特許第5997278号(P5997278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許5997278タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置
<>
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000002
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000003
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000004
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000005
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000006
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000007
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000008
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000009
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000010
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000011
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000012
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000013
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000014
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000015
  • 特許5997278-タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997278
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】タグ配列付き2次元cDNAライブラリーデバイス、並びにこれを用いた遺伝子発現解析方法及び遺伝子発現解析装置
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20160915BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160915BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   C12N15/00 AZNA
   C12M1/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-527831(P2014-527831)
(86)(22)【出願日】2012年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2012069303
(87)【国際公開番号】WO2014020657
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2014年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(72)【発明者】
【氏名】白井 正敬
(72)【発明者】
【氏名】神原 秀記
(72)【発明者】
【氏名】谷口 妃代美
(72)【発明者】
【氏名】田邉 麻衣子
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/140224(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/068088(WO,A1)
【文献】 特開2010−046073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12M 1/00
C12N 15/09
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検核酸捕捉用配列と、既知の配列を有しかつ支持体表面又は表面近傍の位置の違いによって異なる細胞認識用タグ配列と、分子認識用タグ配列とを含む核酸プローブが支持体表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定された支持体において、該核酸プローブにターゲットとなる被検核酸をハイブリダイズさせる工程、
上記被検核酸に対して相補的なDNA鎖の合成を行って、上記タグ配列を含むDNA相補鎖から構成されるcDNAライブラリーを作製する工程、並びに
上記cDNAライブラリーの全部又は一部を核酸増幅する工程
を含み、但し上記分子認識用タグ配列が増幅ドメイン又は切断ドメインを含まない、遺伝子発現解析方法。
【請求項2】
子認識用タグ配列が5〜30塩基のランダム配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ターゲットとなる被検核酸が、生体組織を構成する細胞内のmRNAであり、細胞認識用タグ配列が、該細胞のサイズよりも小さい領域毎に異なる配列からなるものとすることによって、生体組織を構成する細胞の平面内の位置情報を保存した形でcDNAライブラリーを作製する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
生体組織が組織切片であり、該組織切片を構成する細胞内のmRNAを、領域毎に異なる細胞認識用タグ配列を含む核酸プローブが固定された支持体へ転写する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ターゲットとなる被検核酸が、2次元的に保持したアレー状に配列させた複数の細胞内のmRNAであり、細胞認識用タグ配列が、個々の細胞毎に異なる配列からなるものとすることによって、該複数の細胞の位置情報を保存した形でcDNAライブラリーを作製する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
核酸プローブが、転写因子のプロモーター配列をさらに含み、核酸増幅工程が、該転写因子を用いたcDNAからcRNAへの転写反応を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
増幅された産物を配列決定する工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
被検核酸捕捉用配列と、既知の配列を有しかつ支持体表面又は表面近傍の位置の違いによって異なる細胞認識用タグ配列と、既知の配列を有する共通のプライマー配列と、分子認識用タグ配列とを含む核酸プローブが、支持体表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定されている支持体を備えることを特徴とする遺伝子発現解析用デバイス(但し上記分子認識用タグ配列が増幅ドメイン又は切断ドメインを含まない)
【請求項9】
子認識用タグ配列が5〜30塩基のランダム配列を有する、請求項8に記載の遺伝子発現解析用デバイス。
【請求項10】
被検核酸捕捉用配列が、ターゲットとなる被検核酸の一部に対して相補的な配列を含む、請求項8又は9に記載の遺伝子発現解析用デバイス。
【請求項11】
支持体が、波長300nm〜10000nmの光うち少なくとも一部の波長の光に対して透明な材料から作製されている、請求項8〜10のいずれか1項に記載の遺伝子発現解析用デバイス。
【請求項12】
支持体が細孔シートである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の遺伝子発現解析用デバイス。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の遺伝子発現解析用デバイスと、
ターゲットとなる被検核酸に対して相補的なDNA鎖を合成するための試薬を上記遺伝子発現解析用デバイスに導入するための手段と、
核酸増幅を行うための試薬を上記遺伝子発現解析用デバイスに導入するための手段と、
上記遺伝子発現解析用デバイスの温度を制御するための手段と
を備えることを特徴とする遺伝子発現解析装置。
【請求項14】
顕微鏡と、
上記ターゲットとなる被検核酸を細胞から抽出する前に上記顕微鏡により観察した顕微鏡イメージと、上記デバイスを用いて得られる上記被検核酸の定量データとを対応させる手段と
をさらに備える、請求項13に記載の遺伝子発現解析装置。
【請求項15】
生体分子捕捉用配列と、既知の配列を有しかつ支持体表面又は表面近傍の位置の違いによって異なる細胞認識用タグ配列と、分子認識用タグ配列とを含むプローブ分子が、支持体表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定されている支持体と、
顕微鏡と、
上記生体分子を細胞から抽出する前に上記顕微鏡により観察した顕微鏡イメージと、上記支持体を用いて得られる上記生体分子の定量データとを対応させる手段と
を備えることを特徴とする遺伝子発現解析装置(但し上記分子認識用タグ配列が増幅ドメイン又は切断ドメインを含まない)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞における遺伝子の発現を解析するための方法、デバイス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現解析では、細胞群の中からmRNAを取り出し、相補鎖であるcDNAを作製してこれをPCRなどでコピー数を増幅し、DNAプローブアレー(DNAチップ)を用いてターゲットを対応するプローブ位置に捕獲して蛍光検出する方法が用いられている。しかし、PCR増幅やDNAチップを用いる方法は定量分析精度が低く、精度の高い遺伝子発現プロフィール分析方法が望まれていた。最近では1つの細胞からmRNAを抽出して定量分析を行う方法が望まれている。定量性の良い分析方法として定量PCRがあるが、これはターゲットと同じDNA配列を持つ標準試料を用意し、同じ条件下でPCR増幅して増幅の進行具合を蛍光プローブでモニターして比較することで定量分析を行う方法である。ターゲットが1細胞の場合には元々のmRNAの数が少なく定量分析しにくい。また、複数の遺伝子発現の定量分析を行うには試料を分割してそれぞれ独立に定量分析を行う必要がある。対象となる遺伝子の数が多く、発現量が少ない遺伝子が含まれる場合には試料分割により測定できない場合もある。
【0003】
このような状況下で本発明者の研究グループは全てのmRNAをcDNAに変え、ビーズ上に保持したcDNAライブラリー(全てのcDNAを含んだcDNA集合体)を作製して定量分析に利用する方法を考案した。そこではcDNAライブラリーを繰り返し利用することで試料分割による微量発現遺伝子の計測ミスを取り除き、1細胞中に含まれる複数遺伝子の発現量を正確に計測できることを示した。
【0004】
また、単一細胞中の微量なmRNAを逆転写することによってcDNAに変え、PCR増幅を用いて、核酸増幅した後、大規模DNAシーケンサーを用いてその増幅産物を配列決定し、シーケンシング結果を集計することによって、増幅後の核酸配列数をカウントし、これによって、mRNA分子数を推定する方法が用いられ始めている(非特許文献1)。この方法では、計測できる遺伝子数は、大規模DNAシーケンサーの並列数で上限が決まるため、2万数千種類あるすべての遺伝子が計測可能であるだけでなく、スプラシシングバリアントを含む十万種類の配列をカウンティングによって計測することも原理的に可能である。また、複数の反応槽の1つずつに細胞を1つずつ挿入し、細胞を識別するためのタグ配列を液相において反応槽に試薬として導入し、PCR増幅後にそれらの増幅産物をひとつにまとめて、大規模DNAシーケンサーにて配列解析を行うが、このときタグ配列を参照することによって、配列決定された増幅産物のもともと存在した細胞を同定することが可能である(非特許文献1)。
【0005】
一方、PCR増幅時には、遺伝子によって増幅率が異なるという増幅バイアスの問題が存在する。非特許文献2には、mRNAから逆転写を行う際にランダムな配列を導入し、この配列とターゲットのcDNAを同時に配列解析することによって、ランダムな配列導入後に実行するPCR増幅時に起きるPCRバイアスの影響をデータから取り除く方法が提案されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Islam, S.ら、Genome Research Vol.21, No.7, pp.1160-1167, 2011年
【非特許文献2】Kivioja, T.ら、Nature Methods, Vol.9, No.1, pp.72-74, 2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、組織を構成する1つ1つの細胞の中味を定量的に分析すること、組織の2次元情報を保った形で種々遺伝子の発現量を定量的にモニターすることが望まれている。
【0008】
上述した、ビーズ上のcDNAライブラリーを繰り返し定量することによって複数遺伝子の発現量を決定する方法では、繰り返し計測できる回数が10〜20回程度に制限されてしまうため、計測可能遺伝子数はある程度制限される。一方、逆転写及びPCR増幅後に大規模DNAシーケンサーを用いる方法では、計測遺伝子数は十分多くできるものの、一般に、核酸増幅倍率が遺伝子毎で異なったり、増幅倍率の再現性が低い。さらに、同時に計測可能な細胞数は100細胞程度以下であり、必要な試薬の費用も非常に高価である。
【0009】
また、両者いずれの場合にも、単一細胞中の遺伝子発現解析を実現するためには、一度細胞を単離して、個別の反応ウェルに導入し、細胞破砕や逆転写さらにはPCR増幅のための試薬をこれらの反応ウェルに分注しなければならない。そのため、多数の細胞を解析するためには、分注のためのロボットが必要となり、解析装置が大型化し高価になる。さらに、ロボットによる分注を排除するために、マイクロフルイディクスを用いて細胞からmRNAを抽出し、核酸増幅する場合においては、反応液流路を列状に配列しなければならないため、並列数に比例してチップサイズが大きくなるため、マイクロフルィディックデバイスのサイズが大型化して、高価になる。
【0010】
多数の細胞を一度に低コストで遺伝子発現解析を実現するために、cDNAライブラリーシートを用いる場合には、多数の細胞の一括計測が可能であるが、解析可能な遺伝子の数を増やすために繰り返し、cDNAライブラリーを用いる必要があった。そのため、解析遺伝子数に制限があった。
【0011】
そこで本発明の目的は、生体組織を構成する複数の細胞において発現する遺伝子について、1細胞レベルで、それらの細胞の位置情報を保った形で、遺伝子の発現解析を行うための方法及び手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、遺伝子発現解析方法であって、被検核酸捕捉用配列と、既知の配列を有しかつ支持体表面又は表面近傍の位置の違いによって異なる細胞認識用タグ配列とを含む核酸プローブが支持体表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定された支持体において、該核酸プローブにターゲットとなる被検核酸をハイブリダイズさせる工程、上記被検核酸に対して相補的なDNA鎖の合成を行って、上記タグ配列を含むDNA相補鎖から構成されるcDNAライブラリーを作製する工程、並びに上記cDNAライブラリーの全部又は一部を核酸増幅する工程を含む遺伝子発現解析方法を提供する。また本発明は、上記方法を実施するためのデバイス及び装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、遺伝子発現解析を行うための方法、デバイス及び装置が提供される。例えば、本発明では、生体組織内の全ての細胞について発現している遺伝子のmRNAをcDNAに変換して細胞の組織内での位置情報を保持したままcDNAライブラリーを作製できるため、注目する任意の位置の遺伝子発現を、又は全ての位置の遺伝子発現を知ることができる。これにより、組織の中で遺伝子情報がどのように広がっていくかなどの、これまでに得られなかった種々の情報を可視化することができる。そのため、例えば本発明により、細胞又は組織における遺伝子情報の流れ、刺激が組織に与える影響など多くの新たな情報を得ることができる。従って、本発明は、遺伝子発現解析、細胞機能解析、生体組織の解析方法、病気の解明と診断方法、医薬品の開発などの分野で有用である。
【0014】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の方法の一例と、使用する遺伝子発現解析用デバイス(細孔アレーシート)の構成例及び使用態様を示す図である。
図2】本発明の方法の一例と、使用する遺伝子発現解析用デバイス(細孔アレーシート)の構成例及び使用態様を示す図である。
図3】細胞を捕獲するための反応セルの一例の上面及び断面を示す図である。
図4】分子認識用タグ配列を含むPCR増幅産物のシーケンシングデータを模式的に示す図である。
図5】本発明の方法の別の例と、使用する遺伝子発現解析用デバイス(細孔アレーシート)の構成例及び使用態様を示す図である。
図6】本発明の方法の別の例と、使用する遺伝子発現解析用デバイス(細孔アレーシート)の構成例及び使用態様を示す図である。
図7】本発明の方法の別の例と、使用する遺伝子発現解析用デバイス(細孔アレーシート)の構成例及び使用態様を示す図である。
図8】細胞アレーを調製するためのデバイスの一例の横断面及び断面を示す図である。
図9】細胞アレーを調製するためのデバイスの別の例の横断面及び断面を示す図である。
図10】cDNAライブラリーを構築するための遺伝子発現解析用デバイス(ビーズ)の構成例を示す図である。
図11】組織切片から遺伝子発現解析用デバイス(細孔アレーシート)中にcDNAライブラリーを構築する方法の模式図である。
図12】本発明の遺伝子発現解析用装置の構成例を示す図である。
図13】本発明の遺伝子発現解析用装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図14】本発明の遺伝子発現解析用装置の具体的な構成の別の例を示す図である。
図15】本発明の遺伝子発現解析用装置の具体的な構成の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、生体組織内の2次元細胞分布情報を保持した形で被検核酸(例えばmRNA)からcDNAライブラリーシートを作製する。このとき、その後の核酸増幅工程において得られる増幅産物がcDNAライブラリーシートから遊離しても増幅産物の一部の配列に既知のタグ配列(cDNAライブラリーシート上の位置又は領域を識別するための配列)が含まれるようにするため、cDNAライブラリーシートを作製するデバイス(支持体)の表面又はその表面近傍に、その既知のタグ配列と被検核酸を捕捉するための配列とを含む核酸プローブを固定する。このとき、核酸プローブには、核酸増幅工程において利用する共通の増幅用プライマー配列を、上記タグ配列よりも5’末端側に配置してもよい。cDNAライブラリーから核酸増幅工程によって得られた増幅産物をシーケンシングするか、又は蛍光計測などの光学的計測を行って定量することによって、遺伝子発現量を決定する。このとき、同時に得られるタグ配列の情報を取得することが可能であるから、cDNAライブラリーシート上の位置又は領域毎に特定の遺伝子の発現量を決定することが可能となる。定量にシーケンシングを用いた場合には、その並列数から決まる多数の遺伝子を定量することができる。また、蛍光計測を行った場合でも、核酸増幅工程を行うことによって高い蛍光検出感度が必要なくなることから、利用できる蛍光体の種類が増えるとともに、複数の蛍光体を組み合わせることも容易となり、同時に識別可能な遺伝子数を増やすことが可能となる。
【0017】
従って、本発明に係る遺伝子発現解析方法は、以下の工程:
被検核酸捕捉用配列と、既知の配列を有しかつ支持体表面又は表面近傍の位置の違いによって異なる細胞認識用タグ配列とを含む核酸プローブが支持体表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定された支持体において、該核酸プローブにターゲットとなる被検核酸をハイブリダイズさせる工程、
上記被検核酸に対して相補的なDNA鎖の合成を行って、上記タグ配列を含むDNA相補鎖から構成されるcDNAライブラリーを作製する工程、並びに
上記cDNAライブラリーの全部又は一部を核酸増幅する工程
を含む。
【0018】
本発明において「遺伝子発現解析」又は「生体分子発現解析」とは、サンプル(細胞、組織切片など)における遺伝子又は生体分子、すなわちターゲットとなる被検核酸の発現を定量的に分析すること、サンプルにおける遺伝子(被検核酸)又は生体分子の発現分布を分析すること、サンプルにおける特定の位置と遺伝子(被検核酸)又は生体分子発現量との相関データを得ることを意味する。
【0019】
サンプルは、遺伝子発現を解析しようとする生体由来サンプルであれば特に限定されるものではなく、細胞サンプル、組織サンプル、液体サンプルなどの任意のサンプルを用いることができる。具体的には、1細胞からなるサンプル、複数の細胞を含むサンプル、組織切片サンプル、複数の個々の細胞を2次元的に保持したアレー状に配列させたサンプルなどが挙げられる。
【0020】
またサンプルの由来となる生体も特に限定されるものではなく、脊椎動物(例えば哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、両生類など)、無脊椎動物(例えば昆虫、線虫、甲殻類など)、原生生物、植物、真菌、細菌、ウイルスなどの任意の生体に由来するサンプルを用いることができる。
【0021】
本発明の方法において、ターゲットとなる被検核酸としては、メッセンジャーRNA(mRNA)、非コードRNA(ncRNA)、microRNA、及びDNA、並びにそれらの断片を用いることができる。例えば、当技術分野で公知の方法によりサンプルに含まれる核酸を抽出して、被検核酸を調製することができる。例えば、Proteinase Kのようなタンパク質分解酵素、チオシアン酸グアニジン・グアニジン塩酸といったカオトロピック塩、Tween及びSDSといった界面活性剤、あるいは市販の細胞溶解用試薬を用いて、細胞を溶解し、それに含まれる核酸、すなわちDNA及びRNAを溶出することができる。被検核酸としてmRNAを用いる場合には、上記の細胞溶解により溶出された核酸のうち、DNAをDNA分解酵素(DNase)により分解し、被検核酸としてRNAのみを含む試料が得られる。
【0022】
本発明では、例えばターゲットとなる被検核酸の具体例は、限定されるものではないが、生体組織を構成する細胞内のmRNA、又は2次元的に保持したアレー状に配列させた複数の細胞内のmRNAである。
【0023】
使用する核酸プローブは、ターゲットとなる被検核酸を捕捉することができる配列(本明細書中、「被検核酸捕捉用配列」という)と、支持体の位置・領域の違いによって異なる配列(本明細書中、「細胞認識用タグ配列」という)とを少なくとも含む。
【0024】
被検核酸捕捉用配列は、ターゲットとなる被検核酸とハイブリダイズしてそれを捕捉することができるものであれば特に限定されるものではなく、当業者であれば、被検核酸の種類及び配列を考慮して適宜設計することができる。例えばターゲットとなる被検核酸がmRNAの場合には、被検核酸捕捉用配列としてポリT配列を用いることが好ましい。ポリT配列を含む核酸プローブ、すなわちオリゴ(dT)は、常法により合成することができ、オリゴ(dT)の重合度は、mRNAのポリA配列とハイブリダイズして、mRNAをオリゴ(dT)を含む核酸プローブが固定された支持体に捕捉しうる重合度であればよい。例えば、10〜30塩基、10〜20塩基、10〜15塩基程度とすることができる。またオリゴ(dT)配列には、その3'末端に2塩基のランダム配列を付加することが好ましい。それにより相補DNA鎖を合成する際のアーティファクトの量を大幅に低減させることが可能になる。そのようなランダム配列として、VN配列(VはA又はG又はCであり、NはA又はG又はC又はTである)がある。また例えばターゲットとなる被検核酸がmicroRNAやゲノムDNAである場合には、被検核酸捕捉用配列として、ランダム配列、ターゲット被検核酸の一部に相補的な配列を用いることができる。
【0025】
細胞認識用タグ配列は、任意の長さの既知配列からなるものとすることができる。例えば、5塩基の既知配列を使用することにより、45(1024)種類の異なる細胞認識用タグ配列を準備することができる。また例えば10塩基の既知配列を使用することにより、410種類の異なる細胞認識用タグ配列を準備することが可能となる。従って、細胞認識用タグ配列は、識別しようとする支持体上の位置又は領域の数に応じて、それらを識別することができる異なる細胞認識用タグ配列を準備することができるように長さを決定する。具体的には、5〜30塩基、5〜20塩基、5〜15塩基又は5〜10塩基とすることが好ましい。
【0026】
核酸プローブは、さらに分子認識用タグ配列を含むものであってもよい。分子認識用タグ配列は、一定の長さ(例えば5〜30塩基、好ましくは10〜20塩基、より好ましくは10〜15塩基)のランダム配列を有するものであれば、特に限定されるものではなく、既知の配列を有するものであっても又は未知の配列を有するものであってもよい。後に行う核酸増幅工程は、特に容量が大きい支持体(細孔シート、ビーズなど)において増幅を行った場合に、増幅対象の被検核酸の長さや配列構成、その存在位置などによって増幅効率にバイアスが生じる。分子認識用タグ配列を利用することによって、核酸増幅工程における増幅バイアスを補正し、正確な定量を行うことが可能となる。具体的な分子認識用タグ配列として、例えば配列番号25〜29に示されるランダム配列を用いることができる。
【0027】
また核酸プローブは、さらに共通のプライマー配列(増幅用共通配列)を含むものであってもよい。共通のプライマー配列は、核酸増幅を行うために適切な長さの既知配列を有するものであれば特に限定されるものではない。そのような共通プライマー配列は、当業者であれば適宜設計することが可能である。例えば、共通のプライマー配列は、10〜50塩基、15〜50塩基、15〜40塩基、15〜30塩基、15〜20塩基長とすることができる。このような共通のプライマー配列を核酸プローブに付加することによって、後の核酸増幅工程における増幅反応を簡便に実施することが可能となる。
【0028】
後述するように、核酸増幅工程において、転写因子によるcDNAからcRNAへの転写反応を行う場合には、核酸プローブは、さらに転写因子のプロモーター配列を含むことが好ましい。そのようなプロモータ配列としては、T7を用いるが他にSP6、T3などが挙げられる。核酸の増幅にはT7 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼの活性を用いる。核酸プローブに付加する転写因子のプロモーター配列は、使用する転写因子の種類に応じて選択することができる。例えば、転写因子としてT7 RNAポリメラーゼを使用する場合には、T7プロモーター配列(具体的は、例えば配列番号24の塩基1〜42番に示される配列)を核酸プローブに付加することができる。転写因子のプロモータ配列を用いた核酸増幅は等温増幅なため、温度サイクルを加えるための温度制御器が不要になるだけでなく、高温時にデバイス表面に固定したプローブDNAが脱離する可能性を低減することができる。
【0029】
核酸プローブにおける被検核酸捕捉用配列及び細胞認識用タグ配列の位置、そして存在する場合には、分子認識用タグ配列及び/又は共通のプライマー配列及び/又は転写因子のプロモーター配列の位置は、当業者であれば容易に理解し、設計することができる。
【0030】
本発明においては、核酸プローブを予め支持体の表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定しておく。これにより、ターゲットとなる被検核酸(又は生体分子)が含まれる細胞又は組織にダメージを及ぼすことなく、またロボットなどを使用することなく、個々の細胞に由来する被検核酸からの遺伝子情報を得ることが可能となる。特に、細胞又は組織にダメージを及ぼすことがないため、そのダメージに起因する遺伝子発現の変化を回避することができる。
【0031】
使用する支持体は、cDNAライブラリーの作製に当技術分野で一般的に使用されている材料で作製されたものであれば特に限定されるものではなく、例えばシート、メンブレン、ゲル薄膜、キャピラリープレート、ビーズ、フィルムなどである。その材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、白金、チタン、ニッケル等の金属;ステンレス等の合金;シリコン;ガラス、石英ガラス、溶融石英、合成石英、アルミナ及び感光性ガラス等のガラス材料(これらの材料は基本的に透明である);ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂及び塩化ビニル樹脂等のプラスチック(一般には透明でないが光学計測を可能とするために透明とすることが望ましい);アガロース、デキストラン、セルロース、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、キチン、キトサンが挙げられる。例えば支持体としてシートを用いる場合には、例えばアルミナ、ガラスなどからシートを作製することができる。また支持体としてゲル薄膜を用いる場合には、例えばアクリルアミドゲル、ゼラチン、修飾ポリエチレングリコール、修飾ポリビニルピロリドン、ハイドロゲルなどを用いてゲル薄膜を作製することができる。支持体としてメンブレンを用いる場合には、例えばセルロースアセテート、ニトロセルロース又はこれらの混合メンブレン、ナイロンメンブレンなどを用いることができる。支持体としてビーズを用いる場合には、樹脂材料(ポリスチレンなど)、酸化物(ガラスなど)、金属(鉄など)、セファロース、及びこれらの組み合わせなどからビーズを作製することができる。特に、操作の簡便性から、磁性ビーズを使用することが好ましい。一実施形態において、支持体は、波長300nm〜10000nmの光うち少なくとも一部の波長の光に対して透明な材料から作製されていることが好ましい。これにより、遺伝子発現の解析を支持体上で光学的に行うことが可能となる。
【0032】
ここで、cDNAライブラリーにおいて2次元位置情報を保持した状態でcDNAが保持されるように、支持体は2次元に区分された複数の微細な空間を有することが好ましい。例えば、シート、ゲル薄膜、キャピラリープレートに細孔を設けることにより(多孔性とする)、細孔シートを用いることにより、又は、セルなどのように区分された空間にビーズを敷き詰めることにより、このような複数の微細な空間を設定することができる。一実施形態では、支持体には、2次元に垂直な方向に複数の貫通孔が設けられ、少なくともその貫通孔の内壁に核酸プローブを固定し、核酸プローブ中の細胞認識用タグ配列は貫通孔の位置によって異なるものとする。このような構成とするのは、細胞を支持体に配置したときに、その直下の面積が被検核酸(例えばmRNA)の捕捉に利用できる面積である必要があるが、支持体表面上の面積はすべての被検核酸(例えばmRNA)を捕捉するためには十分ではなく、細胞直下の支持体の表面積を増大させなければならないからである。一方、複数の微細な空間を設定することによって表面積が増えた支持体を用いてcDNAライブラリーを作製する場合には、核酸増幅工程により得られる産物を支持体の外に取り出して配列解析等を行う際に、支持体の内部の方からの増幅産物はその表面付近からの増幅産物よりも支持体表面に非特異的に吸着する確率が低く、増幅産物にバイアスを生じさせてしまう。本発明では、この問題を解決するために、上述したような分子認識用タグ配列を核酸プローブに導入している。これによって、増幅産物を配列解析したとき、同じ分子認識用タグ配列をもった増幅産物は核酸増幅工程前には同じ分子であったことが分かるため、増幅工程でのバイアスを相殺することができる。このような支持体における微細な空間の間隔は、1細胞に相当するサイズであるか又は細胞のサイズよりも小さいことがより好ましい。
【0033】
支持体への核酸プローブの固定は、当技術分野で公知の任意の方法により行うことができる。例えば支持体の表面、細孔内部、メンブレンの繊維、ビーズ表面などに、共有結合、イオン結合、物理吸着、生物学的結合(例えば、ビオチンとアビジン又はストレプトアビジンとの結合、抗原と抗体との結合など)を利用して核酸プローブを固定することができる。また、スペーサー配列を介して核酸プローブを支持体に固定することも可能である。
【0034】
共有結合を介した核酸プローブの支持体への固定は、例えば、核酸プローブに官能基を導入しかつ該官能基と反応性の官能基を支持体表面に導入して両者を反応させることにより実施できる。例えば、核酸プローブにアミノ基を導入し、支持体に活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基又はイソシアネート基を導入することにより共有結合を形成できる。また、核酸プローブにメルカプト基を導入し、支持体に活性エステル基、マレイミド基又はジスルフィド基を導入してもよい。官能基を支持体の表面に導入する方法の一つとしては、所望の官能基を有するシランカップリング剤によって支持体を処理する方法が挙げられる。カップリング剤の例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-β-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等を用いることができる。結合部位となる官能基を支持体に導入する別の方法としては、プラズマ処理が挙げられる。また物理吸着によって核酸プローブを支持体に固定する方法としては、ポリ陽イオン(ポリリシン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等)で表面処理した支持体に、核酸プローブの荷電を利用して静電結合させる方法などが挙げられる。
【0035】
なお、支持体には、他の物質(核酸やタンパク質など)が吸着しないように、表面コーティングを行うことが好ましい。
【0036】
本発明の方法では、例えばターゲットとなる被検核酸が生体組織を構成する細胞内のmRNAであり、細胞認識用タグ配列が、該細胞のサイズよりも小さい領域毎に異なる配列からなるものとすることによって、生体組織を構成する細胞の平面内の位置情報を保存した形でcDNAライブラリーを作製することが可能である。これにより、生体組織を構成する細胞内又は細胞間での遺伝子発現の違いを解析することができる。ここで例えば生体組織が組織切片である場合には、組織切片を構成する細胞内のmRNAを、領域毎に異なる細胞認識用タグ配列を含む核酸プローブが固定された支持体へ転写することによって、組織切片を構成する細胞の平面内の位置情報を保存した形でcDNAライブラリーを作製することが可能である。これにより、複数の細胞間での遺伝子発現の違いを解析することができる。
【0037】
あるいは、本発明の方法では、例えばターゲットとなる被検核酸が、2次元的に保持したアレー状に配列させた複数の細胞内のmRNAであり、細胞認識用タグ配列が、個々の細胞毎に異なる配列からなるものとすることによって、該複数の細胞の位置情報を保存した形でcDNAライブラリーを作製することが可能である。
【0038】
細胞又は組織などのサンプル中の被検核酸を、支持体に固定された核酸プローブとハイブリダイズさせるには、サンプル中の被検核酸を上述のように抽出し、支持体と接触させる。その際に、例えば、核酸の負電荷性質を利用して、被検核酸を含むサンプルと支持体に電界を印加し、電気泳動によって支持体に固定された核酸プローブの近傍へと被検核酸を移動させる方法を用いることもできる。
【0039】
ハイブリダイゼーション反応は、核酸プローブを固定した支持体と被検核酸とをインキュベーションすることにより実施できる。かかるハイブリダイゼーションのためのインキュベーションは、温度70℃で5分程度穏やかな攪拌下で行い、その後0.1℃/秒程度でゆっくりと室温にまで温度を低下させることが好ましい。また、ハイブリダイゼーション反応後に、支持体から試薬や非結合成分を洗浄・除去することが好ましい。
【0040】
被検核酸と核酸プローブとをハイブリダイズさせた後、被検核酸又はその一部の配列に対して相補的なDNA鎖(cDNA)を合成する。この相補鎖合成は、当技術分野で公知の方法により行うことができる。例えば被検核酸がmRNAなどのRNAの場合には、例えば逆転写酵素を用いた逆転写反応によってcDNAを合成することができる。また被検核酸がDNAの場合には、例えばポリメラーゼを用いた複製反応によってcDNAを合成することができる。合成反応後は、被検核酸を、例えばRNaseを用いて分解除去する。この結果、支持体には、タグ配列と被検核酸に対応するcDNAから構成されるcDNAライブラリーが作製される。作製されたcDNAライブラリーは、好ましくは支持体の2次元に区分された複数の微細な空間にcDNAが保持されている。
【0041】
cDNA合成後、cDNAライブラリー(支持体)を洗浄して除去する操作を実施することにより、残留試薬、例えば、細胞溶解試薬及びDNA分解酵素を除去することができ、その後の核酸増幅工程を阻害されることなく実施することができる。
【0042】
上述のように作製されたcDNAライブラリーは、各操作の後に洗浄を行うことによって繰り返し使用することができ、同じcDNAライブラリーを用いて後述の核酸増幅工程や遺伝子発現の検出(例えば配列決定)工程を複数回行うことが可能である。
【0043】
また任意により、上述のように作製されたcDNAライブラリーに含まれるcDNAを移動させることにより、又はcDNAライブラリーに含まれるcDNAに対応する核酸断片を生成することにより、元のcDNAライブラリーに含まれるcDNAの情報を液相に移すことができる。
【0044】
続いて、上記のように作製されたcDNAライブラリーの全部又は一部を核酸増幅する。核酸増幅工程では、まず、遺伝子発現の解析対象となる遺伝子に特異的な配列(本明細書において「遺伝子特異的配列」ともいう)を含むプライマーを、cDNAライブラリーに保持されているcDNAにアニールさせ、被検核酸の一部と、上述した核酸プローブに含まれる各配列とを含むcDNA鎖を生成する。その際、プライマーには、遺伝子特異的配列として、解析対象遺伝子の3'末端から特定の距離にある配列を用いることによって、複数の遺伝子を解析する場合に核酸増幅工程において得られる増幅産物のサイズを平均化することができる。また、プライマーには、上述した核酸プローブに含まれる共通のプライマー配列に対応する共通のプライマー配列(例えば、核酸プローブに含まれる共通のフォワードプライマー配列に対応する共通のリバースプライマー配列)を付加することによって、この後の核酸増幅反応を簡便かつ効率的に実施することが可能となる。
【0045】
核酸増幅反応としては、当技術分野で公知の任意の方法を用いることができ、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、Nucleic Acid Sequence-Based Amplification(NASBA)法、Loop-Mediated Isothermal Amplification(LAMP)法、ローリングサークル増幅(RCA)反応が挙げられる。また当業者であれば、採用する増幅反応に応じて、使用する核酸プローブを適宜設計することができる。
【0046】
あるいは、上述した核酸プローブに転写因子のプロモーター配列が含まれている場合には、核酸増幅工程において、該転写因子を用いたcDNAからcRNAへの転写反応を行ってもよい。そのような転写因子としては、上述のように、T7 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼなどが挙げられる。cRNAへの転写を行った後、再度、cDNAへの相補鎖合成と核酸増幅反応を行うことができる。
【0047】
核酸増幅工程の後、得られる増幅産物を利用して、当技術分野で公知の任意の方法により遺伝子発現を解析することができる。例えば、一実施形態では、増幅産物を配列決定することにより、解析対象の遺伝子の発現の有無、発現している位置又は領域(細胞認識用タグ配列に基づいて)、発現量(分子認識用タグ配列に基づいて補正する)などを解析することができる。また別の実施形態では、上記遺伝子特異的配列に対して相補的な配列を有する標識した核酸プローブを利用して、cDNAライブラリを構成するcDNA鎖又は得られる増幅産物に該標識核酸プローブをハイブリダイズさせ、標識に基づいて解析対象の遺伝子の発現を検出する(例えば光学的に検出する)ことができる。そのような検出に使用する核酸プローブは、当業者であれば適宜設計することができる。使用する標識もまた当技術分野で公知の任意の標識を用いることができ、例えば蛍光標識(Cy3、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)など)、化学発光標識(ルシフェリンなど)、酵素標識(ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼなど)、放射性標識(トリチウム、ヨウ素125など)が挙げられる。さらに別の実施形態では、上記遺伝子特異的配列に対して相補的な配列を有する核酸プローブを利用して核酸増幅反応を行い、増幅の有無を化学発光又は蛍光に基づいて検出することによって、解析対象の遺伝子の発現を解析することができる。
【0048】
本発明においては、上述のとおり得られたcDNAライブラリーにおける遺伝子発現の解析結果と、サンプル(細胞、組織など)の2次元位置情報とを対応させることにより、細胞又は組織における特定の位置と遺伝子発現との相関データを得ることも可能である。そのようなサンプルの2次元位置情報は、例えば細胞サンプル又は組織切片サンプルの顕微鏡像、他の標識法により得られる蛍光像又は化学発光像などである。
【0049】
さらに別の態様において、本発明の方法では、上述したように被検核酸を核酸プローブとハイブリダイズさせる代わりに、任意の生体分子を、該生体分子を捕捉するための配列(例えば、該生体分子と特異的に結合することができるリガンド、具体的には抗体又はアプタマーなど)と細胞認識用タグ配列とを含むプローブ分子とハイブリダイズさせて、支持体上で生体分子の発現を解析して定量データを得、また該生体分子を細胞から抽出する前に顕微鏡により観察して顕微鏡イメージを得て、その顕微鏡イメージと、生体分子の定量データとを対応させることも可能である。このような方法において解析対象となる生体分子としては、タンパク質、ペプチド核酸、高分子(ポリマー)、低分子などの任意の分子が挙げられる。特異的な結合を利用して支持体に捕捉するため、特異的に結合するリガンドが存在する生体分子であることが好ましい。例えば、生体分子としてタンパク質を選択し、特異的に結合するリガンド(生体分子捕捉用配列)として抗体又はアプタマーを選択することができる。
【0050】
また本発明は、上述したような遺伝子発現解析方法を実施するためのデバイス及び装置に関する。
【0051】
本発明に係る遺伝子発現解析用デバイスは、被検核酸捕捉用配列と、既知の配列を有しかつ支持体表面又は表面近傍の位置の違いによって異なる細胞認識用タグ配列と、既知の配列を有する共通のプライマー配列とを含む核酸プローブが、支持体表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定されている支持体を備える。核酸プローブは、分子認識用タグ配列をさらに含むものであってもよい。核酸プローブ及び支持体については、上述したとおりである。
【0052】
また本発明に係る遺伝子発現解析用装置は、一実施形態では、
上述した遺伝子発現解析用デバイスと、
ターゲットとなる被検核酸に対して相補的なDNA鎖を合成するための試薬を上記遺伝子発現解析用デバイスに導入するための手段と、
核酸増幅を行うための試薬を上記遺伝子発現解析用デバイスに導入するための手段と、
上記遺伝子発現解析用デバイスの温度を制御するための手段と
を備える。
【0053】
上記温度制御手段は、核酸増幅工程において増幅反応を実施するために適した温度制御手段であれば特に限定されるものではない。また上記遺伝子発現解析用装置は、顕微鏡と、上記ターゲットとなる被検核酸を細胞から抽出する前に顕微鏡により観察した顕微鏡イメージと、上記デバイスを用いて得られる上記被検核酸の定量データとを対応させる手段とをさらに備えてもよい。
【0054】
別の実施形態では、本発明に係る生体分子発現解析用装置は、
生体分子捕捉用配列と、既知の配列を有しかつ支持体表面又は表面近傍の位置の違いによって異なる細胞認識用タグ配列とを含むプローブ分子が、支持体表面又は表面近傍に2次元的に分布して固定されている支持体と、
顕微鏡と、
上記生体分子を細胞から抽出する前に上記顕微鏡により観察した顕微鏡イメージと、上記支持体を用いて得られる上記生体分子の定量データとを対応させる手段と
を備える。
【0055】
上述した遺伝子発現解析用装置及び生体分子発現解析用装置において、顕微鏡は、細胞(アレー状に配列された細胞を含む)又は組織などのサンプルを観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡、ラマン顕微鏡、微分干渉顕微鏡、レーザー走査共焦点蛍光顕微鏡、非線形ラマン顕微鏡(CARS顕微鏡、SRS顕微鏡、RIKE顕微鏡)、IR顕微鏡などを用いることができる。
【0056】
上述した遺伝子発現解析用装置及び生体分子発現解析用装置は、支持体上に細胞を捕獲するための手段(例えば支持体上に細胞をアレー状に配列させるための手段)を備えるものであってもよい。
【実施例】
【0057】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の具体例について説明する。ただし、これらの実施例は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0058】
[実施例1]
本実施例は、シート状の細胞群から中に含まれるmRNAの位置情報を保持した形で2次元cDNAライブラリーシートを細孔アレーシート(遺伝子発現解析用デバイスの一例)中に構築して用いた例である。以下、細孔が2次元状に多数形成されたシートを細孔アレーシートと呼び、そこにcDNAライブラリーが形成されたものをcDNAライブラリー細孔アレーシートと呼ぶことにする。この方法の概念図と、使用する遺伝子発現解析用デバイス(細孔アレーシート)の構成例及び使用態様を図1図2に示した。
【0059】
この方法では、シート状に配置した細胞2の位置情報を保存した状態でmRNAの抽出と細孔アレーシート1内部に固定化されたDNAプローブ6へのmRNA 4の捕捉(図1(a))、シート1内部での逆転写(1st cDNA鎖9の合成)によるcDNAライブラリーの作製(図1(b))、引き続き、2nd cDNA鎖21の合成(図2(c),(d))、及びPCR増幅(図2(e))から構成される。
【0060】
細胞の位置情報を保存してcDNAライブラリーを作製するために、細胞2の直下へmRNA 4を抽出し、シート1内部でmRNA 4を捕捉する必要がある。これを行うために、細胞の破砕と核酸(mRNA 4)の電気泳動を同時に行う。捕捉したmRNAが元々存在していた細胞の位置の情報を配列情報に転写するために、シート1内部に固定されたDNAプローブ6は、シートの位置又は領域によって異なる配列を有する細胞認識用タグ配列を含み、このDNAプローブでmRNAを捕捉する。図1(a)中の細孔アレーシート1上の異なるパタン3は異なる細胞認識用タグ配列を有するDNAプローブ6が固定されていることを示す。このmRNA捕捉用DNAプローブ6は、5’末端方向から、PCR増幅用共通配列(Forward方向)、細胞認識用タグ配列、分子認識用タグ配列、及びオリゴ(dT)配列で構成される。PCR増幅用共通配列をDNAプローブへ導入することで、後続のPCR増幅工程においてこの配列を共通プライマーとして利用することができる。また、細胞認識用タグ配列(例えば5塩基)をDNAプローブへ導入することによって、45=1024の位置又は領域(例えば45=1024個の単一細胞)を認識することが可能となる。すなわち、一度に1024個の単一細胞からcDNAライブラリーを調製することができるため、試薬コスト及び労力が1/1024へ削減できる効果があるとともに、最終的に得られる次世代シーケンサーの配列データが、どの細胞又は位置若しくは領域由来であるかを認識することが可能となる。さらに、分子認識用タグ配列(例えば15塩基)をDNAプローブへ導入することにより、415=1.1x109の被検分子(ここではmRNA)を識別することができるため、次世代シーケンサーで得られる膨大な解読データが、どの分子由来であるかを識別することが可能となる。すわなち、増幅工程ではDNAの配列や長さ、増幅反応を行う容積などにより増幅効率にバイアスが生じるが、分子認識用タグ配列を利用することにより増幅工程で生じた遺伝子間の増幅バイアスを修正することができるため、始めに試料中に存在していたmRNA量を高い精度で定量することが可能となる。最も3’側に位置するオリゴ(dT)配列は、被検核酸捕捉用配列であり、mRNAの3’側に付加されているポリAテールとハイブリダイズし、mRNAを捕捉するために利用される(図1(a))。ここでは、DNAプローブ6として、30塩基のPCR増幅用共通配列(Forward方向)、5塩基の細胞認識用タグ配列、15塩基のランダム配列からなる分子認識用タグ配列、及び18塩基のオリゴ(dT)配列+2塩基のVN配列を含めた(配列番号1)。
【0061】
本実施例ではmRNAを解析するために捕捉用DNAプローブの一部にポリT配列を用いたが、microRNAやゲノム解析を行う場合には、ポリT配列の代わりにランダム配列や解析対象の配列と相補的な配列の一部を用いてもよい。
【0062】
次に、cDNAライブラリーシート作製方法について詳述する。cDNAライブラリーを作製するための細孔アレーシートとしては、多孔質のガラスからなるモノリスシート、毛細管を束ねてスライスしたキャピラリープレート、ナイロンメンブレン又はゲル薄膜など種々のものを用いることができるが、ここではアルミナを陽極酸化して得た細孔アレーシートを用いた。このようなシートは陽極酸化により自作することもできるが、孔径20nm〜200nmのものが市販品として入手可能である。ここでは孔径200nmで厚さが60μm、直径25mmの細孔アレーシート1を用いた例について説明するが、細孔アレーのシートの形状はこれに限定されるものではない。シート1に形成された細孔5はシート1の厚さ方向に貫通しており、細孔同士は完全に独立である。表面は親水性で、表面へのタンパク質の吸着が極めて少なく、酵素反応が効率よく進む。まず、細孔アレーシート1の表面をシランカップリングなどの処理をしてDNAプローブ6を細孔表面に固定する。DNAプローブ6は平均30〜100nm2に一個の割合で表面に固定されるので、4〜10x106個のDNAプローブが1つの孔に固定される。次いで表面吸着を防止するために表面コート剤で表面をコートする。この表面コートはプローブ固定と同時に行ってもよい。このDNAプローブ密度はこの空間を通過するmRNAをほぼ100%の効率でDNAプローブに捕獲できる密度である。
【0063】
次に、細胞群からmRNAを抽出し、cDNAライブラリーを細孔アレーシートに作製する方法について記す。細胞膜を破壊するための細胞溶解試薬7(たとえば表面活性剤と酵素の混合液)を含むゲルを、細孔アレーシート1の上部に図1(a)に示すように設置する。ここで2はサンプルの細胞群であり、7が細胞溶解試薬を含むゲルである。次いで、シート状の細胞サンプルを載せた上部を、電解質を含んだ溶液と接触させる。もちろん直接細胞が電解質に触れてもよいがゲルなどを通して接触させてもよい。一方、下部のゲル8も細孔を通って電解質を含んだ溶液と接触させ、細胞シート1の上下方向に電界がかかるようにする。負に帯電しているmRNA 4は細孔5を通して下部に電気泳動するが、細孔5の中でmRNA 4のポリAテールがDNAプローブ6のオリゴ(dT)配列に捕捉される。図1(a)の右側に示すように、mRNA 4を細孔5中に捕獲した後、サンプル及びゲルシート7は取り除くが、ゲル材料として温度により相変化するゲルである低融点アガロースゲルを用いると都合が良い。すなわち、温度を上げることにより液状になるので洗い流すことが可能になる。
【0064】
続いて、細孔5中のDNAプローブ6により捕捉したmRNA 4を鋳型にして1st cDNA鎖9を合成するが、本工程では逆転写酵素及び合成基質を含む溶液で細孔部5を満たし、50℃にゆっくり昇温して50分ほど相補鎖合成反応を行う(図1(b))。反応終了後、RNaseを細孔5を通して流してmRNA 4を分解除去する。次いでアルカリ変性剤を含む液及び洗浄液を細孔5に通して流し、残存物及び分解物を除去する。ここまでのプロセスで細孔5内には組織細胞の位置を反映した図1(b)に示すようなcDNAライブラリーシートが構築される。
【0065】
続いて、PCR増幅用共通配列(Reverse)が付加された複数(〜100種)のターゲット遺伝子特異的配列プライマー20を1st cDNA鎖9へアニールさせ(図2(c))、相補鎖伸長反応により2nd cDNA鎖21を合成させる(図2(d))。すなわちマルチプレックス条件で2nd cDNA鎖合成を行う。これにより、複数のターゲット遺伝子について、PCR増幅用共通配列(Forward/Reverse)を両端に持ち、細胞認識用タグ配列、分子認識用タグ配列、及び遺伝子特異的配列がその中に含まれる2本鎖cDNA 22が合成される。また本実施例では、一例として、20種類(ATP5B、GAPDH、GUSB、HMBS、HPRT1、RPL4、RPLP1、RPS18、RPL13A、RPS20、ALDOA、B2M、EEF1G、SDHA、TBP、VIM、RPLP0、RPLP2、RPLP27及びOAZ1)のターゲット遺伝子について、ターゲット遺伝子のポリAテールから109±8塩基上流部分の20±5塩基を遺伝子特異的配列として用いた(それぞれ配列番号3〜22)が、これは、後続のPCR増幅工程において、PCR産物サイズを約200塩基に統一するためである。PCR産物サイズを統一することで、煩雑なサイズフラクション精製の工程(電気泳動→ゲルの切り出し→PCR産物の抽出・精製)を回避することができ、1分子からの並列増幅(エマルジョンPCRなど)へ直接利用できる効果がある。続いて、PCR増幅用共通配列(Forward/Reverse)を利用してPCR増幅を行い、複数種の遺伝子由来のPCR産物を調製する(図2(e))。この工程において、遺伝子間又は分子間で増幅バイアスが生じたとしても、次世代シーケンサーデータ取得後に、分子認識用タグ配列を利用して増幅バイアスの補正を行うことができるため、高精度な定量データを得ることができる。
【0066】
なお、1細胞当りのmRNAの数はおおよそ106個であり、細胞のサイズを模式的に直径10μmの円形とすると1細胞当たりに用いる細孔の数は2500ほどとなる。すなわち1細胞中に発現しているmRNA数が1000コピー以下の場合には、平均として1つの細孔内に1コピーのcDNAができることになる。それより多い場合には同一mRNA種について複数コピーのcDNAが1つの細孔に生成することになる。細孔のサイズを小さくすると1つの細孔あたり各種類のmRNAについて1コピー以下とすることもできる(また、細胞を1つずつ処理して1細胞当たりのcDNAライブラリー作製領域を大きくすると1細胞あたり1コピー以下にすることもできる)。各細孔には平均として400個の種々のcDNAが生成することになる。ここで生成したcDNA(1st cDNA鎖)から、PCR増幅用の共通配列が付加されている数十種類の遺伝子特異的配列プライマーを用いて2nd cDNA鎖を合成し、ここでは、PCR増幅する例を開示する。もちろんローリングサークル増幅(RCA)、NASBA、LAMP法など他の増幅法を用いてもよい。
【0067】
次に、cDNAライブラリーシートの細孔内部へのDNAプローブ固定化方法について詳細に説明する。シート内部の細孔の表面は、高密度にDNAプローブが固定化されると同時に、mRNAやPCR増幅用プライマーなどの核酸、そして逆転写酵素やポリメラーゼなどのタンパク質を吸着しない表面である必要がある。本実施例では、DNAプローブを固定化するためのシランカップリング剤と吸着を防止するシラン化されたMPCポリマーとを適切な割合で同時に細孔表面に共有結合にて固定して、DNAの高密度固定と核酸やタンパク質の安定した吸着抑制を実現した。実際には、まずアルミナ製の細孔シート1をエタノール溶液に3分浸漬後、UVO3処理を5分行い、超純水で3回洗浄する。次に平均分子量9700(重合度40)のシラン化MPCポリマーであるMPC0.8-MPTMSi0.2(MPC: 2-Methacryloyloxyethyl phosphorylcholine/MPTMSi: 3-Methacryloxypropyl trimethoxysilane)(例えば、Biomaterials 2009, 30:4930-4938、及びLab Chip 2007, 7:199-206)3mg/mlと0.3mg/mlのシランカップリング剤GTMSi(GTMSi:3-Glycidoxypropyltrimethoxysilane信越化学)、及び酸触媒である0.02%酢酸を含む80%エタノール溶液に2時間浸漬した。エタノールで洗浄後、窒素雰囲気で乾燥し、オーブンにて120℃で30分間加熱処理した。次にDNAを固定化するために、1μM 5’アミノ基修飾されたDNAプローブ(配列番号1)と7.5%グリセロールと0.15M NaClを含む0.05Mホウ酸バッファ(pH 8.5)をシート上にインクジェットプリンタと同じ技術によって、100pLずつ25μm×25μmの領域毎に異なる細胞認識用タグ配列(1024種類)を含むDNAプローブを吐出した。その後、加湿チャンバ内において25℃で2時間反応させた。最後に未反応グリシド基をブロックし、過剰なDNAプローブを除去するために、十分量の10mM Lysと0.01%SDSと0.15M NaClを含むホウ酸バッファ(pH 8.5)で5分間洗浄し、この洗浄液を除去した後、0.01%SDSと0.3M NaClを含む30mMクエン酸ナトリウムバッファ(2xSSC, pH 7.0)を用いて60℃にて洗浄し、過剰DNAを除去した。これによって、DNAプローブの固定と表面処理を完了した。
【0068】
以下、これまで記述した、細胞アレーからcDNAライブラリシートを作製し、次世代(大規模)シーケンサーで遺伝子発現プロファイルを得るための装置システムを説明する。細胞アレーを例に説明するが、組織切片を用いた場合も同様である。1000個程度以下の細胞を500μLの1×PBSで細胞を傷つけないように洗浄後、できる限りPBSが残らないように溶液を除去し、4℃に冷却された1×PBSを50μL加えた。このサンプルをシート1上にアレー状に配列させる。具体的には、0.1μmの細孔を持つ60μmの厚みのシート上に25ミクロン間隔で正に帯電した20μm直径の領域を表面処理により設ける。細胞は表面が負に帯電しているので細胞をこの表面に流すと25μm間隔で表面に捕獲される。すなわち、1つの細胞が捕捉される領域に4種類の細胞認識用タグ配列が固定されていることになる。実際に細胞を流して捕獲した場合には20%程度の位置に細胞を一個ずつ捕獲することができた。
【0069】
図3は細胞を捕獲する(すなわち細胞アレーを作製する)のに用いた反応セルの一例である。反応セルを用いることによって直径25mmのシート1の上に細胞2を1つ1つ固定し、細孔の内部を溶液で満たすことができる。シートの周囲が溶液で満たされるようにシート1の周辺部分にポリプロピレン製の保護リング300を設けて、シート1の上下の内側に透明(ITO)電極がスパッタリングによって形成された上蓋301及び下蓋302によって挟んで、反応溶液で満たすための上部反応領域303及び下部反応領域304を形成する。電極を透明にしている理由は、細胞を光学顕微鏡で観察できるようにするためであり、今回使用したITO透明電極は400〜900nmの波長範囲で40%以上の透過特性を有する。インレット305からバッファ液を注入し、上部アウトレット306及び下部アウトレット307から排出して内部を溶液で満たした。次に反応セルを振とうしながら細胞流路(インレット308)から細胞群を反応セル内に流入させた。細胞は正に帯電した部分に捕獲されるが、もちろん細胞が1個入るような容器又は区画を用いて細胞を捕獲してもよい。次いで温度によりゲル状態と液体状態を相変化する低融点アガロースゲル(SeaPrep Agarose; 2%のときゲル化温度19℃、融点45℃)に細胞溶解試薬を混和した溶液を用いてシート上での細胞の位置を固定した状態で細胞膜及び細胞組織を破壊してmRNAを抽出する。
【0070】
4%SeaPrep Agarose(Cambrex Bio Science Rockland, Inc.)溶液250μLとLysis Solution 495μL(TaqMan MicroRNA Cell-to-CT Kit; Applied Biosystems Inc.)とDNase I 5μLを40℃にてよく混和した。次にシート1の温度を4℃に設定し、反応領域303及び304の溶液を抜いてから、インレット305から上記細胞溶解試薬溶液を注入する。シート上の溶液がゲル化したことを確認し、シート温度を20℃まで上げて、8分間反応させた後、Stopping Solution(DNaseを失活させる溶液)50μLをゲルの上に添加し、5分間反応させ、4℃に冷却した。次に、分子量60万の0.03%PEO(ポリエチレンオキシド)と分子量100万の0.03%PVP(ポリビニルピロリドン)、及び0.1%Tween 20を含む10mM Tris Buffer(pH 8.0)0.5mLを加えた。このとき上部電極301と下部電極302間の距離は2mmとし、シート上部及び下部の空隙(反応領域303及び304)は前記Tris bufferで完全に満たされている。シート及び溶液温度を4℃に維持したまま、上部電極301を陰極(GND)、下部電極302を陽極として、電源311を用いて+5Vを2分間印加し、負電荷を持つmRNAを細胞内部から304の方向へ電気泳動する。(電気泳動条件はDC電圧印加の代わりにオンレベル10V、オフレベル0V、周波数100kHz、デューティー50%のパルス電気泳動を用いてもよい)。
【0071】
この過程でmRNAはシート中の細孔に固定されたDNAプローブのオリゴ(dT)部分にほとんどトラップされる(図1(a))。しかし、一部のmRNAは2次構造によってトラップされずにシート下部のバッファ中(304)に移動してしまう。mRNAを完全にDNAプローブにてトラップするために、シート1及び溶液の温度を70℃まで上げて5分保持した後、1分毎に下部電極302に印加する電圧の極性を反転させながら-0.1℃/secで4℃まで冷却した(最初は-5Vを1分間印加し、その後+5V→-5Vで1分ずつ10回繰り返し印加)。次にインレット305から上記tris bufferを導入し、アウトレット306から排出することによって、シート1上部の領域303中の溶液を交換しながら、溶液及びシート1の温度を35℃まで上げてアガロースゲルを溶解させて、必要のない細胞組織とアガロースを洗浄し、除去した。さらに、0.1%Tween20を含む10mM Tris Buffer(pH=8.0)585μLと10mM dNTP 40μLと5xRT Buffer(SuperScript III, Invitrogen社)225μLと0.1M DTT 40μLとRNaseOUT(Invitrogen社)40μLとSuperscript III(逆転写酵素, Invitrogen社)40μLを混和し、シート1を満たしている溶液をアウトレット306及び307から排出し、直ちに逆転写酵素を含む上記溶液をインレット305から注入した。その後、溶液とシート1を50℃に上げて、50分間保つことによって逆転写反応を完了させ、mRNAに対して相補的な配列を持つ1st cDNA鎖を合成した(図1(b))。
【0072】
ここでは1つの細胞あたり約1万個の細孔を用いてcDNAを作製している。細孔の1細胞当たりの全表面積は約0.7mm2である。100nm2当たり1個以上のDNAプローブが固定されているので、プローブ総数は約7x109個であり、1細胞中のmRNA(総数106程度)を捕獲するには充分な量である。細孔内では核酸は表面に吸着しやすいので、上述のように表面コート剤としてMPCポリマーを用い、細孔表面を覆って吸着を防いでいる。
【0073】
以上の操作から、細胞ごとに多くの細孔の表面に固定されたcDNAをライブラリーとして得た。これはいわば1細胞cDNAライブラリーシートというべきものであり、これまでの多くの細胞から得られる平均化されたcDNAライブラリーとは根本的に異なるものである。
【0074】
このように得られたcDNAライブラリーシートから種々遺伝子について遺伝子ごとの発現量を定量的に計測する。1つの細胞当たり1万個の細孔があるので、1つの細孔当たりのcDNAの個数は平均で100個である。1種類のcDNAについて、1細胞当たりのcDNAコピー数が1万個以下の場合には、1つの細孔当たり平均としてcDNAは1個以下となる。
【0075】
1st cDNA鎖を合成した後、85℃にて1.5分保ち逆転写酵素を失活させ、4℃に冷却後、RNase及び0.1%Tween20を含む10mM Tris Buffer(pH = 8.0)10mLをインレット305から注入し、アウトレット306及び307から排出することによって、RNAを分解し、同量のアルカリ変性剤を同様に流して細孔内の残存物及び分解物を除去・洗浄した。続いて、滅菌水690μLと10xEx Taq Buffer(TaKaRa Bio社)100μLと2.5mM dNTP Mix 100μLと各10μM PCR増幅用共通配列(Reverse、配列番号2)が付加された20種の遺伝子特異的配列プライマーMix(配列番号3〜22)100μLとEx Taq Hot start version(TaKaRa Bio社)10μLを混和し、シートを満たしている溶液をアウトレット306及び307から排出し、直ちに逆転写酵素を含む上記溶液をインレット305から注入した。その後、溶液とシートを95℃3分間→44℃2分間→72℃6分間の反応を行い、1st cDNA鎖9を鋳型としてプライマー20の遺伝子特異的配列をアニールさせた後(図2(c))、相補鎖伸長反応を行い、2nd cDNA鎖21を合成させた(図2(d))。
【0076】
続いて、滅菌水495μLと10x High Fidelity PCR Buffer(Invitrogen)100μLと2.5 mM dNTP mix 100μLと50mM MgSO4 40μLと10μM PCR増幅用共通配列プライマー(Forward、配列番号23)100μLと10μM PCR増幅用共通配列プライマー(Reverse、配列番号2)100μLとPlatinum Taq Polymerase High Fidelity(Invitrogen社)15μLを混和し、シートを満たしている溶液をアウトレット306及び307から排出し、直ちに上記溶液をインレット305から注入した。その後、溶液とシートを30秒間94℃に保ち、94℃30秒間→55℃30秒間→68℃30秒間の3段階工程を40サイクル繰り返し、最後に68℃3分間保った後、4℃に冷却してPCR増幅工程を行った(図2(e))。このような温度サイクルを実現するために、ヒーター付きヒートブロック309(アルミ合金又は銅合金)と温度コントローラ310を備える構成とした。これにより、20種のターゲット遺伝子の目的部分が増幅されるが、いずれもPCR産物サイズは200±8塩基とほぼ均一である。シートの細孔内部及び外部の溶液中に蓄積されたPCR増幅産物溶液を回収する。この溶液中に含まれるフリーのPCR増幅用共通配列プライマー(Forward/Reverse)や酵素などの残留試薬を除去する目的で、PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製する。この溶液をemPCR増幅又はブリッジ増幅適用後、各社(例えばLife Technologies(Solid/Ion Torrent)、Illumina(High Seq)、Roche 454)の次世代シーケンサーに適用して配列を解析する。
【0077】
次に、分子認識用タグ配列を用いた増幅バイアスの低減方法について説明する。図4には、分子認識用タグ配列以外は同じ配列としてシーケンシングされたデータが得られた状態を模式的に示している(得られたシーケンシングデータの関連部分を模式的に図示)。図4中で401、402、403、404及び405はランダム配列である分子認識用タグ配列も含めて同じ配列であり、それぞれ1、7、4、2、2リード(見かけ上の分子数カウント)が得られている場合を示している。これらの配列は、図2(d)で2nd cDNA鎖が合成された時点ではすべて1分子であり、その後のPCR増幅で分子数が増大すると同時に、異なる分子数になっている。それゆえ、分子認識用タグ配列の同じリードは同じ分子としてみなしてよく、すべて1分子とみなされる。その結果、2nd cDNA鎖が合成された後の工程のPCR増幅や、溶液を外部に取り出すときに細孔アレーシート内部への吸着による配列ごとの分子数の偏りは、分子認識用タグ配列の利用によって解消される。
【0078】
ここで作製したシートは繰り返し利用可能であり、発現量を知る必要がある遺伝子群については、PCR増幅用共通配列プライマー(Reverse、配列番号2)が付加された遺伝子特異的配列プライマーMix溶液を作製し、上記と同様に2nd cDNA鎖の合成、PCR増幅、及びemPCRを施し、次世代シーケンサーにて解析を行えばよい。すなわち、cDNAライブラリーを繰り返し利用することによって、高精度な発現分布測定を必要な種類の遺伝子について行うことが可能である。
【0079】
あるいは、cDNAライブラリー細孔アレーシートからcDNAライブラリー(cDNA鎖)を回収して、増幅工程を液相において行ってもよい。
【0080】
[実施例2]
本実施例は、シート状の細胞群から中に含まれるmRNAの位置情報を保持した形で2次元cDNAライブラリーシートを細孔アレーシート中に構築して用いた例で、PCR増幅の代わりに転写因子T7のプロモーターを用いた場合の例である。
【0081】
本実施例の方法における実施例1との変更点を図5、6及び7に示す。シート内部に固定されたDNAプローブ50(配列番号24)は、5’末端方向からT7プロモーター配列(塩基1〜42番)、増幅用共通配列(Forward方向)(塩基43〜72番)、細胞認識用タグ配列(塩基73〜77番)、分子認識用タグ配列(塩基78〜92番)、及びオリゴ(dT)配列(VN配列が付加されている)(塩基93〜102番)で構成される。T7プロモーター配列をDNAプローブへ導入することで、後続のIVT(In Vitro Transcription)によるcRNA 63の増幅工程(図6(e))によるターゲット配列の増幅が可能となる。すなわち、T7プロモーター配列はT7RNAポリメラーゼにより認識され、その下流配列から転写(cRNA 63増幅)反応が開始される。同様に増幅用共通配列を導入することで、後続のemPCR増幅工程において共通プライマーとして利用することができる。また、細胞認識用タグ配列(例えば5塩基)をDNAプローブへ導入することによって、45=1024の領域又は位置(すなわち45=1024個の単一細胞)を認識することが可能となることは実施例1と同様である。さらに、分子認識用タグ配列(例えば15塩基)をDNAプローブへ導入することにより、415=1.1x109分子を識別することができるため、次世代シーケンサーで得られる膨大な解読データが、どの分子由来であるかを識別することが可能となることも実施例1と同様である。すわなち、IVT/emPCRなどの増幅工程で生じた遺伝子間の増幅バイアスを修正することができるため、始めに試料中に存在していたmRNA量を高い精度で定量することが可能となる。最も3’側に位置するオリゴ(dT)配列は、mRNAの3’側に付加されているポリAテールとハイブリダイズし、mRNAを捕捉するために利用される(図5(a))。
【0082】
次に、反応の各ステップを順に説明する。図5(a)に示すように、mRNA 4は実施例1と同様にmRNA 4の3’末端のpoly A配列に相補的な配列である18塩基のpolyT配列によって捕捉する。次に1st cDNA鎖9を合成し、cDNAライブラリーを構築する(図5(b))。次に定量したい遺伝子に対応する複数(〜100種)のターゲット遺伝子特異的配列プライマー60を1st cDNA鎖9へアニールさせ(図6(c))、相補鎖伸長反応により2nd cDNA鎖61を合成させる(図6(d))。すなわちマルチプレックス条件で2nd cDNA鎖合成を行う。これにより、複数のターゲット遺伝子について、増幅用共通配列(Forward/Reverse)を両端に持ち、細胞認識用タグ配列、分子認識用タグ配列、及び遺伝子特異的配列がその中に含まれる2本鎖cDNAが合成される。また本実施例では、一例として、20種類(ATP5B、GAPDH、GUSB、HMBS、HPRT1、RPL4、RPLP1、RPS18、RPL13A、RPS20、ALDOA、B2M、EEF1G、SDHA、TBP、VIM、RPLP0、RPLP2、RPLP27、及びOAZ1)の遺伝子について、ターゲット遺伝子のポリAテールから109±8塩基上流部分の20±5塩基を遺伝子特異的配列として用いたが(それぞれ配列番号3〜22)、これは、後続のIVTによる増幅工程において、増幅産物サイズを約200塩基に統一するためである。増幅産物サイズを統一することで、煩雑なサイズフラクション精製の工程(電気泳動→ゲルの切り出し→増幅産物の抽出・精製)を回避することができ、1分子からの並列増幅(エマルジョンPCRなど)へ直接利用できる。続いて、T7RNAポリメラーゼを細孔中に導入し、cRNA 63を合成する(図6(e))。この過程によって、約1000コピー程度のcRNA 63が合成される。さらに、emPCRのための2本鎖DNAを合成するために、増幅されたcRNA 63を鋳型として、PCR増幅用共通配列(Reverse)が付加された複数(〜100種)のターゲット遺伝子特異的配列プライマー71をハイブリダイズさせ(図7(f))、cDNA 72を合成する(図7(g))。さらに、実施例1と同様に酵素を用いてcRNAを分解してから、PCR増幅用共通プライマー(Forward)を用いて2nd cDNA鎖を合成することによってemPCR用2本鎖DNA 73が合成される(図7(h))。この増幅産物は、長さがそろっており、そのまま、emPCR、次世代シーケンサーにかけることができる。この工程において、遺伝子間又は分子間で増幅バイアスが生じたとしても、次世代シーケンサーデータ取得後に、分子認識用タグ配列を利用して増幅バイアスの補正を行うことができるため、高精度な定量データを得ることができることは実施例1と同様である(図4)。
【0083】
次に一連の工程の具体的に記す。1st cDNA鎖を合成した後、85℃にて1.5分保ち逆転写酵素を失活させ、4℃に冷却後、RNase及び0.1%Tween20を含む10mM Tris Buffer(pH = 8.0)10mLをインレット305から注入し、アウトレット306及び307から排出することによって、RNAを分解し、同量のアルカリ変性剤を同様に流して細孔内の残存物及び分解物を除去・洗浄した。続いて、滅菌水690μLと10xEx Taq Buffer(TaKaRa Bio社)100μLと2.5mM dNTP Mix 100μLと各10μM PCR増幅用共通配列(Reverse、配列番号2)が付加された20種の遺伝子特異的配列プライマーMix(配列番号3〜22)100μLとEx Taq Hot start version(TaKaRa Bio社)10μLを混和し、シートを満たしている溶液をアウトレット306及び307から排出し、直ちに逆転写酵素を含む上記溶液をインレット305から注入した。その後、溶液とシートを95℃3分間→44℃2分間→72℃6分間の反応を行い、1st cDNA鎖を鋳型としてプライマーの遺伝子特異的配列をアニールさせた後(図6(c))、相補鎖伸長反応を行って、2nd cDNA鎖を合成させた(図6(d))。
【0084】
続いて、0.1%Tween20を含む10mM Tris Buffer(pH = 8.0)10mLをインレット305から注入しアウトレット306及び307から排出することによって、細孔内の残存物及び分解物を除去・洗浄した。さらに、滅菌水340μLとAmpliScribe 10X Reaction Buffer(EPICENTRE社)100μLと100mM dATP 90μLと100mM dCTP 90μLと100mM dGTP 90μLと100mM dUTP 90μLと100mM DTT、及びAmpliScribe T7 Enzyme Solution(EPICENTRE社)100μLを混和し、シートを満たしている溶液をアウトレット306及び307から排出し、直ちに逆転写酵素を含む上記溶液をインレット305から注入した。その後、溶液とシートを37℃に上げて、180分間保つことによって逆転写反応を完了させ、cRNA増幅を行った(図6(c))。これにより、20種のターゲット遺伝子の目的部分が増幅されるが、いずれもcRNA増幅産物サイズは200±8塩基とほぼ均一である。シートの細孔内部及び外部の溶液中に蓄積されたcRNA増幅産物溶液を回収する。この溶液中に含まれる酵素などの残留試薬を除去する目的で、PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製し、50μLの滅菌水に懸濁する。この溶液に、10mM dNTP mix 10μLと50ng/μLのランダムプライマー30μLを混和させ、94℃10秒加熱後0.2℃/秒で温度を30℃まで低下させ、30℃で5分間加熱し、さらに4℃まで低下させる。その後、5xRT Buffer(Invitrogen社)20μLと、0.1M DTT 5μLと、RNase OUT 5μLと、SuperScript III 5μLを混和させ、30℃で5分間加熱し、0.2℃/秒で温度を40℃まで上昇させる。この溶液中に含まれる酵素などの残留試薬を除去する目的で、PCR Purification Kit(QIAGEN社)を用いて精製し、emPCR増幅に適用後、各社(例えばLife Technologies、Illumina, Roche)の次世代シーケンサーに適用して配列解析する。
【0085】
[実施例3]
本実施例は、接着性の弱い血球細胞の細胞アレーを作製して、細孔アレーシートを用いてcDNAライブラリシートを構築し、遺伝子発現解析を行う例である。実施例1では細胞アレーを作製するために細孔アレーシートの表面処理を用いていた。そのため、細胞の接着性がある程度必要であった。本実施例では、細胞の接着性に頼らず溶液の流れによって細胞をアレー状に並べる構成を持つデバイス構造を持つ装置の例を説明する。
【0086】
図8(a)に細胞アレーデバイスの断面図を示す。本実施例では、測定対象は白血球800とし、測定対象としない赤血球は事前に赤血球細胞ライシスバッファを用いて溶解し、除去されているものとする。細胞のインレット308と試薬のインレット305及び上部アウトレット306及び下部アウトレット307は実施例1(図3)と同様である。本実施例では細孔アレーシートは半導体プロセスを用いて作製したものを用いており、細胞インレット308から下部アウトレット307への溶液の流れを用いて、白血球を正方格子状に配列させるために、1辺15μmの正方形の領域のみ細胞が吸引されるように細孔アレーが形成されており、それ以外の部分は細孔がなく、シートの厚さも厚くすることによってデバイスの機械的強度を保つような構造となっている。
【0087】
ここで用いた細孔アレーシートはシリコン基板802上に厚さ10μmのSiO2層を形成し、ドライエッチングを用いて、直径0.3μmの貫通孔を形成し、その後、シリコン基板を薄層化後、リソグラフィによって50μm周期の格子803を形成し、格子以外の領域をウェットエッチングによって貫通させることによって形成した。このようにして得られた細孔内壁には実施例1と同様にシランカップリング処理によってDNAプローブを固定することが可能である。図8の(c)にB−B’での横断面図を示しており、異なるハッチングは異なる細胞認識用タグ配列が固定されていることを示している。また、図8(b)にA−A’での横断面図を示している。貫通した細孔が露出している部分805は細胞が1つずつ収納されるような大きさのパタニングを行っている。
【0088】
図9には赤血球の分離をデバイスの中で行う場合を示している。細孔アレーシートは図8と同じである(C−C’での横断面図を図9(c)に示している)が、その上部に細胞フィルタ900を設けている。細胞フィルタ900上の横断面図を図9(b)に示している。赤血球はその大きさが小さいことから通過させ、白血球やCTC(Circulating Tumor Cell)は大きさが大きいことからフィルタ900上部にトラップする貫通孔サイズとして6μmを選択している。
【0089】
[実施例4]
cDNAライブラリーを構築するデバイスとしては、細孔アレーシート以外に、ビーズを用いたデバイスでもよい。この場合はDNAプローブの固定はデバイス上で実行する必要がなく、DNA固定密度が高いという利点がある。図10(a)にcDNAライブラリアレーシートを構築するデバイス部分のみの断面鳥瞰図を示した。
【0090】
デバイス上に一辺10μmの反応槽1000を設け、その中に、直径1μmの磁性ビーズ1001(ここではストレプトアビジンが表面に予め固定されたビーズを用いた)を詰める。この磁性ビーズ上には、mRNA捕捉用DNAプローブ6が固定されており、これは5’末端方向からPCR増幅用共通配列(Forward方向)、細胞認識用タグ配列、分子認識用タグ配列、及びオリゴ(dT)配列で構成される。ビーズ表面の拡大図を図10の(b)に示した。ビーズ上に固定したmRNA捕捉用DNAプローブ6の細胞認識用タグ配列はデバイス上の反応槽の位置ごとに異なる配列になるように構成する。具体的には、異なる細胞認識用タグ配列をもったmRNA捕捉用DNAプローブ6を別々の反応チューブ中でビーズ1001と混和し、10分回転させながら結合反応させる。その後、個別にインクジェットプリンタヘッドに充填し、異なる配列が固定されたビーズ1001を個別に反応槽1000に充填する。
【0091】
上記反応槽1000は樹脂製のメッシュ1002と実施例1でも使用したアルミナ製の細孔アレーシート1003を熱融着によって接着した。ここで、細孔の直径は100nmのものを用いた。
【0092】
樹脂製メッシュはナノインプリント技術によって作製したが、市販のナイロンメッシュやトラックエッチメンブレンを用いてもよい。反応槽の底面がメッシュになっているのは溶液が貫通できることができるようにするためであり、アルミナ製の細孔アレーは親水性が高く、溶液は速やかに浸透する。
【0093】
また、この反応槽1000は半導体プロセスを用いて一体加工を行ってもよい。
【0094】
1つの反応槽1000中のビーズ1001の数は1000個とした。
【0095】
このようなデバイスを図8の(a)のようなインレットとアウトレットが設けられたフローシステム中に設置し、細胞を導入する。溶液はビーズ及び細孔アレーを貫通して流れ、細胞がビーズ上部に捕獲され、実施例1と同様に細胞溶解試薬による細胞破砕とmRNAの電気泳動による抽出を同時におこなって、磁気ビーズ1001上にmRNA 4を捕捉する。
【0096】
[実施例5]
本実施例は、組織切片1101から2次元cDNAライブラリーシートを細孔アレーシート1中に構築して用いた例である。
【0097】
凍結させた組織サンプルを5〜20μm程度の厚さにミクロトームにて膜状のサンプルにして、図11に示すようにアルミナ製の細孔アレーシート1上に組織切片1101を載せ、ただちに細胞溶解試薬を含む低融点アガロースで組織切片を覆う。アガロース溶液は35℃で溶液の状態を保っており、シート1を4℃に冷却してただちにゲル化させ、その後、図3に示す反応セルにセットして、mRNAを実施例1と同様に抽出する。
【0098】
このとき、mRNA捕捉用のDNAプローブの細胞認識用タグ配列は、組織切片中に100万個程度までの細胞が存在してもそれらを識別できるようにするために、10塩基の長さに変更し、10μm間隔でインクジェットプリンタによって10pLずつ吐出した。
【0099】
[実施例6]
2次元cDNAライブラリーを用いた遺伝子発現解析では、細孔アレーシートなどの平面デバイス上の細胞の位置と遺伝子発現解析結果を対応させることができる。このとき、遺伝子発現解析のために細胞を破砕して詳細な遺伝子発現解析を行う前に、細胞が生きた状態での形状や蛍光染色による遺伝子やタンパク質の定量又はラマンイメージングを行っておき、これらのイメージングデータと遺伝子発現解析データを対応させることが可能となる。これを実現するためのシステム構成について以下で説明する。
【0100】
まず、図12に2次元cDNAライブラリーを構築するために平面状のデバイス(細孔アレーシートなど)の上に配置した細胞サンプルについて、光学顕微鏡による計測と上記デバイスを用いた遺伝子発現解析結果を個々の細胞のデータについて対応させることによって細胞の動態を詳細に計測するためのシステム構成を示す。
【0101】
1200は細孔アレーシートに代表される平面デバイス及び細胞破砕前のそのデバイス上に配置された細胞サンプルを表しているとする。1201は図3に代表される細胞からのmRNA抽出と核酸増幅を行うためのフローシステム(反応セル又はデバイス)である。矢印1208は核酸抽出過程を表す(物質の移動を太い矢印で表記した)。矢印1209は細胞への細胞溶解試薬の添加やその後の核酸反応のための試薬の添加を示している。これらを制御することによって、次世代(大規模)DNAシーケンサー1205で配列を決定するのに必要な量で一定の長さを持ち、末端に核酸処理前の情報を記したタグ配列を含む増幅産物が得られる。ここでも、矢印1211は増幅産物の移動を示している。一方、デバイス上の細胞は事前に細胞のデバイス上での位置を特定した形で顕微鏡1203による観察(1210)を行う。ここで細い矢印は情報の移動を示す。顕微鏡1203としては、位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザ―走査共焦点蛍光顕微鏡、ラマン顕微鏡、非線形ラマン顕微鏡(CARS顕微鏡、SRS顕微鏡、RIKE顕微鏡)、IR顕微鏡等が挙げられる。これらの顕微鏡で得られる情報は遺伝子情報に関する限り、得られる情報が少ない。しかし、基本的には細胞が生きた状態での計測が可能であり、細胞の経時変化を計測することができ、刺激に対する細胞の応答をリアルタイムに計測することができる。デバイス上での位置情報を保存したデバイスを利用することによって、遺伝子発現に関する詳細情報と顕微鏡による時間変化を含む情報を対応させることができる。このことを実現するためには、次世代(大規模)DNAシーケンサーからの配列情報1212と顕微鏡像の情報1213とタグ配列に対応させた位置情報1214とを統合する情報システム1206をシステム内に設ける必要がある。本発明において、上記で説明した細胞の計測情報を統合するシステムの最小の構成は次世代(大規模)DNAシーケンサー1205以外の部分のシステム1207であり、DNAシーケンサーからの情報の入力とサンプル(核酸増幅産物)の出力を持っているものである。
【0102】
図13に、顕微鏡として蛍光顕微鏡を組み合わせた場合のシステム構成例を示す。この例では1201はフローシステムであり、1203は蛍光顕微鏡である。細孔アレーシート1上に細胞2が配置されている状態を示している。細胞2中には計測したいタンパク質(例えばp53)にGFPを発現させるか、免疫染色によって特定のタンパク質に蛍光体を導入している。このようにして得られる個々の細胞中の発現タンパク質量のデータは、細胞破砕後細孔アレーシート1上でサンプル処理されて、DNAシーケンシングによって定量されることによって得られる遺伝子発現データと細胞ごとに相関を取ることができる。このとき細胞を認識するために、DAPIによって核酸を染色し、細胞核を認識することによって、細胞位置を蛍光顕微鏡によって識別している。タンパク質量はGFPの発現で計測しているため、経時変化を追うことができるが、同時に計測可能なタンパク質の種類は数種類程度である。一方、シーケンシングによる遺伝子発現解析は一度に100程度は可能であり、必要数のプローブを用意すれば1000種類の解析も可能である。それゆえ、細胞内の詳細な遺伝子発現制御に関する情報が個々の細胞ごとに得られる。しかし、これについては経時変化をとらえることができない。両者を組み合わせることによって、どのようなタンパク質発現のときにどのような遺伝子発現であるかというデータが事前に得られていれば、タンパク質の発現データのみから、遺伝子制御に関する情報を推定することが可能となる。このような、蛍光顕微鏡データと遺伝子発現データの対応付けと遺伝子制御に関する情報の推定を情報システム1206で実行する。
【0103】
次に蛍光顕微鏡1203の構成の詳細を示す。1300は光源であり、ここでは水銀ランプである。1301は励起波長を決める励起フィルタ、1302はダイクロイックミラー、1303は受光波長を選択するエミッションフィルタである。細胞に複数種類の蛍光体が導入されて同時に計測するとき、1301、1302及び1303を制御1304によって選択し、特定の蛍光体からの光のみを計測するようにする。細胞の蛍光イメージは対物レンズ1305、結像レンズ1306、CCDカメラ1307によって行う。これらを制御、画像データ取得を行う制御コンピュータは1308である。
【0104】
次にフローシステム1201の制御系について説明する。フローシステムの制御コンピュータは1309であり、これはXYステージ1310を制御して、顕微鏡像を移動させる。このとき、制御コンピュータ1309では、細孔アレーシート1上の位置座標と細胞認識用タグ配列の配列データ、及びXYステージ位置座標を用いて計算される、顕微鏡像上の位置座標を対応させることができる。この制御コンピュータ1309は細胞のフローセルシステムへの細胞導入を制御する細胞導入制御装置1311、細胞の状態を変化させる分化誘導剤や細胞の応答を調べたい薬剤、細胞を破砕するための細胞溶解試薬やサンプル処理のための試薬の導入を制御する試薬制御装置1312、細胞培養条件、PCR時の温度サイクルを制御する温度及びCO2濃度制御装置1313、不要な試薬や、細胞、培地交換などに用いる上部試薬排出装置1314、調製された核酸増幅産物を排出するための下部試薬排出装置1315を適切に制御している。最終的に得られた核酸増幅産物は次世代(大規模)DNAシーケンシングシステム1205に渡され配列解析を行う。このときシーケンシングのためのemPCRやブリッジアンプはこのシステムの中で実行されるものとしている。制御コンピュータ上で照合された画像の位置情報と細胞認識用タグ配列の配列情報は統合情報システム1206に送られ、蛍光イメージから得れれるタンパク質量と遺伝子発現量の対応付けを行う。さらに同じシステムで遺伝子発現解析データの経時変化推定を実行する。これによって、遺伝子発現ネットワークのダイナミクスを計測することが可能となる。
【0105】
また、この蛍光顕微鏡は細胞内の計測のみならず、細孔アレーシート中に導かれ、抗体によって捕捉サイトカイン等の細胞から分泌される物質を免疫蛍光染色してその量を計測するために用いてもよい。もちろん、同様にして、破砕後の遺伝子発現量の解析に用いてもよい。
【0106】
図14に、顕微鏡として微分干渉顕微鏡1203を組み合わせた例を示す。微分干渉顕微鏡像は蛍光試薬を用いず形状を計測するのみであるが、再生医療など体内に細胞を戻さなくてはならない場合にもっとも細胞への影響度が小さい計測方法の1つである。この画像から得られる細胞形状の変化と遺伝子発現の変化の間に対応を付けることができる場合はもっとも細胞ダメージが少なく、詳細な細胞分類ができる計測システムとなる。
【0107】
1401は光源で、ここではハロゲンランプである。1402は偏光子、1403及び1404はそれぞれWollaston フィルタ及びWollastonプリズムである。1405はコンデンサレンズ、1406は対物レンズである。
【0108】
図15に、顕微鏡としてCARS顕微鏡1203を用いた例を示す。CARS顕微鏡はラマン顕微鏡やIR顕微鏡と同様に、レーザ励起部分の化学種に対応したスペクトルが得られるため、微分干渉顕微鏡よりも細胞状態に対する情報量を増大させることができる。ただし、CARSは非線形過程で、ラマン信号に比べて信号強度が強く、比較的弱いレーザ励起強度で十分なシグナルを得ることができるため、細胞へのダメージが小さいというメリットがある。このようなCARSイメージと遺伝子発現解析データを対応させることによって、より詳細な細胞状態の判定が可能となる。
【0109】
1501は光源で、ここではパルスレーザ(マイクロチップレーザ)である。これをビームスプリッタ1502にて2つに分波し、一方を非線形ファイバ(フォトニッククリスタルファイバ)1503に導入し、ストークス光を生成する。もう一方の光はそのままポンプ光及びプローブ光として用いて、サンプル(細胞中)に水浸対物レンズ1504で集光してアンチストークス光を生成する。ハイパスフィルタ1505にてアンチストークス光のみを透過させて、分光器1506を通して、分光器用CCDカメラ1507でコヒーレントアンチストークスラマンスペクトルを取得する。カメラ1507で計測する位置は可動式xyzステージ1508によって、スキャニングし、xyzイメージを構築する。
【0110】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除又は置換を行うことが可能である。
【0111】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全文を参考として本明細書中に取り入れるものとする。
【符号の説明】
【0112】
1 細孔アレーシート
2 細胞
300 保護リング
301 上蓋、上部電極
302 下蓋、下部電極
303 上部反応領域
304 下部反応領域
305 インレット
306 上部アウトレット
307 下部アウトレット
308 インレット
309 ヒートブロック
310 温度コントローラ
311 電源
800 白血球
802 シリコン基板
803 格子
805 貫通した細孔が露出している部分
900 細胞フィルタ
1000 反応槽
1001 磁性ビーズ
1002 メッシュ
1003 細孔アレーシート
1200 平面デバイス及びそのデバイス上に配置された細胞サンプル
1201 フローシステム
1203 顕微鏡
1205 DNAシーケンサー(DNAシーケンシングシステム)
1206 情報システム
1207 システムの最小の構成
1300 光源
1301 励起フィルタ
1302 ダイクロイックミラー
1303 エミッションフィルタ
1305 対物レンズ
1306 結像レンズ
1307 CCDカメラ
1308 制御コンピュータ
1309 制御コンピュータ
1310 XYステージ
1311 細胞導入制御装置
1312 試薬制御装置
1313 温度及びCO2濃度制御装置
1314 上部試薬排出装置
1315 下部試薬排出装置
1401 光源
1402 偏光子
1403 Wollaston フィルタ
1404 Wollastonプリズム
1405 コンデンサレンズ
1406 対物レンズ
1501 光源
1502 ビームスプリッタ
1503 非線形ファイバ(フォトニッククリスタルファイバ)
1504 水浸対物レンズ
1505 ハイパスフィルタ
1506 分光器
1507 分光器用CCDカメラ
1508 可動式xyzステージ
【配列表フリーテキスト】
【0113】
配列番号1〜29:Artificial(DNAプローブ、プライマー及びランダム配列)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]