(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997268
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ダンパーチューブ強化スリーブ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20160915BHJP
B60G 15/06 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
F16F9/32 J
B60G15/06
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-517150(P2014-517150)
(86)(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公表番号】特表2014-520239(P2014-520239A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2012043508
(87)【国際公開番号】WO2012177849
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年12月23日
(31)【優先権主張番号】13/167,056
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505318721
【氏名又は名称】テネコ オートモティブ オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tenneco Automotive Operating Company Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キール,ダニエル,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シャラー,ベン
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアム,ラクスマン
(72)【発明者】
【氏名】ノーヴァク,ミカル
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−210115(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01180441(EP,A1)
【文献】
特開2004−232696(JP,A)
【文献】
特開2005−180673(JP,A)
【文献】
実開平04−096637(JP,U)
【文献】
特開2002−089606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G1/00−99/00
F16F9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップマウントアセンブリと、
上記トップマウントアセンブリに取り付けられたショックアブソーバーと、
上記ショックアブソーバーに取り付けられたクランプ部材とを有し、
上記ショックアブソーバーは、保存チューブと、上記保存チューブ内に配置された圧力チューブと、上記保存チューブと上記圧力チューブとの間の空間に配置された強化部材と、を有し、
上記強化部材の軸方向の端部と当接して、上記強化部材の上記軸方向の位置を維持する溝が、上記保存チューブの内部に張り出して形成されていることを特徴とするコーナーアセンブリ。
【請求項2】
上記強化部材が、チューブ部品であることを特徴とする請求項1に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項3】
上記チューブ部品が、上記保存チューブの強化部分の内部に配置され、
上記ショックアブソーバーが、上記保存チューブの上記強化部分にて上記クランプ部材に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項4】
上記強化部材が、上記保存チューブの強化部分の内部に配置され、
上記ショックアブソーバーが、上記保存チューブの強化部分にて上記クランプ部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項5】
上記強化部材が、上記保存チューブに直接係合すると共に、上記圧力チューブに直接係合することを特徴とする請求項1に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項6】
上記強化部材が、上記保存チューブと、上記圧力チューブとの間に圧入されていることを特徴とする請求項1に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項7】
上記強化部材が複数のリブを有することを特徴とする請求項1に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項8】
上記強化部材が、金属部品であることを特徴とする請求項1に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項9】
上記強化部材が、プラスチック部品であることを特徴とする請求項1に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項10】
保存チューブと、
上記保存チューブの内部に配置された圧力チューブと、
上記保存チューブの内部に配置されたピストンアセンブリと、
上記ピストンアセンブリに取り付けられたピストンロッドであって、上記保存チューブの一端を通って延びるピストンロッドと、
上記保存チューブの一端に配置された強化部材であって、上記圧力チューブと上記保存チューブとの間の空間に配置された強化部材と、を有し、
上記強化部材の軸方向の端部と当接して、上記強化部材の上記軸方向の位置を維持する溝が、上記保存チューブの内部に張り出して形成されていることを特徴とするコーナーアセンブリ。
【請求項11】
上記ピストンアセンブリが、上記圧力チューブの内部表面にスライドするように係合することを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項12】
上記強化部材が、チューブ部品であることを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項13】
上記保存チューブに取り付けられたクランプ部材をさらに有し、
上記チューブ部品が、上記保存チューブの強化部分の内部に配置され、
上記クランプ部材が、上記保存チューブの上記強化部分にて上記保存チューブに取り付けられていることを特徴とする請求項12に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項14】
上記保存チューブに取り付けられたクランプ部材をさらに有し、
上記強化部材が、上記保存チューブの強化部分の内部に配置され、
上記クランプ部材が、上記保存チューブの上記強化部分にて上記保存チューブに取り付けられていることを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項15】
上記強化部材が、上記保存チューブに直接係合すると共に、上記圧力チューブに直接係合することを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項16】
上記強化部材が、上記保存チューブと上記圧力チューブの間に圧入されていることを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項17】
上記強化部材が複数のリブを有することを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項18】
上記強化部材が、金属部品であることを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【請求項19】
上記強化部材が、プラスチック部品であることを特徴とする請求項10に記載のコーナーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願のクロスリファレンス〕
本願は、米国特許出願第13/167,056号(出願日:2011年6月23日)の優先件を主張する。上記の出願による開示は、その全体が本明細書中にて参照により援用される。
【0002】
〔技術分野〕
本開示は、自動車のサスペンションシステムのためのコーナーアセンブリに関する。より詳しくは、本開示は、コーナーアセンブリの他の部品と接続する領域において強化された外側チューブを含むコーナーアセンブリのためのショックアブソーバーに関する。
【0003】
〔背景技術〕
このセクションは、必ずしも従来技術ではない、本開示に関連する背景情報を提供する。
【0004】
サスペンションシステムのためのコーナーアセンブリは、自動車産業ではよく知られている。サスペンションのためのコーナーアセンブリの最も一般的な形式は、ストラットサスペンションシステムである。ストラットシステムは、ショックアブソーバーである伸縮ストラットの周囲に同心円状に位置するコイルスプリングを含んでいる。ストラットアセンブリの上端は、自動車のホイールアーチの上部の位置にて車体によって形成されたタワーに載置された上部マウントアセンブリを含んでいる。ストラットアセンブリの下端は、ホイールアセンブリのナックルに取り付けられている。典型的には、ナックルは、ショックアブソーバーの外側チューブをクランプするクランプ機構を含んでいる。
【0005】
コイルスプリングはショックアブソーバーの周囲に位置しており、また、ストラットアセンブリのためのトップマウントアセンブリの一部である上部スプリングシートと、ストラットアセンブリのショックアブソーバーに、典型的には溶接で、取り付けられた下部スプリングシートとの間に延びている。ショックアブソーバーの外側チューブは、ブレーキ、加速、及びコーナリングに起因する側面負荷だけでなく、自動車のナックルと接続するためのクランプ負荷要件を満たすように十分強く設計されなければならない。被クランプ領域、及び、外側チューブのナックルの真上の領域が、これらのクランプ負荷要件に耐えるように設計されなければならないのに対し、外側チューブの残りは、被クランプ領域、及び、ナックルの真上の領域程は高くない著しい負荷に耐えるように設計されなければならない。外側チューブの残りの強度要件は、典型的には、被クランプ領域、及び、ナックルの真上の領域の強度要件よりも低い。典型的には、ショックアブソーバーの外側チューブは、一定の壁厚のチューブとして設計される。外側チューブの厚みは、ブレーキ、加速、及びコーナリングに起因する側面負荷だけでなく、クランプ負荷要件を満たすように設計され、また、外側チューブの残りは、被クランプ領域、及びナックルの真上の領域と同じ強度を要しないので、外側チューブの残りにおいては、一定の壁厚のチューブは過剰設計である。この結果、材料の浪費と過剰なコストが生じる。種々の厚みを有する単一片のチューブは、本願に適用可能であるが、種々の厚みを有する単一片のチューブを製造するのは、コストと複雑さにより、受容可能な選択肢とはならない。
【0006】
他のタイプのコーナーアセンブリは、ヨークを有するストラットアセンブリを含んでおり、ショックアブソーバーの外側チューブが、下部制御アーム、ナックルまたは他のコーナーアセンブリ部品に取り付けられたヨークによってクランプされる。他のタイプのコーナーアセンブリは、ヨークを有する二重の制御アームコーナーアセンブリであり、ショックアブソーバーの外側チューブが、下部制御アーム、ナックルまたは他のコーナーアセンブリ部品に取り付けられたヨークによってクランプされる。これらのコーナーアセンブリのそれぞれにおいて、ショックアブソーバーは、自動車のバネ上質量に取り付けられている。これらのコーナーアセンブリは、ストラットアセンブリについて上述したショックアブソーバーの外側チューブのクランプと同一の問題を有している。
【0007】
〔発明の要約〕
このセクションは、本開示の一般的な要約を提供するものであり、その特徴の完全な範囲や全部の総括的な開示ではない。
【0008】
本開示は、その外側チューブの厚みが、外側チューブの低負荷部分の負荷要件を満たすように設計された、一定の壁厚の外側チューブを有するショックアブソーバーに係る。チューブの高負荷部分には、強化部材が設けられている。強化部材は、クランプ負荷要件、及び、自動車の動作中の屈曲負荷要件に耐えるために、被クランプ領域、及び、ナックルの真上の領域を含む高負荷部分において外側チューブの強度を増加させる。このシステムは、外側チューブの、被クランプ部分とクランプされない部分の両方の負荷要件を満たす最適な設計である、低コストで低重量のショックアブソーバーを提供する。
【0009】
さらなる適用範囲は、ここで提供する開示から明らかとなるであろう。このサマリーの開示と具体例は、説明目的のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
ここに示す図面は、選択された実施形態の説明のみに用いられるものであり、実施可能なすべてではなく、本願の開示範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
図1は、本開示に係るショックアブソーバーを用いる自動車を示す図である。
【0012】
図2は、本開示に係るショックアブソーバーを組み込んだコーナーアセンブリの側面図である。
【0013】
図3は、外側チューブの被クランプ部分にて外側チューブの強化部材を組み込んだショックアブソーバーの横断面図である。
【0014】
図4は、
図3に示したショックアブソーバーからのピストンアセンブリの、部分的に断面の、拡大側面図である。
【0015】
図5は、
図3に示したショックアブソーバーからのベースバルブアセンブリの、部分的に断面の、拡大側面図である。
【0016】
図6は、
図3のショックアブソーバーの被クランプ部分の拡大断面図である。
【0017】
図7は、本開示の他の実施形態に係るショックアブソーバーの被クランプ部分の拡大断面図である。
【0018】
図8は、本開示に係るショックアブソーバーを組み込んだ本発明の他の実施形態に係るコーナーアセンブリの側面図である。
【0019】
図9は、本開示の他の実施形態に係るアセンブリであって、保存チューブ、圧力チューブ、及び挿入部材を含むアセンブリの端面図である。
【0020】
図10は、
図9に示したアセンブリの側面透視図である。
【0021】
図11は、
図9に示したアセンブリの透視図である。
【0022】
対応する参照番号は、いくつかの図面を通して対応する部分を示す。
【0023】
〔発明の詳細な実施形態〕
添付の図面を参照して、より十分に実施形態を記述する。
【0024】
図1に、本開示に係るコーナーアセンブリを有するサスペンションシステムを組み込んだ自動車を示し、一般に参照番号10によって表す。自動車10は、リアサスペンション12、フロントサスペンション14および本体16を有する。リアサスペンション12は、自動車のリアホイール18を動作可能に支持するために適応した、横に延びるリア軸アセンブリ(図示せず)を有する。リア軸アセンブリは、一対のコーナーアセンブリ20によって本体16に動作可能に接続されており、コーナーアセンブリ20は、一対のショックアブソーバー22と、一対のヘリカルコイルスプリング24とを有する。同様に、フロントサスペンション14は、自動車のフロントホイール26を動作可能に支持する、横に延びるフロント軸アセンブリ(図示せず)を有する。フロント軸アセンブリは、第2の一対のコーナーアセンブリ28によって本体16に動作可能に接続されており、コーナーアセンブリ28は、一対のショックアブソーバー30と、成形された一対のヘリカルコイルスプリング32とを有する。ショックアブソーバー22・30は、自動車の、スプリングの付いていない部分(すなわち、フロントサスペンション14・リアサスペンション12)と、スプリング付きの部分(すなわち本体16)との相対的な動きを緩和する役目を果たす。自動車10は、フロント軸アセンブリとリア軸アセンブリとを有する乗用車として描いているが、ショックアブソーバー22・30は、独立したフロントサスペンションシステムおよび/または独立したリアサスペンションシステムを組み込んだ自動車のような、他のタイプの自動車および/または他のタイプの適用に用いてもよい。さらに、ここで用いる「ショックアブソーバー」という用語は、一般にはダンパーを意味し、それゆえストラットを有する。また、フロントサスペンション14が一対のストラットすなわちショックアブソーバー30を有するように描いているが、所望であれば、リアサスペンション12が一対のストラットすなわちショックアブソーバー30を有することも、本発明の範囲内である。
【0025】
図2を参照して、自動車10のフロントコーナーアセンブリ28をより詳細に述べる。本体16は、自動車10のシート金属を含んだショックタワー34を規定し、その内部には、ショックアブソーバー30、コイルスプリング32、トップマウントアセンブリ38およびナックル40の形式の伸縮装置を有するストラットアセンブリ36が載置されている。ショックアブソーバー30、コイルスプリング32、およびトップマウントアセンブリ38を含むストラットアセンブリ36は、ショックタワー34を用いて自動車10に取り付けられている。トップマウントアセンブリ38は、トップマウント42、ベアリングアセンブリ44および上部スプリングシート46を有する。トップマウント42は、典型的には型打ちした鋼で形成された、一体的に成形された本体と、剛体の本体部材とを有する。トップマウントアセンブリ38は、ボルト48によってショックタワー34に載置されている。ベアリングアセンブリ44は、トップマウント42の成形された本体の内部に摩擦を有するようにはめ込まれ、トップマウント42に座しており、ベアリングアセンブリ44の片側がトップマウント42とショックタワー34とに相対的に固定されている。ベアリングアセンブリ44の第2の側は、ベアリングアセンブリ44の第1の側、トップマウント42およびショックタワー34に関して自由に回転する。
【0026】
ベアリングアセンブリ44の自由に回転する側は、ベアリングアセンブリ44の外径に対して隙間を有するようにはめ込まれた上部スプリングシート46を支えている。上部スプリングシート46とショックアブソーバー30との間に動揺バンパー50が配置されている。動揺バンパー50は、プラスチック製ダートシールド52によって保護されるエラストマー材料を有する。動揺バンパー50とプラスチック製ダートシールド52とに接続するために、ショックアブソーバー30にバンパーキャップ54が位置している。
【0027】
ショックアブソーバー30には下部スプリングシート56が取り付けられ、上部スプリングシート46と下部スプリングシート56との間には、フロントサスペンション14から本体16を分離するために、コイルスプリング32が配置されている。
図2にはショックアブソーバー30を記載しているが、ショックアブソーバー22も、ショックアブソーバー30についてここで述べた特徴を有していてもよいことが理解されるであろう。
【0028】
自動車10へのストラットアセンブリ36の組み立ての前に、ストラットアセンブリ36の準備組み立てを行う。バンパーキャップ54、動揺バンパー50、およびプラスチック製ダートシールド52が、ショックアブソーバー30に組み立てられる。コイルスプリング32がショックアブソーバー30の上に組み立てられ、下部スプリングシート56の内部に位置付けられる。上部スプリングシート46が、ショックアブソーバー30の上へ組み立てられ、コイルスプリング32に対して正確に位置付けられる。ベアリングアセンブリ44が、上部スプリングシート46の上部に位置付けられ、トップマウント42がベアリングアセンブリ44の上部に位置付けられる。この完全なアセンブリは、コイルスプリング32を圧縮する組み立て装置の内部に位置付けられており、トップマウントアセンブリ38の内部に位置する穴をショックアブソーバー30の端部が通って延びるようになっている。ショックアブソーバー30の端部の上には保持ナット58がネジ切りされて受けられており、ストラットアセンブリ36の組み立て品を固定する。
【0029】
トップマウント42は、自動車の右側と左側とで同一の部品として設計されるが、自動車の右側または左側に設置されたときにショックアブソーバー30およびその関連するブラケットに対して異なった方向を有する。
【0030】
ここで
図3を参照して、ショックアブソーバー30をより詳細に示す。
図3はショックアブソーバー30のみを示しているが、ショックアブソーバー22もまた、ストラットアセンブリの一部であって、ショックアブソーバー30に対する下記の強化部材を有するということが理解されるであろう。ショックアブソーバー30は、圧力チューブ60、ピストンアセンブリ62、ピストンロッド64、保存チューブアセンブリ66、およびベースバルブアセンブリ68を有する。
【0031】
圧力チューブ60は、作業室72を規定する。ピストンアセンブリ62は、圧力チューブ60の内部にスライド可能なように配置され、作業室72を上部作業室74と下部作業室76とに分割する。ピストンアセンブリ62と圧力チューブ60との間にシール78が配置され、必要以上の摩擦力を生むことなく圧力チューブ60に対するピストンアセンブリ62のスライド動作を可能にするとともに、下部作業室76から上部作業室74をシール(密閉)する。ピストンアセンブリ62にはピストンロッド64が取り付けられ、上部作業室74を通って延び、また、圧力チューブ60の上端を閉じる上部端部キャップ80を通って延びる。シールシステムが、上部端部キャップ80、保存チューブアセンブリ66、およびピストンロッド64の間の接続をシールする。ピストンアセンブリ62とは反対側のピストンロッド64の端部は、上述の通り、トップマウントアセンブリ38と、自動車10のスプリング付きの部分とに、固定されるように、適応している。圧力チューブ60の内部でピストンアセンブリ62が動いているときに、上部作業室74と下部作業室76との間の流体の動きを、ピストンアセンブリ62の内部のバルブが制御する。ピストンロッド64は上部作業室74だけを通って延び、下部作業室76は通らないので、圧力チューブ60に対するピストンアセンブリ62の動きによって、上部作業室74に移動した流体の量と、下部作業室76に移動した流体の量とに差が生じる。移動した流体の量の差は、「ロッドボリューム」として知られ、ベースバルブアセンブリ68を通って流れる。
【0032】
保存チューブアセンブリ66は、圧力チューブ60を囲んでおり、圧力チューブ60と保存チューブアセンブリ66との間に位置する流体保存室82を規定する。保存チューブアセンブリ66の底端は、端部キャップ84によって閉じられている。端部キャップ84は別々の部品として描いているが、保存チューブアセンブリ66と一体的な端部キャップ84を有することは、本開示の範囲内である。保存チューブアセンブリ66の上端は、上部端部キャップ80に取り付けられている。保存チューブアセンブリ66の下端は、ナックル40と接続する強化部分86を規定する。保存チューブアセンブリ66の残りの長さは、強化されない部分88を規定する。ベースバルブアセンブリ68は、下部作業室76と保存室82との間に配置され、下部作業室76と保存室82との間の流体の流れを制御する。ショックアブソーバー30が長さ方向に延びると、「ロッドボリューム」の概念に起因して、下部作業室76に追加の流体ボリュームが必要になる。それゆえ、流体は、下記のように、ベースバルブアセンブリ68を通って保存室82から下部作業室76へ流れる。ショックアブソーバー30が長さ方向に圧縮すると、「ロッドボリューム」の概念に起因して、過剰な流体が、下部作業室76から除去されなければならない。それゆえ、流体は、下記のように、ベースバルブアセンブリ68を通って下部作業室76から保存室82へ流れる。
【0033】
ここで
図4を参照して、ピストンアセンブリ62は、ピストン本体90、圧縮バルブアセンブリ92、およびリバウンドバルブアセンブリ94を有する。圧縮バルブアセンブリ92はピストンロッド64上で肩96と接触して組み立てられている。ピストン本体90は圧縮バルブアセンブリ92と接触して組み立てられ、リバウンドバルブアセンブリ94はピストン本体90と接触して組み立てられている。ナット98がこれらの部品をピストンロッド64に固定している。
【0034】
ピストン本体90は、複数の圧縮経路100と、複数のリバウンド経路102とを規定する。シール78は、複数の環状溝106と対になる複数のリブ104を有しており、ピストンアセンブリ62が圧力チューブ60においてスライドするときにピストン本体90に対するシール78のスライド動作を制限するようになっている。
【0035】
圧縮バルブアセンブリ92は、保持部108、バルブディスク110、およびスプリング112を有する。保持部108は、一端では肩96と隣接し、他端ではピストン本体90と隣接している。バルブディスク110は、ピストン本体90と隣接しており、圧縮経路100を閉じる一方、リバウンド経路102を開いたままにしている。スプリング112は、保持部108とバルブディスク110との間に配置されており、バルブディスク110がピストン本体90に対してバイアスをかけている。圧縮ストローク中に、下部作業室76の流体が加圧されることによって、流体の圧力がバルブディスク110に反発する。バルブディスク110に対する流体の圧力がスプリング112のバイアス負荷を超えると、バルブディスク110はピストン本体90から離れ、圧縮経路100を開け、下部作業室76から上部作業室74へ流体が流れるのを許可する。ショックアブソーバー30の圧縮ストローク中のショックアブソーバー30の減衰特性は、下記の通り、「ロッドボリューム」の概念に起因して下部作業室76から保存室82への流体の流れを調整する圧縮バルブアセンブリ92および/またはベースバルブアセンブリ68によって制御可能である。リバウンドストローク中には、圧縮経路100はバルブディスク110によって閉じられる。
【0036】
リバウンドバルブアセンブリ94は、スペーサ114、複数のバルブディスク116、保持部118、およびスプリング120を有する。スペーサ114は、ピストンロッド64上にネジ切りされて受けられており、ピストン本体90とナット98との間に配置されている。スペーサ114は、ピストン本体90と圧縮バルブアセンブリ92とを保持する一方、バルブディスク110やバルブディスク116を圧縮することなくナット98の締め付けを許可する。保持部108、ピストン本体90、およびスペーサ114は、肩96とナット98との間の連続的な固体の堅い接続を提供し、スペーサ114に対する、またそれゆえピストンロッド64に対する、ナット98の締め付けと固定とを促進する。バルブディスク116は、スライドするようにスペーサ114上に受けられており、ピストン本体90と隣接し、リバウンド経路102を閉じる一方、圧縮経路100を開いたままにしている。保持部118もまた、スライドするようにスペーサ114上に受けられており、バルブディスク116と隣接している。スプリング120は、スペーサ114の上に組み立てられており、保持部118と、スペーサ114上でネジ切りされて受けられているナット98との間に、配置されている。スプリング120は、バルブディスク116に対して保持部118に、また、ピストン本体90に対してバルブディスク116に、バイアスをかけている。バルブディスク116は、リバウンドバルブアセンブリ94を迂回する限られた量の抜き取り用の流れを許可する少なくとも一つのスロット122を有する。バルブディスク116に流体の圧力が印加されると、バルブディスク116は、外側の周囲端にて弾力的に歪み、リバウンドバルブアセンブリ94を開く。ナット98とスプリング120との間にはシム(shim)124が位置し、スプリング120に対する先行荷重(preload)を制御し、またそれゆえ下記の通り吹き飛ばし(blow off)圧力を制御する。それゆえ、リバウンドバルブアセンブリ94の吹き飛ばし特性の校正は、圧縮バルブアセンブリ92の校正とは別である。
【0037】
リバウンドストローク中には、上部作業室74の流体が加圧されることによって、流体の圧力がバルブディスク116に反発する。バルブディスク116に反発する流体の圧力がバルブディスク116の屈曲負荷を超えると、バルブディスク116は弾力的に歪み、リバウンド経路102を開き、上部作業室74から下部作業室76へ流体が流れるのを許可する。バルブディスク116の強度、およびリバウンド経路102のサイズが、リバウンドにおけるショックアブソーバー30の減衰特性を決定する。バルブディスク116が歪む前に、低速度に調整できるようにするために、上部作業室74から下部作業室76へ、スロット122を通して、制御された量の流体が流れる。上部作業室74の内部の流体の圧力があらかじめ決定されたレベルに達すると、流体の圧力がスプリング120のバイアス負荷を超え、それによって保持部118と複数のバルブディスク116とが軸方向に移動する。保持部118とバルブディスク116とが軸方向に移動することによって、リバウンド経路102が完全に開き、その結果、著しい量の減衰流体が通過することで、ショックアブソーバー30および/または自動車10へのダメージを防ぐのに必要な流体の圧力の吹き飛ばしを生成することが許可される。「ロッドボリューム」の概念に起因して下部作業室76への追加が必要な追加の流体は、ベースバルブアセンブリ68を通って流れる。
【0038】
図5を参照して、ベースバルブアセンブリ68は、バルブ本体142、圧縮バルブアセンブリ144およびリバウンドバルブアセンブリ146を有する。圧縮バルブアセンブリ144およびリバウンドバルブアセンブリ146は、ボルト148とナット150とを用いてバルブ本体142に取り付けられている。ナット150の引き締めにより、圧縮バルブアセンブリ144に、バルブ本体142の方へバイアスをかける。バルブ本体142は、複数の圧縮経路152および複数のリバウンド経路154を規定する。
【0039】
圧縮バルブアセンブリ144は、ボルト148とナット150とによってバルブ本体142に対してバイアスをかけられる複数のバルブディスク156を有する。圧縮ストローク中に、下部作業室76の流体が加圧され、圧縮経路152の内部の流体の圧力が、バルブディスク156を歪めることによって、ついには圧縮バルブアセンブリ144を開ける。ピストンアセンブリ62の圧縮バルブアセンブリ92は、下部作業室76から上部作業室74へ流体が流れるのを許可し、「ロッドボリューム」だけが、圧縮バルブアセンブリ144を通って流れる。ショックアブソーバー30の減衰特性は、ベースバルブアセンブリ68の圧縮バルブアセンブリ144の設計によって決定されるが、圧縮バルブアセンブリ92によっても決定することができる。
【0040】
リバウンドバルブアセンブリ146は、バルブディスク158とバルブスプリング160とを有する。バルブディスク158は、バルブ本体142と隣接し、リバウンド経路154を閉じる。バルブスプリング160は、ナット150とバルブディスク158との間に配置され、バルブ本体142に対してバルブディスク158にバイアスをかける。リバウンドストローク中には、下部作業室76中の流体の圧力が減少し、その結果、保存室82の流体の圧力が、バルブディスク158に反発する。バルブディスク158に対する流体の圧力がバルブスプリング160のバイアス負荷を超えると、バルブディスク158がバルブ本体142から離れ、リバウンド経路154を開け、保存室82から下部作業室76への流体の流れを許可する。リバウンドストロークの減衰特性は、上記のようにリバウンドバルブアセンブリ94によって制御でき、また、リバウンドバルブアセンブリ146によっても制御できる。
【0041】
図6を参照して、保存チューブアセンブリ66について詳細に述べる。保存チューブアセンブリ66は、保存チューブ170および、内部チューブの形をした強化部材172を有する。好ましくは、強化部材172は、鋼鉄チューブであるが、必要な強度を提供することができる任意の材料を用いることができる。保存チューブアセンブリ66は、端部キャップ84から上部端部キャップ80まで延び、保存室82を規定する。強化部材172は、保存室82の内部に配置されている。強化部材172は、保存チューブ170の端部から間隔を空けた位置から、ストラットアセンブリ36の一部であるナックル40(
図2)のクランプ部分の上の位置にまで延びる。強化部材172が保存チューブ170における下部側の強化部分86の強度を増加させることによって、それが、ナックル40のようなクランプ部材からのクランプ負荷、および自動車のブレーキ、加速、及びコーナリングにより生じる屈曲負荷を受容できる。保存チューブ170における下部側の強化部分86の強化によって、保存チューブ170’の強化されない部分88だけでなく、保存チューブ170における上部側の強化されない部分88についても、より薄いチューブとして設計することができるが、これは、強化されない部分88におけるショックアブソーバー30の全体の負荷要件が、強化部分86におけるショックアブソーバー30の全体の負荷要件よりも低いからである。強化部材172の軸方向の長さと厚みとは、ショックアブソーバー30が耐えることを要求されるクランプ負荷と屈曲負荷との両方によって決定される。
【0042】
強化部材172は保存チューブ170の内部表面にあるように描いているが、
図7に示すように、強化部材172を、外部表面に、すなわち保存チューブ170を覆うように位置付けることも、本発明の範囲内である。また、強化部材172は二重のチューブショックアブソーバーと結合するように描いているが、単一のチューブショックアブソーバーと共に強化部材172’であって、単一のチューブショックアブソーバーの圧力チューブ170’の強化部分の強度を増加させるような強化部材172’を用いることも、本発明の範囲内である。単一のチューブショックアブソーバーと共に用いるときには、ピストンが圧力チューブの強化部分の中へ入ることができるようにするために、強化部材172’は圧力チューブの外側に設置することが好ましい。それゆえ、
図6および
図7は、圧力チューブ170’および強化部材172’も示している。
【0043】
ここで
図8を参照して、本開示に係るコーナーアセンブリ220を示す。コーナーアセンブリ220は、コーナーアセンブリ20および28のどちらかまたは両方に取って代わることができる。コーナーアセンブリ220は、下部制御アームアセンブリ222、上部制御アームアセンブリ224、ナックルアセンブリ226およびショックアブソーバーアセンブリ228を有する。
【0044】
下部制御アームアセンブリ222は、一方の端部において自動車10のスプリング付きの部分に取り付けられ、反対の端部においてショックアブソーバーアセンブリ228およびナックルアセンブリ226に取り付けられている。上部制御アームアセンブリ224は、一方の端部において自動車10のスプリング付きの部分に取り付けられ、反対の端部においてナックルアセンブリ226に取り付けられている。ショックアブソーバーアセンブリ228は、一方の端部において下部制御アームアセンブリ222およびナックルアセンブリ226に接続され、その反対の端部は、自動車10のスプリング付きの部分によって規定されるトップマウントアセンブリ230に取り付けられている。
【0045】
ショックアブソーバーアセンブリ228は、ヨーク232、ショックアブソーバー30およびコイルスプリング32を有する。ショックアブソーバー30は、ヨーク232の内部に配置され、ヨーク232によってクランプされている。ショックアブソーバー30には下部スプリングシート56が取り付けられ、コイルスプリング32はトップマウントアセンブリ230と下部スプリングシート56との間に配置され、本体16をフロントサスペンション14から分離している。ショックアブソーバー30についてはこれまでに詳細に述べたので、ここでは述べない。
【0046】
保存チューブアセンブリ66の強化部材172は、保存チューブアセンブリ66の保存チューブ170の端部から間隔を空けた位置から、ヨーク232のクランプ部分の上の位置にまで延びる。強化部材172が保存チューブ170における下部側の強化部分86の強度を増加させることによって、それが、ヨーク232のようなクランプ部材からのクランプ負荷やコーナーアセンブリ220の動きにより生じる屈曲負荷を受容できる。保存チューブ170における下部側の強化部分86の強化によって、保存チューブ170における上部側の強化されない部分88について、より薄いチューブとして設計することができるが、これは、強化部分86におけるショックアブソーバー30の全体の負荷要件が、強化されない部分88におけるショックアブソーバー30の負荷要件よりも低いからである。強化部材172の長さと厚みは、ショックアブソーバー30が耐えることを要求されるクランプ負荷と屈曲負荷との両方によって決定される。
【0047】
ここで、
図9から11を参照して、圧力チューブ60、保存チューブ170、および強化部材372を示す。保存チューブ170および強化部材372は、ショックアブソーバー30における、上記のような保存チューブ170および強化部材172を含む保存チューブアセンブリ66の代替品である。
【0048】
強化部材372は、環状かつ円筒状のチューブ部材であり、外側チューブ374、内側チューブ376、及び外側チューブ374と内側チューブ376との間に延びる複数のリブ378を有している。複数のリブ378は、強化部材372の軸方向の距離全体に亘って延伸している。
【0049】
強化部材372は、金属部品であり、または、強化部材372は、保存室82の内部にて圧力チューブ60と、保存チューブ170との間に配置されたプラスチック部品であってもよい。保存チューブ170の内部に形成された一対の溝380は、強化部材372の軸方向の位置を維持する。強化部材372の外側チューブ374は、保存チューブ170の内部表面に直接係合しており、強化部材372の内側チューブ376は、圧力チューブ60に直接係合している。複数のリブ378は、外側チューブ374と、内側チューブ376との間の半径方向の間隔を維持する。強化部材372の軸方向の位置を維持するための第2の解決方法は、強化部材372と、保存チューブ170および/または圧力チューブ60との間を圧入関係とすることである。これにより溝380を除去することができる。
【0050】
強化部材372は、自動車の動作中に最も高い応力を受ける保存チューブ170の領域に一致し、そして当該領域を強化するために、保存室82の内部において軸方向に位置している。強化部材172が保存チューブ170における下部側の強化部分86の強度を増加させることによって、それが、ナックル40のようなクランプ部材からのクランプ負荷、およびショックアブソーバー30の動きにより生じる任意の屈曲負荷を受容できる。保存チューブ170における下部側の強化部分86の強化によって、保存チューブ170における下部側の強化部分86だけでなく、保存チューブ170における上部側の強化されない部分88について、より薄いチューブとして設計することができる。これは、強化されない部分88におけるショックアブソーバー30の全体の負荷要件が、強化部分86におけるショックアブソーバー30の全体の負荷要件よりも低いからである。複数のリブ378の数だけでなく、外側チューブ374、内側チューブ376、及び複数のリブ378の軸方向の長さと厚みは、ショックアブソーバー30が耐えることを要求されるクランプ負荷と屈曲負荷との両方によって決定される。
【0051】
実施形態の前述の記載は、図解と説明の目的で提供された。本発明を網羅することや本発明を限定することは意図されない。特定の実施形態の個々の要素や特徴は、一般に、特定の実施形態には限定されず、適用可能であれば、特にそのように示したり記述したりしていなくても、交換可能であり、選択された実施形態で用いることができる。同じものを、多くの方法を用いて変形させてもよい。このような変形は、本発明から逸脱するものとはみなされず、このようなすべての変形が、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本開示に係るショックアブソーバーを用いる自動車を示す図である。
【
図2】本開示に係るショックアブソーバーを組み込んだコーナーアセンブリの側面図である。
【
図3】外側チューブの被クランプ部分にて外側チューブの強化部材を組み込んだショックアブソーバーの横断面図である。
【
図4】
図3に示したショックアブソーバーからのピストンアセンブリの、部分的に断面の、拡大側面図である。
【
図5】
図3に示したショックアブソーバーからのベースバルブアセンブリの、部分的に断面の、拡大側面図である。
【
図6】
図3のショックアブソーバーの被クランプ部分の拡大断面図である。
【
図7】本開示の他の実施形態に係るショックアブソーバーの被クランプ部分の拡大断面図である。
【
図8】本開示に係るショックアブソーバーを組み込んだ本発明の他の実施形態に係るコーナーアセンブリの側面図である。
【
図9】本開示の他の実施形態に係るアセンブリであって、保存チューブ、圧力チューブ、及び挿入部材を含むアセンブリの端面図である。
【
図10】
図9に示したアセンブリの側面透視図である。