特許第5997272号(P5997272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997272
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】関節眼科手術プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20160915BHJP
   A61B 18/24 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   A61F9/007 130E
   A61B18/24
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-524048(P2014-524048)
(86)(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公表番号】特表2014-527430(P2014-527430A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】US2012049160
(87)【国際公開番号】WO2013019859
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/514,751
(32)【優先日】2011年8月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シャオユー ユー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マッカラム
(72)【発明者】
【氏名】ジャック オールド
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0181138(US,A1)
【文献】 米国特許第04911148(US,A)
【文献】 特公昭62−007848(JP,B1)
【文献】 特開2007−000427(JP,A)
【文献】 米国特許第06019780(US,A)
【文献】 特開平09−024019(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/166422(US,A1)
【文献】 特許第5160549(JP,B2)
【文献】 米国特許第4986257(US,A)
【文献】 特開平03−060623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 18/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片手に収まる大きさのハンドルと、
前記ハンドルから延在し且つ20Ga未満の直径を有する単一の剛性カニューレであって、通常の手術の使用中において前記剛性カニューレの長手方向の軸線に関して曲がるのを実質的に防止するのに十分な剛性を有する剛性カニューレと、
その全長に沿って一様に離間している複数のスロットを備えたスロット付き先端であって、前記剛性カニューレの最遠位端部から関節光学手術プローブの最遠位端部へ延在しているスロット付き先端と、
前記ハンドル、単一の剛性カニューレ、及びスロット付き先端を通って前記スロット付き先端の遠位端部へ延在する少なくとも一つの光ファイバと、
前記スロット付き先端を通って前記スロット付き先端の遠位端部と前記少なくとも一つの光ファイバの遠位端部へ延在している引張ワイヤであって、
前記引張ワイヤは、前記ハンドル内の第1固定ピンの上に通されて前記ハンドル内の第2固定ピンに繋止されており、
前記第1固定ピンと前記第2固定ピンの間で前記引張ワイヤに沿って位置するスライドピンの遠位方向への移動が、前記引張ワイヤにおける張力を増大し、前記引張ワイヤの増大した張力により、前記スロット付き先端を真っ直ぐな位置から湾曲位置に逸らせるように、前記引張ワイヤが前記スライドピンの上に通され、
前記スロット付き先端は、該引張ワイヤによって及ぼされる張力が解放されると前記真っ直ぐな位置に戻る弾性材料から形成される、引張ワイヤとを具備する、関節光学手術プローブ。
【請求項2】
前記スライドピンに結合された前記ハンドル上に制御ボタンを更に具備し、前記スライドピンの遠位方向への移動が前記制御ボタンをスライドさせることによって制御される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記ハンドル内に位置する前記スライドピンのためのガイドトラックを更に具備し、該ガイドトラックが前記スライドピンの前進を方向付ける、請求項に記載のプローブ。
【請求項4】
前記ガイドトラックは、前記引張ワイヤの張力が、前記スライドピンが該ガイドトラックに沿って前進せしめられるにつれて、一様に増大するように、前記スライドピンによって前記引張ワイヤの巻き取りの比率を制御するように湾曲している、請求項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記ガイドトラックは、前記引張ワイヤの張力の増大の比率が、前記スライドピンが前記ガイドトラックの最初の斜面を通って前進せしめられるときに最も高くなり、前記スライドピンが前記ガイドトラックの最初の斜面を通過した後に減少するように、近位端部に最初の斜面を有して湾曲している、請求項に記載のプローブ。
【請求項6】
前記引張ワイヤが光ファイバである、請求項1に記載のプローブ。
【請求項7】
前記スロット付き先端は、該スロット付き先端の半径を越えて延在する深いスロットを該スロット付き先端が逸れる側に具備し、且つ、該スロット付き先端の半径よりも短く延在する浅いスロットを該スロット付き先端が逸れる側の反対側に具備する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項8】
前記深いスロットの深さが増大するにつれて前記深いスロットがより拡がっている、請求項に記載のプローブ。
【請求項9】
前記深いスロットが、前記スロット付き先端に沿って長手方向に延在する細長区域を含む、請求項に記載のプローブ。
【請求項10】
前記深いスロットが湾曲している、請求項に記載のプローブ。
【請求項11】
前記スロット付き先端がニチノールから形成される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項12】
前記単一の剛性カニューレがステンレス鋼から形成される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項13】
前記単一の剛性カニューレが強化材料で被覆される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項14】
前記スロット付き先端が、柔らかいポリマーシースで被覆される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項15】
前記少なくとも一つの光ファイバが二つの光ファイバを含む、請求項1に記載のプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年8月3日に出願された米国仮特許出願第61/514751号の優先権を主張し、この出願の内容は参照によって本明細書の一部を構成する。
【0002】
本発明は、眼科手術機器に関し、特に後部眼科手術プローブに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的には、顕微手術器具は、人体内の脆弱且つ制限された空間から組織を除去するために、特に眼の手術において、より具体的には硝子体、血、瘢痕組織又は水晶体を除去するための処置において、外科医によって使用される。斯かる器具は制御コンソール及び手術ハンドピースを含み、外科医は手術ハンドピースで組織を切り裂いて除去する。後部手術に関して、ハンドピースは、組織を切断し又は破砕するための硝子体カッタープローブ、レーザプローブ又は超音波破砕器であり、長い空気圧ライン及び/又は電力ケーブル、光ケーブル、又は手術部位に注入流体を供給し且つ流体及び切断/破砕された組織を手術部位から引き出し又は吸引するための可撓チューブによって制御コンソールに接続される。ハンドピースの切断機能、注入機能及び吸引機能は遠隔の制御コンソールによって制御され、遠隔の制御コンソールは、手術ハンドピース(例えば往復運動若しくは回転する切断プローブ又は超音波振動されるニードル)に電力を供給するだけでなく、注入流体の流れを制御し、流体及び切断/破砕された組織の吸引のために(大気に対する)真空の源も提供する。コンソールの機能は、手術医によって手動で、通常は足で操作するスイッチ又は比例制御によって制御される。
【0004】
後部手術の間、手術医は典型的には、処置の間、いくつかのハンドピース又は器具を使用する。この処置は、これら器具が切開創内に挿入され且つ切開創から除去されることを必要とする。この繰り返される除去及び挿入は、切開部位において眼に外傷をもたらしうる。この懸念事項に対処すべく、ハブ付きカニューレが少なくとも1980年代半ばまでに開発された。これら装置は、付属のハブを有する細いチューブから成る。このチューブは眼内の切開創内に最大でハブまで挿入され、ハブは、ストッパーとして作用し、チューブが眼に完全に入ることを防止する。手術器具はチューブを通って眼内に挿入されることができ、チューブは、器具によって繰り返される接触から切開創の側壁を保護する。加えて、手術医は、器具がチューブを通して眼内に挿入されると、器具を使用して、手術中に眼を位置付けることを補助すべく器具を操作することができる。
【0005】
多くの手術処置が網膜の側部又は前方部分へのアクセスを必要とする。これら範囲に到達すべく、手術プローブは予め曲げられ又は手術中に屈曲可能でなければならない。レーザ及び/又は照明光を提供するための様々な関節光学手術プローブ(articulating optical surgical probe)が公知である。例えば、米国特許第5281214号明細書(Wilkins等)及び米国特許第6984130号明細書(Scheller等)を参照されたい。しかしながら、関節機構によって余分な複雑性及び費用が追加される。関節機構を必要としない一つの可撓レーザプローブが市販されているが、この装置は、遠位先端を含む可撓チューブに覆われた比較的大きな直径の光ファイバを使用するので、顕著な曲げ剛性と共に大きな曲げ半径及び遠位先端の大きな直径がもたらされる。これら特徴は、曲げ部分の挿入を容易にするために、曲げられていない真っ直ぐな部分を遠位先端が含むことを必要とし、真っ直ぐな部分は、ハブ付きカニューレを通るとき、弾力的に真っ直ぐにされなければならない。遠位先端の真っ直ぐな部分によって、ハンドピースの遠位カニューレがハブ付きカニューレに入る前に、曲げられた部分がハブ付きカニューレを弾力的に通過することが可能となるので、可撓部分の曲げクリアランスが最大にされ、このことによって、曲げ歪み及び対応する挿入摩擦力が最小となる。斯かる大きな曲げ半径、大径の可撓チューブ及び真っ直ぐな遠位先端によって、ファイバの使用部分がプローブの遠位先端から比較的長い距離延在してプローブのアクセスを制限するようになる。
【0006】
公知技術における更なる欠点は遠位カニューレの可撓性であり、遠位カニューレの可撓性は材料特性及び断面二次モーメントと相関し、断面二次モーメントは、ハブ付きカニューレ内に収まるためのカニューレの外形のゲージサイズと、可撓チューブを受容するためのカニューレの内径とによって決定されうる。与えられた任意の材料について、カニューレの外径及び内径がカニューレの可撓性を決定する。この可撓性は、外科医が手術中に眼の位置を操作すべく器具を使用する能力を制限する。
【0007】
可撓チッププローブが米国特許出願公開第2009/0093800号明細書(Auld等)において開示され、このプローブは、可撓チューブの真っ直ぐな部分を必要とすることなく、ひいてはより小さい使用可能なチップ長を提供し、このことによって、挿入力を低下させることなく眼の内部の後部構造へより広くアクセスできるようになる。可撓チッププローブは、手術中の眼の位置の操作を容易にすべく、遠位カニューレの増大した剛性を提供する。このプローブは、Scheller等によって開示されたプローブのような前述のプローブと比較して、比較的小さな断面を提供するが、前述のプローブが使用される態様において、様々な角度の範囲に亘って制御可能な関節を提供しない。
【発明の概要】
【0008】
関節光学手術プローブが、片手に収まる大きさのハンドルと、ハンドルから延在し且つ20Ga未満の直径を有する単一の剛性カニューレとを含む。プローブは、さらに、カニューレの遠位端部に位置するスロット付き先端(slotted tip)と、ハンドル、単一の剛性カニューレ、及びスロット付き先端を通って延在する少なくとも一つの光ファイバと、スロット付き先端に繋止された引張ワイヤとを含む。引張ワイヤがスロット付き先端に張力を及ぼすと、スロット付き先端は、真っ直ぐから、引張ワイヤの張力によって制御される曲げ角度に逸れる。スロット付き先端は、引張ワイヤによって及ぼされる張力が解放されると真っ直ぐな位置に戻る弾性材料から形成される。
【0009】
本発明の他の目的、特徴及び利点が図面と図面及び請求項の以下の説明とを参照すると明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の特定の実施形態に係る関節光学手術エンドプローブの概略図である。
図2図2は、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端20の例の端面図を示す。
図3A図3Aは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図3B図3Bは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図3C図3Cは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図3D図3Dは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図3E図3Eは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図3F図3Fは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図3G図3Gは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図3H図3Hは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端についてのスロット設計を示す。
図4A図4Aは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4B図4Bは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4C図4Cは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4D図4Dは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4E図4Eは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4F図4Fは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4G図4Gは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4H図4Hは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4I図4Iは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4J図4Jは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
図4K図4Kは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の様々な実施形態によって、前述の関節光学手術プローブに関連する困難を回避することができる。特に、本発明の所定の実施形態では、小さな直径を有する単一の剛性カニューレが提供され、小さな直径によって、非常に小さな切開創内への挿入が可能となるだけでなく、様々な角度に亘って制御される態様で関節移動すること可能となる。このため、本発明の斯かる実施形態では、比較的高剛性の関節光学手術プローブの利点が、より大きな直径を必要とする二つのカニューレプローブの制御可能な関節に組み合わされる。
【0012】
本発明の特定の実施形態は、引張ワイヤに繋止された弾性材料のスロット付き先端を有する単一の剛性カニューレを含む。引用ワイヤの張力によって、スロット付き先端が特定の方向に曲がるようになり、一方、張力の解放によって弾性の先端がその真っ直ぐな位置に戻ることができる。引張ワイヤの技術は、手術カテーテルの遠位端部を逸らすのに以前から使用されてきたが、ハンドヘルドの光学手術プローブにおいて使用される小径の剛性カニューレでは使用されず、眼の内部に発見された比較的小さな空間において使用される所定の角度方向の動作と共には使用されてこなかった。結果的に、ハンドヘルドの手術プローブとの関連における引張ワイヤの張力の適用は独創的であり且つ利点を有する。本発明の特定の実施形態では、エンドプローブ10において使用される一つ以上の光ファイバが引張ワイヤとして使用されてもよい。
【0013】
図1は、本発明の特定の実施形態に係る関節光学手術エンドプローブ10の概略図であり、関節光学手術エンドプローブ10は、片手で保持されるのに適したハンドル12と、カニューレ14とを有する。(説明を容易にするために、ハンドル12及びカニューレ14では、図示されない内部の引張ワイヤのための制御機構のようなハンドル12の所定の外的特徴の寸法が正しく示されてはいない。)エンドプローブ10の近位端部は一つ以上の光源(図示せず)に接続され、一つ以上の光源は、エンドプローブ10の内部を通って延びる少なくとも一つの光ファイバに接続されることによってレーザ及び/又は照明光を提供する。
【0014】
カニューレ14はステンレス鋼のような高剛性の生体適合性材料から形成される。本発明の様々な実施形態に係るエンドプローブは「単一」の剛性カニューレを使用し、「単一の」は、単一のカニューレの内部又は外部に別個に形成され且つ/又は単一のカニューレに対して独立して動作可能である比較的高剛性の他の自立型カニューレが存在しないという事実を意味する。しかしながら、用語「単一の」は、単一のカニューレを形成するのに複数の層又は被覆剤を使用することを排除することを意図してなく、カニューレの形状に適合する柔らかいポリマースリーブ又はポリマーシースの使用も排除していない。カニューレ14は、(使用中に外科医から最も遠い端部を意味する)遠位端部において、スロット付き先端20を有する。スロット付き先端20は、スロット付き先端20内に繋止された引張ワイヤ(図1には図示せず)に張力を印加することによって、制御可能な態様で選択された方向に関節移動することができる。
【0015】
スロット付き先端20は弾性材料から形成され、弾性材料とは、引張ワイヤからの張力が除去された後に真っ直ぐな向きに戻ることができる材料を意味する。スロット付き材料についての弾性材料は例えばニチノールであり、ニチノールは、切開創のハブを通って挿入するために十分な剛性と、関節移動後に元に戻るために十分な弾性との両方を有することができる。バネ鋼のような他の金属、又は当該技術分野において公知の同様の特性を有する他の材料を使用してもよい。スロット付き先端のスロットの特定の形態に応じて、降伏点を越えて材料を永久的に変形させるような大きな力を印加することなしでは顕著な弾性を有しない比較的高剛性の材料、例えばステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト−クロム合金又はこれらの均等物を使用することも可能である。弾性材料は、それら自体生体適合性であってもよく、又は組織との接触を防止すべくポリマーシースのような別の材料に包囲されてもよい。カニューレ14及びスロット付き先端20を、必須ではないが、同一の材料から形成することができる。カニューレ14及び/又はスロット付き先端20は、切開創のハブ内への挿入のための増大した強度を提供して破損の可能性を低減すべく、合成ダイヤモンド又は金属メッキ(例えばクロム)のような強化材料で被覆されてもよい。
【0016】
図2は、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端20の例の端面図を示す。図2に描かれた実施形態では、引張ワイヤ22が、スロット付き先端20の上側として示された部分に繋止される。スロット付き先端20は二つの光ファイバ24、26、すなわち183μmの直径を有する照明ファイバ24と、108μmの直径を有するレーザファイバ26とを包囲する。スロット付き先端20の幅を考慮すると、このことによって、カニューレ14の直径が二つのカニューレシステムよりも小さく作られることが可能となる。
【0017】
図3A図3Hは、本発明の特定の実施形態に係るスロット付き先端20についての様々なスロット設計を示す(それぞれ「20A」、「20B」等として符号が付けられ、集合的に「スロット付き先端20」と称される)。図3Aでは、スロット付き先端20Aの半径よりも深いスロットがスロット付き先端20Aの側部に切り込まれ、スロット付き先端20Aはスロット付き先端20Aの側部に向かって曲げられる。浅いスロットが反対側にも切り込まれ、その側部も同様に曲がるようになる。図3B及び図3Cは真っ直ぐな「鍵穴」スロット及び曲げられた「鍵穴」スロットを示し、真っ直ぐな「鍵穴」スロット及び曲げられた「鍵穴」スロットは、スロットがそれぞれのスロット付き先端20B及び20C内により深く延在するにつれて、より広い基部を有する。より広い基部は、スロット付き先端20B又は20Cをその湾曲位置に逸らすのに必要とされる力の量を減少させ、エンドプローブ10をより快適に使用することを可能とする。
【0018】
図3D〜3Gは、スロット付き先端20が、湾曲位置に逸らされた後に真っ直ぐな位置に弾性的に戻ることを可能とすべく、より高剛性のチップ材料が使用されうるスロット設計を示す。図3Dでは、カニューレ14の長さに沿って概して細長であるスロットが、浅い後部スロットに対向して設けられ、これは、スロット付き先端20Dを湾曲位置に逸らすのに必要とされる力を減少させる傾向がある。図3Eでは、スロット付き先端20Eが曲がることを可能とする連続的な螺旋状の切込みに後部スロット(この場合、鍵穴スロット)が散在しており、このことによって、スロット付き先端20Eは後部スロットの方向に曲がるようになる。図3Fは、螺旋経路が一方の側でスロット付き先端20Fの長手方向の軸線に垂直である螺旋状の切込みパターンを示し、このパターンによって、スロット付き先端20Fは、螺旋経路が垂直である側に向かって優先的に逸れるようになる。図3Gは、一方の側で選択的に拡げられた切込みを有する螺旋状の切込みパターンを示し、このパターンによって、スロット付き先端20Gは、螺旋状の切込みがより拡がっている側に向かって選択的に逸れるようになる。
【0019】
図3Hは、例えばワイヤに引き込まれた材料をマンドレルの周りに巻くことによって、巻かれたワイヤの材料から形成されたスロット付き先端20Hを示す。スロット付き先端20Hの近位端部及び遠位端部において、巻かれたワイヤのコイルは互いに溶接される。近位端部と遠位端部との間の中間領域では、チューブの一方の側が、巻かれたワイヤのコイル間に形成された、拡げられた割れ目スロットを有し、このことによって、スロット付き先端20Hは、張力が引張ワイヤを介して印加されると、拡げられたスロットに向かって選択的に逸れるようになる。巻かれたワイヤの材料のスロット付き先端20を形成することは、チューブよりもワイヤにより容易に形成されることができる材料の使用を許可することによって、利点を有する。単一の巻かれたワイヤが図3Hに示されるが、複数のワイヤストランドが使用されてもよい。
【0020】
図4A図4Kは、本発明の特定の実施形態に係る引張ワイヤ22の張力を増大するための様々な機構を示す。図4A及び図4Bでは、引張ワイヤ22は制御ボタン42とベース44との間に繋止されたピニオン40上に巻かれている。ピニオン40は、二つの表面、すなわち、制御ボタン42とベース44との間で転がる小径面rと、引張ワイヤ22が巻かれる大径面Rとを含む。小径面rと大径面Rとの間の半径の差によって、ピニオン40が回転して平行移動すると、引用ワイヤにおける変位差Δlがもたらされる。小径面r及び大径面Rについて適切な直径を選択することによって、比較的大きな量の制御ボタンの平行移動の間、比較的小さな量の引張ワイヤの変位Δlを実現することができ、スロット付き先端20の偏位の正確な制御をユーザに提供することができる。一つの実施形態では、小径面rは、制御ボタン42及びベース44上の歯車の歯と噛み合う歯車の歯を具備する。このことによって、ずれ(slippage)の可能性が低減されうる。
【0021】
図4C及び図4Dは、スライド関節ピン52を有するレバーアーム50を示し、レバーアーム50はアームのピボットにおいて固定ピン54によって所定の位置に保持される。スライドピン52を前進させるのに制御ボタン(図示せず)を使用することができ、スライドピン52の前進によってレバーアーム50の近位部分が上昇するようになり、ひいては、レバーアーム50の遠位端部における引き綱(lanyard)56が引張ワイヤ22に張力を印加すべく回転せしめられる。図4E及び図4Fは、スライドピン60及び第1固定ピン62の上に通され且つ第2固定ピン64に固定された引張ワイヤ22を示す。スライドピン60に取り付けられた制御ボタン66を前進させることによって、引張ワイヤ22の張力が増大する。
【0022】
図4G及び図4Hは、スライドピン70の上に通された引張ワイヤ22を示し、スライドピン70は、制御ボタン74が前進せしめられるにつれて、ガイドトラック72によって概して上向きに向けられる。ガイドトラック72の経路は、制御ボタンが前進せしめられるにつれて引張ワイヤ22の張力がどのように変化するかを決定し、ひいては滑らかであり且つ制御された張力の増大を提供する。図4G及び図4Hに示されるガイドのような直線状のガイドの場合、引張ワイヤの巻き取りは制御ボタン74の前進の後ろの部分において起こるだろう。図4Iに示された代替的な形態では、ガイドトラック72は、制御ボタン74のストロークの始めから終わりまで、よりバランスのとれた張力の増大を生成すべく、制御ボタン74による前進の始めに引張ワイヤのより大きな巻き取りを提供すべく、形が変えられている。図4Jでは、ガイドトラック72は、張力の増大の大部分が制御ボタン74のストロークにおいて早く起こるように、より鋭く傾いている。図4Kは、戻り止め80を有するガイドトラック72の代替的な実施形態を示し、戻り止め80を有するガイドトラック72は、スロット付き先端20の種々の角度に対応する、経路に沿った別々の「停止部(stop)」を可能とする。図4A図4Kに示される任意の実施形態を含むスライドピン又は同様の関節機構を使用するエンドプローブ10の任意の様々な実施形態と共に、戻り止めを有するシェルフ(shelf)又は表面を使用することもできる。
【0023】
本発明の所定の実施形態が上述されてきたが、これら説明は例証及び説明の目的で与えられる。当業者に明らかである、上記に開示されたシステム及び方法からの変更、変化、修正及び逸脱が、以下の請求項に列挙されるような本発明の範囲から逸脱することなく採用されうる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図4K