(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5997320
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】気中開閉器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/08 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
H01H33/08
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-104540(P2015-104540)
(22)【出願日】2015年5月22日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144108
【氏名又は名称】株式会社三英社製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 太一
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−229789(JP,A)
【文献】
特開平07−130250(JP,A)
【文献】
特開昭56−071223(JP,A)
【文献】
特開平09−180589(JP,A)
【文献】
実開昭54−070063(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉器本体箱内に消弧室で囲まれた固定電極と、当該固定電極に接離する回転自在な可動電極とを設け、当該可動電極の接離動作は駆動機構を介して手動又は電動により行う気中開閉器において、
対の可動電極と固定電極及び当該固定電極を取り囲んだ消弧室を被うほぼ密閉した、高分子材料から成る絶縁箱を開閉器本体箱内に三相各相ごとに設け、
前記消弧室の、可動電極の出入側と反対側の側壁に放圧口を設け、
当該放圧口に一端を接続した一定長の管体を設け、当該管体は前記絶縁箱の側壁に設けた開口部を通して前記絶縁箱の外に導出し、他端を前記開閉器本体箱内に開口させ、
前記可動電極が消弧室内の固定電極から離れる際に生じるアークのエネルギーによる内圧の上昇を絶縁箱内で受け、当該内圧を当該絶縁箱内の前記消弧室の放圧口から前記管体を通して当該絶縁箱の外に導出し、この気体の流れによって前記アークを前記放出口に引き伸ばして当該アークを素早く切断する構成であることを特徴とする、気中開閉器。
【請求項2】
前記可動電極が前記固定電極を挟持する2枚のブレードから成り、当該2枚の各ブレードの外側に板バネを重合したことを特徴とする、請求項1に記載の気中開閉器。
【請求項3】
前記消弧室内の前記放圧口に近接した箇所に、アークを電磁力で誘導する磁性板を設けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の気中開閉器。
【請求項4】
前記消弧室内の固定電極の脇に、固定電極箇所を封鎖する開閉シャッターを設けたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の気中開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気中絶縁方式でありながら小型で優れた消弧性能を有し、コストダウン指向の気中開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧負荷開閉器は小型化・コストダウン等を目的としてSF
6ガス絶縁方式の開閉器が開発された。当該SF
6ガス、すなわち、六フッ化硫黄ガスは電気絶縁性能に優れたガスであり、絶縁媒体として用いることにより装置全体の小型化が図れている。また、六フッ化硫黄ガスはアークの消弧能力が高く、大容量遮断器に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、六フッ化硫黄ガスは温室効果ガスであることから、環境への負荷低減のため他方式へ変更して行く必要が高まっている。
【0004】
他方式の開閉器として、従来から気中開閉器が使用されているが、絶縁性能が劣るためどうしても大型化してしまい、取り扱いやコストの面で問題がある。
【0005】
そこで、特許文献1に示すように開閉器の外箱の内側に絶縁フレームを組み込むことにより絶縁性を高めて小型化を図る高圧気中開閉器が開発された。この開閉器の絶縁フレームは上面が開口した箱型のもので、内部を隔壁により区画し、各区画には相ごとの固定接触子、その他の部品を取付けている。
【0006】
また、特許文献2に示す気中開閉器が開発された。この特許文献2の気中開閉器は、収納ケース内に収納された固定接触子、開口部を有し、前記固定接触子を取り囲む絶縁材料製の消弧室部、前記収納ケース内に回動可能に設けられ、前記開口部を介して前記消弧室部内に挿脱され前記固定接触子と接離する可動接触子、及び前記消弧室部内に連通し前記消弧室部内の圧力が上昇するとき及び下降するとき前記圧力の上昇速度及び下降速度を緩和する緩衝室を形成する緩衝室部を備え、これにより開閉器を小型化できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−130250号公報
【特許文献2】特開2001−229789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のものは、絶縁フレームの上面が開口したもので、当該絶縁フレームは密閉された箱型のものではなく、絶縁性が低いものである。また、可動電極が固定電極から離れる際に生じるアークに対する消弧性能を高める等の措置がなされていない。
【0009】
また、特許文献2のものは、緩衝室を設けたことにより消弧室からホットガス及びアークが可動電極方向に急激に吹き出すのを抑制しているもので、積極的にアークを消滅させるものではない。
【0010】
従って、気中開閉器において、小型で優れた消弧性能を有し、コストダウンが図れるものが開発されているが、満足できるものに至っていない。
【0011】
そこで、この発明は、この点に着目し、気中絶縁方式でありながら小型で優れた消弧性能を有する開閉器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、開閉器本体箱内に消弧室で囲まれた固定電極と、当該固定電極に接離する回転自在な可動電極とを設け、当該可動電極の接離動作は駆動機構を介して手動又は電動により行う気中開閉器において、対の可動電極と固定電極及び当該固定電極を取り囲んだ消弧室を被うほぼ密閉した
、高分子材料から成る絶縁箱を開閉器本体箱内に三相各相ごとに設け、前記消弧室の、可動電極の出入側と反対側の側壁に放圧口を設け、当該放圧口に一端を接続した一定長の管体を設け、当該管体は前記絶縁箱の側壁に設けた開口部を通して前記絶縁箱の外に導出し、他端を前記開閉器本体箱内に開口させ、
前記可動電極が消弧室内の固定電極から離れる際に生じるアークのエネルギーによる内圧の上昇を絶縁箱内で受け、当該内圧を当該絶縁箱内の前記消弧室の放圧口から前記管体を通して当該絶縁箱の外に導出し、この気体の流れによって前記アークを前記放出口に引き伸ばして当該アークを素早く切断する構成である気中開閉器とした。
【0014】
また、請求項
2の発明は、前記可動電極が前記固定電極を挟持する2枚のブレードから成り、当該2枚の各ブレードの外側に板バネを重合した、請求項
1に記載の気中開閉器とした。
【0015】
また、請求項
3の発明は、前記消弧室内の前記放圧口に近接した箇所に、アークを電磁力で誘導する磁性板を設けた、請求項
1又は2に記載の気中開閉器とした。
【0016】
また、請求項
4の発明は、前記消弧室内の固定電極の脇に、固定電極を封鎖する開閉シャッターを設けた、請求項
1〜3のいずれかに記載の気中開閉器とした。
【発明の効果】
【0017】
請求項
1〜4の発明によれば、開閉器本体箱の内部に、対の固定電極及び可動電極を被う、ほぼ密閉された絶縁箱を設け、さらに当該絶縁箱内の固定電極を被う前記消弧室に放圧用兼アーク引き伸ばし用の放圧口を設けることにより、遮断性能を向上させ、気中絶縁方式でありながら小型で、安価な負荷開閉器を実現させることができる。
【0018】
つまり、可動電極の開放時に電極間で発生するアークのエネルギーによる内圧上昇を前記放圧口から放圧させ、その気体の流れによりアークを放圧口の外へ積極的に引き伸ばし、アークを素早く切断して消弧効果を上げるものである。また、放圧口の外部には管体を連結し、当該管体内を通して消弧効果を上げると共に、開閉器本体箱(金属製等)への地絡を防止するものである。
【0019】
また、前記絶縁箱を構成する高分子材料は、電気絶縁性、耐熱性、撥水性等に優れており長時間電気絶縁性を維持可能である。
【0020】
また、特に請求項
2の発明によれば、前記可動電極を、固定電極を挟持可能な、間隔をあけた2枚のブレードとし、当該2枚の各ブレードの外側に板バネを重合した構成とすることにより、単純構造及びコンパクトでありながら固定電極への接触圧と可動電極の回転部の接触圧を同時に確保することができる。さらに部品点数を削減し、低コスト化を図ることができる。
【0021】
また、特に請求項
3の発明によれば、前記消弧室内にアークを電磁力で誘導する磁性板を設けたことにより、可動電極の開放時に生じるアークを前記放圧口に引き込む効果が増大し、比較的大きな電流遮断にも対応が可能である。
【0022】
また、特に請求項
4の発明によれば、前記消弧室内に、固定電極を封鎖する開閉シャッターを設けることにより、低電流、低力率の電流を容易に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の実施の形態例1の気中開閉器の可動電極が固定電極に投入されている状態の縦断面正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の気中開閉器の可動電極が固定電極に投入されている状態の縦断面側面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の気中開閉器の可動電極が固定電極から開放され、開閉シャッターが閉じている状態の消弧室付近の一部縦断面側面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の気中開閉器の可動電極が固定電極から開放され、開閉シャッターを開けた状態の消弧室付近の拡大一部縦断面側面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の気中開閉器の可動電極を示す図であり、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の気中開閉器の可動電極が固定電極から開放された直後の状態を示す縦断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態例1)
以下、この発明の実施の形態例1の気中開閉器について説明する。
【0025】
図1に示すように、金属製の開閉器本体箱1の、相対向する上下の位置に、当該開閉器本体箱1を貫通したブッシング2、3を設け、これらのうちの上部のブッシング2の、開閉器本体箱1内の端部には固定電極4を設け、下部のブッシング3の、開閉器本体箱1内の端部には、可動電極5の回動軸部5aを設けており、当該可動電極5は略鉤型のブレードから成り、当該可動電極5の先端部が前記固定電極4に接離自在である。
【0026】
また、前記固定電極4は、消弧性能の優れた樹脂製箱型の消弧室6内の一端に設けられ、前記可動電極5の先端部は当該消弧室6の下面の開口孔から消弧室6内に入り、固定電極4に接触する構成となっている。
【0027】
これらの固定電極4、可動電極5及び消弧室6を被う絶縁箱7が、前記開閉器本体箱1内に設けられている。この絶縁箱7は、電気絶縁性、耐熱性、撥水性等に優れ、電流開閉による内部汚損があっても長時間電気絶縁性を維持可能なシリコーンゴム等の高分子材料から構成されている。また、この絶縁箱7は、三相各相ごとに分離して又は相間隔壁を有する三相一体に設けられ、各相ごとに開口部を有し、当該各開口部を被う開閉蓋7aを設けている。従って、当該絶縁箱7は、前記可動電極5の絶縁駆動ロッド8の挿入口が開口しているが、各相ごとにほぼ密閉されている。
【0028】
また、前記可動電極5には、開閉器本体箱1内に設けた駆動機構(図示省略)により動く絶縁駆動ロッド8が回転自在に連結されている。そして、当該絶縁駆動ロッド8は前記絶縁箱7の下面に設けた開口部から絶縁箱7の外に導出され、その下端を前記駆動機構(図示省略)に軸支されている。この駆動機構は手動又は電動で駆動して絶縁駆動ロッド8が動き、これにより可動電極5は回動軸部5aを中心に回動し、その先端が固定電極4と接離自在となる。
【0029】
また、前記消弧室6は前記絶縁箱7の天板下面に接しており、消弧室6内の前記固定電極4と反対側でかつ可動電極5の出入りする開口孔と反対側に放圧口9を設けている。また、当該放圧口9と対向した絶縁箱7の天板にも開口部10を設け、当該開口部10は前記放圧口9と連通している。
【0030】
これらの放圧口9及び開口部10には、消弧性能が優れた樹脂製の一定の長さを有するダクト11の一端11aが接続され、当該ダクト11の他端11bは絶縁箱7の上部及び側部に沿って伸び、当該ダクト11の他端11bの開口部は、開閉器本体箱1内で前記絶縁箱6の下方に位置している。
【0031】
また、前記消弧室6の前記放圧口9の周囲の消弧室6内に、断面下向き「コ」の字型の磁性板12を設けている。この磁性板12は、可動電極5の固定電極4からの離脱の際に生じるアークを電磁力で誘導するものである。
【0032】
さらに、前記消弧室6内には、前記固定電極4を封鎖する開閉シャッター13を設けている。当該開閉シャッター13は
図3に示すように、消弧室6内の固定電極4に通じる可動電極5の移動通路に設けられ、左右に動いて当該通路を開閉するものである。そして
図3は開閉シャッター13を閉じた状態を示し、
図4は当該開閉シャッター13を開いた状態を示す。
【0033】
そして、当該開閉シャッター13により、低電流、低力率の電流の遮断の際、可動電極5を固定電極4から離した際、開閉シャッター13を閉じることにより、アークが遮断され、低電流、低力率の電流を容易に遮断することができる。
【0034】
また、前記絶縁箱7内の可動電極5の側面には、可動電極5の厚さより大きな幅を有するシート状の絶縁用バリア14が設けられ、当該絶縁用バリア14は、可動電極5の開放時の動きでアークを消弧室6の上部の放圧口9に追い込む働きを有する。
【0035】
次に、前記可動電極5の詳細構造を
図5に基づいて説明する。前記可動電極5は、2枚のブレード5b、5bから成り、スペーサ15を間に介在させて間隔をあけて設けられ、当該2枚の各ブレード5b、5bの各外側に板バネ16を重合して固定されている。そして、2枚のブレード5b、5bの先端部で前記固定電極4を挟持する構成となっているが、前記各板バネ16により、適度の押圧力をもって固定電極4を挟み込むようになっており、また、前記回動軸部5aの軸(電極)への接触圧を同時に確保している。
【0036】
以上の構成により、可動電極5が、消弧室6内の固定電極4から離れる際、これらの電極間にアークが発生する。そして、当該アークエネルギーにより消弧室6の内圧が上昇するが、
図1の矢印Pで示すように、前記放圧口9から消弧室6の外に放圧し、その気体の流れにより、
図6に示すように、アークを放圧口9の外へ積極的に引き伸ばし、アークを素早く切断して消弧効果を上げることができるものである。
【0037】
さらに、ダクト11内で、当該ダクト11から消弧ガスが発生し、これにより消弧効果を上げる。また、この様に一定長のダクト11を設けることにより、開閉器本体箱1への地絡を防止することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態例1では、固定電極4及び可動電極5の回動軸部5aを上下方向に設けているが、この発明の固定電極4及び可動電極5の回動軸部5aの向きはこれに限定されるものではない。
【0039】
また、上記実施の形態例1では、絶縁箱7は開閉器本体箱1のブッシング貫通部等のパッキン、絶縁用バリア等の内部部品、センサー取付け等の外部部品等を一体化して設けているが、これらは別途設けてもよい。また、前記ダクトに代えて、ゴム製のチューブ等の適宜の管体を使用してもよい。また、前記絶縁箱7の内側面に電気絶縁用のひだを一体成形してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 開閉器本体箱 2 ブッシング
3 ブッシング 4 固定電極
5 可動電極 5a 回動軸部
5b ブレード
6 消弧室 7 絶縁箱
7a 開閉蓋 8 絶縁駆動ロッド
9 放圧口 10 開口部
11 ダクト 11a 一端
11b 他端 12 磁性板
13 開閉シャッター 14 絶縁用バリア
15 スペーサ 16 板バネ
【要約】
【課題】気中絶縁方式でありながら小型で優れた消弧性能を有する開閉器を提供する。
【解決手段】開閉器本体箱1内に消弧室6で囲まれた固定電極4と、当該固定電極4に接離する回転自在な可動電極5とを設け、当該可動電極5の接離動作は駆動機構を介して手動又は電動により行う気中開閉器において、対の可動電極5と固定電極4及び当該固定電極4を取り囲んだ消弧室6を被うほぼ密閉した絶縁箱7を開閉器本体箱1内に三相各相ごとに設け、前記消弧室6の、可動電極5の出入側と反対側の側壁に放圧口9を設け、当該放圧口9に一端を接続した一定長のダクト11を設け、当該ダクト11は前記絶縁箱7の側壁を貫通して前記絶縁箱7の外に導出し、他端を前記開閉器本体箱1内に開口させた。
【選択図】
図1