(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非イオン性界面活性剤及び/又は下記式(IV)で表される陽イオン性界面活性剤と、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合し、得られた混合物と乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスとを更に混合することで配合ラテックスを調製する工程1、及び、
前記工程1で得られた配合ラテックスのpHを5〜7に調整し、凝固させる工程2を含む
シリカ・スチレンブタジエンゴム複合体の製造方法。
[R7R8R9R10N]+X− (IV)
(式中、R7及びR8は、一方がメチル基、他方が炭素数6〜18のアルキル基である。R9及びR10は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。Xは1価の陰イオンを表す。)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<シリカ・スチレンブタジエンゴム複合体>
本発明のシリカ・スチレンブタジエンゴム複合体(シリカ・SBR複合体)は、界面活性剤と平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合し、得られた混合物と乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックス(E−SBRラテックス)とを更に混合することで調製された配合ラテックスから得られる。
【0016】
本発明における検討により、E−SBRラテックス及び微粒子シリカ分散液を混合した場合、酸などを添加しても凝固しないのに対し、界面活性剤と微粒子シリカ分散液とを事前に混合してから、E−SBRラテックスと混合することで、シリカとゴムの相互作用を高め、シリカとゴムの分離やシリカの凝集を抑制できるだけでなく、良好な凝固性も得られるため、シリカが均一に微分散した複合体を調製できる。また、界面活性剤の存在下で複合体を調製することで、シリカやスチレンブタジエンゴムのロスも抑制できる。
【0017】
特願2011−224962においては、凝固のためにアルカリと界面活性剤を併用していたが、界面活性剤、微粒子シリカ分散液及びE−SBRラテックスを上記順序で混合することで、アルカリを使用しなくても、凝固できることが明らかになった。アルカリを使用しないことにより、塩の生成量が低減され、最終生成物への塩の取り込みが減ることで、物性向上が期待できる。また、コストダウンも可能となる。
【0018】
上記複合体は、例えば、界面活性剤と平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合し、得られた混合物とE−SBRラテックスとを更に混合することで配合ラテックスを調製する工程1、及び、上記工程1で得られた配合ラテックスのpHを5〜7に調整し、凝固させる工程2を含む製造方法により得られる。
【0019】
(工程1)
工程1で使用する界面活性剤としては、シリカの分散性を高められるという理由から、非イオン性又は陽イオン性界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0020】
非イオン性界面活性剤としては特に限定されず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリブチレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルケニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;高級脂肪酸アルカノールアミドなど、従来公知のものを使用でき、ポリオキシエチレン基によりシリカ表面との水素結合力を増加できる点から、親水性基としてポリオキシエチレン基、疎水性基として炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤を好適に使用できる。
【0021】
このような非イオン性界面活性剤として、本発明の効果が良好に得られるという点から、下記式(I)〜(III)で表される化合物を好適に使用でき、下記式(I)で表される化合物が特に好適である。
【0022】
R
1−O−(EO)
x−H (I)
(式(I)において、R
1は炭素数3〜50のアルキル基又は炭素数3〜50のアルケニル基を表す。EOはオキシエチレン基を表す。平均付加モル数xは3〜100である。)
【0023】
上記R
1の炭素数は、好ましくは5〜30、より好ましくは8〜20である。上記xは、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30である。
【0024】
R
2−O−(AO)
y(EO)
z−H (II)
(式(II)において、R
2は炭素数3〜50のアルキル基又は炭素数3〜50のアルケニル基を表す。AOはオキシプロピレン基又はオキシブチレン基、EOはオキシエチレン基を表す。平均付加モル数yは3〜100、平均付加モル数zは3〜100である。)
【0025】
上記R
2の炭素数は、好ましくは5〜30、より好ましくは8〜20である。上記yは、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30である。上記zは、好ましくは5〜50、より好ましくは8〜30である。なお、EOとAOの配列はブロックでもランダムでもよい。
【0026】
【化1】
(式(III)において、R
3〜R
5は、同一若しくは異なって、存在しないか、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基を表す。R
6は炭素数1〜30のアルキレン基を表す。EOはオキシエチレン基を表す。平均付加モル数aは0〜50、平均付加モル数bは0〜50、平均付加モル数cは1〜50である。)
【0027】
上記R
3及びR
4の炭素数は、好ましくは1〜25であり、上記R
5の炭素数は、好ましくは1〜25である。また、上記R
6の炭素数は、好ましくは3〜8である。上記a及びbは、好ましくは0〜30、より好ましくは10〜30であり、上記cは、好ましくは1〜30、より好ましくは10〜30である。
【0028】
陽イオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型、すなわち4級アンモニウム基及び炭化水素基を有する界面活性剤が好ましい。具体的には下記式(IV)で表される化合物が挙げられる。
[R
7R
8R
9R
10N]
+X
− (IV)
(式中、R
7及びR
8は、同一若しくは異なって、炭素数1〜22のアルキル基又はアルケニル基を表し、かつ該R
7及びR
8の少なくとも一方は炭素数が4以上である。R
9及びR
10は、炭素数1〜3のアルキル基を表す。Xは1価の陰イオンを表す。)
【0029】
上記式(IV)において、R
7及びR
8は、一方がメチル基、他方が炭素数6〜18のアルキル基であることが好ましい。R
9及びR
10は、メチル基が好ましい。Xとしては、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲンイオンが挙げられる。
【0030】
上記式(IV)で表される化合物の具体例としては、例えば、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、及びこれらに対応するブロミドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。なかでも、シリカの分散性を向上できる点から、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが好ましい。
【0031】
工程1では、平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液が使用される。即ち、シリカの粉末ではなく、特定粒径のシリカが水中に分散した分散液(スラリー)が使用される。分散液に含まれる微粒子シリカとしては、特に制限はないが、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられ、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。微粒子シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記分散液において、微粒子シリカの平均粒子径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。1μmを超えると、破壊強度が劣る傾向がある。該平均粒子径は、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上である。0.005μm未満であると、微粒子シリカが強く凝集し、分散させることが難しくなるおそれがある。
【0033】
なお、本明細書において、微粒子シリカの平均粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察が用いられる。具体的には、微粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、微粒子の形状が球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状又は棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には中心部からの平均粒径を粒子径とし、微粒子100個の粒径の平均値を平均粒子径とする。
【0034】
上記分散液において、微粒子シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積(N
2SA)は、40m
2/g以上が好ましく、60m
2/g以上がより好ましく、140m
2/g以上が更に好ましい。40m
2/g未満では、破壊強度が劣る傾向がある。また、該N
2SAは300m
2/g以下が好ましく、250m
2/g以下がより好ましい。300m
2/gを超えると、微粒子シリカが強く凝集し、分散させることが難しくなるおそれがある。
なお、シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠した方法により測定することができる。
【0035】
上記微粒子シリカ分散液は、公知の方法で製造でき、特に限定されず、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどを用いて、微粒子シリカを分散させることで調製できる。ここで、上記分散液中の微粒子シリカの含有量は特に限定されないが、分散液(100質量%)中での均一分散性の点から、1〜10質量%が好ましい。
【0036】
工程1では、E−SBRラテックスが使用される。ここで、E−SBRラテックスのpHは、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.5以上である。該pHが8.5未満では、E−SBRラテックスが不安定となり、凝固しやすい傾向がある。E−SBRラテックスのpHは、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。該pHが12を超えると、E−SBRラテックスが劣化するおそれがある。
【0037】
E−SBRラテックスは、従来公知の製法で調製でき、各種市販品も使用できる。なお、E−SBRラテックスは、ゴム固形分が10〜70質量%のものを使用することが好ましい。
【0038】
工程1の混合工程では、まず、界面活性剤と平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合し、均一な分散液になるまで十分に攪拌することで、界面活性剤及び微粒子シリカ分散液の混合物を得ることができる。混合方法としては、ブレンダーミルや超音波ホモジナイザーなどの公知の攪拌装置を使用する方法などが挙げられる。
【0039】
次に、微粒子シリカ分散液及び界面活性剤の混合物とE−SBRラテックスとを混合し、均一な分散液になるまでを十分に攪拌することで、配合ラテックス(混合液)を調製できる。混合方法としては、ブレンダーミルなどの公知の攪拌装置にE−SBRラテックスを入れ、撹拌しながら、微粒子シリカ分散液及び界面活性剤の混合物を滴下する方法や、微粒子シリカ分散液及び界面活性剤の混合物を撹拌しながら、これにE−SBRラテックスを滴下する方法などが挙げられる。
【0040】
配合ラテックスのpHは、好ましくは9.0以上、より好ましくは9.5以上である。該pHが9.0未満では、配合ラテックスが不安定になる傾向がある。配合ラテックスのpHは、好ましくは12以下、より好ましくは11.5以下である。該pHが12を超えると、配合ラテックスが劣化するおそれがある。
【0041】
上記混合工程では、SBR100質量部(固形分)に対して微粒子シリカが5〜150質量部(SiO
2換算)となるように微粒子シリカ分散液を混合することが好ましい。5質量部未満であると、微粒子シリカの配合量が少なく、本発明の効果が充分に得られない傾向がある。150質量部を超えると、シリカの均一分散性が低下する傾向がある。該微粒子シリカの含有量は、より好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。
【0042】
上記混合工程において、界面活性剤の添加量は、SBR100質量部(固形分)に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であると、界面活性剤の配合量が少なく、本発明の効果が充分に得られない傾向がある。10質量部を超えると、界面活性剤が物性の劣化に影響する傾向がある。また、シリカの均一分散性が低下する傾向もある。該添加量は、より好ましくは0.5質量部以上である。また、該添加量は、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0043】
上記混合工程の温度及び時間は、均一な配合ラテックスが調製できる点から、好ましくは10〜40℃で5〜120分、より好ましくは15〜30℃で10〜90分である。
【0044】
(工程2)
工程2では、工程1で得られた配合ラテックスのpHを5〜7(好ましくは6〜7)に調整し、凝固させる。pHが5未満であると、シリカの分散が悪化する傾向がある。また、pHが7を超えると、凝固が進行せず、シリカの分散が悪化する傾向がある。
【0045】
pH5〜7に調整し、配合ラテックスを凝固させる方法としては、通常、酸が使用され、これを配合ラテックスに添加することで凝固される。凝固させるための酸としては、硫酸、塩酸、蟻酸、酢酸などが挙げられる。凝固工程の温度は、10〜40℃で行うことが好ましい。
【0046】
また、凝固の状態(凝固した凝集粒子の大きさ)を制御する目的で、凝集剤を添加しても良い。凝集剤として、カチオン性高分子などを用いることができる。
【0047】
得られた凝固物(凝集ゴム及びシリカを含む凝集物)を公知の方法でろ過、乾燥させ、更に乾燥後、2軸ロール、バンバリーなどでゴム練りを行うと、微粒子シリカがSBRマトリックスに均一に分散した複合体を得ることができる。なお、本発明のシリカ・SBR複合体は、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含んでもよい。
【0048】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記シリカ・SBR複合体を含有する。上記シリカ・SBR複合体は、マスターバッチとして使用できる。上記シリカ・SBR複合体はゴム中にシリカが均一に分散しているので、他の成分と混合したゴム組成物においてもシリカを均一に分散できる。そのため、効果的な補強性の発揮が期待できる。
【0049】
本発明のゴム組成物には、上記シリカ・SBR複合体以外に、タイヤ工業において一般的に用いられているSBR以外のゴム成分、カーボンブラックなどの充填剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などの各種材料を適宜配合できる。
【0050】
<空気入りタイヤ>
本発明のゴム組成物は空気入りタイヤに好適に使用できる。上記空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形することにより未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0051】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0052】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
E−SBRラテックス:公知の手法により合成した。
(スチレン含量:23.5質量%、ゴム固形分濃度:23質量%、pH:10.1)
湿式シリカ:(株)トクヤマ製トクシールUSG(平均粒子径:20nm、N
2SA:170m
2/g)
界面活性剤1(非イオン性界面活性剤):ハンツマン(株)製のteric 16A29(CH
3(CH
2)
15(OC
2H
4)
29−OH)
界面活性剤2(非イオン性界面活性剤):EVONIK−DEGUSSA社製のSi363(下記式で表される界面活性剤)
【化2】
界面活性剤3(陽イオン性界面活性剤):和光純薬工業(株)製のへキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(下記式で表される界面活性剤)
【化3】
界面活性剤4(非イオン性界面活性剤):花王(株)製のPD−430(R−(OC
4H
8)
p(OC
2H
4)
q−OH:R=長鎖アルキル基、p=3〜100、q=3〜100)
10%硫酸:和光純薬工業(株)製
10質量%アンモニア水:和光純薬工業(株)製
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
ステアリン酸:日油(株)製の椿
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0053】
<実施例1〜7>
(シリカ分散液の調製)
湿式シリカ4.5gに純水85.5gを添加し、シリカ5%懸濁液を作製し、これを攪拌、及び超音波処理を10分間行い、シリカ分散液を得た。
【0054】
(シリカ・天然ゴム複合体の調製)
シリカ分散液90gに表1に示す界面活性剤を添加し、出力100Wの超音波ホモジナイザーで5分間攪拌し、シリカ分散液及び界面活性剤の混合物を得た。得られた混合物をE−SBRラテックス43.5gに添加し、室温で1時間混合、攪拌し、pH9.5の配合ラテックスを得た。次いで、室温下で硫酸を加え、pH6〜7に調整し、凝固物を得た。得られた凝固物をろ過し、乾燥してシリカ・SBR複合体を得た。
【0055】
<比較例1及び2>
E−SBRラテックス43.5gに、シリカ分散液90gと、表1に示す界面活性剤とを添加し、室温で1時間混合、攪拌し、pH9.5の配合ラテックスを得た。次いで、室温下で硫酸を加え、pH6〜7に調整し、得られた複合体をろ過した。
【0056】
実施例1〜7並びに比較例1及び2について、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、表1において、界面活性剤の投入量は、E−SBRラテックス中のゴム固形分100質量部に対する量(phr)である。
【0057】
(ろ液の状態(シリカ・SBRロス)
シリカ及びSBRのロスについて、ろ過後のろ液の状態を観察し、下記基準で評価した。
透明又は半透明:ロスがほとんどない。
白濁:ロスが多い。
【0058】
(凝固の判定)
硫酸を加えた後の配合ラテックスについて、凝固したものを「○」、凝固しなかったものを「×」で示した。
【0059】
【表1】
【0060】
界面活性剤を使用しなかった比較例1は、配合ラテックスを凝固できなかった。
界面活性剤を使用しているが、界面活栓剤及びシリカ分散液を事前に混合しなかった比較例2でも、配合ラテックスを凝固できなかった。
【0061】
一方、比較例2と同じ組成であるが、界面活性剤及びシリカ分散液を事前に混合した実施例1では、配合ラテックスを凝固させることができ、シリカ・SBR複合体を得ることができた。
実施例1〜3の比較から、界面活性剤の投入量が1.5phr以上ではろ液が透明であり、シリカ及びSBRのロスが特に少ないことが確認できた。
界面活性剤の種類を変更した実施例4〜7についても、シリカ・SBR複合体が得られることが確認できた。
【0062】
<実施例8〜13及び比較例3>
表2に示す配合に従って、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、ロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫して加硫物を得た。得られた加硫物を下記により評価し、結果を表2に示した。
【0063】
(転がり抵抗)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫物)のtanδを測定し、比較例3のゴム試験片(基準試験片)のtanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)が優れる。
(転がり抵抗指数)=(基準試験片のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0064】
(摩耗試験)
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例3のゴム試験片(基準試験片)の摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合の容積損失量を指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(摩耗指数)=(基準試験片の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
【0065】
(破断強度・破断時伸び)
加硫物を用いて3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。比較例3のゴム試験片(基準試験片)のTB指数、EB指数をそれぞれ100とし、下記計算式により、各配合のTB、EBを指数表示した。TB指数が大きいほど補強性に優れ、EB指数が大きいほど耐クラック性に優れることを示す。
(TB指数)=(各配合のTB)/(基準試験片のTB)×100
(EB指数)=(各配合のEB)/(基準試験片のEB)×100
【0066】
【表2】
【0067】
表2から、界面活性剤と平均粒子径1μm以下の微粒子シリカ分散液とを混合し、得られた混合物と乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックスとを更に混合することで調製された配合ラテックスから得られるシリカ・SBR複合体を用いた実施例は、比較例に比べ、タイヤに要求される低燃費性、耐摩耗性、破断強度、破断時伸びが高い次元でバランスよく得られた。特に、実施例4、5のシリカ・SBR複合体(界面活性剤2(Si363)を用いて得られたシリカ・SBR複合体)を用いた実施例10、11は、タイヤ用ゴム組成物製造時にシランカップリング剤を別途添加する必要がなく、コスト面からも優れていた。