特許第5997267号(P5997267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許5997267低散逸率を有する低密度ポリエチレンおよびそれを製造するための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997267
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】低散逸率を有する低密度ポリエチレンおよびそれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   C08F10/02
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-516965(P2014-516965)
(86)(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公表番号】特表2014-517135(P2014-517135A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012028276
(87)【国際公開番号】WO2012177299
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年3月5日
(31)【優先権主張番号】61/500,315
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フローリー,アニー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マイケル,エル.
(72)【発明者】
【氏名】クミック,チェスター,ジェィ.
(72)【発明者】
【氏名】イートン,ロバート,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジル,アルフレッド.イー.
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/042390(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0114607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/00−10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル絶縁体材料として用いられる、低散逸率のポリエチレン組成物を製造するための方法であって、
高圧重合条件下の重合反応器において、エチレンを(i)無極性イソパラフィン流体溶媒および(ii)飽和炭化水素である連鎖移動剤の存在下でフリーラジカル開始剤と接触させて、高圧低密度ポリエチレン(HP−LDPE)および未反応種を含む反応器流出物を形成すること;
前記未反応種を前記HP−LDPEから分離して、再循環流を形成すること;
散逸成分を前記再循環流からパージして、パージされた再循環流を形成すること;
パージ率を0.18〜0.6に維持すること;
過酸化物効率比1800〜2400を維持すること;
前記パージされた再循環流を前記重合反応器に導入すること;および
2.47GHzで1.48×10−4ラジアン以下の散逸率を有するHP−LDPEを形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記パージングが、前記再循環流から過酸化物分解生成物を除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の重合反応器にて温度200℃〜360℃で前記接触を実施することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記フリーラジカル開始剤が、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシオクトエートおよびジ−t−ブチルペルオキシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接触が、単一の連鎖移動剤の存在下で起こり、前記単一の連鎖移動剤が飽和炭化水素である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリマー組成物を用いて導体を絶縁することが知られている。例えば、LDPEの発泡体は、単独で、または他のポリマーとブレンドして、同軸ケーブルおよび/または無線周波ケーブルなどの通信ケーブルを絶縁するのに頻繁に使用される。
【0002】
電気通信産業の急速な発展により、通信ケーブルのより高い信号品質に対してより大きな需要が生じている。通信ケーブルのより高い信号品質を得るための一方法は、シグナル減衰を下げることである。ポリエチレン中の不純物、極性官能基および/または不飽和が、誘電特性に悪影響を及ぼし、散逸率を増加させ得ることが知られている。したがって、当技術分野では、ケーブル絶縁体においてより低いシグナル減衰およびより低い散逸率を達成するために、少量の不純物、極性基および不飽和を有するポリエチレンの必要性が認識されている。当技術分野では、さらに、LDPEの物理的特性および/または加工特性を低下させない低散逸率を有するLDPE電気絶縁材料の必要性が認識されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
要旨
本開示は、改良型(すなわち、低い)散逸率を有する低密度ポリエチレン組成物およびそれを製造する方法を対象とする。本出願人は、散逸成分の量を減少させてLDPE組成物を製造する方法を見出した。散逸成分の量を減少させると、LDPEの物理的特性および加工特性を同時に維持しながら、低い散逸率(すなわち、1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで))を有するLDPEを生じる。本開示の低散逸率のLDPEを用いて製作したケーブル絶縁体は、有利なことに低いシグナル減衰を示す。
【0004】
本開示は、方法を提供する。一実施形態では、ポリエチレン組成物を製造するための方法は、高圧重合条件下の重合反応器において、溶媒の存在下、エチレンをフリーラジカル開始剤と接触させることを含む。反応は、高圧低密度ポリエチレン(HP−LDPE)および未反応種(unreacted species)を含む反応器流出物(reactor effluent)を形成する。この方法は、未反応種をHP−LDPEから分離して再循環流(recycle stream)を形成すること、および散逸成分を再循環流からパージしてパージされた再循環流を形成することを含む。さらに、方法は、パージされた再循環流を重合反応器に導入すること、および1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)の散逸率を有するHP−LDPEを形成することを含む。
【0005】
本開示は、ポリマー組成物を提供する。一実施形態では、ポリマー組成物は、HP−LDPEを含む。HP−LDPEは、本方法により製造される。HP−LDPEは、以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.19以下;
(iv)ビニル比0.03以下;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、すべて、または任意の組み合わせを示す。
【0006】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態では、発泡体組成物が提供される。発泡体は、(A)HP−LDPEと(B)高密度ポリエチレン(HDPE)のブレンドである。ブレンドは、膨張して発泡体になる。発泡体組成物のHP−LDPE成分は、膨張の前に以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.19以下;
(iv)ビニル比0.03以下;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、すべて、または任意の組み合わせを有する。
【0007】
本開示は、被覆導体を提供する。一実施形態では、被覆導体は、導体および導体上のコーティングを含む。コーティングは、(A)HP−LDPEと(B)HDPEのブレンドから構成される。コーティングのブレンドは、膨張して、発泡体組成物を形成する。発泡体組成物のHP−LDPE成分は、膨張前に以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.19以下;
(iv)ビニル比0.03以下;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、すべて、または任意の組み合わせを有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
1.方法
本開示は、方法を提供する。一実施形態では、低密度ポリエチレンを製造するための方法は、高圧重合条件下の重合反応器内で、溶媒の存在下、エチレンをフリーラジカル開始剤と接触させて、反応器流出物を形成することを含む。反応器流出物は、高圧低密度ポリエチレン(HP−LDPE)および未反応種を含む。この方法は、未反応種をHP−LDPEから分離して再循環流を形成することを含む。方法は、散逸成分を再循環流からパージすること、および、パージされた再循環流を重合反応器に導入することを含む。方法は、1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)の散逸率を有するHP−LDPEを形成することを含む。
【0009】
本明細書で使用される場合、「反応条件」は、試薬間の反応およびその結果得られる生成物、すなわちLDPEの形成を促進する、重合反応器内の、温度、圧力、反応物濃度、溶媒選択、連鎖移動剤(CTA)、反応物質混合/添加パラメーター、および他の条件である。本明細書で使用される場合、「高圧重合条件」という用語は、エチレンのフリーラジカル重合を促進するための、15,000〜50,000ポンド/平方インチゲージ圧(psig)(1021〜3403気圧(atm))の圧力および150℃〜350℃の反応温度を含む反応条件である。
【0010】
エチレンの高圧重合は、通常、管型反応装置、撹拌オートクレーブ、または管型反応装置と撹拌オートクレーブの組み合わせで行われる。適切な高圧重合反応器の非限定例には、単一のオートクレーブまたは複数のオートクレーブ、直列もしくは連続の順に動作する1つまたは複数のオートクレーブと管型反応装置の組み合わせ、または単一の管型反応装置が含まれる。反応器連続順は、オートクレーブ反応器、次に管型反応装置からなり得る。さらに、オートクレーブ反応器は、1つまたは複数の反応器ゾーンを有し得る。反応器ゾーンの各々には、エチレン、任意選択のコモノマー、フリーラジカル開始剤、触媒、およびCTAを独立に供給し得る。さらに、管型反応装置は、エチレン、任意選択のコモノマー、フリーラジカル開始剤、触媒、およびCTAを独立に供給することを可能にするために、管型反応装置の長さに沿って1つまたは複数の供給点を有していてもよい。
【0011】
本方法は、連続操作またはバッチ操作を使用して実施することができる。エチレンモノマー(および任意選択のコモノマー(複数可))は、最初に、もしくは初めに全体を重合反応器に供給することもできるし、反応サイクル中に反応器のいくつかの異なる場所(連続型プロセス用)に分けて供給することもできる。
【0012】
撹拌オートクレーブ反応器を使用する場合、圧力は、1,000〜4,000バール絶対圧(「bara」)(100〜400メガパスカル絶対圧(「MPaa」))、または2,000〜3,000bara(200〜300MPaa)の範囲にあり得、温度は、120℃〜340℃の範囲にあり得る。
【0013】
管型反応装置を使用する場合、圧力は、1,000〜4,000bara(100〜400MPaa)の範囲に、および温度は、120℃〜360℃の範囲にあり得る。高圧重合条件下、管型反応装置内での重合は、乱流プロセス流体流動(turbulent process fluid flow)内で起こる。管に沿ったある点において、フリーラジカル重合時に生じる熱の一部は、管壁を通して除去され得る。
【0014】
一実施形態では、少なくとも重合部分の反応温度は、200℃、または225℃、または250℃〜360℃である。さらなる実施形態では、重合の少なくとも25%、または重合の少なくとも50%、重合の少なくとも75%、または全体の重合プロセスの間、反応温度が保たれる。
【0015】
一実施形態では、本方法は、オートクレーブ反応器である第一の反応器および管型反応装置である第二の反応器を含む多重反応器システムで実施される。第一の(オートクレーブ)反応器は、1つ、2つ、またはさらに多くの反応域(ゾーン)を有する。各反応器ゾーンの温度は、同じであるか、または異なり、180℃、または200℃、または230℃、または239℃〜245℃、または250℃、または280℃、または360℃である。第一の反応器の各反応器ゾーンの圧力は、同じであるか、または異なり、22,000psig、または24,000psig〜27,000psig、または33,000psigである。
【0016】
多重反応器システムの第二の反応器は、管型反応装置である。第二の(管型)反応器は、1つ、2つ、またはより多くの反応器ゾーンを有する。各管型反応装置ゾーンの温度は、同じであるか、または異なり、180℃、または240℃〜280℃、または290℃である。各管型反応装置ゾーンの圧力は、同じであるか、または異なり、22,000psig、または24,000psig〜27,000psig、または33,000psigである。
【0017】
適切なフリーラジカル開始剤は、これに限定されないが、有機過酸化物(「PO」)、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、またはそれらの組み合わせなどの酸素ベースの開始剤を含む。適切なフリーラジカル開始剤の非限定例には、t−ブチルペルオキシピバレート、di−t−ブチルペルオキシド(DTBP)、t−ブチルペルオキシアセテート(TBPO)、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート(PND)、t−ブチルペルオキシオクトエート、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。フリーラジカル重合反応は、開始剤または触媒が存在する各反応ゾーンで起こる。反応は、大量の熱を発生する発熱反応である。
【0018】
一実施形態では、接触ステップは、飽和炭化水素である連鎖移動剤の存在下で実施される。水素原子供与の後に、CTAは、モノマー、オリゴマー、またはコモノマーと反応し、新しいポリマー鎖を開始することができるラジカルを形成し得る。その結果、最初のCTAは、新しい、または既存のポリマー鎖に組み込まれ、それにより、最初のCTAと会合するポリマー鎖に新しい官能性を導入する。CTAは、通常、モノマー/コモノマー重合の結果ではない新しい官能性をポリマー鎖に導入することができる。
【0019】
一実施形態では、2種以上の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤の少なくとも1種は、α−オレフィンであり得る。フリーラジカル反応を開始し、持続させるために、重合反応器に供給され得る他の任意選択の成分は、反応開始剤および触媒を含む。
【0020】
一実施形態では、単一のCTAが使用される。単一のCTAは、飽和炭化水素である。CTAは、イソブタンである。CTAは、重合の間、CTA、エチレンモノマーおよび任意選択のコモノマー(存在する場合)の組み合わせの重量を基準にして重量%で、0.05重量%、もしくは0.1重量%〜0.2重量%、または0.5重量%の量で存在する。
【0021】
溶媒は、液体(周囲条件で)である。溶媒は、フリーラジカル開始剤溶媒、ポンプフロー用バランス(balance for pump flow)、およびそれらの組み合わせとして働く。一実施形態では、溶媒は、無極性イソパラフィン流体溶媒である。適切なイソパラフィン流体溶媒の非限定例は、Isopar(商標)Hである。本方法は、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、およびそれらの任意の組み合わせなどの通常のフローバランス(flow balance)極性アルカノールの代替物として、無極性イソパラフィン流体溶媒を使用する。本出願人は、イソパラフィン流体溶媒が、有利なことに再循環流中に存在する散逸成分の削減に寄与することを見出した。
【0022】
この方法は、反応器流出物を形成するエチレンの高圧フリーラジカル重合を含む。反応器流出物は、高圧低密度ポリエチレン(HP−LDPE)および未反応種を含む。未反応種は、以下:溶媒、未反応モノマー(エチレン)、未反応の任意選択のコモノマー、未反応フリーラジカル開始剤、未反応CTA、未反応触媒(任意選択の)、フリーラジカル開始剤分解生成物(アセトンやtert−ブタノールなど)、供給システムからの不純物、機械類で使用される潤滑剤、およびそれらの任意の組み合わせのうちの1つ、いくつか、またはすべてを含む。未反応種は、通常、組み合わせた量で5重量%未満または3重量%未満(未反応種総重量を基準にして)存在する他の成分と共に、多量(未反応種総重量の95重量%より多い、または97重量%より多い)のエチレンを含む。
【0023】
方法は、HP−LDPEから未反応種を分離して再循環流を形成することを含む。本明細書で使用する場合、「再循環流」という用語は、一次分離段階の間に回収される過剰の未反応種である。未反応種は一次分離段階中に回収されて、第一の重合反応器(高圧再循環流)の圧力を約3000psigに減少させ、次いで、圧力を次の容器または分離器内の周囲の圧力程度(低圧再循環流)に下げる。分離ガスは回収されて、再循環流を形成する。再循環流の一部は重合反応器に導入されて、後述することになるように、製造単位のモノマー効率を改善する。
【0024】
方法は、再循環流から散逸成分をパージすることを含む。本明細書で使用される場合、「パージ」という用語は、再循環流から1つまたは複数の散逸成分(複数可)を除去する行為である。パージ(またはパージング)は、再循環流から未反応種の一部(または小部分)を移す、またはそうでない場合は廃棄することにより実施される。言い換えれば、パージングは、再循環流から未反応種(「パージ流」)の一部を取り出し、またはそうでない場合は除去することである。
【0025】
パージステップは、パージされた再循環流を形成する。本明細書で使用される場合、「パージされた再循環流」は、パージの処理を受けてきた再循環流である。パージされた再循環流は、それから除去される未反応種の一部を有していた(パージ処理に関して)。
【0026】
本明細書で使用される場合、「散逸成分」という用語および類似の用語は、HP−LDPEの誘電特性に悪影響を及ぼす未反応種中に存在する、極性化合物、不飽和化合物、およびそれらの組み合わせである。散逸成分の非限定例は、以下:カルボニル基、ヒドロキシル基、ビニル基、ビニリデン基、トランス−ビニリデン基、およびそれらの任意の組み合わせの1つまたは複数を含む化合物および/または分子である。散逸成分のさらなる非限定例には、アセトン、tert−ブタノール、二酸化炭素、ケトン、アルコール、カルボン酸、超圧縮機油(hypercompressor oil)、鉱油、極性酸化防止剤、ポリアルキレングリコール、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の理論に拘泥するものではないが、散逸成分は、反応器/試薬不純物、過酸化物分解生成物、酸化防止剤などの添加剤、包装からの埃や繊維などの外部の汚染物質、および前述の任意の組み合わせの結果であり得る。
【0027】
一実施形態では、パージステップは、接触ステップ中(重合中)に、パージ率(purge fraction)を0.18〜0.6に維持することを含む。「パージ率」は、以下の等式(1)により定義される。
【数1】
【0028】
一実施形態では、パージ率は、0.18、または0.26〜0.4、または0.6である。
【0029】
再循環流流速は、ガス流量測定で標準であるように、圧力低下および温度を使用する流量測定により測定する。再循環流流速は、体積置換(volumetric displacement)圧縮機により決定する。体積置換圧縮機は、流体の比体積を置換する。流体の密度は、動作圧力(測定される)および温度(測定される)を用いて見積もられる。次いで、密度および置換される体積は、再循環流用の質量流速を算出するのに使用される。パージ流流速は、同様の方法で決定する。
【0030】
方法は、パージされた再循環流を重合反応器に導入することを含む。パージ流を、再循環流から移す。パージ流は、重合反応に導入されない。パージ流は、重合プロセスから除去される。方法は、1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)の散逸率を有するHP−LDPEを形成することをさらに含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「高圧低密度ポリエチレン」または「HP−LDPE」という用語は、高圧下のフリーラジカル重合により製造される、密度0.910g/cc〜0.940g/ccを有する低密度エチレンホモポリマーである。
【0032】
HP−LDPEは、他のタイプのポリエチレンと異なる。本HP−LDPEは、フリーラジカル重合し、メタロセン、束縛構造などの有機金属触媒ポリエチレン、および/またはチーグラー−ナッタ触媒ポリエチレンと異なる。特に、HP−LDPEは、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)と異なる。LLDPEは、非常に狭い分子量分布(MWD)を持つ直鎖分子構造を有する。対照的に、HP−LDPE樹脂は、LLDPEと比べて、長鎖分岐構造およびより広いMWDを有する。
【0033】
HP−LDPEは、高密度ポリエチレン(HDPE)と異なる。「HDPE」は、0.940g/ccより大きい密度を有するエチレン系ポリマー(エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマー)である。伸長の流れ(elongational flow)中のHP−LDPEの溶融粘度は、歪み硬化(strain hardening)である。これは、HP−LDPE溶融が伸びるので、その伸長粘度は、伸び速度の増加と共に増加することになることを意味する。対照的に、LLDPEおよびHDPEは張力低下を示し、それによって伸長粘度は、伸び速度の増加と共に低下し、押し出し物は、非常に薄い部分に容易に延伸される。HDPEとHP−LDPEとの間のさらなる相違点は、以下の表1に示される。
【表1】
【0034】
一実施形態では、方法は、フリーラジカル開始剤をイソパラフィン流体溶媒と混合することを含む。イソパラフィン流体溶媒は、無極性である。混合は、フリーラジカル開始剤の重合反応器への導入前、導入中、または導入後に起こり得る。フリーラジカル開始剤は、10重量%、もしくは15重量%〜18重量%、または20重量%、または24重量%、または25重量%、または30重量%のイソパラフィン流体溶媒と混合することができる。さらなる実施形態では、フリーラジカル開始剤と混合するイソパラフィン流体溶媒は、Isopar(商標)Hである。重量パーセントは、フリーラジカル開始剤/イソパラフィン流体ブレンドの総重量を基準にしている。
【0035】
一実施形態では、方法は、カルボニル比0.05以下を有するHP−LDPEを形成することを含む。
【0036】
一実施形態では、方法は、ヒドロキシル比0.37以下を有するHP−LDPEを形成することを含む。
【0037】
一実施形態では、方法は、ビニリデン比0.19以下を有するHP−LDPEを形成することを含む。
【0038】
一実施形態では、方法は、0.03未満のビニル基を含むHP−LDPEを形成することを含む。
【0039】
HP−LDPE骨格内のカルボニル形成は、重合中に形成される過酸化物分解生成物から主に起こる。過酸化物分解生成物は、ポリマー骨格にカルボニル基として組み込むことができる化学的活性種を形成する。反応器に供給される新たな過酸化物の量は、HP−LDPEポリマー骨格内のカルボニル濃度に効果を有する。本明細書で使用される場合、「新たな(fresh)」という用語は、重合反応器への成分の最初の導入を指す。「新たな」成分は、再循環成分を除外する。
【0040】
本方法は、エチレンのフリーラジカル重合中に、より少ない過酸化物を利用する。より少ない過酸化物を使用することにより、本方法は、有利なことに、重合反応器内に導入される酸素含有種の濃度を削減する。
【0041】
一実施形態では、方法は、接触ステップ(重合中)に、過酸化物効率比(peroxide efficiency ratio)1800〜2400を維持することを含む。「過酸化物効率比」という用語は、以下の等式(2)により定義される。
【数2】
【0042】
一実施形態では、過酸化物効率比は、1800、または2000〜2200、または2400である。過酸化物効率比の増加は、反応器への過酸化物供給速度の減少を示す。
【0043】
HP−LDPE製造速度は、当技術分野で既知の質量流量測定機器により測定する。新たな過酸化物溶液供給速度は、過酸化物ポンプからの体積流速を測定すること、および過酸化物溶液の組成を知ることにより決定する。
【0044】
一実施形態では、方法は、多重反応器システム内で接触を実施することを含む。多重反応器システムは、撹拌オートクレーブ反応器である第一の反応器および管型反応装置である第二の反応器を含む。第一の反応器の温度は、230℃〜250℃であり、第一の反応器の圧力は、24,000psig〜27,000psigである。方法は、
HP−LDPEから未反応種を分離して、再循環流を形成すること;
再循環流から散逸成分をパージすること;
パージされた再循環流を重合反応器に導入すること;
0.18〜0.60のパージ率を維持すること;
過酸化物効率比1800〜2400を維持すること;ならびに
以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.20以下;
(iv)0.05以下ビニル基;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有するHP−LDPEを形成すること、
をさらに含む。
【0045】
本出願人は、散逸成分を、監視し、検出し、極低レベルにまで除去することができる重合プロセスを見出した。特定の理論に拘泥することなく、パージ率のみを増加させること、または過酸化物効率比を増加させることと組み合わせてパージ率を増加させることにより、驚くべきことに、本方法は、反応器内に存在する散逸成分の量を削減する。反応器供給プロセス内の散逸成分のこの削減は、その結果得られるHP−LDPEの散逸率を直接的に改善する(低下させる)。本出願人は、HP−LDPE、または通常手順で製造されるLDPEと比べ、本方法が、100〜2470メガヘルツ(MHz)の周波数範囲にあるHP−LDPE用の散逸率を20%、もしくは30%〜40%、または50%改善する(すなわち、低下させる)ことを意外にも見出した。
【0046】
本方法は、本明細書で開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0047】
2.ポリマー組成物
本開示は、組成物を提供する。一実施形態では、ポリマー組成物が、提供され、HP−LDPEを含む。HP−LDPEは、前述の方法のいずれかにより製造される。HP−LDPEは、以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.19以下;
(iv)ビニル比0.03以下;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、もしくはすべて、または任意の組み合わせを示す。
【0048】
一実施形態では、本HP−LDPEは、密度0.910g/cc〜0.930g/ccを有する。
【0049】
一実施形態では、本HP−LDPEは、メルトインデックス1.5〜10.5およびMWD5〜12を有する。
【0050】
一実施形態では、ポリマー組成物は、メルトインデックス2.0g/10分〜3.0g/10分およびMWD5.0〜6.0を有するHP−LDPEを含む。
【0051】
一実施形態では、ポリマー組成物は、メルトインデックス5.5〜6.5およびMWD11.0〜12.0を有するHP−LDPEを含む。
【0052】
本HP−LDPEは、1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)の低い散逸率を生じる、驚くほど低い量の散逸成分を有利なことに含む。
【0053】
一実施形態では、HP−LDPE組成物は、カルボニル比0.05以下、または0.02〜0.04、または0.05を有する。
【0054】
一実施形態では、HP−LDPEは、ビニリデン比0.19以下、または0.17〜0.19を有する。
【0055】
一実施形態では、HP−LDPEは、ビニル比0.03以下を有する。
【0056】
一実施形態では、HP−LDPE組成物は、ヒドロキシル比0.37以下、または0.34〜0.35または0.37を有する。
【0057】
本ポリマー組成物は、本明細書で開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0058】
A.ブレンド
一実施形態では、ポリマー組成物は、(A)前述のHP−LDPEと(B)ポリオレフィンのブレンドである。適切なポリオレフィンの非限定例には、プロピレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマーが含まれる。
【0059】
一実施形態では、ブレンドのHP−LDPEは、以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.19以下;
(iv)ビニル比0.03以下;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、すべて、または任意の組み合わせを有する。
一実施形態では、ブレンド中に存在するポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE)である。ブレンドは、20重量%〜80重量%のHDPEおよび80重量%〜20重量%のHP−LDPEを含む。重量パーセントは、ブレンドの総重量を基準にする。
【0060】
一実施形態では、ポリマー組成物は、HDPE50重量%、HP−LDPE50重量%を含むブレンドであり、ブレンドは、密度0.935g/cm〜0.945g/cmを有する。
【0061】
一実施形態では、ポリマー組成物は、HDPE50重量%、HP−LDPE50重量%を含むブレンドであり、ブレンドは、散逸率1.0×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)を有する。
【0062】
一実施形態では、ポリマー組成物は、HDPE50重量%、HP−LDPE50重量%を含むブレンドであり、ブレンドは、6.89g/10分のメルトインデックスを有する。
【0063】
B.発泡体組成物
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態では、発泡体組成物が提供され、発泡体組成物は、(A)HP−LDPEと(B)HDPEのブレンドを含み、そのブレンドは、発泡体に膨張する。発泡体組成物は、1ミクロン〜100ミクロンの範囲にあるセルを持つ、均一セル分布を有する。被覆導体(絶縁ワイヤ)製造工程中に、化学的な発泡剤または押出機への物理的なガス注入により、ブレンドの発泡体への膨張を、実施することができる。
【0064】
発泡体組成物のHP−LDPE成分は、本明細書で開示される任意のHP−LDPEであり、膨張前に以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.19以下;
(iv)ビニル比0.03以下;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、すべて、または任意の組み合わせを有する。
【0065】
C.被覆導体
一実施形態では、被覆導体が、提供され、導体および導体上のコーティングを含む。コーティングは、(A)HP−LDPEと(B)HDPEとのブレンドから構成される。ブレンドは、膨張して、発泡体組成物を形成する。HP−LDPEは、本明細書で開示される任意のHP−LDPEであってもよい。HP−LDPEは、膨張の前に、1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)の散逸率を有する。
【0066】
本明細書で使用する場合、「導体」は、少なくとも1つの金属ワイヤおよび/または少なくとも1つの金属ケーブルである。導体は、単一のワイヤまたはマルチワイヤであり得、鎖状型または管状型であり得る。適切な導体の非限定例には、銀、金、銅、炭素、およびアルミニウムが含まれる。導体は、ガラスまたはプラスチックのどちらかから作られる光ファイバであってもよい。
【0067】
被覆導体は、可撓性(flexible)、準剛性、または剛性があってもよい。コーティング(「ジャケット」または「外筒(sheath)」または「絶縁体」とも呼ばれる)は、導体上または導体周辺の別のポリマー層上にある。コーティングは、本ポリマー組成物を含む。ポリマー組成物は、本明細書に開示される任意のポリマー組成物であってよい。一実施形態では、本ポリマー組成物は、導体上の絶縁体層である。
【0068】
コーティングは導体上にある。本明細書で使用される場合、「上に(on)」は、コーティングと金属導体との間の直接接触または間接接触を含む。「直接接触」は、コーティングと導体の間に位置する干渉層(複数可)および/または干渉材料(複数可)がなく、コーティングが、導体とじかに接触する構成である。「間接接触」は、干渉層(複数可)および/または干渉構造(複数可)および/または干渉材料(複数可)が、導体とコーティングの間に位置する構成である。コーティングは、導体を完全に、または部分的に覆う、そうでない場合は、囲む、または包むことができる。コーティングは、導体を囲む唯一の成分であってもよい。あるいは、コーティングは、導体を包む多層ジャケットまたは外筒の一層であってもよい。干渉層の主目的は、コーティングと導体の間の粘着を高めることである。
【0069】
一実施形態では、被覆導体の発泡体組成物中に存在する(A)HP−LDPEと(B)HDPEとのブレンドは、膨張の前に、1.0×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)の散逸率を有する。
【0070】
一実施形態では、ブレンドのHP−LDPE成分は、膨張の前に、以下の特性:
(i)カルボニル比0.05以下;
(ii)ヒドロキシル比0.37以下;
(iii)ビニリデン比0.19以下;
(iv)ビニル比0.03以下;および
(v)散逸率1.48×10−4ラジアン以下(2.47GHzで)
のうちの1つ、いくつか、すべて、または任意の組み合わせを有する。
【0071】
応用
本明細書で記載される本被覆導体は、デジタル信号かアナログ信号のいずれであれ、無線周波数信号を送信するのに使用することができる。適切な応用の非限定例には、ドロップ(drop)、配電(distribution)、およびトランク用のCATVケーブル;電話線;携帯電話および送受信無線(two way radio)用の無線周波ケーブル;携帯電話基地局、ケーブルテレビネットワーク、電話システム用の加入者線;ならびに他の多様な通信ケーブルが含まれる。
【0072】
定義
本明細書で使用される場合、「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、2種以上のポリマーのブレンドである。そのようなブレンドは、混和してもしなくてもよい(分子レベルで相分離しない)。そのようなブレンドは、相分離してもしなくてもよい。そのようなブレンドは、透過型電子分光法(transmission electron spectroscopy)、光散乱、X線散乱、および当技術分野で既知の他の方法から決定されるように、1つまたは複数のドメイン配置を含む可能性も含まない可能性もある。
【0073】
本明細書で使用される場合、「組成物(組成)」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに、組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を含む。
【0074】
「含む(comprising)」という用語およびその派生語は、本明細書で同じものが開示されていてもいなくても、任意の追加成分、ステップまたは手順の存在を除外することを意図しない。いかなる疑念も避けるため、「含む(comprising)」という用語の使用を通して本明細書で特許請求されるすべての組成物は、そうでないと明記しない限り、任意の追加添加物、補佐剤(アジュバント)、または化合物(ポリマーでもそれ以外でも)を含むことができる。対照的に、「本質的に〜からなる」という用語は、操作性に重要でないものを除いて、任意の他の成分、ステップまたは手順を任意の後続する列挙の範囲から除外する。「〜からなる」という用語は、具体的に記述または列挙されない任意の成分、ステップまたは手順を除外する。「または(or)」という用語は、そうでないと明記しない限り、個々に、ならびに任意の組み合わせで列挙される部材を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「エチレン系ポリマー」という用語は、重量パーセントで過半数(majority)の重合エチレンモノマー(ポリマー性モノマーの総重量を基準にして)を含むポリマーを指す。
【0076】
「ポリマー」という用語は、同じまたは異なる型のモノマーを重合することにより調製された高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどを含む。「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの型のモノマーまたはコモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。インターポリマーは、これに限定されないが、コポリマー(通常、2つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)、ターポリマー(通常、3つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)、テトラポリマー(通常、4つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されるポリマーを指す)などを含む。典型的なモノマー/コモノマーには、エチレン、ブタン、ヘキサンおよびオクタンが含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「プロピレン系ポリマー」という用語は、重量パーセントで過半数の重合プロピレンモノマー(ポリマー性モノマーの総量を基準にして)を含むポリマーを指し、少なくとも1つの重合したコモノマーを場合により含み得る。
【0078】
試験方法
カルボニル比、ヒドロキシル比および不飽和含有量(ビニル比、ビニリデン比)は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により決定する。低(接触)圧、120〜130℃で1分間および高圧(20000psi)で1分間加熱することにより、10〜20ミルの厚さのフィルムを、2枚のテフロン(登録商標)シート間で加圧する。サンプルを、加圧部から除去し、室温に冷却する。FTIRスペクトルを収集することは、以下の機器およびパラメーターを使用して実施する。
【0079】
分光計:Nicolet6700、ソフトウェア:Omnic 8.1.11、モード:透過、ソース:IR、
【0080】
検出器:DTGS KBr、サンプルスキャン数:64、分解能:4cm−1
【0081】
カルボニル基の相対レベルは、2019cm−1の吸光度(内標準ポリエチレン(PE)濃さ)に対する1722cm−1の吸光度の比で表わされる。ヒドロキシル基の相対レベルは、2019cm−1の吸光度(内標準ポリエチレン(PE)濃さ)に対する1061cm−1の吸光度の比で表わされる。不飽和含有量(トランス−ビニレン、末端ビニルおよびビニリデン基)は、FT−IR分光計内のソフトウェア「OMNIC Peak Resolve」を使用して定量する。
【0082】
密度は、ASTM D 1928に従い決定する。サンプルを、374°F(190℃)および30,000psiで3分間、次いで、70°F(21℃)および30,000psiで1分間加圧する。密度測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、サンプル加圧の1時間以内で行う。
【0083】
「散逸率」は、場に置かれた材料の内部運動に起因する、印加電場の損失エネルギーである。散逸率は、互換スプリットポスト(compatible split post)誘電共振器を備えるAgilent 8753 ES S−パラメーターネットワークアナライザーを使用して、周波数2.47GHzで50ミルのプラーク上で測定する。以下のパラメーターは、プラークの圧縮成形で使用される:
− 低圧(500psi)および120℃で5分間
− 高圧(2500psi)および120℃で5分間
− 室温への水冷
【0084】
メルトインデックス、またはIは、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従い測定し、10分間当りに溶出されるグラムで報告される。I10は、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従い測定し、10分間当りに溶出されるグラムで報告される。
【0085】
溶融強度(センチニュートン、cN)は、Rheotens71、Feeder−HCV Rheographを用いて以下のパラメーターで測定する。
パラメーターHCV:
ダイ:ラウンドキャピラリー(round capillary)
温度:190℃および220℃
ソーク時間:4分間
ピストン速度:0.20mm/秒
パラメーターRheotens:
加速度:6mm/秒
ダイとホイールの間のギャップ:100mm
標準ホイール
【0086】
分子量分布(MWD)および分岐(LCB)− サイズ排除クロマトグラフィー(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー− 三重検出器)は、種々の等級の分子量分布を比較するために使用される。試験条件:
− 1,2−4トリクロロベンゼン(溶媒として)
− 試験温度=140℃
− カラム: G/M/M IBM
− サンプルサイズ=250μL
【0087】
次に、本開示のいくつかの実施形態が以下の実施例に記載される。
【実施例】
【0088】
実施例1
撹拌3ゾーン反応オートクレーブ(AC)反応器、次に単一の反応ゾーン管型反応装置(ST)内で、エチレンは、以下の表2に列挙される定常状態条件下で重合される。すべての場合で、過酸化物は、第一のオートクレーブゾーン、第二のオートクレーブゾーン、および管型反応装置部分に供給される。過酸化物は、制御温度で反応器温度を維持するように供給される。オートクレーブ部分用の滞留時間は、約30秒間であり、管状部分用の滞留時間は、約30秒間である。
【0089】
過酸化物の型:ペルオキシエステルとジアルキルペルオキシドのブレンド。特に、t−ブチルペルオキシアセテート/t−ブチルペルオキシオクトエート/ジ−t−ブチルペルオキシド。
【表2】
【0090】
実施例3と比較サンプル1および2との比較は、散逸成分を再循環流からパージする影響を例示する。実施例3は、比較サンプル1(0.13)に比べ、より大きなパージ率(0.26)を有し、このことにより、より高い散逸率(2.60×10−4)の比較サンプル1に比べ、実施例3は、低い散逸率(1.48×10−4)を有する。比較サンプル2(824)と比べて、実施例3(1990)では、反応温度を下げることにより、過酸化物効率比が増加する。比較サンプル2(2.01×10−4)と比べて、実施例3(1.48×10−4)では、反応温度を下げ、過酸化物効率比を高めることが、散逸率の低下に寄与する。実施例3では、比較サンプル1および比較サンプル2と比べて、パージ比、より低い反応器温度、および過酸化物効率比の増加のすべてが、以下の特性のそれぞれに対し、より低い値を有するHP−LDPEを製造するのに寄与する。
カルボニル比;
ヒドロキシル比;
ビニル;
ビニリデン;および
散逸率。
【0091】
比較サンプル4は、市販のLDPE(密度0.922g/cm)であり、以下の特性:カルボニル比0.06、ヒドロキシル比0.370、ビニリデン0.216、ビニル0.03、および散逸率1.71×10−4ラジアン(2.47GHzで)を有する。実施例3は、本方法で製造され、従来のLDPEより、13%低いカルボニル比(0.05対0.06)、10%低いビニリデン比(0.19対0.216)および13%低い散逸率(1.48対1.71)を有する。
【0092】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されないが、以下の請求項の範囲内にある、実施形態の一部および様々な実施形態の要素の組み合わせを含めた、それらの実施形態の改変形態を含むことが特に意図される。

本発明は、以下の態様を含む。
[1]
ポリエチレン組成物を製造するための方法であって、
高圧重合条件下の重合反応器において、エチレンを溶媒の存在下でフリーラジカル開始剤と接触させて、高圧低密度ポリエチレン(HP−LDPE)および未反応種を含む反応器流出物を形成すること;
前記未反応種を前記HP−LDPEから分離して、再循環流を形成すること;
散逸成分を前記再循環流からパージして、パージされた再循環流を形成すること;
前記パージされた再循環流を前記重合反応器に導入すること;および
2.47GHzで1.48×10−4ラジアン以下の散逸率を有するHP−LDPEを形成すること
を含む、方法。
[2]
前記パージングが、前記再循環流から過酸化物分解生成物を除去することを含む、上記[1]に記載の方法。
[3]
パージ比0.18〜0.6を維持することを含む、上記[1]から[2]のいずれかに記載の方法。
[4]
過酸化物効率比1800〜2400を維持する、上記[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記接触が、飽和炭化水素である連鎖移動剤の存在下で起こる、上記[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
第一の重合反応器にて温度200℃〜360℃で前記接触を実施することを含む、上記[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
第一の重合反応器にて圧力22,000psig〜33,000psigで前記接触を実施することを含む、上記[1]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
カルボニル比0.05以下を有するHP−LDPEを形成することを含む、上記[1]から7のいずれかに記載の方法。
[9]
ヒドロキシル比0.37以下を有するHP−LDPEを形成することを含む、上記[1]から[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
ビニリデン比0.19以下を有するHP−LDPEを形成することを含む、上記[1]から[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
ビニル比0.03以下を有するHP−LDPEを形成することを含む、上記[1]から[10]のいずれかに記載の方法。