(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の細胞を同定することは、前記複数の細胞の各々1つ毎に、各画像中の前記第1の組の画素から前記細胞の周領域に対応する画素を除去することを備える、請求項6に記載の方法。
前記複数の細胞の各々1つ毎に、前記第1の組の画素に基づいて前記細胞の周を定めることと、前記面積に対する2乗した前記周の比率がしきい値を超える場合は前記平均細胞体積の測定から前記細胞を排除することとをさらに備える、請求項9に記載の方法。
前記複数の細胞の各々1つ毎に、前記細胞の凸包を測定することと、前記凸包で囲まれる面積を測定することと、前記細胞の前記面積に対する、前記凸包によって囲まれる前記面積の比率がしきい値を超える場合は前記平均細胞体積の測定から前記細胞を排除することとをさらに備える、請求項6に記載の方法。
前記複数の細胞の各々1つ毎に、前記細胞の前記面積が選択された面積範囲外にある場合は前記平均細胞体積の測定から前記細胞を排除することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
前記最大光学濃度と前記補正係数との前記和に対する前記平均光学濃度の前記比率にオフセット値を加算して、各照射波長で前記細胞の前記体積を測定することをさらに備える、請求項15に記載の方法。
前記複数の細胞の各々1つ毎に、前記複数の照射波長の各々に対応する前記積分光学濃度と前記体積との重み付け線形結合に基づいて細胞体積が測定される、請求項2に記載の方法。
前記複数の細胞の各々1つ毎に、前記面積と、前記複数の照射波長の各々に対応する前記積分光学濃度および体積との重み付け線形結合に基づいて細胞体積が測定される、請求項4に記載の方法。
前記複数の照射波長は、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項24に記載の方法。
前記複数の照射波長は、620nmから750nmの間の少なくとも1つの波長と、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項26に記載の方法。
前記装置を再校正することは、血液試料の参照の組から、前記複数の照射波長の各々に対応する前記積分光学濃度に基づいて前記細胞体積を測定するのに用いる複数の重み係数を定めることを備える、請求項29に記載の方法。
前記複数の照射波長は、620nmから750nmの間の少なくとも1つの波長と、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項31に記載のシステム。
前記第1の組の画素から前記細胞の周領域に対応する画素を除去することによって、前記細胞に対応する各画像中の第2の組の画素を同定することをさらに備える、請求項40に記載の方法。
前記細胞の凸包を定めることと、前記凸包によって囲まれる面積を測定することと、前記細胞の前記面積に対する、前記凸包によって囲まれる前記面積の比率がしきい値を超えた場合に前記平均細胞ヘモグロビンの値の測定から前記細胞を排除することとをさらに備える、請求項42に記載の方法。
前記照射波長に対応する前記最大光学濃度に対する前記平均光学濃度の比率に基づいて各照射波長で前記細胞の前記体積を測定することをさらに備える、請求項38に記載の方法。
前記照射波長での前記最大光学濃度と補正係数との和に対する前記平均光学濃度の比率に基づいて各照射波長で前記細胞の前記体積を測定することをさらに備える、請求項38に記載の方法。
前記最大光学濃度と前記補正係数との前記和に対する前記平均光学濃度の前記比率にオフセット値を加算して各照射波長で前記細胞の前記体積を測定することをさらに備える、請求項47に記載の方法。
前記複数の照射波長は、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項50に記載の方法。
前記複数の照射波長は、620nmから750nmの間の少なくとも1つの波長と、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項52に記載の方法。
前記装置を再校正することは、血液試料の参照の組から、前記細胞の前記面積、前記照射波長の各々に対応する前記細胞の前記体積、および前記照射波長の各々に対応する前記細胞についての前記積分光学濃度に基づいて前記細胞の前記ヘモグロビン含有量値を測定するのに用いられる複数の重み係数を定めることを備える、請求項55に記載の方法。
前記複数の照射波長は、620nmから750nmの間の少なくとも1つの波長と、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項57に記載のシステム。
異なる照射波長に対応する少なくとも2つの画像中の前記画素の組の各構成要素毎の強度値に基づいて前記第2の組の画素を同定することをさらに備える、請求項64に記載の方法。
前記複数の照射波長は、電磁スペクトルの青色領域の照射波長と、前記電磁スペクトルの黄色領域の照射波長とを備え、前記方法は、前記青色領域の前記照射波長に対応する前記血小板の画像と、前記黄色領域の前記照射波長に対応する前記血小板の画像とを得ることを備える、請求項62に記載の方法。
前記黄色領域の前記照射波長に対応する前記画像中の前記血小板についての積分光学濃度が600よりも大きい場合は前記平均血小板体積の測定から前記血小板を排除することをさらに備える、請求項66に記載の方法。
前記青色領域の前記照射波長に対応する前記画像中の前記血小板についての積分光学濃度が200よりも大きい場合は前記平均血小板体積の測定から前記血小板を排除することをさらに備える、請求項66に記載の方法。
前記照射波長に対応する前記最大光学濃度に対する前記平均光学濃度の比率に基づいて各照射波長で前記血小板の前記体積を測定することをさらに備える、請求項61に記載の方法。
前記照射波長での前記最大光学濃度と補正係数との和に対する前記平均光学濃度の比率に基づいて各照射波長で前記血小板の前記体積を測定することをさらに備える、請求項61に記載の方法。
前記最大光学濃度と補正係数との和に対する前記平均光学濃度の比率にオフセット値を加算して、各照射波長で前記血小板の前記体積を測定することをさらに備える、請求項70に記載の方法。
前記複数の照射波長は、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項74に記載の方法。
前記複数の照射波長は、620nmから750nmの間の少なくとも1つの波長と、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項76に記載の方法。
前記装置を再校正することは、血液試料の参照の組から、前記血小板の前記面積、前記照射波長の各々に対応する前記血小板の前記体積、および前記照射波長の各々に対応する前記血小板についての前記積分光学濃度に基づいて前記血小板の前記体積を測定するのに用いられる複数の重み係数を定めることを備える、請求項79に記載の方法。
前記複数の照射波長は、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを備える、請求項81に記載のシステム。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
一般的に、第1の局面では、開示は、赤血球(red blood cell)のヘモグロビン含有量値を測定する方法を特徴とし、方法は:(a)複数の照射波長の入射光で細胞(cell)を照射することと;(b)各照射波長に対応する細胞の少なくとも1つの二次元画像を得ることと;(c)各照射波長毎に、細胞について平均光学濃度および最大光学濃度を測定することと;(d)細胞の面積を測定することと;(e)各照射波長毎に、細胞の面積ならびに照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度および最大光学濃度に基づいて細胞の体積を測定することと;(f)各照射波長毎に、細胞の面積および照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度に基づいて細胞についての積分光学濃度を測定することと;(g)細胞の面積と、照射波長の各々に対応する細胞の体積と、照射波長の各々に対応する細胞についての積分光学濃度との重み付けられた組合せに基づいて細胞のヘモグロビン含有量値を測定することとを含む。
【0005】
別の局面では、開示は、血小板の体積を測定する方法を特徴とし、方法は:(a)複数の照射波長の入射光で血小板を照射することと;(b)各照射波長に対応する血小板の少なくとも1つの二次元画像を得ることと;(c)各照射波長毎に、血小板について平均光学濃度および最大光学濃度を測定することと;(d)血小板の面積を測定することと;(e)各照射波長毎に、血小板の面積ならびに照射波長に対応する血小板についての平均光学濃度および最大光学濃度に基づいて血小板の体積を測定することと;(f)各照射波長毎に、血小板の面積および照射波長に対応する血小板についての平均光学濃度に基づいて血小板についての積分光学濃度を測定することと;(g)血小板の面積と、照射波長の各々に対応する血小板の体積と、照射波長の各々に対応する血小板についての積分光学濃度との重み付けられた組合せに基づいて血小板の体積を測定することとを含む。
【0006】
さらなる局面では、開示は、細胞の体積を測定する方法を特徴とし、方法は:(a)複数の照射波長の入射光で細胞を照射することと;(b)各照射波長に対応する細胞の少なくとも1つの二次元画像を得ることと;(c)各照射波長毎に、細胞についての平均光学濃度および最大光学濃度を測定することと;(d)細胞の面積を測定することと;(e)各照射波長毎に、細胞の面積ならびに照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度および最大光学濃度に基づいて細胞の体積を測定することと;(f)各照射波長毎に、細胞の面積および照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度に基づいて細胞についての積分光学濃度を測定することと;(g)細胞の面積と、照射波長の各々に対応する細胞の体積と、照射波長の各々に対応する細胞についての積分光学濃度との重み付けられた組合せに基づいて細胞の体積を測定することとを含む。
【0007】
別の局面では、開示は、赤血球のヘモグロビン含有量値を測定するためのシステムを特徴とし、システムは、複数の照射波長の入射光で細胞を照射するように構成される照射源と、各照射波長に対応する細胞の少なくとも1つの二次元画像を得るように構成される検出器と、(a)各照射波長で細胞についての平均光学濃度および最大光学濃度を測定し;(b)細胞の面積を測定し;(c)各照射波長毎に、細胞の面積ならびに照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度および最大光学濃度に基づいて細胞の体積を測定し;(d)各照射波長毎に、細胞の面積および照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度に基づいて細胞についての積分光学濃度を測定し;(e)細胞の面積と、照射波長の各々に対応する細胞の体積と、照射波長の各々に対応する細胞についての積分光学濃度との重み付けられた組合せに基づいて細胞のヘモグロビン含有量値を測定するように構成される電子プロセッサとを含む。
【0008】
さらなる局面では、開示は、血小板の体積を測定するためのシステムを特徴とし、システムは、複数の照射波長の入射光で血小板を照射するように構成される照射源と、各照射波長に対応する血小板の少なくとも1つの二次元画像を得るように構成される検出器と、(a)各照射波長で血小板についての平均光学濃度および最大光学濃度を測定し;(b)血小板の面積を測定し;(c)各照射波長毎に、血小板の面積ならびに照射波長に対応する血小板についての平均光学濃度および最大光学濃度に基づいて血小板の体積を測定し;(d)各照射波長毎に、血小板の面積および照射波長に対応する血小板についての平均光学濃度に基づいて血小板についての積分光学濃度を測定し;(e)血小板の面積と、照射波長の各々に対応する血小板の体積と、照射波長の各々に対応する血小板についての積分光学濃度との重み付けられた組合せに基づいて血小板の体積を測定するように構成される電子プロセッサとを含む。
【0009】
別の局面では、開示は、細胞の体積を測定するためのシステムを特徴とし、システムは、複数の照射波長の入射光で細胞を照射するように構成される照射源と、各照射波長に対応する細胞の少なくとも1つの二次元画像を得るように構成される検出器と、(a)各照射波長で細胞についての平均光学濃度および最大光学濃度を測定し;(b)細胞の面積を測定し;(c)各照射波長毎に、細胞の面積ならびに照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度および最大光学濃度に基づいて細胞の体積を測定し;(d)各照射波長毎に、細胞の面積および照射波長に対応する細胞についての平均光学濃度に基づいて細胞についての積分光学濃度を測定し;(e)細胞の面積と、照射波長の各々に対応する細胞の体積と、照射波長の各々に対応する細胞についての積分光学濃度との重み付けられた組合せに基づいて細胞の体積を測定するように構成される電子プロセッサとを含む。
【0010】
さらなる局面では、開示は、血液試料について平均細胞体積を測定するための方法を特徴とし、方法は、複数の照射波長の入射光で試料を照射し、複数の照射波長の各々で試料の二次元画像を得ることと、画像の各々に現われる複数の細胞を同定することと、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定することと、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞の体積を測定することと、複数の細胞の各々1つ毎に細胞の体積から血液試料について平均細胞体積を測定することとを含む。
【0011】
別の局面では、開示は、血液試料について平均血小板体積を測定するための方法を特徴とし、方法は、複数の照射波長の入射光で試料を照射し、複数の照射波長の各々で試料の二次元画像を得ることと、画像の各々に現われる複数の血小板を同定することと、複数の血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定することと、複数の血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて血小板の体積を測定することと、複数の細胞の各々1つ毎に、細胞の体積から血液試料について平均血小板体積を測定することとを含む。
【0012】
さらなる局面では、開示は、血液試料について平均細胞ヘモグロビン値を測定するための方法を特徴とし、方法は、複数の照射波長の入射光で試料を照射し、複数の照射波長の各々で試料の二次元画像を得ることと、画像の各々に現われる複数の細胞を同定することと、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定することと、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞ヘモグロビン値を測定することと、複数の細胞の各々1つ毎に、細胞ヘモグロビン値から血液試料についての平均細胞ヘモグロビン値を測定することとを含む。
【0013】
別の局面では、開示は、血液試料について平均細胞体積を測定するためのシステムを特徴とし、システムは、複数の照射波長の入射光を試料に向けるように構成される照射源と、複数の照射波長の各々で試料の二次元画像を得るように構成される検出器と、画像の各々に現われる複数の細胞を同定し、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定し、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞体積を測定し、複数の細胞の各々1つ毎に、細胞体積から血液試料についての平均細胞体積を測定するように構成される電子プロセッサとを含む。
【0014】
さらなる局面では、開示は、血液試料についての平均血小板体積を測定するためのシステムを特徴とし、システムは、複数の照射波長の入射光を試料に向けるように構成される照射源と、複数の照射波長の各々で試料の二次元画像を得るように構成される検出器と、画像の各々に現われる複数の血小板を同定し、複数の血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定し、複数の血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて血小板体積を測定し、複数の細胞の各々1つ毎に、血小板体積から血液試料についての平均血小板体積を測定するように構成される電子プロセッサとを含む。
【0015】
別の局面では、開示は、血液試料について平均細胞ヘモグロビン値を測定するためのシステムを特徴とし、システムは、複数の照射波長の入射光を試料に向けるように構成される照射源と、複数の照射波長の各々で試料の二次元画像を得るように構成される検出器と、画像の各々に現われる複数の細胞を同定し、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定し、複数の細胞の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞ヘモグロビン値を測定し、複数の細胞の各々1つ毎に、細胞の体積から血液試料についての平均細胞ヘモグロビン値を測定するように構成される電子プロセッサとを含む。
【0016】
さらなる局面では、開示は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、各々が試料に入射する照射光の異なる波長に対応する、血液試料の複数の画像を受信させ、画像の各々に現われる複数の細胞を同定させ、複数の細胞の各々1つ毎に複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定させ、複数の細胞の各々1つ毎に複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞体積を測定させ、複数の細胞の各々1つ毎に細胞体積から血液試料についての平均細胞体積を測定させるコンピュータ可読命令をその上にエンコードしたコンピュータ可読記憶装置を特徴とする。
【0017】
別の局面では、開示は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、各々が試料に入射する照射光の異なる波長に対応する、血液試料の複数の画像を受信させ、画像の各々に現われる複数の血小板を同定させ、複数の血小板の各々1つ毎に複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定させ、複数の細胞の各々1つ毎に複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて血小板体積を測定させ、複数の細胞の各々1つ毎に細胞体積から血液試料について平均血小板体積を測定させるコンピュータ可読命令をその上にエンコードしたコンピュータ可読記憶装置を特徴とする。
【0018】
さらなる局面では、開示は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、各々が試料に入射する照射光の異なる波長に対応する、血液試料の複数の画像を受信させ、画像の各々に現われる複数の細胞を同定させ、複数の細胞の各々1つ毎に複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定させ、複数の細胞の各々1つ毎に複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞ヘモグロビン値を測定させ、複数の細胞の各々1つ毎に細胞体積から血液試料についての平均細胞ヘモグロビン値を測定させるコンピュータ可読命令をその上にエンコードしたコンピュータ可読記憶装置を特徴とする。
【0019】
方法、システム、および装置の実施形態は、以下の特徴のうち任意の1つ以上を含むことができる。
【0020】
方法は、血液の試料からの複数の赤血球についてステップ(a)から(g)を繰返して複数の赤血球の各々1つ毎にヘモグロビン含有量値を測定することと、複数の赤血球の各々1つ毎にヘモグロビン含有量値から試料についての平均細胞ヘモグロビン値を測定することとを含むことができる。
【0021】
方法は、細胞に対応する細胞の各画像中の第1の組の画素を同定することを含むことができる。方法は、第1の組の画素から細胞の周領域に対応する画素を除去することによって、細胞に対応する各画像中の第2の組の画素を同定することを含むことができる。方法は、第1の組の画素に基づいて細胞の面積を測定することを含むことができる。
【0022】
方法は、第1の組の画素に基づいて細胞の周を定めることと、面積に対する周の2乗の比率がしきい値を超えた場合は平均細胞ヘモグロビン値の測定から細胞を排除することとを含むことができる。方法は、細胞の凸包を定めることと、凸包によって囲まれる面積を測定することと、細胞の面積に対する凸包によって囲まれる面積の比率がしきい値を超えた場合に平均細胞ヘモグロビン値の測定から細胞を排除することとを含むことができる。方法は、細胞の面積が選択された面積範囲外にある場合は平均細胞ヘモグロビン値の測定から細胞を排除することを含むことができる。
【0023】
方法は、照射波長に対応する最大光学濃度に対する平均光学濃度の比率に基づいて、各照射波長で細胞の体積を測定することを含むことができる。方法は、照射波長での最大光学濃度と補正係数との和に対する平均光学濃度の比率に基づいて各照射波長で細胞の体積を測定することを含むことができる。方法は、最大光学濃度と補正係数との和に対する平均光学濃度の比率にオフセット値を加算して各照射波長で細胞の体積を測定することを含むことができる。方法は、血液試料の参照の組から補正係数の値およびオフセット値を定めることを含むことができる。
【0024】
複数の照射波長は少なくとも3つの照射波長を含むことができる。複数の照射波長は、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを含むことができる。複数の照射波長は少なくとも4つの照射波長を含むことができる。複数の照射波長は、620nmから750nmの間の少なくとも1つの波長と、575nmから600nmの間の少なくとも1つの波長と、525nmから570nmの間の少なくとも1つの波長と、400nmから475nmの間の少なくとも1つの波長とを含むことができる。
【0025】
自動化血液分析装置の動作条件を判定することは、装置が本明細書中に開示する方法を用いて対照組成物についての平均細胞ヘモグロビン値を測定するように装置を動作させることと、対照組成物についての平均細胞ヘモグロビンの参照値と平均細胞ヘモグロビンの測定値とを比較して装置の動作条件を判定することとを含むことができる。装置の動作条件を判定することは、対照組成物についての平均細胞ヘモグロビンの測定値と参照値との間の差を求めることと、差がしきい値を超える場合は装置を再校正することとを含むことができる。装置を再校正することは、血液試料の参照の組から、細胞の面積、照射波長の各々に対応する細胞の体積、および照射波長の各々に対応する細胞についての積分光学濃度に基づいて細胞のヘモグロビン含有量値を測定するのに用いられる複数の重み係数を定めることを含むことができる。
【0026】
電子プロセッサは、血液の試料からの複数の赤血球についてステップ(a)から(e)を繰返して複数の赤血球の各々毎にヘモグロビン含有量値を測定し、複数の赤血球の各々毎にヘモグロビン含有量値から試料についての平均細胞ヘモグロビン値を測定するように構成可能である。
【0027】
システムは、自動化血液試料調製システムを含むことができる。
方法は、血液の試料からの複数の血小板または細胞についてステップ(a)から(g)を繰返して複数の血小板または細胞の各々毎に体積を測定することと、複数の血小板の各々毎に体積から試料について平均血小板体積または平均細胞体積を測定することとを含むことができる。方法は、血小板または細胞に対応する血小板または細胞の各画像中の画素の組を同定することを含むことができる。画素の組を同定することは、血小板の中央領域に対応する第1の組の画素を同定することと、血小板の非中央領域に対応する第2の組の画素を同定することと、第1の組の画素と第2の組の画素とを合体させて血小板に対応する画素の組を形成することとを含むことができる。方法は、異なる照射波長に対応する少なくとも2つの画像中の画素の組の各構成要素毎の強度値に基づいて第2の組の画素を同定することを含むことができる。
【0028】
複数の照射波長は、電磁スペクトルの青色領域中の照射波長と、電磁スペクトルの黄色領域中の照射波長とを含むことができ、方法は、青色領域中の照射波長に対応する血小板の画像と、黄色領域中の照射波長に対応する血小板の画像とを得ることを含むことができる。方法は、黄色領域中の照射波長に対応する画像中の血小板についての積分光学濃度が600よりも大きい場合は平均血小板体積の測定から血小板を排除することを含むことができる。方法は、青色領域中の照射波長に対応する画像中の血小板についての積分光学濃度が200よりも大きい場合は平均血小板体積の測定から血小板を排除することを含むことができる。方法は、画素の組に基づいて血小板または細胞の面積を測定することを含むことができる。
【0029】
方法は、照射波長に対応する最大光学濃度に対する平均光学濃度の比率に基づいて各照射波長で血小板または細胞の体積を測定することを含むことができる。方法は、照射波長での最大光学濃度と補正係数との和に対する平均光学濃度の比率に基づいて各照射波長で血小板または細胞の体積を測定することを含むことができる。方法は、最大光学濃度と補正係数との和に対する平均光学濃度の比率にオフセット値を加算して各照射波長で血小板または細胞の体積を測定することを含むことができる。
【0030】
自動化血液分析装置の動作条件を判定することは、装置が本明細書中に開示する方法を用いて対照組成物についての平均血小板体積または平均細胞体積を測定するように装置を動作させることと、対照組成物についての平均血小板体積または平均細胞体積の参照値と平均血小板体積または平均細胞体積の測定値とを比較して、装置の動作条件を判定することとを含むことができる。装置の動作条件を判定することは、対照組成物についての平均血小板体積または平均細胞体積の測定値と参照値との間の差を求めることと、差がしきい値を超える場合は装置を再校正することとを含むことができる。装置を再校正することは、血液試料の参照の組から、血小板または細胞の面積、照射波長の各々に対応する血小板または細胞の体積、および照射波長の各々に対応する血小板または細胞についての積分光学濃度に基づいて血小板の体積または細胞の体積を測定するのに用いられる複数の重み係数を定めることを含むことができる。
【0031】
電子プロセッサは、血液の試料からの複数の血小板または細胞についてステップ(a)から(e)を繰返して複数の血小板または細胞の各々毎に体積を測定し、複数の血小板または細胞の各々毎に体積から試料についての平均血小板体積または平均細胞体積を測定するように構成可能である。
【0032】
方法は、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する体積を測定することと、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度および体積に基づいて細胞または血小板の体積を測定することとを含むことができる。方法は、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の面積を測定することと、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の面積および複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞または血小板の体積を測定することとを含むことができる。方法は、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の面積を測定することと、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の面積ならびに複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度および体積に基づいて細胞または血小板の体積を測定することとを含むことができる。
【0033】
各々の二次元画像は、試料から反射されるまたは試料が透過する入射光に対応することができる。
【0034】
細胞の周領域の厚みは0.5ミクロン以上であり得る。
方法は、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の凸包を定めることと、凸包によって囲まれる面積を測定することと、細胞または血小板の面積に対する凸包によって囲まれる面積の比率がしきい値を超えた場合に平均細胞体積または平均血小板体積の測定から細胞または血小板を排除することとを含むことができる。
【0035】
方法は、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の面積が選択された面積範囲外にある場合は平均細胞または血小板体積の測定から細胞または血小板を排除することを含むことができる。
【0036】
複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度を測定することは、細胞または血小板の面積を測定することと、画像のうち対応の1つに基づいて細胞または血小板についての平均光学濃度を複数の照射波長の各々毎に測定することと、細胞または血小板の面積および波長に対応する細胞または血小板についての平均光学濃度に基づいて各波長に対応する積分光学濃度を測定することとを含むことができる。
【0037】
複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する体積を測定することは、複数の照射波長の各々毎に、細胞または血小板についての平均光学濃度および最大光学濃度を測定することと、複数の照射波長の各々毎に、波長に対応する最大光学濃度に対する平均光学濃度の比率に基づいて細胞または血小板の体積を測定することとを含むことができる。
【0038】
複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する体積を測定することは、複数の照射波長の各々毎に、細胞または血小板について平均光学濃度および最大光学濃度を測定することと、複数の照射波長の各々毎に、波長に対応する最大光学濃度と当該波長での補正係数との和に対する平均光学濃度の比率に基づいて細胞または血小板の体積を測定することとを含むことができる。方法は、最大光学濃度と補正係数との和に対する平均光学濃度の比率にオフセット値を加算して各照射波長で細胞または血小板の体積を測定することを含むことができる。
【0039】
複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の体積は、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度の重み付け線形結合に基づいて測定可能である。複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の体積は、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度と体積との重み付け線形結合に基づいて測定可能である。複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の体積は、面積と複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度および体積との重み付け線形結合に基づいて測定可能である。方法は、血液試料の参照の組から重み付け線形結合についての重み付け係数を定めることを含むことができる。
【0040】
装置を再校正することは、血液試料の参照の組から、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞または血小板の体積を測定するのに用いられる複数の重み付け係数を定めることを含むことができる。
【0041】
電子プロセッサは、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する体積を測定し、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度および体積に基づいて細胞または血小板の体積を測定するように構成可能である。電子プロセッサは、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞または血小板の面積を測定し、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、面積および複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度に基づいて細胞または血小板の体積を測定するように構成可能である。電子プロセッサは、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、細胞の面積を測定し、複数の細胞または血小板の各々1つ毎に、面積ならびに複数の照射波長の各々に対応する積分光学濃度および体積に基づいて細胞または血小板の体積を測定するように構成可能である。
【0042】
方法、システム、および装置の実施形態は、適宜、本明細書中に開示する他の特徴およびステップのうち任意のものも含むことができる。
【0043】
特徴および実施形態の具体的な組合せを説明するが、明確に除外する場合を除き、本明細書中に開示する特徴のうち任意のものを、方法、システム、および装置中の、本明細書中に開示する他の特徴のうち任意のものと組合せるおよび副次的に組合せることができる。したがって、本明細書中に開示する方法、システム、および装置の実施形態は、本明細書中に開示する実施形態のうち任意のものと関連して記載する特徴の任意の組合せを含むことができることを理解すべきである。さらに、本明細書中に開示する方法、システム、および装置の実施形態は、本明細書中に開示する特徴と、米国仮特許出願第61/476,170号、第61/476,179号、第61/510,614号、第61/510,710号、および第61/589,672号中の実施形態のうち任意のものと関連して開示される特徴のうち任意のものとの任意の組合せを含むことができる。
【0044】
特に指定がなければ、この開示で使用されるすべての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。実施または試験には本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、適切な方法および材料を以下で説明する。本明細書で挙げたすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の引用文献は、その全体を本明細書に引用により援用する。競合する場合は、定義を含めて本明細書が優先されるであろう。加えて、これら材料、方法、および例は、例示として挙げるにすぎず、限定を意図したものではない。
【0045】
1つ以上の実施形態の詳細を、添付図面および以下の説明で述べる。他の特徴および利点は、説明、図面、および請求項から明らかとなるであろう。
【0046】
さまざまな図面における同じ参照符号は、同じ要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
−スライドガラス上の血液塗抹標本を調製し、次に顕微鏡下で塗抹標本を評価することに典型的に係る−血液試料の手作業での分析には多数の欠点があり、そのために、そのような方法を高スループット環境で用いることが不適となってしまっている。人間の技術者による血液塗抹標本の調製には、系統誤差、特に、塗抹標本全体にわたる血液の不均一な分布の傾向がある。しばしば、そのような塗抹標本のある領域は他の領域よりも厚みが大きく、このことは、大きな妥協(たとえば、塗抹標本全体のうち小さな領域しか検査しないこと、この領域は典型的には塗抹標本毎に大きさおよび場所が異なっている)を受入れられない場合は、ユーザによる正確な定量的分析が困難になってしまう。さらに、血液試料に染料を塗布する場合、人為ミスの結果として、試料毎の染色手順のばらつきが起こる可能性がある。このようなばらつきは今度は、試料中の細胞成分の量の潜在的なばらつきに必ずしも対応しているわけではない試料からとられる定量的計測値のばらつきを生じさせる可能性がある。さらに、人間の技術者による個別の血液塗抹標本の調製は時間がかかるプロセスであり、結果的に、大量の調製溶液(たとえば、染料、濯ぎ溶液、バッファ溶液、固定剤)の使用を招く可能性がある。そのような溶液の消費はコストが高くつく可能性がある。さらに、これらの溶液の大量の生成は、溶液の廃棄量の処分に関する困難およびコストも導入してしまう。
【0049】
現在の自動化試料調製システムは、手作業での調製プロセスに関連付けられる非系統誤差を大幅に低減することができる。しかしながら、そのようなシステムを用いる調製試料には依然としてばらつきが存在する。たとえば、顕微鏡のスライド上に調製される血液の試料については、自動化着色剤(stainer)は均一に試料全体を染色しないことがある。試料の厚み、試料の乾燥時間、ならびに試料調製および染色プロセスと関連付けられる他の変数に依存して、試料は、細胞中に異なるレベルの染料濃度を有する部分を呈することがある。
【0050】
本明細書では、個別の細胞の体積および調製された生体試料の細胞中の細胞成分の濃度の自動化された計測のための方法およびシステムを開示する。当該方法およびシステムを、訓練された人の作業者が手作業で調製する試料に対して用いることができる。さらに、当該方法およびシステムを、自動化システムで調製される試料を分析するのに用いることができる。このように、本明細書中に開示する方法およびシステムは、患者から抽出したさまざまな生体試料の完全に自動化された高スループット分析を可能にする。
【0051】
一例として、本開示は、人の患者から採取された血液試料中の個別の赤血球の体積を計測しかつヘモグロビン含有量を測定することを記載する。しかしながら、開示はそのような適用例に限定されるものではない。特に、本明細書中に開示する方法およびシステムを、血小板を含むさまざまな異なる種類の細胞の体積を自動化された態様で計測するのに用いることができる。さらに、本明細書中に開示する方法およびシステムを用いて、ヘモグロビン以外のタンパク質などの他の細胞成分を計測することができる。さらに、分析対象の試料はヒトの患者からのものである必要はない。本明細書中に開示する方法およびシステムを、動物からの試料または自動化血液学的システムから得られた結果の線形性を制御する、校正する、および検証するために全血を模すように設計された組成物に対しても用いることができる。
【0052】
調製された生体試料から細胞体積および細胞成分を計測するための自動化システムを以下により詳細に説明する。試料を一旦調製すると、これを自動化計測システムに搬送する。計測システムは、試料中の細胞の1つ以上の二次元画像を取得し、この画像を用いて、他の量のうち、試料内の細胞の体積およびヘモグロビン含有量を測定する。細胞の体積およびヘモグロビン含有量は、入射光を細胞上に向け、次に細胞を透過するまたは細胞から反射される入射光の部分を検出することによって得られる細胞の画像から導出される情報から測定される。各々の画像は二次元画像であり、この場合、画像内の個別の画素強度値は、画素に対応する細胞上の空間的場所から現われる透過光または反射光の量に対応する。
【0053】
一般的考察
赤血球または血小板などの任意の細胞の体積は三次元の量である。細胞の二次元画像から導出される情報に基づいて細胞体積を測定することは、本明細書で扱う課題の1つである。二次元画像から細胞体積の計測値を得ることは、画像から導出される情報から、画像の二次元平面を横断する方向へ細胞の形状を推定することに係る。すべての細胞が同じ形状であるならば、体積を測定することは比較的単純明快であろう。いずれのそのような細胞の体積も、(二次元画像から得ることができる)細胞の断面積の3/2乗に比例するであろう。しかしながら、細胞は均一に形作られているわけではないので、上記の仮定はすべての事例で信頼性があるわけではなく、また診断目的には十分正確ではない。
【0054】
一例として、赤血球は典型的にさまざまな形状を呈する。あるものはほぼ球形である一方で、あるものはドーナツ形により近い形状を有する。また、赤血球は、さまざまな深さの中央窪みを有する。そのような細胞の画像は、透過光の強度が比較的より低い端縁領域と、「中央蒼白部(central pallor)」と称される光透過が増した中央領域とを示す。
図1Aは、基板20上に位置決めされる赤血球10を示す概略図である。x方向に沿った細胞10の厚みは異なる。厚みは細胞の端縁の近くで最大であり、細胞の中央領域15において小さくなる。
図1Bは、細胞10からの透過光分布を通る特定の断面位置についてのx方向に沿った位置の関数としての透過光の強度の概略的なグラフである。
図1Bに示す強度分布は、細胞の中央蒼白部内の極大強度25と、細胞の端縁に対応する光透過がより低い極小強度27および28とを含む。染色していない赤血球ですら、
図1Bに示す現象を呈する。なぜなら、これらの細胞は青色光を吸収するヘモグロビンを含有するからである。
【0055】
1つ以上の染料を細胞に塗布して
図1Bに示す強度分布を得ることによって、細胞10を(試料の一部として)典型的に調製する。染料は細胞の細胞質に結合し、細胞の画像中で細胞質のマーカとなる。細胞を入射光で照射すると、染料は入射光の一部を吸収する。試料中の特定の場所での吸収の量は、その場所に存在する染料の量に依存する。塗布した染料が均一な態様ですべての細胞質に結合していると仮定すると、所与の画像の画素での透過光の強度は、細胞内の対応する場所での細胞質の厚みに比例するはずである。そのため、特定の細胞に対応する画像内のすべての画素からの透過光の強度に対する寄与の和を求めることによって、細胞体積に比例する量を得ることができる。しかしながら、実際には、血液細胞の調製試料は、塗布した試料がすべての細胞質に均一に結合する範囲においていくらかの変動性を呈する。
【0056】
しかしながら、各々の画素場所における透過光の量は、細胞中の各々の場所に存在する−赤血球中のヘモグロビンなどの−さまざまな試料の成分の量にも依存する。さらに、空間的場所毎の染料の分布も、所与の細胞または血液の成分についての各々の画素の場所で計測される透過光の量に影響を及ぼす。
【0057】
これらの考察に鑑みて、本明細書中に開示する方法およびシステムは、細胞の成分(たとえばヘモグロビン)およびさまざまな塗布される染料の局所的に異なる濃度の吸収効果から細胞厚みの推定を切離すことによって、二次元細胞画像から導出される情報に基づいて細胞体積を測定するように適合される。そのような切離しを実現するため、画素の強度は、細胞毎に最大画素強度に応じて変倍される。以下にさらに記載するように、細胞体積の算出は、細胞の画像を取得するのに用いる照射の各色毎の光学濃度値と細胞の面積との重み付けられた組合せに基づく。本明細書中に記載のプロセスは、体積の計測のために選択される1組の細胞の各構成要素毎に繰返し可能であり、各細胞毎の結果を用いて試料についての平均細胞体積を算出することができる。
【0058】
以下にさらに説明するように、細胞の画像を取得するのに用いる照射の色毎の光学濃度値に基づく算出からも、赤血球のヘモグロビン含有量などの細胞成分の濃度を測定することができ、以下の開示は、調製される生体試料からの細胞の1つ以上の成分の自動化された計測のための方法およびシステムも包含する。一例として、本開示は、ヒトの患者から採取される血液試料中の赤血球中のヘモグロビンの計測に注目する。しかしながら、開示はそのような適用例に限定されるものではないことを理解すべきである。特に、本明細書中に開示する方法およびシステムを、さまざまな異なる種類の細胞中のさまざまな異なる成分を自動化された態様で計測するのに用いることができる。さらに、細胞試料をヒトの患者から採取する必要はない。本明細書中に開示する方法およびシステムは、動物から採取される試料、または自動化計測システムの性能を検証するのに典型的に用いられる全血を模するように製造される組成物に対しても用いることができる。
【0059】
フローサイトメータなどの従来の自動化計測システムは典型的に、赤血球を溶解させ、溶液中の溶解試料の吸収度を計測することによって、またはフロー流れ中の個別の赤血球から散乱される光を計測することによって、細胞のヘモグロビン含有量を測定する。本明細書中に開示する方法およびシステムは、血液試料またはフロー細胞の構成成分を全く溶解せずに実現可能である。むしろ、ヘモグロビンなどの細胞成分は、他の計測および分類のために細胞の自然な形態を保存する、顕微鏡スライド上に置かれる試料の二次元画像から計測可能である。
【0060】
本明細書中に記載の自動化された方法およびシステムを利用するための試料調製プロセスは典型的に、複数の染料を試料に塗布することに係る。塗布された染料は、試料内の異なる化学的および/または構造的実体と異なって結合し、異なる試料の特徴の選択的分析を可能にする(たとえば、ある染料は血液細胞核に優先的に結合する一方で、他のものは細胞膜に結合し、また他のものは細胞質内のある成分に優先的に結合し得る)。次に、塗布された染料は、自動化システムが、赤血球、白血球、および血小板を同定しかつ計数する、ならびに白血球5分類を行なうなど、試料に対するいくつかの計測を行なえるようにする。しかしながら、試料中に複数の染料が存在すると、試料に対して行なわれる分光計測は、さまざまな染料によって発生する干渉効果を受ける可能性があると考えられる。たとえば、所与の計測波長では、複数の染料が入射光の大きな吸収体となることがある。本明細書中に開示する方法およびシステムは、試料内の複数の分光要因(たとえば吸収染料および/または細胞成分)の存在を考慮し、複数の波長で計測される情報に基づいて、細胞中に存在する1つ以上の要因の量を測定する。
【0061】
赤血球中のヘモグロビンの量は関心のある量である。というのも、細胞のヘモグロビンの含有量は、診断目的のために内科医が用いる、試料についてのさまざまな血液関連の量(たとえば、平均細胞ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット)を算出するのに用いることができるからである。ヘモグロビンは、電磁スペクトルのある領域内で他よりもより強く入射光を吸収し、したがって特徴的な分光特性を有する。1つ以上の染料を試料に塗布する場合、染料も特徴的な分光特性を有し、ある波長では他よりも強く入射光を吸収する。多数の適用例では、ヘモグロビンなどの関心のある検体と1つ以上の塗布される染料との両者が特定の波長で無視できない吸収を有することがある。そのような適用例では、試料を透過する特定の波長の入射光の量は、ヘモグロビンによる、試料に塗布される他の染料による、および他の試料成分による吸収の量に関する。
【0062】
以下の開示およびある実施例の目的のために、少なくとも2つの染料、すなわちエオシンおよびアズール、を試料に塗布すると仮定する。しかしながら、本明細書中に開示する方法およびシステムは、染料2つのみまたはエオシンおよびアズールのみの塗布に限定されるものではない。反対に、方法およびシステムは、より少ない染料(たとえば1つの染料もしくは染料なし)またはより多くの染料(たとえば、エオシンを備える赤い染料ならびにアズールおよびメチレンブルーを備える青色の染料、3つ以上の染料、4つ以上の染料、5つ以上の染料)を塗布した試料に対して計測を行なうことができる。
【0063】
自動化計測システム
図2は、生体試料からの細胞の細胞体積および成分の自動化された計測を行なうための、(より大きな試料処理および分析システムの一部であり得る)システム100の概略図を示す。システム100は、照射源102、検出器106、および電子制御システム108を含む。電子制御システム108は、ディスプレイ110、ヒューマンインターフェイスユニット112、および電子プロセッサ114を含むことができる。電子制御システム108は、制御線120および122をそれぞれ介して照射源102および検出器106に接続される。
【0064】
(以下にさらに論じるように)分析用に試料を調製したと仮定して、調製した試料104(たとえば、顕微鏡のスライド上に置かれ、その後固定され、染色され、かつ濯がれた血液試料)を源102に近接して自動的に位置決めする。源102は入射光116を試料104に向ける。入射光の一部は透過光118として試料104を透過し、検出器106によって検出される。透過光118は検出器106の活性面上に試料104の画像を形成する。検出器は画像を捕捉し、次に画像情報を電子制御システム108に送信する。一般的に、電子制御システム108は、源102に入射光116を発生するように命じ、検出器106に試料104の画像を検出するようにも命じる。検出器106が透過光118から試料104の画像を取得すると、制御システム108は、異なる照射波長を用いるように源102に指示することができる。
【0065】
所望により、以上で論じたプロセスを試料104の複数の画像に対して繰返すことができる。新しい画像を取得する前に、電子制御システム108は、源102が発生する入射光116の波長を変更することができる。これにより、試料104の画像は各々、入射光116の異なる波長、およびしたがって透過光118の異なる波長に対応する。試料中の細胞の体積または試料中の1つ以上の成分の量の正確な測定を行なうのに少なくとも十分な情報が取得されるまで、プロセスが繰返す。典型的に、試料中の細胞の体積または試料中の1つ以上の成分の量の正確な測定をもたらす情報の量は、校正プロセスの際に決められる。たとえば、校正プロセスを用いて、得られた試料画像の数が試料の分析の中に因子として含められる分光要因(たとえば吸収体)の数以上である場合に、(以下にさらに説明するように)試料中の細胞の体積および/または試料中の1つ以上の成分の量の正確な測定を達成可能であると判断することができる。
【0066】
一例として、(合計3つの分光要因のための)自然に存在する吸収体としてヘモグロビンを含む赤血球と、塗布される染料としてのエオシンおよびアズールとを備える調製試料について、システム100は、これが最低でも3つの異なる波長で画像を得るまで試料画像を取得し続けることができる。−さらなる異なる波長に対応する−付加的な画像も、試料についての細胞の成分および細胞体積の測定で得るおよび用いることができる。
【0067】
照射源102は、入射光を試料に向けるための1つの源または複数の同じもしくは異なる源を含むことができる。いくつかの実施形態では、源102は、ダイオード(LED)、レーザダイオード、蛍光灯、白熱灯、および/または閃光灯などの複数の発光素子を含むことができる。たとえば、源102は、電磁スペクトルのそれぞれ赤色、黄色、緑色、および青色の領域(たとえば635、598、525、および415nm)の、またはより一般的には約620から750nm(赤色)、約575から600nm(黄色)、約525から570nm(緑色)、および約400から475nm(青色)である出力波長を有する4つのLEDを含むことができる。ある実施形態では、源102は1つ以上のレーザ源を含むことができる。複数の発光器を有する代わりに、他の実施形態では、源102は、(たとえば電子制御システム108の制御下で)その出力波長を変更するように構成可能な単一の広帯域発光体を含むことができる。たとえば、源102は、システム108の制御下で可変出力スペクトルを発生する構成可能フィルタシステム(たとえば、複数の機械的に調節可能なフィルタおよび/または液晶系電子調節可能フィルタ)に結合される広帯域源(たとえば白熱灯)を含むことができる。一般的に、源102は、単一の波長ではなく、中心波長(たとえば、帯中の最大強度の波長)付近を中心とする波長帯の照射光116を出力する。本明細書中の考察が照射光116の波長を参照する場合、この参照は照射帯の中心波長に対するものである。
【0068】
検出器106はさまざまな異なる種類の検出器を含むことができる。いくつかの実施形態では、検出器106は電荷結合素子(CCD)を含む。ある実施形態では、検出器106はフォトダイオード(たとえば二次元フォトダイオードアレイ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、検出器106は、CMOS系のセンサおよび/または光電子増倍管などの他の感光性素子を含むことができる。検出器106は、源102と関連して上述したような1つ以上のフィルタ要素を含むこともできる。いくつかの実施形態では、異なる波長に対応する試料画像は、比較的広い波長分布を有する照射光116で試料104を照射し、次に透過光118をフィルタリングして、波長の小さな帯に対応する透過光の部分のみを選択することによって得られる。検出器106を用いて得た画像が各々、特定の中心波長を有する光波長の具体的な分布に確実に対応するように、(たとえば源102の)励起側および(たとえば検出器106の)検出側のいずれかまたは両方に対してフィルタリングを行なうことができる。
【0069】
一般的方法論
本明細書中に開示するシステムおよび方法は、試料(たとえば血液試料)中の細胞の画像を取得し、画像に基づいて細胞体積および細胞の成分の量などの量を測定する。
図3Aは、これらの量を測定するためのさまざまなステップを含むフローチャート300を示す。第1のステップ302で、代表細胞の組を選択する。代表組中の細胞の画像は、試料についての細胞の量のその後の測定のために用いられるものである。次のステップ304で、代表組中の細胞の画像に基づいてさまざまな画像特徴を定める。以下に論じるように、画像特徴は、検出器によって直接に計測される強度値および画像データから算出される他の値を含むことができる。ステップ306で、ステップ304で定めた画像特徴に基づいて、細胞体積および細胞の成分(たとえばヘモグロビン)の量などの細胞測定基準を算出する。プロセスはステップ308で終了する。フローチャート300中のステップの各々を以下により詳細に説明する。
【0070】
(i) 代表細胞の組を選択する
細胞測定基準を算出する前に、本明細書中に開示するシステムおよび方法は、調製した生体試料中の複数の細胞から、以降の分析のための代表細胞の組を同定する。たとえば、血液試料について以下にさらに記載するように、そのようなシステムおよび方法は、試料画像から得られる光学濃度計測値を用いて、体積および成分分析に好適な赤血球の代表組を同定する。このプロセスは典型的に、白血球および血小板、重なったまたは形の崩れた赤血球、ならびに非細胞人工産物および破片などの他の細胞の種類を区別して、以降の分析から排除することに係る。
【0071】
検出器106を介して取得した画像を利用して、試料画像中の各画素毎の強度値を、細胞の代表組の選択ならびに後の細胞体積および成分分析で用いる光学濃度値に相関させることができる。所与の画像画素(x,y)での透過光強度T(x,y)は、その画素に対応する試料の部分を通る入射光の吸収係数αおよび経路長さε(x,y)に関する。
【0072】
T(x,y)=10
-α・ε(x,y) (1)
画像中の各画素毎に、最大可能画素強度に対する画素強度の比率(たとえば、8ビット分解能での画素強度/255)は、画素の空間的場所で透過した光の一部を表わす。式(1)の対数を取ることにより、透過光の一部を光学濃度(OD)単位で表わすことができる。
【0073】
OD(x,y)=−log(T)=α・ε(x,y) (2)
このプロセスを試料画像中の各画素毎に繰返すことができる。このようにして、各画像中の各画素での光学濃度が、画素に対応する場所の試料中の吸収材料の合計量(たとえば、吸収係数と厚みとの積)に対応する。
【0074】
図3Bは、血液の調製試料中の代表赤血球の組を選択するための一連のステップを含むフローチャート320を示す。試料の画像を取得した後、電子制御システム108、および特に電子プロセッサ114は、画像情報を処理して、試料中に存在する他の細胞の種類、細胞クラスタ、および人工産物から、代表赤血球の組の中に含めるための細胞を区別する。
【0075】
まず、
図3のステップ322で、システム100は、以降の処理のための1つ以上の試料画像中の赤血球の場所を特定する。赤血球は典型的に、細胞中のヘモグロビンの存在により、青色光(たとえば415nm)を吸収する。しかしながら、白血球はヘモグロビンを含有しておらず、したがって赤血球と同じ態様では青色光を吸収しない。青色光下で取得される試料の画像を用いて赤血球を同定することができる。そのような画像中の白血球は微かにかつ歪んで現われる。なぜなら、これらの細胞が青色を吸収するのは最小限であり、そのために画像に対する寄与が低くなり、典型的にはそれらを同定することが不可能になるからである。
【0076】
いくつかの実施形態では、システム100が以降の分析のために赤血球のみを確実に同定するように、しきい値設定ステップを用いることができる。たとえば、システム100は、(8ビット分解能で捕捉される画像についての)強度(または階調)値160を下回る画像画素のみを利用することができる。100から180の範囲にわたる他の強度値しきい値を用いて、以降の分析から白血球を排除しながら、画像から赤血球を同定することができる。
【0077】
次に、ステップ324で、システム100は、試料画像中の各々の赤血球毎に1組の画素を同定する。細胞と関連付けられる画素の組を同定するのにさまざまな異なる方法を用いることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、システム100は、連結成分標識付けプロセスを用いて同定ステップを行なう。このプロセスは、試料画像からの個別の画素を画像中の対象に相関させる。たとえば、背景に割当てられる画素によって分離されていない画像中の任意の2つの画素を同じ細胞に割当てる。
【0078】
さらに、システム100は、細胞体積および成分分析に関するある計測から、細胞の境界領域内に位置決めされる画素を排除することができる。特に、赤血球はしばしば、たとえば
図9に示すように、これらの細胞が照射光を屈折させる態様により、厚みのある暗い境界を有する。この屈折のために、これらの画素についての光学濃度は典型的に信頼性がない。連結成分標識付けプロセスを完了した後、システム100は、同定された細胞に画素侵食マスク(pixel erosion mask)を適用して、画素の最も外側のn個の層(たとえば、屈折が最大である境界領域に対応する画素)を除去することができる。一般的に、画像の倍率に依存して、任意の数であるn個の画素層(たとえば、1画素層以上、2画素層以上、3画素層以上、4画素層以上、5画素層以上、6画素層以上、8画素層以上、10画素層以上)を除去するように、画素侵食マスクを選択可能である。赤血球についての細胞体積およびヘモグロビン含有量の計測に対する誤った寄与を大幅に低減するのに、各画素が0.148μm×0.148μmの細胞の部分に対応する、赤血球の周について最も外側の0.5μmを備える画素侵食マスクが一般的に好適であることが実験的に判断されている。侵食マスクによって補正した画素の組を利用して、各細胞毎の平均光学濃度および最大光学濃度などのさまざまな細胞の特徴を計測することができ、これが細胞体積および成分分析に寄与する。
【0079】
ステップ326で、システム100は、組が完全かつ正常に形作られかつサイズ決めされた赤血球のみを含有することを確認することによって、試料画像から代表赤血球の組を同定するプロセスを継続する。一般的に、ステップ326は、部分細胞、重なり合う細胞、細胞クラスタ、血小板、および非細胞人工産物を、代表赤血球の組の中に含めることから破棄するように機能する。たとえば、画像枠の端縁によって切断されるまたはそれに触れる細胞を以降の分析から排除し、これにより不正確な計測を防止することができる。さらに、−非標準的な形状に関する、測定された細胞の体積のばらつきを呈する可能性がある−形の崩れた細胞を分析から排除することができる。さらに、細胞体積または成分含有量を算出するために用いられる場合は信頼性がない可能性がある、重なり合う細胞から得られる計測結果を代表細胞の組から除外することができる。これらの理由のため、同定される細胞の各々の形状をステップ326で確認し、形の崩れたおよび/または重なり合う細胞を以降の分析から排除する。
【0080】
さまざまな異なる方法を用いて同定された細胞の形状を確認することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、各々の細胞の形状を、細胞の周および面積を比較することによって確認可能である。
図4は、そのような比較の概略図を示す。
図4で、細胞400は試料画像中の画素の組として同定されている。細胞400の境界に対応する画素は、実証の目的のために、
図4では、内部画素よりも薄く影を付けられている−なお、実際の画像では、それらは必ずしもこのように現われるわけではない。細胞400の面積は、組の中の画素の数を計数することによって測定することができる。
【0081】
細胞の周は、細胞400に対応する画素の組を用いて、境界画素から定められる。これは、各々の周画素の中心を通る線を繋いで、画像の中で多角形を作り、多角形の周を計測することによって達成することができる。細胞面積値(すなわち、多角形の面積)に対する、2乗したこの細胞周値の比率を求めて細胞の形状を確認する。この比率の値は、理想的な完全に円形の細胞については4πである。細胞の形状が円形外形から逸脱するにつれて比率の値が大きくなる。この判断基準を用いて、4πという最小値をしきい値量以上超える、面積に対する2乗した周の比率を有する細胞を以降の分析から排除する。典型的に、しきい値量は、4πの最小値の百分率である(たとえば、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上)。
【0082】
形の崩れた個別の細胞を以降の分析から排除することに加えて、以上で論じた手順は、重なり合う細胞も排除することができる。試料画像中では、重なり合う細胞は典型的に、(入射光が伝播する材料の増大した厚みによって透過光強度がばらついている)形の崩れた大きな個別の細胞として現われる。そのような画像に分析アルゴリズムを適用すると、重なり合う細胞は一般的に、不規則な境界を有する大きな単一の細胞として同定される。そのため、細胞の周および面積の比較を行なうと、比率は、理想の値から、許容可能な分散のしきい値をはるかに超えた範囲に入り、重なり合う細胞が排除される。
【0083】
同定された細胞の形状を確認するための別の方法は、上述した細胞の外形を表わす多角形の凸包を利用し、凸包によって囲まれる面積と画像の画素から求められる細胞の面積とを比較する。細胞の面積に対する凸包面積の高い比率を用いて、不規則形状の細胞を同定し、そのような細胞を以降の分析から排除することができる。
図5は、2つの細胞500Aおよび500Bを含む概略図である。細胞500Aおよび500Bの周に、
図5でそれぞれ502Aおよび502Bと印をつける。凸包504Aが細胞500Aの周りに描かれ、凸包504Bが細胞500Bの周りに描かれる。
図5に示すように、凸包の面積と細胞の面積との間の不一致は、細胞500Bについてよりも細胞500Aについて、より大きい。細胞500Aについての高い不規則度を考慮して、細胞500Aを代表赤血球の組から排除することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、ステップ326で細胞面積の計測値を用いて、代表血液細胞の組から人工産物および重なり合う細胞を排除することができる。たとえば、面積が35平方ミクロン〜65平方ミクロンの範囲にわたる細胞のみを赤血球の体積計測のために考慮することができる。面積が35平方ミクロン未満である撮像対象は典型的には赤血球ではなく、試料中の1片の埃などの人工産物である。同様に、面積が65平方ミクロンよりも大きい撮像対象は典型的には赤血球ではない。そのような対象は、染料の滴またはいくつかの重なり合う細胞に対応するかもしれない。以上の例は35〜65平方ミクロンの面積の範囲を記載する一方で、他の範囲を用いて計測用の(たとえば20平方ミクロン〜80平方ミクロンの)赤血球を選択することができ、範囲は、試料中の平均細胞サイズに基づいて変倍可能であり、これにより患者毎の変動性を収めることができる。35〜65平方ミクロンの範囲はいくつかの赤血球を排除することができるが、20〜80平方ミクロンの範囲と比較して、そのような範囲が、試料画像から人工産物を除去する際により効果的であることが実験的に判断されている。
【0085】
光学濃度値を用いて、試料中の代表赤血球の組を選択することができる。たとえば、青色光下で撮像される対象の平均光学濃度値が低過ぎる場合、対象は、赤血球の代わりに白血球核であり得る。青色光を用いて取得した画像について、平均光学濃度しきい値(たとえば、0.33以下の平均光学濃度)を用いて、試料について、代表赤血球の組から白血球を排除することができる(たとえば、平均光学濃度が0.33以下である細胞は白血球である可能性が高い)。青色または黄色照射下で取得される画像については、あるしきい値(たとえば、0.66以上の平均光学濃度)を超える対象についての平均光学濃度値を用いて、積層した、重なり合う、および/またはクラスタ化した赤血球を同定することができ、これらを以降の分析から排除することができる(たとえば、平均光学濃度が0.66以上である赤血球は、重なり合う別の赤血球である可能性が高い)。
【0086】
図3Bに示すプロセスは、以降の分析のための代表細胞の組の最終的な判断により、ステップ328で終了する。
【0087】
(ii) 画像特徴を定めること
本明細書中に開示するシステムおよび方法は、画像の特徴の組合せを用いて、細胞の体積および成分の値を算出する。組合せは典型的に、多種多様な試料について正確で再現可能な結果を生じると発明者らが発見したそのような画像の特徴の線形結合を含む(が、それらに限定されない)。
【0088】
上述のように細胞の代表組を一旦同定すると、システム100によって得た細胞の1つ以上の画像に基づいて、本明細書中に開示する特徴のうちいくつかまたはすべてを代表組中の各細胞毎に算出する。各細胞毎に算出可能な第1の特徴の組は、色固有積分光学濃度IOD(c)であり、これを以下のように定めることができる。
【0089】
IOD(c)=A・OD
mean(c) (3)
式中、Aは細胞の面積であり、OD
mean(c)は、細胞を色cの光で照射する場合の細胞中の画素の平均光学濃度である。異なる照射波長で細胞の画像が得られる場合、各照射波長で細胞についてIOD(c)の値を算出することができる。
図6は、フローチャート320と関連して説明したプロセスを通して同定された代表細胞600の、色cの照射光で得られる概略的な画像を示す。細胞600の画像は複数の画素を含む。細胞600中の画素の平均光学濃度OD
mean(c)は、画像中の画素数で除算した
図6中の画素強度の和に対応する。
【0090】
代表組中の各細胞毎に算出可能な第2の特徴の組は、細胞の色固有体積Vol(c)である。
図6中の細胞600の体積は、細胞600に対応する画素の各々毎の光学濃度値の和を求めることによって算出される。まず、各々の画素での細胞600の「高さ」を以下のように推定することができる。
【0092】
式中、OD
pixelは、所与の画素と関連付けられる光学濃度であり、OD
maxは、細胞の画素と関連付けられるすべての光学濃度のうちの最大光学濃度である。このように、たとえば、細胞600の画像中の画素620は、画素610と関連付けられる最大光学濃度よりも光学濃度が低い。細胞600の体積に対する画素620の寄与は、比率OD
620/OD
maxであり、ここで、OD
620は画素620の光学濃度であり、OD
maxは画素610の光学濃度である。次に、細胞600中のすべての画素についての最大光学濃度に対する画素の光学濃度の比率の和を求めることによって細胞体積Vを算出する。
【0094】
式(5)中、細胞600中の画素の各々に関連付けられる光学濃度の和を、細胞600中の画素の数N
pixelsと細胞600中の画素についての平均画素光学濃度OD
meanとの積で置換する。
【0095】
典型的に、細胞の端縁近くの画素についての光学濃度は、体積計測に対する有効な寄与要因ではない。なぜなら、細胞の端縁で屈折する光は細胞の周囲に人工的に暗い境界を作り出すからである。そのような境界画素からのこの影響を回避するため、システムは、前述したような1つ以上の画素による細胞の周縁におけるマスクを侵食し、細胞のマスクされた領域の平均光学濃度および最大光学濃度を計測し、その後、完全な非侵食マスクの面積で乗算することによって、細胞の端縁に外挿することができる。
【0096】
さらに、異なる照射波長に対応する複数の画像を用いて単一の細胞の画像を得る場合、細胞体積算出計測を照射光の各色で行なうことができる。したがって、色固有細胞体積を以下のように定めることができる。
【0098】
式中、Aは細胞周縁を含む細胞全体の面積であり、OD
mean(c)は細胞のマスクされた領域内の画素についての色固有平均光学濃度であり、OD
max(c)は細胞の侵食されたマスクについての色固有最大光学濃度である(たとえば、
図6中の画素610)。適切な単位(たとえばフェムトリットル)で細胞体積を表現するように、算出された色固有細胞体積Vol(c)を変倍することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、1つ以上の補正係数を式(6)に加えて、細胞画像の暗さのうちいくらかが真に細胞のヘモグロビン含有量によるものではないかもしれないということについての調整を行なうことが有用である。さらに、体積計測値をフェムトリットル(fL)などの計測単位に変換するように倍率を適用することができる。これらの補正係数および倍率を説明するため、式(6)を以下のように書換えることができる。
【0101】
式中、Sは倍率または傾斜に対応し、Cは最大光学濃度の測定におけるバイアスを担う補正係数に対応し、Bはグローバルオフセット値に対応する切片値に対応する。
【0102】
たとえば校正後フローサイトメータ上で処理される複数の血液試料について分かっている体積値のデータセットを用いて、補正係数、倍率、および切片値を実験的に決めることができる。わずかに異なる補正係数の組は、一般的に、各々の異なる試料毎に最良の結果を与える。もっとも、データセット全体にわたる結果に基づいて補正係数を決めることができる。たとえば、1,000個の血液試料について分かっている体積値を含むデータセットについては、データセット全体にわたって、計測された体積の値と予測される体積の値との間の2乗差の和を最小限にする補正係数を選択することによって、データセット全体にわたって平均して最も良好に働く補正係数を決めることができる。未処理の体積値をフェムトリットルなどの所望の計測単位に最も良好に変換する倍率を選択することにより、データセット全体にわたって倍率を決めることができる。切片値Bは、データが二次元プロット上に提示された場合に式(7)が確実に原点を通るように、データセットについて選択可能である。補正係数、倍率、および切片値を、電子制御システム108と関連付けられるメモリユニットの中に記憶することができ、新たな試料の分析のために式(7)に示すような色固有細胞体積を測定する際に、メモリからこれを検索することができる。
【0103】
式(3)および式(6)または(7)を用いて、試料画像を得るのに用いる照射光の各色毎に、2つの特徴(たとえば、積分光学濃度IOD(c)および体積Vol(c))を定めることができる。照射光の4つの異なる色を用いる場合、8つの異なる特徴の合計を代表組中の各細胞毎に測定することができる。さらに、以上で説明したように、細胞の画像から各々の個別の細胞の面積Aを測定することができる。次に、細胞毎に測定基準を算出するのに、色固有積分光学濃度および細胞体積ならびに細胞の面積を用いることができる。
【0104】
(iii) 細胞の測定基準の算出
細胞体積および細胞の成分量などの細胞の測定基準は、以上で開示した代表細胞について算出される特徴のいくつかまたはすべての重み付けられた組合せに基づいて算出可能である。一般的に、測定基準Mを以下に従って定めることができる。
【0106】
式中、nは、代表細胞の画像を得るのに用いる照射光の色の各々に対応し、ω
n,iの値は色固有積分光学濃度IOD(n)の各々毎の色固有重み係数であり、ω
n,vの値は色固有体積Vol(n)の各々毎の色固有重み係数であり、ω
aは細胞面積Aについての重み係数であり、Kはオフセット値である。たとえば、4つの異なる照射波長を用いて細胞の画像を得る場合(たとえば、赤=r、黄色=y、緑色=g、および青色=b)、細胞の体積Vを以下のように測定することができる。
【0108】
細胞の成分の量を同様に測定することができる。たとえば、細胞中のヘモグロビンの濃度Hを以下に従って算出することができる。
【0110】
上記式(9)と式(10)との間の違いは、重み係数の値およびオフセットKにある。式(9)および(10)を用いて、試料中の複数の細胞について細胞体積および成分の量(たとえばヘモグロビンの量)を測定することができる。結果を平均し、試料についての平均細胞体積および成分の平均濃度(たとえば平均細胞ヘモグロビン)を測定することができる。色固有画像特徴と細胞面積との重み付けられた組合せに基づく細胞体積および細胞の成分の量の測定は、単一色の光学濃度値および細胞面積に基づく体積および成分計測と比較して、そのような計測の精度を大幅に向上させることが観察された。
【0111】
たとえば、そのような試料について分かっている体積および/または成分濃度値を備える訓練データに対して、実験的に定められた試料の特徴をマッピングする線形回帰係数を定めることにより、式(8)中の色固有特徴と関連付けられる重み係数を、利用可能な訓練データに基づいて定めることができる。線形回帰方策を用いて色固有重みを定めることは、膜の厚みおよび染料の吸収の細胞毎の変動性などの、体積計測に影響を及ぼす制御不可能な因子を補正することによって、試料の平均細胞体積および平均成分濃度計測の精度を向上させることができる。訓練データから色固有重み値を定めた後、重み値を、各試料の分析の前に記憶ユニット(たとえば電子メモリユニット)に記憶し、後でそこから検索することができる。
【0112】
一般的に、多種多様な異なる試料を用いて適切な重み係数を定めることができる。高度に再現可能な結果を得るため、算出される量の値の全範囲にわたる訓練データを用いることが有利であり得る。さらに、分析すべき試料が細胞の塊などの通常でない形態特徴を含む場合は、そのような特徴を表わす試料を含む訓練データを用いることが有利であり得る。
【0113】
一例として、細胞体積の測定のために1組の訓練データから1組の重み係数を定めた後で、式(9)を以下にように書換えることができる。
【0115】
同様に、細胞ヘモグロビンの測定のために訓練データの組から好適な重み係数を定めた後で、式(10)を以下のように書換えることができる。
【0117】
本明細書中に開示するシステムおよび方法を、全血試料(たとえば、患者から採取した試料)および品質管理対照組成物(quality control compositions)の両方を分析するのに用いることができる。式(9)−(12)に示す重み係数を用いて、全血試料および品質管理対照組成物の両方を分析することができる。品質管理対照組成物は典型的に、さまざまな種類の保存された哺乳類の血液細胞を含み、自動化血液学的システム上で処理されると全血試料を模するように設計される。
【0118】
品質管理対照組成物は、本明細書中に開示する方法を具体化しかつ実行する自動化血液学的システムなどの血液分析装置の動作条件を判定するように分析可能である。たとえば、装置の判定を行なうため、装置を用いて1つ以上の対照組成物を複数回分析することができる。同じ対照組成物の繰返される分析からの分析結果(たとえば、細胞ヘモグロビン、細胞体積、平均細胞ヘモグロビン、および平均細胞体積などの量の計測)を比較して、装置が発生する結果の線形性を判定することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、当該装置を用いて対照組成物を分析して、装置が発生する結果の精度を判定することができる。たとえば、装置による対照組成物の分析からの結果(たとえば、細胞ヘモグロビン、細胞体積、平均細胞ヘモグロビン、および平均細胞体積などの量の計測)と対照組成物についてのこれらの量の参照値とを比較して、装置の精度を判定することができる。これらの量のうち1つ以上について測定値と参照値との間の差がしきい値を超える場合は、装置を再校正することができる。再校正は、たとえば、本明細書中に記載のように、参照血液試料から式(9)−(12)中の重み係数のうちいくつかまたはすべての値を再測定することを含むことができる。
【0120】
式(9)−(12)で、4色(赤色、黄色、緑色、および青色)の照射光で試料を照射し、これらの色の各々に対応する画像から積分光学濃度および細胞体積を算出する。色固有積分光学濃度値および体積を算出するのに用いる照射波長は、たとえば、635nm、598nm、525nm、および415nmであり得る。もっとも、他の実施形態では、電磁スペクトルの赤色、黄色、緑色、および青色領域内の他の値を用いることができる。より一般的には、異なる数の照射波長を用いることができ、照射波長の各々に対応する画像を得て、これを用いて、積分光学濃度および/または細胞体積の色固有値を算出することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、光の3つの異なる波長を用いて試料を照射する。ある実施形態では、照射光の4つよりも多くの波長(たとえば、5つの波長、6つの波長、7つの波長、8つの波長、10)を用いることができ、色固有積分光学濃度、細胞体積、および重み係数を、照射波長のうちいくつかまたはすべてで測定することができる。一般的に、異なる波長の各々で各画像が試料について異なる情報を含むように照射光の波長を選択可能である。たとえば、試料が3つの分光寄与要因を含む場合、3つの波長のうち各々が分光寄与要因のうち異なる1つによって最も強く吸収されるように、照射光の3つの波長を選択して用いることができる。
【0121】
以上で論じたように、たとえば、校正後フローサイトメトリシステムから得たそのような試料についての細胞体積および/またはさまざまな細胞の成分の濃度の分かっている値を備える訓練データセットに対して、大量(たとえば1,000個)の血液試料について実験的に定められた特徴についての線形回帰係数をマッピングすることによって、式(8)中の色固有重み係数を定めることができる。試料調製パラメータに対する変更(たとえば、染色された細胞の外観に影響を及ぼす染料組成、または固定および染色前の試料の乾燥の程度など、細胞がどのように染料を吸収するかに影響を与える他の因子に対する修正)により、所与の組の試料調製パラメータについての正確な体積および細胞成分計測値の測定を確実にするように、式8について色固有重みおよび切片値を測定するプロセスを繰返し可能である。しかしながら、特定の試料調製システムについて試料調製パラメータを一旦最適化すると、式(8)中の実験的に導出された重み係数および他のパラメータ値は、細胞体積および/または細胞成分量の正確かつ再現可能な計測値を生成するであろう。
【0122】
式(8)で、測定基準Mは、色固有積分光学濃度と、色固有体積と、細胞面積との重み付け線形結合として算出される。しかしながら、これらの特徴のうちすべてを用いて、すべての実施形態で測定基準の値を定めるわけではない。たとえば、いくつかの実施形態では、測定基準Mを、色固有積分光学濃度または色固有体積のみの重み付けられた組合せとして算出可能である。ある実施形態では、測定基準Mは、細胞の面積と、色固有積分光学濃度または色固有体積のいずれかとの重み付けられた組合せとして算出可能である。いくつかの実施形態では、測定基準Mは、色固有積分光学濃度と色固有体積との重み付け線形結合として算出可能である。一般的に、特定の測定基準Mを算出するのに用いる特徴の好適な組合せは、そのための測定基準Mの値が分かっている参照試料を用いて定めることができる。
【0123】
試料細胞中の特定の成分の量を測定する際、単一の分光寄与要因(たとえば、ヘモグロビンなどの吸収寄与要因)しか試料中に存在しないならば、選択された細胞に対応する画像中の画素の各々からの強度寄与要因の和を求めることによって、特定の細胞中に存在するその寄与要因の合計量を定めることができる。強度寄与要因はヘモグロビンによる吸収にのみ対応するので、細胞中に存在するヘモグロビンの合計量を測定するのに必要なのはただ1つの試料の画像のみであろう。
【0124】
しかしながら、実際には、試料は典型的に、科学技術者または自動化撮像システムがさまざまな細胞の種類を同定し、計数し、かつ分類するのを補助するように、1つ以上の染料を用いて調製される。試料中に複数の分光寄与要因がある場合、各照射波長での吸収は、試料中の各寄与要因による吸収の組合せとなる。特定の細胞についての任意の波長での合計寄与は依然として、細胞を表わす画素の各々からのその波長での寄与の和に対応する。このように、試料中に分光寄与要因であるヘモグロビン(H)、エオシン(E)、およびアズール(A)が存在する場合、試料の3つの画像が電磁スペクトルの黄色(y)、緑色(g)、および青色(b)領域中に中心波長を有する照射光に対応すると仮定すると、特定の細胞について(または1つ以上の細胞に対応する画像中のすべての画素について)、これらの3つの波長の各々での光学濃度(OD)は、各波長での分光成分の各々による吸収の線形結合であると仮定できる。
【0126】
式中、α
i,jは、波長i(たとえば、黄色y、緑色g、または青色b)での分光寄与要因j(たとえば、ヘモグロビンH、エオシンE、またはアズールA)についての吸収係数である。
【0127】
公知の光のスペクトルを検出器まで試料の中を通して、試料の吸収率を計測することによって、光の中心波長の各々を測定することができる。たとえば、検出器は、それぞれ黄色、緑色、および青色領域に狭い照射スペクトルを有する照射源を用いて、試料の3つの画像を取得することができる。各々の分光寄与要因が極大を含む吸収スペクトルを有する場合、発光スペクトルが分光寄与要因極大に対応するまたはこれに最も近似するように、照射源を選択可能である。たとえば、試料中のヘモグロビンのピーク吸収率(たとえば415nm)に対応する波長として青色の照射を選択可能である。黄色の照射は、試料中のアズール染料のピーク吸収率に対応する波長(たとえば598nm)に相関することができる。同様に、緑色の照射波長は、試料中のエオシン染料のピーク吸収率に対応する波長(たとえば525nm)で選択可能である。試料中の付加的な分光寄与要因についてのピーク吸収率値と相関するように、付加的な照射波長を選択することができる。
【0128】
光学濃度量OD(y)、OD(g)、およびOD(b)を画像情報から定めることができ、吸収係数α
i,jは文献ソースから得ることができるまたは実験で測定することができる。このように、連立方程式(13)は3つの未知数−H、E、およびA−を含み、これを解いて、各々の特定の細胞中に存在するこれらの3つの分光寄与要因の各々の量を生じる、または分析用に選択された画素が画像中の同定された細胞のすべてにまとめて対応する場合は試料中のすべての細胞についてまとめて、生じることができる。
【0129】
それにも拘わらず、本明細書中に開示する方法およびシステムは、細胞の成分の量を測定するためのより単純かつより効率的な方法を提示する。以上示したように、−好適な重み係数を有する−式(8)を用いて、関心のあるそれらの成分のみの成分量を定め、試料分析を完了できる速度を増すことができる。さらに、分光寄与要因の数が十分に分かっていない複合試料では、式(13)などの連立方程式を構築することが難しい可能性がある。しかしながら、式(8)は、細胞中の他の分光寄与要因の存在が十分に確立されていない場合ですら、具体的な細胞の成分の量を測定できるようにする。このように、いくつかの実施形態では、3つの異なる照射波長で画像を得ることによって、連立方程式(13)中のヘモグロビン、エオシン、およびアズールからの分光寄与要因を区別可能である一方で、本明細書中で記載のように3つよりも多くの特徴および/または3つよりも多くの照射波長を用いて、細胞ヘモグロビン、細胞体積、平均細胞ヘモグロビン、および平均細胞体積などの細胞測定基準の値を測定することにより、血液試料を計測する際の他の系統誤差源および非系統誤差源についての補正が可能になる。
【0130】
色固有積分光学濃度および体積ならびに細胞面積に加えて、他の画像特徴を用いて、細胞体積および/または細胞の成分の量を測定することができる。いくつかの実施形態では、たとえば、式(8)は、細胞の周と重み係数との積に対応する項を追加で含むことができる。上述のように、訓練データから、細胞の周の項について適切な重み付け因子を定めることができる。より一般的には、訓練データから定められる好適な重み係数を有する、細胞画像から導出されるさまざまな付加的な項を式(8)に含めることができる。そのような項は、細胞の形態ならびに/または3つもしくは4つよりも多くの照射波長での積分光学濃度および体積の色固有計測に関する幾何学的画像特徴を含むことができる。理論によって拘束されることを望まなければ、付加的な項は、−すべての重み付け因子の値を定めるように参照試料情報に対して同時に行なわれる−フィッティングが、式(8)のモデルによっては完全に説明されない、他の試料構成要素および系統計測誤差からの撮像収差、吸収などの影響を補正できるようにし得る。たとえば、赤色の照射波長に対応する積分光学濃度および細胞体積ならびに細胞の面積に対応する項を含めることは、赤色照射波長で取得される試料画像を用いない計測技術と比較して、多数の試料中の細胞ヘモグロビンまたは細胞面積計測の測定の精度を向上させる。
【0131】
一般的に、本明細書中に開示する方法およびシステムを用いて、自然に存在する試料中の成分(たとえば、赤血球中のヘモグロビン)の量および/または試料に加えられた成分(たとえば、塗布されたおよび細胞の成分に結合する染料)の量を測定することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書中に開示する方法およびシステムを用いて、試料中に存在する1つよりも多くの成分の量を測定することができる。たとえば、好適な染料を塗布するおよび/または試料の画像について適切な中心波長を選択することにより、2つ以上の成分の量を測定することができる。自然発生吸収成分としてヘモグロビンを含む試料を考察する。2つの広く吸収性のある染料S(1)およびS(2)を用いて、ならびに比較的吸収帯が狭い第3の染料S(3)を用いて、試料を染色可能である。S(3)は細胞中の関心のある特定の成分に選択的に結合し、これにより、存在するS(3)の量を計測することて成分の計測値が生じる。
【0132】
ヘモグロビンがλ
4ではなく波長λ
1、λ
2およびλ
3でのみ有意義な吸収を有し、かつS(3)がλ
1ではなく波長λ
2、λ
3、およびλ
4でのみ有意義な吸収を有するように、ヘモグロビンおよびS(3)の吸収スペクトルが十分にスペクトル分離されれば、S(1)およびS(2)がすべての4つの波長で有意義な吸収を有すると仮定すると、照射波長λ
1、λ
2、およびλ
3に対応する試料の画像から細胞成分の量を計測するための、本明細書中に開示する方法に従って細胞のヘモグロビンの量を測定することができ、同じ方法に従って、照射波長λ
2、λ
3、およびλ
4に対応する試料の画像からS(3)の量を測定することができる。これらの方策は、関心のあるより多くの数の成分、ならびにS(1)およびS(2)などの、より多くのまたはより少ない数の広く吸収性のある分光寄与要因へとさらに一般化可能である。
【0133】
結果の報告
ある実施形態では、測定された細胞体積、成分量、平均細胞体積、および平均成分濃度を、たとえばディスプレイ110を用いてシステムオペレータに表示することができる。結果は、細胞毎に、または試料全体について平均した結果として、表示することができる。また、(たとえば個別の細胞についての)算出された数値結果を細胞の1つ以上の画像の上に重ねることができる。一般的に、システムオペレータは、ヒューマンインターフェイスユニット112(たとえば、キーボードおよび/またはマウスおよび/または任意の他の入力装置)を用いて結果を表示する態様に対して制御を行なうことができる。システムオペレータは、インターフェイスユニット112およびディスプレイ110を通して、本明細書中に開示する方法と関連付けられる他のパラメータ、条件、および選択肢のうち任意のものに対して制御を行なうこともできる。
【0134】
ステップ210で、平均細胞体積および/または平均細胞ヘモグロビン計測値から1つ以上の測定基準を算出して表示することもできる。いくつかの実施形態では、たとえば、赤血球分布の幅を算出し、人間のオペレータのために表示することができる。次に、赤血球分布の幅を用いて赤血球不同症および/または貧血の可能性を算出して、これを表示することができる。さらに、試料についてのヘマトクリット値とともに平均細胞ヘモグロビン計測値を用いて平均細胞ヘモグロビン濃度を算出することができる。
【0135】
細胞体積および成分濃度計測値ならびに/またはそれから算出した測定基準を、制御システム108と関連付けられる電子記憶ユニットの中に、試料画像とともに記憶することができる。たとえば、この情報を、試料104が対応する患者と関連付けられる電子記録の中に記憶することができる。これに代えてまたは加えて、1人以上の内科医または他の治療職員に情報を送信することができる。ネットワーク(たとえばコンピュータネットワーク)を介して情報を計算装置に送信することができる。さらに、携帯電話などの携帯型装置に情報を送信することができ、測定基準が予め定められた値の範囲外にある場合は、送信は警報または警告を含むことができる。
【0136】
他の検体
以上説明したように、この開示は、例示的な目的のため、細胞体積および赤血球中の細胞成分量の測定に注目している。しかしながら、本明細書中に開示するシステムおよび方法は、他の種類の細胞についての体積および細胞成分量を測定することもできる。特に、式(8)を用いて、さまざまな異なる種類の細胞について細胞の測定基準の値を測定することができる。
【0137】
一例として、本明細書中に開示するシステムおよび方法は、−好適に定められた重み係数を用いて−色固有光学濃度と体積計測値との線形結合を用いて、所与の血液試料内の血小板についての血小板体積を計算することができる。試料内の血小板体積の計測値を平均して、平均血小板体積の計測値を生じることができる。赤血球の細胞体積および成分量を算出するための前述の例と同様に、光の複数の波長を用いて血液試料の画像を取得する。次に、フローチャート300中のステップに従って試料の画像を分析して、血小板体積の計測値を生じる。
【0138】
フローチャート300中の第1のステップは、ステップ302での代表血小板の組の選択である。血小板を含有する調製血液試料の例を
図9Aおよび
図9Bに図示する。
図9Aは、血小板1120の大きなクラスタまたは塊を含む血液の試験片の画像1100を示す。血小板がかたまって詰まったクラスタを形成することができるので、代表血小板の組に含むことができるようにするためには、塊またはクラスタ内の個別の血小板を同定するのに付加的な画像処理が必要となることがある。そのような処理の例を
図9Bに図示する。画像中の対象は、クラスタ内の個別の血小板を同定するようにセグメント化される。
図9Bのセグメント化クラスタ1220に示すように、境界によって個別の血小板を同定する。
【0139】
セグメント化プロセスは3段階で進行することができる。第1の段階では、各々の画像中で個別の血小板の中央領域が同定される。血小板の中央領域は、
図9Bではほぼ円形の領域として示される。血小板の中央領域は血小板の最も暗い領域として現われる。
【0140】
第2の段階では、血小板の一部であり得る画像中の画素を同定する。所与の画素の値についての1つ以上のしきい値条件に基づいて、画素を血小板の一部と判断することができる。いくつかの実施形態では、青色照射波長(たとえば415nm)で取得した画像中で画素の強度値が120より大きく、かつ緑色の照射波長(たとえば525nm)で取得した画像中で強度値が同じ画素の強度値よりも少なくとも30レベル高ければ、その画素を血小板の一部として同定する。
【0141】
第3の段階では、第2の段階で血小板の一部として同定した画素の各々を、画素に最も近い血小板中心に対応する血小板に割当てる。特定の画素とその最も近い血小板中心との間の距離がしきい値を超える場合、いずれの血小板にも画素を割当てない。この段階の結果、対応する画素の組を同定した血小板の各々に割当てる。個別の血小板に対応する画素の組を、不規則に取囲む血小板中央領域として
図9Bに示す。
【0142】
いくつかの実施形態では、血小板同士の間の境界は、膨張などの形態操作を受けることができる。たとえば、血小板の境界が重ならない場合は膨張を停止することができる。しかしながら、各々の血小板に対応する画素マスク(たとえば画素のサブセット)の侵食は典型的に、赤血球に関して上述されるようには行なわれない。血小板の境界は典型的に、赤血球よりも薄くかつ屈折性が低い。その結果、赤血球の外観に対して、血小板の境界は画像中で暗く現われず、典型的には、個別の血小板に対応する画素マスクの侵食は行なわれない。血小板の境界を同定し、画素を所与の血小板に割当てると、代表組内の各々の血小板の面積を算出することができる。
【0143】
一般的に、さまざまなセグメント化アルゴリズムを用いて、血小板のクラスタを個別の血小板にセグメント化することができる。そのようなアルゴリズムの例が、米国特許第7,689,083号および第7,881,532号に記載され、その各々の内容全体をここに引用により援用する。
【0144】
赤血球と関連して上述したように、その後の算出で用いる代表血小板の組に個別の血小板を含むべきか否かを判断するために、付加的なステップも行なうことができる。画像の端縁のいずれかに触れるまたはそれ以外で画像中で不明瞭な血小板を代表血小板の組から除去し、以降の算出では用いない。
【0145】
積分光学濃度しきい値を適用すると、代表血小板の組をさらに洗練させることができる。たとえば、黄色の照射波長の光で照射されると600よりも大きな積分光学濃度値を有する血小板を代表血小板の組から排除することができる。そのような対象は典型的に血小板よりも大きく、赤血球であることがしばしばである。さらに、青色の照射波長の光で照射されると200よりも大きな積分光学濃度値を有する血小板を代表血小板の組から排除することができる。そのような対象は典型的には血小板であるには暗過ぎ、試料中の埃または他の破片を示すことがしばしばである。
【0146】
いくつかの実施形態では、試料内の赤血球の上に定着した血小板を同定するのに、線形判別分類子などの分類子を適用する。分類子は、血小板候補の形状、テクスチャ、および色に関する複数の(たとえば5つ以上、10以上、15以上などの)血小板候補特徴の組合せを利用して、代表血小板の組から重なり合う血小板を同定し、これを排除する。
【0147】
次に、ステップ304で、式(3)および(6)または(7)に従って、代表血小板の組についての色固有光学濃度および体積値を測定する。次に、ステップ306で、ステップ304で測定した特徴を用いて、式(8)に従って、血小板体積などの血小板測定基準を算出する。上述のように、たとえば、(たとえば校正後フローサイトメトリシステムによって報告されるような)複数の血液試料について分かっている血小板体積値を備える訓練データに特徴をマッピングする線形回帰係数を定めることにより、訓練データに基づいて、特徴と関連付けられる重みを定めることができる。
【0148】
一例として、細胞体積の測定のために1組の訓練データから1組の重み係数を定めた後に、血小板体積(PV)を測定できるように式(9)を以下のように書換えることができる。
【0150】
以上論じたように、本明細書中に開示するシステムおよび方法を用いて、全血試料(たとえば患者から採取した試料)と品質管理対照組成物との両方を分析することができる。式(9)および(14)に示す重み付け係数を用いて、全血試料と品質管理対照組成物との両方を分析することができる。品質管理対照組成物を分析して、本明細書に開示する方法を具体化するかつ実行する自動化血液学的システムなどの血液分析装置の動作条件を判定することができる。たとえば、装置の判定を行なうため、装置を用いて1つ以上の対照組成物を複数回分析することができる。同じ対照組成物の繰返される分析からの分析結果(たとえば、血小板体積および平均血小板体積などの量の測定)を比較して、装置が発生する結果の線形性および/または精度を判定することができ、これを用いて装置の再校正が保証されているか否かを判断することができる。
【0151】
1つ以上の代表血小板の組内のすべての血小板について血小板の体積を測定し、試料についての平均血小板体積(MPV)値を算出することができる。電磁スペクトル中の他の照射波長は血小板の体積を算出するのに有用である一方で、発明者らは、式(8)中の赤色照射波長で撮像される血小板についての色固有特徴を含むことが、血小板の体積または試料のMPV値の算出の精度を大きく高めなかったことを見出した。
【0152】
本明細書中に開示するシステムおよび方法を、血小板についての他の細胞の測定基準を測定するのにも用いることができる。特に、当該システムおよび方法を用いて、上述のような参照試料から定められる重み付け係数を用いて、式(8)を用いて血小板中の成分の量を測定することができる。
【0153】
自動化試料調製システム
本明細書中に開示するシステムおよび方法を、さまざまな異なる自動化試料調製システムとともに用いることができる。
図10は、自動化試料調製システム1000の実施形態の概略図を示す。システム1000は、基板を格納する、基板上に試料を置く、基板上に調製された試料を検査する、および調製された試料を格納するための複数のサブシステムを含む。
【0154】
基板格納サブシステム1010は、その上に試料を置く前に基板を格納するように構成される。基板は、たとえば、顕微鏡スライド、カバーガラス、および同様の平らな光学的に透明な基板を含むことができる。基板は、さまざまな種類のガラスを含むさまざまな異なる非晶質または結晶質材料から形成可能である。サブシステム1010は、格納容器から個別の基板を選択し、選択された基板を試料載置サブシステム1020に転送するマニピュレータを含むことができる。
【0155】
試料載置サブシステム1020は、−血液試料などの−関心のある選択された量の試料を基板の上に置く。サブシステム1020は、一般的に、試料を置くように構成されるさまざまな流体転送構成要素(たとえば、ポンプ、流体管、弁)を含む。流体転送構成要素は、洗浄溶液、試料に結合する1つ以上の染料、固定溶液、およびバッファ溶液を含む、さまざまな種類の溶液に基板を晒すようにも構成可能である。サブシステム1020は、流体除去構成要素(たとえば真空サブシステム)および確実に試料を基板に固定する乾燥機器も特徴とすることができる。基板マニピュレータは、試料を支持する基板を撮像サブシステム1030に転送することができる。
【0156】
検査サブシステム1030は、基板上の試料の画像を得るためおよび画像を分析して試料についての情報を判断するためのさまざまな構成要素を含む。たとえば、検査サブシステム1030は、入射光を試料に向けるための1つ以上の光源(たとえば、発光ダイオード、レーザダイオード、および/またはレーザ)を含むことができる。撮像サブシステム1030は、試料からの透過光および/または反射光を捕捉するための光学機器(たとえば顕微鏡対物レンズ)を含むこともできる。光学機器に結合される検出器(たとえばCCD検出器)は、試料の画像を捕捉するように構成可能である。試料の画像の分析から導出される情報を、後の検索および/または以降の分析のためにさまざまな光学的および/または電子的記憶媒体上に記憶可能である。
【0157】
検査の後、基板マニピュレータは、基板を格納サブシステム1040に転送することができる。格納サブシステム1040は、たとえば、基板に適用される試料の源、分析の時間、および/または分析の間に同定される何らかの不規則性に関する情報で、個別の基板を標識付けすることができる。格納サブシステムは、複数基板ラック中に処理済み基板を格納することもでき、ラックが基板でいっぱいになるとラックをシステム1000から除去することができる。
【0158】
図10に示すように、システム1000のさまざまなサブシステムの各々は、共通の電子プロセッサ1050にリンク可能である。プロセッサ1050は、システムオペレータからの入力が比較的少なくても(または全くなくても)、自動化された態様でシステム1000のサブシステムの各々の動作を制御するように構成可能である。試料の分析からの結果を監督オペレータのためにシステムディスプレイ1060に表示することができる。インターフェイス1070により、オペレータは、システム1000へコマンドを発行し、自動化分析の結果を手作業で検討することができる。
【0159】
自動化試料処理システムの付加的な局面および特徴は、たとえば、2010年11月10日に出願された米国特許出願連続番号第12/943,687号に開示されており、その全内容をここに引用により援用する。
【0160】
ハードウェアおよびソフトウェア実現例
本明細書中に記載の方法ステップおよび手順は、ハードウェアで、またはソフトウェアで、またはその両方の組合せで実現可能である。特に、電子プロセッサ114は、以上で論じた方法のいずれかを行なうソフトウェアおよび/またはハードウェア命令を含むことができる。方法は、本明細書中に記載の方法ステップおよび図に従って、標準的なプログラミング技術を用いてコンピュータプログラムで実現可能である。プログラムコードを入力データに適用して本明細書中に記載の機能を実行する。出力情報は、たとえば遠隔モニタのため、プリンタ、または表示装置、またはウェブサイトへのアクセスを有するコンピュータモニタ上のウェブページなど、1つ以上の出力装置に適用される。
【0161】
各々のプログラムは好ましくは、プロセッサと通信するため、高レベル手続き型言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実現される。しかしながら、プログラムは、所望により、アセンブリまたは機械言語で実現可能である。いずれの場合も、言語はコンパイルされたまたはインタープリットされた言語であり得る。本明細書中に記載の手順を行なうようにプロセッサを構成しかつ動作させるために、各々のコンピュータプログラムをプロセッサが可読な記憶媒体または装置(たとえば電子メモリ)上に記憶可能である。
【0162】
図11は、ある実施形態に従い、本明細書に記載のコンピュータにより実行される方法のうちいずれかとの関連で説明した動作を制御するのに使用できるコンピュータシステム1300の概略図である。システム1300は、プロセッサ1310と、メモリ1320と、記憶装置1330と、入出力装置1340とを含む。これら構成要素1310、1320、1330、および1340は各々、システムバス1350を用いて相互に接続される。プロセッサ1310は、システム1300内で実行のために命令を処理することができる。ある実施形態では、プロセッサ1310はシングルスレッドのプロセッサである。別の実施形態では、プロセッサ1310はマルチスレッドのプロセッサである。プロセッサ1310は、メモリ1320または記憶装置1330に格納された命令を処理することにより、入出力装置1340上にユーザインターフェイス用の図形情報を表示することができる。プロセッサ1310は、
図10を参照して上述したプロセッサ1050と実質的に同様であり得る。
【0163】
メモリ1320はシステム1300内で情報を格納する。ある実施形態では、メモリ1320はコンピュータ可読媒体である。メモリ1320は揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリを含み得る。
【0164】
記憶装置1330は、システム1300に大容量記憶装置を提供することができる。一般的に、記憶装置1330は、コンピュータ可読命令を格納するように構成された、任意の一時的でない有形の媒体を含み得る。ある実施形態において、記憶媒体1330はコンピュータ可読媒体である。異なる多様な実施形態において、記憶装置1330は、フロッピー(登録商標)ディスク装置、ハードディスク装置、光ディスク装置、またはテープ装置であってもよい。
【0165】
入出力装置1340は、システム1300に対して入出力動作を行なう。ある実施形態において、入出力装置1340は、キーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。ある実施形態において、入出力装置1340は、グラフィカルユーザインターフェイスを表示するための表示装置を含む。ある実施形態で、入出力装置1340は、
図10を参照して上述したディスプレイ1060およびインターフェイス1070のうち1つ以上を含む。
【0166】
記載の特徴は、デジタル電子回路において、または、コンピュータハードウェア、ファームウェアにおいて、または、これらを組合わせたものにおいて、実現し得る。これらの特徴は、プログラマブルプロセッサによる実行のために、たとえば機械可読記憶装置といった情報担体において有形に実現されたコンピュータプログラムプロダクトにおいて、実現することができ、これらの特徴を、プログラマブルプロセッサによって実施することができる。このプログラマブルプロセッサは、命令のプログラムを実行することにより、ここに記載されている実施形態の機能を、入力データを処理し出力を生成することによって果たす。ここに記載されている特徴は、プログラマブルシステム上で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムにおいて実現でき、このプログラマブルシステムは、データ記憶システム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置からデータおよび命令を受信し、これらにデータおよび命令を送信するように接続された、少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含む。コンピュータプログラムは、コンピュータ内で直接または間接的に使用されることによって特定のアクティビティを実行するまたは特定の結果をもたらすことができる1組の命令を含む。コンピュータプログラムは、コンパイルされたまたはインタープリットされた言語を含む任意の形態のプログラミング言語で書込むことができ、スタンドアロンプログラムまたはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、または計算環境で使用するのに適したその他のユニットを含む任意の形態で導入できる。
【0167】
本願に記載の方法およびシステムを実現するためにさまざまなソフトウェアアーキテクチャを使用できる。たとえば、本明細書に記載の方法およびシステムの実現において、出版/購読メッセージングパターンを使用できる。出版/購読メッセージングの場合、このシステムは、メッセージングモジュールを介してのみ通信する数個のハードウェアおよびソフトウェアモジュールを含む。各モジュールを、特定の機能を果たすように構成できる。たとえば、このシステムは、ハードウェアモジュール、カメラモジュール、および焦点モジュールのうちの1つ以上を含み得る。ハードウェアモジュールは、コマンドを、自動焦点合わせ機能を実現する撮像ハードウェアに送ることができ、これがカメラをトリガして画像を取得する。ある実施形態で、ハードウェアモジュールは、
図2を参照して上述した制御システム108を含むことができる。
【0168】
カメラモジュールは、画像をカメラから受け、シャッター時間または焦点といったカメラパラメータを決めることができる。画像は、カメラモジュールによって処理される前に、コンピュータメモリ内にバッファリングすることもできる。カメラモジュールは、スライドの傾斜を最初に調べる場合、ハードウェアモジュールに割込むメッセージを、適切なシャッター時間または焦点を決めるのに十分な画像を既に見たときに、送ることもできる。ある実施形態で、カメラモジュールは、
図2を参照して上述した検出器106を含む。
【0169】
このシステムはまた、ソフトウェア、ハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアの組合せとして実現できる焦点モジュールを含み得る。ある実施形態では、焦点モジュールは、スタック内のすべてのフレームを調べ、このスタックが理想から、すなわち理想的な焦点距離からどれだけ離れているか推定する。焦点モジュールは、画像のスタック内の各フレームに焦点スコアを割当てる役割を果たすこともできる。
【0170】
命令のプログラムの実行に適したプロセッサは、一例として、汎用マイクロプロセッサおよび専用マイクロプロセッサ双方、ならびに、任意の種類のコンピュータの単独のプロセッサまたは複数のプロセッサのうち1つを含む。一般的に、プロセッサは、読取専用メモリまたはランダムアクセスメモリまたはこれら双方から、命令およびデータを受ける。コンピュータは、命令を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを格納するための1つ以上のメモリとを含む。一般的に、コンピュータはさらに、データファイルを格納するための1つ以上の大容量記憶装置を含むかまたはこの記憶装置と通信できるように接続される。このような記憶装置は、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、および光ディスクを含む。コンピュータプログラム命令およびデータを有形で実現するのに適した記憶装置は、すべての形態の不揮発性メモリを含み、これは一例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ装置等の半導体記憶装置、内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、ならびにCD−ROMおよびDVD−ROMディスクを含む。プロセッサおよびメモリを、ASIC(特定用途向け集積回路)で補うことができる、または、ASICに組込むことができる。
【0171】
ユーザとの対話に備えて、ユーザに対して情報を表示するためのCRT(陰極線管)またはLCD(液晶表示装置)モニタ等の表示装置と、ユーザがコンピュータに対する入力を行なえるようにするためのキーボードおよびマウスまたはトラックボール等のポインティングデバイスとを有する、コンピュータ上で、上記特徴を実現することができる。これに代えて、コンピュータは、キーボード、マウス、またはモニタが搭載されずに、別のコンピュータから遠隔制御されてもよい。
【0172】
特徴は、データサーバ等のバックエンド素子を含む、または、アプリケーションサーバもしくはインターネットサーバ等のミドルウェア素子を含む、または、グラフィカルユーザインターフェイスもしくはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータ等のフロントエンド素子を含む、または、これらの任意の組合せを含む、コンピュータシステム内で実現できる。上記システムの素子は、任意の形態で、または、通信ネットワーク等のデジタルデータ通信の媒体によって、接続できる。通信ネットワークの例は、たとえば、LAN、WAN、およびインターネットを形成するコンピュータとネットワークを含む。
【0173】
コンピュータシステムは、クライアントとサーバとを含み得る。クライアントとサーバは、一般的には互いに離れており、典型的には上記のようなネットワークを通して対話する。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行されクライアントーサーバの関係があるコンピュータプログラムによって発生する。
【0174】
プロセッサ1310は、コンピュータプログラムに関連する命令を実行する。プロセッサ1310は、論理ゲート、加算器、乗算器、および計数器等のハードウェアを含み得る。プロセッサ1310はさらに、算術および論理演算を行なう別の算術論理演算装置(ALU)を含み得る。
【0175】
他の実施形態
以上の説明は例示を意図しており、添付の請求項の範囲によって規定される開示の範囲を限定しないことを理解すべきである。その他の局面、利点および変形は、以下の請求項の範囲に含まれる。たとえば、以上の説明および
図2の概略図は試料からの透過光の計測を論じるが、本明細書中に開示する方法およびシステムを、試料の画像が試料から反射される光に対応する場合にも用いることができる。ある試料は自然に反射性であってもよく、または反射マーカでタグ付け可能であり、これにより、反射光は細胞の成分の量および/または体積を測定するのに便利な方法を提供する。いくつかの実施形態では、反射コーティングを有する顕微鏡スライドなどの基板の上に試料104を位置決め可能である。反射コーティングは、一旦透過した光を2度目に試料を通して向けるように機能することができ、これにより、計測された「反射」光は実際は、試料を通って2回透過された入射光に対応する。
【0176】
一般的に、本明細書中に開示する方法およびシステムを用いて、細胞毎の体積、成分含有量、および/またはさまざまな異なる試料の種類についての試料平均細胞体積もしくは平均細胞成分含有量を測定することができる。たとえば、血液、骨髄、尿、上皮組織、腫瘍、精液、唾、および他の組織または循環するもしくは循環しない生体液を含む、体液および組織からの細胞を含む試料について、ヘモグロビンまたは他のタンパク質などの細胞体積および成分含有量を測定することができる。
【実施例1】
【0178】
血液試料についての平均細胞体積を測定するための本明細書中に開示するシステムおよび方法の有効性を評価するため、1μLの血液試料を顕微鏡スライドの上に置いて、スライド上に赤血球の単層を形成した。その全内容を引用によりここに援用する、同時係属中の米国特許出願連続番号第12/430,885号に開示するシステムを用いて血液試料を置いた。次に、同時係属中の米国特許出願連続番号第13/293,050号に開示する種類の自動化システムにおいて、同時係属中の米国特許出願連続番号第61/505,011号に開示する固定剤、(たとえばエオシンYを備える)赤色染料、(たとえばアズールBおよびメチレンブルーを備える)青色染料、ならびに濯ぎ配合物を用いて、試料を調製した。なお、これらの全内容をここに引用により援用する。血液試料を固定し、染色し、濯ぎ、乾燥した後、自動化搬送機構はスライドを低倍率(たとえば×10対物レンズ)撮像ステーションの自動化ステージ上に搬入した。
【0179】
自動化搬送機構は、光源(たとえば源106)と検出器(たとえば検出器102)との間に試料を位置決めした。関心のある対象に対応する場所で試料の高倍率画像を取得した。検出器は×50対物レンズと対にされ、640×480画素CCDセンサを含んだ。検出器を介して取得した画像の画素サイズは7.4μmであった。視野の寸法は以下のとおりであった。
【0180】
【数12】
【0181】
撮像システムは、×50対物レンズを用いて試料の数百枚の画像を取得した。試料上の各々の場所毎に、4つの異なる色の照射光(635、598、525、および415nm)で画像を取得した。各々の画像は典型的に100個以上の赤血球を含み、したがって、試料の高倍率画像は60,000個以上の赤血球の画像を生じた。
図7は、(たとえば415nmの波長の)青色の照射光で取得した試料の概略的な画像700を示す。もっとも、より一般的には、他の照射波長(たとえば、635、598、525nm)またはその組合せを用いて、画像を取得し、赤血球を同定し、かつ細胞体積および成分含有量を測定することができる。画像700は複数の同定された対象702A−Jを含む。
【0182】
しきい値条件を画像700に適用することによって、画像700内で赤血球の場所を特定した。具体的には、(8ビット分解能の画像については)160以下の強度階調レベルを有する画素のみをさらに処理して、赤血球体積分析から白血球を排除した。
図8は、しきい値条件を画像に適用した後の、
図7に示す同じ試料の概略的な画像800である。対象802A−Jが画像800の中に存在する。
【0183】
次に、連結成分標識付けプロセスを行なって、画像800中の個別の画素を対象802A−Jに相関させた。このプロセスが完了した後、対象802A−Jに対応する画素の組の各々に画素侵食マスクを適用して、各々の対象の周から最も外側の0.5ミクロンを表わす画素を除去した。以上開示したように、画素の侵食は、細胞境界からの光の屈折による画像人工産物を低減する。補償しなければ、これらの人工産物は、細胞体積測定における誤差に繋がる可能性がある。
【0184】
対象802A−Jの各々のいくつかの特徴を計測し、計測値を表1に要約する。画素あたりの分かっている面積(画素あたり0.022平方ミクロン)を用いて、対象802A−Jの各々毎の面積を算出した。面積算出は、画素侵食マスクによって除去した区域の部分を含む、細胞の全区域を含んだ。
【0185】
完全な円のプロファイルからの各対象の断面形状のずれを測定することによって、対象802A−Jの真円度も判定した。以上開示したように、完全な円についての面積に対する周の2乗の比率は4πである。表1中の真円度の欄は、4πで除算した画像800中の各対象毎の周の2乗対面積比を反映する。完全な円形の対象は真円度値1を有し、対象の形状がますます非円形になるにつれて、真円度値は1から離れていく。
【0186】
対象802A−Jについて光学濃度値も計測した。式(2)を用いて、各対象中の各画素毎の階調レベル値を光学濃度値に変換した。侵食されたマスク内に存在した画像の画素のみについて光学濃度値を測定した。次に、これらの光学濃度値を用いて、対象の各々毎に平均光学濃度および最大光学濃度値を算出した。さらに、細胞面積および平均光学濃度値から積分光学濃度値を算出した。
【0187】
図8中の対象802A−Jは各々、可能性のある赤血球として同定された。しかしながら、細胞体積を算出する前に、赤血球の代表組を対象802A−Jの群から選択した。代表赤血球を選択するため、赤血球に対応する好適な形状および特徴を対象が有することを確実にするために、それらの幾何学的特性および光学濃度特性に関して対象を評価した。
【0188】
第1のステップで、画像800を走査し、対象のうち任意のものが画像の端縁によって切断されているかまたはそうでなければ不明瞭になっている(たとえば、対象が画像内に部分的にのみ含まれている)か否かを判断した。対象802Hおよび802Jは画像800の端縁で切断されていた。したがって、対象802Hおよび802Jを以降の分析から排除した。このプロセスの結果を表1の「部分細胞」欄に示す。
【0189】
代表赤血球の組の同定の次のステップは、残余の対象(対象802A−Gおよび802I)を組に含むべきか否かを判断することであった。代表組から人工産物および/または重なり合う細胞の群を除けるため、面積が65平方ミクロンよりも大きいまたは35平方ミクロンよりも小さい対象を以降の分析から排除した。画像800の中で、対象802A、802B、および802Iは、各々、面積が65平方ミクロンよりも大きかった(表1に示すように、それぞれ97、76、および103平方ミクロン)。したがって、これらの対象を代表赤血球の組から除けた。
図8の対象802Aの形状は、この対象が非常に不規則な単一の細胞または複数の細胞のいずれかに対応することを示唆する。対象802Bおよび802Iは、各々、いくつかのクラスタ化したまたは重なり合う細胞に対応するように思われる。
【0190】
次に残余の対象802C−Gの光学濃度値を分析して、これらの対象を代表赤血球の組に含むべきか否かを判断した。特に、0.33という平均最小光学濃度しきい値を各々の対象に適用して、白血球に対応した対象を排除した。表1に示すように、対象800Cは、0.29という平均光学濃度値を有し、このことは、対象802Cが赤血球ではなくおそらく白血球核であることを示唆した。画像800中の対象802Cと画像700中の対応の対象702Cとを比較すると、対象802Cが白血球核に対応することを示唆したため、光学濃度しきい値の適用により、これを代表組から適切に排除した。画像700に対して、画像強度しきい値は、対象702C中で明らかな細胞質からの寄与を除去し、対象802C中に見える白血球の核のみが残った。
【0191】
さらに、0.66という平均最大光学濃度しきい値を対象802C−Gの各々に適用して、対象が複数の重なり合う細胞に対応していないことを確実にした。この場合、重なりの度合いは十分に高いため、対象が形状の不規則性に基づいて排除されることはあり得なかった。対象802Fについての光学濃度値はしきい値を超え、したがって対象802Fを代表赤血球の組から排除した。
図8の対象802Fと
図7の対応の対象702Fとを比較すると、対象802Fは2つの重なり合う細胞に対応し、したがって適切に排除されることを示唆した。
【0192】
その結果、赤血球の代表組は対象802D、802E、および802Gに減った。次に、これらの代表赤血球を用いて、血液試料についての平均細胞体積を算出した。これらの対象の各々毎の、表1からの面積、OD
meanおよびOD
maxの値を式(5)で用いて、各対象毎の体積を算出した。これらの体積算出の結果を表1の「体積」欄に示す。これらの体積値に0.5という補正係数を適用して、表1の「体積(fL)」欄に示すように、細胞体積をフェムトリットルで表現した。次に、これらの細胞の各々毎の個別の体積を用いて、試料についての平均細胞体積を算出したところ、11.36fLであった。試料上の複数(たとえば数百以上)の画像場所について以上のプロセスを繰返して、試料中の数百または数千の代表赤血球に基づく平均細胞体積算出を生じることができる。さらに上述のプロセスを繰返して、複数の照射波長で取得される画像からの値である色固有積分光学濃度IOC(c)および色固有細胞体積Vol(c)を算出することができる。たとえば、合計4色(635、598、525、および415nm)の照射を用いて、色固有積分光学濃度および細胞体積値を式8とともに用いて、試料についての平均細胞体積を算出することができる。
【0193】
【表1】
【実施例2】
【0194】
表2は、血液試料について分かっているMCH値の組に部分的に基づいて、そのような試料についての平均細胞ヘモグロビン値を算出する、式(11)の例示的な実現例を図示する。公知の参照システム、蛍光フローサイトメトリ法を用いる校正後自動化血液学的システムを用いて6つの血液試料を処理し、MCHを含む全血球計算のさまざまなパラメータを算出した。表2中の「参照MCH」欄は、この参照システムを用いて処理した各試料毎のピコグラムでの平均細胞ヘモグロビン値を報告する。
【0195】
上述したのと同じ態様で、各試料毎の代表赤血球の組の同定を含む、6つの試料の処理および撮像を行なった。各試料毎に、システムは、試料の画像を取得するのに用いる照射の各色(すなわち、黄色−635nm;緑色−598nm、および青色−415nm)毎に積分光学濃度値を算出した。黄色、緑色、および青色光を用いて得た画像に基づく各試料毎の積分光学濃度値をそれぞれ、IOD(y)、IOD(g)、およびIOD(b)で印を付けた表2の欄の中に報告する。
【0196】
各試料毎に、試料照射色に対応する3つの光学濃度値を用いて、予備的細胞ヘモグロビン値を算出した。各照射波長毎に、参照試料から以前に定めた重み係数を以下の式(8)の形態で用いた。
【0197】
H=−0.16・IOD(y)+0.04・IOD(g)+2.1・IOD(b)
各試料毎の予備的細胞ヘモグロビン値を表2の「H」欄に報告する。次に、各試料毎の予備的細胞ヘモグロビン値を、参照システムを用いて測定した対応の平均細胞ヘモグロビン値に変倍した。この変倍プロセスは、報告された各試料毎の参照平均細胞ヘモグロビン値に予備的細胞ヘモグロビン値を相関させる回帰分析を行なうことを含んだ。最適な相関は、黄色の重み付け因子を変倍することおよび以下のような予備的細胞ヘモグロビン計測値を算出するのに用いた上記式に切片値を加算することに対応した。
【0198】
H=−0.17・IOD(y)+0.04・IOD(g)+2.1・IOD(b)+0.5
以上の式を利用して、各試料毎に平均細胞ヘモグロビン値を算出して、表2の「実験MCH」欄に報告する。次に、実験システムで処理した新しい試料にこの式を適用して、そのような試料を参照系で処理することなくMCH値を算出することができた。
【0199】
【表2】