(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(10)の排気ガスを、排気管(35)と、前記排気管(35)に接続されたマフラー(36)とを介して排出するとともに、排気音低減用のレゾネータ室(R3)を備えた鞍乗り型車両の排気構造において、
前記マフラー(36)は、このマフラー(36)の外周部材を構成する外筒(133)と、前記外筒(133)内に膨張室(R1,R2)を区画する一又は複数のセパレータ(151,153)と、前記外筒(133)の下流端に設けられるボディエンド(155)と、前記外筒(133)の内周に設けられる消音材(137)とを備え、
前記外筒(133)と、前記ボディエンド(155)と、前記ボディエンド(155)に最も近い前記セパレータ(153)とにより、前記マフラー(36)の最下流部に前記レゾネータ室(R3)が設けられ、前記レゾネータ室(R3)の周囲が前記消音材(137)で囲まれており、
前記外筒(133)の内側に内筒(135)が設けられ、前記内筒(135)と前記外筒(133)との間に前記消音材(137)が充填され、前記内筒(135)には、前記レゾネータ室(R3)の下部の位置に、水抜き用の開口部(135K)が設けられ、
前記ボディエンド(155)に最も近い前記セパレータ(153)は、車体前側に湾曲する湾曲部(153B)と、前記内筒(135)に沿って車体後側に延びる沿部(153A)とを備え、
前記沿部(153A)には、前記内筒(135)の前記開口部(135K)を露出させる切り欠き部(153L)が設けられていることを特徴とする鞍乗り型車両の排気構造。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
図1は本発明の実施の形態に係る自動二輪車の右側面図である。なお、
図1では、左右一対で設けられるものは右側のものだけが図示されている。
自動二輪車1は、車体フレームFにパワーユニットとしてのエンジン10が支持され、前輪2を支持する左右一対のフロントフォーク11,11が車体フレームFの前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム12が車体フレームFの後部側に設けられた車両である。自動二輪車1は、乗員が跨るようにして着座するシート13が車体フレームFの後部の上方に設けられた鞍乗り型の車両である。
【0022】
車体フレームFは、前端に設けられるヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14の下部から後下がりに延出する左右一対のメインフレーム15,15と、メインフレーム15,15の前端部から後ろ下方に延びる左右一対のダウンフレーム16,16と、メインフレーム15,15の後端から下方に延出する左右一対のピボットフレーム17,17と、ピボットフレーム17,17の上端から後上がりに車両後端部まで延びる左右一対のシートフレーム18,18と、ピボットフレーム17,17の上部から後上がりに延びてシートフレーム18,18の後部に接続される左右一対のサブフレーム19,19とを備えている。
【0023】
各メインフレーム15は、ヘッドパイプ14の下部から比較的緩い傾斜で後ろ下がりに延びるメインフレーム本体部15aと、ヘッドパイプ14の上部とメインフレーム本体部15aの中間部とを連結する補強フレーム部15bとを備える。また、車体フレームFは、メインフレーム本体部15a,15aの中間部とダウンフレーム16,16とを連結する左右一対の連結フレーム20,20を備えている。
【0024】
ヘッドパイプ14にはステアリングシャフト(不図示)が回動自在に軸支され、ステアリングシャフトの下端部及び上端部には、車幅方向に延びるボトムブリッジ22及びトップブリッジ23が固定される。フロントフォーク11,11は、ボトムブリッジ22及びトップブリッジ23に支持され、前輪2は、フロントフォーク11,11の下端に設けられる前輪車軸24に軸支される。トップブリッジ23は、上面から上方に延びるハンドルホルダ25を備え、車幅方向に延びる操舵用のハンドル26は、ハンドルホルダ25に支持される。ハンドル26には、ナックルガード27,27やバックミラー68,68等が取り付けられる。
【0025】
スイングアーム12は、左右のピボットフレーム17,17を連結するピボット軸28に前端部を軸支され、ピボット軸28を中心に上下に揺動する。後輪3は、スイングアーム12の後端部に挿通される後輪車軸29に軸支される。
スイングアーム12と車体フレームFとの間にはリアサスペンション(不図示)が設けられる。
【0026】
エンジン10は、車幅方向に延びるクランク軸30を支持するクランクケース31と、クランクケース31の前部から前上方に延びるシリンダ部32とを備えている。エンジン10は、シリンダ部32のシリンダ軸線Cが鉛直よりも水平側に近くなるように前傾しているエンジンであり、エンジン10の上方には部品の配置スペースが確保される。エンジン10の出力は、エンジン10の出力軸(不図示)と後輪3との間に設けられる不図示のチェーンによって後輪3に伝達される。
【0027】
シリンダ部32の前面には単一の排気管35が接続される。この排気管35は前下がりに延びた後に屈曲して後方へ延び、エンジン10の下方を通り、スイングアーム12の側方に配置された単一のマフラー36(排気マフラー、サイレンサーとも称する)に接続される。エンジン10からの排気ガスは排気管35を通ってマフラー36に供給され、マフラー36内で減圧されて外部(外気)に排出される。つまり、この排気管35とマフラー36とによってエンジン10の排気装置が構成される。なお、
図1中、符号37は排気管35の途中に設けられた触媒コンバータであり、触媒コンバータ37も排気装置の一部を構成している。また、マフラー36にはマフラーカバー200が取り付けられている。
【0028】
シリンダ部32の背面には、不図示のスロットルボディを介してエアクリーナーボックス38が接続される。エアクリーナーボックス38は、メインフレーム15,15の前部の上方、且つ、ヘッドパイプ14の後方に配置されることによってシリンダ部32の上方に配置される。エアクリーナーボックス38は、エンジン10の吸気圧を利用して外気を取り込み、内部のフィルタによって空気を清浄化する。エアクリーナーボックス38で清浄化された空気は、エンジン10の吸気圧でシリンダ部32に向かって下方に流れ、スロットルボディで流量を調整されてシリンダ部32に供給される。
【0029】
また、エアクリーナーボックス38とメインフレーム本体部15aとの間には、車体の各部に電力を供給するバッテリ39が配置される。このエンジン10は水冷式のエンジンであり、エンジン10の冷却水を空冷するラジエータ40は、ヘッドパイプ14の下方、且つ、シリンダ部32の前方に配置される。
【0030】
シート13は、運転者用の前側シート41と、前側シート41よりも一段高い同乗者用の後側シート42とを備えている。前側シート41は、ピボットフレーム17,17及びシートフレーム18,18の前部の上方に配置され、後側シート42は、シートフレーム18,18の上方に配置される。後側シート42の左右の側方には、後側シート42に着座した同乗者が把持するグリップ43,43がそれぞれ設けられる。
燃料タンク45は、前側シート41及び後側シート42の下方、且つ、シートフレーム18,18間のスペースを利用して配置される。
ピボットフレーム17,17の車幅方向外側には、ステップホルダ46,46が左右一対で設けられ、左右のステップホルダ46,46の前部に運転者用のステップ47,47が固定され、左右のステップホルダ46,46の後部に同乗者用のタンデムステップ48,48が固定される。
【0031】
メインフレーム15,15の後部上方において前側シート41とヘッドパイプ14との間には、収納ボックス50が設けられる。収納ボックス50は、上面が開口したボックス本体51と、上面の開口を開閉自在に塞ぐボックスリッド52とを備える。
ボックス本体51は、フルフェイス型のヘルメットを1個収納可能な容量を備える。エアクリーナーボックス38及びバッテリ39は、ボックス本体51とヘッドパイプ14との間に配置される。
【0032】
自動二輪車1は、車体を覆う樹脂製の車体カバー53を備えている。車体カバー53は、車体前部を覆うカバーであるフロントカウル54と、車体前部の側方を覆う左右一対のサイドカバー55,55と、ボックス本体51を覆う左右一対のボックスサイドカバー56,56と、サイドカバー55,55後方における車体の側方を左右一対のミドルカバー57,57と、ミドルカバー57,57後方で車体後部を覆うリアカウル58とを備えている。
フロントカウル54は、ヘッドパイプ14の前方に配置され、ヘッドライト60、スクリーン61(ウインドスクリーンとも称する)、及び左右一対のフロントウインカ66,66が取り付けられる。サイドカバー55,55は、フロントカウル54の左右に取り付けられ、ヘッドパイプ14及びメインフレーム15,15の前部を側方から覆う。
【0033】
ボックスサイドカバー56,56は、サイドカバー55,55と前側シート41との間に配置されてボックス本体51の上部を側方から覆う。このボックスサイドカバー56,56は、運転者がニーグリップする部分でもある。ミドルカバー57,57は、車体フレームFに取り付けられ、メインフレーム15,15の上方でボックス本体51の下部及び前側シート41の下方の部分を覆う。リアカウル58は、シートフレーム18,18に取り付けられ、後側シート42の下方でシートフレーム18,18及びサブフレーム19,19を覆う。リアカウル58の後端部にはテールランプ64が設けられる。
【0034】
この自動二輪車1は、車体カバー53として、更に、エンジン10を下方から覆うアンダーカバー59と、前輪2の上方を覆うフロントフェンダ62と、後輪3の上方に設けられ、燃料タンク45を下方から覆うリアフェンダ63と、フロントカウル54の下方からくちばし状に前下がりに突出するくちばし状カウル70を備えている。リアフェンダ63には、左右一対のテールランプ64と、ライセンスプレートホルダー65と、リアウインカ67,67とが取り付けられる。くちばし状カウル70は、上下方向及び車幅方向において、前端側ほど先細るように形成されている。
【0035】
図2は自動二輪車1のマフラー36を周辺構成と共に車体右側から見た図である。
図2に示すように、マフラー36は、ピボットフレーム17後方、スイングアーム12側方のスペースを利用することによって、車体の後下部に配置されている。このマフラー36の下流端である後端位置LF(
図2参照)は、スイングアーム12の後端位置LSよりも前方に位置しており、より具体的には、後輪車軸29より後方、且つ、スイングアーム12の後端位置LSよりも前方に位置している。このため、このマフラー36は、スイングアーム12の後端位置LSよりも後方に延出する一般的なマフラーと比べて、前後長が短いマフラーに形成されている。これにより、マフラー36の重心を車体前後中心に寄せることができ、車体のマスの集中化を図り易くなっている。
【0036】
図3はマフラー36を車体左側から見たときの一部断面図である。また、
図4はマフラー36を上方から見た図であり、
図5はマフラー36を後方から見た図である。なお、
図3及び
図4にはマフラー36の中心軸線C1を示している。また、
図6は
図4のVI−VI断面図である。なお、
図3及び
図4の符号FRはマフラー36の前方向を示し、符号UPはマフラー36の上方向を示している。
図3乃至
図5に示すように、マフラー36は、中空の筒形状に形成され、排気管35に接続される上流側筒体121と、上流側筒体121に連接される下流側筒体131と、下流側筒体131の下流側開口を覆うテールキャップ141とを備えている。
マフラー36の外周面には、このマフラー36の外周面の一部を覆うマフラーカバー200を固定するための複数のカバー取付用部材142,143,144、マフラー36を自動二輪車1に支持するためのマフラーステー145、及び、自動二輪車1が具備する不図示のセンタースタンドが当接するスタンドストッパのステー146が接合されている。
【0037】
複数のカバー取付用部材142〜144は、前後及び上下に間隔を空けて設けられる3つの部材で構成され、最も前側(上流側)のカバー取付用部材142が、上流側筒体121の前端且つ車幅方向外側に設けられ、マフラーカバー200を締結するための締結部材201(
図2参照)が締結される締結用ステーに形成されている。また、残り2つのカバー取付用部材143,144は、上流側筒体121と下流側筒体131とに振り分けて配置され、マフラーカバー200が係止するフックにそれぞれ形成されている。
マフラーステー145は、
図3に示すように、マフラー36の前後略中央位置にて上方に延びるように上流側筒体121に設けられ、車体右側のステップホルダ46に締結部材202(
図2参照)によって締結固定される。スタンドストッパのステー146は、
図3に示すように、上流側筒体121の前端、且つ車幅方向内側に設けられている。
【0038】
マフラー36の上流側筒体121は、排気管35に接続される排気管接続部品122と、排気管接続部品122から後方に延出する入口パイプ124と、上流側筒体121の外周部材を構成する略円錐台の筒部126とで形成されている。この筒部126は、
図6に示すように、金属製の板部材(本構成ではステンレス板)を略円錐台の外周面を形成するように巻いて形成され、前端部126Aが入口パイプ124の外周に沿う筒状に形成され、この筒状の前端部126Aに入口パイプ124が挿入されるとともに、溶接(
図6中、符号GAで溶接箇所を示す)によって入口パイプ124及び排気管接続部品122が接合される。
入口パイプ124の下流端である後端は上記筒部126内で開口し、排気管35からの排気ガスを筒部126内に排出させる。この筒部126の前端下部には、内部の水を抜くための水抜き孔となる孔部126B(
図3、
図4参照)が形成されている。
【0039】
下流側筒体131は、車幅方向に沿う左右方向に比して上下方向に長い断面形状(本実施形態では略五角形形状(
図6参照))を有し、マフラー36の中心軸線C1に沿って延びる筒体に形成されている。この下流側筒体131の内部には、前後に間隔を空けて複数(本構成では2枚)のセパレータ151,153が設けられるとともに、下流側筒体131の後端開口がボディエンド155によって閉塞される。
この下流側筒体131は、下流側筒体131の外周部材を構成する外筒133内に、下流側筒体131の内周部材を構成する内筒135を配置した二重管構造に形成されている。外筒133と内筒135との間の空間R0には、消音材であるグラスウール137が充填される。
外筒133及び内筒135は、十分な剛性及び耐熱性を有する金属製の板部材によって形成され、本実施形態ではステンレス製の板部材で形成されている。
【0040】
外筒133は、所定の断面形状(本実施形態では略五角形形状)で下流側筒体131の中心軸線C1に沿って延出する筒体であり、その前端(上流側端部)が、上流側筒体121の後端に溶接により接合され、その後端(下流側端部)にテールキャップ141が装着される。
内筒135は、外筒133と相似形の断面形状で、外筒133と中心軸線C1に沿って延出する筒体に形成され、前端部がスペーサ136を介して外筒133の内周面に嵌合することで、外筒133の内周面に位置決めされ、スペーサ136によりグラスウール137の前方への移動が規制される。
【0041】
図7はマフラー36の最下流部であるマフラー後部の断面図である。また、
図8は
図7の下方からマフラー後部を見た図である。なお、
図7及び
図8の符号FRはマフラー36の前方向を示し、符号UPはマフラー36の上方向を示し、符号LHはマフラー36の左方向を示している。
ボディエンド155は、外筒133の後端開口を覆う板材であり、外周縁が外筒133の内周面に沿って下流側である後方(車体後側)に延びる沿部155Aに形成され、この沿部155Aの前端(上流端)から内周側に延びた後に上流側である前方(車体前側)に突出するように湾曲する湾曲部155Bが形成される。
同
図7に示すように、ボディエンド155の沿部155Aは外筒133に嵌合する嵌合部となり、嵌合することにより外筒133の後端がボディエンド155で覆われる。
【0042】
ボディエンド155の湾曲部155Bは、
図7に示すように、沿部155Aを外筒133に嵌合した際に内筒135の内周面に嵌合する嵌合部となる。ボディエンド155が外筒133及び内筒135に嵌合することにより、ボディエンド155、外筒133、及び内筒135を容易に位置決めすることができる。また、外筒133と内筒135との間の空間R0をボディエンド155で確実に閉塞することができる。
これにより、外筒133と内筒135との間の空間R0がボディエンド155まで延出することになり、マフラー36の最下流部であるボディエンド155までグラスウール137を充填することが可能になる。また、ボディエンド155は、外筒133、及び内筒135に嵌合する部位が屈曲した屈曲形状であるため、平板形状の場合よりも断面係数が高く、ボディエンド155の強度を効率良く高めることができる。
【0043】
なお、ボディエンド155の外周縁を構成する沿部155Aは、溶接(
図7中、符号GCで溶接箇所を示す)によって外筒133に接合される。また、ボディエンド155の湾曲部155Bと内筒135についても、溶接(
図7中、符号GDで溶接箇所を示す)によって接合される。
また、テールキャップ141はプラグ溶接によって外筒133に接合される。より具体的には、テールキャップ141の前部には、前後に間隔を空けて貫通孔141A、141B(
図7参照)が設けられており、前側の貫通孔141Aが、外筒133と重なる領域にてマフラー36の周方向に間隔を空けて設けられ、
図8に示すように、マフラー36の周方向に沿って延びる長孔(プラグ)に形成される。これら複数の長孔(貫通孔141A)を用いてテールキャップ141が外筒133にプラグ溶接される。
また、後側の貫通孔141B(
図7参照)は、外筒133よりも後方にてテールキャップ141の前下部に設けられ、テールキャップ141内の水を抜くための水抜き孔として機能する。
【0044】
図3及び
図7に示すように、グラスウール137は、外筒133と内筒135との間の空間R0全体に渡って充填されている。これにより、下流側筒体131の全長に渡ってグラスウール137を充填することができ、マフラー36の消音性能を確保し易く、且つ、グラスウール137の断熱性能により外筒133の温度上昇を抑えることができる。
また、上記ボディエンド155は、湾曲部155Bよりも内周部位が下流側である後方に膨出した膨出部155Cに形成されており、この膨出部155Cに設けられた貫通孔155Dをテールパイプ157が貫通する。この貫通孔155Dの端部とテールパイプ157とを溶接(
図7中、符号GEで溶接箇所を示す)することによってボディエンド155とテールパイプ157とが接合される。
【0045】
テールパイプ157は、マフラー36の中心軸線C1に対して連通パイプ159(
図3、
図7参照)と反対側である上方向にオフセット配置されるとともに、中心軸線C1に対して後ろ下がりに傾けて配置されている。このテールパイプ157は、
図3に示すように、上流側である前方に延びて複数のセパレータ151、153のうちも最も下流側のセパレータである第2セパレータ153を貫通し、セパレータ151、153間の空間(後述する第2膨張室R2)に開口する。また、テールパイプ157は、下流側である後方に延びてテールキャップ141に設けた開口部141Kから外部に露出する。
【0046】
テールパイプ157は、
図7に示すように、第2セパレータ153には溶接されておらず、つまり、このテールパイプ157が貫通するボディエンド155、及び第2セパレータ153のうちの一方の部材であるボディエンド155だけに溶接(
図7中、符号GEで示す溶接箇所)され、他方の部材である第2セパレータ153には挿通されて支持されるだけである。
このテールパイプ支持構造により、テールパイプ157の熱収縮が、ボディエンド155と第2セパレータ153とに影響を及ぼさないようにすることができ、ボディエンド155と第2セパレータ153との間の離間距離を適正に維持することができる。
【0047】
図3に示すように、セパレータ151、153は、下流側筒体131の前後略中間部に設けられる第1セパレータ151と、下流側筒体131の後部に設けられる第2セパレータ153とからなり、これら前後一対のセパレータ151、153によってマフラー36内が第1膨張室R1と第2膨張室R2とに仕切られている。
第1セパレータ151には、第1膨張室R1と第2膨張室R2を連通する連通パイプ159が貫通しており、この連通パイプ159は、前端が第1膨張室R1内にて開口するとともに、第2セパレータ153に向けて後方に延びてその後端が、第2セパレータ153に設けられた嵌合部153K(
図7参照)に嵌合する。
【0048】
同
図3に示すように、第1セパレータ151は、上流側である前方に向けて緩やかに湾曲する湾曲形状に形成され、外周縁が内筒135の内周面に沿って後方(車体後側)に延びる沿部151Aに形成され、この沿部151Aが内筒135に嵌合することによって内筒135に位置決めされる。
第2セパレータ153は、
図7に示すように、外周縁が内筒135の内周面に沿って後方(車体後側)に延びる沿部153Aと、沿部153Aの前端(上流端)から前方(車体前側)に突出するように湾曲する湾曲部153Bとが形成され、沿部153Aが内筒135に嵌合することにより内筒135に位置決めされる。また、沿部153Aの前端に湾曲部153Bが連なるので、第2セパレータ153を平板形状にする場合と比べて、内筒135に嵌合する箇所の強度を効率良く高めることができる。
【0049】
この第2セパレータ153の沿部153Aの下部には、前側に凹む切り欠き部153L(
図7及び
図8参照)が設けられている。この切り欠き部153Lは、内筒135の後下部に設けられた貫通孔135Kを避けるように切り欠いた形状に形成され、上記貫通孔135Kを、第2セパレータ153とボディエンド155との間の空間R3(
図3及び
図7参照)に開口させる。
これによって、第2セパレータ153とボディエンド155との間の空間R3内に生じた水分、例えば、結露水を、第2セパレータ153の沿部153Aで遮ることなく、貫通孔135Kを通じて外筒133と内筒135との間の空間R0に排出させることができる。
【0050】
第2セパレータ153の湾曲部153Bの内周側には、テールパイプ157が貫通する貫通孔153P、及び、連通パイプ159が嵌合するように前方側に突出する嵌合部153Kが設けられている。
連通パイプ159の後端開口は、第2セパレータ153の嵌合部153Kによって塞がれる。この連通パイプ159の側面後部には、連通パイプ159を径方向に貫通する複数の貫通孔159Kが形成されている。これら貫通孔159Kは、第1セパレータ151と第2セパレータ153との間の空間である第2膨張室R2内に設けられているので、第1膨張室R1から連通パイプ159に入った排気ガスを、連通パイプ159の上記貫通孔159Kを介して第2膨張室R2に流入させることができる。
【0051】
上記マフラー構造により、エンジン10から排出された排気ガスは、排気管35から入口パイプ124を通ってマフラー36内の第1膨張室R1に入り、連通パイプ159を通って第2膨張室R2に入った後、流れる方向を反転してテールパイプ157に入り、テールパイプ157を通ってマフラー36外に排出される。この複数回の膨張、及び流れの反転によって排気圧を下げ、排気音を低減することができる。
【0052】
図9はマフラー36の断面図であり、
図9(A)は
図3のA−A断面図、
図9(B)は
図3のB−B断面図、
図9(C)は
図3のC−C断面図、
図9(D)は
図3のD−D断面図である。
図9(A)に示すように、下流側筒体131の前部においては、外筒133と内筒135との間にはスペーサ136が配置される。
図9(B)に示すように、連通パイプ159は、円筒形状を有し、下流側筒体131の下部にオフセットして配置される。また、
図9(C)及び
図9(D)に示すように、テールパイプ157は、下流側筒体131の上部にオフセットして配置され、これにより、テールパイプ157と連通パイプ159とを上下に振り分けて配置している。従って、左右長が上下長に比して狭いマフラー36内のスペースを有効利用してテールパイプ157と連通パイプ159とをレイアウトすることができる。
【0053】
また、本構成では、
図7に示すように、テールパイプ157がマフラー36の中心軸線C1に対して傾斜して配置されるので、テールパイプ157の傾斜角度の調整によりテールパイプ157の排出口の位置や向きを容易に調整可能である。テールパイプ157の径は、連通パイプ159よりも小径であり、テールパイプ157の長さは、連通パイプ159よりも短い。つまり、テールパイプ157は連通パイプ159よりも軽量の部品となっている。
本構成では、相対的に軽量なテールパイプ157を、相対的に重い連通パイプ159の上方に配置しているので、マフラー36の重心位置を下げるとともに、幅狭のマフラー36への配置が容易である。このようにしてレイアウトスペースが限られるマフラー36内にテールパイプ157及び連通パイプ159が効率良く配置される。
【0054】
さらに、本構成では、マフラー36のボディエンド155と第2セパレータ153との間の空間R3をレゾネータ室(以下、「レゾネータ室R3」と表記する)とし、第2セパレータ153に、レゾネータ室R3と第2膨張室R2とを連通させる連通口153X(
図7(C)参照)を設けることによって、マフラー36の最下流部に排気音低減用のレゾネータ161を構成している。なお、連通口153Xは、上下に間隔を空けて配置されるテールパイプ157と連通パイプ159との間で車幅方向外側の位置に設けられている。
【0055】
レゾネータ161は、ヘルムホルツの共鳴の原理を利用して排気音を小さくする共鳴器であり、レゾネータ室R3の共鳴周波数を調整することによって排気音を効率良く低減させることができる。この共鳴周波数の調整は、レゾネータ室R3の容量を調整することによって行うことができる。また、共鳴周波数を適宜に調整することによって、排気音の音量低減に限らず、音質調整を行うこともできる。
【0056】
ここで、第2セパレータ153は、
図7に示すように、前方に突出するように湾曲する湾曲部153Bを備えているので、この湾曲部153Bの湾曲形状を調整することによって、ボディエンド155や第2セパレータ153の位置を変えなくても、レゾネータ室R3の容量を容易に調整することができる。
例えば、第2セパレータ153の湾曲部153Bの曲率、前後方向への突出量を適宜に調整することによってレゾネータ室R3の容量調整が可能である。
なお、レゾネータ室R3の容量を調整する方法は、第2セパレータ153の湾曲部153Bの形状を調整する方法に限らず、例えば、ボディエンド155の湾曲部155B等の形状を調整しても良いし、ボディエンド155や第2セパレータ153の間隔を調整しても良い。
【0057】
また、ボディエンド155と第2セパレータ153との間のスペースを利用してレゾネータ室R3を設けているので、マフラー36の大型化を抑えることができる。従って、レゾネータ161を備えたマフラー36を大径化せずに前後長を抑えるのに有利な構成であり、車体のマスの集中化、デザイン性、出力特性、音、燃費等の観点から前後長が短いマフラーが求められる場合に好適である。
しかも、レゾネータ室R3は、マフラー36内の他の室である第1膨張室R1及び第2膨張室R2よりも低い温度となるため、排気熱の影響によるマフラー最下流部の焼けムラを抑えることができる。
【0058】
更に、ボディエンド155近傍までグラスウール137が配置されているので、このグラスウール137によってレゾネータ室R3を囲うことができる。このため、レゾネータ161周囲において、排気熱の影響による焼けムラをより低減することができる。また、グラスウール137は消音材としての機能も有するため、レゾネータ室R3周囲からの排気音等の音漏れを低減することができる。これらにより、外筒133と内筒135との間のグラスウール137を効率良く利用してレゾネータ161周囲の排気熱対策や排気音対策が可能である。
【0059】
また、外筒133の後端部がボディエンド155と第2セパレータ153との二枚壁構造となるので、一枚壁構造の場合と比べて、共鳴等による音鳴りを抑えることもでき、その周囲に配置されたグラスウール137との相乗作用により効果的に音対策ができる。
特に、この自動二輪車1は、レゾネータ室R3が一室の構成であるため、レゾネータ室が二室の場合と比べて、レゾネータ室R3に排気熱や排気音等が伝わり易い構成となるが、本マフラー構造によれば、簡易な構成でレゾネータ161の排気熱対策や音対策が可能である。
【0060】
図10はマフラーカバー200の図であり、
図10(A)はマフラーカバー200を車体右側から見た図、
図10(B)はマフラーカバー200を上方から見た図である。なお、
図10の符号FRはマフラーカバー200の前方向を示し、符号UPはマフラーカバー200の上方向を示し、符号LHはマフラーカバー200の左方向を示している。
マフラーカバー200は、マフラー36の上方から右側方に渡って覆う合成樹脂製の板状部材であり、マフラーカバー200の前部には、マフラー36に取り付けられたカバー取付用部材142(
図4参照)に締結される締結部材201(
図2参照)を通す締結用孔部203が形成され、マフラーカバー200の後部内側には、マフラー36に設けられたカバー取付用部材143,144(
図3参照)が係止する被係止部204、205が設けられ、これらによってマフラーカバー200がマフラー36に固定される。
【0061】
このマフラーカバー200は、車体側面視で、前方から後方に行くほど上下に拡がる側面視で三角形状に形成されている。より具体的には、マフラーカバー200は、前端から後ろ上がりに延びる上縁200Uと、前端から後ろ下がりに延びる下縁200Lと、下縁200Lの後端と上縁200Uの後端とをつなぐ後縁200Rとを備えた側面視で三角形状とされ、上縁200Uが下縁200Lよりも後方に長く延びることによって後縁200Rが前下がりに形成されている。
これにより、マフラーカバー200は後下部が、前下がりの後縁200Rに沿ってカットされた形状となり、
図2に示すように、側面視でテールパイプ157、連通パイプ159、前後一対のセパレータ151,153、ボディエンド155及びテールキャップ141と重なる領域は覆わないカバーに形成されている。
【0062】
以上のマフラーカバー構造により、マフラーカバー200が車体前後中心寄りのコンパクトなデザインとなり、且つ、マフラーカバー200の重心を前寄りにして車体のマスの集中化に有利になる。また、マフラー36とマフラーカバー200との間の熱を車体前方からの走行風によりスムーズに後方に排出することができ、熱がこもりにくくなる。
また、
図10に示すように、マフラーカバー200は、前後及び上下の略中間部にて開口するカバー開口部200Kが設けられており、このカバー開口部200Kによっても、マフラー36とマフラーカバー200との間の熱を効率良く排出することができる。
【0063】
図2に示すように、上記カバー開口部200Kは、側面視で、入口パイプ124の下流側部分と重なる領域に設けられている。このため、マフラー36の中でも温度が上昇し易い入口パイプ124付近の熱を効率良く排出することが可能になる。一方、マフラーカバー200の上部は、運転者用のステップ47近傍から同乗者用のタンデムステップ48近傍まで長く延びる形状に形成されているので、マフラー36の熱が各ステップ47,48側へ伝わる事態を効果的に回避することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態によれば、
図7に示したように、マフラー36の外周部材を構成する外筒133と、外筒133の下流端に設けられるボディエンド155と、ボディエンド155に最も近い第2セパレータ153とにより、マフラー36の最下流部にレゾネータ室R3が設けられ、このレゾネータ室R3の周囲が消音材であるグラスウール137で囲まれるので、マフラー36内の第1及び第2膨張室R1,R2よりも比較的低い温度となるレゾネータ室R3、及びレゾネータ室R3周囲のグラスウール137を利用して、通常焼けムラが発生しやすいマフラー最下流部の焼けムラを抑え、排気音を抑制することができる。
また、外筒133の下流部である後端部がボディエンド155と第2セパレータ153との二枚壁構造となるので、マフラー最下流部の音鳴りを抑えることができる。従って、レゾネータ室R3を一室しか設けない構成でも排気熱や排気音への対策を行うことができる。
【0065】
また、グラスウール137は、外筒133と内筒135との間に充填され、内筒135には、レゾネータ室R3の下部の位置に水抜き用の開口部である貫通孔135Kが設けられるので、レゾネータ室R3に溜まった水分を、外筒133と内筒135の間のグラスウール137の空間R0に排出することができる。これにより、レゾネータ室R3の直下にて水滴がマフラー36下面を流れる事態を回避することができる。
【0066】
さらに、ボディエンド155に最も近いセパレータである第2セパレータ153が、車体前側に湾曲する湾曲部153Bと、内筒135に沿って車体後側に延びる沿部153Aとを備え、沿部153Aには、内筒135に設けられた貫通孔135Kを露出させる切り欠き部153Lが設けられるので、切り欠き部153Lによりレゾネータ室R3に溜まった水分を、第2セパレータ153の沿部153Aで遮ることなく内筒135の貫通孔135Kに入れ、グラスウール137の空間R0に排出することができる。また、第2セパレータ153の湾曲部153Bによりレゾネータ室R3の容量を容易に調整することができる。
【0067】
また、ボディエンド155は、車体前側に湾曲する湾曲部155Bを備え、この湾曲部155Bは、内筒135に嵌合して外筒133と内筒135との間のグラスウール137を覆うので、ボディエンド155を、グラスウール137を覆う蓋部材として利用するとともに、ボディエンド155近傍までグラスウール137を充填することができる。従って、レゾネータ室R3の周囲を広くグラスウール137で覆うことができる。
また、テールパイプ157は、ボディエンド155に溶接されるとともに、第2セパレータ153に挿通されて支持されるので、ボディエンド155及び第2セパレータ153の一方だけでテールパイプ157を支持する場合と比べて、テールパイプ157を安定して支持でき、また、テールパイプ157取付時の作業性が向上する。また、テールパイプ157が熱膨張や熱収縮してもボディエンド155と第2セパレータ153とに影響を及ぼさないようにすることができる。
【0068】
また、マフラー36は、内部に配置されるとともに排気管35からの排気ガスを第2セパレータ153で区画される第2膨張室R2に放出する連通パイプ159を備え、テールパイプ157は、連通パイプ159の上方に傾斜して配置されるので、マフラー36内の上下スペースを利用して連通パイプ159及びテールパイプ157を効率良く配置することが可能になる。
また、マフラー36の下流端は、
図2に示したように、スイングアーム12後端よりも前方に位置しており、マフラー36には側面視でテールパイプ157及び連通パイプ159と重ならない位置にマフラーカバー200が設けられるので、デザイン性を確保しつつマフラー36の熱がこもりにくいマフラーカバー形状を実現することができる。
【0069】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、マフラー36内に二枚のセパレータ151,153が設けられる場合を説明したが、セパレータの数は一枚でも3枚以上でも良い。つまり、本発明は、一又は複数のセパレータを有するマフラーに適用可能である。また、消音材にグラスウール137を用いる場合を説明したが、グラスウール以外の消音材を用いても良い。
また、上記実施形態では、
図1に示す自動二輪車1の排気構造に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、公知の鞍乗り型車両の排気構造に本発明を適用しても良い。なお、鞍乗り型車両は、車体に跨って乗車する車両全般を含み、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)等の三輪車両や四輪車両を含む車両である。