特許第5997310号(P5997310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5997310
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】装飾具及び装飾具による模様の変化方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/08 20060101AFI20160915BHJP
   B44F 7/00 20060101ALI20160915BHJP
   G09F 19/02 20060101ALI20160915BHJP
   G09F 19/12 20060101ALI20160915BHJP
   G09F 13/04 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
   B44C5/08 B
   B44F7/00
   G09F19/02 Z
   G09F19/12 H
   !G09F13/04 N
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-71092(P2015-71092)
(22)【出願日】2015年3月31日
【審査請求日】2015年3月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】前橋 義幸
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅治
(72)【発明者】
【氏名】川松 淳子
(72)【発明者】
【氏名】祓川 祥子
【審査官】 本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−028443(JP,A)
【文献】 特開2015−226983(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3064178(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 5/08
B44F 7/00
G09F 19/02
G09F 19/12
G09F 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた状態で相対的に変位する複数枚のシートを備えた装飾具において、
前記複数枚の各シートは、多数の孔部が形成された不透明又は半透明のシート本体を備え、該多数の孔部が規則性を持った位置に散点し、
前記複数枚のシートのいずれかは、磁性体によって形成され、他のいずれかは、マグネットによって形成されていることを特徴とする装飾具。
【請求項2】
前記一方のシートが他方のシートに対して相対的に回転可能とされていることを特徴とする請求項に記載の装飾具。
【請求項3】
前記各シートの孔部は、各シートそれぞれの全面において同じ規則性を持った位置に散点していることを特徴とする請求項1又は2に記載の装飾具。
【請求項4】
前記孔部の繰り返しのピッチ、孔部の形状及び孔部の口径が各シートそれぞれの全面で単一とされていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか一項に記載の装飾具。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の装飾具による模様の変化方法であって、
前記いずれかのシートを他のシートに対して相対的に回転運動させ、及び/又は前記いずれかのシートを他のシートに対して相対的に直進運動させることを特徴とする装飾具による模様の変化方法。
【請求項6】
前記いずれかのシートの回転運動及び/又は直進運動の速度を可変としていることを特徴とする請求項に記載の装飾具による模様の変化方法。
【請求項7】
前記いずれかのシートは、任意の位置で一時的に停止することを特徴とする請求項5又は6に記載の装飾具による模様の変化方法。
【請求項8】
前記いずれかのシートは、回転運動及び直進運動がそれぞれ、独立して運動できるとともに、独立して停止することができ、更に連動した運動が自在とされていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載の装飾具による模様の変化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のシートを重ね合わせ、シートを相対的に移動させることで模様が出現するようにした装飾具及び装飾具による模様の変化(へんげ)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図形が描かれた複数枚のシートを重ね合わせることで模様を出現させ、この模様が変化するようにした装置が種々提供されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された装置は、曲線及び直線の組合せによる周期的図形を描画した2枚のモアレシートと、一方のモアレシートを固定し、他方のモアレシートを移動させる駆動機構とを備えている。
【0003】
駆動機構は、カムやクランクなどによって構成される。両モアレシートが重ね合わされ、駆動機構によって他方のモアレシートが円運動又は揺動することで、モアレ模様が出現する。また、モアレシートは、全体として透明又は半透明としてもよく、周期的図形を着色することで、意匠的効果を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3064178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モアレ模様が出現するようにした従来の装置は、モアレシートに曲線及び直線を組み合わせた周期的図形が描かれているだけである。したがって、このモアレシートによって出現するモアレ模様は、予想できる幾何学模様であり、また、万華鏡のように千変万化するものでもないため、例えば通行人や買物客たちの人目を惹き付け、興趣をかきたてるものとなっていない。
【0006】
そこで、本発明は、人の目を惹き付け、興趣をかきたてる模様が出現するようにした装飾具及びその装飾具による模様の変化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る装飾具は、重ね合わされた状態で相対的に変位する複数枚のシートを備えた装飾具において、前記複数枚の各シートは、多数の孔部が形成された不透明又は半透明のシート本体を備え、該多数の孔部が規則性を持った位置に散点し、前記複数枚のシートのいずれかは、磁性体によって形成され、他のいずれかは、マグネットによって形成されていることを特徴としている。
【0010】
この装飾具によれば、不透明又は半透明のシート本体に形成された多数の孔部が規則性を持った位置に散点していることにより、複数枚のシートが重ね合わされたたときに、各シート本体の孔部が重なり合って連通することで模様が出現する。そして、重ね合わされた複数枚のシートが相対的に面内で変位することにより、連通する孔部が変化し、出現する模様が千変万化のごとく変容する。そして、複数枚のシートのいずれかが磁性体によって形成され、他のいずれかがマグネットによって形成されていることにより、複数枚のシートが磁気吸着され、重なり合った所定の相対位置の状態を維持することができる。
【0011】
前記本発明に係る装飾具の態様として、前記一方のシートが他方のシートに対して相対的に回転可能とされていることが好ましい。この装飾具によれば、いずれかのシートを他のいずれかのシートに対して相対的に回転運動させることにより、重なり合った複数枚のシートの各孔部の重なった状態が変化し、連通する孔部によって出現する幾何学模様を万華鏡のように千変万化させることができる。
【0012】
また、前記本発明に係る装飾具の他態様として、前記各シートの孔部は、各シートそれぞれの全面において同じ規則性を持った位置に散点していてもよい。この装飾具によれば、各シートの孔部が各シートそれぞれの全面において同じ規則性を持った位置に散点していることにより、規則性のある同じ大きさの同じ模様をシート全面に出現させることができる。
【0013】
また、前記本発明に係る装飾具の異なる他態様として、前記孔部の繰り返しのピッチ、孔部の形状及び孔部の口径が各シートそれぞれの全面で単一とされていてもよい。この装飾具によれば、シートが変位したときに孔部によって出現する模様を統一して繰り返すことができる。
【0014】
また、本発明に係る装飾具による模様の変化方法は、前記いずれかのシートを他のシートに対して相対的に回転運動させ、及び/又は前記いずれかのシートを他のシートに対して相対的に直進運動させることを特徴としている。
【0015】
この装飾具による模様の変化方法によれば、いずれかのシートを他のいずれかのシートに対して相対的に回転運動させることにより、又は、相対的に直進運動させることにより、重なり合った複数枚のシートの各孔部の重なった状態が変化し、連通する孔部によって出現する幾何学模様を万華鏡のように千変万化させることができる。また、いずれかのシートは、回転した後、停止した状態で直進するようにすれば、いずれかのシートが回転することで出現した模様が、少なくとも肉眼で変化することなく、そのシートの直進方向と直交する方向に移動する。
【0016】
また、前記本発明に係る装飾具による模様の変化方法の一態様として、前記いずれかのシートの回転運動及び/又は直進運動の速度を可変としていてもよい。この装飾具による模様の変化方法によれば、シートの回転運動及び/又は直進運動の速度が可変とされていることにより、連続的に変化する模様を予測できないように出現させることができる。
【0017】
また、前記本発明に係る装飾具による模様の変化方法の他態様として、前記いずれかのシートは、任意の位置で一時的に停止するようにしてもよい。この装飾具による模様の変化方法によれば、連続的に変容していた模様が停止するので、次の移動や変容を想像又は期待意識が芽生えるようにすることができる。
【0018】
また、前記本発明に係る装飾具による模様の変化方法の異なる他態様として、前記いずれかのシートは、回転運動及び直進運動がそれぞれ、独立して運動できるとともに、独立して停止することができ、更に連動した運動が自在とされていてもよい。この装飾具による模様の変化方法によれば、いずれかのシートが独立して運動し、停止し、更に連動した運動が自在とされることにより、連続的に変化しながら出現する模様を更に予測できないようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、人の目を惹き付け、興趣をかきたてる模様を出現させる装飾具及びその装飾具の模様の変化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る装飾具の一実施形態を示す正面図である。
図2図2は、本発明に係る装飾具の一実施形態を示す拡大正面図である。
図3図3の(a)〜(e)は、本発明に係る装飾具を構成している基本ユニットであって、それぞれ異なる実施形態を示す拡大正面図である。
図4図4の(a)〜(h)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図5図5の(a)〜(l)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図6図6の(a)〜(k)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図7図7の(a)〜(m)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図8図8の(a)〜(s)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図9図9の(a)〜(g)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図10図10の(a)〜(j)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図11図11の(a)〜(k)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図12図12の(a)〜(m)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図13図13の(a)〜(s)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
図14図14の(a)〜(g)は、本発明に係る装飾具によって出現した異なる模様を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る装飾具及び装飾具による模様の変化方法の実施形態について図1ないし図14を参照しながら説明する。この装飾具は、図1図2に示すように、重ね合わされた状態で相対的に変位する複数枚のシート(この実施形態では、第1シート10と第2シート20との2枚とする。)を備えている。
【0022】
そして、第1シート10と第2シート20は、ともに不透明又は半透明の四角形状のシート本体11,21に図3に示すような同じ規則性を持った位置に散点した孔部12,22を形成したものとされている。図3に示した孔部12,22は、ともに長方形(長方形は、隣り合った辺の長さが異なる狭義の長方形だけでなく、四辺の長さが等しい正方形の両方を含む。)の角部の4点と、長方形の中心の1点の合計5点を基本ユニットA〜Eとしている。
【0023】
中心の1点は、長方形の対角線の交点であり、換言すれば、長方形の向き合った各縦の辺の中心同士と各横の辺の中心同士を結んだ2本の直線の交点のことである。そして、各基本ユニットA〜Eのいずれか1つが第1シート10の全面又は一部に繰り返し並んでいて、更に各基本ユニットA〜Eのいずれか一つが第2シート20の全面又は一部に繰り返し並ぶように散在している。勿論、基本ユニットA〜Eが図3の5種類に限定されることは無い。
【0024】
具体例として、図3(a)に示す基本ユニットAは、長方形の長辺が4.34mm、短辺が2.5mmであり、図3(b)に示す基本ユニットBは、長方形の長辺が3.27mm、短辺が2.1mmであり、図3(c)に示す基本ユニットCは、長方形の長辺が3.9mm、短辺が2.1mmであり、図3(d)に示す基本ユニットDは、長方形の長辺が2.5mm、短辺が2.17mmであり、図3(e)に示す基本ユニットEは、各辺が2.5mmの正方形である。
【0025】
そして、本発明のシート10,20の全面又は一部には、複数の基本ユニットA〜Eの少なくとも1つが、所定の繰り返しの規則性でもって2次元に形成されている。なお、1枚のシート10,20の中に形成されている基本ユニットA〜Eは、一つであっても良い。
【0026】
そして、いずれの基本ユニットA〜Eにおいても、孔部12,22は円形であり、その口径Φは、見やすい模様が出現するように、例えば1.0mm、1.2mm、1.4mm、2.0mm、2.1mmに形成される。また、孔部12の全ての面積をシート本体11の面積(孔部12の面積を含む。)で除した値を開口率kとすると、基本ユニットAにおいて、孔部12の口径Φが2.2mmであれば、開口率kは0.700となり、孔部12の口径Φが1.0mmであれば、開口率kは0.145となる。孔部22とシート本体21についても同様である。
【0027】
同様に、基本ユニットBにおいて、孔部12の口径Φが1.5mmであれば、開口率kは0.514となる。基本ユニットCにおいて、孔部12の口径Φが1.7mmであれば、開口率kは0.554となる。基本ユニットDにおいて、孔部12の口径Φが1.4mmであれば、開口率kは0.567となる。基本ユニットEにおいて、孔部12の口径Φが1.4mmであれば、開口率kは0.492となる。いずれのユニットB,C,D,Eの孔部22とシート本体21についても同様である。
【0028】
ここで、前記のような基本ユニットを並列させた第1シート10と第2シート20によって出現する模様について図4ないし図7を参照しながら説明する。ここでは、第1シート10を固定し、第2シート20を変位(回転運動又は直線往復動のような動作)させる場合について説明する。
【0029】
第2シート20は、手動又は電動によって移動する。電動の場合は、通常のモータと減速機とを組み合わせてもよいし、あるいは、ステッピングモータを採用してもよい。
【0030】
第1シート10と第2シート20がともに基本ユニットAに口径Φ2.2mmの孔部12,22を形成したもの(A2.2)である場合において、第1シート10を固定し、第2シート20を0°から360°回転したときは、図4に示すような模様が出現する。
【0031】
図4(a)に示すように第2シート20が回転していない(0°、360°)場合及び180°回転した場合と、図4(d)に示すように第2シート20が60°及び240°回転した場合と、図4(f)に示すように第2シート20が120°及び300°回転した場合は、いずれも第1シート10の孔部12と第2シート20の孔部22とが完全に重なる状態となり、人目を惹くような模様は出現しない。
【0032】
しかし、図4(b)に示すように第2シート20が30°回転した場合と210°回転した場合、図4(h)に示すように第2シート20が150°回転した場合と330°回転した場合は、いずれも、第2シート20の回転中心の位置に円形とも見える12角形が現れ、且つ或る辺を共有する形で同じ大きさの12角形が、たて・よこ2次元に次々と形成されている。
【0033】
また、図4(c)に示すように第2のシートが45°回転した場合と225°回転した場合、図4(g)に示すように第2シート20が135°回転した場合と315°回転した場合は、同じ大きさの六角形を隙間無く敷き詰めた模様を呈する。この六角形状の模様は、中心部に比較的大きな連通部が集まり、6個の辺は比較的小さな連通部の集合で形成されている。
【0034】
そして、第1シート10と第2シート20がともに基本ユニットAに口径Φ2.2mmの孔部12,22を形成したもの(A2.2)において、第1シート10を固定し、第2シート20を2°、5°、10°、20°、30°、40°、45°、50°、60°、70°、80°、90°回転したときに出現する模様は、それぞれ図5(a)〜(l)に示すように連続的に変化する。
【0035】
また、第1シート10と第2シート20がともに基本ユニットAに口径Φ2.2mmの孔部12,22を形成したもの(A2.2)において、第1シート10を固定し、第2シート20を+2°、−2°、+5°、−5°、+10、−10°、+15°、−15°、+20°、−20°回転したときに出現する模様は、それぞれ図6(a)〜(k)に示すように変化する。第2シート20の回転角度の絶対値が同じ場合は、同じ模様が出現する。
【0036】
そして、第1シート10と第2シート20がともに基本ユニットCに口径Φ1.7mmの孔部12,22を形成したもの(C1.7)において、第1シート10を固定し、第2シート20を0°(回転していない)、2°、5°、10°から10°ずつ90°までそれぞれ回転したときに出現する模様は、それぞれ図7(a)〜(l)に示すように変化する。このC1.7の第1シート10と第2シート20によって出現する模様は、図5に示したA2.2の第1シート10と第2シート20によって出現する模様と異なっている。
【0037】
そして、第1シート10と第2シート20がともに基本ユニットDに口径Φ1.4mmの孔部12,22を形成したもの(D1.4)において、第1シート10を固定し、第2シート20を0°(回転していない)から110°まで回転したときに出現する模様は、それぞれ図8(a)〜(s)に示すように変化し、−10°から+10°までの範囲の角度で回転したときに出現する模様は、それぞれ図9(a)〜(g)に示すように変化する。このD1.4の第1シート10と第2シート20では、縞模様が出現する。
【0038】
第1シート10と第2シート20がともに基本ユニットEに口径Φ1.5mmの孔部12,22を形成したもの(E1.5)において、第1シート10を固定し、第2シート20を−20°から+20°までの範囲の角度で回転したときに出現する模様は、それぞれ図10(a)〜(k)に示すように変化する。D1.4のシート10,20による模様(図9)とE1.5のシート10,20による模様(図10)は、±10°程度の範囲ではわずかに異なるものの、良く似た模様を呈している。
【0039】
また、第1シート10が基本ユニットAに口径Φ2.2mmの孔部12を形成したもの(A2.2)であり、第2シート20が基本ユニットAに口径Φ1.4mmの孔部22を形成したもの(A1.4)において、第1シート10を固定し、第2シート20を−20°から+20°までの範囲の角度で回転したときに出現する模様は、図11(a)〜(k)に示すように変化する。
【0040】
そして、第1シート10が基本ユニットBに口径Φ1.5mmの孔部12を形成したもの(B1.5)であり、第2シート20が基本ユニットEに口径Φ1.4mmの孔部22を形成したもの(E1.5)において、第1シート10を固定し、第2シート20を0°から90°まで回転したときに出現する模様は、図12(a)〜(m)に示すように変化する。
【0041】
そして、第1シート10と第2シート20がともに基本ユニットDに口径Φ1.4mmの孔部12,22を形成したもの(D1.4)において、第1シート10を固定し、第2シート20を第1シート10に対して2°傾斜(回転後に停止)させ、基本ユニットDの長辺方向(図面において左右方向)に−10mmから+10mmまで移動(直進運動)したときに出現する模様は、図13(a)〜(r)に示すように、六角形状の比較的明るい部分が最密充填的に積み重なるように出現し、変容することなく移動する。
【0042】
すなわち、この模様は、基本ユニットDの長辺方向には移動するように見えず、基本ユニットDの短辺方向(図面において上下方向)にのみ移動するように見える。図13の例においては、第2シートが右方(プラス表示)へ移動すると、比例して模様が下方へ移動する。
【0043】
また、第1シート10が基本ユニットAに口径Φ2.2mmの孔部12,22を形成したもの(A2.2)であり、第2シート20が基本ユニットAに口径Φ1.4mmの孔部12,22を形成したもの(A1.4)において、第1シート10を固定し、第2シート20を第1シート10に対して2°傾斜(回転後に停止)させ、基本ユニットの短辺方向(図面において上下方向)に+1mmから−1mmまで移動したときに出現する模様は、図14(a)〜(g)に示すように変化する。図14の例においては、第2シートを上方(プラス表示)へ移動すると、比例して模様が右方へ移動する。
【0044】
この模様は、六角形状の比較的明るい部分が最密充填的に積み重なるように出現し、基本ユニットAの長辺方向(図面において左右方向)に移動(直進運動)しているように見える。すなわち、第2シート20が傾斜することで出現した模様が、少なくとも肉眼で変化することなく、第2シート20の直進方向と直交する方向に移動する。そして、この模様が移動する速度は上記第2シートが移動する速度に比例・連動しており、第2シート20の移動方向が逆転すると、模様の移動方向も逆転する。
【0045】
更に、第1シート10と第2シート20の相対角度が変化すれば出現する幾何学模様が千変万化するのである。
【0046】
上記のように、重なり合った第1シート10と第2シート20が相対的に変位することにより、出現する模様が万華鏡のように千変万化する。この千変万化は連続的であり、同時に変化のスピードが速まったり落ちたり止まったりしてから、最初の模様に戻ることもある。したがって、この模様は、例えば通路に面したショーウィンドを見ている通行人や店舗内の買物客たちの人目を惹きつけ、多くの人は、模様の変化に見とれてしまい、見飽きることなくショーウィンドに注意が向き、そしてその模様の連通部を通して店内の光が溢れ、店内が視野に入るのである。そして店舗内に誘導されたり、購買意欲が惹起されたりする。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定することなく種々変更することができる。すなわち、基本ユニットA〜E及び孔部12,22の口径Φのサイズは、上記具体例に限定されないことはいうまでもない。
【0048】
また、孔部12,22は、円形に限定することなく、楕円形、星形、多角形、ハート形などの異形としてもよい。ただし、異形の孔部12,22は、その面積換算重心が円形の孔部12,22の面積換算重心と同じ位置に形成されるように備えられる。また、異形の孔部12,22の口径Φは、1個の孔部12,22の開口面積と同等な面積を想定した円の直径とする。仮に、これらの孔部12,22が隣の孔部12,22と干渉(重なる)すると、シートの機械強度が著しく低下するので好ましく無い。
【0049】
このような孔部12,22の口径Φは、1mm以上であることが好ましい。1mm未満であると、必要な開口率kを得られにくくなるからである。開口率kは、0.1以上、0.75以下であることが好ましい。開口率kが0.1未満であると、模様が暗くなるなど見にくくなる。開口率kが0.75よりも大きいと、シート10,20の機械的強度が弱くなり、耐久性が乏しくなるだけでなく、模様が明るくなりすぎることで、模様の変容にメリハリが付きにくくなる。なお、一方のシート10(20)の開口率kが0.1に近いと、他方のシート20(10)の開口率kが0.4を超えるようにすることで、模様を視認しやすくすることができる。
【0050】
また、仮に、孔部12,22の口径Φを1mm未満とした場合に必要な開口率kを得られるように、隣り合った孔部12,22の間隔を短くすると、幾何学模様独特の図柄が小さくなって非常に見づらく、人目を惹くような模様を出現させることができないだけでなく、孔部12,22の数が増えることで、シートを製作する時間とコストが増加するため、好ましくない。
【0051】
一方、孔部12,22の口径Φの上限は、装飾具の使用場所などの用途がショーウィンドかショッピングモールの中庭かなどによって異なり、適宜、設定される。ただし、いずれの用途であっても、孔部12,22同士が干渉しないように形成されることはいうまでもない。
【0052】
また、上記実施の形態では、基本ユニットが同じ第1シート10と第2シート20とを重ね合わせたもの、そして、異なる基本ユニットの第1シート10とを第2シート20を重ね合わせたものとした。この異なる基本ユニットの第1シート10の孔部12,22と第2シート20の孔部12,22の各口径Φが異なる場合において、大きい口径Φを小さい口径Φで除した口径比は、2以下であることが好ましい。口径比が2を超えると、大きな口径の孔部12,22を通過する光量が支配的となり、2枚のシートの相対的な移動で出現する模様が単調になるからである。
【0053】
また、本発明に係る装飾具は、第1シート10と第2シート20の基本ユニットが同じで且つ孔径が同じの装飾具において、孔径を変更せずにいずれか片方のシート10(若しくは20)の孔部12(若しくは22)の繰り返しのピッチを異なるようにしてもよい。このような装飾具にあっては、大きなピッチを小さなピッチで除した値を「繰返し寸法の比」とすると、この繰返し寸法の比は1.3以下であることが好ましい。繰返し寸法の比が1.3よりも大きいと幾何学的模様が現れにくく、あるいは現れても不鮮明になるからである。
【0054】
また、上記実施形態では、第1シート10と第2シート20の全面に基本ユニットA〜Eのそれぞれを、それぞれの長辺の長さと短辺の長さ(正方形の場合は一辺の長さ)でもって2次元的に繰り返すことで規定される位置において、全面を埋めるように散在させた。ただし、基本ユニットA〜Eは、シート本体11,21の一部分に設けられてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、各シート10,20は全て同じ基本ユニットを備えているとした。ただし、第1シート10及び第2シート20は、ある部分に基本ユニットA、他の部分に基本ユニットBというように異なる基本ユニットを組み合わせたものとしてもよい。また、上記実施形態では、各ユニットA〜Eの孔部12,22それぞれは、すべて同じ口径Φに形成した。ただし、孔部12,22は、シートの或る一部分を異なる口径Φに形成してもよいし、円形と異形とを組み合わせたものとしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態の装飾具は、第1シート10を固定し、第2シート20を移動させた。ただし、装飾具は、第1シート10と第2シート20の両方を移動させてもよい。また、第1シート10又は第2シート20は、直進した後に回転するようにしてもよい。
【0057】
また、装飾具は、3枚以上のシート10,20を備えてもよい。本発明では、2枚のシート10,20で十分な機能を発揮するが、3枚を超えても本発明の機能を損なわない限り許容される。そして例えば3枚目が着色された半透明なシートであっても良く、それが規則性を持った位置に孔部があけられていても良い。この場合は、全てのシートを移動させるのではなく、1枚のシートを固定することで、出現する模様の変化を容易に制御することができる。固定されたシートの孔部のピッチや口径は、相対的に移動するシートの孔部のピッチや口径と異なっていてもよい。
【0058】
また、上記実施形態の基本ユニットA〜Eは、2辺の長さを規定した長方形の角部の4点と、長方形の中心の1点の合計5点に孔部12,22を形成した。ただし基本ユニットA〜Eは、一辺の長さとその辺を基準とした角度でもって規定される長方形の頂点4点とその中心の1点の計5点としても良い。
【0059】
また、上記実施形態の基本ユニットA〜Eは、2辺の長さを規定した四角形の直角に隣り合った二つの辺の長さによって規定した。ただし、基本ユニットは、一辺と、その一辺に対する角度(例えば30°や45°)を異ならせたもので規定してもよい。孔部12,22を一定の角度ごとに形成することにより、シート10,20を回転させたときに、出現する模様はどの位置でも同じとなる。
【0060】
また、上記実施形態の基本ユニットA〜Eは、長方形の角部の4点と、長方形の中心の1点の合計5点に孔部12,22を形成した。ただし、基本ユニットA〜Eは、長方形の中心に孔部12,22を形成することなく、長方形の角部の4点に孔部12,22を形成するものとしてもよい。
【0061】
なお、孔部12,22を四角形の辺の長さに基づいて形成した場合において、シート10,20を回転させたときは、中心から離れる孔部12,22ほどずれて重なり合う状態となる。ただし、シート10,20が回転運動をしていることにより、孔部12,22同士がずれていることに気付くことは難しく、また、模様の千変万化にかき消されてしまう。
【0062】
また、上記実施形態では、第1シート10と第2シート20のいずれか一方は、磁性体によって形成され、他方は、マグネットによって形成しても良い。こうすることにより、第1シート10と第2シート20とが磁気吸着され、移動した第2シート20を確実に一時停止させることができる。ただし、第1シート10と第2シート20は、磁着されない金属やプラスチックや紙などで形成してもよい。
【0063】
本発明の装飾具は、調光具としての機能も有しているので、窓に装着して使用することが出来る。本発明の装飾具は、光が透過する部分の形状が千変万化することを利用して、ランプシェードやイベントホールなどの投光器に用いることが出来る。これらに使用された本発明の装飾具は、シート10,20が黒っぽく、或いはカラフルに着色されることで、興趣をよりかきたてることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 シート(第1シート)
11 シート本体
12 孔部
20 シート(第2シート)
21 シート本体
22 孔部
A,B,C,D,E 基本ユニット


【要約】      (修正有)
【課題】人の目を惹き付け、興趣をかきたてる模様が出現するようにした装飾具及びその装飾具による模様の変化方法を提供する。
【解決手段】この装飾具は、重ね合わされた状態で相対的に変位する第1シート10と第2シート20とを備えている。第1シート10と第2シート20は、多数の孔部12,22が形成された不透明又は半透明のシート本体11,21を備え、多数の孔部12,22が規則性を持った位置に散点している。また、シート本体12,22は、長方形の角部の4点と、その中心の1点の合計5点を基本ユニットとして、基本ユニットが2次元(シート全面)に繰り返されていて、5点相当部にある孔部がシート全面に規則正しく散点している。
【選択図】図1
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