【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、原料粉末混合物の大部分を、産業副生成物で構成するのを可能にすることにより、及び/又はより少ないCO
2放出量の製造方法によって、環境に対する悪影響がより少ない水和活性クリンカーの製造方法を提供することである。
【0020】
驚くことに、C
5S
2$相(テルネサイト、スルホスパー石とも呼ばれる)が、特定のスルホアルミン酸セメント中で著しい反応性成分を形成することが見出された。文献(例えば、“Synthesis of Calcium Sulfoaluminate Cements From Al2O3−Rich By−products from Aluminium Manufacture”,Milena Marroccoli等(非特許文献1)、The second international conference on sustainable construction materials and technologies 2010(非特許文献2)、“Synthesis of Special Cements from Mixtures Containing Fluidized Bed Combustion Waste,Calcium Carbonate and Various Sources of Alumina”,Belz等,28th Meeting of the Italian Section of The Combustion Institute 2005(非特許文献3)、“Fluidized Bed Combustion Waste as a Raw Mix Component for the Manufacture of Calcium Sulphoaluminate Cements”,Belz G et al,29th Meeting of the Italian Section of The Combustion Institute,2006(非特許文献4)及び“The Fabrication of Value Added Cement Products from Circulating Fluidized Bed Combustion Ash”,Jewell R.B et al,World of Coal Ash(WOCA) Covington,Kentucky,USA,2007(非特許文献5)を参照)は、C
5S
2$相は反応性が低いか又は不活性であり望ましくないと説明している。さらに、この“望ましくない相”を回避するための方法が、定期的に注目を集めている。驚くことに、多量のこのC
5S
2$相が、水和の最初の数日間内ですでに反応し、水和した試料の相組成に著しい影響をおよぼしていることが、本発明者等の実験で見出された。
【0021】
上述の課題は、主成分として反応性C
5S
2$相を有するスルホアルミン酸カルシウムクリンカーの製造であって、その際、選択された原材料に従って原料粉末組成物の焼結を最適化することによって、この相が多量に形成される該製造、及び該原料粉末混合物の組成物によって解決される。原料粉末混合物を、少なくとも1,200℃、好ましくは1,200℃〜1,350℃、より好ましくは1,250℃〜1,300℃で燃焼することにより、存在する/形成する望ましくない相、例えば、黄長石グループなどをさらに分解する、かつ/又は様々な原材料、例えば、黄長石、ムライト、輝石/単斜輝石、スピネル等の結晶性高温相を所望されるクリンカーの反応性相に変換する。従来技術とは著しく異なる特別な工程は、選択的焼結に続く、キルンチャンバーにおける冷却段階の間、並びにそれぞれの冷却装置システムにおける温度を制御することである。冷却プロセス時の選択的な温度制御により、燃焼された特定のクリンカーを、冷却時に本発明のクリンカーが形成されるのに十分な時間の間、1,200℃〜より低い下限値750℃、好ましくは、1,150〜850℃の温度範囲を経させ、その後、急速に冷却させる。また、異なるアルミン酸塩及び鉄酸塩の相、並びに、原材料の結晶性高温相の残留物、例えば、それらに限定されないが、C
4AF、C
2F、CF、C
3A、CA、CA
2、C
12A
7、A
3S
2、C
2AS等を、焼結の際に、制御された冷却プロセス時にC$と反応させることにより、所望の反応性C
5S
2$及びC
4A
3$/C
4(A
xF
1−x)
3$相(式中、xは0.1〜1、好ましくは0.95〜0.8)における増加がもたらされる。
【0022】
さらに、産業副生成物の使用可能性が注目を集め、これは次の利点を有している。
(1) 埋め立て材料/廃棄材料の回避;
(2) これらの材料の経済的/環境保護上の使用;
(3) 可能性のある有害物質の定着/破壊
【0023】
欧州特許第1171398B1号(特許文献5)は、900℃〜最大1,200℃の温度範囲での、所望のC
5S
2$(結晶Z)含有量5%〜75%を有する特定のクリンカーの製造を開示している。しかしながら、この文献によれば、製造された特定のクリンカーは、セメント状挙動を示さず、また、所望の物理特性、例えば、初期水和性及び高い初期強度などの反応性水和セメント又はポルトランド型セメントと混合しなければならない。製造プロセスには、所望の反応性結晶Y相を得るために、制限された温度範囲、900℃〜最大1,200℃、並びに選択された原材料、すなわち、石灰石、ボーキサイト、アルミニウムに富んだ粘土、サルフェート担体(無視石灰、石こう及びリン酸石こう)及びフッ化カルシウム及び/又は高含有量のフッ素を有する原材料が必要とされる。当該分野における当業者には、ホタル石、ボーキサイト及びアルミニウムに富んだ粘土が非常に高価な原材料であるため限られた場所でしか入手できないことが知られている。
【0024】
あるいはまた、本発明の水和活性クリンカーの原料粉末混合物の成分として使用される産業副生成物のような原材料は、欧州特許第1171398B1(特許文献5)には開示されていない。例えば、それらに限定されないが、アッシュ及びスラグ、例えば、それらに限定されないが、代表例として、黄長石系及び/又はムライト系などの産業副生成物中に通常生じ得る結晶性高温相が、900℃〜1,200℃の温度範囲で形成し、そして、この範囲内では通常、目標とするクリンカーの所望する相へは変換しないか、又は非常にゆっくりとしか変換しない及び/又は一部しか変換しない。
【0025】
欧州特許第1171398B1号(特許文献5)に記載されている場合とは対照的に、少量のイーリマイトが1,200℃までの温度で、かつ、特定の原材料(石灰石、ボーキサイト及びサルフェート含有源)を使用するだけで形成できる。本発明のクリンカーの反応性には、十分量のテルネサイト及びイーリマイトの存在が必要であることから、欧州特許第1171398B1号(特許文献5)によってクリンカーが反応性を欠くものであることが説明される。それ故、必要な/所望量のこの相を得るためには、1,200℃の高温領域における滞留時間を相当引き延ばさなければならない。しかしながら、C
4A
3$の形成に最適な温度は、〜1,250℃である。
【0026】
欧州特許第171398B1号(特許文献5)に記載されている燃焼温度範囲のさらなる欠点には、結晶性の高温相、例えば、C
2ASの存在/形成が含まれる。この相は、比較的長時間、1,200℃の最大温度で事実上不変/安定であり、それにより、相当な割合のアルミニウムが定着されて望ましくない。1,250℃超の温度では、そのような望ましくない相は、一般に、非常に速く反応/転化する。そのために、様々な原材料の経済的かつ環境的価値/使用がますます増大している。
【0027】
それとは対照的に、本発明は、様々な原材料、特定の製造方法及び従来技術とは大きく異なる、代替的な、水和反応性のクリンカーの組成物を開示する。
【0028】
多数の、天然ではあるが、産業用材料でもある、例えば、それらに限定されないが、石灰石、ボーキサイト、粘土/粘土岩、玄武岩、かんらん石、ダナイト、イグニンブライト、カーボナタイト、低品質及び高品質(鉱物学的/ガラス含有量、反応性等)アッシュ/スラグ/粉砕高炉スラグ、様々な廃棄物質、赤色泥、褐色泥、天然サルフェート担体、サルフェートプラント泥、リン酸石こう等を、原材料として使用することができる。可能な原材料に必要な最小限の化学特性を満たす物質/物質群は、明確に表示しないが、本発明の範囲内である。
【0029】
欧州特許第171398B1号(特許文献5)に記載の特定のクリンカーとは対照的に、本発明によって製造されたクリンカーは、通常のセメント粉末度に粉砕されると、非常に水和反応性が高く(例えば、高い熱流量、AF
t、AF
m、C
2ASH
8、C−(A)−S−Hの形成に伴う固溶体等)、そして、多の水和反応成分を添加しなくとも、明らかに、セメント様挙動を示す。
【0030】
クリンカー製造方法の方法論はまた、本発明のバインダーを製造するのにフッ素源を添加する必要はない点で大きく相違しているが、そのようなフッ素源の使用を除外する必要もない。それ故、本発明は、有用な産業副生成物及び廃棄材料の範囲を著しく拡張する。
【0031】
初期の実験において、様々な品質の、石灰石、粘土、粉砕スラグ/ランプスラグ(Stueckschlacken)及び(W&V)フライアッシュから、様々な量でC
5S
2$相を含有する、様々なクリンカーを製造することが可能である。石灰石中の結晶性相(例えば、透輝石等)並びにスラグ及びアッシュ(例えば、ムライト、ゲーレナイト、オケルマナイト、オージャイト等)は、1,200℃超〜1,350℃の温度での燃焼プロセスの際に、新たな相(例えば、C
4(A
xF
1−x)
3$、C
2S、C
4AFで覆われ、そして、原料粉末混合物の化学的組成及び鉱物学的組成、並びに、燃料及び冷却パラメーターが、クリンカーの組成及びクリンカーの反応性に大きく影響することも見出された。
【0032】
したがって、上述の課題は、本発明のテルネサイト−ベライト−スルホアルミン酸カルシウム(フェライト)クリンカー(TBC$A(F))を製造するための原材料として、様々な品質の材料を使用し、かつ、特定の燃焼及び冷却パラメーターを有するそれらの製造方法によってもまた解決される。
【0033】
本発明の、水和反応性成分としてC
5S
2$を含有するスルホアルミン酸カルシウムクリンカーの選択的製造、並びに特定の相の形成及び/又は安定化のための選択的な冷却手順は、従来技術には開示されていない。
【0034】
主成分としてCaO、Al
2O
3(±Fe
2O
3)、SiO
2及びSO
3を含有する原材料を、本発明のクリンカーに使用することができる。利点の一つは、原料粉末混合物の少なくとも一つの主成分として産業副生成物の使用可能性である。以下が特に好ましい。
1) 特に低品質の産業副生成物(アッシュ、スラグ等);
2) 主たるCaO源として、少なくとも部分的に石灰石と置き換えることのできる材料;
3) Al
2O
3(Fe
2O
3)源として、少なくとも部分的にボーキサイトと置き換えることのできる材料;
4) 産業プロセス由来のSO
3;
5) 天然岩石/岩石ガラス
【0035】
主たるAl
2O
3源として使用される産業副生成物のような材料は、少なくとも5重量%、好ましくは≧10重量%、より好ましくは≧15重量%のAl
2O
3含有量を有するべきである。以下では低品質の材料は、そのAl
2O
3含有量の観点で要求を満たすいずれの源の材料も含むものと説明される。ランプスラグ及び(W)アッシュは、それらの入手可能性のために現在、特に好ましい。
【0036】
本発明のテルネサイト−ベライト−スルホアルミン酸カルシウム(フェライト)クリンカー(TBC$A(F))を製造するための原材料は、それ自体が公知の方法で、慣用的な粉末度に粉砕される。粉末度は、ブレーンによる、1,5000〜10,000cm
2/g、好ましくは、2,000〜4,000cm
2/gであるのが特に適している。粉砕する粉末度は、使用される原材料の種類及び組成、燃焼プロセス(温度、燃焼領域における滞留時間等)、並びに、所望のバインダー特性及び利用可能な技術的可能性に主に依存する。
【0037】
使用される材料は、天然生成物及び/又は産業副生成物であることができる。
【0038】
これらは予備処理することができるが、そのことは必須ではない。
【0039】
本発明によって製造されるクリンカーの特性及び組成は、原料粉末の組成、修正剤の含有量、燃焼条件及び焼き戻し/予備冷却プロセスの制御によって、β−C
2Sの代わりにC
5S
2$及びC
2Sの反応性変性、例えば、α−変性が、増大して生成されるように調節することができ、原料粉末混合物は、望ましくない結晶性の高温相(例えば、C
2AS)が、目標とするクリンカーに望ましい相に変換して、十分量のC
4(A
xFe
1−x)
3$が形成されるよう、1,200℃超の温度を通過させなければならない。しかしながら、これは憂慮すべき欠点を伴う。望ましいC
5S
2$相は、±1,180℃超の温度以上では不安定であり、C
2S及びC$へ分解する。それ故、本発明によれば、1,200℃超でのクリンカーの焼結プロセスは、選択的冷却と組み合わされ、この選択的冷却は、1,200℃〜750℃、好ましくは、1,150℃〜850℃、より好ましくは1,150℃〜1,080℃にかけて通常の時間と比較してゆっくりでるため、C
4(A
xFe
1−x)
3$相に加えて選択的にC5S2$が形成される。驚くことに、この温度制御法がさらなる利点を有することがわかった。C
4(A
xFe
1−x)
3$相(少なくとも、1,200℃以上で形成)が、1,150℃〜1,050℃を選択的に通過させる場合、例えば、C
4AF、C
2F、CFの消費/転化に起因して、かなり鉄に富んだものとなり、量の観点においては増大はわずかである。これは、鉄に富んだ相(例えば、Fe
3O
4、C
2F及びC
4AF)の量的減少、C
4A
3$相又はC
4(A
xFe
(1−x))
3$相における増加、及びピーク強度における増大によって証明され、そして格子定数c(Å)[結晶系:斜方]9.1610[PDF数: 01−085−2210、テトラカルシウムヘキサアルミネートサルフェート(VI)−Ca
4(Al
6O1
2)(SO
4)、ICSD Collection Code: 080361、ICSD、POWD−12++使用により計算(1997)、構造: Calos,N.J.,Kennard,C.H.L.,Whittaker,A.K.,Davis,R.L.,J.Solid State Chem.,119,1,(1995)(非特許文献6)]から9.1784[PDF数: 00−051−0162、硫酸カルシウムアルミニウム酸化鉄−Ca
4((Al
0.95Fe
0.05))
6O
12(SO
4)、ICSD Collection Code:主要な参照文献: Schmidt,R.,Poellmann,H.,Martin−Luther−Univ.,Halle,Germany.,ICDD Grant−in−Aid,(1999)(非特許文献7)]から9.2000超の値。潜在的な固溶体結晶の形成に関する実験は、同様に、個々の原子配置の下方占有率又は混合占有率に対するリートベルト解析時に占有係数を測定することによって行うことができる。その他の完全に量的な指標とはクリンカーの色の変化であり、この変化はしばしば顕著である。クリンカーの色は、例えば、栗毛色/その他の茶系色から緑−茶色、明るい灰色の色調までずっと変化する。
【0040】
本発明による、CaO、Al
2O
3(Fe
2O
3)、SiO
2及びSO
3の源を含有する原料粉末混合物を焼結することによる水和反応性クリンカーの製造方法は、最初に、第一の工程として、>1,200℃〜1,350℃、好ましくは1,250〜1,300℃の温度範囲内で、クリンカー中間体生成物が得られる十分な期間にわたって原料粉末混合物を変換又は焼結することを含む。この期間は典型的に、10分〜240分、好ましくは30分〜90分である。クリンカー中間体生成物は、それから、1,200℃乃至下限値の750℃の温度範囲、好ましくは1,150〜850℃の温度範囲内で、所望量のC
5S
2$が得られ、かつ、特定量のアルミン酸塩相及び鉄酸塩相及びC$が残存する原材料の結晶性高温相の残滓が、さらなるC
4(A
xF
1−x)
3$(式中、xは0.1〜1、好ましくは0.95〜0.8)及びC
5S
2$へ変換するのに十分な時間にわたって焼き戻される。クリンカーは、1,200℃〜1,050℃の温度範囲を、10分〜180分、好ましくは25分〜120分、より好ましくは30分〜60分の期間通過させるべきである。冷却プロセスの際、クリンカーは、1,050℃〜750℃、好ましくは1,050℃〜850℃の温度範囲を、5分〜120分、好ましくは10分〜60分の期間通過させることができる。その後、クリンカーは、それ自体公知の方法で急速に冷却されて、さらなる相変換を防止する。
【0041】
本発明によれば、以下の割合で主成分、C
4(A
xF
1−x)
3$、(α; β)C
2S及びC
5S
2$を含有するクリンカーが得られる。
・C
5S
2$: 5〜75重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜40重量%;
・C
2S: 1〜80重量%、好ましくは5〜70、より好ましくは10〜65重量%、特に好ましくは20〜50重量%:
・C
4(A
xF
1−x)
3$: 5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜45重量%;
・副相: 0〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%
【0042】
表示名(α,β)C
2Sは、C
2S及びその混合物の多形体を意味し、その際、反応性のα多形体(例えば、α、α’
L、α’
H)が好ましい。相8の範囲内であC
4(A
xF
1−x)
3$の場合、xは0.1〜1の範囲内、好ましくは0.95〜0.る。
【0043】
本発明のクリンカーの主たる重要な相(C
4(A
xF
1−x)
3$、(α;β)C
2S、C
5S
2$)は、以下の重量比の範囲内にあることが好ましい。
・C
4(A
xF
1−x)
3$:(α;β)C
2S=1:16〜70:1、好ましくは1:8〜8:1、より好ましくは1:5〜5:1;
・C
4(A
xF
1−x)
3$:C
5S
2$=1:15〜14:1、好ましくは1:8〜8:1、より好ましくは1:5〜5:1;
・C
5S
2$:(α;β)C
2S=1:15〜70:1、好ましくは1:8〜10:1、より好ましくは1:4〜5:1;
・C
4(A
xF
1−x)
3$:((α;β)C
2S+C
5S
2$)=1:16〜10:1、好ましくは1:8〜8:1、より好ましくは1:4〜4:1。
【0044】
本発明によって得られるクリンカーは、その後、公知のクリンカーと同様にさらに処理されて、セメント又はバインダー混合物が形成される。
【0045】
天然の原材料、石灰石、ボーキサイト、粘土/粘土、玄武岩、キンバーライト、イグニンブライト、カーボナタイト、無水石こう、石こうなど、及び/又は廃棄物質及び埋め立て材料のような産業副生成物、灰及び高品質及び低品質のスラグ、セラミック残滓、脱硫ヘドロ及び/又はリン酸石こうが、CaO、Al
2O
3(Fe
2O
3)、SiO
2及びSO
3の源として選択される。クリンカー相について、Al
2O
3(Fe
2O
3)という表示は、C
4(A
xF
1−x)
3$(式中、xは、0.1〜1、好ましくは0.95〜0.8である。)という表示と同様に、アルミニウムが部分的に鉄と置き換えられることを意味している。主として、アルミニウムは、典型的に、少量の鉄と共に存在するが、占有量の鉄までの相当量の鉄は本発明の範囲内で使用できる。
【0046】
少なくとも5重量%、好ましくは≧10重量%、より好ましくは≧15重量%のAl
2O
3含有量を有するボーキサイト、粘土及び/又は産業副生成物及び残滓材料は、有用なAl
2O
3(Fe
2O
3)源として証明されている。
【0047】
驚くことに、選択された原材料、例えば、それらに限定されないが、アッシュは、特に適していることが証明された。それらは、概して、増大したホスフェート含有量である、>1.0重量%を示し、そして、比較的短い滞留時間でさえ、1,200℃〜850℃の温度範囲において十分量の、非常に反応性のC
5S
2$の形成をもたらした。
【0048】
副相、例えば、ケイ酸カルシウム、サルフェート、アルミン酸カルシウム、スピネル、代表的な黄長石系、ペリクレース、遊離石灰、石英及び/又はガラス相は、0.01重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜20重量%、より好ましくは10重量%〜15重量%の割合で好ましく存在する。一種又は多種の副相の種類及び量は、主成分に関連して、CaO/Al
2O
3(±Fe
2O
3)、CaO/SiO
2の重量比、及び原料粉末混合物中のサルフェート担体の割合によって制御することができる。好ましい副相はC
2A
yF
1−y(式中、yは0.2〜0.8、好ましくは0.4〜0.6である。)であり、特に、C
4AFの形態であり、好ましくは、3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%の量で存在する。
【0049】
クリンカーの主たる酸化物の含有量は、好ましくは次の範囲内である。
・CaO: 35〜65重量%
・Al
2O
3(Fe
2O
3): 7〜45重量%
・SiO
2: 5〜28重量%
・SO
3: 5〜20重量%
【0050】
本発明のクリンカーは、>2重量%のペリクレース含有量を有することが有利である。さらに、クリンカーは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び/又は遷移金属及び/又は金属及び/又は半金属及び/又は非金属の群からの一種又は多種の二次元素及び/又はそれらの化合物を、20重量%まで、好ましくは≦15重量%、より好ましくは≦10重量%の割合で含有することができる。
【0051】
産業副生成物及びプロセスダストは、原料粉末混合物を調節するための修正剤として良好に適していることが判明している。
【0052】
クリンカーは、セメント又はバインダー混合物を製造するために、サルフェート担体を用いるか又は用いずに、慣用的なセメント粉末度(ブレーンによる)である2,000〜10,000cm
2/g、好ましくは、3,000〜6,000cm
2/g、より好ましくは4,000〜5,000cm
2/gに本質的に公知の方法で粉砕される。好ましくは石こう及び/又は半水化石こう及び/又は無水石こうの形態の、アルカリ硫酸塩及び/又はアルカリ土類硫酸塩は特に適したサルフェート担体である。
【0053】
粉砕されたクリンカーは、一つの別の物質又は別の物質の混合物、例えば、それらに限定されないが、ポルトランドセメント、ジオポリマーバインダー、アルミン酸カルシウムセメント、人工ポゾラン、天然ポゾラン/潜在的水硬性材料、石灰石粉末等、又はそれらの複数と組み合わせてバインダー混合物を形成することができる。しかしながら、欧州特許第1171398B1号(特許文献5)とは対照的に、有用なレベルの水和反応性を達成することは必要ではなく、代わりに、セメントに粉砕されたクリンカー自体が、所望レベルの水和反応性を示す。
【0054】
水の存在下で、セメントは、AF
t相及びAF
m相並びにAl(OH)
3を形成する。一方で、C
5S
2$相の連続的な溶解によってさらなるサルフェートが得られ、これは、AF
tを安定させて、可能正のあるAF
mの変形を防止/低減し、そして、その一方で、水だけでなく利用可能なAl(OH)
3と反応してC
2AS・8H
2O(ストラトリンガイト(Straelingit)並びに(N,C)−(A)−S−Hを形成し得る、反応性形態のC
2Sを放出する。本発明のセメントのC
2AS・8H
2O(ストラトリンガイト及び(N,C)−(A)−S−Hの形成による、AF
tの安定化及びAl(OH)
3の消費、並びに、多孔度の減少によって、例えば、それらに限定されないが、多孔質全体における低減及び/又は連結孔隙の連結及び可能性のあるサルフェート攻撃への耐性によって、耐久性が著しく向上される。
【0055】
本発明のセメント又はセメント含有バインダーの製造する際、0.2〜2の水/バインダー値が適しており、このましくは、0.4〜0.8、より好ましくは、0.5〜0.72である。
【0056】
セメント又はそれから製造されるバインダー混合物は、一種又は多種の混合剤を含み得る。これは、好ましくは、一種又は多種の凝結促進剤及び/又は硬化促進剤、好ましくは、リチウム塩及び水酸化リチウム、その他のアルカリ塩及び水酸化物、アルカリシリケート、ポルトランドセメント及びアルミン酸カルシウムセメントを含有する。さらに好ましくは、これは、コンクリート可塑剤及び/又は可塑性混合剤が含まれている場合には、好ましくは、リグニンスルホン酸塩、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、メラミンホルムアルデヒド縮合物又はフェノールホルムアルデヒド縮合物をベースとするか、又はアクリル酸/アクリルアミド混合物又はポリカルボキシレートエーテルをベースとするか、又はホスホン化重縮合物をベースとするものが好ましい。
【0057】
セメント又はそれから製造されるバインダー混合物は、有害廃棄物を凝固させるのに非常に適している。これに関連して、吸着効果を有する添加剤、例えば、ゼオライト及び/又はイオン交換樹脂を含有するのが好ましい。溶解性の乏しい水酸化物の形成を促進する高いpH値は、無機バインダー中で重金属を固定させるのに有利である。これは、例えば、それに限定されないが、本発明のクリンカーをポルトランドセメントとバインダー中で混合することによって実現することができる。
【0058】
本発明によって製造されたテルネサイト(クリンカー)から得られるセメント、又はそれから製造されるバインダー混合物のその他の利点は、水和時に異なる相(エトリンガイト[AF
t]、単相[AF
m]、金属−金属ヒドロキシ塩[LDH]等)が形成されることであり、それらの相は、様々な重金属並びに有害物質(例えば、塩化物等)をそれらの構造中に取り込んで、それにより永続的に結合させることができる。
【0059】
本発明を、以下の実施例に基づいて説明されるが、本発明は開示の特定の実施形態に限定されない。別途説明するか、又は文脈中で自動的に反対に規定しない限り、パーセンテージに関する情報は、混合物の重量に疑義がある場合には量に関連する。
【0060】
本発明はまた、相互に排他的でない好ましい実施形態の全ての組み合わせにも関する。数値と関連する“約”又は“おおよそ”という表現は、数値が、少なくとも10%だけ高いか又は低い数値であるか、数値が5%だけ高いか又は低い数値であり、数値が1%だけ高いか又は低い数値である場合も含まれる。