特許第5997277号(P5997277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997277
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ゴルフボール用軟質コーティング
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/14 20060101AFI20160915BHJP
   A63B 37/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   A63B37/14
   A63B37/00 214
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-527222(P2014-527222)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公表番号】特表2014-524335(P2014-524335A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012051597
(87)【国際公開番号】WO2013028626
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年5月27日
(31)【優先権主張番号】13/217,062
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314006455
【氏名又は名称】ナイキ イノヴェイト シーヴィー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ジェイ ケネディ
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】市川 八州史
(72)【発明者】
【氏名】アーサー モリナリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ヨンツ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドレー シー トトマーク
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−543253(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0089419(US,A1)
【文献】 特表平11−512948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00 − 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質外部表面コーティングを含んでなるゴルフボールであって、
上記軟質外部表面コーティングは、低表面エネルギー組成物を組み込んでいることで、(a)ASTM D3363スケールにおいて2Bの硬度または(b)ASTM D2134スケールにおいて35未満の硬度を有し、さらには、上記軟質外部表面コーティングは、40ダイン/cm(40×10−3N/m)未満の表面エネルギーを有することを特徴とする、ゴルフボール。
【請求項2】
上記軟質外部表面コーティングがポリ尿素を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記低表面エネルギー組成物は、ヒドロキシル機能性フルオロポリマー、アミン機能性フルオロポリマー、ヒドロキシル機能性シリコーン、アミン機能性シリコーン、およびこれらの組合せからなる群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
軟質外部表面コーティングを含んでなるゴルフボールであって、
上記軟質外部表面コーティングは、該軟質外部表面コーティングに40ダイン/cm(40×10−3N/m)未満の表面エネルギーをもたらす低表面エネルギー組成物を組み込んでいることで、(a)ASTM D3363スケールにおいて2Bの硬度または(b)ASTM D2134スケールにおいて35未満の硬度を有し、
該ゴルフボールは、該ゴルフボールが未コーテンングであるとした場合と比較して、実質的にドライバーショットにおける性能を低下させることなく短いショットにおいて高スピン速度を示すことを特徴とする、ゴルフボール。
【請求項5】
上記軟質外部表面コーティングがポリ尿素を含んでなることを特徴とする請求項4に記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記低表面エネルギー組成物は、ヒドロキシル機能性シリコーン、アミン機能性シリコーン、ヒドロキシル機能性フルオロポリマー、アミン機能性フルオロポリマー、およびこれらの組合せからなる群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項4に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、軟質コーティングを有するゴルフボールに関する。特に本発明は、耐久性を保持し、低エネルギー表面を有する軟質表面コーティングまたは外部表面コーティングを有するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールは、技術の変遷によって変化した重要なスポーツ用品である。例えば、ボールは当初、木製であったが、その後、ゆでて柔らかくした羽毛をレザーの袋に詰め込むことによって製造された。この袋は典型的に白色に着色され、乾燥すると堅くなった。しかし、羽毛ボールは水分を吸収して分離する傾向があったので、1ラウンドをプレーするために多くのボールが必要とされた。また、これらの羽毛ボールは、木製ボールと比較して費用がかかった。
【0003】
羽毛および木製ボールは、ガタパーチャボールが製造されるまで使用された。ガタパーチャボールは比較的安価で容易に製造された。またガタパーチャボールは、羽毛ボールと比較して、かなり耐久性があり、飛翔特性を改善するために表面を容易に粗くすることができたため良好に機能し、したがって普及していった。しかし、このボールは、飛翔時に破損する傾向を示した。
【0004】
次に、他の弾性材料を含んでなるゴルフボールが開発された。例えば、ゴムコアと、このコアにきつく巻き付けられた弾性糸を有するゴルフボールが開発された。このように巻いたものを、当初はガタパーチャで、その後はバラタでカバーした。しかし、バラタでカバーされたゴルフボールは、ボールを打つことに熟練していないプレーヤーによってしばしば損傷を受ける。したがって、特にイオノマー化合物(Surlyn(登録商標)はイオノマーの1種の商標名である)またはポリウレタン化合物を含んでなるカバーを含む、より強靭なカバーが開発された。
【0005】
現代のゴルフボールの1種の表面は、典型的に硬質かつ耐久性である。この種類のゴルフボールは、一般に硬質カバーおよびゴムコアを有する2ピースである。特にイオノマー化合物を含んでなるカバーは硬質である。他の種類のゴルフボールは、比較的軟質(低硬度、すなわち、65ショアD未満)カバーおよび比較的硬質のマントル層を有する多層である。また現代のゴルフボールは、たいてい、摩耗耐性の比較的硬質のポリウレタン表面コーティングでコーティングされている。そのような硬質コーティングは、典型的にボールに光沢のある外観および耐久性を与える。そのような材料の硬度評価は、3H鉛筆の硬度にほぼ相当し、Sword Rocker硬度で40より高いことが多い。
【0006】
硬質カバーゴルフボールは、低スピン、耐久性、ならびに他の望ましいゴルフボール特性および特徴をもたらす。しかし、硬質カバーゴルフボールは、選択されたショットにおいて制御を維持し、最大距離を達成することを求める熟練したプレーヤーには好まれない。典型的に、ティーショットまたはドライバーショットなどのショットにおいて最大距離を達成するように意図されるゴルフボールは、ティーから離れる時に、よりスピンしないように設計されている。しばしば、高度に熟練したゴルファーが好むそのようなゴルフボールは、硬度の低い(65ショアD未満)カバーおよび硬度のより高いマントル層を有する多層構造を有する。このような構造によって、ティーから離れる時に低スピンが可能となるが、より短いアイアンおよびウェッジショットにおいてはより高いスピンがもたらされる。ショートアイアンおよびウェッジショットにおけるより高いスピンによって、着弾時にゴルフボールのより良好な制御が可能となる。そのような着弾制御は、高スピン速度と、そのようなスピンを制御する能力によって与えられる。硬質カバー/ゴルフクラブフェース相互作用の性質のため(少なくとも部分的に、硬質カバーがクラブフェースを滑る傾向があるため)、硬質カバーゴルフボールのスピンを制御することは困難である。
【0007】
現代の軟質ゴルフボールは、スピン制御を提供し、かつ摩耗、ゴルフボールが真正面に打たれないときのカット、および継続的なプレーによる性能低下に耐性がある。しかし、あまりに軟質な表面を有するゴルフボールは、泥を集める傾向を示し、そしてプレーヤーがポケットなどの貯蔵場所から取り出すことが困難である傾向を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、実質的にドライブ性能を低下させることなく、高スピン速度およびそのようなスピンを制御する能力を提供し、なお耐久性を維持する、最上位のゴルフボールの技術におけるニーズがある。また泥の付着しにくい表面を有するボールが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、軟質外部表面コーティングを有するゴルフボールを提供する。特に、本発明の一態様は、ASTM D3363スケールでほぼHB未満の硬度を有するポリウレタン軟質外部表面コーティングを有するゴルフボールを提供する。
【0010】
他の態様において、本発明は、Sward Rocker硬度試験としても知られているASTM D2134において約40未満の硬度を有する軟質外部表面コーティング、特にポリウレタン軟質外部表面コーティングを有するゴルフボールを提供する。
【0011】
他の態様において、本発明は、ASTM D3363スケールでほぼHB未満の硬度を有する軟質外部表面コーティングで外部表面層をコーティングする工程を含んでなる、外部表面層を有するゴルフボールの製造方法を提供する。
【0012】
なお他の態様において、本発明は、ASTM D2134において約40未満の硬度を有する軟質外部表面コーティングで外部表面層をコーティングする工程を含んでなる、外部表面層を有するゴルフボールの製造方法を提供する。
【0013】
さらに他の態様において、本発明は、軟質表面コーティングを含んでなるゴルフボールであって、未コーティングのボールまたはより硬質の表面コーティングを有するゴルフボールの性能と比較して実質的にドライバーショットにおける性能を低下させることなく、短いショットにおいて高スピン速度を示すゴルフボールを提供する。
【0014】
本発明の他の態様は、軟質外部表面コーティングにおいて低エネルギー表面を提供する。
【0015】
本発明の他のシステム、方法、特徴および利点は、以下の図面および詳細な説明を考察することによって、当業者に明白であるか、または明白となろう。全てのそのような追加的なシステム、方法、特徴および利点は、本記載および本要約に含まれ、本発明の範囲内であり、そして以下の請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0016】
本発明は、以下の図面および記載を参照することによって、より良好に理解することができる。図中の構成要素は、必ずしも一定の比率ではなく、その代わりに、本発明の原理を説明することが強調される。また、図中の同様の参照番号は、各図に亘って互いに対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に従う軟質外部表面コーティングを有する多層ゴルフボールの概略図である。
図2図2は、ゴルフボールの外側カバーの表面上のプライマー層上の外部表面コーティングを示す概略図である。
図3図3は、鉛筆硬度計の例示である。
図4図4は、固体表面上での液滴に対するヤングの式の適用の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概して、本発明は、軟質外部表面コーティングとも呼ばれる軟質表面コーティングを有するゴルフボールに関する。一実施形態において、本発明は、ASTM D3363スケールでほぼHB未満の硬度を有する軟質外部表面コーティング、特にポリウレタン軟質外部表面コーティングを有するゴルフボールを提供する。
【0019】
他の態様において、本発明は、Sward Rocker硬度試験としても知られているASTM D2134スケールにおいて約40未満の硬度を有する軟質表面コーティング、特にポリウレタン軟質外部表面コーティングを有するゴルフボールを提供する。
【0020】
他の態様において、本発明は、ASTM D3363スケールでほぼHB未満の硬度を有する軟質外部表面コーティングで外部表面層をコーティングする工程を含んでなる、外部表面層を有するゴルフボールの製造方法を提供する。
【0021】
なお他の態様において、本発明は、ASTM D2134において約40未満の硬度を有する軟質外部表面コーティングで外部表面層をコーティングする工程を含む、外部表面層を有するゴルフボールの製造方法を提供する。
【0022】
さらに他の態様において、本発明は、軟質表面コーティングが施されたゴルフボールであって、未コーティングのボールまたはより硬質の表面コーティングを有するゴルフボールの性能と比較して実質的にドライバーショットにおける性能を低下させることなく、短いショットにおいて高スピン速度を示すゴルフボールを提供する。
【0023】
なお他の態様において、本発明は、低エネルギー軟質外部表面コーティングを有し、軟質外部表面コーティングが泥を集めることなく、典型的な方法で取り扱われ得るゴルフボールを提供する。
【0024】
本発明者らは、軟質表面コーティングが、未コーティングのボールまたはより硬質の表面コーティングを有するゴルフボールの性能と比較して実質的にドライバーショットにおける性能を低下させることなく、短いショットにおいて高スピン速度、したがって、良好な制御を示すゴルフボールをもたらすということを見出した。したがって、軟質表面コーティングは、ドライブは良好であるが、ショートアイアンショットでスピンを与えることにはあまり応じない硬質の耐久性のある表面を有するゴルフボールを、ドライバーショット特性および特徴を実質的に維持し、そしてショートアイアンショットに関してはスピン速度、したがって、非常に制御し易いゴルフボールに変える。本発明者らは常識にとらわれることはないが、軟質表面コーティングは、スピンを与えながら、ショートアイアンフェースがゴルフボールと接触している時間を長くし、これに対して、ドライバーショットでは、クラブフェース/ゴルフボール接触の性質を考慮すると、接触時間が長くなってもスピンを与えないと考えられる。したがって、ドライバーショット特性および特徴は実質的に維持される。本明細書に使用される場合、「ドライバー」は、約40°未満のロフト角を有するクラブであると考えられ、そして「ショートアイアン」は約40°より高いロフト角を有するクラブである。したがって、全てのウッドは、「ドライバー」であると考えられ、アイアンの多くもそうであると言える。
【0025】
また軟質外部表面コーティングは、典型的な硬質表面コーティングを置き換えることによって、比較的軟質なカバーの多層ゴルフボールのスピン速度(したがって、制御)を改善する。このような置き換えによって、グリーンまでの短いウェッジショットにおいてスピンの改善がもたらされる。
【0026】
いくつかの実施形態において、軟質外部表面コーティングはポリウレタンからなる。また発明者らは、ヒドロキシル機能化またはアミン機能化ポリジメチルシロキサン(PDS)またはフルオロポリマーを組み込むことによって、泥収集を少なくとも低下させないように低エネルギー表面を形成するように、軟質表面コーティングを変性することができることを見出した。添加されたPDSまたはフルオロポリマーは、ポリウレタン軟質外部表面コーティングと一緒に、泥収集を少なくとも低下させるか、または泥を集めず、そしてプレーヤーがゴルフボールをポケットに入れ、そしてポケットからゴルフボールを取り出すことなどのボールの取り扱いをより容易にさせる低エネルギー表面を形成する。本明細書の実施形態の軟質外部表面コーティングなどの軟質表面は高エネルギー表面であり、そして本明細書に記載される低エネルギー表面を提供することは直観に反していることを当業者は認識する。しかし、本発明者らは、軟質外部表面コーティングに、より低いエネルギー表面を与えることによって、軟質外部表面コーティングの軟質の性質、ならびに性能特性および特徴、特にゴルフボールが短いショットにおいてゴルフクラブで打たれる時のスピンの増加を維持しながら、ゴルフボールが泥をはじき、そして取り扱いを向上させることを見出した。
【0027】
軟質表面コーティングの実施形態で適切にコーティングされたゴルフボールは、適切なゴルフボールを形成する層の配列で、種々の材料から製造することができる。当業者が認識するように、ゴルフボールを形成し、そしてデザイナーまたは利用者が求める特性および特徴をゴルフボールに与えるように、多くの組成物が有効に使用される。ゴルフボールおよびゴルフボールの層の製造でしばしば使用される組成物には、限定されないが、典型的に高密度、粘性、またはその両方である液体、天然および合成ゴム、ならびにポリウレタンおよびイオノマーなどの熱可塑性および熱硬化性ポリマーが含まれる。ゴルフボールの各層は、異なる種類の組成物から製造されることが多い。特には、内側コアは、ゴム、熱可塑性、熱硬化性材料またはイオノマー材料からなるものが多い。これらの組成物は、他の組成物、および充填剤、添加剤などとブレンドされてもよい。硬質の耐久性のある組成物が、外側カバー用に選択されてもよい。またポリウレタンなどの軟質の耐久性のある組成物も外側カバー用に選択されてもよい。いずれかの層の配列で、これらの材料を含む種々のゴルフボールは、本明細書に開示され、主張される軟質表面コーティングの実施形態によって適切にカバーされる。
【0028】
本明細書の実施形態のゴルフボールは、「適合」または「非適合」ゴルフボールであることができる。すなわち、本明細書に記載される軟質表面コーティングを有するゴルフボールは、United States Golf Association(USGA)などの運営団体の1つまたは複数の、例えば、重量、直径、物理的デザインならびに性能特性および特徴に関係する規則に適合してもよい。そのようなボールは、典型的にプロトーナメントプレーに必要とされる。しかし、アマチュアによる使用、トレーニング用および他の用途のための非適合ボールも本明細書に考察される。
【0029】
便宜上、本発明の対象は、4ピースボールに関するものとして詳細に記載される。4ピースボールは、4層の異なる層を有し、それぞれ連続した層が、直前の層を実質的に完全に取り囲んでいる。しかし、本明細書に記載され、主張される軟質表面コーティングは、軟質表面コーティングが適切なゴルフボール、または実際に、他のいずれの対象にも適用することができることを当業者は認識する。したがって、1ピースボール、2ピースボールおよび3ピースボールは、本発明の実施形態の軟質表面層で適切にカバーすることができる。同様に、軟質表面層は、5ピースボール、6ピースボールまたは多層を有する種々のゴルフボールに適用することができる。
【0030】
図1は、ゴルフボールの外部表面上に軟質表面コーティングを有する4ピースゴルフボールの中央断面を例示する。ゴルフボール100は、中心または内側コア層101、内側コア層101を実質的に完全に取り囲むか、包囲するか、または包含する外側コア層102、外側コア層102を実質的に完全に取り囲むか、包囲するか、または包含する内側カバー層103、内側カバー層103を実質的に完全に取り囲むか、包囲するか、または包含する外側カバー層104、および外側カバー層104を取り囲むか、包囲するか、または包含する軟質表面コーティング105を含んでなる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態は、ポリウレタンを含んでなる軟質表面コーティング、すなわち、最外側カバー層の外側上の軟質ポリウレタンコーティングに関する。当業者の認識では、ウレタンは、一般に、イソシアネート部分とヒドロキシル部分とが反応してウレタン部分を形成することにより形成される。ポリマーを形成するために、反応体は、典型的に、各分子が2つの他の分子と確実に反応することができるように、各分子上に少なくとも2つの機能性部分を有する。同様に、アミン部分はイソシアネート部分と反応し、尿素部分を形成する。したがって、アミン含有およびヒドロキシル含有化合物は、イソシアネート含有化合物と反応して、ポリマー材料を形成することができる。ヒドロキシル含有化合物が優勢であれば、ポリウレタンが生じる。鎖延長剤および触媒などの他の反応体が存在してもよい。ウレタン形成反応、ならびに他および鎖延長反応体が当業者に周知である。本明細書に示されるガイダンスによって、当業者は、満足できるポリウレタンコーティングを形成することが可能である。
【0032】
本発明の実施形態は、コーティングを形成するためのイソシアネート部分と、ヒドロキシル含有反応体およびアミン含有反応体の両方との反応から生じる、ポリウレタン/ポリ尿素コーティングを含んでなる軟質外部表面コーティングを有するゴルフボールに関する。
【0033】
他の実施形態は、イソシアネートおよびアミン部分のポリ尿素反応生成物を含んでなる軟質外部表面コーティングを有するゴルフボールに関する。
【0034】
したがって、実施形態は、ポリウレタン、ポリ尿素およびこれらのブレンドからなる群から選択される組成物を含んでなる軟質表面コーティングに関する。
【0035】
ゴルフボールの外側カバー層は、典型的なコーティング作業に適用可能なコーティングであることが多い。コーティング作業は、典型的に、ブラッシング、噴霧による、または種々の適切な適用方法による、溶媒およびコーティングを含んでなる液体の適用を含む。次いで、溶媒を蒸発させ、そしてコーティングが表面上に形成される。溶媒が蒸発する速度を高めるために、ゴルフボールを加熱してもよい。典型的に、溶媒を蒸発し、コーティングを形成するために十分な時間で、温度を約150°F(約66℃)〜約200°F(約93℃)まで増加させる。いずれのコーティング作業も、外側カバー層の適用のために適切である。
【0036】
同様に、一実施形態において、外側カバー層を有するゴルフボールは、コーティング作業で形成されたポリウレタン軟質表面コーティングをさらに含んでなる。実施形態において、コーティングは、典型的に約500より高いヒドロキシル当量を有するポリオールと、典型的に約100より高いNCO当量を有するイソシアネートとの反応によって形成される。本明細書中で使用される「当量」とは、その部分(官能基)を含有する化合物の単位部分(官能基)当りの分子量であることを当業者は認識する。したがって、本明細書に使用される場合、ポリオールは、典型的にヒドロキシル部分(ヒドロキシル基)当り約500より高い分子量を有し、イソシアネートはNCO部分当り約100より高い分子量を有する。
【0037】
一実施形態において、ポリウレタン軟質外部表面コーティングは、2種の構成要素の組み合わせによって形成される。第1の構成要素はポリオール反応体および溶媒を含んでなり、そして第2の構成要素はイソシアネート化合物を含んでなる。いずれの構成要素も、触媒、溶媒および他の反応体と添加剤を含有することができる。
【0038】
ポリオール反応体は、典型的に少なくとも約500のヒドロキシル当量を有する。ポリオール反応体は、少なくとも2つのヒドロキシル、典型的に末端ヒドロキシル部分を有する。ポリオール反応体の例には、ポリオキシエチレングリコール(PEG 1000以上)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG 1000以上)およびポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリエステルポリオール、ラクトンをベースとするポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ならびにアクリルポリオールなどの少なくとも約500のヒドロキシル当量を有するポリエーテルポリオールが含まれる。2種類以上のポリオールを組み合わせて使用されてもよい。
【0039】
より典型的な実施形態において、直鎖ポリオールが使用される。特定の実施形態において、少なくとも約500のヒドロキシル当量を有する直鎖ポリエステルポリオールが使用される。特定の適切なポリオールは、Desmophen(登録商標)1652という約1060の当量を有する直鎖ポリエステルポリオールである。Desmophen(登録商標)1652は溶剤を含まないが、溶媒中のポリオールも適切に使用される。例えば、Desmophen(登録商標)670A−80は、500のヒドロキシル当量を有するポリエステルであり、酢酸ブチル溶媒中の高固形分(約80%)溶液として利用可能である。Desmophen(登録商標)製品はBayerから調達可能である。本明細書に示されるガイダンスによって、当業者は適切なポリオール反応体を特定することが可能である。
【0040】
イソシアネート反応体は、典型的に少なくとも約100のNCO当量を有する。イソシアネート反応体は、少なくとも2つのNCO部分を有する。適切なイソシアネート反応体の例には、脂肪族ジイソシアネートおよびビウレット、トリマー、芳香族ポリイソシアネート、ならびにナフテン系または脂環式ポリイソシアネートが含まれる。2種以上のジイソシアネートを組み合わせて使用してもよい。ナフテン系または脂環式ジイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)である。芳香族ジイソシアネートの実例は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である。典型的に、直鎖脂肪族ジイソシアネートが使用される。脂肪族ジイソシアネートの実例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。特に、低粘度の溶剤を含まない、約179のNCO当量を有する脂肪族ポリイソシアネートは、溶媒を含まないTolonate(登録商標)HDB−LVとしてPerstorp Coatingsから調達可能である。この製品は、HDIビウレットをベースとする。本明細書に示されるガイダンスによって、当業者は適切なイソシアネート反応体を特定することが可能である。
【0041】
反応速度を促進するために、触媒が使用されてもよい。適切な触媒には、限定されないが、ビスマス触媒;オクチル酸亜鉛;オクチル酸第1スズ;ジラウリン酸ジブチルスズ(Air Products and Chemicals,Inc.製のDABCO(登録商標)T−12)、ジ酢酸ジブチルスズ(DABCO(登録商標)T−1)、オクチル酸第1スズ(DABCO(登録商標)T−9)、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、ジブチルスズジメトキシド(FASCAT(登録商標)−4211)、ジメチル−ビス[1−オキソンデシル)オキシ]第1スズ(FORMEZ(登録商標)UL−28)、ジ−n−オクチルスズビス−イソオクチルメルカプトアセテート(FORMEZ(登録商標)UL−29)などのスズ触媒;ならびにトリエチレンジアミン(DABCO(登録商標)33−LV)、トリエチルアミンおよびトリブチルアミンなどのアミン触媒;ならびにそれらの混合物が含まれる。様々な触媒が、様々な反応速度を提供するか、または様々な条件(典型的には触媒が活性である活性温度)を必要とすることを当業者は認識する。本明細書に示されるガイダンスによって、当業者は、適切な触媒を特定し、選択することが可能である。
【0042】
一実施形態において、触媒は、ジラウリン酸ジブチルスズである。触媒は、典型的に、反応性混合物の構成要素の反応に触媒作用を及ぼすために十分な量で添加される。一実施形態において、触媒は、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の量で存在する。例えば、ジラウリン酸ジブチルスズなどのスズ触媒を使用する場合、触媒は、好ましくは、約0.005%〜約1%の量で存在する。他の実施形態において、触媒は約0.05重量%以上の量で存在する。他の実施形態において、触媒は約0.5重量%以上の量で存在する。
【0043】
典型的に全組成物の約0〜約0.04重量%の低濃度のスズ触媒を使用する場合、適切な反応速度を達成するために高温度が要求され、その結果、プレポリマーの分解がもたらされ得る。従来通りではない高濃度まで触媒の量を増加させることによって、同程度の硬化段階を保持しつつプロセス温度の低下が可能となる。また、高濃度の触媒を使用することにより混合速度が低減される。したがって、一実施形態において、スズ触媒は、組成物の約0.01重量%〜約0.55重量%の量で存在する。他の実施形態において、約0.05%〜約0.4%のスズ触媒が組成物に存在する。なお他の実施形態において、スズ触媒は、約0.1%〜約0.25%の量で存在する。
【0044】
実施形態において、コーティングは、ヒドロキシル部分を含んでなる流れおよびイソシアネート部分を含んでなる流れの2つの構成要素の流れの組み合わせによって形成される。典型的に、第1の流れは、ヒドロキシル含有化合物を含有する化合物と、ヒドロキシル含有化合物のため、および結果として生じるコーティングのための溶媒との混合物を含んでなり、そして触媒はこの構成要素混合物に含まれる。ヒドロキシル機能性またはアミン機能性を有する他の化合物などの他の反応体および添加剤も、この構成要素混合物に含まれ得る。典型的に、第2の構成要素の流れは、イソシアネート含有化合物を含んでなる。他の反応体、溶媒および添加剤も、この構成要素の流れに含まれ得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、これらの流れは混合されて、ゴルフボールに施される。コーティングは、ゴルフボールの外部表面に直接施されてもよい。いくつかの実施形態において、コーティングとゴルフボールとの間の接着性を改善するプライマーが使用されてもよい。図2に概略的に示されるように、プライマー層202は、ゴルフボール表面203と外部表面コーティング105との間にある。ポリウレタン軟質外部表面コーティングを施すためにゴルフボールの表面を調製する種々のプライマーが適切である。プライマーの種類がゴルフボールの外側カバー層の化学組成に関係することを当業者は認識する。例えば、ポリウレタン分散系を使うことでポリウレタンカバーを有効に下塗りすることができる。適切なポリウレタン分散系は、水中の脂肪族ポリエステルウレタン樹脂/n−メチル−2−ピロリドンのアニオン分散系であるBayhydrol(登録商標)110などの、水中のポリエステルポリオールおよびイソシアネート分散系をベースとする。同様に、同様のポリウレタン分散系を使うことでイオノマーカバー層を下塗りすることができる。本明細書に示されるガイダンスによって、当業者は、選択的に適切なプライマーを特定し、選択することが可能である。
【0046】
典型的に、軟質表面コーティングは、薄いコーティング、すなわち、約4ミクロン〜約50ミクロンのコーティングである。典型的には、コーティングの厚さは、約10ミクロン〜約30ミクロンである。薄いコーティングは、所望の特性および特徴を与えて、耐久性のある表面を提供する。より厚いコーティングは、ゴルフボールの飛びを短くする傾向がある。本発明者らは常識にとらわれないが、より厚いコーティングはディンプルパターンの効率を低下させると考えられる。
【0047】
得られるコーティングの実施形態は、低硬度または軟質の表面を提供する。したがって、ボールは、グリーン周囲でのショットなどの短いショットにおいて改善されたスピン制御を有する。ウェッジおよびハイアイアンなどの高ロフトクラブは、それらの軟質表面を考慮して、そのようにコーティングされたゴルフボールにスピンを与えることができる。しかし、ドライバーおよび番号の小さいアイアンなどの低ロフトクラブは、同程度のスピンを与えない。本発明者らは常識にとらわれないが、低ロフトクラブと高ロフトクラブとの間のゴルフボール/クラブ相互作用の異なる性質が、著しくスピンの差異の一因となると考えられる。したがって、特にゴルフボールが低ロフトクラブで打たれた時に移動する距離によって評価されるドライブ性能は、スピン速度が未コーティングのゴルフボールまたは従来のより硬質の外部コーティングを有するゴルフボールのスピン速度と実質的に同等であるため、実質的に影響を受けないが、高ロフトクラブによるスピン速度および制御は非常に改善される。
【0048】
軟質表面コーティングの硬度は、この種類のコーティングのそのような測定のために既知のいずれかの手段で決定または測定することができる。2種の硬度試験、ASTM D3363およびASTM D2134は、本明細書のコーティングの硬度を決定するために、都合よくは使用される。
【0049】
ASTM D3363は、鉛筆によるフィルム硬度を決定するための試験方法である。この試験方法は、既知の硬度の絵画用鉛筆または鉛筆に関する基材において、有機コーティングのフィルム硬度の急速で安価な決定のための手順を含む。鉛筆硬度測定は、コーティング産業において、透明および着色有機コーティングフィルムの硬度を決定するために長年使用されている。この試験方法は、特に加熱による強制乾燥の場合、これらのコーティングの硬化を決定するためにも使用されている。
【0050】
図3は、ASTM D3363に記載される鉛筆硬度スケール300を例示する。本発明の実施形態は、典型的に、スケール300においてHBの鉛筆硬度を有するコーティングを与える。硬質のコーティングは、所望の特性および特徴を与えない傾向がある。典型的には、実施形態は、B、さらに典型的には2Bの鉛筆硬度を有する。比較のために記すと、ゴルフボール用の多くのコーティングは、3Hを超える鉛筆硬度評価を有する。
【0051】
軟質表面コーティングの硬度を決定するための他の適切な方法は、Sward型ロッカーによる有機コーティングの硬度を決定するための試験方法である。この決定方法は、ASTM D2134に記載される。この試験方法は、コーティング産業で広範囲に使用される特定の装置を使用して、有機コーティングの表面硬度の相対的な程度の決定を含む。Sward型硬度ロッカー器具は、コーティング産業において、有機コーティングの硬化および最終的な表面硬度を測定するための非破壊試験器具として、半世紀以上の間使用されている。
【0052】
Sward・Rocker硬度試験機は、当業者に周知である。この試験機は、有機コーティングの硬度の決定のために使用され、より軟質の表面上で揺動デバイスの振動の振幅がより迅速に低下するという原理に基づく。典型的に、結果は、100%を表す板ガラス規格上で生じた揺れの数の百分率として、試験ピースから得られる。
【0053】
本明細書の軟質表面コーティングの実施形態は、典型的に約40未満、より典型的に約35未満のSward・Rocker硬度試験値を有する。より硬質のコーティングは、所望の特性および特徴を与えない傾向がある。比較のために、ゴルフボールのための多くのコーティングは、少なくとも40、より典型的に少なくとも45のSward・Rocker硬度を有する。
【0054】
その上にポリウレタン軟質表面コーティングの実施形態を有するゴルフボールは、高い表面エネルギーおよび高い摩擦係数を有する。他の高エネルギーの表面コーティングも、軟質外部表面コーティングの利点を提供し得る。そのようなコーティングは、本明細書に記載のポリウレタン軟質外部表面コーティングのものと同様の特性と特徴を有するが、異なる組成物を有してもよい。そのようなコーティングは、ゴルフボールの表面に噴霧するのに適切な形態で施されることが多い。
【0055】
本発明の実施形態は、低表面エネルギーを有する軟質表面コーティングに関する。高ロフトショットにおけるスピン速度を向上させることを意図したコーティングの表面エネルギーを低下させることは矛盾するようだが、本発明者らは、典型的に約45°より高いロフト角を有する高ロフトクラブのフェースが、十分なエネルギーを有するゴルフボールの表面に接触し、低表面エネルギーがスピンに及ぼす影響をほとんど有さないことを見出した。
【0056】
したがって、実施形態は、コーティングの表面エネルギーを低下させるために、軟質表面コーティングに「低エネルギー」組成物を組み込む。低エネルギー組成物は、摩擦係数を低下させる。低表面エネルギーを有する本発明の実施形態は、低い硬度のみでなく、低い表面エネルギーおよび低い摩擦係数も有する。摩擦係数が低下することによって、シュート、チューブおよび他の装置にゴルフボールが固着する傾向が低減し、製造中の取り扱いが容易となる。より低い摩擦係数によって、ゴルフボールをポケットに入れて、次いでゴルフボールを取り戻すことなどのプレーヤーによるゴルフボールの取り扱いが容易になる。また低エネルギー表面は、ボールに泥が固着する傾向を低下させる傾向がある。
【0057】
低エネルギー組成物には、機能化シリコーンおよびシロキサンポリマー、ならびにフルオロポリマー化合物が含まれる。シリコーンおよびシロキサンポリマーには、限定されないが、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリエチルフェニルシロキサン、ポリメチルシクロヘキシルシロキサン、ポリメチルブチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリブチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルヘキシルシロキサン、およびカルボニル末端シロキサンが含まれる。ポリジメチルシロキサン(PDS)が典型的に使用される。例示的なフルオロポリマー化合物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0058】
組成物がポリウレタン形成反応体と反応可能でない場合、組成物をポリウレタン軟質表面コーティングに組み込むことが可能であるように、典型的には、低エネルギー組成物が機能化されている。機能化は、典型的に、機能化組成物がポリウレタン形成反応体と反応してポリウレタンポリマー構造の一部となる機会を与える。この反応によって、低エネルギー組成物がコーティングから分離する傾向が低減する。
【0059】
したがって、低エネルギー組成物は、ポリウレタン反応体と反応してコーティングを形成するように機能化されている。したがって、機能化部分は、典型的に、ヒドロキシル部分またはアミン部分であり、これらは両方ともイソシアネートのNCO部分と反応する。当業者は、ヒドロキシル部分がポリエステルポリオールとの反応によってシリコーンまたはシロキサンに組み込まれることを認識する。本明細書に示されるガイダンスによって、当業者は、適切な機能化化合物を特定し、選択することが可能である。
【0060】
表面エネルギーは、液体/蒸気界面が固体/液体界面と交わる角である接触角θに反映される。この角401は、ヤングの式のグラフ図である図4中に例示される。図4に見られるように、液滴402は、蒸気404の存在下で固体403に配置される。図4に見られるように、固体表面403上の液滴402は、切断された球を形成し、その表面は固体と角θを形成する。所与の液体に関して、固体403の表面エネルギーが高いほど、θは小さい。
【0061】
ヤングの式は、3つの(固体、液体および気体)相の間の表面張力を関連づける。ヤングの式は以下の通りである:
γsv=γsl+γlvCOSθ
(式中、θは液体/蒸気界面が固体/液体界面と交わる角であり、
γsvは固体/蒸気表面張力であり、
γslは固体/液体表面張力であり、
γlvは液体/蒸気表面張力である)。
【0062】
接触角θは、典型的に、表面における液体の接触角を測定する手段を提供する角度測定器(ゴニオメーター)を使用して測定される。典型的に利用される液体は、脱イオン水である。本明細書中の実施形態のヒドロキシル機能化シリコーンを含んでなる軟質表面コーティング中に低エネルギー組成物が存在する場合、ポリウレタン軟質表面コーティングの実施形態は、典型的に、約40ダイン/cm未満の表面エネルギーを有する。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明の対象を例示するが、限定はしない。本発明の対象は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0064】
実施例1
以下の通り、ポリオール化合物、溶媒および触媒を含んでなる構成要素A、ならびにイソシアネートを含んでなる構成要素Bを混合し、そして典型的なコーティング作業に従ってゴルフボールの表面に適用する。
【0065】
【表1】
【0066】
構成要素Aを構成要素Bと混合し、次いで、混合物をゴルフボールの表面上に典型的なコーティング作業によって適用する。150°F(約66℃)で30分間、コーティングを硬化させ、溶媒を蒸発させる。ゴルフボールを冷却し、次いで包装する。
【0067】
実施例1のゴルフボールが軟質高エネルギーの表面を有することで、ゴルフボールが高ロフトクラブで打たれる時に、実質的にドライバーショットの特性および特徴に悪影響を及ぼすことなく、ゴルフボールにスピンを与える機会がもたらされる。
【0068】
ゴルフボールのコーティングは、鉛筆硬度試験においてHB未満、そしてSward・Rocker硬度試験において約40未満の表面硬度を有する。
【0069】
実施例2
以下の通り、ポリオール化合物、溶媒および触媒を含んでなる構成要素A、ならびにイソシアネートを含んでなる構成要素Bを混合し、そして典型的なコーティング作業に従ってゴルフボールの表面に適用する。
【0070】
【表2】
【0071】
構成要素Aを構成要素Bと混合し、次いで、混合物をゴルフボールの表面上に典型的なコーティング作業によって適用する。150°F(約66℃)で30分間、コーティングを硬化させ、溶媒を蒸発させる。ゴルフボールを冷却し、次いで包装する。
【0072】
実施例2のゴルフボールは軟質低エネルギー表面を有し、ゴルフボールが打たれる時に、泥を引きつけず、凝集する傾向があることによって製造を中断させることなく、高ロフトクラブで打たれる時に、スピンを与えることを低下することなく、ゴルフボールにスピンを与える機会がもたらされる。またこのゴルフボールは、低ロフトクラブで打たれる時にも、実質的にドライバーショットの特性および特徴に悪影響を及ぼすことなく、良好に機能する。
【0073】
ゴルフボールのコーティングは、鉛筆硬度試験においてHB未満、Sward・Rocker硬度試験において約40未満の表面硬度を有する。またゴルフボール上のコーティングは、約40ダイン/cm未満の表面エネルギーを有する。
【0074】
本発明の様々な実施形態を記載したが、この記載は、限定するためのものではなく、例示することが意図され、本発明の範囲内であるより多くの実施形態および実施が可能であることは、当業者に明白であろう。したがって、本発明は、添付の請求の範囲およびそれらの均等物を除いて、限定されない。また、添付の請求の範囲内で様々な修正および変更が行われてもよい。
図1
図2
図3
図4