(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信部は、前記第2制御信号および前記ヨー制御信号を送信する間、第1サンプリング時刻での前記マルチコプターの進行方向の速度である第1速度と、前記第1サンプリング時刻から所定時間経過後の第2サンプリング時刻での前記マルチコプターの前記進行方向の速度成分である第2速度との差に応じて前記ロールの制御量の補正を行うロール補正信号を送信する、請求項1〜3のいずれか1つに記載のマルチコプター用コントローラ。
操縦者が操作するコントローラから複数の回転翼によって無人飛行するマルチコプターに向けて、前記マルチコプターのヨーまたはロールを制御するための第1制御信号、前記マルチコプターのピッチを制御するための第2制御信号、および前記マルチコプターの高さを制御するための第3制御信号を送信して前記マルチコプターを制御する方法であって、
前記コントローラから前記第1制御信号が送信された場合、その際の前記第2制御信号に含まれる第2操作量に応じて前記第1制御信号に含まれる第1操作量に応じた制御として前記ヨーまたは前記ロールのいずれかを選択することを特徴とするマルチコプターの制御方法。
前記第2操作量に応じて前記ピッチを制御するとともに前記第1操作量に応じて前記ヨーを制御する間、第1サンプリング時での前記マルチコプターの基準進行方向の速度成分である第1速度と、前記第1サンプリング時から所定時間経過後の第2サンプリング時での前記マルチコプターの前記基準進行方向の速度成分である第2速度との差に応じて前記ロールの量の補正を行う、請求項6〜9のいずれか1つに記載のマルチコプターの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチコプターを飛行させる場合、操縦者はコントローラを用いてマルチコプターのヨー、ピッチおよびロールの少なくともいずれかを制御する必要がある。マルチコプターを思い通りに操縦するには、これらの飛行姿勢を状況に応じて瞬時にコントロールしなければならない。例えば、マルチコプターを前方に飛行させながらターンさせたい場合、操縦者はピッチを制御するとともに、目的の弧を描くようにヨーおよびロールのコントロールを同期させる必要がある。このような操作は非常に複雑であり、習得には多くの時間を要する。
【0007】
特許文献1には、タッチスクリーンを有する端末を利用して容易にターンを描く飛行を行うモードについて記載されている。このモードでは、ターンの瞬間曲率半径の円を描くようにマルチコプターのピッチ、ロールおよびヨーが演算され、所望の曲線経路を辿るように姿勢が自動的に制御される。
【0008】
しかしながら、このように所望の曲線経路を辿るような姿勢制御では、操縦者が行った操作量から演算されるターン半径の経路上を飛行するように自動的に制御されてしまう。つまり、マルチコプターの飛行中に操縦者がタッチスクリーン端末を所定の方向に傾けると、その傾斜量からターン半径を設定し、そのターン半径になる円の経路上を外れないように姿勢が自動的に制御される。このような制御は操縦者にとって楽ではあるものの、マルチコプターを操るという醍醐味に欠けるという問題がある。
【0009】
本発明は、マルチコプターの操縦の複雑さを軽減しつつ、操るという醍醐味を得ることができるマルチコプター用コントローラおよびマルチコプターの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の回転翼によって無人飛行するマルチコプターを操縦するためのコントローラであって、本体筐体と、本体筐体に設けられ、回転操作されるホイール部と、本体筐体に設けられ、指で進退操作されるトリガー部と、本体筐体に設けられた往復スイッチ部と、本体筐体に設けられた送信部と、を備える。送信部は、ホイール部の操作に応じてマルチコプターのヨーまたはロールのいずれかを制御するための第1制御信号、トリガー部の操作に応じてマルチコプターのピッチを制御するための第2制御信号、および往復スイッチ部の操作に応じてマルチコプターの高さを制御するための第3制御信号を送信する。
【0011】
このような構成により、操縦者はコントローラのホイール部を回転操作することで、マルチコプターのヨーまたはロールを制御し、トリガー部を指で進退操作することで、マルチコプターのピッチを制御することができる。すなわち、操縦者は自動車のステアリングを操作する間隔でマルチコプターのターンを制御でき、トリガー部の進退操作によってマルチコプターの前後方向の飛行速度を制御することができる。
【0012】
本発明のマルチコプター用コントローラにおいて、第1制御信号は、ホイール部の操作に応じてヨーを制御するためのヨー制御信号およびロールを制御するためのロール制御信号のいずれかであり、送信部は、ホイール部が操作された場合、その際のトリガー部の操作量に応じてヨー制御信号およびロール制御信号のいずれかを送信するようになっていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、操縦者がホイール部を操作してマルチコプターのターンを制御しようとした際、トリガー部の操作量によってホイール部の操作による制御対象としてロールおよびヨーのいずれかが選択される。これにより、操縦者は1つのホイール部の操作であっても、トリガー部の操作量に応じてヨーおよびロールのいずれかの操作を切り替えて制御することができる。
【0014】
本発明のマルチコプター用コントローラにおいて、トリガー部の操作量に応じて第1領域、第2領域および第3領域が設けられ、送信部は、トリガー部の操作量が第1領域であった場合、ロール制御信号を送信し、トリガー部の操作量が第2領域であった場合、ヨー制御信号を送信し、トリガー部の操作量が第3領域であった場合、第2制御信号およびヨー制御信号を送信するようになっていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、操縦者はトリガー部の操作量によってホイール部の操作量に応じたロール制御信号の送信、ヨー制御信号の送信、第2制御信号およびヨー制御信号の送信の3つの制御を選択することができる。
【0016】
本発明のマルチコプター用コントローラにおいて、ヨー制御信号に含まれるヨーの制御量は、ホイール部の回転角度から所定の関数によって演算された値であってもよい。これにより、ホイール部の回転角度から所定の関数によって演算された値によってヨーの制御量を決定することができる。
【0017】
本発明のマルチコプター用コントローラにおいて、送信部は、第2制御信号およびヨー制御信号を送信する間、第1サンプリング時刻でのマルチコプターの進行方向の速度である第1速度と、第1サンプリング時刻から所定時間経過後の第2サンプリング時刻でのマルチコプターの進行方向の速度成分である第2速度との差に応じてロールの制御量の補正を行うロール補正信号を送信するようになっていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、マルチコプターのターンが開始されて進行方向の速度成分の変化が発生した場合、その速度成分の変化に応じてロール補正信号が送信され、マルチコプターのロール量が補正される。これにより、ターンによる速度成分の変化を抑制することができる。
【0019】
本発明のマルチコプター用コントローラにおいて、往復スイッチ部は操作しない状態で中立位置に保持される機能を有し、送信部は、往復スイッチ部の所定方向への操作から中立位置への復帰までの時間が所定時間以内であった場合に、マルチコプターを予め定められた高さに制御するための第3制御信号を送信するようになっていてもよい。これにより、操縦者は往復スイッチ部の簡単な操作だけで、マルチコプターを一定の高さに制御することができる。
【0020】
本発明は、操縦者が操作するコントローラから複数の回転翼によって無人飛行するマルチコプターに向けて、マルチコプターのヨーまたはロールを制御するための第1制御信号、マルチコプターのピッチを制御するための第2制御信号、およびマルチコプターの高さを制御するための第3制御信号を送信してマルチコプターを制御する方法であって、コントローラから第1制御信号が送信された場合、その際の第2制御信号に含まれる第2操作量に応じて第1制御信号に含まれる第1操作量に応じた制御としてヨーまたはロールのいずれかを選択する。
【0021】
このような構成によれば、操縦者がコントローラを操作してマルチコプターのターンを制御しようとした際、ピッチを制御する第2制御信号の操作量(第2操作量)によって第1制御信号の操作量(第1操作量)による操作対象がロールおよびヨーのいずれかに選択される。これにより、操縦者が行った1つの操作である第1操作量であっても、第2操作量に応じてロールおよびヨーのいずれかの操作を切り替えて制御することができる。
【0022】
本発明のマルチコプターの制御方法において、第2操作量に応じて第1領域、第2領域および第3領域を設けておき、第2操作量が第1領域であった場合、第1操作量に応じてロールを制御し、第2操作量が第2領域であった場合、第1操作量に応じてヨーを制御し、第2操作量が第3領域であった場合、第2操作量に応じてピッチを制御するとともに第1操作量に応じてヨーを制御するようにしてもよい。
【0023】
このような構成によれば、操縦者による第2操作量によって第1操作量に応じたロール制御、ヨー制御、ピッチ制御およびヨー制御の3つの制御を選択することができる。
【0024】
本発明のマルチコプターの制御方法において、第1操作量に応じてヨーを制御する場合、第1操作量から所定の関数によって演算された値によって制御するようにしてもよい。これにより、第1操作量から所定の関数によって演算された値によってヨーの制御量を決定することができる。
【0025】
本発明のマルチコプターの制御方法において、第1操作量に応じてヨーを制御する場合、第1操作量に応じてロールを制御するようにしてもよい。これにより、第1操作量によってヨー制御とロール制御との両方を同時に行うことができる。
【0026】
本発明のマルチコプターの制御方法において、第2操作量に応じてピッチを制御するとともに第1操作量に応じてヨーを制御する間、第1サンプリング時でのマルチコプターの基準進行方向の速度成分である第1速度と、第1サンプリング時から所定時間経過後の第2サンプリング時でのマルチコプターの基準進行方向の速度成分である第2速度との差に応じてロールの量の補正を行うようにしてもよい。
【0027】
このような構成によれば、マルチコプターのターンが開始されて進行方向の速度成分の変化が発生した場合、その速度成分の変化に応じてマルチコプターのロール量が補正される。これにより、ターンによる速度成分の変化を抑制することができる。
【0028】
本発明のマルチコプターの制御方法において、第3制御信号が所定のパターンであった場合、マルチコプターを予め定められた高さに制御するようにしてもよい。これにより、第3制御信号の所定のパターンによって、マルチコプターを一定の高さに制御することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、マルチコプターの操縦の複雑さを軽減しつつ、操るという醍醐味を得ることができるマルチコプター用コントローラおよびマルチコプターの制御方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0032】
(マルチコプター用コントローラの構成)
図1(a)および(b)は、実施形態に係るマルチコプター用コントローラを例示する模式図である。
図1(a)にはマルチコプター100の操縦の様子が示され、
図1(b)にはマルチコプター用コントローラ(以下、単に「コントローラ」と言う。)1が示される。
【0033】
図1(a)に示すように、マルチコプター100は、機体110に複数の回転翼120が設けられた無人飛行体である。例えば、4つの回転翼120を有するクワッドコプターは、機体110の前方左右に2つの回転翼120、および後方左右に2つの回転翼120の出力バランスによって、離着陸、ホバリング、前方および後方飛行、左右飛行、回転、ターンなどの各種の飛行姿勢をとることができる。
【0034】
このようなマルチコプター100は、操縦者200によるコントローラ1の操作によって制御される。すなわち、操縦者200がコントローラ1を操作すると、マルチコプター100に向けて無線通信で制御信号CSが送信される。マルチコプター100には受信部20が設けられており、この制御信号CSをマルチコプター100の受信部20で受信することにより、操縦者200の指示する飛行姿勢にマルチコプター100が制御される。
【0035】
図1(b)に示すように、本実施形態に係るコントローラ1は、本体筐体10と、ホイール部11、トリガー部12、往復スイッチ部13および送信部14を備える。このコントローラ1は、いわゆるホイール型コントローラである。このようなコントローラ1によって、操縦者200はマルチコプター100をラジオコントロール自動車のような感覚で操縦することができる。
【0036】
コントローラ1の本体筐体10には、操縦者200が片手で握ることで本体筐体10を支持するためのグリップ部10Gが設けられる。通常は左手でグリップ部10Gを握り、右手でホイール部11を操作する。なお、ホイール部11の配置を左右反転させることで、右手でグリップ部10Gを握り、左手でホイール部11を操作する仕様にすることもできる。
【0037】
ホイール部11は、例えば円筒型の回転スイッチであり、操縦者200によって左右に回転操作可能に設けられる。操縦者200はホイール部11の回転操作を選択することでマルチコプター100の回転系の制御を行うことができる。本実施形態においては、ホイール部11の回転操作に応じてマルチコプター100のヨーまたはロールのいずれかを制御できるよう構成される。
【0038】
ホイール部11には、操作していない状態(例えば、手を離した状態)でバネ作用によって中立位置に戻る機能が設けられていてもよい。ホイール部11の操作において、左回転の操作量をM11、右回転の操作量をM12と言うことにする。
【0039】
トリガー部12は指で進退操作可能なレバー型スイッチである。操縦者200は、グリップ部10Gを握る手の指(例えば、人差し指)でトリガー部12を進退操作することができる。トリガー部12には、操作していない状態(例えば、手を離した状態)でバネ作用によって中立位置に戻る機能が設けられていてもよい。トリガー部12の操作において、手前に引いた場合の操作量をM21、先に押した場合の操作量をM22と言うことにする。
【0040】
往復スイッチ部13は一方向および他方向に往復操作できるスイッチである。往復スイッチ部13は、例えばグリップ部10Gの上方に配置され、グリップ部10Gを握る手の指(例えば、親指)で操作できるようになっている。
【0041】
往復スイッチ部13は、中間位置を基準として操作するタイプであっても、所定の基準位置(例えば、最も上または下の位置)を基準として操作するタイプであってもよい。また、往復スイッチ部13には、往復スイッチ部13を操作していない状態(例えば、手を離した状態)でバネ作用により中立位置に戻る機能が設けられていてもよい。往復スイッチ部13の一方向への操作量をM31、他方向への操作量をM32と言うことにする。
【0042】
送信部14は、操縦者200の操作に応じた制御信号CSをマルチコプター100へ無線通信によって送信する部分である。制御信号CSは、例えばアンテナから放出される例えば電波によってマルチコプター100へ送信される。
【0043】
送信部14から送信される制御信号CSには、第1制御信号CS1、第2制御信号CS2および第3制御信号CS3が含まれる。第1制御信号CS1は、ホイール部11の操作に応じてマルチコプター100のヨーまたはロールのいずれかを制御するための信号である。第2制御信号CS2は、トリガー部12の操作に応じてマルチコプター100のピッチを制御するための信号である。第3制御信号CS3は、往復スイッチ部13の操作に応じてマルチコプター100の高さを制御するための信号である。
【0044】
このうち第1制御信号CS1は、ホイール部11の操作に応じてマルチコプター100のヨーを制御するためのヨー制御信号CSYおよびロールを制御するためのロール制御信号CSRのいずれかを含む。
【0045】
本実施形態に係るコントローラ1においては、このヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRのいずれかを、トリガー部12の操作量M21、M22に応じて選択して送信する。すなわち、送信部14は、操縦者200によってホイール部11が操作された場合、その際のトリガー部12の操作量M21、M22に応じてヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRのいずれかを送信する。
【0046】
一例として、送信部14は、ホイール部11が操作された際にトリガー部12が操作されていなかった場合(操作量M21、M22がゼロの場合)、ホイール部11の操作量M11、M12に応じてロール制御信号CSRを送信する。また、送信部14は、ホイール部11が操作された際にトリガー部12が操作されていた場合(操作量M21、M22がゼロでない場合)、ホイール部11の操作量M11、M12に応じてヨー制御信号CSYを送信する。これにより、トリガー部12を操作していない時はホイール部11によってマルチコプター100のロールを制御でき、トリガー部12を操作している時はホイール部11によってマルチコプター100のヨーを制御できることになる。
【0047】
他の一例として、トリガー部12の操作量(例えば、操作量M21)に応じて第1領域、第2領域および第3領域を設けておき、送信部14はトリガー部12の操作量が第1領域、第2領域および第3領域のどの領域かに応じて制御信号CSを送信する。
【0048】
例えば、トリガー部12の操作量M21が第1領域であった場合、送信部14はロール制御信号CSRを送信し、トリガー部12の操作量M21が第2領域であった場合、ヨー制御信号CSYを送信し、トリガー部12の操作量M21が第3領域であった場合、第2制御信号CS2およびヨー制御信号CSYを送信する。これにより、トリガー部12の操作量(例えば、引き量)によって異なる制御を行うことができる。
【0049】
ここで、送信部14からヨー制御信号CSYに含まれるヨーの制御量として、ホイール部11の回転角度から所定の関数によって演算された値を用いてもよい。この関数の設定によって、ホイール部11の回転角度とヨーの制御量との関係が決定される。
【0050】
また、送信部14は、第2制御信号CS2およびヨー制御信号CSYを送信する間、マルチコプター100のロールの制御量の補正を行うロール補正信号を送信して、ヨーおよびロールによって生じるマルチコプター100の速度変化を補償するようにしてもよい。この際、コントローラ1は、マルチコプター100から送信される速度に関する情報を受けて速度変化を補償する際にフィードバックをかける。ロール補正信号の詳細については後述する。
【0051】
また、往復スイッチ部13が中立位置を有する場合、送信部14は、往復スイッチ部13の所定方向への操作から中立位置への復帰までの時間が所定時間以内であった場合に、マルチコプター100を予め定められた高さに制御するための第3制御信号CS3を送信するようにしてもよい。この動作の詳細については後述する。
【0052】
このようなコントローラ1によって、操縦者200は、トリガー部12の引き具合等によってマルチコプター100の進行方向のスピードをコントロールし、ホイール部11の左右回転操作によってマルチコプター100の左右ターンをコントロールすることができる。すなわち、飛行するマルチコプター100であってもラジオコントロール自動車のような感覚で操縦を楽しむことができる。
【0053】
また、操縦者200は1つのホイール部11の操作であっても、トリガー部12の操作量に応じてヨーおよびロールのいずれかの操作を切り替えて制御することができる。つまり、操縦者200は、マルチコプター100の回転系の動作に関して、トリガー部12の操作に応じてホイール部11での操作対象の切り替え(ヨーとロールとの切り替え)を行うことができる。これにより、マルチコプター100の姿勢制御が簡素化され、操縦の複雑さが軽減される。
【0054】
(コントローラおよびマルチコプターのブロック構成)
図2は、コントローラの構成を例示するブロック図である。
図3は、マルチコプターの構成を例示するブロック図である。
図2に示すように、コントローラ1の本体筐体10の内部には、送信部14、中央演算部(CPU)15、可変抵抗部(VR)111、121および131、アナログデジタル変換部(A/D)112、122および132が設けられる。なお、コントローラ1には図示しないバッテリ、電源スイッチ、調整トリガー、インジケータ、表示パネルなども設けられる。
【0055】
ホイール部11を回転操作すると、この回転操作による操作量M11、M12に応じて可変抵抗部111の抵抗値が変化する。この抵抗値はアナログデジタル変換部112によってデジタル信号に変換され、CPU15に送られる。
【0056】
トリガー部12を進退操作すると、この進退操作による操作量M21、M22に応じて可変抵抗部121の抵抗値が変化する。この抵抗値はアナログデジタル変換部122によってデジタル信号に変換され、CPU15に送られる。
【0057】
往復スイッチ部13を往復操作すると、この往復操作による操作量M31、M32に応じて可変抵抗部131の抵抗値が変化する。この抵抗値はアナログデジタル変換部132によってデジタル信号に変換され、CPU15に送られる。
【0058】
CPU15は所定のプログラムに沿って各部を制御するとともに信号処理を行う。例えば、CPU15は、アナログデジタル変換部112、122および132から送られたデジタル信号を結合して制御信号CSを生成する。
【0059】
送信部14は、CPU15で処理された制御信号CSを変調して、電波によってマルチコプター100へ送信する。送信部14は、例えば2.4GHz帯の電波、近距離無線通信規格、赤外線を利用して、変調した制御信号CSを送信する。
【0060】
図3に示すように、マルチコプター100の機体110の内部には、受信部20、中央演算部(CPU)25、センサ26、27および28、モータドライバ(M/D)231、232、233および234が設けられる。なお、機体110には図示しないバッテリ、電源スイッチ、インジケータなども設けられる。機体110には図示しないカメラが搭載されていてもよい。
【0061】
受信部20は、コントローラ1の送信部14から送信された電波を受信して制御信号CSへ復調する。復調された制御信号CSはCPU25に送られる。センサ26は、例えば6軸のジャイロセンサである。センサ27は、例えば気圧センサである。センサ28は、例えば超音波センサである。センサ26、27および28の検出信号はCPU25に送られ、マルチコプター100の姿勢制御(例えば、自律制御)の演算に用いられる。なお、センサ26、27および28は上記に限定されない。
【0062】
CPU25は、受信部20から送られた制御信号CS、センサ26、27および28から送られた検出信号を用いて各モータM1、M2、M3およびM4の出力を制御するための値(モータ制御信号)を演算する。
【0063】
CPU25で演算されたモータ制御信号はモータドライバ(M/D)231、232、233および234に送られる。各モータドライバ(M/D)231、232、233および234は、CPU25から送られたモータ制御信号に基づきそれぞれに接続された各モータM1、M2、M3およびM4へ与える信号(電流、電圧および周波数の少なくともいずれか)を出力する。
【0064】
各モータM1、M2、M3およびM4の出力が調整されることで、各モータM1、M2、M3およびM4によって回転する回転翼120の出力のバランスが調整され、マルチコプター100の飛行姿勢が制御される。また、マルチコプター100は、各センサ26、27および28の検出信号に基づいて姿勢の自律制御が行われる。
【0065】
先に説明したように、本実施形態に係るコントローラ1では、トリガー部12の操作量M21、M22に応じて第1制御信号CS1のヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRのいずれかが送信部14より送信される。このヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRの選択をCPU15のプログラム処理によって行い、選択されたヨー制御信号CSYまたはロール制御信号CSRを他の信号と結合して制御信号CSとする。送信部14は制御信号CSの第1制御信号CS1に含まれる信号として、トリガー部12の操作量M21、M22に応じて選択されたヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRのいずれかを送信することになる。
【0066】
この場合、CPU15は、ホイール部11の操作量M11、M12をヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRのどちらを対応付けるのかを示す識別信号を制御信号CS内に含める処理を行う。これにより、同じホイール部11の操作量M11、M12であっても、制御対象としてヨーを制御するのか、ロールを制御するのかの判別を行うことができる。
【0067】
また、制御信号CSには上記の識別信号を含めず、ホイール部11の操作量M11、M12に応じた第1制御信号CS1を制御信号CSに含めてマルチコプター100に送信し、マルチコプター100のCPU25で実行されるプログラムによって、ヨーを制御するか、ロールを制御するかを判別してもよい。
【0068】
この場合、コントローラ1の送信部14は、ヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRを区別せずにホイール部11の操作量に応じた第1制御信号CS1を送信する機能を有していればよい。
【0069】
そして、マルチコプター100のCPU25は、受信した制御信号CSに含まれる第2制御信号CS2に含まれるトリガー部12の操作量M21、M22に応じて、第1制御信号CS1に含まれるホイール部11の操作量M11、M12に応じた信号によってヨーを制御するか、ロールを制御するかの判別を行う。
【0070】
(マルチコプターの制御方法)
次に、本実施形態に係るマルチコプター100の制御方法について説明する。
図4(a)〜(d)は、マルチコプターの姿勢を例示する模式図である。
本実施形態に係るマルチコプター100の制御方法を説明するにあたり、
図4(a)〜(d)に示す模式図によってマルチコプター100の姿勢を表すものとする。すなわち、
図4(a)に示すように、マルチコプター100の機体110を前方が鋭角となった五角形で表し、複数の回転翼120を二点鎖線で表す。また、マルチコプター100の前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とする。したがって、マルチコプター100のピッチはY軸回りの回転となり、ヨーはZ軸回りの回転となり、ロールはX軸回りの回転となる。
【0071】
マルチコプター100をZ軸に沿って上方から見た様子を表す際には
図4(b)に示す模式図で表すものとする。機体110の前方を示すために機体110の前方部110aを黒色で示す。マルチコプター100をX軸に沿って後方から見た様子を表す際には
図4(c)に示す模式図で表すものとする。機体110をY軸に沿って側方から見た様子を表す際には
図4(d)に示す模式図で表すものとする。
【0072】
(上昇下降制御)
図5(a)および(b)は、マルチコプターの上昇および下降の制御を例示する模式図である。
マルチコプター100の上昇および下降を行うには、
図5(a)に示すコントローラ1の往復スイッチ部13を操作して、第3制御信号CS3を送信部14からマルチコプター100に送る。
【0073】
例えば、往復スイッチ部13を上方に押し上げると、
図5(b)に示すように、マルチコプター100は上昇する。一方、往復スイッチ部13を下方に押し下げると、
図5(b)に示すように、マルチコプター100は下降する。
【0074】
マルチコプター100の上昇の量は、往復スイッチ部13を押し上げた操作量M31に応じて決定され、下降の量は、往復スイッチ部13を押し下げた操作量M32に応じて決定される。
【0075】
往復スイッチ部13が中立位置を有する場合、往復スイッチ部13を上方へ押し上げている間、マルチコプター100の上昇を続け、下方へ押し下げている間、マルチコプター100の下降を続けるように制御してもよい。往復スイッチ部13が中立位置に復帰することで上昇および下降の停止が行われる。
【0076】
また、往復スイッチ部13を中立位置から一方向へ操作し、中立位置へ復帰するまでの時間が所定時間以内になる操作(以下、「クリック操作」と言う。)によって制御してもよい。
【0077】
例えば、往復スイッチ部13を上方に1回クリック操作する毎に所定の高さ上昇させたり、下方に1回クリック操作する毎に所定の高さ下降させたりしてもよい。さらに、マルチコプター100が着陸している状態で、往復スイッチ部13を例えば上方に1回クリック操作すると、自動的に所定高さまで離陸してホバリングさせるようにしてもよい。また、マルチコプター100が飛行やホバリングしている状態で、往復スイッチ部13を例えば下方に1回クリック操作すると、自動的に着陸させるようにしてもよい。
【0078】
(前進後退制御)
図6(a)〜(c)は、マルチコプターの前進および後退の制御を例示する模式図である。
マルチコプター100の前進および後退を行うには、
図6(a)に示すコントローラ1のトリガー部12を操作して、第2制御信号CS2を送信部14からマルチコプター100に送る。
【0079】
例えば、トリガー部12を手前に引くと、
図6(b)に示すように、マルチコプター100は前方部110aを下げるようにピッチし、前進する。一方、トリガー部12を押すと、
図6(c)に示すように、マルチコプター100は前方部110aが上がるようにピッチし、後退する。
【0080】
マルチコプター100の前進の量(ピッチ角度)は、トリガー部12を引いた操作量M21に応じて決定され、後退の量(ピッチ角度)は、トリガー部12を押した操作量M22に応じて決定される。操作量M21およびM22が多いほどピッチ角度が大きくなり、マルチコプター100の前進および後退の速度は速くなる。
【0081】
(左右制御)
図7(a)および(b)は、マルチコプターの左右制御を例示する模式図である。
マルチコプター100の左右制御を行うには、
図7(a)に示すコントローラ1のホイール部11を操作して、第1制御信号CS1(ロール制御信号CSR)を送信部14からマルチコプター100に送る。
【0082】
例えば、マルチコプター100がホバリングしている状態で、ホイール部11を左右いずれかに回転させると、
図7(b)に示すように、マルチコプター100は左右いずれかにロールして左右方向に移動する。すなわち、ホイール部11を左に回転させるとマルチコプター100は左下がりにロールし、左方向へ進む。一方、ホイール部11を右に回転させるとマルチコプター100は右下がりにロールし、右方向へ進む。
【0083】
マルチコプター100の左右へ進む量(ロール角度)は、ホイール部11を回転した操作量M11、M12に応じて決定される。操作量M11、M12が多いほどロール角度が大きくなり、マルチコプター100の左右方向への移動速度は速くなる。
【0084】
(ターン制御)
図8(a)〜(c)は、マルチコプターのターン制御を例示する模式図である。
マルチコプター100のターン制御を行うには、
図8(a)に示すコントローラ1のホイール部11およびトリガー部12の両方を操作して、第1制御信号CS1(ヨー制御信号CSY)および第2制御信号CS2を送信部14からマルチコプター100に送る。
【0085】
例えば、マルチコプター100がホバリングしている状態でトリガー部12を手前に引くと、
図8(b)に示すように、マルチコプター100は前方部110aを下げるようにピッチし、前進する。そして、前進飛行している状態でホイール部11を左右いずれかに回転すると、
図8(c)に示すように、マルチコプター100は左右いずれかにヨー回転する。
【0086】
つまり、ホイール部11を回転させる際、トリガー部12が操作されていない場合には、
図7に示すようにホイール部11の回転に応じてロールを発生させるが、トリガー部12が操作されている場合には、ホイール部11の回転に応じてヨーを発生させるよう制御の切り替えを行う。
【0087】
なお、マルチコプター100のCPU25は、マルチコプター100の飛行中にヨーを発生させる場合、このヨーに応じてロールを自動的に発生させるプログラム処理を行っている。これにより、マルチコプター100が前進飛行している間はホイール部11の操作によってヨーとともにロールが発生し、これによってマルチコプター100はバンクしながら弧を描くようにターンすることになる。
【0088】
マルチコプター100のヨーの量(ヨー角度)は、ホイール部11を回転した操作量M11、M12に応じて決定される。操作量M11、M12が多いほどヨー角度が大きくなり、マルチコプター100は急旋回することになる。一方、操作量M11、M12が少ないほどヨー角度が小さくなり、マルチコプター100はゆっくりと旋回することになる。
【0089】
なお、
図8では、マルチコプター100を前進飛行させながらターンする例を示したが、トリガー部12を先に押しながらホイール部11を回転させることで、マルチコプター100を後退飛行させながらターンすることも可能である。
【0090】
図9(a)〜(d)は、マルチコプターのターンについて例示する模式図である。
図9(a)〜(d)には、マルチコプター100が前方に飛行している状態から左方向へターンする際の様子が表される。
先ず、
図9(a)に示すように、コントローラ1のトリガー部12を引くことで操作量M21に応じたピッチが発生し、マルチコプター100は前方へ飛行していく。
【0091】
次に、コントローラ1のトリガー部12を引いた状態(前方飛行の状態)で、
図9(b)に示すように、ホイール部11を左に回転させる。この際、トリガー部12が操作された状態であるため、ホイール部11の操作量M11に応じたヨーが発生し、マルチコプター100はZ軸回りに左回転する。また、この際、マルチコプター100のCPU25によるプログラム処理で、発生したヨーの角度に応じてロールの角度が演算され、マルチコプター100にはロールも発生する。これによって、マルチコプター100は左へとターンを開始する。
【0092】
次に、コントローラ1のホイール部11を回転させる操作量M11を調整する。例えば、
図9(c)に示すように、ホイール部11の操作量M11を増加させると、マルチコプター100のヨーの角度およびロールの角度が増加して、旋回の半径が小さくなる。
【0093】
そして、所望のターンを完了した際にはホイール部11の回転を戻す。これにより、
図9(d)に示すようにマルチコプター100のターンが完了する。
【0094】
(ターンの制御)
次に、ターンの制御について説明する。
図10(a)〜(c)は、ターンの制御を説明する模式図である。
図10(a)に示すように、マルチコプター100のターンは、Y軸回りの回転(ピッチ角度θp)、Z軸回りの回転(ヨー角度θy)、X軸回りの回転(ロール角度θr)のそれぞれの制御によって実行される。
【0095】
図10(b)に示すように、コントローラ1のトリガー部12を引くことで、マルチコプター100には操作量M21に応じたピッチ角度θpが発生する。さらに、
図10(c)に示すように、トリガー部12を引いた状態で、ホイール部11を回転させることで、マルチコプター100には操作量M11に応じたヨー角度θyが発生する。ここで、ホイール部11の回転角はθwであり、ヨーの角速度はVzである。
【0096】
図11(a)および(b)は、マルチコプターのヨーの角速度の決定について例示する図である。
図11(a)には、ホイール部11の回転角θwとヨーの角速度のVzとの関係を示す関数f1が表される。この関数f1を用いることで、マルチコプター100のヨーの角速度Vzは、ホイール部11の回転角θwに対応して設定される。なお、
図11(a)に示す関数f1は、ホイール部11の回転角θwの1次関数になっているが、2次関数など他の関数であってもよい。関数f1の特性によって、ターン特性を変えることができる。
【0097】
図11(b)には、ホイール部11の回転角θwと、マルチコプター100の飛行速度Vxと、ヨーの角速度のVzとの関係を示す関数f2が表される。この関数f2を用いることで、マルチコプター100のヨーの角速度Vzは、ホイール部11の回転角θwおよびマルチコプター100の飛行速度Vxに対応して設定される。関数f2の特性によって、ターン特性を変えることができる。
【0098】
(ヨーおよびロールの制御)
次に、ヨーおよびロールの制御について説明する。
図12(a)〜(c)は、マルチコプターのヨーおよびロールの制御について例示する図である。
マルチコプター100のターンを行う場合、
図12(a)に示すようなヨーの発生(ヨー角度θy)と、
図12(b)に示すようなロールの発生(ロール角度θr)とを連動させる。
図12(c)には、ヨーとロールとの関係を示す関数f3が表される。関数f3を用いることで、マルチコプター100のロール角度θrは、ヨー角度θyに対応して設定される。この関数f3では、ヨー角度θyとロール角度θrとが比例関係になっている。
【0099】
例えば、
図9(b)に示すターンの開始においては、マルチコプター100のヨー角度θyが小さいため、関数f3に基づき設定されるロール角度θrも小さくなっている。
図9(c)に示すターンの途中においては、旋回半径が小さいことからヨー角度θyが大きくなる。このため、関数f3に基づき設定されるロール角度θrも大きくなる。
【0100】
このようなヨーおよびロール制御によって、操縦者200はマルチコプター100の飛行中にホイール部11を左右に回転させるだけで、所望のターンを行うことができるようになる。
【0101】
(ロール補正制御)
次に、ターン最中のロール補正制御について説明する。
マルチコプター100のターンが始まると、ヨーとともにロールが発生する。ターン最中のロール角度θrは、先に説明したように、例えばヨー角度θyの関数f3によって決定される。この際、機体110が傾くことで所定方向の速度成分に速度差が発生する。そこで、この速度差に応じてロール角度θrの補正を行うようにしてもよい。
【0102】
ターン最中のロールの補正を行うためのロール補正信号は、コントローラ1の送信部14からマルチコプター100に向けて送信してもよいし、マルチコプター100のCPU25で演算してもよい。コントローラ1の送信部14からロール補正信号を送信する場合には、マルチコプター100で検出した速度に関する情報をコントローラ1へ送信する機能と、この情報をコントローラ1で受信する機能を設けておく。そして、マルチコプター100から送信された速度に関する情報をコントローラ1で受けて、コントローラ1でフィードバックをかけて送信部14からロール補正信号を送信すればよい。
【0103】
図13(a)および(b)は、ロール補正を例示する図である。
図13(a)に示すように、マルチコプター100がターンしている間、所定のサンプリング時間毎にマルチコプター100の速度成分を検出する。ここで、ターン中の時刻tでサンプリングした機体110の進行方向(ターン接線方向)D1の速度を第1速度V1とする。
【0104】
ターン中の次の時刻t+1でサンプリングした機体110の速度のうち、先の時刻tでの進行方向D1の速度成分を第2速度V2とする。マルチコプター100のターンが進むことで、第1速度V1に対して第2速度V2は遅くなる。第1速度V1−第2速度V2を減速度αとする。減速度αはサンプリング時刻ごとに計算できるので、時刻tでの減速度をαt、時刻t+1での減速度をαt+1とする。時刻tと時刻t+1との減速度の変化量をβtとすると、βt=(αt+1)−(αt)となる。
【0105】
図13(b)には、減速度の変化量βと、補正後のロール角度θr2との関係を示す関数f4が表される。関数f4は、例えばθr2=−Aβt+θrである。なお、Aは所定の係数である。つまり、減速度の変化量βがゼロの場合(第1速度V1と第2速度V2との速度差がない場合)、ロール角度はθrのままである。一方、変化量βが大きくなるほどロール角度は小さくなるよう補正される。これにより、ターンによって急激に速度変化が発生することを抑制することができる。
【0106】
例えば、ターンの開始とともにホイール部11を急激に回転させて急旋回を試みようとした場合、マルチコプター100は失速してしまう可能性がある。そこで、上記のようなロール補正制御を行うことで、急激な速度変化が抑制され、失速を回避することが可能になる。
【0107】
上記に示した本実施形態に係るマルチコプター100の制御方法では、ターンを行うときに、操縦者200のターン操作から決められた半径の円上を辿るような自動的な制御ではなく、操縦者200のコントローラ1の操作量からピッチおよびヨーの量(角度)をマルチコプター100に送るだけである。
【0108】
マルチコプター100のCPU25は、コントローラ1から指示された制御信号CSに基づきピッチ角度θpおよびヨー角度θyを決定し、ヨー角度θyからロール角度θrを決定して各回転翼120の出力を制御する。
【0109】
したがって、様々な状況(気圧、風速、気流の乱れ等の外乱、モータ性能の個体差、バッテリ状態など)によっては同じ操作量であっても同じ弧でターンが実行されるとは限らない。したがって、操縦者200はマルチコプター100の飛行状態を常に見ながらホイール部11およびトリガー部12の操作量をコントロールして所望のターンを描くように操縦する必要がある。これにより、操縦者200は自動的な制御では得られない操縦の醍醐味を味わうことができる。
【0110】
(トリガー操作量と制御切り替え)
次に、トリガー部12の操作量と制御の切り替えの例について説明する。
図14(a)および(b)は、他の制御切り替えの例を説明する図である。
この制御切り替えの例では、
図14(a)に示すように、予めトリガー部12の操作量に応じて第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3を設定しておく。第1領域R1は、トリガー部12の中立位置から僅かに引いた領域である。第2領域R2は、トリガー部12を第1領域R1よりも大きく引いた領域である。第3領域R3は、トリガー部12を第2領域R2よりも大きく引いた領域である。
【0111】
図14(b)には、各領域に対応した制御信号の有効および無効の状態が示される。
図14(b)において「○」印は有効、「×」印は無効を意味する。「有効」とは、制御するための信号が送信部14から送信される、または制御するための信号がCPU25で演算されることを意味し、「無効」とは、制御するための信号が送信部14から送信されない、または制御するための信号がCPU25で演算されないことを意味する。
【0112】
例えば、トリガー部12の操作量が第1領域R1の場合、ピッチを制御するための第2制御信号CS2およびヨーを制御するためのヨー制御信号CSYは無効であり、ロールを制御するためのロール制御信号CSRのみ有効となる。すなわち、トリガー部12が操作されていないか、または僅かな引き量の場合には、ピッチおよびヨーは発生せず、ロールのみ制御可能になる。したがって、ホイール部11を回転操作することでマルチコプター100をロールさせて左右方向に移動させることができる。つまり、トリガー部12の操作量が第1領域R1の場合、ホイール部11の回転操作はロール制御に利用される。
【0113】
次に、トリガー部12の操作量が第2領域R2の場合、ヨー制御信号CSYは有効であり、ロール制御信号CSRは無効となる。ピッチを制御するための第2制御信号CS2は、仕様によって有効および無効が決定される。
【0114】
例えば、第2制御信号CS2が無効になる仕様では、トリガー部12を引いてもピッチは発生せず、ヨーのみ制御可能になる。したがって、ホイール部11を回転操作することでマルチコプター100にヨーを発生させて、Z軸回りに回転させることができる。つまり、トリガー部12の操作量が第2領域R2であって第2制御信号CS2が無効の場合、ホイール部11の回転操作はヨー制御に利用される。
【0115】
一方、第2制御信号CS2が有効になる仕様では、トリガー部12を引いた量に応じてピッチが発生する。したがって、トリガー部12の引いた量に応じて僅かにピッチが発生し、マルチコプター100は前方に移動するとともに、ホイール部11の回転操作に応じてヨーが発生して、Z軸回りに回転することになる。つまり、トリガー部12の操作量が第2領域R2であって第2制御信号CS2が有効の場合、マルチコプター100は前方にゆっくりと移動しながらホイール部11の回転操作に応じてZ軸回りに回転することになる。
【0116】
次に、トリガー部12の操作量が第3領域R3の場合、ピッチを制御するための第2制御信号CS2、ヨー制御信号CSYおよびロール制御信号CSRが全て有効となる。すなわち、トリガー部12の操作量に応じてピッチが発生し、ホイール部11の操作量に応じてヨーおよびロールが発生する。したがって、トリガー部12の操作量が第3領域R3の場合、マルチコプター100はトリガー部12の操作量に応じて前方に移動しつつ、ホイール部11の回転操作に応じてヨーおよびロールが発生してバンクしながらターンしていくことになる。
【0117】
このように、トリガー部12の操作量が第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3のいずれにあるかによって制御信号の有効および無効の状態を設定することで、1つのホイール部11での回転操作による制御対象を切り替えることが可能になる。したがって、操縦者200による複雑な操縦操作が軽減される。
【0118】
なお、上記の例ではトリガー部12を中立位置から手前に引いた領域を第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3に分けたが、中立位置から先に押した領域を区分けしてもよい。また、手前および先にかかわらず、トリガー部12の可動範囲について領域を区分けしてもよい。
【0119】
以上説明したように、実施形態に係るコントローラ1およびマルチコプター100の制御方法によれば、マルチコプター100の操縦の複雑さを軽減しつつ、操るという醍醐味を得ることができる。
【0120】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、本実施形態では4つの回転翼120を有するクワッドコプターを例として説明したが、4つ以外の回転翼120を有するマルチコプター100であっても適用可能である。また、ターン制御において各種の関数f1〜f4を使用する場合、関数f1〜f4のそれぞれの特性を複数セット用意しておき、操縦者200の好みによって切り替えられるようにしてもよい。これにより、マルチコプター100のターン特性のセッティングを行うことができる。また、前述の各実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【解決手段】本発明は、複数の回転翼によって無人飛行するマルチコプターを操縦するためのコントローラであって、本体筐体と、本体筐体に設けられ、回転操作されるホイール部と、本体筐体に設けられ、指で進退操作されるトリガー部と、本体筐体に設けられた往復スイッチ部と、本体筐体に設けられた送信部と、を備える。送信部は、ホイール部の操作に応じてマルチコプターのヨーまたはロールのいずれかを制御するための第1制御信号、トリガー部の操作に応じてマルチコプターのピッチを制御するための第2制御信号、および往復スイッチ部の操作に応じてマルチコプターの高さを制御するための第3制御信号を送信する。