(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997290
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】複雑な屈折率プロファイルの光ファイバを1つの焼結工程で製造するための圧縮多層シリカスートプリフォーム
(51)【国際特許分類】
C03B 37/014 20060101AFI20160915BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20160915BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20160915BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
C03B37/014 Z
C03B37/018 C
G02B6/02 356A
G02B6/036
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-544903(P2014-544903)
(86)(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公表番号】特表2015-507592(P2015-507592A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】US2012067178
(87)【国際公開番号】WO2013130141
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】61/564,912
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ダウズ,スティーヴン ブルース
(72)【発明者】
【氏名】フィオルディマルヴァ,ドミニック
(72)【発明者】
【氏名】ハント,ティモシー レオナード
(72)【発明者】
【氏名】ジェニングス,ダグラス ハル
【審査官】
立木 林
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−255502(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/036310(WO,A1)
【文献】
特表2012−507465(JP,A)
【文献】
特表2013−512851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2マイクロメートル未満の距離で屈折率に0.002%以上のステップ型変化がある複雑な屈折率プロファイル特徴を有する光ファイバを製造するプロセスにおいて、
外付け技法を使用して基体を調製する工程、
前記基体上にシリカ粉末の層を少なくとも1層加圧成形して、その加圧成形層が前記基体のものとは異なる物理的性質を少なくとも1つ有しているモノリス型スートブランクを得る工程、
ガス状ドーパントの存在下で前記スートブランクを焼結し、それによって、前記加圧成形層が、物理的性質の差のために前記基体とは異なるガス状ドーパントの濃度を維持する工程、および
前記スートブランクを光ファイバに線引きする工程、
を有してなるプロセス。
【請求項2】
前記ガス状ドーパントが、塩素、四塩化ケイ素、四フッ化ケイ素、六フッ化硫黄、および四フッ化炭素から選択される、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記加圧成形層上に、焼結前に、材料の層が外付け法により施される、請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
2マイクロメートル未満の距離で屈折率に0.002%以上のステップ型変化がある複雑な屈折率プロファイル特徴を有する光ファイバを製造するプロセスにおいて、
外付け技法を使用して基体を調製する工程、
前記基体上にシリカ粉末の多数の同心層を加圧成形して、異なる物理的性質を有する別個に異なる同心層を有するモノリス型スートブランクを得る工程、
ガス状ドーパントの存在下で前記スートブランクを焼結し、それによって、前記同心層の各々が、該同心層の少なくとも1つの物理的性質の差のために異なるガス状ドーパントの濃度を維持する工程、および
前記スートブランクを光ファイバに線引きする工程、
を有してなるプロセス。
【請求項5】
前記加圧成形工程が、前記基体上にシリカ粉末の多数の同心層を加圧成形して、該多数の同心層において別個に異なる表面積、密度または気孔率を有するモノリス型スートブランクを得る工程を含む、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
前記ガス状ドーパントが、塩素、四塩化ケイ素、四フッ化ケイ素、六フッ化硫黄、および四フッ化炭素から選択される、請求項4記載のプロセス。
【請求項7】
前記層の各々が、異なる化学組成を有するシリカ系スートを使用して加圧成形される、請求項4記載のプロセス。
【請求項8】
2マイクロメートル未満の距離で屈折率に0.002%以上のステップ型変化がある複雑な屈折率プロファイル特徴を有する光ファイバを製造するプロセスにおいて、
外付け技法を使用して、コア含有基体を調製する工程、
シリカ粉末を前記基体上に加圧成形することによって、各層が異なる化学組成を有する、材料の複数の層を施し、それによって、多層スート含有ブランクを形成する工程、
前記スート含有ブランクを単一固結工程で焼結する工程、および
前記スート含有ブランクを光ファイバに線引きする工程、
を有してなるプロセス。
【請求項9】
前記焼結工程の前に、外付け技法によって前記ブランク上に追加のスートを堆積させる工程をさらに含む、請求項8記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全てが引用される、2011年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/564912号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、光ファイバの製造に関し、特に、光ファイバプリフォームの少なくとも一部分を形成するためにシリカ系スートの加圧成形を含む製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバを製造するために、様々なプロセスや技法が使用されてきた。これらのプロセスのほとんどは、ガラスプリフォームを製造し、その後、そのプリフォームを線引きして光ファイバを作製する工程を含む。典型的なシリカプリフォームは、コア部分と、そのコア部分に同心であり、かつコア部分よりも低い屈折率を有する少なくとも1つのクラッド部分とを備えている。屈折率差は、例えば、コアおよび/またはクラッドを適切にドープすることによって、達成できる。最も一般には、コアの屈折率を上昇させるために、コア部分のドーパントとして酸化ゲルマニウムが使用される。酸化ゲルマニウムの代わりに、またはそれとの組合せで、屈折率を上昇させることが知られている様々な他のドーパントを使用することができる。代わりに、または加えて、ホウ素含有ドーパントおよびフッ素含有ドーパントなどの屈折率を減少させることが知られているドーパントをクラッドに添加しても差し支えない。
【0004】
光導波路プリフォームは、典型的に、化学的気相成長(CVD)技法を使用して製造される。その例としては、内付け化学的気相成長法(MCVD)、気相軸付け法(VAD)および外付け法(OVD)が挙げられる。これらの化学的気相成長法の全てにおいて、プリフォームと呼ばれる中間体生成物が、基体上に非常に小さい粒子すなわちスートの形態でガラス材料(主にシリカ)を堆積させることによって調製される。このプリフォームは、最終的な光ファイバの構造に似た構造を有するが、密度、寸法および気孔率などの著しい差もある。光ファイバの最終寸法は、ファイバの最終直径が約125マイクロメートルとなる線引きプロセスによって達成される。
【0005】
内付け化学的気相成長法の場合、反応体が、制御された量の同伴ガス(例えば、アルゴンおよび/またはヘリウム)および酸化ガス(例えば、酸素)の混合物と共に反応管を流通する。この反応管は、典型的に、シリカから製造されており、管が回転されながら管の長さを行き来する外部バーナによって加熱される。シリカと他のガス成分が管の内面に堆積し、反応生成物が、反応体が加えられる端部と反対の管の端部から出る。
【0006】
外付け法は、典型的にアルミナまたは黒鉛から製造された円柱棒の外面上のガラス粒子すなわちスートの堆積を含む。この棒は、典型的に、回転され、バーナの火炎に暴露される。反応体が、メタンや水素などの燃料ガスと共に火炎中に噴射される。コア材料が最初に堆積し、その後、クラッド材料が堆積する。堆積が完了したときに、基体棒(「心棒」としても知られている)が多孔質プリフォームの中心から取り外され、プリフォームが固結炉に入れられる。固結中、プリフォームから水蒸気が除去される。高温固結工程により、プリフォームが中実で緻密かつ透明なガラスに焼結される。次いで、固結されたガラスプリフォームは線引き塔に設置され、1本の連続したガラスファイバのストランドに線引きされる。
【0007】
外付け法は、光ファイバの大規模生産に利用されてきた。その利点としては、向上した信頼性を示す純粋に合成された光ファイバの製造、正確な幾何学的および光学的整合性を示す光ファイバを製造する能力、拡張性、高生産率、およびより大きい製造上の独立性(MCVD法に使用される反応管の別個の供給に依存しないので)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、OVD法に関する欠点に、出発材料が効率的に利用されないことがある。したがって、光ファイバ空間において2マイクロメートル未満の距離で屈折率のステップ型変化がある複雑な屈折率プロファイル特徴を有する光ファイバを製造するプロセスであって、材料をより効率的に使用できるプロセスを提供することが望ましいであろう。
【0009】
複雑な屈折率プロファイル特徴を有する光ファイバを製造するために研究されてきた他の技法には、ドーパント濃度が変動するスートを単一焼結工程で堆積させる、内付け化学的気相成長法がある。MCVD法におけるドーパントは、バーナによる火炎加水分解によって送達される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示されたプロセスは、複雑な屈折率プロファイル特徴を有する光ファイバを提供する。このプロセスの工程は、従来のOVD技法よりも効率的に原材料を使用し、それによって、製造コストが減少する。詳しくは、ここに開示された様々な実施の形態では、外付け法により製造された基体に多層の粉末シリカを同心に施すために半径方向加圧成形(radial pressing)工程を利用する。結果として得られた本体は、OVD法を使用して製造されたコア上に加圧成形された多数の同心のスート層を含有するモノリス型シリカスートブランクである。
【0011】
ある実施の形態において、複雑な屈折率プロファイル特徴を有する光ファイバを製造するプロセスは、外付け法を使用した基体を調製し、その基体上にシリカ粉末の1つまたは多数の同心層を加圧成形して、モノリス型スートブランクを得る工程を含む。この多数の同心層は、異なる物理的性質を有することができる。次いで、このスートブランクを、屈折率変更ガス状ドーパントの存在下で焼結し、それによって、層の各々が、層の物理的性質の差により異なる濃度のガス状屈折率変更ドーパントを保持し、焼結されたブランクから線引きされて結果として得られた光ファイバが、複雑な屈折率プロファイル特徴を有する。
【0012】
ある実施の形態によれば、使用してよいガス状ドーパントとしては、以下に限られないが、塩素(Cl
2)、四塩化ケイ素(SiCl
4)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、六フッ化硫黄(SF
6)、および四フッ化炭素(CF
4)が挙げられる。
【0013】
ある実施の形態によれば、加圧成形層の各々は、異なる化学組成を有するシリカ系スートからなっていて差し支えない。例えば、加圧成形層の各々は、異なる固体ドーパントおよび/または異なる濃度の固体ドーパントを含んで差し支えない。これらの実施の形態のあるものによれば、固体ドーパントは、フッ素、ホウ素、ゲルマニウム、エルビウム、チタン、アルミニウム、リチウム、カリウム、臭素、セシウム、塩素、ナトリウム、ネオジム、ビスマス、アンチモン、イッテルビウム、ルビジウムおよびこれらのドーパントの組合せを含有する化合物を含んでよい。
【0014】
ここに記載されたあるプロセスは、2つの加圧成形層の間の層または加圧成形層の上の最終層の外付け堆積を含んでよい。
【0015】
ある実施の形態によれば、スートブランクに、さらに固結を行い、ケインに再度線引きし、半径方向加圧成形によって少なくとも1つの追加の層を施す。
【0016】
ある実施の形態によれば、異なる半径方向加圧成形工程中に印加される圧力は変更される。これにより、加圧成形層の密度および/または気孔率が変わり、またそれぞれの層に含ませることのできるガス状ドーパントの量が変わり、それによって、それぞれの加圧成形層におけるドーパントの濃度を制御する。他の実施の形態において、加圧成形層におけるスートの表面積を変更して、含ませられるガス状ドーパントの量を変える。
【0017】
ここに開示されたあるプロセスは、外付け技法を使用して基体を調製し、基体とは異なりかつ各隣接する層とは異なる物理的性質および/または化学的性質を有する材料の複数の層を施す各工程を含み、それらの層の少なくとも1つは半径方向加圧成形技法によって施され、少なくとも1つの他の層は外付け技法によって施される。
【0018】
追加の特徴および利点が、以下の詳細な説明に述べられており、その説明から当業者にとって明白になるか、または特許請求の範囲と添付図面と共に以下の説明から認識されるであろう。
【0019】
以下の説明は、例示であり、特許請求の範囲を理解するための概要を提供することが意図されているのが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】外付け法により製造された基体の標的、および2つの加圧成形層を有する加圧成形ブランクの断面図
【
図2】単一固結工程中に2つの異なる加圧成形層の各々に異なる塩素濃度を使用することによって形成されたy軸に沿った屈折率プロファイルを示すグラフ
【
図3】OVD法により製造されたブランクおよび軸方向加圧成形層により製造されたブランクに関する標準化半径(r/a)の関数としてのオーバークラッドの添加塩素濃度を示す電子線マイクロプローブ分析データを表すグラフ
【
図4】プリフォーム中のスート粒子表面積と完成したガラス物品における保持された塩素との間の相関関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
複雑な屈折率プロファイル特徴(RIPF)は、ファイバ空間における2マイクロメートル未満などの短距離に亘る屈折率における、2マイクロメートルの距離に亘る少なくとも0.002%の差分などの、ステップ型変化を含む屈折率プロファイルの任意の領域として定義される。
【0022】
図1は、ここに開示されたプロセスを使用して製造された光ファイバプリフォーム、またはブランクを図解している。
図1に図解された実施の形態において、コア領域10は固結ガラス(例えば、外付け法により製造され、次いで、空隙のないガラスに固結されたゲルマニウムドープトシリカ)であり、第1のクラッド層20は、外付け法によりコア領域10上に製造されたドープされていないシリカスートである。第2と第3のクラッド層30および40は、光ファイバプリフォームブランクに加圧成形された、異なる物理的性質を有する2つのスート加圧成形層である。ここに用いたように、「焼結された」および「固結された」などの用語は、相互に交換可能に使用され、熱処理などによって、ヒュームド・シリカ構造から溶融シリカ構造にシリカを転換させる作用を称する。固結の例としては、材料を加熱して、OVDにより堆積されたまたは加圧成形されたシリカ粉末内に捕捉された気体を除去して、単一構造へと互いに結合させる工程が挙げられる。
【0023】
ここに開示されたプロセスは、半径方向加圧成形プロセスを利用して、多層の粉末シリカをOVD基体に同心に施す。いくつかの実施の形態において、それらの層は結合剤を含まない。例えば、その明細書を全て引用する、国際公開第2010/036310号パンフレットに開示された加圧成形方法を、粉末シリカの半径方向加圧成形工程に利用してもよい。結果として得られた本体は、OVD法により製造されたコアを有する、加圧成形されたスートの多数の同心層を含有するモノリス型シリカスートブランクである(
図1)。加圧成形されたシリカスート領域30および40を形成するために使用されるスートの気孔率、表面積、および/またはスート密度を選択することによって、外側クラッド層30と40および必要に応じて内側クラッド層20が、気孔率、表面積、および/またはスート密度などの異なる物理的性質を有するように、多層のモノリス型スートブランクが形成されるであろう。これらの中間層の物理的性質の差異の結果として、スートの各層は、ドーピング工程と焼結工程の最中に異なる濃度のガス状ドーパントを維持する。それゆえ、ファイバは、最終的な光ファイバのガラス体により維持されたドーパントの量が、半径方向に変化し、多層のモノリス型スートブランクの異なる層の物理的性質に依存するように設計されるであろう。適用可能なドーパントの例としては、以下に限られないが、Cl
2またはSiCl
4の使用による塩素、SiF
4、SF
6、またはCF
4の使用よるフッ素、およびPOCl
3またはPCl
3の使用によるリンが挙げられる。シリカスートの加圧成形された外側クラッド層30および40(並びに必要に応じてOVD法により堆積したクラッド層20)の異なる物理的性質(例えば、気孔率、表面積、および/またはスート密度)により、層によるガス状ドーパントの様々な維持(
図2に示されるような)のために、半径方向に異なる屈折率が生じる。その結果、先に列挙された異なる物理的性質を有する異なる加圧成形シリカスート層を使用して、単一ドーピング工程でドープすることのできる複雑な屈折率プロファイルを設計することができる。
【0024】
ここに開示された実施の形態は、OVD基体に多層の粉末シリカ系スートを同心に施すために加圧成形プロセスを利用してもよく、ここで、各層は、特有の化学組成を有するスートからなる。例えば、連続的に加圧成形される層において、シリカにドープされるゲルマニアの量を増加させることを利用し、その結果、それらの領域が一旦固結されたら、加圧成形シリカの様々な領域に亘り増加する屈折率とすることができる。結果として得られた本体は、各スート層が異なる屈折率を生じる、加圧成形スートの多数の同心層を含有するモノリス型シリカ系スートブランクであろう。スート組成物は、シリカマトリクス中に他のドーパントの中でも、フッ素、ホウ素、ゲルマニウム、エルビウム、チタン、アルミニウム、リチウム、カリウム、臭素、セシウム、塩素、リン、ナトリウム、ネオジム、ビスマス、アンチモン、イッテルビウム、およびこれらのドーパントの組合せを含有し得る。
【0025】
物理的性質または組成の性質が異なる、スートの多数の連続した加圧成形層を含む設計プロファイルを達成するための1つの方法は、各々が、スートの各半径方向セグメントを連続して加える、一連の半径方向加圧成形工程を行うことである。あるいは、基体の外側の成形型のキャビティ中に取り外し可能な仕切り板をはめ込み、成形型の全軸長を延ばすことによって、単一半径方向加圧成形工程において、複数の別個の層を設けることができる。1つ以上の取り外し可能な仕切り板は、個々にまたは集合体としてのいずれかで、成形型内に位置決めすることができる。その仕切り板は、以下に限られないが、カード用紙、ホイル、テフロン(登録商標)、またはHDPEなどの、スート充填工程および仕切り板取り外し工程の最中に形状と位置を十分に維持するどのような材料からなっていても差し支えない。仕切り板は、1つの界面で境界を形成できるか、または複数の同心層を提供するための集合体として構成することができる。正確な半径方向寸法の層を有するプロファイルを形成するのに要求されるスートの量を正確に提供するために、各仕切り板の位置は、スートの充填密度を考慮しなければならない。一旦、各区画に所望のスートが充填されたら、仕切り板を取り外し、単一半径方向加圧成形工程を完了する。隣接するスート層の適切でない混合を避けるために、仕切り板の除去は、プレスの軸方向に厳密にそろうように維持するべきである。スートの充填後に成形型からの取り外しの最中に仕切り板に施される、低周波のタッピングから低出力超音波までに及ぶ弱い振動が、各仕切り板の界面で隣接するスートを混合せずに、取り出しを容易にすることができる。
【0026】
OVD層と加圧成形層のいくつの組合せにより製造されたスートブランクの場合にも、これらのプロセスを利用することができる。例えば、ブランクを加圧成形し、次いで、固結の前に、光ファイバプリフォームの外側に追加のOVD層を施すことができる。このOVD層は、例えば、加圧成形スート領域と比べて減少した表面積を有することができ、それによって、この最も外側の(OVD)スートの環状層における、固結中のガス状ドーパントの取り込みが抑えられる。別の例としては、引き延ばしまたは再線引き工程を使用することによって、従来のOVD法のハイブリッド化が挙げられる。いくつの組合せでも、OVD層と加圧成形層の組合せを有する加圧成形ブランクを調製することができ、そのブランクを固結し、コアケインまたはより小さい未完成の光ファイバプリフォームに引き延ばすまたは再線引きし、次いで、これを追加のスート堆積−シリカ粒子プレス−固結プロセス工程により再度処理して、追加の所望のRIPFを与えることができる。ここに開示された実施の形態は、再線引き工程およびその後のオーバークラッド形成工程により、OVDおよび加圧成形粒状シリカスートのほぼ無制限の組合せを含むことができる。
【0027】
いくつかのOVDプロセスには、特に光ファイバのクラッドにおいて、単一屈折率特徴を生じるために、スート堆積、固結、および引き延ばしまたは再線引き工程が必要である。ここに開示された発明により、単一の固結/焼結工程を使用して、多数の特有の複雑なRIPFを形成することができる。いくつかの実施の形態において、単一スート固結/焼結工程を使用して、4以上の、6以上の、そして11以上の特有の複雑なRIPF領域を達成することができる。
【0028】
上述したブランク製造手法には、既存のOVD法を上回る利点がある。何故ならば、単一のスート固結工程を使用して、多数の別個の屈折率領域を有する複雑なRIPFを製造できるからである。詳しくは、加圧成形スートの各層は、同心の複雑なRIPFファイバ設計の従来のOVD製造に使用される3つのプロセス工程(堆積−固結−再線引き)を置き換える。引き延ばし工程の必要性をすっかり除くために、この新たな手法を使用できる。それゆえ、このプロセスには、従来のOVD法を上回る費用の利点がある。
【0029】
OVD基体に製造した多数の単層加圧成形ブランクにおける半径方向の塩素濃度を測定することによって、本発明を試験し、確認した。
【0030】
図3は、OVD堆積クラッドを使用して製造したプリフォーム(上側のクラッド曲線)、加圧成形スート外側クラッド領域を有するプリフォーム(下側のクラッド曲線)に関する、半径に対する添加した塩素濃度の比較を示している。
図3における両曲線は、固結されたコア領域10およびクラッド領域15を用いている。下側の曲線は、内側クラッド領域20を形成するために外付け法により堆積されたシリカスート、およびクラッド領域30を形成するために加圧成形されたシリカスートからなるクラッド領域15を用いた。
図3に示されるように、クラッド領域15の全てが単一ドープ工程においてドープされ、その後、クラッド領域15が固結されたけれども、加圧成形領域は、著しく増加した量の塩素ドーパントを維持している。塩素の増加したレベルは、主に、OVD堆積されたスート領域20の表面積と比べて増加した加圧成形スート領域30の表面積のためであり、固結されたブランク並びに光ファイバの加圧成形層領域における屈折率の対応する急激な変化を生じる。我々は、ここに記載された加圧成形粒状シリカスート(粉末)方法を使用した制御されたドーピングを行うために、15m
2/g超、より好ましくは17m
2/g超、さらにより好ましくは20m
2/g超、さらに50m
2/g超の粒状シリカの表面積を使用できることを発見した。実際に、250m
2/gほど高い粒状シリカの表面積を利用できる。
【0031】
所定の塩素ガス濃度と焼結温度について、これら2つのブランクのどの領域に維持される塩素の量も、スート密度およびスート表面積によって決定される。どのブランクのOVD領域における濃度も、OVDスートブランクの密度と逆相関を有する;OVDスート密度が低いほど、結果として得られた固結済み光ファイバ中に維持される塩素濃度が高くなる。この密度−濃度の関係は、標準的なOVDブランク中にドープされた塩素濃度の傾向および加圧成形スートブランクのOVD領域に関するドープされた塩素濃度の差の原因である。
【0032】
逆に、加圧成形スートブランクの加圧成形層領域から製造された完全に焼結されたガラス物品中に維持される塩素の量は、
図4に示されるように、スートの表面積に比例する。
図3に示されるように、加圧成形スート領域のより大きい表面積により、この領域の密度がOVD領域より約50%高くても、ドープされた塩素濃度が2倍超になる。
【0033】
CVDプロセスにより製造されるガラス物品において、密度と表面積は、相互に関連付けられ、必ずしもまたは容易には切り離すことができない。詳しくは、OVD体は、中間温度で旋盤内で堆積されるスートの同心層からなり、隣接するスート粒子の部分的な固結すなわちネッキング(necking)がもたらされる。堆積火炎温度を増加させる場合(例えば、密度を増加させるために)、粒子間のネッキングまたは固結が増加し、それによって、表面積が減少する。逆に、スート加圧成形プロセスでは、密度と表面積が切り離される。ゆるいシリカが別個のシリカ粒子からなる加圧成形層は、室温で形成され、加圧成形プロセスでは表面積に変化が生じないので、加圧に様々な表面積のゆるいスートを単に導入することによって、幅広い表面積を有する加圧成形層を形成できる。ブランクのOVD領域と加圧成形領域との間の自由表面積の差は、固結プロセス中の塩素維持の差の主な要因である。
【0034】
付随の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱せずに、開示された実施の形態に様々な改変を行えることが当業者には明白であろう。
【符号の説明】
【0035】
10 コア領域
20 第1のクラッド領域
30 第2のクラッド領域
40 第3のクラッド領域