特許第5997342号(P5997342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5997342
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】マルチコプター玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 27/133 20060101AFI20160915BHJP
   A63H 30/04 20060101ALI20160915BHJP
   A63H 29/22 20060101ALI20160915BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20160915BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20160915BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   A63H27/133 D
   A63H30/04 A
   A63H29/22 C
   B64C13/20 Z
   B64C27/08
   B64C39/02
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-191641(P2015-191641)
(22)【出願日】2015年9月29日
【審査請求日】2016年2月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390024822
【氏名又は名称】京商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 博義
【審査官】 櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−082584(JP,A)
【文献】 米国特許第9126681(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0012154(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0131507(US,A1)
【文献】 川崎 宏治(外3名),バイコプターを連接することにより任意のチルト姿勢を保持し移動制御可能な飛行ロボット,日本ロボット学会誌,日本,一般社団法人日本ロボット学会,2015年 5月15日,第33巻第4号,P.77-83
【文献】 今村 彰隆,推力偏向機構を用いるマルチロータヘリコプタの姿勢制御に関する研究,[online],徳島大学,2015年 5月26日,P.51-74,徳島大学機関リポジトリ、[2016年4月11日検索]、発行日等についてはURL:http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/repository/detail/10938720150625145330を参照,URL,www.lib.tokushima-u.ac.jp/repository/file/109387/20150625145330/LID201505261008.pdf
【文献】 マルチコプター進化論,ラジコン技術,株式会社電波実験社,2014年 4月10日,通巻743号,P.16-39,特にP.26-27を参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H1/00−37/00
B64B1/00−1/70
B64C1/00−99/00
B64D1/00−47/08
B64F1/00−5/00
B64G1/00−99/00
G05D1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行するマルチコプター玩具であって、
機体と、
前記機体に取り付けられた複数の回転翼ユニットと、
前記機体に取り付けられるジョイントフレームと、
前記ジョイントフレームを前記機体に所定の角度で固定するクランプと、
を備え、
前記複数の回転翼ユニットのそれぞれは、モータと、前記モータによって回転する回転翼と、を有し、
前記複数の回転翼ユニットのうちの2つの回転翼ユニットは前記ジョイントフレームの両端部に接続され、
前記複数の回転翼ユニットの少なくとも1つは、前記機体に対して角度調整可能に取り付けられたことを特徴とするマルチコプター玩具。
【請求項2】
前記ジョイントフレームは、前記機体に対して所定のピッチで角度調整可能に取り付けられる、請求項記載のマルチコプター玩具。
【請求項3】
コントローラから送られる制御信号に基づき駆動するサーボ機構をさらに備え、
前記回転翼ユニットは前記サーボ機構によって回転可能に設けられた、請求項1または2に記載のマルチコプター玩具。
【請求項4】
無人飛行するマルチコプター玩具であって、
機体と、
前記機体に取り付けられた複数の回転翼ユニットと、
前記機体に設けられ、姿勢の制御に用いられるセンサを有する制御基板と、
を備え、
前記複数の回転翼ユニットのそれぞれは、モータと、前記モータによって回転する回転翼と、を有し、
前記複数の回転翼ユニットの少なくとも1つは、前記機体に対して角度調整可能に取り付けられ、
前記制御基板は、前記機体に対して角度調整可能に取り付けられたことを特徴とするマルチコプター玩具。
【請求項5】
前記機体に設けられ、姿勢の制御に用いられるセンサを有する制御基板をさらに備え、
前記制御基板は、前記機体の水平方向に対する角度の基準を設定する機能を有する、請求項1〜のいずれか1つに記載のマルチコプター玩具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の回転翼によって無人飛行するマルチコプター玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の回転翼を用いて無人飛行するマルチコプター玩具は、それぞれの回転翼の出力(例えば、回転数)を制御することによって様々な姿勢によって飛行を行うことができる。例えば、4つの回転翼を有するクワッドコプターにおいては、機体を中心として前方左右の2つの回転翼および後方左右の2つの回転翼のそれぞれの出力バランスによって姿勢が制御される。
【0003】
このようなマルチコプター玩具が飛行する場合、前方の回転翼に対して後方の回転翼の出力を高くすることで機体を前傾させて、機体とともに複数の回転翼の軸を前方に傾けて進行方向への推進力を得ている。
【0004】
特許文献1には、一体型バッテリ、負荷支持ボディ、2つのアーム、2つのローラを持つ各アーム、制御モジュール、ペイロードモジュール、スキッドを含む無人機が開示される。この無人機では、取り付けられるアームのタイプによって無人航空機、無人地上車両、無人(水)上艇、無人潜水艇として動作するよう再構成可能になっている。
【0005】
また、この無人機においては、各プロペラが水平からわずかに下方にオフセットしたピッチ角度で、先端部に対してわずかに傾けられている。これにより、ホバリングの際に制御モジュールの後端部がペイロードの後方および下方の視界に入り込むことを防止している。さらに、巡航飛行での前進飛行の際、ボディが水平状態で飛行するため、風の抵抗を最小に抑えながら前進飛行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2013−531573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のマルチコプター玩具においては、ユーザ(操縦者)が飛行特性を簡単に調整することができる構成にはなっていない。このため、操縦者の好みに合わせて飛行特性をセッティングしたり、動力性能に応じた調整を行ったりすることができず、趣向性に欠けるという問題がある。
【0008】
本発明は、飛行特性を簡単に調整することができ、趣向性を高めることができるマルチコプター玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、無人飛行するマルチコプター玩具であって、機体と、機体に取り付けられた複数の回転翼ユニットと、を備え、複数の回転翼ユニットのそれぞれは、モータと、モータによって回転する回転翼と、を有し、複数の回転翼ユニットの少なくとも1つは、機体に対して角度調整可能に取り付けられたことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、複数の回転翼ユニットの少なくとも1つを機体に対して角度調整することができ、マルチコプター玩具の飛行特性を操縦者の好みに合わせてセッティングしたり、動力性能に応じて調整したりすることができる。
【0011】
本発明のマルチコプター玩具において、機体に取り付けられるジョイントフレームと、ジョイントフレームを機体に所定の角度で固定するクランプと、をさらに備え、複数の回転翼ユニットのうちの2つの回転翼ユニットはジョイントフレームの両端部に接続されていてもよい。これにより、ジョイントフレームを回転させることで2つの回転翼ユニットの角度調整を同時に行うことができる。
【0012】
本発明のマルチコプター玩具において、ジョイントフレームは、機体に対して所定のピッチで角度調整可能に取り付けられていてもよい。これにより、ジョイントフレームを介して2つの回転翼ユニットを機体に対して所定のピッチで正確な角度で調整することができる。
【0013】
本発明のマルチコプター玩具において、コントローラから送られる制御信号に基づき駆動するサーボ機構をさらに備え、回転翼ユニットはサーボ機構によって回転可能に設けられていてもよい。これにより、操縦者はコントローラから送る制御信号によってサーボ機構を介して回転翼ユニットの角度調整を遠隔で行うことができる。
【0014】
本発明のマルチコプター玩具において、機体に設けられ、姿勢の制御に用いられるセンサを有する制御基板をさらに備え、制御基板は、機体に対して角度調整可能に取り付けられていてもよい。これにより、機体に対する回転翼ユニットの角度に対応して制御基板の角度を調節することができ、姿勢制御の基準位置を回転翼ユニットの角度に合わせることができる。
【0015】
本発明のマルチコプター玩具において、機体に設けられ、姿勢の制御に用いられるセンサを有する制御基板をさらに備え、制御基板は、機体の水平方向に対する角度の基準を設定する機能を有していてもよい。これにより、制御基板の角度を変更せずに姿勢制御の基準位置を回転翼ユニットの角度に合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マルチコプター玩具の飛行特性を簡単に調整することができ、操縦者にとって趣向性の高いマルチコプター玩具を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るマルチコプター玩具を例示する斜視図である。
図2】(a)および(b)は、クランプ部分の拡大斜視図である。
図3】(a)および(b)は、回転翼ユニットの回転角度調整による飛行姿勢を例示する模式図である。
図4】(a)および(b)は、制御基板の角度調整について例示する模式図である。
図5】基準設定ボタンを例示する模式図である。
図6】回転翼ユニットの取り付け幅の調整について例示する模式図である。
図7】(a)〜(c)は、回転翼ユニットの傾斜角度の調整について例示する模式図である。
図8】(a)および(b)は、マルチコプター玩具の重心バランス調整について例示する模式図である。
図9】サーボ機構による回転翼ユニットの角度調整の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0019】
(マルチコプター玩具の構成)
図1は、実施形態に係るマルチコプター玩具を例示する斜視図である。
本実施形態に係るマルチコプター玩具1は、操縦者の遠隔操作によって無人飛行する玩具である。マルチコプター玩具1は、機体10と、機体10に取り付けられた複数の回転翼ユニット20とを備える。複数の回転翼ユニット20のそれぞれは、モータ21と、モータ21によって回転する回転翼23とを有する。
【0020】
図1に示すマルチコプター玩具1は、4つの回転翼ユニット20を備えた、いわゆるクワッドコプター型である。回転翼ユニット20は、前方左右および後方左右のそれぞれに設けられる。各回転翼ユニット20に設けられた回転翼23の出力のバランスによって、前方、後方、上昇、下降、左右回転および左右ターンといった飛行姿勢をとることができる。
【0021】
回転翼ユニット20におけるモータ21と回転翼23との間にはギア22が設けられており、ギア22を介してモータ21の回転を回転翼23に伝達している。なお、回転翼23は、ギア22を介さずに直接モータ21によって回転するよう構成されていてもよい。回転翼ユニット20にはハブ25が設けられる。回転翼ユニット20は、ハブ25を介してジョイントフレーム30に接続される。
【0022】
ジョイントフレーム30は、円筒型のフレームであり、機体10の左右方向に渡るよう配置される。ジョイントフレーム30の両端部には、ハブ25を介して回転翼ユニット20が取り付けられる。ハブ25とジョイントフレーム30とはネジによって固定されていても、嵌合によって固定されていてもよい。
【0023】
ジョイントフレーム30は、クランプ40によって機体10に固定される。このクランプ40による固定を緩めると、ジョイントフレーム30を軸中心に回転させることができ、所望の角度に設定した後はクランプ40を締めることでジョイントフレーム30の回転角度を固定することができる。
【0024】
ジョイントフレーム30を軸中心に回転させることで、ジョイントフレーム30とともに両端部の2つの回転翼ユニット20が回転し、回転翼ユニット20の機体10に対する角度が調整されることになる。
【0025】
本実施形態では、機体10の前後にジョイントフレーム30が設けられ、それぞれクランプ40によって固定される。前側のジョイントフレーム30の両端部には前側2つの回転翼ユニット20が取り付けられ、後側のジョイントフレーム30の両端部には後側2つの回転翼ユニット20が取り付けられる。
【0026】
各ジョイントフレーム30の回転は独立していても、連動していてもよい。各ジョイントフレーム30が独立して回転するようになっていれば、前後の回転翼ユニット20のそれぞれは、機体10に対して別々な角度に調整可能である。また、各ジョイントフレーム30が連動して回転するようになっていれば、前後の一方の回転翼ユニット20の角度に合わせて他方の回転翼ユニット20の角度も調整される。
【0027】
また、図1に示す例では1つのジョイントフレーム30に2つの回転翼ユニット20が設けられているが、同軸上に2つのジョイントフレーム30を設け、各ジョイントフレーム30の端部に回転翼ユニット20を取り付ける構成であってもよい。例えば、図1に示す1つのジョイントフレーム30を機体10に固定する2つのクランプ40の間でジョイントフレーム30を分割した構成でもよい。これにより、各ジョイントフレーム30ごとに回転翼ユニット20を独立して回転させることができる。
【0028】
機体10には制御基板50が設けられる。制御基板50には、操縦者のコントローラから送信される制御信号を受信する受信部、制御信号に基づき各モータ21の出力を演算する演算部、機体10の姿勢を検出するセンサ(例えば、ジャイロセンサ、気圧センサ、超音波センサ)が設けられる。制御基板50は機体10に対して角度調整可能に取り付けられていてもよい。
【0029】
機体10の下にはバッテリBTが取り付けられる。また、機体10の下側には着地の際の脚となるスキッド15が設けられていてもよい。
【0030】
図2(a)および(b)は、クランプ部分の拡大斜視図である。
図2(a)に示すように、クランプ40は上側クランプ部41と、下側クランプ部42とを有する。上側クランプ部41および下側クランプ部42のそれぞれには、ジョイントフレーム30を挟むための凹部が設けられる。
【0031】
下側クランプ部42は機体10に固定される。上側クランプ部41は下側クランプ部42に例えばネジ45によって固定される。上側クランプ部41を外した状態で、下側クランプ部42の凹部にジョイントフレーム30を載置し、ジョイントフレーム30の上から上側クランプ部41を被せて下側クランプ部42とネジ45によって固定する。これにより、ジョイントフレーム30は下側クランプ部42と上側クランプ部41との間で挟持されることになる。
【0032】
図2(a)に示すクランプ40においては、ネジ45を緩めることで締め付けが弱くなり、ジョイントフレーム30を軸回りに回転させることができる。ジョイントフレーム30は、軸回りに任意の角度で回転可能であり、ネジ45を締めることで、その角度に固定される。
【0033】
図2(b)に示すクランプ40においては、上側クランプ部41および下側クランプ部42のそれぞれの凹部内面40aに所定ピッチの凹凸(スプライン加工)が施される。また、ジョイントフレーム30のクランプ40と接する面30aにも同様な凹凸(スプライン加工)が施される。これによって、ジョイントフレーム30は軸回りに凹凸のピッチで角度調整される。したがって、ジョイントフレーム30をこのピッチに合わせて正確な角度で回転させることができ、機体10に対する回転翼ユニット20の角度も正確に調整することができる。
【0034】
このように、本実施形態に係るマルチコプター玩具1においては、回転翼ユニット20が機体10に対して角度調整可能に取り付けられているため、マルチコプター玩具1の飛行特性を操縦者の好みに合わせてセッティングしたり、動力性能に応じて調整したりすることができる。
【0035】
(回転翼ユニットの回転角度調整)
次に、具体的な回転翼ユニット20の回転角度調整(ジョイントフレーム30の軸回りの回転角度調整)について説明する。
図3(a)および(b)は、回転翼ユニットの回転角度調整による飛行姿勢を例示する模式図である。
図3(a)には、回転翼ユニット20の回転角度調整をしていない場合の飛行姿勢が例示される。回転翼ユニット20の回転角度調整をしていない場合、回転翼23の回転軸z23は、機体10における軸(法線軸z10)と一致している。この状態でマルチコプター玩具1を前方Fに飛行させるには、機体10の前方の下に傾ける(前傾させる)ことになる。この傾斜によって法線軸z10が垂直軸z1に対して角度θ1傾斜したとすると、回転翼23の回転軸z23も角度θ1傾斜することになる。回転翼23の回転軸z23が傾斜することで、マルチコプター玩具1は前方Fへの推進力を得て、前方Fへ飛行することになる。
【0036】
しかし、マルチコプター玩具1の前方Fへの飛行の際、機体10の傾斜が大きくなるほど前面で受ける空気抵抗が増加する。この空気抵抗の増加が飛行スピードアップの妨げになる。
【0037】
図3(b)には、回転翼ユニット20の角度調整をした場合の飛行姿勢が例示される。回転翼ユニット20の角度調整をした場合、回転翼23の回転軸z23は、機体10の法線軸z10とは一致していない。図3(b)に示す例では、機体10に対して回転翼ユニット20を回転させることで、回転翼23の回転軸z23が機体10の法線軸z10に対して角度θ1傾斜している。
【0038】
この状態では、機体10が水平(法線軸z10と垂直軸z1とが一致)であってもマルチコプター玩具1は前方Fへの推進力を得て飛行することになる。つまり、予め回転翼23の回転軸z23が角度θ1傾斜しているため、この角度θ1に応じた推進力が発生しており、機体10を前傾させることなく前方Fへ飛行させることができる。
【0039】
つまり、回転翼23の回転軸z23を角度θ1傾斜させた場合の推進力であれば、機体10を前傾させることなく前方Fへ飛行させることができ、機体10が前傾している場合に比べて前面で受ける空気抵抗を減らすことができる。
【0040】
なお、角度θ1の傾斜に応じた推進力よりも大きい推進力を得たい場合には機体10を前傾させることになる。しかし、この場合でも回転翼ユニット20の角度調整がされていない場合に比べて、機体10の前傾を少なくすることができるため、飛行による空気抵抗の低減が可能になる。
【0041】
操縦者は、マルチコプター玩具1の通常の飛行スピードや、好みによって回転翼ユニット20の角度を調整することができる。例えば、マルチコプター玩具1の通常の飛行スピードが比較的速い場合には、回転翼ユニット20の回転角度を大きくしておくことで、通常の飛行スピードでの機体10の前傾が抑制され、空気抵抗の低減によって、よりスムーズな飛行を実現できることになる。
【0042】
(制御基板の角度調整)
図4(a)および(b)は、制御基板の角度調整について例示する模式図である。
図4(a)には、制御基板50を機体10に対して傾斜させた状態が示される。例えば、回転翼ユニット20を機体10に対して角度θ1傾斜させた場合、制御基板50も機体10に対して角度θ1傾斜させておくとよい。
【0043】
先に説明したように、制御基板50には姿勢制御を行う際に用いられるジャイロセンサなどが設けられている。マルチコプター玩具1において制御基板50に設けられたジャイロセンサによって水平位置の基準を決めている場合、回転翼ユニット20の角度調整に合わせて制御基板50の角度を調整することで、ジャイロセンサによる水平位置の基準に対して回転翼23の回転軸z23を垂直に設定することができる。
【0044】
図4(b)には、マルチコプター玩具1を浮上(ホバリング)させた状態が示される。この例では、機体10に対して回転翼ユニット20および制御基板50を角度θ1傾斜させている。ジャイロセンサによる水平位置の基準は、制御基板50の面50a(ジャイロセンサの搭載面)である。したがって、マルチコプター玩具1を浮上させて水平になるよう自律制御した場合、角度θ1傾斜させた制御基板50の面50aが水平となるように維持する制御が行われる。
【0045】
制御基板50は機体10に対して傾斜しているため、制御基板50の面50aを水平の基準にすると、機体10は角度θ1傾斜することになる。また、回転翼23の回転軸z23は、制御基板50の面50aに対して垂直になっているため、いずれの方向にも推進力は働かない。したがって、マルチコプター玩具1は浮上(ホバリング)した状態を維持することになる。
【0046】
図5は、基準設定ボタンを例示する模式図である。
図5に示す例では、マルチコプター玩具1の水平方向に対する角度の基準を設定するボタン55が設けられている。ボタン55は、例えば制御基板50に設けられる。このボタン55を押下した際、制御基板50はそのときのマルチコプター玩具1の位置を水平方向に対する角度の基準とするよう設定を行う。
【0047】
例えば、回転翼ユニット20を回転させて回転翼23の回転軸z23を機体10に対して角度θ1傾斜させた場合、この回転軸z23が垂直(回転翼23が水平)になるようにマルチコプター玩具1を保持しておき、この状態でボタン55を押下する。制御基板50は、ボタン55が押下された際のジャイロセンサの検出値を原点とするように設定を変更する。この検出値は不揮発性メモリ等に保存される。これによって、機体10が角度θ1傾斜した状態がマルチコプター玩具1の水平位置の基準となる。このようなボタン55の押下による水平基準の設定によれば、回転翼ユニット20を回転させた場合でも、制御基板50を傾斜させることなく、マルチコプター玩具1の浮上(ホバリング)状態を維持することができる。
【0048】
(回転翼ユニットの取り付け幅の調整)
図6は、回転翼ユニットの取り付け幅の調整について例示する模式図である。
回転翼ユニット20は、ジョイントフレーム30の両端部に取り付けられる。すなわち、回転翼ユニット20は、ハブ25を介してジョイントフレーム30に取り付けられる。このハブ25とジョイントフレーム30との取り付け位置を、ジョイントフレーム30の軸に沿った方向(軸方向)に調整できるようにしておけば、ジョイントフレーム30の両端部に取り付けられる2つの回転翼ユニット20の幅(間隔T1〜T2)を調整できるようになる。
【0049】
例えば、ハブ25とジョイントフレーム30との固定をネジによって行うようにしておく。このネジを緩めることで、ハブ25のジョイントフレーム30の軸方向の取り付け位置を調整し、調整後にネジを締める。これにより、ジョイントフレーム30の両端部に取り付けられる2つの回転翼ユニット20の間隔(T1〜T2)、すなわち2つの回転翼23の間隔(幅)を拡げたり、狭くしたりすることができる。
【0050】
図6に示す例では、2つのジョイントフレーム30の一方のみ、回転翼ユニット20とジョイントフレーム30との取り付け位置の調整を行うようになっているが、2つのジョイントフレーム30の両方において調整できるようになっていてもよい。2つの回転翼23の間隔(幅)の調整によって、マルチコプター玩具1の飛行特性を調整することができる。
【0051】
例えば、2つの回転翼23の間隔(幅)が拡がるほど、マルチコプター玩具1の飛行における安定性が向上する。一方、2つの回転翼23の間隔(幅)が狭くなるほど、マルチコプター玩具1の機敏性が向上する。操縦者は、自動車の左右のタイヤの間隔(トレッド)を調整するような感覚で、マルチコプター玩具1の飛行特性を好みに合わせてセッティングすることができる。
【0052】
また、ジョイントフレーム30の軸方向に回転翼ユニット20の取り付け位置を調整できるようにしておくと、回転翼23の大きさ(回転径)を変更した場合に2つの回転翼23の間隔を調整することができる。例えば、大きな回転翼23に変更した場合、2つの回転翼ユニット20の間隔を拡げるようにすれば、2つの回転翼23が干渉することを防止することができる。
【0053】
(回転翼ユニットの傾斜角度調整)
次に、回転翼ユニット20の傾斜角度調整(ジョイントフレーム30の軸に対する角度調整)について説明する。
図7(a)〜(c)は、回転翼ユニットの傾斜角度の調整について例示する模式図である。
図7(a)〜(c)では、マルチコプター玩具1の正面からみた模式図が表される。図7(a)には、回転翼ユニット20の傾斜角度調整をしていない場合の飛行姿勢が例示される。回転翼ユニット20の傾斜角度調整をしていない場合、回転翼23の回転軸z23は、ジョイントフレーム30の軸に対して垂直になっている。
【0054】
これに対し、図7(b)および(c)には、回転翼ユニット20の傾斜角度調整をした場合の飛行姿勢が例示される。図7(b)に示す例では、ジョイントフレーム30の両端部に取り付けられる2つの回転翼ユニット20のそれぞれが、ジョイントフレーム30の軸と垂直な軸(フレーム垂直軸z35)に対して角度θ2傾斜している。すなわち、マルチコプター玩具1の正面からみて左側の回転翼23の回転軸z23は、フレーム垂直軸z35に対して右回りで角度θ2傾斜し、右側の回転翼23の回転軸z23は、フレーム垂直軸z35に対して左回りで角度θ2傾斜している。
【0055】
一方、図7(c)に示す例では、2つの回転翼ユニット20のそれぞれが、フレーム垂直軸z35に対して角度θ3傾斜している。すなわち、マルチコプター玩具1の正面からみて左側の回転翼23の回転軸z23は、フレーム垂直軸z35に対して左回りで角度θ3傾斜し、右側の回転翼23の回転軸z23は、フレーム垂直軸z35に対して右回りで角度θ3傾斜している。
【0056】
このような傾斜調整を可能にするには、ジョイントフレーム30の端部とハブ25との接続部分を半球状の接続(ボールジョイントBJ)にしておけばよい。なお、このようなボールジョイントBJになっていることで、各回転翼ユニット20をジョイントフレーム30に対して独立して様々な角度で調整することができる。
【0057】
回転翼ユニット20の傾斜角度調整によって、マルチコプター玩具1の飛行特性を調整することができる。例えば、図7(b)に示すように左右の回転翼ユニット20が傾斜していると、回転翼23による風力の拡がりが大きくなり、マルチコプター玩具1の左右ターン特性が安定化する。一方、図7(c)に示すように左右の回転翼ユニット20が傾斜していると、回転翼23による風力の拡がりが小さくなり、左右ターン特性が俊敏になる。つまり、操縦者は、自動車のキャンバを調整するような感覚で、マルチコプター玩具1の飛行特性を好みに合わせてセッティングすることができる。
【0058】
(重心バランス調整)
図8(a)および(b)は、マルチコプター玩具の重心バランス調整について例示する模式図である。
図8(a)および(b)には、互いに回転翼ユニット20の回転角度を180度反転させた状態が示される。すなわち、図8(a)に示す回転翼ユニット20に対して、図8(b)に示す回転翼ユニット20は、ジョイントフレーム30の軸回りに180度回転した状態になっている。なお、図8(a)および(b)のそれぞれの態様において、マルチコプター玩具1の上昇および下降の方向を同じにするためには、回転翼ユニット20を180度回転させた際に回転翼23のピッチを逆にしておく必要がある。
【0059】
図8(a)に示す例では、回転翼23の回転面S23が機体10の重心CGよりも下になる。一方、図8(b)に示す例では、回転翼23の回転面S23が機体10の重心CGよりも上になる。ここで、重心CGは、機体10に制御基板50、バッテリBT、スキッド15などの部材を取り付けた状態での重心である。
【0060】
このように、回転翼ユニット20の回転角度を180度変更して、回転翼23の回転面S23と機体10の重心CGとの位置関係を変更することで、マルチコプター玩具1の飛行特性を調整することができる。例えば、図8(a)に示すように、回転翼23の回転面S23が機体10の重心CGよりも下になると、マルチコプター玩具1の飛行安定性は低下するものの、機敏性が向上する。一方、図8(b)に示すように、回転翼23の回転面S23が機体10の重心CGよりも上になると、マルチコプター玩具1の飛行特性は向上するものの、機敏性が低下する。つまり、操縦者は、機体10の重心CGと回転翼23の回転面S23との位置関係を変更することで、マルチコプター玩具1の飛行特性を好みに合わせてセッティングすることができる。
【0061】
(サーボ機構による角度調整)
図9は、サーボ機構による回転翼ユニットの角度調整の例を示す斜視図である。
機体10に取り付けられたサーボ機構60は、操縦者のコントローラから送信される制御信号によって遠隔操作される。サーボ機構60の駆動はジョイントフレーム30に伝達される。すなわち、サーボ機構60によってジョイントフレーム30の回転が遠隔操作される。
【0062】
サーボ機構60はリンクやベルト、ワイヤーなどの伝達機構を介してジョイントフレーム30と接続される。これにより、サーボ機構60の駆動がジョイントフレーム30に伝達され、ジョイントフレーム30を軸回りに所望の角度で回転させることができる。なお、1つのサーボ機構60によって2つのジョイントフレーム30の回転を連動させてもよい。
【0063】
このようなサーボ機構60を用いることで、操縦者はマルチコプター玩具1の飛行中に回転翼ユニット20を回転させることができる。つまり、操縦者はマルチコプター玩具1を操縦しつつ、状況に応じて回転翼ユニット20の回転角度を好みに応じて調整することが可能になる。
【0064】
以上説明したように、実施形態によれば、マルチコプター玩具1の飛行特性を簡単に調整することができ、操縦者にとって趣向性の高いマルチコプター玩具1を提供することが可能になる。
【0065】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、複数の回転翼ユニット20のうち少なくとも1つの回転角度を調整できるようになっていればよく、また、回転翼ユニット20の調整動作は回転や傾斜を別個に調整する場合のほか、回転および傾斜を融合して調整するようにしてもよい。また、本実施形態では4つの回転翼120を有するクワッドコプターを例として説明したが、4つ以外の回転翼23を有するマルチコプター玩具1であっても適用可能である。また、前述の実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
1…マルチコプター玩具
10…機体
15…スキッド
20…回転翼ユニット
21…モータ
22…ギア
23…回転翼
25…ハブ
30…ジョイントフレーム
30a…面
40…クランプ
40a…凹部内面
41…上側クランプ部
42…下側クランプ部
45…ネジ
50…制御基板
50a…面
55…ボタン
60…サーボ機構
BJ…ボールジョイント
BT…バッテリ
CG…重心
S23…回転面
z1…垂直軸
z10…法線軸
z23…回転軸
z35…フレーム垂直軸
【要約】
【課題】飛行特性を簡単に調整することができ、趣向性を高めることができるマルチコプター玩具を提供すること。
【解決手段】本発明は、無人飛行するマルチコプター玩具であって、機体と、機体に取り付けられた複数の回転翼ユニットと、を備え、複数の回転翼ユニットのそれぞれは、モータと、モータによって回転する回転翼と、を有し、複数の回転翼ユニットの少なくとも1つは、機体に対して角度調整可能に取り付けられたことを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9