ高さ、面積およびコストを低減することを可能とする技術である。TFP処理においては、キャップは犠牲層の上に1つ以上の薄膜の堆積によって得られ、この犠牲層はその後、このデバイスが封入されるキャビティを形成するために、このキャップに設けられた穴を通ってエッチングされる。この技術では、上記の犠牲層を取り除くために形成された穴(複数)を閉鎖することが課題である。これらの穴を閉鎖するためにポリマーが用いられてよく、このポリマー層はこのキャップ上に堆積される。しかしながら、この場合に得られる圧力はその雰囲気の圧力であり、このキャビティの雰囲気がこのポリマー層の堆積処理(たとえばスピンオン処理または薄膜ラミネーション処理)の間に独立して制御できないため、酸素、水および有機ガスがこのキャビティの内部に存在することになる。このため、このような技術で、このキャビティの内部に室温で約100mbarより大きな圧力を有し、また管理された性質のガスを有する密封キャビティを作ることはできなかった。さらにもし上記の閉鎖処理が、たとえばPVD(物理的気相成長”Physical Vapor Deposition”)、CVD(化学的気相成長”Chemical Vapor Deposition”)、またはPECVD(プラズマCVD”Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition”)のタイプの封栓層(plugging layer)の堆積を含むものであれば、PECVDではシランまたはTEOSのようなガスがこのキャビティ内に捕獲され、このようなパッケージングの性能および/または信頼性を低下させ得る。
【0006】
特許文献1,2,3はフィルムを貫通して設けられた穴を閉鎖するための溶融材料の使用を開示している。しかしながらこれらの文献に開示されているプロセスは、それぞれの穴を封栓するためのこのキャップ上の広い領域を使用すること、および/またはこれらの穴を封栓する前にこれらの穴の大きさを低減するための特定な材料を使用すること、および/またはこのキャップ上に溶融材料を保持するための他のウェーハを使用することを含んでいる。さらにこれらのプロセスのいずれも、これらの穴をこの溶融材料を用いて良好に閉鎖することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許公開公報EP1433741A2
【特許文献2】米国特許公開公報US2012/0256308A1
【特許文献3】米国特許公開公報US2010/0190301A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、溶融材料を用いて少なくとも1つの穴をシールまたは封栓する新しいプロセスを提供することであり、これによりこの穴を閉鎖するために必要な領域を低減するとともに、この溶融材料によるこの穴の良好な閉鎖を可能とし、またこのプロセスは、はんだ材料を移動するためのもう1つのウェーハを使用すること、および/またはこの穴を密封封栓する前にこの穴の大きさを低減する特定の材料を使用することを含まない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は請求項1に記載の方法により解決される。本発明の実施形態はさらなる請求項によって示される。
【0010】
本発明は、溶融材料を用いて少なくとも1つの穴を密封シールする方法を提供し、以下のステップを含む。
− 表面に濡れ性材料の部分を取り付けるステップであって、この濡れ性材料の部分がこの表面であるいはこの表面を貫通して設けられた上記の穴を完全に包囲するように形成され、かつ全ての濡れ性材料がこの穴の外側に配置されるようにする、すなわちこの濡れ性材料の部分が、この穴が設けられる予定の位置に対応した上記の表面の第1の部分を完全に包囲するようにするステップ。
− 上記の濡れ性材料の部分の少なくとも一部、および上記の濡れ性材料の部分に隣接あるいはこれを包囲する、上記の表面の少なくとも1つの第2の部分に、少なくとも溶融材料の部分を取り付けるステップであって、この溶融材料の部分が上記の濡れ性材料の部分に隣接して配設され、この濡れ性材料の部分に接触しており、この溶融材料の部分の量が、上記の穴を密封封栓することになる溶融材料のバンプの量に相当するステップ。
− この溶融材料の部分をリフローして、上記の濡れ性材料の部分にのみ固定、付着または結合され、上記の穴を密封封栓する球の一部に対応した形状を有する、溶融材料のバンプを形成するステップ。
ここで上記の穴は、上記の溶融材料の部分をリフローする前に、少なくとも上記の表面であるいはこの表面を貫通して設けられている。
【0011】
また本発明は、表面にある少なくとも1つの穴を、溶融材料を用いて密封シールする、以下のステップを備える方法を開示する。
- この表面上に濡れ性材料の部分を取り付け、この濡れ性材料の部分が上記の表面であるいはこの表面を貫通して設けられている穴を完全に包囲し、あるいは上記の穴が設けられる予定の位置に相当する上記の表面の第1の部分を完全に包囲するようにするステップ。
− 濡れ性材料の部分の一部およびこの濡れ性材料の部分の周囲に配置される上記の表面の少なくとも1つの第2の部分に、溶融材料の少なくとも一部を取り付けるステップであって、この溶融材料の部分の量が、上記の穴を密封封止することになる溶融材料のバンプの量に相当するステップ。
− この溶融材料の部分をリフローして溶融材料のバンプを形成するステップであって、このバンプは、上記の濡れ性材料の部分にのみ固定、付着または結合されて、上記の穴を密封封栓する球の一部に対応した形状を有するステップ。
ここでこの穴は、上記の溶融材料の部分をリフローする前に、少なくとも上記の表面を貫通して設けられている。
【0012】
このように、この方法は上記の穴の周辺の表面の領域上に濡れ性材料の部分を、たとえば環状あるいは環帯状に取り付け、この濡れ性材料の部分上に溶融材料の部分を取り付け、ただしまたこの濡れ性材料の部分の周囲(すなわち上記の表面の第2の部分)にも取り付けることを提案する。このような構成により、この濡れ性材料の部分が上記の穴を完全に包囲するという条件で、上記の溶融材料の部分をリフローすることで、上記の穴を良好に密封して封栓する溶融材料のバンプが形成される。このバンプの形成は、リフローされた溶融材料の表面張力および上記の濡れ性材料とこのリフローされた溶融材料との付着力によって、また残りの非濡れ性の表面の反発力の関係によってもたらされる。
【0013】
さらに、この方法を用いて、事前に上記の穴を小さくすることなしに、この穴を完全に閉鎖できるように、上記の溶融材料の量を調整することができる。結果として、この方法は、上記の溶融材料を移動するためのウェーハを使用しない。
【0014】
濡れ性材料が堆積された上記の穴の周囲の領域および上記の溶融材料の部分の量は、上記のバンプの形状を規定する。理想的には、上記の表面上の溶融材料の濡れ角は、上記のバンプの形状と上記の表面との角度に対応する。
【0015】
上記の濡れ性材料の領域のみが上記のバンプと接触しているので、上記のバンプはこの濡れ性材料にのみ付着する。さらに、この濡れ性材料は、上記の穴の外側に配置されているので、上記で得られた溶融材料のバンプもまた、この穴の外側の配置され、この穴の容積を封止または充填することはない。1つの利点は、このバンプとこのバンプの下のいかなる導電層との容量結合効果、およびこのバンプの下のRF導電層間のクロストークが極小化されあるいは避けられることである。濡れ性層と導電層との間の薄層(102)の場合においては、他のリスクとして、バンプとこの導電層との間での短絡がある。穴のない溶融材料の場合においては、上記の導電層とバンプとの間の距離は、少なくともこのメンブレン(102)の厚さである。
【0016】
この溶融材料は、可融な金属または可融な合金であり、容易に溶融することができる金属または合金であり、すなわちマイクロエレクトニクスプロセス程度の比較的低い温度で容易に溶融可能である。この溶融材料の融点の値は、この溶融材料の性質に依存する。この溶融材料は、たとえば約300℃〜400℃の融点を有してよい。この溶融材料は、共晶合金であってよく、ノンフラックス処理でリフローされてよい。
【0017】
上記の濡れ性部分は、上記の表面を貫通して設けられた穴を完全に包囲しており、あるいはもし上記の濡れ性材料の部分を設ける前にこの穴が上記の表面を貫通して設けられていなければ、この穴が設けられる予定の位置に相当する表面の第1の部分を完全に包囲している。このようにしてこの穴の周囲あるいはこの表面の第1の部分の周囲の濡れ性材料の部分の輪郭の形状が閉じられる。
【0018】
取り付けられた溶融材料の部分の量は、この溶融材料の部分をリフローした後で上記の穴を密封封止するこの溶融材料のバンプの量に相当する。このように上記の濡れ性材料の部分および上記の表面の第2の部分上に設けられた溶融材料の量は、上記の溶融材料のバンプを形成する溶融材料の量に相当し、上記の穴を密封閉鎖するのに必要な溶融材料の量である。
【0019】
さらに、上記の溶融材料の部分は、少なくとも当初の上記の濡れ性材料の部分の上およびこの濡れ性材料部分の近くに設けられるので、したがって従来の上記の濡れ性材料の部分の領域より大きくなる。これにより、上記の濡れ性材料の部分にのみ溶融材料が当初堆積されていた場合に、従来のように上記の溶融材料の部分の形状が原則的に垂直方向に高くなる、すなわちアスペクト比が1より大きくなることが避けられ、この部分が設けられる上記の表面に実質的に垂直な方向の大きな寸法となることを避けることができる。こうして得られる溶融材料の部分はより扁平であり、したがって溶融材料の部分が垂直に立っている場合よりも機械的に丈夫であるので、この溶融材料の部分を取り付けて成型することが容易にできる。この方法は、導電性のメタライジング部を上記のバンプが配置される濡れ性材料の極く近傍に設けることができるという利点を有する。この方法の場合には、溶融材料は、この導電性メタライジング部の近傍で、濡れ性材料より外側に堆積することはできないが、この濡れ性材料をこの穴の反対側に延在させることができる。もう1つの利点は、溶融材料を堆積した後で、この溶融材料が設けられていない濡れ性材料の領域を可能とすることである(図6Aおよび6B参照)。これより、上記のバンプを形成するのに必要な溶融材料の量の不足部分をこの導電性メタライジング部の反対側に堆積することができ、この溶融材料の無い領域を維持することができる。
【0020】
上記の濡れ性材料は、フリップチップ技術を用いた接続部を形成するのに用いられる、UBM(Under Bump Metallization)積層体の上層用として知られた材料と同様なものであってよい。この濡れ性材料は以下の2つの特徴を有する。
【0021】
第1に、濡れ性材料で覆われた領域が、たとえ溶融材料の一部がこの領域外に堆積したとしても、リフローの後で上記の溶融材料が配設される領域となる。
【0022】
第2に、この濡れ性材料は、リフロー温度で溶融材料の中に部分的に溶解されてよく、これによって金属間化合物を形成し、これによって密封性と結合が得られる。
【0023】
通常、この濡れ性材料は、たとえば金,銅,白金のような金属であってよく、あるいはたとえばTiNiAuやTiCuのような異なる材料の積層体であってよい。
【0024】
濡れ性材料の部分は、ここではリフローされた溶融材料が固化したあとで付着する表面に相当する。
【0025】
1つ以上の分離された溶融材料の部分が、この濡れ性材料の部分および上記の表面の第2の部分の上に設けられてよい。この場合、これらの溶融材料の部分のリフローの際に、これらの部分のリフローされた溶融材料が集合して溶融材料のバンプを形成し、これが上記の穴を封栓する。
【0026】
この溶融材料のバンプは、上記の濡れ性材料の部分とのみ接触していてよいが、少なくとも上記の穴と上記の濡れ性材料との間の表面部分の一部および/または上記の穴の周囲の表面で濡れ性材料の部分が無い部分に配置されてよい。
【0027】
この穴が設けられている表面の上面から見て、この濡れ性材料の部分の外形は、穴の外形または溶融材料の部分の外形に直接接続されていなくともよく、この溶融材料の部分の外形もまた、この穴の外形に直接接続されていなくともよい。たとえばこの上面から見て、六角形のような多角形のような外形を有する穴と、この穴の周りに設けられた円環帯のような外形を有する濡れ性材料の部分と、この濡れ性材料の部分の一部を覆いかつこの濡れ性材料の部分の周囲に配設される矩形の枠のような外形を有する溶融材料の部分とが設けられてよい。代替として、上記の穴、濡れ性材料の部分、および溶融材料の部分は他の任意の外形を有してよい。
【0028】
上記の穴は、濡れ性材料の部分で完全に包囲されており、上記の表面の中心に位置していなくともよい。さらに、上記の溶融材料の部分をリフローする前に、上記の濡れ性材料の部分の少なくとも一部は、上記の溶融材料の部分と接触している。
【0029】
1つの特定の実施形態によれば、上記の濡れ性材料の部分が取り付けられる表面の上面から見て、上記の濡れ性材料の部分の輪郭の形状は上記の穴の外形またはこの上面から見た上記の表面の第1の部分の外形のようになっていてよい。したがって、もし上記の穴の外形が円のようになっていれば、上記の濡れ性材料の部分の輪郭の形状は、内径が上記の穴より大きい円環帯のようになっていてよいが、これは上記の濡れ性材料の部分が、上記の穴の周囲あるいはこの穴の位置に対応する表面の部分の周囲に設けられているからである。もし上記の穴の外形が、X個(Xは3以上の整数)の辺を有する多角形のようになっている場合、上記の濡れ性材料の部分の輪郭の形状もまた、X個の辺を有する多角形の環帯のようになっていてよいが、ただし内径はこの穴より大きくなっている。さらに、上記の溶融材料の外形は、上記の濡れ性材料の外形のようになっていてよい。これは上記の溶融材料の部分の幾何形状の種類(たとえば円,楕円,多角形,等)が、上記の濡れ性材料の部分の幾何形状と同じであってよいことを意味するが、ただし上記の溶融材料の部分は、上記の濡れ性材料の部分より大きな寸法を有してよい。
【0030】
上記の溶融材料の部分の量は、得られる溶融材料のバンプの直径が、上記の表面の上面から見た穴の直径の2〜3倍となるようにされてよい。上記の穴の近傍と上記の濡れ性材料によって覆われる領域とを閉鎖するために用いられる溶融材料の量、およびこの穴が閉鎖される時の上記の表面上の溶融材料は、余分な溶融材料を避けることおよび/または上記の表面の不要な領域の占有をさけることのために最適化される。
【0031】
上記の溶融材料の部分をリフローする熱サイクルのパラメータは、この溶融材料がリフローの際に素早く移動してこの材料が動的に形状を生成するように設定される。たとえばこのリフローの処理時間は、この溶融材料の融点の30℃〜40℃高い温度で、1〜2分の範囲であってよい。この形状の形成とは、この溶融材料のリフロー後の形状(すなわちバンプの形状)への堆積された形状の変型のことである。たとえば円形の場合においては、この堆積された形状は、ドーナッツのような形状であってよく、このバンプのリフロー後の形状はつぶされた球である。素早いリフローのもう1つの目的は、ノンフラックス処理の場合の酸化を避けることである。
【0032】
上記の表面の上面から見た、上記の濡れ性材料の外形および/または上記の溶融材料の部分の外形および/または上記の穴の外形は、円形、たとえば矩形のような多角形、スリット形状、または非対称形状であってよい。
【0033】
上記の溶融材料の部分のリフローは、制御された雰囲気で行われてよく、上記の溶融材料の部分のリフローの後で、少なくとも上記の穴の雰囲気がこの制御された雰囲気のようになっていてよい。このため上記の穴におけるガスまたはガス混合物の圧力および/または性質を制御することができ、もしこの穴がキャビティのような他の閉鎖された空間に通じていれば、この閉鎖された空間においても制御することができる。この制御された圧力は、10−3mbar〜1barであってよく、または1barより高くともよい。
【0034】
上記の濡れ性材料の部分の取り付けは、以下のステップを含む。
− 上記の表面に濡れ性材料の層を堆積するステップ。
− この濡れ性材料の層の一部をエッチングして、この濡れ性材料の層の残りの部分が、上記の濡れ性材料の部分となるようにするステップ。
【0035】
もしこの穴が、上記の濡れ性材料の層の堆積の前に、上記の表面を貫通して設けられていれば、この穴の側壁および/または底壁を覆うこの濡れ性材料の層の部分もまたエッチングすることができる。しかしながら有利には、この穴は、上記の濡れ性材料の層の部分のエッチングのステップの後で、上記の表面を貫通して設けられる。この場合、この穴は、上記の表面を貫通して設けられるが、この濡れ性材料の部分も貫通して設けられる。
【0036】
最初に接着層が上記の表面に堆積され、次にこの接着層の上に上記の濡れ性材料の層が堆積される。このような接着層は、この濡れ性材料の層の堆積を促進する。
【0037】
もしこの穴が、上記の接着層の堆積の前に、上記の表面を貫通して設けられていれば、この穴の側壁および/または底壁を覆うこの接着層の部分もまたエッチングすることができる。しかしながら有利には、この穴は、上記の接着層の部分の堆積の後で、上記の表面を貫通して設けられる。この場合、この穴は、上記の表面を貫通して設けられるが、この接着層の部分も貫通して設けられる。
【0038】
上記の表面の上面から見た穴の寸法、たとえば直径は、上記の濡れ性材料の部分の内側寸法、たとえば内径以下であってよい。
【0039】
上記の溶融材料の部分は、電気化学的堆積によって取り付けられてよい。上記の接着層は、この電気化学的堆積の間での溶融材料の成長のためのシード層を形成することができる。
【0040】
上記の溶融材料の部分の取り付けは、以下のステップを含む。
− 上記の表面の上および上記の濡れ性材料の部分の上にフォトレジスト層を堆積するステップ。
− このフォトレジスト層をエッチングして、このフォトレジスト層を貫通する開口部を形成するステップ。
− 少なくともこの開口部に溶融材料を堆積して、この開口部に上記の溶融材料の部分を形成するステップ。
このフォトレジスト層は除去されてよい(リフトオフ)
【0041】
上記の表面は、1つの層の主表面となってよく、上記の穴は、少なくともこの層の厚みの部分を貫通して設けられてよい。
【0042】
この場合、この穴が貫通して設けられた層は少なくとも1つのマイクロエレクトロニクスデバイスが封入されるキャビティの壁となってよく、および/またはこのキャビティを覆うあるいはこのキャビティを包囲するメンブレンまたはキャップとなってよい。この場合、上記の溶融材料の部分のリフローは、有利には制御された雰囲気で行われてよく、したがってこの雰囲気が、このマイクロエレクトニクスデバイスが封入されるキャビティにおける圧力および/またはガスの選択(純粋ガスまたは数種類のガスの混合ガス)に関して制御されてよい。
【0043】
代替として、上記の穴は、少なくとも1つのマイクロエレクトニクスデバイスが封入されるキャビティとなっていてよく、上記の溶融材料のバンプは、蓋のようにこのキャビティの壁を形成してよい。この場合、この溶融材料のリフローは、有利には制御された雰囲気で行われてよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以下のような添付した図を参照して、以下に示す例示的かつ限定目的でない実施形態例に基づいて本発明が容易に理解される。
図1A】本発明の第1の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図1B】本発明の第1の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図2A】本発明の第1の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図2B】本発明の第1の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図3A】本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図3B】本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図3C】本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図3D】本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図3E】本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図3F】本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図3G】本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4A】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4B】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4C】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4D】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4E】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4F】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4G】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図4H】本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図5】本発明の第4の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法を用いて得られたパッケージ構造を示す。
図6A】本発明の第5の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図6B】本発明の第5の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図7A】本発明の第5の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
図7B】本発明の第5の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法の1つのステップを示す。
【0045】
異なる図で同一、同様または等価な部分は、以下の説明では、図面間の対応を分かり易くするために、同じ参照番号を有している。
【0046】
これらの図では、分かり易くするために、それぞれの部分は必ずしも正確な寸法で示されていない。
【0047】
これらの異なる可能性(代替および実施形態)は、互いに排他的に理解されるべきではなく、互いに組み合わせることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1A〜2Bを参照して、本発明の第1の実施形態による、溶融材料を用いて穴の密封シールまたは封栓を行う方法を説明する。図1Aおよび図2Aは、上面図であり、図1Bおよび2Bはそれぞれ横側から見た断面図である。
【0049】
図1Aおよび図1Bに示すように、穴100は、少なくとも層102の厚みの一部を貫通するように設けられている。この図および実施形態においては、穴100は、全厚みを貫通するように設けられている。この層102は、この層102の第1の主表面となる表面104を備え、この表面上には上記の穴100を密封閉鎖することになる栓が設けられる。この第1の主表面は、図1Aで見える面であり、この第1の主表面の反対側の第2の主表面106が図2Aに示されている。濡れ性材料の部分108がこの表面104上で穴100の周りに設けられており、この濡れ性材料108の部分がこの穴100を完全に包囲するようになっている。この濡れ性材料108の部分は、この穴100の内側には堆積されていない。ここに示す第1の実施形態においては、この穴100は円形であり、すなわち、この表面104を上面から見て円形であり、断面は円の直径D1に対応している。濡れ性材料108の部分は環形状あるいは環帯形状であり、内径はD1より大きなD2となっており、外径はD2より大きなD3となっている。この第1の実施形態においては、この表面104の上面から見た濡れ性材料の部分108の輪郭の形状の種類は、実質的にこの穴100の形状と相似している。
【0050】
さらにこの第1の実施形態ににおいては、D2はD1より大きくなっている。
このように、表面104の、上記の穴100と上記の濡れ性材料108との間の部分110は、上記の濡れ性材料108の部分によって覆われておらず、かつこの濡れ性材料108によって完全に包囲されている。しかしながらD2=D1となるように設定してもよい。
【0051】
1つの変型実施例においては、上記の穴100および/または上記の濡れ性材料108は、矩形,三角形,多角形,あるいは任意の他の形状から選択された異なる種類の外形を有してよい。上記の濡れ性材料の部分108の外形の種類は、上記の穴100の外形の種類と異なっていてよい。
【0052】
溶融材料の部分112は、この濡れ性材料の部分108の上および周囲に設けられてよい。この第1の実施形態においては、上記の溶融材料の部分112の外形は、実質的に上記の濡れ性材料の部分108の外形に相似しており、ただしこの溶融材料の部分112の寸法は、この濡れ性材料の部分108の寸法より大きくなっている。図1Aおよび図1Bに示す例においては、堆積されているこの溶融材料の部分112は、内径がD2である環形状となっている。したがって、この溶融材料の部分112もまた、上記の濡れ性材料の部分で覆われていない上記の表面104の部分110を覆っていない。この溶融材料の部分112の外径は、D3より大きいD4となっている。代替として、上記の溶融材料の部分112がD2とD3の間の値の内径を有してもよく、これより上記の濡れ性材料の部分108の一部のみが上記の溶融材料の部分112と接触し、図1Aおよび図1bに示すように、この溶融材料の部分112によって完全に覆われようになっていなくともよい。この溶融材料の部分112は、上記の濡れ性材料の部分108の周囲の上記の表面104の第2の部分114も覆っている。
【0053】
上記の溶融材料は、たとえば、インジウム,錫のような純金属,あるいはSnAgCuまたはAuSnのような合金であってよい。
【0054】
次に上記の溶融材料の部分112のリフローが、上記の溶融材料の部分112を加熱処理して行われる。この加熱処理が行われる温度は、上記の溶融材料の特性に合わせて選択され、この溶融材料の融点より高くなっている。上記の溶融材料の部分112のリフローは、この部分112の形状を変更し、実質的に球の一部に相当する形状を有する溶融材料のバンプ116を生成する。この形状は、この加熱処理の際の溶融材料の液相の最小の表面エネルギーによって決定される。この溶融された材料は、上記の濡れ性材料の部分108にのみ接着する(図2Aおよび図2B参照)。出来上がった溶融材料のバンプ116は、上記の穴100を密封シールして閉鎖する栓を形成する。この溶融材料のバンプ116は、上記の穴に侵入せず、したがって上記の穴100の上方外側にのみ配置される。このリフローは、標準的な高速熱処理(RTP,rapid thermal processing)装置で行ってよい。図2Bに示すように、この溶融材料のバンプ116は、リフロー後は、上記の濡れ性材料の部分108とのみ接続している。しかしながら、この溶融材料のバンプ116が、上記の穴100と上記の濡れ性材料の部分108との間に位置する上記の表面104の部分110の少なくとも一部および/または上記の穴100の周囲に位置する表面104の部分とも接続されることができ、また接続されてよい。
【0055】
上記の穴100が、密封閉鎖されることになるキャビティと連通している場合、たとえば上記の層102が、このようなキャビティの壁となっている場合、上記のバンプ116によって上記の穴100を封栓することによって密封閉鎖されたの上記のキャビティに、制御された雰囲気が得られるように、上記の溶融材料の部分112のリフローは、有利にはガス圧、たとえば真空度、および/またはガス(純粋ガスまたは窒素やアルゴン等の異なるガスの混合ガス)の特性に基づいて制御される。このリフローは、上記のキャビティに有機ガスや反応性のガスが捕獲されることを避けるためにノンフラックスで行われてもよい。この場合、リフローのステップの前に、たとえばフッ素ガスまたはギ酸ガスまたは水素ガスを用いた化学処理が、上記の溶融材料の表面で行われるが、この表面は上記の溶融材料の部分112の表面である。次に、上記の溶融材料で、空気のような酸化性ガスが取り除かれたら、上記のリフローは、不活性雰囲気または真空下で行ってよい。
【0056】
上記で説明した例においては、リフロー前の、図1Aおよび図1Bで示すような溶融材料112の体積Vは、以下の式(1)で表される。
ここでHmは、上記の溶融材料の部分112の厚さである。
リフローの後、上記のバンプ116の体積Vは、以下の式(2)で表される。
【0057】
ここでRは上記のバンプ116の形状に相当する球の半径であり、このバンプ116によって形成される球の部分の高さHがほぼこの球の直径に等しいとした場合である。すなわち、上記のバンプ116の底が平坦になっているので、この球が形成されていない残りの部分の高さh(図2Bに点線で示す)がh≪Hとなっているとした場合のものである。
=Vであるので、以下のように表される。
となる。
【0058】
たとえば、溶融材料の部分が高さHm=10μm外径がD4、内径D2=14μm(D1は、たとえば約10μm〜12μm)とすると、バンプの半径Rは、以下のように外径D4に依存する。
【0059】
図3A〜3Gを参照して、本発明の第2の実施形態による、溶融材料を用いて穴の密封シールまたは封栓を行う方法を説明する。図3A〜3Gは、横方向から見た断面図である。
【0060】
図3Aに示すように、この穴100は、層102を完全に貫通して設けられている。この層102は、ここではSiO2から成っている。この層102は、部材118の上に配設されている。この部材118は、ここではシリコンからなっている。しかしながら、この層102は、部材118以外の他の種類の材料の上に設けられていてよい。
【0061】
さらに、この穴100は、この部材118においてあるいはこの部材118を貫通して形成された(他の穴のような)空洞またはキャビティと連通してよい。もう1つの変型実施例によれば、この層102と部材118とが、1つの単層になっていてよい。この場合、上記の穴100は、この単層の一部の厚みを貫通して形成されていることになる。
【0062】
たとえばTiから成り、200nmの厚さを有する接着層120が、ここでは堆積によって、この層102の表面104上および上記の穴100の壁(側壁および底壁)に形成される(図3B)。この接着層120の上に、たとえば堆積によって、たとえば、300nm厚のNiから成る第1の層と100nm厚のAuから成る第2の層とから成る積層部となっている濡れ性材料の層122が、形成される。この接着層120は、この濡れ性材料の層122の堆積を改善するが、これはまた溶融材料を取り付けるためのシード層としても機能する。
【0063】
上記の濡れ性材料の層122は、上記の穴100を封栓するために用いられることになる溶融材料と相性のよい材料から選択されていてよい。たとえば、もしこの溶融材料がインジウムまたはインジウム合金または錫または錫合金であれば、この濡れ性材料は、NiおよびAuからなる積層部、または金あるいは銅からなる単層から選択されてよい。この濡れ性材料の層122および/または接着層120の下に、接着および/または信頼性の観点から、他の層(複数)が配設されてよい。
【0064】
次に、この濡れ性材料の層122は、エッチングによってパターニングされ、この層122の残りの部分が、濡れ性材料の部分108(図3C)を形成するようにされる。この濡れ性材料の部分108の寸法は、上記の穴100のサイズに合わせて選択され、また上記で説明したように、上記の穴100を密封封栓するために設けられることになるバンプのサイズに合わせて選択される。上記の接着層120および上記の濡れ性材料の層122の、上記の穴100の中でこの穴100の側壁および底壁に堆積されている部分もまたこのエッチング工程あるいはさらなるエッチング工程の際にエッチングされる。
【0065】
代替として、上記の穴100の中で、この穴100の側壁および底壁に堆積されている上記の接着層120および上記の濡れ性材料の層122の一部が、まずエッチングされてよく、つぎにこの濡れ性材料の層122がエッチングによってパターニングされ、この層122の残りの部分が濡れ性材料の部分108となるようにされる。
【0066】
1つの変形実施例として、濡れ性材料の層122の上記の穴100の中に配設された部分のみがエッチングされてよく、上記の穴100の側壁および/または底壁に配設された接着層120の部分を保持してもよい。
【0067】
すべての変型実施例において、すべての濡れ性材料は、最終的に上記の穴100の外側に配置される。
【0068】
図3Dに示すように、上記の接着層120の上、上記の濡れ性材料の部分108の上、および上記の穴の中に、フォトレジスト層124が堆積され、エッチングによってパターニングされて溶融材料の堆積領域が画定される。上記の濡れ性材料の部分108、およびこの濡れ性材料の部分108の周囲に配置された上記の層104の第2の部分114の上に配設された上記の接着層120の一部を覆うレジスト材料は、このフォトレジスト層124のパターニングによって除去され、こうして溶融材料の部分112の位置でフォトレジスト層124の開口部125が形成される。
【0069】
次に上記の溶融材料の部分112が、電気化学的処理(ECD、Electro Chemical Deposition)によって、上記のフォトレジスト層124に設けられている開口部125に形成される(図3E)。上記の接着層は、このECDの際にシード層として機能する。この溶融材料の成長は、全ての方向(X,Y,X軸)で同一である。このようにして上記の溶融材料の部分112の量Vは、上記のフォトレジスト層124に設けられている開口部の寸法に依存する。
【0070】
1つの変型実施例においては、上記の溶融材料の部分112をリフトオフによって設けてよい。この場合、上記の溶融材料は、まず上記のフォトレジスト層112に設けられている開口部に堆積されるが、ただしこのフォトレジスト層112上にも堆積される。好ましくは汚染を避けるために、堆積は、PVDスパッタリングによって行われるが、これはこのような堆積がリフトオフに処理に最も適しているからである。次に上記のフォトレジスト層122が除去され、上記の開口部に堆積された溶融材料のみが維持され、こうして溶融材料の部分112が形成される。
【0071】
上記の溶融材料の部分112を取り付けるどのような処理が行われても、上記の濡れ性材料の部分108の上およびこの濡れ性材料の部分に隣接するこの溶融材料の部分112の位置は、実質的に水平方向に延在する、すなわちこの部分112が取り付けられる面の上面から見た場合に、この部分112の主寸法があるようにすることを可能とする。このようにして得られた部分112は、機械的に安定である。この方法は、本願で説明する全ての実施形態および変形実施例で用いられる。
【0072】
上記の溶融材料の部分112が形成されると、上記のフォトレジスト層124は除去され(図3F)、図1A〜2Bを参照して上記で説明したように、この溶融材料のリフローが行われる。このようにして上記穴106を密封封栓する溶融材料のバンプ116が、上記の濡れ性材料108の上、および上記の穴100の上方でこの穴100の内側には無い位置に得られる。最後に、上記の濡れ性材料の部分108および/または上記の溶融材料のバンプ116によって覆われていない接着層120の部分がエッチングによって除去される(図3G)。上記の溶融材料のリフローの前に、この接着層120の部分を除去してもよい。
【0073】
図4A〜4Hを参照して、本発明の第3の実施形態による、溶融材料を用いて穴の密封シールまたは封栓を行う方法を説明する。図4A〜4Gは、横方向から見た断面図である。
【0074】
図4Aに示すように、上記の穴100が貫通して設けられることになる上記の層102は、ここではキャップまたは蓋である、キャビティ126の1つの壁となっており、ここにマイクロエレクトロニクスデバイス128、たとえばMEMSデバイスが封入される。このマイクロエレクトロニクスデバイス128は、たとえばサポートウェーハ130等の基板上に配設される。
【0075】
上記の第2の実施形態と同様に、上記の接着層120は、ここでは堆積によって上記の層102の表面104上に形成される(図4B)。上記の濡れ性材料の層122は、たとえば堆積によって、この接着層120上に形成される。これらの接着層120および濡れ性材料の層122は、上記の第2の実施形態に関連して上記で説明したものと同様である。この濡れ性材料の層122および/または接着層120の下に、接着および/または信頼性の観点から、他の層(複数)が配設されてよい。
【0076】
図4Cに示すように、この濡れ性材料の層122は、エッチングによってパターニングされ、この層122の残りの部分が、濡れ性材料の部分108となるようにされる。ここで上記の濡れ性材料の部分108は、上記の層102を貫通して設けられることになる上記の穴100の位置に相当する表面104の第1の部分132を覆っており、また上記の穴100が設けられる時の、上記の濡れ性材料108の部分の位置に相当するこの第1の部分の周囲の表面104の他の一部も覆っている。
【0077】
次に、上記の接着層120の上、および上記の濡れ性材料の部分108の上に、フォトレジスト層124が堆積され、エッチングによってパターニングされて溶融材料の堆積領域が画定される(図4D)。上記の濡れ性材料の部分108、およびこの濡れ性材料の部分108の周囲に配置された上記の層104の第2の部分114の上に配設された上記の接着層120の一部を覆うレジスト材料は、このフォトレジスト層124のパターニングによって除去され、こうして溶融材料の部分112の位置に対応してフォトレジスト層124の上記の開口部125が形成される。
【0078】
次に図4Eに示すように、上記の第2の実施形態のように、上記のフォトレジスト層124に設けられている上記の開口部125で、上記の溶融材料の部分112が形成される。代替として、上記の溶融材料の部分をリフトオフによって設けてよい。
【0079】
いったん上記の溶融材料の部分112が形成されると、上記のフォトレジスト124は除去される(図4F)。
【0080】
図4Gに示すように、穴100は、上記の溶融材料の部分112,上記の濡れ性材料の部分108,上記の接着層120,および上記のキャップ層102を貫通してエッチングされる。こうしてこの穴100は、キャビティ126への通路を形成する。
【0081】
図4Hに示すように、最後に、図1A〜2Bに関連して上記で説明したように、上記の溶融材料のリフローが行われる。このようにして上記穴106を密封封栓する上記の溶融材料のバンプ116が、上記の濡れ性材料108の上、および上記の穴100の上方に得られる。上記の穴100の内側には濡れ性材料が全く配置されていないので、上記の溶融材料のバンプ116もまたこの穴100の外側にのみ配置されている。ここで、上記のリフローが制御された雰囲気で行われ、これと同じ圧力および同じガスまたは混合ガスが、上記の穴100を密封封栓した後の、上記のキャビティ126において得られる。
【0082】
上記の第2の実施形態と同様に、上記の濡れ性材料の部分108および/または上記の溶融材料のバンプ116によって覆われていない上記の接着層120の部分がエッチングされてよい。上記の溶融材料のリフローの前に、この接着層120の部分を除去してもよい。
【0083】
図5は、本発明の第4の実施形態による、溶融材料を用いた穴の密封シールの方法を用いて得られたパッケージ構造を示す。
【0084】
上記の穴100は、層102を貫通して設けられている。この穴100の側壁は、上記のマイクロエレクトロニクスデバイス128、たとえばMEMSデバイスが配置されて封入されるキャビティの側壁を形成している。このマイクロエレクトロニクスデバイス128は、サポートウェーハ130上に配設される。さらに、この穴100は上記のマイクロエレクトロニクスデバイスが配設されるキャビティとなる。上記の表面104の面におけるこのキャビティの寸法(たとえば上記の穴100が円形の場合の直径)は、たとえば10μmあり、また上記の層102の厚みであるこのキャビティの高さは、たとえば約2〜10μmある。このキャビティのキャップは、上記の穴100を封栓する上記の溶融材料のバンプ116によって形成されており、このバンプはこの穴100の外側に配置されている。ここで説明する例においては、上記の溶融材料のバンプ116は、上記の濡れ性材料の良好な接着性のために、この穴100の外側に配置された上記の濡れ性材料の部分108にのみ固定されている。このような実施形態においては、もし上記のマイクロエレクトロニクスデバイス128がMOEMSデバイスまたはNOEMSデバイスの場合は、上記のサポートウェーハ130は、上記のマイクロエレクトロニクスデバイス128によって受信および/または放出される波長の少なくとも選択された範囲の部分に対して透明であってよい。
【0085】
図6A〜7Bを参照して、本発明の第5の実施形態による、溶融材料を用いて穴の密封シールまたは封栓を行う方法を説明する。図6Bおよび図7Bは、上面図であり、図6Aおよび図7Aは、横方向から見た断面図である。
【0086】
この第5の実施形態においては、上記の濡れ性材料の部分108および上記の接着層120の部分は、上記表面104の上面から見て、上記穴100の周囲に配設された環状の形状となっている第1の部分109aと、この第1の部分109aに隣接する第2の部分109aとを備える。図6Aおよび図6Bに示す例においては、上記の部分108および部分120の第2の部分109bは、上記の第1の部分109aに接続されており、上記の表面104の上面から見て、引き延ばされた、たとえば矩形の形状を有している。
【0087】
上記の溶融材料の部分112は、上記の部分108,120の上記の第1の部分109aを部分的に覆う第1の部分111aを有し、またこの第1の部分111aは、上記の第1の部分109aに隣接する領域も覆っている。この第1の領域111aの外形は、上記表面104の上面から見て、ギャップを有する環状部分となっている。上記の溶融材料の部分112は、また上記の濡れ性材料の部分の第2の部分109bおよびこの第2の部分109bに隣接した領域を覆う、第2の部分111bを有している。この第2の部分111bの形状は、上記の表面104の上面から見て、たとえば矩形となっている。1つの変型実施例として、これらの部分109bおよび111bは、矩形とは異なる形状を有してよい。
【0088】
次に上記の溶融材料のリフローが実行され、こうして上記の濡れ性材料の部分108にのみ固定された、特に上記の濡れ性材料の部分108の2つの部分109aおよび109bに固定された溶融材料のバンプ116が形成される(図7Aおよび図7B)。この溶融材料のバンプ116は、上記の穴100を封栓する溶融材料の均一な部分に相当する。このバンプ116の第1の部分は、上記の部分109aの上に配置されており、このバンプ116の第2の部分は、上記の部分109bの上に配置されている。
【0089】
この第5の実施形態においては、余分な溶融材料が、上記の穴100の一方の側に堆積されている(図6A,6Bには上記の部分109bを含む側の上にこの余分な溶融材料が配設されていることが示されている。)。リフローの間に、この余分な材料は上記の穴100の反対側にあるこの溶融材料のギャップを埋め、こうして上記の穴100の上方に中心を持つバンプ116が形成される。上記の濡れ性材料の部分108は、上記の穴100の周りで連続しているが、リフローの前に堆積されている上記の部分112は、この穴の周囲で閉じた環状となっておらず、この濡れ性材料と接触し、ギャップを有する形状となっている。
【0090】
上記の全ての実施形態において、溶融材料の1つの部分112が、上記の濡れ性材料の部分108および上記の表面104の第2の部分114の上に設けられてよい。しかしながらこれらの全ての実施形態において、上記の濡れ性材料の部分108の上、および上記の表面104の第2の部分114の上に、幾つかの個別に分離された溶融材料の部分112を取り付けてもよい。この場合、これらの溶融材料の部分のリフローの際に、これらの部分のリフローされた材料が集合して上記の溶融材料のバンプ116を形成する。さらに、同じ層102の異なる場所に設けられた複数の穴を並行して密封封栓することも可能である。さらに、1つのウェーハ上に配設あるいは形成された複数のデバイスを並行して処理することが可能であり。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6A
図6B
図7A
図7B