特許第5997282号(P5997282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997282ポリカーボネートおよびポリプロピレンの難燃性熱可塑性組成物
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  • 特許5997282-ポリカーボネートおよびポリプロピレンの難燃性熱可塑性組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997282
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ポリカーボネートおよびポリプロピレンの難燃性熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20160915BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20160915BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20160915BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20160915BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20160915BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20160915BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L23/10
   C08L53/00
   C08K5/521
   H01B7/02 Z
   H01B7/34 B
   H01B3/44 G
   H01B3/44 P
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-533576(P2014-533576)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-528996(P2014-528996A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】US2012055084
(87)【国際公開番号】WO2013048754
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】61/541,276
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リン・フ
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン・エイチ・ラウファー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・エス・リン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ティー・ビショップ
(72)【発明者】
【氏名】ハミド・ラクラウト
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェイ・ハリス
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−296366(JP,A)
【文献】 特開2011−132312(JP,A)
【文献】 特開平03−168237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の重量に基づいた重量パーセントで、
A.少なくとも1つのビスフェノール−Aポリカーボネート樹脂を35〜80%、
B.MFR≦12g/10分(230℃/2.16kg)を備えた少なくとも1つのポリプロピレンを10〜35%、
C.少なくとも1つのアミン官能基化エラストマー性オレフィンブロックコポリマーを0を超えて(>)40%まで、
D.少なくとも1つの有機リン酸塩難燃剤を>0〜30%、および、
E.1つまたは複数の添加剤を0〜10%で含む組成物であって、
A対Bの重量比が1を超える(>)組成物。
【請求項2】
前記アミン官能基化エラストマー性オレフィンブロックコポリマーがアミン官能基化エチレンマルチブロックインターポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機リン酸塩難燃剤が周囲条件下で液体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミン官能基化エラストマー性オレフィンブロックコポリマーのポリマー骨格が、スチレンに由来する量体単位がなく、前記アミン官能基化エラストマー性オレフィンブロックコポリマーのポリマー骨格がエポキシ基を含有する量体単位を含有しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を含む、電線絶縁体シース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性組成物に関する。一態様において、本発明はポリカーボネートおよびポリプロピレンを含む難燃性組成物に関し、一方もう一つの態様において、本発明は自動車の電線コーティングの製造におけるかかる組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電線市場の傾向の1つは、相手先ブランド製造業者(OEM)が、より多くの電線をハーネスアセンブリー中にインストールすることができるように電線サイズおよび絶縁体厚をダウンゲージして、自動車の周囲のパワーならびに情報および娯楽(「情報娯楽」)のシステムについての増加する要求を満たすことである。自動車の電線絶縁体の厚みは、自動車電線基準(ISO 6722)中で規定されたコンダクターサイズに依存して、0.2ミリメートル(mm)〜1.6mmに変動し得る。ISO 6722中で規定されるように0.2mmの絶縁体厚でより多くの電線をインストールする傾向が市場においてある。肉厚の減少は、電線性能の要求(例えば、紙やすりによる摩耗に対する耐性、擦過による摩耗に対する耐性、および締め付けに対する耐性)を満たすことを非常に難しくする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態において、本発明は、(A)少なくとも1つのビスフェノール−Aポリカーボネート樹脂、(B)少なくとも1つのポリプロピレン、好ましくはメルトフローレイト(MFR)≦12g/10分(230℃/2.16kg)を備えた高結晶性ポリプロピレン、(C)アミン官能基化エラストマー性ポリマーを含む少なくとも1つの相溶化剤、(D)少なくとも1つの有機リン酸塩難燃剤、好ましくは室温(23℃)で液体である有機リン酸塩、および(E)任意で1つまたは複数の添加剤を含む組成物である。
【0004】
一実施形態において、本発明は、組成物の重量に基づいた重量パーセントで、
A.少なくとも1つのビスフェノール−Aポリカーボネート樹脂を35〜80%、
B.MFR≦12g/10分(230℃/2.16kg)を備えた少なくとも1つのポリプロピレンを10〜35%、
C.少なくとも1つのアミン官能基化エラストマー性ポリマーを0を超えて(>)40%まで、
D.少なくとも1つの有機リン酸塩難燃剤を>0〜30%、および、
E.1つまたは複数の添加剤を0〜10%で含む組成物であって;
A対Bの重量比が1を超える(>)組成物である。
【0005】
一実施形態において、本発明の組成物には、ハロゲン、水酸化マグネシウム(Mg(OH))およびポリマー性亜リン酸塩がない。一実施形態において、相溶化剤にはスチレンに由来する単位がなく、エポキシ基を含有しない。一実施形態において、組成物は低密度(無機フィラーを重量で10パーセントを超えてさらに含む以外は同様に配合された組成物と比較して)のものである。
【0006】
一実施形態において、本発明は、絶縁体電線カバー(すなわちシース)であり、ISO 6722に従って減少させた肉厚(例えば0.2mm以下)を備え、自動車の電線について1つまたは複数の着実な紙やすりによる摩耗に対する耐性、擦過による摩耗に対する耐性および締め付けに対する耐性、耐燃性および耐熱湯性を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】図は、様々な比較および発明の組成物についての引っかきに対する耐性と擦過による摩耗に対する耐性との間の相関性を報告するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
この開示中の数値範囲はおよそであり、したがって特別の指示の無い限り範囲の外側の値を含むことができる。数値範囲は、任意の低値と任意の高値との間に少なくとも2単位の隔たりがあるならば、低値および高値からの値ならびに低値および高値を含む値のすべてを1単位きざみで含む。例として、組成特性、物理特性または他の特性(例えば分子量など等)が、100〜1000であるならば、すべての個々の値(100、101、102など等)およびサブ範囲(100〜144、155〜170および197〜200など等)は、明示的に列挙される。1未満である値を含有する範囲または1を超える小数(例えば1.1および1.5など)を含有する範囲については、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であると判断される。10未満の1桁の数を含有する範囲(例えば1〜5に)については、1単位は典型的には0.1であると判断される。これらは具体的に意図されるものの例にすぎず、列挙された最低値と最高値との間の数値のすべての組み合わせがこの開示中で明示的に述べられると判断すべきである。数値範囲は、とりわけ組成物のコンポーネントの量についてこの開示内で提供される。
【0009】
「ポリマー」は、同じタイプまたは異なるタイプのものであるかにかかわらず、モノマーを反応(すなわち、重合)させることによって調製される化合物を意味する。したがってポリマーという総称的な用語は、「ホモポリマー」という用語(通常1つのタイプのみのモノマーから調製されるポリマーを指すように用いられる)および以下で定義されるような「インターポリマー」という用語を包含する。
【0010】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。この総称的な用語には、古典的なコポリマー(すなわち2つの異なるタイプのモノマーから調製されるポリマー)、および2つを超える異なるタイプのモノマーから調製されるポリマー(例えばターポリマー、テトラポリマーなど)の両方が含まれる。
【0011】
「量体」、「量体単位」および類似の用語は、単一反応物分子に由来するポリマーのポーションを意味し;例えば、エチレンに由来する量体単位は一般式−CHCH−を有する。
【0012】
「オレフィン」および類似の用語は、不飽和、脂肪族、または脂環式の1つまたは複数の二重結合を有する置換または非置換の炭化水素を意味する。「置換オレフィン」は、別の基(ハロゲン、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロ−シクロアルキル、置換ヘテロ−シクロアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、ホスフィド、アルコキシ、アミノ、チオ、ニトロまたは2つ以上のかかる置換基の組み合わせ等)によって、オレフィンの任意の炭素への1つまたは複数の水素原子結合が置き換えられたオレフィンを意味する。
【0013】
「エラストマー」および類似の用語は、(i)そのもとの長さの少なくとも2倍まで伸張し、伸張を発揮させる力が解放される場合におよそそのもとの長さまで非常に迅速に退縮することができ、(ii)0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する、ゴム状ポリマーを意味する。
【0014】
「オレフィンエラストマー」および類似の用語は、1つまたは複数のオレフィンに由来する単位を少なくとも50モルパーセント(mol%)含むエラストマー性ポリマーを意味する。
【0015】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」および類似の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。かかるブレンドは混和性または非混和性であり得る。かかるブレンドは相分離または非相分離であり得る。かかるブレンドは、伝達電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野において公知の他の方法から決定されるような、1つまたは複数のドメイン立体配置を含有するかまたは含有しなくてもよい。
【0016】
「組成物」、「配合」および類似の用語は、2つ以上のコンポーネントの混合物またはブレンドを意味する。本発明の文脈において、組成物はコンポーネントA〜D+任意の添加剤、充填剤および同種のものを含む。
【0017】
「〜がない」、「〜が実質的にない」および類似の用語は、本発明の組成物に特定の物質(例えばハロゲン、金属酸化物など)の含有量が、その物質についての慣習的な分析方法によって測定して、ないかまたは実質的にないことを意味する。例えば、「ハロゲンがない」は、本発明の組成物にハロゲン含有量がないかまたは実質的にないこと、すなわち組成物はイオンクロマトグラフィ(IC)によって測定して、2000mg/kg未満のハロゲンを含有することを意味する。組成物に物質がないかまたは実質的にないならば、その物質が組成物中でどんな量であっても、組成物の有効性に対するその効果は重要でないものとして考慮される。
【0018】
ポリプロピレンおよびポリカーボネートの両方についての密度はASTM D792によって測定される。
【0019】
メルトインデックス(MI)として公知のメルトフローレイト(MFR)は、ポリプロピレンおよびポリカーボネートの両方についてASTM D1238によって測定される。
【0020】
ポリプロピレンについての1%セカント曲げ弾性率はASTM D790Aによって測定される。
【0021】
ポリプロピレンについての23℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃はASTM D256Aによって測定される。
【0022】
ポリプロピレンについての0.45MPaのロード下でのたわみ温度はASTM D648によって測定される。
【0023】
ポリカーボネートについての曲げ弾性率はASTM D790によって測定される。
【0024】
ポリカーボネートについてのノッチ付きアイゾッド衝撃はASTM D256によって測定される。
【0025】
ポリカーボネートについての破断時の引張伸びはASTM D638によって測定される。
【0026】
ポリカーボネートについての破断時の引張強度はASTM D638によって測定される。
【0027】
ポリカーボネート(コンポーネントA)
本発明の実践に有用なポリカーボネートの例証は、ハロゲン不含有であり、UP3,431,224中に記載される。これらのポリカーボネートは、カルボネート前駆体(ホスゲン、ハロホルメートまたはカルボネート等)と二価フェノールを反応させることによって調製された芳香族カルボネートポリマーである。好ましい1つのポリカーボネートはポリ(2,2−ジフェニルプロパン)−カルボネートである。典型的には、ポリカーボネートは、75グラム毎10分(g/10分)以下(≦)、より好ましくは≦20g/10分(250℃/1.2キログラム(kg))のメルトインデックス(MI)を有するだろう。典型的には、ポリカーボネートは、50%を超える、好ましくは100%を超える破断時の引張伸びを有するだろう。一実施形態において、ポリカーボネートは衝撃強度が改質されている。
【0028】
ポリプロピレン(コンポーネントB)
本発明の実践において使用されるポリプロピレンは、プロピレンに由来するその量体単位を少なくとも2分の1有するポリマーである。これらは、プロピレンのホモポリマーに加えて、1つまたは複数のモノマーを備えたプロピレンのコポリマーを含み、それ(すなわちプロピレン)は、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1つまたは複数のコンジュゲートまたは非コンジュゲートのジエンおよび2つ以上のこれらコモノマーの組み合わせ等と共重合することができる。好ましくは、ポリプロピレンは高結晶性ポリプロピレンであり、より好ましくはMFR≦12g/10分(230℃/2.16kg)、より好ましくはMFR≦4g/10分(230℃/2.16kg)を備えた高結晶性ポリプロピレンである。一実施形態において、高結晶性ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンミニランダムコポリマー(すなわちプロピレンモノマーに由来する98%〜100%未満の単位を、別のオレフィンモノマー(典型的にはエチレン)に由来する残りの単位と共に含むプロピレンコポリマー)である。
【0029】
高結晶性は、示差走査熱量測定(DSC)融解熱によって測定されるように、ポリプロピレンが40%に等しいかまたはそれ以上、好ましくは55%に等しいかまたはそれ以上の結晶性を有していることを意味する。DSCは結晶性ポリマーおよび半結晶性ポリマーの融解および結晶を検討するのに使用できる一般的な技法である。DSC測定の一般原理ならびに結晶性ポリマーおよび半結晶性ポリマーの研究へのDSCの応用は、標準的なテキスト(例えばE.A.Turi編、「Thermal Characterization of Polymeric Materials」、Academic Press、1981年)中で記載される。
【0030】
「結晶性」という用語は結晶構造を形成する原子または分子のアレンジの規則性を指す。ポリマー結晶性はDSCを使用して検査することができる。Tmeは融解が終了する温度を意味し、Tmaxはピーク融解温度を意味し、両者は最終的な加熱工程からのデーターを使用してDSC分析から当業者によって決定される。DSC分析に好適な1つの方法はTA Instruments,IncからのモデルQ1000(商標)DSCを使用する。DSCのキャリブレーションは以下の様式で実行される。第一に、ベースラインはアルミニウムDSCパン中でサンプルなしで−90℃から290℃へセルを加熱することによって得られる。次いで7ミリグラムの新鮮なインジウムサンプルを、サンプルを180℃まで加熱すること、サンプルを10℃/分の冷却率で140℃まで冷却すること、続いてサンプルを140℃の等温で1分間維持すること、続いてサンプルを10℃/分の加熱率で140℃から180℃へ加熱することによって解析する。インジウムサンプルの融解熱および融解の開始を決定し、融解の開始については0.5℃〜156.6℃以内および融解熱については0.5J/g〜28.71J/g以内であることをチェックする。次いで脱イオン水は、DSCパン中で新鮮なサンプルの小液滴を10℃/分の冷却率で25℃から−30℃へ冷却することによって解析する。サンプルを−30℃の等温で2分間維持し、10℃/分の加熱率で30℃まで加熱する。融解の開始を測定し、0℃〜0.5℃以内であることをチェックする。
【0031】
ポリマーのサンプルは177℃の温度で薄いフィルムへとプレスされる。約5〜8mgのサンプルを秤量し、DSCパン中に置いた。蓋をパン上に圧着して閉鎖雰囲気を確実にする。サンプルパンをDSCセル中に置き、次いで約100℃/分の高率で230℃の温度まで加熱する。サンプルをこの温度で約3分間維持する。次いでサンプルを10℃/分の率で−40℃まで冷却し、その温度の等温で3分間維持する。したがって融解が完了するまで、サンプルを10℃/分の率で加熱する。生じたエンタルピー曲線は、ピーク融解温度、開始およびピーク結晶化温度、融解熱および結晶化熱、Tme、Tmax、ならびにUSP6,960,635中で記載されるような対応するサーモグラムからの対象となる他の量について解析される。融解熱を公称重量パーセント結晶性へと転換するのに使用される係数は、165J/g=100重量%結晶性である。この変換係数を用いて、プロピレンベースのポリマーの全結晶性(単位:重量パーセント結晶性)は、165J/gによって割り100パーセントを掛けた融解熱として計算される。インパクトコポリマーについては、エラストマー性衝撃強度改質剤は融解熱を無視できるほどに寄与する。それゆえ、コポリマーが「高結晶性」かどうかを決定するコンテキストにおいてインパクトコポリマーの結晶性を計算するために、上記の計算の結果を、エラストマー性衝撃強度改質剤の重量分を引いたものに等しい係数によってさらに割る。
【0032】
一実施形態において、本発明の実践において使用されるポリプロピレンは衝撃強度が改質されたポリプロピレンである。これらのプロピレンポリマーは、プロピレンポリマーからなる連続相、およびエラストマー相を有する。連続相のプロピレンポリマーは、典型的にはホモポリマーのプロピレンポリマーまたはランダムプロピレンコポリマーもしくはミニランダムプロピレンコポリマー、より典型的にはホモポリマーのプロピレンポリマーであるだろう。プロピレンポリマーは、チーグラー−ナッタ触媒、拘束幾何触媒、メタロセン触媒または他の好適な触媒システムを使用して作製することができる。連続相を作るプロピレンポリマーがホモポリマーのプロピレンポリマーである場合、プロピレンポリマーの結晶性は、DSCによって決定して、好ましくは少なくとも約50パーセント、より好ましくは少なくとも約55パーセント、最も好ましくは少なくとも約62パーセントである。
【0033】
エラストマー相は、拘束幾何触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒または他の好適な触媒を使用して作製することができる。エチレンプロピレンゴムは典型的にはシリーズにおいてカップルさせた2つの反応器のうちの第2のものの中で作製される。好ましいブレンドされたエラストマーには、エチレン−オクテン、エチレン−ブチレンおよびエチレン−ヘキセンが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、インパクトプロピレンコポリマーまたはブレンドのエラストマー含有量は、コポリマーまたはブレンドの重量に基づいて、8〜40、より典型的には12〜25、および最も典型的には15〜20重量%である。一実施形態において、本発明の組成物の衝撃強度改質ポリプロピレンコンポーネントのための許容可能な代替物は、ポリマー性エラストマー(エチレン−プロピレンコポリマー等)と組み合わせたポリプロピレンホモポリマーまたはミニランダムポリマーであり、各々は、組成物へ個別にそして衝撃強度改質プロピレンポリマー中のそれぞれの量に類似する量(例えば、80〜90重量%のプロピレンホモポリマーおよび/またはミニランダムポリマーおよび10〜20重量%のエラストマー)で添加される。
【0034】
本発明の実践において使用することができる特定のインパクトプロピレンコポリマーは、USP 6,472,473および6,841,620中に、より完全に記載される。
【0035】
相溶化剤(コンポーネントC)
本発明の組成物の相溶化剤コンポーネントはアミン官能基化エラストマー性オレフィンポリマーである。これらの官能基化ポリマーは、オレフィンエラストマー、典型的にはポリオレフィンインターポリマーおよび好ましくはポリオレフィンマルチブロックインターポリマーから作製される。ポリオレフィンインターポリマーの例は、エチレン/α−オレフィンインターポリマー、プロピレン/α−オレフィンインターポリマーおよびマルチブロックエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。α−オレフィンは、好ましくはC3−20の直鎖状、分岐状または環状のα−オレフィンである(プロピレン/α−オレフィンインターポリマーについては、エチレンはα−オレフィンと判断される)。C3−20α−オレフィンの例には、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デケン、1−ドデケン、1−テトラデケン、1−ヘキサデケンおよび1−オクタデケンが含まれる。α−オレフィンは環状構造(シクロヘキサンまたはシクロペンタン)も含むことができ、3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサン等のα−オレフィンを生じる。用語の古典的な意味におけるα−オレフィンではなく、本発明の目的のために、特定の環状オレフィン(ノルボルネンおよび関連するオレフィン等)はα−オレフィンであり、上記の∀−オレフィンのいくつかまたはすべての場所において使用することができる。例示的なポリオレフィンコポリマーには、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテンおよび同種のものが含まれる。例示的なターポリマーには、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン−/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテンおよびエチレン/ブテン/スチレンが含まれる。
【0036】
本発明の一実施形態において、相溶化剤はアミン官能基化されたエラストマー性オレフィンブロックコポリマーである。「オレフィンブロックコポリマー」(または「OBC」)、「オレフィンブロックインターポリマー」、「マルチブロックインターポリマー」、「セグメント化インターポリマー」は、好ましくは直線状で連結された2つ以上の化学的に別の領域またはセグメント(「ブロック」と称される)を含むポリマーであり、すなわち、懸垂方式またはグラフト方式においてではなく、重合されたオレフィン(好ましくはエチレン)官能基に関して末端間で連結される、化学的に区別された単位を含むポリマーである。一実施形態において、ブロックは、組み入れられたコモノマーの量もしくはタイプ、密度、結晶性の量、かかる組成物のポリマーに起因する結晶子サイズ、立体規則性(アイソタクチックまたはシンジオタクチック)のタイプもしくは程度、位置規則性もしくは位置不規則性、分岐の量(長鎖分岐または過分岐を含む)、均質性、または他の化学的特性もしくは物理的特性において異なる。連続するモノマー添加、流動触媒またはアニオン重合技法によって生産されたインターポリマーを含む先行技術のブロックインターポリマーに比較して、この開示の実践において使用されるマルチブロックインターポリマーは、ポリマー多分散性(PDIまたはMw/MnまたはMWD)、ブロック長分布、および/またはブロック数分布の両方のユニークな分布によって特徴づけられ、一実施形態において、そのことは、マルチブロックインターポリマーの調製において使用される複数の触媒と組み合わせたシャトリング剤(複数可)の効果のためである。より具体的には、連続的なプロセスにおいて生産された場合、ポリマーは望ましくは1.7〜3.5、好ましくは1.8〜3、より好ましくは1.8〜2.5、および最も好ましくは1.8〜2.2のPDIを保持する。バッチプロセスまたはセミバッチプロセスにおいて生産された場合、ポリマーは望ましくは1.0〜3.5、好ましくは1.3〜3、より好ましくは1.4〜2.5、および最も好ましくは1.4〜2のPDIを保持する。
【0037】
「エチレンマルチブロックインターポリマー」という用語は、エチレンおよび1つまたは複数のインターポリマー化可能なコモノマーを含むマルチブロックインターポリマーであり、その中のエチレンは、ポリマー中で少なくとも1つのブロックまたはセグメントの複数の重合されたモノマー単位を、好ましくは少なくとも90、より好ましくは少なくとも95および最も好ましくは少なくとも98のブロックのモルパーセントで構成する。全ポリマー重量に基づいて、本開示の実践において使用されるエチレンマルチブロックインターポリマーは、好ましくは25〜97、より好ましくは40〜96、さらにより好ましくは55〜95および最も好ましくは65〜85パーセントのエチレン含有量を有する。
【0038】
2つ以上のモノマーから形成されたそれぞれの区別できるセグメントまたはブロックが、単一のポリマー鎖へと連結されるので、ポリマーは標準的な選択抽出技法を使用して完全に分画することができない。例えば、比較的結晶性(高密度のセグメント)の領域および比較的非晶性(より低い密度のセグメント)の領域を含有するポリマーは、異なる溶媒を使用して選択的に抽出または分画することができない。一実施形態において、ジアルキルエーテルまたはアルカン溶媒のいずれかを使用する抽出可能なポリマーの量は、全ポリマー重量のうちの10パーセント未満、好ましくは7パーセント未満、より好ましくは5パーセント未満、および最も好ましくは2パーセント未満である。
【0039】
さらなる実施形態において、本発明のこの実施形態において使用されるオレフィンブロックポリマー(特に連続的な溶液重合反応器中で作製されるもの)は、アミンによる官能基化前に、最も可能性の高いブロック長の分布を保持する。本開示の一実施形態において、エチレンマルチブロックインターポリマーは、
(A)約1.7〜約3.5のMw/Mn、摂氏度での少なくとも1つの融点(Tm)、およびグラム/立方センチメートルでの密度(d)(ここで、Tmおよびdの数値は以下の関係に対応する
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d))、または
(B)約1.7〜約3.5のMw/Mn、ならびに融解熱(J/gでの)H)および最も高いDSCピークと最も高いCRYSTAFピークとの間の温度差として定義される摂氏度でのδ量()T))によって特徴づけられる(ここで、)Tおよび)Hの数値は以下の関係を有する
0を超えて130J/gまでの)Hについては、)T>−0.1299()H)+62.81
130J/gを超える)Hについては、)T≧48℃
ここで、CRYSTAFピークは累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、ポリマーの5パーセント未満が同定可能なCRYSTAFピークを有するならば、CRYSTAF温度は30℃である);または
(C)300パーセントのひずみおよび1サイクルのパーセントでの弾性回復(Re)はエチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成型されたフィルムにより測定され、グラム/立方センチメートルでの密度(d)を有する(ここで、エチレン/α−オレフィンインターポリマーに架橋相が実質的にない場合、Reおよびdの数値は以下の関係を満たす
Re>1481−1629(d));または
(D)TREFを使用して分画された場合40Cと130Cとの間で溶出される分子量画分を有し、この画分は、同じ温度の間に溶出する同等のランダムエチレンインターポリマー画分よりも少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含有量を有するという点で特徴づけられる(ここで、前記同等のランダムエチレンインターポリマーは同じコモノマー(複数可)を有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものの10パーセント以内のメルトインデックス、密度およびモルコモノマー含有量(ポリマー全体に基づいて)を有する);または
(E)25℃での貯蔵弾性率(G’(25℃))および100℃での貯蔵弾性率(G’(100℃))を有する(ここで、G’(25℃)対G’(100℃)の比は約1:1〜約9:1の範囲である)
を、アミンによる官能基化前に有するとして定義される。エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、
(F)TREFを使用して分画した場合に40℃と130℃との間で溶出する分子画分は、画分が少なくとも0.5〜約1までのブロックインデックスおよび約1.3を超える分子量分布(Mw/Mn)を有しているという点で特徴づけられる;または
(G)0を超え約1.0までの平均ブロックインデックスおよび約1.3を超える分子量分布(Mw/Mn)
も有することができる。
【0040】
本発明の実践に有用なエチレンマルチブロックインターポリマーならびにそれらの調製および使用は、USP7,579,408、7,355,089、7,524,911、7,514,517、7,582,716および7,504,347中でより完全に記載される。
【0041】
オレフィンエラストマーは、1つまたは複数のアミン基、例えばNHR(式中、Rは水素、アルキルまたはアリール、好ましくはアルキルまたはアリール、およびより好ましくは1〜10の炭素原子のアルキルである)により官能基化される。これらのアミン基は、ポリマーの骨格の中へアミンを持つオレフィンモノマーを含めること(もしくはポリマー骨格の単位へアミン基を添加すること)、または、好ましくは、ポリマー骨格上に好適な化合物(例えば無水マレイン酸)をグラフトし、次いでアミンを持つ化合物(例えばジアミン)とグラフトされた化合物を反応させることのいずれかによって、ポリマーの中へ組み入れることができる。
【0042】
一実施形態において、グラフトは、典型的にはオレフィンポリマー、フリーラジカル開始剤(過酸化物または同種のもの等)、および官能基を含有する化合物を溶融ブレンドすることを含む、フリーラジカル官能基化によって始まり得る。溶融ブレンドの間に、フリーラジカル開始剤はポリマーラジカルを形成するためにオレフィンポリマーと反応させる(反応性溶融ブレンド)。官能基を含有する化合物はポリマーラジカルの骨格に結合して官能基化ポリマーを形成する。一実施形態において、グラフトするモノマーは無水マレイン酸であり、いったんポリマー骨格にグラフトされたなら、アミン、例えばHN−R−NH(式中、Rは1〜8の炭素原子のアルキルラジカルである)を備えたペンダント無水物またはカルボン酸基を反応させて、ポリマーの官能性アミド基を提供する。好適なグラフト技法は、USP3,236,917および5,194,509ならびにWO2006/102016、WO2008/0808011およびWO 2008/079784中でさらに記載される。
【0043】
本発明の相溶化剤の調製において有用なオレフィンエラストマーの多くの具体的な例には、超低比重ポリエチレン(VLDPE)(例えばThe Dow Chemical Companyによって作製されたFLEXOMER(登録商標)エチレン/1−ヘキセンポリエチレン)、均一に分岐した直鎖状のエチレン/∀−オレフィンコポリマー(例えばMitsui Petrochemicals Company LimitedによるTAFMER(登録商標)およびExxon Chemical CompanyによるEXACT(登録商標))、均一に分岐した実質的に直鎖状のエチレン/∀−オレフィンポリマー(例えばThe Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(登録商標)およびENGAGE(登録商標)ポリエチレン)、およびUSP7,355,089中で記載されるもの等のオレフィンブロックコポリマー(例えばThe Dow Chemical Companyから入手可能なINFUSE(登録商標))が含まれる。多くの好ましいポリオレフィンコポリマーは、均一に分岐した直鎖状および実質的に直鎖状のエチレンコポリマーである。実質的に直鎖状のエチレンコポリマーは特に好ましく、USP5,272,236、5,278,272および5,986,028中でより完全に記載される。最も好ましいのはエチレンマルチブロックインターポリマーである。
【0044】
本発明の実践に有用な相溶化剤の調製において有用なオレフィンエラストマーには、プロピレン、ブテン、および他のアルケンベースのコポリマー(例えばプロピレンに由来する多数の量体単位、および別のα−オレフィン(エチレンを含む)に由来する少数の量体単位を含むコポリマー)も含まれる。本発明の実践に有用な例示的なプロピレンポリマーには、The Dow Chemical Companyから入手可能なVERSIFY(登録商標)ポリマー、およびExxonMobil Chemical Companyから入手可能なVISTAMAXX(登録商標)ポリマーが含まれる。
【0045】
上記のオレフィンのエラストマーのいずれかのブレンドも、本発明の実践に有用な相溶化剤の調製において使用することができ、オレフィンエラストマーは、好ましいモードにおいて、本発明のオレフィンエラストマーがブレンドの熱可塑性ポリマーコンポーネントの少なくとも約50、好ましくは少なくとも約75、およびより好ましくは少なくとも約80重量パーセントを構成する程度まで、1つまたは複数の他のポリマーによりブレンドまたは希釈し、それらの柔軟性を保持することができる。それほど好ましくないモードにおいて、および探索され得る他の特性に依存して、オレフィンエラストマー含有量は熱可塑性ポリマーコンポーネントの50%未満であり得る。
【0046】
本発明の実践に有用な相溶化剤の調製において有用なオレフィンエラストマー(特にエチレンエラストマー)は、典型的には、グラフト前に、0.91未満、好ましくは0.90未満グラム毎立方センチメートル(g/cm)の密度を有する。エチレンコポリマーは、典型的には、0.85g/cmを超える、好ましくは0.86g/cmを超える密度を有する。密度はASTM D−792の手順によって測定される。一般的に、インターポリマーのα−オレフィン含有量が大きいほど、インターポリマーの密度は低く、より非晶性である。低密度ポリオレフィンコポリマーは半結晶性で柔軟であり、良好な光学的特性(例えば可視光線およびUV光の高い透過率ならびに低い曇価)を有するとして一般的に特徴づけられる。
【0047】
本発明の実践に有用な相溶化剤の調製において有用なエチレンエラストマーは、典型的には、グラフト前に、0.10を超えるおよび好ましくは1を超えるグラム毎10分(g/10分)のメルトインデックスを有する。エチレンエラストマーは、典型的には、500g/10分未満および好ましくは100g/10分未満のメルトインデックスを有する。メルトインデックスはASTM D−1238(190℃/2.16kg)の手順によって測定される。
【0048】
一実施形態において、相溶化剤のポリマー骨格にはスチレンに由来する量体単位がなく、それはカルボン酸またはエポキシ基を含有する量体単位を含有しない。一実施形態において、例えば、本発明の相溶化剤は、無水マレイン酸によりグラフトされたポリマーのアミノ化から残存するカルボン酸官能基を含有することができるが、この残存する酸官能基の量は名目上であり、好ましくは少しもないが、存在するならば、それは本発明の組成物中の相溶化剤の性能に対してほとんどまたはまったく重要ではない。
【0049】
有機リン酸塩難燃剤(コンポーネントD)
本発明の実践に有用な有機リン酸塩難燃剤には、芳香族および脂肪族の両方のリン酸エステルならびにそれらのポリマーが含まれる。脂肪族リン酸エステル難燃剤の例には、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、モノイソデシルホスフェートおよび2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートが含まれる。芳香族リン酸エステルの例には、トリキシレニルホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートおよびジフェニル−2−メタクリルオイルオキシエチルホスフェートが含まれる。芳香族ビス(リン酸エステル)の例には、レゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)(RDP)、レゾルシノール、ビス(ジキシレニルホスフェート)、レゾルシノール、ビス(ジクレジルホスフェート)、ヒドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)(BPADP)およびテトラキス(2,6−ジメチル−フェニル)−1,3−フェニレンビスホスフェートが含まれる。これらのリン酸エステルは、単独でまたは互いに組み合わせて使用することができる。好ましい有機リン酸塩難燃剤は周囲条件(23℃および大気圧)下で液体である。
【0050】
オプションの添加剤(コンポーネントE)
本発明の組成物は任意で添加剤も含有することができる。代表的な添加剤には、抗酸化剤、加工補助剤、着色剤、紫外線安定剤(UV吸収剤を含む)、帯電防止剤、成核剤、スリップ剤、可塑剤、潤滑剤、粘度制御剤、粘着性付与剤、抗ブロッキング剤、界面活性剤、エキステンダー油、充填剤、酸掃去剤および金属不活性化剤が含まれるが、これらに限定されない。存在するならば、これらの添加剤は、典型的には、慣習的な方式および組成物の全重量に基づいた慣習的な量(例えば0.01重量%以下〜10重量%以上)で、個別におよび/または集合的に使用される。
【0051】
好適なUV光安定剤にはヒンダードアミン光安定剤(HALS)およびUV光吸収剤(UVA)添加剤が含まれる。組成物中で使用することができる代表的なHALSには、TINUVIN XT 850、TINUVIN 622、TINUVIN(登録商標)770、TINUVIN(登録商標)144、SANDUVOR(登録商標)PR−31およびChimassorb 119 FLが含まれるが、これらに限定されない。TINUVIN(登録商標)770はビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケートであり、約480グラム/モルの分子量を有し、Ciba,Inc.(現在はBASFの一部)から商業的に入手可能であり、2つの第二級アミン基を保持する。TINUVIN(登録商標)144はビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−n−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネートであり、約685グラム/モルの分子量を有し、第三級アミンを含有し、Cibaから入手可能でもある。SANDUVOR(登録商標)PR−31はプロパン二酸([(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル)であり、約529グラム/モルの分子量を有し、第三級アミンを含有し、Clariant Chemicals Ltd.(インド)から入手可能である。Chimassorb 119 FLまたはChimassorb 119は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとのコハク酸ジメチルポリマーが10重量%およびN,N’’’−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−traizin−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]ビス[N’N’’−ジブチル−N’N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)]−1が90重量%であり、Ciba Inc.から商業的に入手可能である。代表的なUV吸収剤(UVA)添加剤はベンゾトリアゾールタイプ(Ciba,Inc.から商業的に入手可能なTinuvin 326およびTinuvin 328等)を含む。HALおよびUVAの添加剤のブレンドも効果的である。
【0052】
抗酸化剤の例には、ヒンダードフェノール(テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン等);ビス[(β−(3,5−ジターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチル・フェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、およびチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;ホスファイトおよびホスホニト(トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよびジ−tert−ブチルフェニル−ホスホニト等);チオ化合物(ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネートおよびジステアリルチオジプロピオネート等);様々なシロキサン;重合した2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン、アルキル化されたジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合されたジ−アリール−p−フェニレンジアミン、ならびに他のヒンダードアミンの抗分解剤または安定剤が含まれるが、これらに限定されない。抗酸化剤は、組成物の重量に基づいて例えば0.1〜5重量%の量で使用することができる。
【0053】
加工補助剤の例には、カルボン酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸カルシウム等);脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸またはエルカ酸等);脂肪アミド(ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドまたはN,N’−エチレンビス−ステアルアミド等);ポリエチレンワックス;酸化されたポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー;植物性ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;シリコーン溶液およびポリシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の特定の実施形態において、組成物は、10重量%未満、好ましくは5重量%未満の様々な金属酸化物(例えば二酸化チタン);金属炭酸塩(炭酸マグネシウムおよび炭酸カルシウム等)、金属硫化物および金属硫酸塩(二硫化モリブデンおよび硫酸バリウム等);金属ホウ酸塩(ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛およびメタホウ酸亜鉛等);金属無水物(アルミニウム無水物等);ハロゲン、ならびにポリマー性リン酸塩を含有する。本発明の特定の実施形態において、組成物にはこれらの材料が実質的にない。
【0055】
難燃性熱可塑性組成物
本発明の組成物の各コンポーネントの相対的量を表1中に記載する。
【表1】
一実施形態において、A対Bの重量比(ポリカーボネート(PC)対ポリプロピレン(PP))は、1を超え(>)、好ましくは>1.5、より好ましくは>2である。一実施形態において、PC対PPの重量比は、1:1〜8:1、好ましくは1.5:1〜8:1、およびより好ましくは2:1〜8:1である。
【0056】
調合/製造
本発明の組成物の調合は当業者に公知の標準的な手段によって実行することができる。調合装置の例は、内部バッチミキサー(BANBURYまたはBOLLINGの内部ミキサー等)である。あるいは、連続の一軸スクリューミキサーまたは二軸スクリューミキサー(FARREL連続ミキサー、WERNER AND PFLEIDERER二軸スクリューミキサーまたはBUSS混練連続押出し機等)を使用することができる。利用されるミキサーのタイプおよびミキサーの操作条件は、組成物の特性(粘度、体積抵抗率および押出した表面の平滑性等)に影響を与えるだろう。
【0057】
ポリカーボネート、ポリプロピレン、相溶化剤および有機リン酸塩難燃剤ならびにオプションの追加パッケージの調合温度は、組成物に応じて変動するだろうが、典型的には220℃を越える。ポリカーボネート対ポリプロピレンの3:1重量比については、調合温度は典型的には245℃を超える。最終的な組成物の様々なコンポーネントは、互いに、任意の順序でまたは同時に添加および調合することができるが、典型的には、ポリカーボネート、ポリプロピレンおよび相溶化剤を互いに最初に調合し、次いで難燃剤、次いで添加剤を調合する。いくつかの実施形態において、添加剤は前混合したマスターバッチとして添加される。かかるマスターバッチは、一般的に、少量の1つまたは複数のポリカーボネートおよびポリプロピレン中で添加剤を分散させることによって個別にまたはともにのいずれかで形成される。マスターバッチは融解調合方法によって都合よく形成される。
【0058】
物品の製造
一実施形態において、本発明の組成物は、公知の量でおよび公知の方法により(例えばUSP5,246,783および4,144,202中に記載されていた装置および方法により)ケーブルに(例えばシースまたは絶縁層のように)カバーとして適用することができる。典型的には、ポリマー組成物はケーブルコーティングダイスを装備した反応器−押出し機中で調製され、組成物のコンポーネントが配合された後、ケーブルがダイスを介して引き抜かれるように、組成物はケーブルにわたって押出される。
【0059】
本発明のポリマー組成物から調製することができる他の物品の製造には、繊維、リボン、シート、テープ、ペレット、チューブ、パイプ、目詰め、シール、ガスケット、泡、履物およびふいごが含まれる。これらの製品は公知の装置および技法を使用して製造することができる。
【0060】
本発明の組成物は、ISO 6722に従って減少させられた肉厚(例えば0.2mmの以下)を備えた自動車の電線について、1つまたは複数の着実な紙やすりによる摩耗に対する耐性、擦過による摩耗に対する耐性、締め付けに対する耐性、耐燃性および耐熱湯性を示す。
【0061】
本発明は以下の実施例を介してより完全に記載される。特に断りのない限り、すべての容およびパーセンテージは重量である。
【0062】
具体的な実施形態
材料および方法
PP/PCブレンドを表2中に示されるようにBRABENDERミキシングボウル中で最初に混合し、次いで3/4”一軸スクリューBRABENDER押出し機中で押出して0.2mmの絶縁層を備えた電線を作製する。使用される電線構築は18のAWG/19ストランド裸銅線である。
【0063】
PP1は、2.1g/10分(230℃/2.16kg)のMFR、0.900g/cmの密度、1720MPaの1%セカント曲げ弾性率、560J/mの23℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃、および0.45MPaのロード下での116℃のたわみ温度を備えたインパクトコポリマーであり、核形成された高結晶性(63%)のポリプロピレンホモポリマーを重量で82%+1.0g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックスおよび0.902g/cmの密度を備えたエチレン/α−オレフィンコポリマーを重量で18%で融解調合したブレンドを含む。
【0064】
PP2は、3.0g/10分(230℃/2.16kg)のMFR、0.900g/cmの密度、2070MPaの1%のセカント曲げ弾性率、37J/mの23℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃、および0.45MPaのロード下での129℃のたわみ温度を備えた核形成された高結晶性(58%)ポリプロピレンコポリマーである。
【0065】
PP3は、38g/10分(230℃/2.16kg)のMFR、0.900g/cmの密度、1240MPaの1%のセカント曲げ弾性率、27J/mの23℃でのノッチ付きアイゾッド衝撃、および0.45MPaのロード下での104℃のたわみ温度を備えた高結晶性(54%)ポリプロピレンホモポリマーである。
【0066】
PC1は、6g/10分(300℃/1.2kg)のメルトインデックス、1.20g/cmの密度、2410MPaの曲げ弾性率、907J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃、150%の破断時の引張伸び、および72MPaの破断時の引張強度を備えたポリカーボネート樹脂である。
【0067】
PC2は、73g/10分(300℃/1.2kg)のメルトインデックス、1.20g/cmの密度、2300MPaの曲げ弾性率、267J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃、60%の破断時の引張伸び、および48MPaの破断時の引張強度を備えたポリカーボネート樹脂である。
【0068】
PC3は、18g/10分(300℃/1.2kg)のメルトインデックス、1.18g/cmの密度、2280MPaの曲げ弾性率、641J/mのノッチ付きアイゾッド衝撃、および110%の破断時の引張伸びを備えた衝撃強度改質ポリカーボネート樹脂である。
【0069】
BDPはビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)である。
【0070】
IRGANOX 1010(BASF)はヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【0071】
IRGAFOS 168(BASF)はトリサリルホスファイト(trisarylphosphite)熱安定剤である。
【0072】
アミノ化無水マレイン酸グラフトINFUSE(商標)9500およびアミノ化無水マレイン酸グラフトAMPLIFY(商標)GR216は以下の手順に従って調製される。
【0073】
AMPLIFY(商標)GR216(The Dow Chemical Companyから入手可能な0.99重量%無水マレイン酸によりグラフトされたポリオレフィンエラストマー)は、HAAKE RHEOMIX 3000pのミキサーの中へ空圧式ラムならびに180℃の温度設定および2分間にわたって段階的に60rpmに増加される10rpmの初期ローター速度のローラーローターにより供給された吸収ペレットを含む密封した撹拌システム中で、N−エチルエチレンジアミン(5.10g)によりAMPLIFY(商標)GR216(200グラム)のペレットを室温で吸収することによって、アミン官能性産物に転換される。材料をミキサーから取り出した産物と共に10分間ミキサー中で流動体化し、シートへとプレスし、75℃の真空オーブン中に一晩置く。ブレンド中で利用するまで産物を密封する。
【0074】
INFUSE(商標)9500(The Dow Chemical Companyから入手可能なエチレンマルチブロックコポリマー)は、1.06重量%無水マレイン酸によりラジカルにグラフトされ、続いてHAAKE RHEOMIX 3000pのミキサーの中へ空圧式ラムならびに170℃の温度設定および2分間にわたって段階的に60rpmに増加される10rpmの初期ローター速度のローラーローターにより供給された吸収ペレットを含む密封した撹拌したシステム中で、N−エチルエチレンジアミン(9.15mL)を備えたマレイン酸化INFUSE(商標)9500(200g)のペレットを室温で吸収することによって、アミン官能性産物に転換される。材料をミキサーから取り出した産物と共に10分間ミキサー中で流動体化し、シートへとプレスし、75℃の真空オーブン中に一晩置く。ブレンド中で利用するまで産物を密封する。
【0075】
擦過による摩耗に対する耐性はISO 6722に従う擦過試験装置を使用して試験される。それは7Nの荷重下で電線表面を針で引っかくことにより行われる。針が絶縁体を介して摩耗されるのに要するサイクルの数が記録される。紙やすりによる摩耗に対する耐性はSAE J1678に従って試験される。それは163gの荷重下で電線表面を紙やすりでこすることにより行われる。電線絶縁体を介して摩耗されるのに使用した紙やすりの全長が記録される。締め付けに対する耐性はSAE J1128に従って測定される。電線サンプルは3mmの直径鋼ロッドを横切って置かれ、2.3kg/分の率で塊により適用された増加する力にさらされる。試験サンプルの締め付けに対する耐性は4つの値の平均である。耐熱湯性試験は以下のプロトコルに従って設定される。14フィートの電線を1%の塩水により満たされたジャー中に浸漬する。電線を85℃オーブン中の湯中で5週間エージングさせる。電線は、測定された絶縁抵抗が10Ohm.mmを超える場合に良好な耐熱湯性を有すると判断される。難燃性は以下のJ1128手順で試験される。消滅時間はJ1128要求性に合格するために70秒未満であることが必要である。
【表2】
【0076】
表2中で、実験1は相溶化剤としてアミノ化マレイングラフトINFUSE 9500を使用するPP1およびPC1のブレンドである。この組成物は、薄い電線絶縁体についての要求性と比較して以下の優れた性能を示す。高い擦過による摩耗に対する耐性、高い紙やすりによる摩耗に対する耐性、良好な耐燃性、良好な耐熱湯性および良好な締め付けに対する耐性。実験1は以下の通り比較の実施例より著しく優れている。比較1と比較して、はるかに良好な擦過による摩耗に対する耐性を有し、ブレンドのポリプロピレンコンポーネントのMFRへの意外にも強い依存性が例証され;比較2と比較して、火炎を消滅させる時間が非常に減少され、PPリッチの組成物と比較して、PCリッチの組成物については改善された耐燃性を示す。発明の実施例の実験2、3および4は、アミノ化マレイングラフAMPLIFY GR216を使用する、それぞれPC2、PC1およびPC3とのPP1のブレンドである。実験1と比較して、実験2、3および4はより低い擦過に対する耐性を例外とするが、同様に優れた性能を有し、発明の実施例の中でのこの比較は、実験1において使用されるアミノ化マレイングラフトオレフィンブロックコポリマー相溶化剤の特に好ましい利益を例証するのに役立つ。それにもかかわらず、実験2、3および4は、比較1および比較2と比較して以下の有利な性能を有する。比較1と比較して、より良好な擦過による摩耗に対する耐性があり、ポリプロピレンコンポーネントについてのより低いMFRの利益をさらに例証し;比較2と比較して、改善された耐燃性があり、この場合もやはり耐燃性についてのPCリッチの組成物の利点を例証する。
【0077】
ハイスループット実施例
追加組成物は引き込み可能なピン混合サンプル形成装置により調製され、一般的デザインおよびその操作プロセスはWO2007/095036中に記載される。組成物およびそれらの特性は表3中に示される。
【0078】
具体的なピン混合装置は4本の対称的に整列させた混合ピンを有し、10cmのブレンドを調製し、次いで混合が完了した直後に、67mm×67mm×1.6mm厚の寸法を備えたプラークを射出成型する。ブレンド調製は以下の2工程を含む。(1)40cmまたは200cm容量ボウルのいずれかを備えたHAAKEバッチミキサーを使用して、ポリマー成分+液体リン酸塩難燃剤のマスターバッチを作製する工程;および(2)マスターバッチ+いくつかの事例において追加量の樹脂コンポーネントを組み合わせることによって、引き込み可能なピン混合装置を使用して最終的な化合物を作製する工程。ピン混合装置については、難燃性液体を含めたマスターバッチを調製する初期工程は、最終化合物調製の第2の工程のための混合時間を減少させることによって、全体的により効果的な実験を可能にし、最終的なブレンドにおける優れた均質性も追加で保証する。他のタイプの混合装置については、特に製造スケール混合装置については、かかる2工程のブレンドプロセスは一般的に不必要である。
【0079】
引き込み可能なピン混合装置により調製されたブレンドは、特性(引張特性、引っかきに対する耐性および顕微鏡検査により決定されるようなブレンド形態等)の一般的に優れた一致により明示されるように、多くの慣習的な装置(HAAKEバッチミキサーおよび二軸スクリュー押出し機等)により調製されたブレンドに密接に対応する。マスターバッチ調製のためのHAAKE操作条件は以下のとおりである。(1)BDP/PPマスターバッチについては50rpmで200℃で10分間;(2)BDP/PCマスターバッチについては50rpmで260℃で10分間;および(3)BDP/相溶化剤/PCマスターバッチについては50rpmで260℃で15分間。3つの事例すべてにおいて、BDPを溶融ポリマーへ5分間の期間にわたって徐々に添加し、続いて追加の5分間混合する。相溶化剤を含むマスターバッチについては、相溶化剤およびPCの5分間の混合はBDP添加に先行する。引き込み可能なピン混合サンプル形成装置のための操作の条件は、8分間の混合時間、反対方向で回転する2ペアのピンによる共回転する対角線で向かい合うピンの回転式ピン運動モード、300rpmの回転ピン速度、180度位相の異なる混合チャンバーの中へおよび外へ移動する2ペアのピンによる一定の速度でともに移動する隣接ペアのピンの直線的ピン運動モード、15mm/秒の直線ピン速度、1.6秒の型の中への射出時間、および30秒の脱成型前の冷却時間である。操作の温度はブレンド組成物に依存して変動し、PCリッチの組成物についての235℃の混合温度および90℃の型温度から、PPリッチの組成物についての215℃の混合温度および85℃の型温度にわたる。
【0080】
特別に開発された引っかき試験方法を使用して、ピン混合サンプル形成装置により生産されたブレンドプラークの摩耗に対する耐性を測定する。カスタム固定具を装備したサーボ油圧材料試験機械(MTSモデル810)を使用してこの試験を実行する。プラークをローラーテーブルに垂直方向で堅固にマウントする。半球の先端を備えステンレス鋼のジャケットのあるサーモカップルを、プラークの頂点でプラークの表面に対して垂直の方向性で試験機のサーボ油圧で作動するシャフトへ堅固にマウントする。プラークを保持するローラーテーブルに貼付した自重滑車システムは、サーモカップル先端に対してプラークを堅固に牽引し、試験の全体にわたって700gのプラークに対して一定の常用荷重のプローブを提供する。
【0081】
引っかき試験は、プラーク上での引っかきプローブ(すなわちサーモカップル)の周期的な往復運動する直線運動を含む。試験は、合計275のサイクルについて毎分55サイクルの頻度で300秒間実行される。試験の完了時に、プラークを除去し、引っかきの深さをキャリパーにより測定する。より大きな引っかき深さはより低い摩耗に対する耐性に対応し、逆の場合も同様である。表3中の引っかき深さ値は5つの重複した測定の平均である。このカスタム方法により測定されるような引っかき深さは、先に記載された標準的な方法により電線絶縁体上で測定された擦過摩耗サイクルと反比例様式で非常によく相関する。この相関性の優れた質は図中で示される。相関関数は以下の通りある。擦過摩耗サイクル=3.94*(mmでの引っかき深さ)^(−1.585)。この相関性は図中で例証される。表3は、直接測定された引っかき深さ、およびこの相関性を様々な組成物に使用して計算されるような対応する擦過摩耗サイクルの両方を報告する。
【表3】
【0082】
組成物(実験5〜実験11)は、発明の組成物中に存在する1つまたは複数のコンポーネントを欠損する組成物(比較4〜比較7)と比較して、摩耗に対する耐性が以下のように著しく改善された。比較5〜比較7において、欠損しているコンポーネントはアミノ化エラストマー性相溶化剤であり;比較4において、欠損しているコンポーネントはポリカーボネートおよび相溶化剤である。比較3は適切に良好な摩耗に対する耐性を保持するが、それは、ポリカーボネートの比較的高いガラス転移温度(例えばPolymer Handbook、第3版、J. Brandrup and E. H. Immergut (1989)中で報告されるように145C)に起因して、電線絶縁体のために好適な十分な温度柔軟性を欠損する。比較8は実験5と同じコンポーネントからなり、それは表2中の同様の組成物(すなわちそれぞれ比較2および実験1)の耐燃性の結果に対する推論により、同様に良好な摩耗に対する耐性を保持するが、比較8のPPリッチの組成物は電線絶縁体に好適な十分な耐燃性を欠損する。実験6、実験8および実験10と実験5に対する比較は、ポリカーボネートおよびポリプロピレンのコンポーネントの1つまたは両者が衝撃強度改質性であるならば、摩耗に対する耐性における追加の著しい改善を意外にも示す。発明の実施例のさらなる検討は、より高いPC/PP比が改善された摩耗に対する耐性にとって好ましいことを例証する。
なお、本発明には以下の実施形態が包含される。
[1]組成物の重量に基づいた重量パーセントで、
A.少なくとも1つのビスフェノール−Aポリカーボネート樹脂を35〜80%、
B.MFR≦12g/10分(230℃/2.16kg)を備えた少なくとも1つのポリプロピレンを10〜35%、
C.少なくとも1つのアミン官能基化エラストマー性ポリマーを0を超えて(>)40%まで、
D.少なくとも1つの有機リン酸塩難燃剤を>0〜30%、および、
E.1つまたは複数の添加剤を0〜10%で含む組成物であって、
A対Bの重量比が1を超える(>)組成物。
[2]前記ポリプロピレンが40%を超える結晶性を有する、[1]に記載の組成物。
[3]前記ポリカーボネート樹脂が、75グラム毎10分(g/10分)以下(≦)(250℃/1.2kg)のメルトフローレイト(MFR)および50%を超える破断時の引張伸びを有する、[1]〜[2]のいずれか一項に記載の組成物。
[4]前記ポリプロピレンがMFR≦4g/10分(230℃/2.16kg)を備えたプロピレンホモポリマーまたはプロピレンミニランダムコポリマーである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]前記アミン官能基化エラストマー性ポリマーがアミン官能基化エチレンマルチブロックインターポリマーである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6]前記有機リン酸塩難燃剤が周囲条件下で液体である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]添加剤が存在する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8]ハロゲン、金属酸化物およびポリマー性リン酸塩が実質的にない、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9]前記アミン官能基化エラストマー性ポリマーのポリマー骨格が、スチレンに由来する量体単位がなく、前記アミン官能基化エラストマー性ポリマーのポリマー骨格がエポキシ基を含有する量体単位を含有しない、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10][1]〜[9]のいずれか一項に記載の組成物を含む、電線絶縁体シース。
[11][10]に記載の絶縁体シースを含む、電線。
図1