【実施例】
【0070】
実施例1:イデユコゴメの培養
抽出物を得るための準備的イデユコゴメバイオマス生成は、DE4411486、DE29607285、WO9105849、WO2010/149154またはDE102009028474A1(WO2011/018082A2)に詳細に記載されている密閉光バイオリアクターにおいて行われる。培養方法は、紅藻イデユコゴメ(SAG 16.91)の固有の成長条件に適合させた。適切なポンプ構成の選択による剪断応力の最小化、50〜2000μE*m
−2s
−1の培養中の光の体制の可変設計による継続的な光適応、およびpHを<3に調整することが、高い成長速度および再現可能なバイオマス品質の両方を達成できるようにする。
【0071】
使用した培養培地は、4.5g(NH
4)
2SO
4、0.6g MgSO
4×7 H
2O、0.6g KH
2PO
4、0.03g CaCl
2×2 H
2O、0.01g FeSO
4、0.018gエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、0.005g H
3BO
3、0.004 MnCl
2、0.00068g ZnSO
4×7 H
2O、0.00052g Na
2MoO
4×2 H
2O、0.00008g CuSO
4×5 H
2O、0.00008g NaVO
3×4 H
2O、0.00064g CoCl
2×6 H
2Oから成った(蒸留水1リットル当たり)。培地のpHは、1N H
2SO
4の添加および/またはCO
2濃度の調節により2〜3にした。
【0072】
前培養のため、5l三角フラスコを培地1lで満たし、イデユコゴメ(SAG 16.91)保存培養物を播種した。培養物を穏やかに振盪しながら、140μE*m
−2s
−1を有する蛍光管の下、30℃でインキュベートした。藻類培養物の成長は、550nmの吸光度によりモニターした。成長が指数期(OD1.0)に達するとすぐ、細胞を5000rpm、10分間の遠心分離により回収し、ペレットを蒸留水で洗浄した。湿性バイオマスは、さらなる使用まで−20℃で保存した。
【0073】
実施例2:イデユコゴメの水性抽出
光バイオリアクターからの回収は、例えばDE10136645(EP1277831)またはWO9105849に記載されているように行う。
【0074】
微細藻類細胞を破壊するための超音波の使用は、これまでに記載されており、とりわけUS2009069213、実施例3およびUS2008299147、実施例3を参照して再現することができる。不溶成分は、200μmバグフィルターを用いた濾過により分離した。1.0%のRokonsal BSを、保存目的で水性抽出物に添加する。Sartorius MA30 Moisture Analyzerにより判定した水性イデユコゴメ抽出物の乾燥物(105℃)は、2.5%の値を示した。
【0075】
実施例3:イデユコゴメにおけるGABAの検出
GABAは、オルトフタル酸ジアルデヒド(OPA)による誘導体化後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により検出した。HPLC装置は、Jasco PU 2080Plusポンプ、Jasco AS 2055Plusオートサンプラー、Jasco FP-2020Plus蛍光検出器、およびJasco ChromPass 1.8.6.1積分器(Jasco Germany GmbH、グロス−ウムシュタット、ドイツ)から構成された。使用した固定相は、40℃の温度でのZorbax Eclipse XDB-C18、4.6×150mm、3.5μmカラム(Agilent Technologies, Inc.)であった。以下の勾配を移動相として使用した(A:2%アセトニトリル、2%テトラヒドロフラン、96% 50mMリン酸、NaOHでpH7.5にした);B:65%アセトニトリル、35%水):0〜2分、20%B、一定;2〜8分、20〜40%B、直線;8〜11分、40〜100%B、直線;11〜38分、100%B、一定。流速は1.5ml/分であった。OPA試薬(フタル酸ジアルデヒド試薬1mL、Solution Complete、Sigma-Aldrich P0532、およびメルカプトエタノール0.5μL)15μLと一緒に分析物5μLを注入した。吸光波長は340nmであり、発光波長は455nmであった。使用した内部標準は、1,6−ジアミノヘキサンであった。分析物は、水性イデユコゴメ抽出物1mlを水で100mlに希釈して調製した。
【0076】
イデユコゴメ抽出物中のGABAの典型値は0.090%であった。この値は、イデユコゴメ乾燥物に基づいて3.3%のGABAに対応した。
【0077】
実施例4:遺伝子チップ試験によるヒト皮膚線維芽細胞でのイデユコゴメ抽出物の遺伝子発現分析
方法:
本実施例では、線維芽細胞(正常なヒト皮膚線維芽細胞、NHDF)における遺伝子発現に対するイデユコゴメ抽出物の効果を試験した。
【0078】
この目的に対し、初代ヒト皮膚線維芽細胞(CellSystems(登録商標)Biotechnologie Vertrieb GmbH、セントカタリーネン、ドイツから入手した、冷凍保存の新生児の皮膚(Lifeline Cell Technology)に由来するヒト皮膚線維芽細胞(HDF))を、10%ウシ胎仔血清(FBS-ウシ胎仔血清、(Invitrogen Ltd、UK)、1%非必須アミノ酸(NEAA(100×)−非必須アミノ酸、PAA、パッシング、オーストリア)、1%L−グルタミン(100×)(Invitrogen Ltd、UK)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(5000U/mlペニシリンおよび5000μg/mlストレプトマイシン、Invitrogen Ltd、UK)を37℃、5%CO
2で添加した、アール塩(EMEM)(PAA Laboratories GmbH、パッシング、オーストリア)を補充した最小必須培地(MEM)中で最初に増殖させた。遺伝子発現試験のため、細胞を6ウェルプレートに播き、サブコンフルエンス(最大60%)まで増殖させた。
【0079】
この後、培地を細胞から取り除き、イデユコゴメ抽出物を含む新鮮培地に置き換えた。培地中のイデユコゴメ抽出物の最終濃度は、100ppm(=100μg/ml、イデユコゴメ抽出物乾燥物に基づく)であった。対照として、培養物を培地(ビヒクル)のみを用いて活性物質なしで増殖させた。全ての培養は、3重(3つの生物学的複製)で行った。
【0080】
細胞を24時間培養した後、培地を取り除き、細胞をRNeasy Lysis Buffer(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)の添加により溶解させた。全RNAは製造業者の使用説明書に従って単離した。要約すると、全RNAは、RNeasy Mini Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて単離した。RNAの質は、Agilent 2100 BioanalyzerおよびAgilent RNA 6000 Nano Kit(Agilent Technologies, Inc.、サンタクララ、CA、USA)により判定した。3つの生物学的複製をプールし、プール試料の濃度は、260/280nmでの光度測定により判定した。
【0081】
遺伝子発現は、標準的なデータ評価を含むAffymetrix GeneChip発現分析により、製造業者の使用説明書に従って分析した(Human Gene 1.0 ST Array、Expression Console Software、AFFYMETRIX, INC.、サンタクララ、CA、USA)。
【0082】
【表1】
【0083】
ヒト皮膚線維芽細胞における遺伝子チップ試験は、イデユコゴメ抽出物の添加により、弾性線維の最も重要な構造成分、エラスチン(ELN)およびフィブリリン(FBN2)の均一な刺激を示した。さらに、結合組織の重要な構造タンパク質、コラーゲンIIIおよびXI(COL3A1、COL11A1)の遺伝子発現が増加した。アグレカン(ACAN)、シンデカン(SDC2)およびルミカン(LUM)などの他のタンパク質は、構造付与機能を有し、またはさまざまな細胞外マトリックス(ECM)成分と線維芽細胞との間の相互作用を組織するのを助ける。これらのタンパク質(LUM、ACAN、SDC2)の遺伝子も、イデユコゴメ抽出物により上方制御された。細胞外マトリックス成分の分解は、マトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP-1)およびマトリックスメタロプロテアーゼ3(MMP-3)の下方制御により効率的に妨げられた。さらに、イデユコゴメ抽出物は、結合組織増殖因子(CTGF)の潜在的メディエーターである。
【0084】
要約すると、記載された遺伝子調節は、本発明による化粧品が、単なる個々のECM成分の構造ではなくECMの全体構造を強化することを示している。
【0085】
実施例5:qRT−PCRおよびELISAによるヒト皮膚線維芽細胞でのイデユコゴメ抽出物の遺伝子およびタンパク質発現分析
方法:
本実施例では、線維芽細胞(正常なヒト皮膚線維芽細胞、NHDF)における遺伝子およびタンパク質発現に対するイデユコゴメ抽出物の効果を試験した。
【0086】
この目的に対し、初代ヒト皮膚線維芽細胞(CellSystems(登録商標)Biotechnologie Vertrieb GmbH、セントカタリーネン、ドイツから入手した、冷凍保存の新生児皮膚(Lifeline Cell Technology)に由来するヒト皮膚線維芽細胞(HDF))を、10%ウシ胎仔血清(FBS-ウシ胎仔血清、Invitrogen Ltd、UK)、1%非必須アミノ酸(NEAA(100×)-非必須アミノ酸、PAA、パッシング、オーストリア)、1%L−グルタミン(100×)(Invitrogen Ltd、UK)、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(5000U/mlペニシリンおよび5000μg/mlストレプトマイシン/ml、Invitrogen Ltd、UK)を37℃および5%CO
2で添加した、アール塩(EMEM)(PAA Laboratories GmbH、パッシング、オーストリア)を補充した最小必須培地(MEM)中で、適切な細胞数が得られるまで最初に増殖させた。遺伝子発現試験のため、細胞を6ウェルプレートに播き、サブコンフルエンス(最大60%)まで増殖させた。
【0087】
この後、培地を細胞から取り除き、イデユコゴメ抽出物を含む新鮮培地に置き換えた。培地中のイデユコゴメ抽出物の最終濃度は、100ppm(=100μg/ml、抽出物乾燥物に基づく)であった。対照として、培養物を培地(ビヒクル)のみを用いて活性物質なしで、または陽性対照として10ng/mlトランスフォーミング増殖因子ベータ3(TGFβ-3)で増殖させた。全ての培養は、3重(3つの生物学的複製)で行った。
【0088】
遺伝子発現を試験するために、24時間の培養後に培地を取り除き、細胞をRNeasy Lysis Buffer(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)の添加により溶解させた。全RNAは製造業者の使用説明書に従って単離した。要約すると、全RNAは、RNeasy Mini Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて単離した。RNAの質および量は、Agilent 2100 BioanalyzerおよびAgilent RNA 6000 Nano Kit(Agilent Technologies, Inc.、サンタクララ、CA、USA)を用いて判定した。
【0089】
各試料は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を用いて、コラーゲン(COL1A1)、エラスチン(ELN)、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP-1)、フィブリリン−2(FBN2)、結合組織増殖因子(CTGF)、シンデカン−2(SDC2)およびルミカン(LUM)の遺伝子発現について分析した。この目的に対し、Super Script III First Strand Synthesis Super Mix(Invitrogen Ltd、UK)を製造業者の使用説明書に従って使用して、各ケースで全RNA 100ngをcDNA合成に使用した。Quanti Tect SYBR Green PCR Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)は、製造業者の使用説明書に従ってPCR反応に使用した。標的遺伝子の発現以外に、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子の発現も、参照として定量的に判定した。以下のプライマー対を、標的遺伝子の各ケースで使用した。
COL1A1:60℃
5’−GCCTCGGAGGAAACTTTG−3’配列番号01
5’−GACCCATGGGACCTGAAG−3’配列番号02
ELN:56℃
5’−GCCCAGTTTGGCCTAGTG−3’配列番号03
5’−CAGCAGCACCGTATTTAG−3’配列番号04
MMP−1:60℃
5’−TGGGAGCAAACACATCTGA−3’配列番号05
5’−ATCACTTCTCCCCGAATCGT−3’配列番号06
FBN2:60℃
5’−TCGCCCGGCAGCAAACTCAG−3’配列番号07
5’−TCACACCGCTCACAGGGGCT−3’配列番号08
CTGF:60℃
5’−CAGGCTAGAGAAGCAGAGCC−3’配列番号09
5’−TGGAGATTTTGGGAGTACGG−3’配列番号10
SDC2:60℃
5’−CGTGGATCCTGCTCACCT−3’配列番号11
5’−CAATGGAGCTGTTGTCAAGG−3’配列番号12
LUM:56℃
5’−GGTTGAGCTGGATCTGTCCT−3’配列番号13
5’−AGTAGGATAATGGCCCCAGG−3’配列番号14
GAPDH:60℃
5’−ACCACAGTCCATGCCATCAC−3’配列番号15
5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA−3’配列番号16
【0090】
PCR反応は、Opticon1(MJ Research、ウォルサム、MA、USA)を用いて行った。全てのPCRにおいて、生物学的3つ組の二重の判定を実施し、全ての測定の平均を評価のために計算した。PCRプロトコルは以下のプロファイルを有した:工程1)、95℃でホットスタートポリメラーゼの15分活性化;工程2)、94℃で15秒変性;工程3)、プライマー対に応じて、56℃または60℃で30秒プライマーアニーリング;工程4)、72℃で30秒伸長。工程2)〜4)のサイクル数は44であった。2(−デルタデルタC(T))法(Livak KJおよびSchmittgen TD: Analysis of relative gene expression data using real time quantitative PCR and the 2(-delta delta C(T))method. Methods 2001、25: 402-408)を遺伝子発現の相対比較に使用した。
【0091】
タンパク質発現を試験するために、培地を培養の24時間後に取り除き、細胞を超音波処理(34〜40kHzで10秒)により溶解させた。
【0092】
超音波処理物の総タンパク質含量は、Bradfordテスト(Bio-Rad Protein Assay、Bio-Rad Laboratories, Inc.、ハーキュリーズ、CA、USA)により製造業者の使用説明書に従って判定した。ELISA技術を用いて、各試料を、細胞抽出物中のエラスチン(ヒトElastin ELISA Kit、ABO Swiss Co., Ltd、福建、CN)、および培養物上清中のルミカン(ヒトLumican ELISA Kit、ABO Swiss Co., Ltd、福建、CN)またはプロコラーゲン(Procollagen Type I C-Peptide(PIP)EIA Kit、TAKARA BIO INC.、JP)のタンパク質含量について、当該製造業者の使用説明書に従って分析した。絶対タンパク質量は、全タンパク質との関連で判定した。
【0093】
結果は
図1〜5に示されており、イデユコゴメ抽出物によるケラチノサイトの処理が、COL1A1、ELN、FBN2、SDC2およびLUMの遺伝子発現を著しく刺激することを示している。MMP−1遺伝子の発現は、著しく下方制御された。さらに、イデユコゴメ抽出物による24時間の細胞の処理は、エラスチンだけでなく、ルミカンおよびプロコラーゲンに対しても、タンパク質レベルでプラスの効果を有した。
【0094】
要約すると、記載された遺伝子調節は、遺伝子チップ分析の結果を裏付けている。本発明による化粧品は、単なるECMの個々の成分ではなくECMの全体構造を強化する。
【0095】
実施例6:UVAストレスヒト表皮モデルに対するイデユコゴメ抽出物の効果
方法:
本実施例では、表皮皮膚モデル(再構成ヒト表皮)における遺伝子およびタンパク質発現に対するイデユコゴメ抽出物の効果を試験した。
【0096】
この目的に対し、皮膚モデル(正常なヒトケラチノサイトの再構築表皮、RHE/S/17、SkinEthic laboratories、ニース、F)を、維持培地(SkinEthic laboratories、ニース、F)中、37℃および5%CO
2で24時間培養した。遺伝子およびタンパク質発現試験のため、皮膚モデルはこの後、各ケースでイデユコゴメ抽出物50μlまたはそれぞれの対照により局所的に処理した。1時間後、過剰試料をブロットして除去した。培地中のイデユコゴメ抽出物の最終濃度は、750ppm(=750μg/ml、抽出物乾燥物に基づく)であった。培養は、対照として活性物質なしまたは水(ビヒクル)のみで行った。全ての培養は、3重(3つの生物学的複製)で行った。培養の24時間後、皮膚モデルを9.5mW/cm
2 UVAで40J/cm
2の線量により照射した。この後、培地を交換し、テスト物質または対照を再適用した。2回目の適用24時間後、皮膚モデルをRNAlater(RNA Stabilization Reagent、Qiagen、ヒルデン、ドイツ)に移した。皮膚モデルの上清(培地)は、タンパク質発現のさらなる分析のため、Complete Protease Inhibitor Cocktail Tablet(F. Hoffmann-La Roche Ltd、バーゼル、CH)を添加して凍結させた(−80℃)。
【0097】
皮膚モデル由来の全RNAは、RNeasy Lipid Tissue Mini Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて製造業者の使用説明書に従って単離した。RNAの質および量は、Agilent 2100 BioanalyzerおよびAgilent RNA 6000 Nano Kit(Agilent Technologies, Inc.、サンタクララ、CA、USA)を用いて判定した。
【0098】
各試料のインターロイキン1−アルファ(IL1-α)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF-α)、および活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκ-B)の遺伝子発現は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を用いて試験した。この目的に対し、Super Script III First Strand Synthesis Super Mix(Invitrogen Ltd、UK)を製造業者の使用説明書に従って使用して、各ケースで全RNA 100ngをcDNA合成に使用した。Quanti Tect SYBR Green PCR Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)は、製造業者の使用説明書に従ってPCR反応に使用した。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の発現も、参照遺伝子として定量的に判定した。以下のプライマー対を各ケースで使用した。
NFκ−B:
5’−CCTGGATGACTCTTGGGAAA−3’配列番号17
5’−TCAGCCAGCTGTTTCATGTC−3’配列番号18
TNF−α:
5’−CTCTGGCCCAGGCAGTCAGA−3’配列番号19
5’−GGCGTTTGGGAAGGTTGGAT−3’配列番号20
IL1-α:
5’−CACTCCATGAAGGCTGCATGG−3’配列番号21
5’−ACCCAGTAGTCTTGCTTTGTGG−3’配列番号22
GAPDH:
5’−ACCACAGTCCATGCCATCAC−3’配列番号23
5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA−3’配列番号24
【0099】
PCR反応は、Opticon1(MJ Research、ウォルサム、MA、USA)を用いて行った。全てのPCRにおいて、生物学的3つ組の二重の判定を実施し、全ての測定の平均を評価のために計算した。PCRプロトコルは以下のプロファイルを有した:工程1)、95℃でホットスタートポリメラーゼの15分活性化;工程2)、94℃で15秒変性;工程3)、60℃で30秒プライマーアニーリング;工程4)、72℃で30秒伸長。工程2)〜4)のサイクル数は44であった。2(−デルタデルタC(T))法(Livak KJ、およびSchmittgen TD: Analysis of relative gene expression data using real time quantitative PCR and the 2(-delta delta C(T))method. Methods 2001、25: 402-408)を遺伝子発現の相対比較に使用した。
【0100】
タンパク質発現を試験するために、皮膚モデルの上清を取り除き、皮膚モデル由来の全タンパク質を、RNeasy Lipid Tissue Mini Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて、RNAに加えて複合プロトコルの形態で単離した。詳細には、残留水相をRNA単離試料から除去した。100%エタノール0.3mlを添加し、試料を反転させ、室温(IT)で2〜3分間インキュベートした。この後、試料を4℃、2分間、2000×gで遠心分離した。タンパク質を含む上清を新鮮な管(2ml)に入れた。タンパク質はイソプロパノール1.5mlの添加により沈殿させ、ITで10分間インキュベートした。この後、試料を4℃、10分間、12000×gで遠心分離した。ペレットをグアニジン/エタノール溶液2mlに溶解し、ITで20分間インキュベートした。この後、試料をIT、20分間、7500×gで遠心分離した。この洗浄工程を2回繰り返した。エタノール(100%)2mlの添加後、試料をITで20分間インキュベートした。この後、試料をIT、5分間、7500×gで遠心分離した。ペレットは空気中で5〜10分間乾燥させ、尿素/DTT溶液500μlに溶解し、ITで1時間インキュベートした。タンパク質を溶解するために、試料を95℃で3分間加熱した。
【0101】
総タンパク質含量は、Bradfordテスト(Bio-Rad Protein Assay、Bio-Rad Laboratories, Inc.、ハーキュリーズ、CA、USA)により製造業者の使用説明書に従って判定した。ELISA法を用いて、各試料を、培養物上清中のインターロイキン1−アルファ(IL1-α)(ヒトIL-1α ELISA Kit、(Invitrogen Ltd、UK)のタンパク質含量について、それぞれの製造業者の使用説明書に従って分析した。絶対タンパク質量は、全タンパク質との関連で判定した。
【0102】
この試験の結果は
図6〜9に示されており、イデユコゴメ抽出物が、炎症誘発性マーカーのUVA誘導発現を分子レベルで低減できることを示している。故に、イデユコゴメ抽出物はUVAストレス皮膚モデルにおいて、NFκBならびにまたTNF−αおよびIL−1αにより主に調節される表皮の恒常性を再建した。
【0103】
実施例7:表皮幹細胞に対するイデユコゴメ抽出物の効果
方法:
本実施例では、表皮幹細胞(表皮ケラチノサイト前駆細胞、HPEK)におけるイデユコゴメ抽出物の活性を試験した。
【0104】
この目的に対し、CnT−57 NHEK前駆細胞(新生児包皮に由来し、P2で冷凍保存した正常なヒト表皮ケラチノサイト前駆細胞(HPEKp05))、CELLnTEC Advanced Cell Systems AG、ベルン、スイス)を、補足CnT-57培地(低濃度ウシ下垂体抽出物(BPE)に基づく前駆細胞標的化表皮ケラチノサイト培地、CELLnTEC Advanced Cell Systems AG、ベルン、スイス)+2%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(5000U/mlペニシリンおよび5000μg/mlストレプトマイシン/ml、Invitrogen Ltd、UK)中で、適切な細胞密度に達するまで37℃、5%CO
2で最初に培養した。
【0105】
コロニー形成効率(CFE)を判定するために、細胞をこの後、イデユコゴメ抽出物の存在下、低播種密度(800細胞/25cm
2)で8日間増殖させた。
【0106】
培地中のイデユコゴメ抽出物の最終濃度は、100ppm(=100μg/ml、藻類乾燥物に基づく)であった。対照として、培養は培地(ビヒクル)のみを用いて活性物質なしで行った。全ての培養は、3重(3つの生物学的複製)で行った。
【0107】
細胞培養培地を取り除いた後、細胞コロニーを、ヘマトキシリン/エオシン(CnT-ST-100Stain Kit、CELLnTEC Advanced Cell Systems AG、ベルン、スイス)で製造業者の使用説明書に従って染色した。コロニー形成単位は顕微鏡下でカウントした。
【0108】
遺伝子発現試験のため、細胞を、イデユコゴメ抽出物の存在下、サブコンフルエンス(75%)に達するまで3000細胞/25cm
2の播種密度で7日間さらに増殖させた。
【0109】
培地中のイデユコゴメ抽出物の最終濃度は、100ppm(=100μg/ml、抽出物乾燥物に基づく)であった。対照として、培養物を培地(ビヒクル)のみを用いて活性物質なしで増殖させた。全ての培養は、3重(3つの生物学的複製)で行った。
【0110】
遺伝子発現を試験するために、培地を取り除き、細胞をRNeasy Lysis Buffer(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)の添加により溶解させた。全RNAは製造業者の使用説明書に従って単離した。要約すると、全RNAは、RNeasy Mini Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて単離した。RNAの質および量は、Agilent 2100 BioanalyzerおよびAgilent RNA 6000 Nano Kit(Agilent Technologies, Inc.、サンタクララ、CA、USA)により判定した。
【0111】
各試料は、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を用いて、CD34(造血前駆細胞抗原)、CTNNB1(β-カテニン(catenine))、ITGB1(インテグリンベータ-1)、ITGA6(インテグリンアルファ-6)、LRIG1(ロイシンリッチリピートおよび免疫グロブリン様ドメインタンパク質1)、DSG3(デスモグレイン-3)、MKI67(抗原KI-67)およびKRT14(ケラチン-14)の遺伝子発現について分析した。この目的に対し、Superscript VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrogen Ltd、UK)を製造業者の使用説明書に従って使用して、全RNA 100ngを各ケースでcDNA合成に使用した。QuantiFast SYBR Green PCR Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)は、製造業者の使用説明書に従ってPCR反応に使用した。標的遺伝子の発現以外に、B2M(β2-ミクログロブリン)遺伝子の発現も、参照として定量的に判定した。以下のプライマー対を、遺伝子の各ケースで使用した。
CD34:
5’−CCACCAGAGCTATTCCCAAAAG−3’配列番号25
5’−GCGGCGATTCATCAGGAAAT−3’配列番号26
CTNNB1:
5’−TGCCAAGTGGGTGGTATAGA−3’配列番号27
5’−TCAGATGACGAAGAGCACAGA−3’配列番号28
ITGB1:
5’−ATGTGAATGCCAAAGCGAAG−3’配列番号29
5’−CTACCAACACGCCCTTCATT−3’配列番号30
ITGA6:
5’−CTCTTCGGCTTCTCGCTG−3’配列番号31
5’−CCCGTTCTGTTGGCTCTCT−3’配列番号32
LRIG1:
5’−GACCTGCCCTCCTGGAC−3’配列番号33
5’−GTAGGTTCGGCAAGTCCTCA−3’配列番号34
DSG3:
5’−CGGCCTGCTGCTCCTTGGTC−3’配列番号35
5’−CACCGCTGTGCCTCTGGCAT−3’配列番号36
KI-67:
5’−ATCGTCCCAGGTGGAAGAGTT−3’配列番号37
5’−ATAGTAACCAGGCGTCTCGTGG−3’配列番号38
KRT14:
5’−GGCCTGCTGAGATCAAAGAC−3’配列番号39
5’−TCTGCAGAAGGACATTGGC−3’配列番号40
B2M:
5’−GTGCTCGCGCTACTCTCTCT−3’配列番号41
5’−TTCAATGTCGGATGGATGAA−3’配列番号42
【0112】
PCR反応は、StepOnePlus(商標)Real−Time PCRシステム(Life Technologies Corporation、CA、USA)を用いて行った。全てのPCRに対し、生物学的3つ組の二重の判定を実施し、全ての測定の平均を評価のために計算した。PCRプロトコルは、以下のプロファイルを有した:工程1)、95℃でホットスタートポリメラーゼの5分活性化;工程2)、95℃で10秒変性;工程3)、60℃で30秒プライマーアニーリング。工程2)+3)のサイクル数は40であった。2(−デルタデルタC(T))法(Livak KJ、およびSchmittgen TD: Analysis of relative gene expression data using real time quantitative PCR and the 2(-delta delta C(T))method. Methods 2001、25: 402-408)を遺伝子発現の相対比較に使用した。
【0113】
この試験の結果は
図10および11に示されており、イデユコゴメ抽出物が、培養中の表皮前駆細胞のコロニー形成効率を著しく向上できることを示している。これは、イデユコゴメ抽出物がケラチノサイトの幹細胞特性を維持すること、および該細胞が分化状態に入らないことを意味する。記載された幹細胞マーカー遺伝子は、前駆細胞ケラチノサイトにおいて上方制御されることが遺伝子発現レベルで観察され、これは同様に、ケラチノサイトの幹細胞特性が、イデユコゴメ抽出物の添加により培養中に刺激され得ることを示している。
【0114】
要約すると、実施例4〜7は、イデユコゴメ抽出物が、エラスチンならびにルミカンおよびコラーゲンなどの周囲の細胞外皮膚構造の合成により皮膚弾力性を強化するための強力な化粧品であることを示している。さらに、イデユコゴメ抽出物は、UVストレス皮膚に適用された場合、この抗炎症活性によって皮膚の表皮恒常性の回復をもたらす。さらに、イデユコゴメ抽出物は、表皮における幹細胞機能を維持し、したがって、皮膚老化に対する保護として最も重要な機能の3つを維持するのに役立つ。
【0115】
実施例8:イデユコゴメ抽出物による処理による毛髪の機械的特性の改善
一房の天然のヨーロッパ人毛(レミー(remis)、ダブルドローン(double-drawn)、長さ23cm(自由毛髪21cm)、幅2.0cm、重さ2.0g、焦げ茶色)を、蛇口から水を流しながら10秒以内で濡らした。この後、30%強度水性過酸化水素溶液8gを、Basler Blond Claireさらし粉4gと混合し、25%強度水性アンモニア溶液2mlを添加し、全てを再混合し、得られたペースト8gを、保護してあった髪の房に櫛および手を用いて揉み込んだ。室温で30分の曝露時間後、約35℃の温度を有する水道水を流しながら、髪の房を2分間洗浄し、次いで、同時に梳きながら電子ヘアドライヤーで3分間乾燥させた。髪の房を濡らすことから始まる手順全体を1回繰り返した。
【0116】
この後、毛髪40本を髪の房から取り出し、各ケースで長さ3cmの1本の毛髪の真ん中の部分を、内部にプラスチック被覆を備える2個の真鍮スリーブの間でカールさせた。個々の毛髪の平均面積は、Dia-stron FDAS760繊維次元解析システムおよびUvWin PCアプリケーションソフトウェアを用いて測定した。この後すぐに、毛髪試料をDia−stron Tensil Tester MTT 670の試料カートリッジに移し、各ケースでクエン酸によりpH7にしてあった完全脱塩水で処理した。「単一繊維法(single fibre method)」(伸長20%、速度20mm/分、ゲージ力2、最大荷重200、破壊閾値5、試料サイズ30mm)による個々の毛髪の房の測定を開始した。この後、毛髪試料を試料カートリッジから小さいプラスチック皿に取り出し、完全脱塩水で覆った。30分後、水を除去し、毛髪試料をリーブオンヘアコンディショナーで覆った(表2)。
【0117】
【表2】
【0118】
30分の曝露時間後、各個々の毛髪試料を、約35℃の温度を有する流水噴射下で6秒間洗浄した。毛髪試料を22℃、50%相対大気湿度で一晩乾燥させた。この後、Dia−stron Tensile Tester MTT 670の試料カートリッジに移すことから始まる、個々の毛髪試料の測定を繰り返した。
【0119】
データは、弾力性のパラメーターモジュール(Eモジュール;
図12)を用いてスプレッドシートにより評価する。Eモジュールは、線形弾性挙動(「フックの範囲」)での固体の変形時の応力と伸長との間の関係を表す。故に、パラメーターEモジュールは毛髪繊維引張強度を表し、単位N/mm
2を有する。
【0120】
引張応力−伸長測定の結果により示されるように、リーブオンヘアコンディショナーへの2.5%イデユコゴメ抽出物の添加は、25N/mm
2のパラメーターEモジュールの増加をもたらした。これは、損傷した毛髪の引張強度がイデユコゴメ抽出物により増加することを示すものであった。
【0121】
実施例9:イデユコゴメ抽出物による皮膚弾力性の増大および皮膚構造の改善
イデユコゴメ抽出物の局所適用による皮膚弾力性の増大および皮膚構造の改善を示すために、ヒト無作為化ビヒクル対照盲検適用モニタリングを8週間の期間にわたって行った。
【0122】
パネルは、33〜59歳(平均47±8歳)の被験者を含んだ。被験者20人はビヒクル製剤、被験者19人は1%イデユコゴメ抽出物を含むビヒクル製剤、被験者21人は5%イデユコゴメ抽出物を含むビヒクル製剤を受け取った。製剤は、前腕の内側に1日2回適用した(朝および晩)。スクイズボトルから2絞り(0.25〜0.30g)を揉み込んで適用した。製剤の組成を表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
適用期は8週間に及んだ。測定したパラメーターは、適用期前のT0および8週間後のT8時点の前腕の内側におけるCutometer MPA 580(Courage+Khazaka electronic GmbH)を用いた皮膚弾力性、およびVisioscan VC 98(Courage+Khazaka electronic GmbH)を用いた皮膚表面の密度(consistency)であった。登録したデータは、数回の反復測定の個々の値に基づき計算される平均であった。それぞれの測定前の晩には、製剤は適用されなかった。
【0125】
ヒトインビボ試験により示されたように、皮膚弾力性パラメーターR1の低下が8週間の期間にわたって観察された。R1は、最初の伸長サイクル後の皮膚の残っている変形であり、元の状態に戻る皮膚の能力を表す。パラメーターR1は、年齢とともに大いに上昇する。R1の低下は、1%イデユコゴメ抽出物を適用した人の群で約5mmであったが、5%イデユコゴメ抽出物を適用した人の群における低下は3倍顕著であった(
図13)。
【0126】
類似の傾向は、皮膚弾力性パラメーターR4に関して見出された。再変形能力は伸長が追加するごとに低下することから、R4は、皮膚の3伸長サイクルの最後のサイクルの最小振幅であり、皮膚の「疲労症状」を可視化する(
図14)。
【0127】
皮膚のきめパラメーターtexの増加もまた見出された。パラメーターtexは、皮膚の色合いの均一性を表す。改善されたtex値は、改善された皮膚の見た目と関連する。30および24単位のtexパラメーター値の顕著な増加が、それぞれ1%イデユコゴメおよび5%イデユコゴメ群両方で8週間後に見出された(
図15)。
【0128】
最後に、皮膚表面パラメーターおよび容積パラメーターの低下が見出された。皮膚表面パラメーターは測定された皮膚の全表面を表し、一方、容積パラメーターは、皮膚のしわを埋めるのに必要とされる容積を表す。しわの深さおよび数の低減の場合、皮膚表面パラメーターおよび容積パラメーターは、1%イデユコゴメ群で7単位の減少が見出されたのに対し、5%イデユコゴメ群は、この値の15単位のより大きい低下を示した(
図16)。
【0129】
ヒトインビボ試験の結果は、本発明による化粧品製剤の使用が、皮膚弾力性および皮膚の張りの増大、皮膚構造の改善、ならびにしわの深さおよび数の低減をもたらすことを示している。
【0130】
製剤の例
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
【表14】
【0142】
【表15】
【0143】
【表16】
【0144】
【表17】