(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハニカム構造部に形成された前記スリットの全てが、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部のそれぞれの中央部同士を結んだ直線と交差しないように形成されている請求項2に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図3に示すように、筒状のハニカム構造部4と、一対の電極部21とを備えるものである。筒状のハニカム構造部4は、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有するものである。一対の電極部21は、ハニカム構造部4の側面5に配設されたものである。本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されたものである。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、一方の電極部21が、他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されたものである。一方の電極部21は、一対の電極部21,21における(一対の電極部21,21の中の)一方の電極部21であり、他方の電極部21は、一対の電極部21,21における(一対の電極部21,21の中の)他方の電極部21である。換言すると、一対の電極部21,21の中の片方の電極部21が一方の電極部21であり、一対の電極部21,21の中の残りの片方の電極部21が他方の電極部21である。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4に、側面5に開口するスリット6が1本以上形成されたものである。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、少なくとも1本のスリット6が、セル2の延びる方向に直交する断面において、「一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線(中心線)L」と交差しないように形成されている。
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0023】
尚、ハニカム構造部4の側面5は、ハニカム構造部4の外周壁3の表面のことである。そして、「(ハニカム構造部4の)側面5に開口するスリット6」とは、ハニカム構造部4の外周壁3の表面に開口するスリットのことである。また、「スリットがハニカム構造部の外周に開口する」とは、スリットの開口部により外周壁の表面に孔が開いている状態になっていることを意味する。スリットは、側面に開口すると共に、端面にも開口するものであってもよい。
【0024】
このように、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の電気抵抗率が1〜200Ωcmであるため、電圧の高い電源を用いて電流を流しても、過剰に電流が流れず、ヒーターとして好適に用いることができる。また、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されている。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。そのため、本実施形態のハニカム構造体100は、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができる。更に、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4に、側面5に開口するスリット6が1本以上形成されている。そして、本実施形態のハニカム構造体100は、少なくとも1本のスリット6が、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線(中心線)Lと交差しないように形成されている。このように、本実施形態のハニカム構造体は、ハニカム構造部4にスリット6が形成されているため、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができるとともに、耐熱衝撃性に優れたものである。更に、本実施形態のハニカム構造体100は、少なくとも1本のスリット6が、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線と交差しないように形成されている。そのため、特に、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができる。また、少なくとも1本のスリット6が、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線と交差しないように形成されているため、ハニカム構造体100は機械的強度にも優れたものである。
【0025】
ここで、「セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設される」の意味は、以下の通りである。つまり、
図4に示されるように、まず、セル2の延びる方向に直交する断面において、「一方の電極部21の中央部C(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分」を線分L1とする。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、「他方の電極部21の中央部C(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分」を線分L2とする。そのとき、線分L1と線分L2とにより形成される角度β(「中心O」を中心とする角度)が、170°〜190°の範囲となるような位置関係になるように、一対の電極部21,21がハニカム構造部4に配設されていることを意味する。
図4は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図4においては、隔壁及びスリットは省略されている。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線Lと交差しないように形成されたスリット6を「非交差スリット」と称することがある。また、本実施形態のハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部C,C同士を結んだ直線Lと交差するように形成されたスリット6を「交差スリット」と称することがある。本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4に、スリット6が2本以上形成され、2本以上のスリット6の中の50%以上のスリット6が、非交差スリットであることが好ましい。そして、ハニカム構造部4に形成されたスリット6の全てが、非交差スリットであることが更に好ましい。非交差スリットが、スリット6全体の50%以上であることにより、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することを防止できる(本実施形態のハニカム構造体100が機械的強度に優れたものとなる)。非交差スリットが、スリット6全体の50%未満であると、交差スリットが多くなることにより、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することがある。また、非交差スリットが、スリット6全体の50%未満であると、交差スリットが多くなるため、一対の電極
部21,21間を流れる電流の流れがスリットによって大きく妨げられ、均一な発熱が阻害され、不均一な発熱となることがある。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の深さは、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向に直交する断面」における半径(以下、「ハニカム構造部の半径」と称することがある。)の1〜80%であることが好ましい。そして、スリット6の深さは、ハニカム構造部の半径の1〜60%であることが更に好ましく、1〜30%であることが特に好ましい。スリット6の深さが、ハニカム構造部の半径の1%より小さいと、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性を
向上させる効果が低下することがある。スリット6の深さが、ハニカム構造部の半径の80%より大きいと、一対の電極
部21,21間を流れる電流の流れがスリットによって大きく妨げられ、均一な発熱が阻害され、不均一な発熱となることがある。スリット6の深さは、スリット6の「側面5における開口部」から、スリット6の最も深い位置までの距離のことである。スリットが複数本存在する場合には、スリット6の深さは、スリットによって異なっていてもよく、全て同じでもよい。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の幅は、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向に直交する断面」における外周の長さ(以下、「ハニカム構造部の外周長」と称することがある。)の0.1〜5%であることが好ましい。そして、スリット6の幅は、ハニカム構造部の外周長の0.1〜3%であることが更に好ましく、0.1〜1%であることが特に好ましい。スリット6の幅が、ハニカム構造部の外周長の0.1%より小さいと、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性を
向上させる効果が低下することがある。スリット6の幅が、ハニカム構造部の外周長の5%より大きいと、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することがある。スリット6の幅は、スリット6の「ハニカム構造部4の周方向」における長さのことである。「ハニカム構造部4の周方向」とは、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向に直交する断面」における、外周に沿う方向のことである。スリットが複数本存在する場合、前記スリット6の幅は、スリット一本分の幅を意味する。スリットが複数本存在する場合には、スリット6の幅は、スリットによって異なっていてもよく、全て同じでもよい。
【0029】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の「セルの延びる方向」における長さは、ハニカム構造部の「セルの延びる方向」における長さと同じであることが好ましい。つまり、スリット6がハニカム構造部の両端面間に亘って(全長に亘って)形成されていることが好ましい。また、スリット6の「セルの延びる方向」における長さが、ハニカム構造部の「セルの延びる方向」における長さの5〜70%であることも好ましい態様である。耐熱衝撃性の点では全長に亘っている方がよいが、一部形成されていない部分が残っていると、強度の点で好ましい。全長に亘っていない場合、スリットの片端はハニカム端面に位置することが好ましい。この場合、スリットは、ハニカム構造部の片方の端面側のみに形成されていてもよいし(
図10を参照)、ハニカム構造部の両方の端面側に形成されていてもよい(
図11を参照)。スリットが、ハニカム構造部の両方の端面側に形成された場合、スリットの「セルの延びる方向」における合計の長さが、ハニカム構造部の「セルの延びる方向」における長さの5〜70%であることが好ましい。また、スリットが、ハニカム構造部の片方の端面側のみに形成される場合、ハニカム構造体を使用する際に、スリットが形成された端面側を、熱衝撃がより大きくかかる方向を向けて使用することが好ましい。スリットが複数本存在する場合には、スリット6の長さは、スリットによって異なっていてもよく、全て同じでもよい。
【0030】
また、スリットが複数本存在する場合には、スリット形成パターン(含:本数)、スリットの深さ、スリットの幅、スリットの長さは、中心線Lを対称軸とする線対称であることが好ましい。
【0031】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6の本数は、1〜20本が好ましく、1〜15本が更に好ましく、1〜10本が特に好ましい。スリット6の本数が20本を超えると、ハニカム構造体100の機械的強度が低下することがある。
図1に示されるハニカム構造体100においては、6本のスリット6が形成されている。
【0032】
本実施形態のハニカム構造体100において、スリット6は、ハニカム構造部4の両端面間に亘るように形成されている。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体100において、「ハニカム構造部4の側面5における開口部(スリット6の開口部)の位置が、電極部21に最も近い」スリット6を、「最短距離スリット」6aと称することにする。電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dは、0.1〜30mmが好ましく、0.5〜20mmが更に好ましく、1〜10mmが特に好ましい。電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dが、0.1mmより短いと、電流の流れが妨げられることがあり、均一発熱し難くなることがある。電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dが、30mmを超えると、ハニカム構造体100の耐熱衝撃性を
向上させる効果が低下することがある。尚、電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dは、
図2に示すように、ハニカム構造体100の周方向における電極部21の端部から測定した「最短距離スリット」6aまでの距離である。
【0034】
本実施形態のハニカム構造体100は、
図1、
図2に示されるように、ハニカム構造部4の側面5の「電極部21が配設されていない」2箇所の領域(領域A、領域B)に、3本ずつスリット6が形成されている。本実施形態のハニカム構造体100は、スリットの深さより、対向するスリット間の距離のほうが長いものである。対向するスリット間の距離とは、領域Aに形成されたスリット6と、領域Bに形成されたスリット6との間の距離である。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体100は、6本のスリットのスリット角度が、全て90°である。ここで、「スリット角度」は、以下のように定義されるものとする。
図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100のセルの延びる方向に直交する断面において、スリット6と、ハニカム構造部4の外周との交点を点Pとする。そして、点Pを端点とし、点Pからハニカム構造部4の外周の外側に向かって伸びるとともに中心線Lに平行な半直線(又は、線分)を、半直線HLとする。尚、中心線Lは、上記のように、「一対の電極のそれぞれの中央部同士を結んだ直線」である。そして、そのときに、スリット6と半直線HLとにより形成される角度のうち、大きくない方の角度(180°以下の角度)を「スリット角度SA」とする。ここで、「大きくない方の角度」とは、「小さい方の角度、又は、同じ角度である場合には、同じである当該角度」を意味する。また、半直線とは、一方に端があって、他方に無限に伸びている直線のことである。また、「半直線HLが、ハニカム構造部4の外周の外側に向かって伸びる」とは、半直線HLが、ハニカム構造部4の断面内を通過しないような方向に伸びることを意味する。
【0036】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするものであることが好ましく、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素であることが更に好ましい。「隔壁1及び外周壁3の材質が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものである」というときは、隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。このような材質を用いることにより、ハニカム構造部の電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、炭化珪素は、炭化珪素が焼結したものである。ハニカム構造部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0037】
本実施形態のハニカム構造体100は、
図1〜
図3に示されるように、ハニカム構造部4の側面5に一対の電極部21,21が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21間に電圧を印加することにより、発熱する。印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましい。
【0038】
図1〜
図3に示されるように、一対の電極部21,21のそれぞれは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる「帯状」に形成されている。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中
心Oを挟んで反対側に配設されている。そのため、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。そして、更に、
図4に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍(中心角αの0.5倍の角度θ)が、15〜65°であることが好ましい。これにより、ハニカム構造部4内の発熱の偏りを、より効果的に抑制することができる。このように、「電極部21の中心角αの0.5倍が15〜65°であるとともに、セルの延びる方向に延びている」という電極部21の形状は、「帯状」の一態様である。また、「電極部21の中心角α」は、
図4に示されるように、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角度である。換言すると、「電極部21の中心角α」は、直交断面において、「電極部21」と「電極部21の一方の端部と中心Oとを結ぶ線分」と「電極部21の他方の端部と中心Oとを結ぶ線分」とにより形成される形状(扇形、等)における、中心Oの部分の内角である。ここで、「直交断面」とは、「ハニカム構造体のセルの延びる方向に直交する断面」のことである。
【0039】
セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の「中心角αの0.5倍の角度θ」の上限値は、60°が更に好ましく、55°が特に好ましい。また、セル2の延びる方向に直交する断面において、電極部21,21の「中心角αの0.5倍の角度θ」の下限値は、20°が更に好ましく、30°が特に好ましい。また、一方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」は、他方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」に対して、0.8〜1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(同じ大きさ)であることが更に好ましい。これにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを抑制することができ、これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。
【0040】
電極部21の厚さは、0.01〜5mmであることが好ましく、0.01〜3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、均一に発熱することができる。電極部21の厚さが0.01mmより薄いと、電気抵抗が高くなり均一に発熱できないことがある。5mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。
【0041】
電極部21が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることが好ましく、通常含有される不純物以外は、炭化珪素粒子及び珪素を原料として形成されていることが更に好ましい。ここで、「炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」とは、炭化珪素粒子と珪素との合計質量が、電極部全体の質量の90質量%以上であることを意味する。このように、電極部21が炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ成分又は近い成分(ハニカム構造部の材質が炭化珪素である場合)となる。そのため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ値又は近い値になる。また、材質が同じもの又は近いものになるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れたり、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。
【0042】
図1、
図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセルの延びる方向に延びると共に「両端部間(両端面11,12間)に亘る」帯状に形成されている。このように、一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように配設されていることにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りをより効果的に抑制することができる。そして、これにより、ハニカム構造部4内の発熱の偏りをより効果的に抑制することができる。ここで、「電極部21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成(配設)されている」というときは、電極部21の一方の端部がハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面)に接し、電極部21の他方の端部がハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面)に接していることを意味する。
【0043】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の「ハニカム構造部4のセル2の延びる方向」における両端部が、ハニカム構造部4の両端部(両端面11,12)に接していない(到達していない)状態も好ましい態様である。また、電極部21の一方の端部が、ハニカム構造部4の一方の端部(一方の端面11)に接し(到達し)、電極部21の他方の端部が、ハニカム構造部4の他方の端部(他方の端面12)に接していない(到達していない)状態も好ましい態様である。このように、電極部21の少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いない構造であると、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。つまり、一対の電極部21,21のそれぞれは、「ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる」という観点からは、少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いない構造であることが好ましい。以上より、「ハニカム構造部4内の、電流の偏りをより効果的に抑制することにより、発熱の偏りをより効果的に抑制する」という観点を重視する場合には、一対の電極部21,21がハニカム構造部4の両端部間に亘るように形成されていることが好ましい。一方、「ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させる」という観点を重視する場合には、一対の電極部21,21のそれぞれにおける少なくとも片方の端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いないことが好ましい。
【0044】
本実施形態のハニカム構造体においては、例えば、
図1〜
図3に示されるように、電極部21は、平面状の長方形の部材を、円筒形状の外周に沿って湾曲させたような形状となっている。ここで、湾曲した電極部21を、湾曲していない平面状の部材に変形したときの形状を、電極部21の「平面形状」と称することにする。上記、
図1〜
図3に示される電極部21の「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極部の外周形状」というときは、「電極部の平面形状における外周形状」を意味する。本実施形態のハニカム構造体においては、
図1〜
図3に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が長方形であってもよいが、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が曲線状に形成された形状であってもよい。また、帯状の電極部21の外周形状が、長方形の角部が直線状に面取りされた形状であってもよい。
図13に、一対の電極部21,21のそれぞれにおける両端部が、ハニカム構造部4の端部(端面)に接して(到達して)いないハニカム構造体190の例を示す。
図13に示されるハニカム構造体190は、帯状の電極部21の外周形状が、「長方形の角部が曲線状に形成された」形状である。
【0045】
電極部21の電気抵抗率は、0.1〜100Ωcmであることが好ましく、0.1〜50Ωcmであることが、更に好ましい。電極部21の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の電気抵抗率が0.1Ωcmより小さいと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム構造部の温度が上昇し易くなることがある。電極部21の電気抵抗率が100Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。電極部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0046】
電極部21は、気孔率が30〜60%であることが好ましく、30〜55%であることが更に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、60%より高いと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0047】
電極部21は、平均細孔径が5〜45μmであることが好ましく、7〜40μmであることが更に好ましい。電極部21の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の平均細孔径が、5μmより小さいと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。電極部21の平均細孔径が、45μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0048】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1〜100Ωcmの範囲で制御することができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均
粒子径が、10μmより小さいと、電極部21の電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均
粒子径が、60μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0049】
電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率が、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.1〜100Ωcmの範囲にすることができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがあり、40質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0050】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁厚さが50〜200μmであり、70〜130μmであることが好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁厚さが200μmより厚いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0051】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル密度が40〜150セル/cm
2であることが好ましく、70〜100セル/cm
2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm
2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cm
2より高いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0052】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることが更に好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造部4の400℃における電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が小さくなることがある。更に、炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4の電気抵抗率は、1〜200Ωcmであり、10〜100Ωcmであることが好ましい。電気抵抗率が1Ωcmより小さいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れることがある。電気抵抗率が200Ωcmより大きいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがある。ハニカム構造部の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率より低いものであることが好ましく、更に、電極部21の電気抵抗率が、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下であることが更に好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。電極部21の電気抵抗率を、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0055】
本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、ハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0056】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0057】
ハニカム構造部4の隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0058】
また、本実施形態のハニカム構造体100の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体100の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0059】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせ、であることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0060】
本実施形態のハニカム構造体の形状(ハニカム構造部の形状)
は、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が
点対称な多角形(四角形
、六角形
、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mm
2であることが好ましく、4000〜10000mm
2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0061】
本実施形態のハニカム構造体100のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることが更に好ましい。アイソスタティック強度は、値が大きいほど好ましいが、ハニカム構造体100の材質、構造等を考慮すると、6MPa程度が上限となる。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0062】
本実施形態のハニカム構造体100は、触媒が担持されて、触媒
担体として使用されることが好ましい。
【0063】
次に、本発明のハニカム構造体の他の実施形態について説明する。
【0064】
図5に示されるように、本実施形態のハニカム構造体110は、少なくとも1本のスリット6に充填される充填材7を有し、充填材7が、スリット6の空間の少なくとも一部に充填されるものである。そして、ハニカム構造部4に、スリット6が2本以上形成され、2本以上のスリット6の中の50%以上のスリットに充填材が充填されていることが好ましい。更に、ハニカム構造部4に形成された「2本以上のスリット6」の全てに充填材が充填されていることが好ましい。また、充填材7は、「スリット6の空間」の全部に充填されることが好ましい。
図5に示されるハニカム構造体110においては、6本のスリット6が形成されている。そして、全てのスリット6のそれぞれにおいて、当該スリット6の空間全体に充填材7が充填されている。このように、スリット6に充填材が充填されることにより、ハニカム構造体のアイソスタティック強度を向上することができる。
図5は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。「少なくとも一部に充填」とは、スリットの深さ方向における「一部」でもよく、スリットの長さ方向における「一部」でもよく、これらの組合せでもよい。
【0065】
充填材7は、ハニカム構造部の主成分が炭化珪素、又は珪素−炭化珪素複合材である場合、炭化珪素を50質量%以上含有することが好ましい。これにより、充填材7の熱膨張係数を、ハニカム構造部の熱膨張係数に近い値にすることができ、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。充填材7に含有される他の成分としては、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を挙げることができる。また、充填材7は、シリカ、アルミナ等を50質量%以上含有するものであってもよい。この場合、充填材7に含有される他の成分としては、界面活性剤、有機バインダ、発泡樹脂、水等を挙げることができる。
【0066】
本実施形態のハニカム構造体110において、充填材7のヤング率は、0.001〜20GPaであることが好ましく、0.005〜15GPaであることが更に好ましく、0.01〜10GPaであることが特に好ましい。0.001GPaより低いと、ハニカム構造体110の機械的強度が低くなることがある。20GPaより高いと、ハニカム構造体110の耐熱衝撃性が低くなることがある。
【0067】
本実施形態のハニカム構造体110において、充填材7の気孔率は、40〜80%であることが好ましく、43〜70%であることが更に好ましく、45〜65%であることが特に好ましい。40%より低いと、ハニカム構造体110の機械的強度が低くなることがある。80%より高いと、ハニカム構造体110の耐熱衝撃性が低くなることがある。
【0068】
本実施形態のハニカム構造体110において、充填材7の電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率の100〜100000%であることが好ましく、200〜100000%であることが更に好ましく、300〜100000%であることが特に好ましい。100%より低いと、充填材7に電流が流れ易くなるため、ハニカム構造部に均一に電流を流すことが難しくなることがある。充填材7の電気抵抗率は、高過ぎても特に問題はない。充填材7は絶縁体であってもよい。充填材7の電気抵抗率は、実際には、ハニカム構造部4の電気抵抗率の100000%程度が上限となる。充填材7としては、複数種の充填材を併用してもよい。例えば、1本のスリットの中で部位によって使い分けたり、複数本のスリットが存在する場合にスリットによって使い分けたりすることができる。
【0069】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
【0070】
図6に示されるように、本実施形態のハニカム構造体120は、上記本発明のハニカム構造体の他の実施形態(ハニカム構造体110(
図5))において、スリット6の深さより、対向するスリット間の距離のほうが短いものである。スリット6の深さが深くなると、耐熱衝撃性は向上するが、電流が流れにくくなることにより均一発熱させ難くなる。そのため、これらのバランスを考慮して、スリットの深さを適宜決定することが好ましい。本実施形態のハニカム構造体120は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図6は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0071】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図7に示されるように、本実施形態のハニカム構造体130は、上記本発明のハニカム構造体の他の実施形態(ハニカム構造体110(
図5))において、セルの延びる方向に直交する断面において、セルの形状が六角形になったものである。以下、セルの延びる方向に直交する断面における「セルの形状」を、単に、「セル形状」と称することがある。セル形状が六角形であると、外周からの応力が分散されるという利点がある。本実施形態のハニカム構造体130は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0072】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図8に示されるように、本実施形態のハニカム構造体140は、上記本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態(ハニカム構造体130(
図7))において、スリット角度を変更したものである。本実施形態のハニカム構造体140は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図8は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0073】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図9に示されるように、本実施形態のハニカム構造体150は、上記本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態(ハニカム構造体130(
図7))において、一部のスリットについてスリットの深さを深くしたものである。具体的には、本実施形態のハニカム構造体150は、領域A及び領域Bのそれぞれに形成された3本のスリットなかで、中央に位置するスリットの深さが、より深くなったものである。本実施形態のハニカム構造体150は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図9は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0074】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図10に示されるように、本実施形態のハニカム構造体160は、上記本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態(ハニカム構造体130(
図7))において、スリット6の「セル2の延びる方向」の長さが短くなったものである。具体的には、本実施形態のハニカム構造体160は、スリット6が、ハニカム構造部4の側面5及び一方の端面に開口するとともに、他方の端面には開口しないように形成されたものである。これは、スリット6が、ハニカム構造部4の一方の端部のみに形成された構造であるということもできる。スリット6の「セル2の延びる方向」の長さは、ハニカム構造部4の「セル2の延びる方向」の長さより短くなっている。本実施形態のハニカム構造体160は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図10は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0075】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図11に示されるように、本実施形態のハニカム構造体170は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態(ハニカム構造体160(
図10))において、「セル2の延びる方向」の長さが短いスリット6が、ハニカム構造部の両端部に形成されたものである。本実施形態のハニカム構造体170は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図11は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0076】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図12に示されるように、本実施形態のハニカム構造体180は、
図7に示されるハニカム構造体130において、「セルの延びる方向」に延びる6本のスリットが形成されず、ハニカム構造部4の端面に平行な1本のスリットが形成されたものである。本実施形態のハニカム構造体180において、スリット6は、ハニカム構造部4の側面に開口するとともに、ハニカム構造部4の端面には開口せず、ハニカム構造
部4の端面に平行に形成されている。本実施形態のハニカム構造体180は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図12は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0077】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図14に示されるように、本実施形態のハニカム構造体200は、
図8に示されるハニカム構造体140において、「セルの延びる方向」に延びる6本のスリットの中の、電極部21に近い4本のスリットが、電極部21に覆われる位置に形成されたものである。本実施形態のハニカム構造体200は、スリット6に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6に充填されていなくてもよい。
図14は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0078】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図16に示されるように、本実施形態のハニカム構造体220は、
図8に示されるハニカム構造体140における、電極部21にスリット
22が形成されたものである。また、このハニカム構造体220には、
図8に示されるハニカム構造体140の「セルの延びる方向」に延びる6本のスリットに加え、この電極部21に形成されたスリット22と連通するように、更に2本のスリットがハニカム構造部4に形成されている。このように、ハニカム構造部4だけでなく、剛性の高い電極部21にもスリットを形成することによって、耐熱衝撃性を一層向上させることができる。電極部21に形成されたスリット22と連通するようにハニカム構造部4に形成されたスリットは、セルの延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21のそれぞれの中央部同士を結んだ直線(中心線)と重なるように形成されていている。本発明のハニカム構造体は、本実施形態のハニカム構造体220のように、前記直線(中心線)と重なるように形成されたスリットを有していてもよい。前記直線(中心線)と交差せず、重なるように形成されたスリットは、一対の電極部21,21間を流れる電流の流れを大きく妨げることなく、ハニカム構造体220の耐熱衝撃性を向上させる。本実施形態のハニカム構造体220において、ハニカム構造部4に形成されたスリットの内、電極部21に形成されたスリット22と連通するように形成されたスリット以外の全てのスリットは、前記直線(中心線)と交差しないように形成されている。但し、本発明のハニカム構造体においては、ハニカム構造部4にスリットが2本以上形成されている場合に、一部のスリットが、前記直線(中心線)と交差するように形成されていてもよい。本実施形態のハニカム構造体220は、スリット6及びスリット22に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6及び/又はスリット22に充填されていなくてもよい。
図16は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0079】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。
図17に示されるように、本実施形態のハニカム構造体230は、
図16に示されるハニカム構造体220において、スリット22の形成により2つの部位に分割された電極部21の当該部位間を導通させるため、当該部位間を接続する端子23を設けたものである。すなわち、端子23は、スリット22の形成により2つの部位に分割された電極部21の当該部位間に跨がって配設されている。端子23の材質は、電極部21の材質と同じであることが好ましい。本実施形態のハニカム構造体230は、スリット6及びスリット22に充填材7が充填されているが、充填材7は、スリット6及び/又はスリット22に充填されていなくてもよい。
図17は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0080】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、スリットに充填材が充填されていないハニカム構造体の製造方法である。
【0081】
まず、以下の方法で、ハニカム成形体を作製する。炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、3〜40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。尚、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0082】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0083】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0084】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0085】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0086】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0087】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0088】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0089】
次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥後のハニカム成形体を「ハニカム乾燥体」と称することがある。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0090】
ハニカム成形体(ハニカム乾燥体)の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0091】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0092】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末及び金属珪素の合計質量を100質量部としたときに、金属珪素の質量が20〜40質量部となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0093】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
【0094】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15〜60質量部であることが好ましい。
【0095】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0096】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0097】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0098】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体(ハニカム乾燥体)の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム乾燥体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の形状になるように、ハニカム乾燥体の側面に塗布することが好ましい。電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム乾燥体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0099】
次に、ハニカム乾燥体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させて、「電極部原料付きハニカム乾燥体」を作製することが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0100】
次に、電極部原料付きハニカム乾燥体に、スリットを形成することが好ましい。スリットは、リューター等を使用して形成することが好ましい。スリットは、電極部原料付きハニカム乾燥体の側面に開口するように形成する。そして、少なくとも1本のスリットを、セルの延びる方向に直交する断面において、一対の電極部のそれぞれの中央部同士を結んだ直線と交差しないように形成する。電極部原料付きハニカム乾燥体に形成するスリットとしては、上記本発明のハニカム構造体に形成されるスリットの好ましい態様と同様のスリットが好ましい。例えば、電極部原料付きハニカム乾燥体に、
図1に示されるハニカム構造体100に形成されるスリット6と同様のスリットを形成することが好ましい。尚、電極部原料付きハニカム乾燥体を焼成した後に、スリットを形成してもよい。また、ハニカム乾燥体にスリットを形成した後に、電極部形成原料をハニカム乾燥体に塗付してもよい。
【0101】
次に、電極部原料付きハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造体を作製することが好ましい。尚、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。
【0102】
焼成(本焼成)条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【0103】
次に、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の製造方法について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、スリットに充填材が充填されている(充填材を備えた)ハニカム構造体の製造方法である。例えば、
図5〜
図12のいずれかに示されるようなハニカム構造体を作製する方法である。
【0104】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、まず、上記本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態と同様の方法で、「電極部原料付きハニカム乾燥体」を作製することが好ましい。
【0105】
充填材として電極部と同じ材料を用いる場合には、「電極部原料付きハニカム乾燥体」を作製した後に、上記本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態と同様に、電極部原料付きハニカム乾燥体にスリットを形成することが好ましい。そして、充填材用原料を調製することが好ましい。充填材用原料は、電極部形成原料の好ましい組成と同様の組成であることが好ましい。次に、充填材用原料をスリットに充填することが好ましい。充填材用原料をスリットに充填する際には、箆(へら)等を用いることが好ましい。次に、充填材用原料をスリットに充填した電極部原料付きハニカム乾燥体を乾燥することが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。次に、乾燥後の電極部原料付きハニカム乾燥体を焼成して、ハニカム構造体を得ることが好ましい。例えば、
図5〜
図12のいずれかに示されるハニカム構造体のようなハニカム構造体を作製することが好ましい。焼成条件は、上記本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態において好ましいとされた焼成条件と同様であることが好ましい。
【0106】
充填材として、電極部の焼成温度より低温での熱処理を必要とする材料を用いる場合には、「電極部原料付きハニカム乾燥体」を作製した後に、仮焼成及び本焼成を行い、「電極部付きハニカム焼成体」を得ることが好ましい。そして、その後に、電極部付きハニカム焼成体にスリットを形成することが好ましい。仮焼成、本焼成及びスリット形成のそれぞれの条件は、上記本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態の場合と同様にすることが好ましい。そして、スリットが形成された電極部付きハニカム焼成体に充填材用原料を充填し、乾燥し、熱処理することによりハニカム構造体を得ることが好ましい。充填材用原料をスリットに充填する際には、箆(へら)等を用いることが好ましい。充填材用原料としては、無機粒子及び無機接着剤を含有するものであることが好ましい。充填材用原料には、更に、有機バインダ、界面活性剤、発泡樹脂、水等が含有されることが好ましい。無機粒子としては、板状粒子、球状粒子、塊状粒子、繊維状粒子、針状粒子等を挙げることができる。また、無機粒子の材質としては、炭化珪素、マイカ、タルク、窒化ホウ素、ガラスフレーク等を挙げることができる。無機粒子としては、複数種類の無機粒子の混合物であってもよい。そして、無機粒子としては、少なくとも炭化珪素粒子を50質量%以上含有するものであることが好ましい。無機接着剤としては、コロイダルシリカ(SiO
2ゾル)、コ
ロイダルアルミナ(アルミナゾル)、各種酸化物ゾル、エチルシリケート、水ガラス、シリカポリマー、リン酸アルミニウム等を挙げることができる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0108】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合して、炭化珪素−金属珪素混合物を作製する。そして、炭化珪素−金属珪素混合物に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部であった。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0109】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。
【0110】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合し、これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤を添加すると共に、水を添加して、混合した。混合物を混練して電極部形成原料とした。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.5質量部であった。グリセリンの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに10質量部であった。界面活性剤の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.3質量部であった。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。
【0111】
次に、電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に、厚さが0.15mm、「セルの延びる方向に直交する断面において中心角の0.5倍が50°」になるようにして、ハニカム成形体の両端部間(両端面間)に亘るように帯状に塗布した。電極部形成原料は、乾燥させたハニカム成形体の側面に、2箇所塗布した。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所の電極部形成原料を塗布した部分の中の一方が、他方に対して、ハニカム成形体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。
【0112】
次に、ハニカム成形体に塗布した電極部形成原料を乾燥させて、電極部原料付きハニカム乾燥体を得た。乾燥条件は、70℃とした。
【0113】
次に、電極部原料付きハニカム乾燥体に、4本のスリットを形成した。スリットは、リューターを用いて形成した。
【0114】
次に、スリットを形成した電極部原料付きハニカム乾燥体を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0115】
得られたハニカム構造体は、
図15に示されるように、電極部21が配設されていない2箇所の側面5のそれぞれに2本ずつ、合計4本のスリット6が形成されたものであった。スリット深さは、3mmであった。スリット幅は、1mmであった。スリット角度は、120°であった。電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dは1mmであった。また、セルの延びる方向に直交する断面において、スリットと、「一対の電極部のそれぞれの中央部同士を結んだ直線」(中心線)とは、交差していなかった。セルの延びる方向に直交する断面における、セルの形状は、六角形であった。
図15は、実施例1のハニカム構造体210を模式的に示す斜視図である。
【0116】
得られたハニカム構造体の隔壁の平均細孔径(気孔径)は8.6μmであり、気孔率は45%であった。平均細孔径および気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。また、ハニカム構造体の、隔壁の厚さは90μmであり、セル密度は90セル/cm
2であった。また、ハニカム構造体の底面は直径(外径)93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。また、ハニカム構造体の、2つの電極部の、セルの延びる方向に直交する断面における中心角の0.5倍は、50°であった。また、2つの電極部の厚さは、いずれも1.5mmであった。また、電極部の電気抵抗率は、1.3Ωcmであり、ハニカム構造部の電気抵抗率は、100Ωcmであった。また、ハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、セルの形状は六角形であった。
【0117】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「耐熱衝撃性試験」及び「通電時最高温度測定」を行った。結果を表1に示す。
【0118】
尚、ハニカム構造部及び電極部の電気抵抗率は、以下の方法で測定した。測定対象と同じ材質で10mm×10mm×50mmの試験片を作成した。つまり、ハニカム構
造部の電気抵抗率を測定する場合にはハニカム構造部と同じ材質で、そして、電極部の電気抵抗率を測定する場合には電極部と同じ材質で、それぞれ試験片を作製した。試験片の両端部全面に銀ペーストを塗布し、配線して通電できるようにした。試験片に電圧印加電流測定装置をつないだ。試験片中央部に熱伝対を設置した。試験片に電圧を印加し、電圧印加時の試験片温度の経時変化をレコーダーにて確認した。更に具体的には、100〜200Vの電圧を印加し、試験片温度が400℃の状態における電流値及び電圧値を測定し、得られた電流値及び電圧値、並びに試験片寸法から電気抵抗率を算出した。
【0119】
(耐熱衝撃性試験)
「ハニカム構造体を収納する金属ケースと、当該金属ケース内に加熱ガスを供給することができるプロパンガスバーナーと、を備えたプロパンガスバーナー試験機」を用いてハニカム構造体の加熱冷却試験を実施した。上記加熱ガスは、ガスバーナー(プロパンガスバーナー)でプロパンガスを燃焼させることにより発生する燃焼ガスとした。そして、上記加熱冷却試験によって、ハニカム構造体にクラックが発生するか否かを確認することにより、耐熱衝撃性を評価した。具体的には、まず、プロパンガスバーナー試験機の金属ケースに、得られたハニカム構造体を収納(キャニング)した。そして、金属ケース内に、プロパンガスバーナーにより加熱されたガス(燃焼ガス)を供給し、ハニカム構造体内を通過するようにした。金属ケースに流入する加熱ガスの温度条件(入口ガス温度条件)を以下のようにした。まず、5分で指定温度まで昇温し、指定温度で10分間保持し、その後、5分で100℃まで冷却し、100℃で10分間保持した。このような昇温、冷却、保持の一連の操作を「昇温、冷却操作」と称する。その後、ハニカム構造体のクラックを確認した。そして、指定温度を825℃から25℃ずつ上昇させながら上記「昇温、冷却操作」を繰り返した。指定温度は、825℃から25℃ずつ、10段階設定した。つまり、上記「昇温、冷却操作」は、指定温度が1050℃になるまで行った。指定温度が高くなると昇温峻度が大きくなり、中心部に対して外周部の昇温が遅れることにより、中心部と外周部の温度差が拡大し、発生応力が大きくなる。指定温度が900℃を超えるまでクラックが発生しないハニカム構造体は、耐熱衝撃性試験が合格である。つまり、指定温度900℃においてクラックが発生しなければ、更に高い指定温度においてクラックが発生しても合格であり、指定温度900℃以下でクラックが発生した場合に不合格となる。表1において、「耐熱衝撃性試験」の欄は、耐熱衝撃性試験において、ハニカム構造体にクラックが発生したときの指定温度を示している。
【0120】
(通電時最高温度測定)
まず、ハニカム構造体に200Vの電圧を印加し、通電試験を行った。そして、その際のハニカム構造体の最高温度を測定した。具体的には、ハニカム構造体に200Vの電圧を印加したときの、ハニカム構造部の「セルの延びる方向に直交する断面における、電極部の端部(周方向の端部)が接する位置」の温度を測定する。そして、ハニカム構造体に200Vの電圧を印加したときの、ハニカム構造部の「セルの延びる方向に直交する断面における、電極部の周方向の中央点が接する位置」の温度を測定する。そして、測定した温度の中の最も高い温度を、最高温度とする。ハニカム構造部における、電極部の端部(周方向の端部)が接する位置か、電極部の周方向の中央点が接する位置のいずれかが、最も電流が流れる位置であり、ハニカム構造体において最も高い温度となる部分である。このようにして、ハニカム構造体の発熱偏りを評価する。そして、上記ハニカム構造体の最高温度が200℃以下であれば、ハニカム構造体における温度分布の偏りが抑制された状態であるということができ、合格である。
【0121】
【表1】
【0122】
(実施例2〜10、比較例1,2)
各条件を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、「耐熱衝撃性試験」及び「通電時最高温度測定」を行った。結果を表1に示す。
【0123】
(実施例11〜15)
電極部21と「最短距離スリット」6aとの距離Dを10mmにした以外は実施例1と同様にして、「スリットを形成した電極部原料付きハニカム乾燥体」を作製した。そして、「スリットを形成した電極部原料付きハニカム乾燥体」に充填材用原料を、箆(へら)を用いて充填し、「充填材用原料付きハニカム乾燥体」を得た。その後、「充填材用原料付きハニカム乾燥体」を70℃で乾燥し、実施例1と同様にして脱脂、焼成し、充填材のヤング率と気孔率とが表1に示す値であるハニカム構造体を得た。充填材用原料は、電極部形成原料と同じ組成とした。実施例1の場合と同様にして、「耐熱衝撃性試験」及び「通電時最高温度測定」を行った。結果を表1に示す。
【0124】
「充填材ヤング率」は、JIS R1602に準拠して、曲げ共振法によって測定した値である。測定に用いる試験片は、以下の方法で作製した。まず、充填材を形成する原料を用いてバルク体を作製した。そして、このバルク体を3mm×4mm×40mmの大きさに切り出したものを、試験片とした。また、充填材気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0125】
表1より、スリットが形成されたハニカム構造体は、耐熱衝撃性に優れ、通電時の最高温度も低いことがわかる。