特許第5997334号(P5997334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5997334-機器検出を伴う磁気共鳴検査 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997334
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】機器検出を伴う磁気共鳴検査
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   A61B5/05 380
   A61B5/05 311
   A61B5/05 382
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-166583(P2015-166583)
(22)【出願日】2015年8月26日
(62)【分割の表示】特願2013-511769(P2013-511769)の分割
【原出願日】2011年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-5597(P2016-5597A)
(43)【公開日】2016年1月14日
【審査請求日】2015年9月14日
(31)【優先権主張番号】10164115.7
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブリンク ヨハン サムエル
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5799087(JP,B2)
【文献】 特表2011−517983(JP,A)
【文献】 米国特許第9297870(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の検査のための磁気共鳴検査システムであって、
検査されるべき対象を入れるように構成される検査空間においてRF送信場を生成するRFシステムと、
前記検査空間において一時的傾斜磁場を生成する傾斜磁場システムと、
磁気共鳴信号を生成するRFパルスと傾斜磁場パルスとを生成するように前記RFシステムと前記傾斜磁場システムを制御するシーケンスコントローラを含む制御モジュールとを有し、
前記シーケンスコントローラが前記対象から定常状態FFEグラジエントエコー信号を生成するために前記検査空間における前記対象に定常状態FFEグラジエントエコー取得シーケンスを適用すると共に、前記対象からT1‐FFEエコー信号を生成するために前記検査空間における前記対象にT1‐FFEエコー取得シーケンスを適用し、
前記制御モジュールが、
前記FFEグラジエントエコー信号及び前記T1‐FFEエコー信号における差検出し、
前記FFEグラジエントエコー信号及び前記T1‐FFEエコー信号における前記差から機器が前記対象内に存在するかどうか決定するための解析ユニットをさらに含む、
磁気共鳴検査システム。
【請求項2】
前記FFE取得シーケンス及び前記T1‐FFE取得シーケンスが10°未満のフリップ角で磁気共鳴スキャンにおいて適用される、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項3】
分析ユニットが、
前記T1‐FFEエコー信号から前記FFEグラジエントエコー信号の2倍、
プリセットフリップ角において生成される前記T1‐FFEエコー信号及び前記プリセットフリップ角の2倍において生成される前記T1‐FFEエコー信号、又は、
エルンスト角に等しいフリップ角において取得される前記FFEグラジエントエコー信号及び前記T1‐FFE信号
の1つを減算する、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項4】
対象を検査する方法であって、
前記対象から定常状態FFEグラジエントエコー信号を生成するために検査空間における前記対象に定常状態FFEグラジエントエコー取得シーケンスを適用するステップと、
前記対象から前記T1‐FFEエコー信号を生成するために前記検査空間における前記対象にT1‐FFEエコー取得シーケンスを適用するステップと、
前記FFEグラジエントエコー信号及び前記T1‐FFEエコー信号における差を検出するステップと、
前記FFEグラジエントエコー信号及び前記T1‐FFEエコー信号における前記差から機器が前記対象内に存在するかどうかを検出するステップと
を含む、方法
【請求項5】
コントローラによる実行のための機械実行可能な命令を含むコンピュータプログラムであって、前記機械実行可能な命令は、
前記対象から定常状態FFEグラジエントエコー信号を生成するために検査空間における対象に定常状態FFEグラジエントエコー取得シーケンスを適用するステップと、
前記対象からT1‐FFEエコー信号を生成するために前記検査空間における前記対象にT1‐FFEエコー取得シーケンスを適用するステップと、
前記FFEグラジエントエコー信号及び前記T1‐FFEエコー信号における差を検出するステップと、
前記FFEグラジエントエコー信号及び前記T1‐FFE信号における前記差から機器が前記対象内に存在するかどうかを検出するステップと
のための命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査対象の中の埋め込み機器を識別する機能を含む磁気共鳴検査システムに関する。ペースメーカ若しくは神経刺激装置などの埋め込み医療機器の形などのインプラントは、磁気共鳴検査システムにおいて危険な状態を引き起こし得ることが一般に知られている。かかる磁気共鳴検査システムはISMRM 2009 abstract 306'Detecting unsafe device coupling using reversed polarization'から知られる。
【背景技術】
【0002】
既知の磁気共鳴検査システムは、右旋円偏波RF場が送信に使用され左旋円偏波RF場が受信に使用される、いわゆる逆偏波を利用する32リングバードケージコイルを有する。バードケージコイルの視野内に結合ワイヤが存在するとき、ワイヤはワイヤを通る電流に比例する二次直線偏波場を生成する。この誘導直線偏波場の前方偏波成分はその結合に比例する局所磁気共鳴信号を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は磁気共鳴検査システムのわずかな修正のみが要求されるような機器の安全な検出を伴う磁気共鳴検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は本発明によれば、RF送信場を生成するRFシステムと、
一時的傾斜磁場を生成する傾斜磁場システムと、
磁気共鳴信号を生成するRFパルスと傾斜磁場パルスを含む取得シーケンスを生成するようにRFシステムと傾斜磁場システムを制御するシーケンスコントローラを含む制御モジュールとを有し、
シーケンスコントローラが定常状態グラジエントエコー信号を生成する定常状態グラジエントエコー取得シーケンスとRFスポイルエコー信号を生成するRFスポイルエコー取得シーケンスを含む検出スキャンを生成するように構成され、
制御モジュールが、グラジエントエコー信号をRFスポイルエコー信号と比較し、グラジエントエコーとRFスポイルエコーの比較から対象内の機器を検出するための解析ユニットをさらに含む、磁気共鳴検査システムによって達成される。
【0005】
本発明の見識は、グラジエントエコー取得シーケンスとRFスポイルグラジエントエコー取得シーケンスの反応間の差が、機器とのRF場の予想外のRF結合の正確で敏感な指標であるということである。機器は例えば患者の体内の埋め込み機器(インプラント)である。かかる埋め込み機器の検出は患者の体内の機器の実際の存在を確立することを伴う。機器の別の実施例は患者の体内に挿入されるカテーテル若しくは内視鏡などのインターベンション機器である。RF場とのインターベンション機器のRF結合に基づいて、インターベンション機器の位置が追跡されることができる。つまり、インターベンション機器の実施例において、検出はインターベンション機器が患者の体内で動かされるときにその存在の検出とその位置の表示を伴う。本発明は磁気共鳴検査システムへのハードウェア適応を要求しない。本発明にかかる検出は腹部空間の大部分において1.5T及び3.0Tでゼロに近いバックグラウンドを持つ。とりわけ、3.0Tにおけるバックグラウンド抑制は逆偏波若しくは非直交RF場に基づく既知の磁気共鳴検査システムによって達成されるものよりも顕著に優れている。また、本発明にかかる検出方法は存在する可能性のある装置と身体組織の間の危険な相互作用を防ぐために非常に低いB,Brms及びグラジエントスルーレート値を適用する。従ってこれは本質的に安全である。
【0006】
本発明のこれらの及び他の態様は従属請求項に規定される実施形態を参照してさらに詳述される。
【0007】
本発明の磁気共鳴検査システムの好適な実施形態において、検出スキャンは空間低分解能調査スキャンに組み込まれる。かかる調査スキャンは特定対象、つまり被検患者にあわせて磁気共鳴検査システムの複数の設定を調節するためになされることが多い。検出スキャンは好適には磁気共鳴検査システムの患者アクセス空間を包囲する感度領域を持つように設計される。感度領域とは、そこから検出スキャンが、機器の検出若しくは追跡を可能にする感知できる信号振幅若しくは信号対ノイズ比で磁気共鳴信号を生成する領域である。患者アクセス空間は患者にアクセスできる磁気共鳴検査システム内の領域である。とりわけ、検査領域、すなわち診断品質の磁気共鳴画像が作られ得る程度に主磁場と傾斜磁場が空間的に一様である領域が、患者アクセス空間内に含まれる。検出スキャンは例えば検出スキャンの感度領域を500‐600mmに設定することによって患者アクセス空間を包囲することができる。別の実施例において検出スキャンの感度領域は磁気共鳴検査システムの0.5mT輪郭内の領域の大部分に及ぶ。とりわけ、検出スキャンの視野はそこから患者が検査領域に入れられる磁気共鳴検査システムの側の0.5mT輪郭内の領域をとらえる。例えば、検出スキャンの感度領域は検出スキャンの取得シーケンスのk空間サンプリングによって決定される検出スキャンの視野として設定されることができる。しかしながら低レベルの折り返しアーチファクトが機器の検出において許容され得る場合、感度領域は視野よりも大きくなり得る。調査スキャンはまたRFシステムのRF受信アンテナ(コイル)の受信空間感度プロファイルを得るためにも利用され得る。これらの空間感度プロファイルはアンダーサンプリングに起因するエイリアシングを展開するためにSENSEのようなパラレルイメージング技術において利用される。この調査スキャンは一般に非常に低い比吸収率(SAR)と低い末梢神経刺激(PNS)で動作するように設計される。これは危険な可能性があるインプラントの安全な検出を可能にする。低B,Brms及びスルーレートを適用することは、こうした危険な可能性のあるインプラントからの局所組織加熱若しくは振動の可能性を防ぐ。さらに、調査スキャンは多くのRF励起及びリフォーカシングRFパルスを含まず、低スルーレートの傾斜磁場パルスのみを含む。従って、調査スキャンは一方でいかなるインプラントについても被検患者を評価するために検出スキャンを適応させることができ、他方で一般に調査スキャンはインプラントを持つ患者がスキャンされる場合に危険な状況を誘導しない。
【0008】
本発明のさらなる態様において検出スキャンは、グラジエントエコー信号レベルの2倍とRFスポイルエコー信号レベル、又はプリセットフリップ角におけるRFスポイルエコー信号レベルとプリセットフリップ角の2倍におけるRFスポイルエコー信号、又はエルンスト角に等しいフリップ角におけるRFスポイルエコー信号レベルとグラジエントエコー信号レベルの比較を含む。とりわけ定常状態グラジエントエコー及びRFスポイルエコー信号の両方の繰り返しリフォーカシングRFパルスの低フリップ角において、これらの選択肢はインプラントへの結合がない場合、すなわち公称フリップ角において最小信号を生じる。よい結果は10°未満のフリップ角で得られる。従って、フリップ角がRF結合によって強調されるときにこれらの選択肢が高感度のインプラント検出若しくは機器追跡をもたらすように、これらの選択肢は各々インプラントが存在しない場合若しくはインターベンション機器のない領域において低バックグラウンド信号を生じる。
【0009】
検出スキャンにとって特に適切な取得シーケンスはT1‐FFE及びFFEシーケンスである。
【0010】
本発明はさらに請求項6に記載のインプラントを検出する方法に関する。本発明の方法は従来の磁気共鳴検査システムの大幅な改良の必要なく被検患者におけるインプラントの安全な検出を達成する。とりわけ、本発明の方法は被検患者がインプラントを持っているかどうか、従って磁気共鳴イメージングを用いて検査されることが安全でない可能性があるかどうかの技術的結果を得る。
【0011】
本発明はさらに請求項7に記載のコンピュータプログラムに関する。本発明のコンピュータプログラムはCD‐ROMディスク若しくはUSBメモリスティックなどのデータキャリアで提供され得るか、又は本発明のコンピュータプログラムはワールドワイドウェブなどのデータネットワークからダウンロードされ得る。磁気共鳴イメージングシステムに含まれるコンピュータにインストールされるとき、磁気共鳴イメージングシステムは本発明に従って動作することができ、従来の磁気共鳴検査システムの大幅な改良の必要なく被検患者におけるインプラントの安全な検出を達成することができる。
【0012】
本発明のこれらの及び他の態様は以下に記載の実施形態を参照し、添付の図面を参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムを概略的に示す。
図2】フリップ角の範囲におけるRFスポイリング有り及び無しのグラジエントエコー取得シーケンスからの差分信号のシミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明が使用される磁気共鳴イメージングシステムを概略的に示す。磁気共鳴イメージングシステムは主コイル10のセットを含み、それによって定常均一磁場が生成される。主コイルは例えばトンネル型検査空間を包囲するような方法で構成される。被検患者はこのトンネル型検査空間の中にスライドされる患者キャリアの上に置かれる。磁気共鳴イメージングシステムは複数の傾斜磁場コイル11,12も含み、これによってとりわけ個々の方向に一時的傾斜磁場の形で空間変動を示す磁場が均一磁場に重ねられるように生成される。傾斜磁場コイル11,12は傾斜磁場制御部21に接続され、これは1つ以上の傾斜磁場増幅器と制御可能な電源ユニットを含む。傾斜磁場コイル11,12は電源ユニット21を用いて電流の印加によって通電され、このために電源ユニットは適切な時間形状の傾斜磁場パルス('傾斜磁場波形'ともよばれる)を生成するように傾斜磁場コイルに電流を印加する電子傾斜磁場増幅回路が取り付けられる。傾斜磁場の強度、方向及び持続期間は電源ユニットの制御によって制御される。磁気共鳴イメージングシステムのRFシステムはそれぞれRF励起パルスを生成するため及び磁気共鳴信号をピックアップするための送信及び受信コイル13,16を含む。送信コイル13は好適にはボディコイル13として構成され、それによって検査対象(の一部)が包囲されることができる。ボディコイルは通常、被検患者30が磁気共鳴イメージングシステム内に配置されるときにボディコイル13によって包囲されるような方法で磁気共鳴イメージングシステム内に配置される。ボディコイル13はRF励起パルスとRFリフォーカシングパルスの送信用の送信アンテナとしてはたらく。好適には、ボディコイル13は送信されたRFパルス(RFS)の空間的に一様な強度分布を含む。同じコイル若しくはアンテナが通常は送信コイル及び受信コイルとして交互に使用される。さらに、送信及び受信コイルは通常はコイルの形をとるが、送信及び受信コイルがRF電磁信号のための送信及び受信アンテナとしてはたらく他の形状もまた実現可能である。送信及び受信コイル13は電子送受信回路15に接続される。
【0015】
代替的に個別の受信及び/又は送信コイル16を使用することが可能であることが留意される。例えば、表面コイル16が受信及び/又は送信コイルとして使用されることができる。かかる表面コイルは比較的小さなボリュームにおいて高い感度を持つ。復調器がRFシステム内に設けられる。表面コイルなどの受信コイルが復調器24に接続され、受信された磁気共鳴信号(MS)が復調器24を用いて復調される。復調された磁気共鳴信号(DMS)は再構成ユニットに適用される。受信コイルは前置増幅器23に接続される。前置増幅器23は受信コイル16によって受信されたRF共鳴信号(MS)を増幅し、増幅されたRF共鳴信号は復調器24に適用される。復調器24は増幅されたRF共鳴信号を復調する。復調された共鳴信号は撮像対象の一部における局所スピン密度に関する実際の情報を含む。さらに、RFシステムは変調器22を含み、送受信回路15が変調器22に接続される。変調器22と送受信回路15はRF励起及びリフォーカシングパルスを送信するように送信コイル13を駆動する。表面コイル16によって受信された磁気共鳴信号データは送受信回路15へ送信され、制御信号(例えば表面コイルを同調及び離調する)が制御モジュール20によって表面コイルへ送信される。
【0016】
再構成ユニットは復調された磁気共鳴信号(DMS)から1つ以上の画像信号を導出し、この画像信号は検査対象の撮像部位の画像情報をあらわす。実際の再構成ユニット25は好適には復調された磁気共鳴信号から撮像対象の一部の画像情報をあらわす画像信号を導出するようにプログラムされるデジタル画像処理ユニット25として構成される。信号は、モニタが磁気共鳴画像を表示することができるように再構成モニタ26の出力である。代替的にさらなる処理を待つ間バッファユニット27に再構成ユニット25からの信号を保存することが可能である。
【0017】
本発明にかかる磁気共鳴イメージングシステムは例えば(マイクロ)プロセッサを含むコンピュータの形で制御モジュール20も備える。制御モジュール20は、シーケンスコントローラ31を用いて、RF励起の実行と一時的傾斜磁場の印加を制御する。とりわけ、制御モジュールはインプラントを識別する若しくはインターベンション機器を追跡するために実行される検出スキャンを実行するように構成若しくはプログラムされる。このために、本発明にかかるコンピュータプログラムは例えば制御ユニット20及び再構成ユニット25にロードされる。さらに、制御モジュールは解析ユニット32をさらに備える。解析ユニット32はグラジエントエコー信号をとりわけ検出スキャンで生成されたRFスポイルエコー信号と比較する算術関数を組み込む。解析ユニット32は定常状態グラジエントエコー及びRFスポイルグラジエントエコー信号の信号レベルを比較する。一実施形態によれば、インプラントの実際の存在はイメージングボリュームからの差分信号の比較に基づいて検出され、識別されたインプラントの表示をオペレータに提供するように検出信号(IS)がモニタ26へ適用される。オペレータが信号強調のために提示された画像データをレビューすることも可能である。代替的に、検出信号(IS)は例えばインターベンション機器の先端の位置をあらわし得る。検出信号に基づいてインターベンション機器の実際の位置が磁気共鳴画像において示されることができる。
【0018】
本発明によれば、定常状態グラジエントエコー及びRFスポイルグラジエントエコー信号の減算に基づいて、危険な可能性があるインプラントが検出されるか、若しくはインターベンション機器が追跡される。さらに特にFFEシーケンス及びT‐FFEシーケンスからの信号間の差が利用される。短いT/Tの場合RFスポイル信号強度は:
定常状態信号強度は:
ここで
スピン密度はρであらわされαはフリップ角である。フリップ角の低い値に対しこれらの信号強度は適正な近似において:
sp(α)=ρα Sss(α)=1/2ρα
これらの信号を比較し、インプラントが存在しないとき若しくはインターベンション機器がない領域において低レベルのバックグラウンド信号を得るために、以下の代替式が利用可能である。
n2α=Sss(2α)−Ssp(α);S2nα=2Sss(α)−Ssp(α);Snα=Sss(α)−Ssp(α)
【0019】
図2はRFスポイリング有り及び無しのグラジエントエコー取得シーケンス間の比較のフリップ角のシミュレーションを示す。差分Sn2αはα=4°‐5°の低フリップ角と比較されるときに妥当な約3倍強調を示す。しかしながらシミュレーションは差分Sn2αがα>20°の範囲における非常に大きいフリップ角について減少することを示すことが留意される。従って、検出される差分はRF結合によるフリップ角のわずかな増加若しくは非常に強いRF結合によるフリップ角の非常に大きな増加に起因し得るという点で縮退(degenerate)である。とりわけ、差分Sn2αは例えばカテーテルなどのインターベンション機器の追跡のために非常に強いRF結合が除外される状況において有用である。さらに、軽度の、約3倍強調の範囲において、RF結合によって生じる約3倍強調が周辺組織型によって強く影響されないように、特にT>600msについて、強調は比率T/Tに強く依存しない。
【0020】
フリップ角αの低い値について、実際にSn2α∝αは、少なくとも長いT/Tについて、RF共鳴がないとき、すなわちインプラントがないときにα<4°‐5°についてゼロ値へ向かう。しかしながら短いT/Tについて、差分Sn2αは約10°までのフリップ角αまで非縮退強調を示す。従って差分Sn2αはα=10°までのフリップ角を使用して高感度でインプラントを検出する若しくはインターベンション機器を追跡するのに適している;α<6°の範囲の低いフリップ角に対して非常によい非縮退感度が得られる。
【0021】
差分Snαは、RF結合を生じるインプラントの存在を区別するためにエルンスト角付近でこの差分が低いパワーを持つように、エルンスト角においてゼロである。それにもかかわらず差分Snαはエルンスト角よりも大きいフリップ角の範囲において低い約3倍強調を持つ。さらに、強調及びエルンスト角の両方は比率T/Tに依存し、すなわち低い強調は組織型に依存する。従って、差分Snαはそれにもかかわらず周辺組織が先験的に既知であるときインプラントの存在の有用な指標である。例えば、差分Snαは患者の脳内のインプラントの検出のため、又は患者の脳内の生検針などの侵襲的装置の追跡のために有用である。
【0022】
差分S2nαはフリップ角αとともに単調増加している。つまり、差分S2nαはフリップ角がRF結合に起因して増加するときに強い強調を示し、一方低いフリップ角に対して、すなわちRF結合がないとき、差分は小さい。例えば、シミュレーションは差分S2nαがα=4°における差分に対して約一桁の強調を示すことを示す。従って差分S2nαはインプラントなどの機器の存在に起因するRF結合に対して高感度である。さらに、差分S2nαは短いTR、低フリップ角及び広範囲のT/TについてFFEとT1FFEの間の信号差を効果的にゼロにする。従って、差分S2nαは周辺組織の型に関係なく機器の検出若しくは追跡に適している。
図1
図2