特許第5997361号(P5997361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997361
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20160915BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20160915BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   F02D29/00 B
   F02D29/04 G
   E02F9/20 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-504358(P2015-504358)
(86)(22)【出願日】2014年3月5日
(86)【国際出願番号】JP2014055624
(87)【国際公開番号】WO2014136834
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-44320(P2013-44320)
(32)【優先日】2013年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
(72)【発明者】
【氏名】星野 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】石原 新士
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−241794(JP,A)
【文献】 特開2007−247230(JP,A)
【文献】 特開2007−262978(JP,A)
【文献】 特開平9−322312(JP,A)
【文献】 特開2010−216419(JP,A)
【文献】 特開2013−40487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
E02F 9/20
F02D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって発電可能な発電機モータと、
前記エンジンおよび前記発電機モータによって駆動可能な油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの動力で作業機を駆動操作する油圧アクチュエータと、
前記発電機モータを駆動する電力の供給および前記発電機モータで生成した電力の充電を行うための蓄電デバイスと、
運転者の操作に応じて複数の作業モードの中から何れかの作業モードを選択する作業モード選択装置と、
前記作業モード選択装置により選択された作業モードに応じて前記エンジンの目標出力を設定するエンジン出力設定部と、
を備え、
過去に出力された前記油圧ポンプの作業出力前記作業モード毎に記憶し、
前記エンジン出力設定部は、今回選択された前記作業モードと同じ作業モードに対する前記過去の前記油圧ポンプの作業出力に応じて、今回選択された前記作業モードにおける前記エンジンの目標出力を設定することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1において、
前記作業モード毎の前記油圧ポンプの作業出力に相当するパラメータに基づいて、前記油圧ポンプの作業出力の演算を行う作業出力演算部をさらに備え、
前記エンジン出力設定部は、前記作業出力演算部で求めた演算値に応じて、前記作業モード毎に前記エンジンの目標出力を設定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記エンジン出力設定部は、前記作業モード毎に前記蓄電デバイスの充放電傾向を判定し、その判定結果に応じて前記エンジンの目標出力を設定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2において、
前記エンジン出力設定部は、第1の作業モードを選択している第1の状態から第2の作業モードを選択する第2の状態に遷移した後、前記第2の状態から第1の作業モードを選択する第3の状態に遷移する際に、前記第1の状態における前記演算値に応じて前記第3の状態における前記エンジンの目標出力を設定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項3において、
前記エンジン出力設定部は、第1の作業モードを選択している第1の状態から第2の作業モードを選択する第2の状態に遷移した後、前記第2の状態から第1の作業モードを選択する第3の状態に遷移する際に、前記第1の状態における前記蓄電デバイスの充放電傾向の判定結果に応じて前記第3の状態における前記エンジンの目標出力を設定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1において、
前記複数の作業モード毎に、さらに掘削作業または非掘削作業の状態の判定結果に基づいて前記エンジンの出力基準値をそれぞれ設定し、
前記エンジン出力設定部は、今回選択された前記作業モードと前記掘削作業または非掘削作業の状態の判定結果に基づいて設定した前記エンジンの出力基準値に、前記過去の前記油圧ポンプの作業出力に応じて前記エンジンの目標出力を設定することを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械は、従来、エンジンで油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプの動力により作業機を駆動操作する油圧アクチュエータを備えたものが主流であった。しかし、近年では、エンジンの燃費向上、騒音レベルの低減および排ガス量の低減などを図るため、エンジンによって発電可能な油圧ポンプアシスト用の発電機モータを備え、発電機モータを駆動する電力の供給、および、発電機モータで生成した電力の充電を行う蓄電デバイス(キャパシタ、バッテリ)を有するハイブリッド式の建設機械が開発され、実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、油圧ポンプと、油圧ポンプへ動力を伝達可能に接続されたエンジンと、エンジンから独立して油圧ポンプを駆動可能に接続された電動機と、バッテリを備えたハイブリッド作業機械において、該ハイブリッド作業機械の出力状態に対応する変数を検出し、予め設定された所定時間の間に該変数の平均値を算出し、算出された平均値に応じてエンジンの出力の大きさを設定する方式が記載されている。この方式では、ハイブリッド作業機械の出力状態を平均化したパラメータに応じてエンジン出力が制御されるため、エンジン出力を緩やかに変動させることができ、エンジンの運転状態を安定化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、世界的な環境対応への動きにともない、油圧ショベル等の建設機械においても燃費低減に対する取組みが進んでいる。このような背景から、従来の標準モードに対して燃費重視モードをさらに備えた建設機械が増加しており、上述のハイブリッド式の建設機械ではその傾向がとくに顕著である。
【0006】
これらのモード(以下、作業モードと称する)は運転室内に設けられたスイッチやタッチパネルにより運転者が手動で設定する方式が主流であり、均し作業のような負荷の軽い作業を行う場合は燃費重視モードを選択し、それ以外の作業を行う場合は従来の標準モードを選択するのが通例である。燃費重視モードでは、燃費を重視して油圧アクチュエータの出力(以下、作業出力と称する)をある程度抑える仕様になっており、標準モードでは作業出力を最大限に活用できる仕様になっている場合が多い。
【0007】
特許文献1に記載のハイブリッド作業機械では、予め設定された所定時間の間に作業出力の平均値を算出してエンジン出力の大きさに反映しているため、平均値を算出したときの作業モードとエンジン出力の大きさを反映するときの作業モードが同じ場合には有効である。ところが、これらの作業モードが異なる場合、例えば、燃費重視モードで算出した平均値を標準モードのエンジン出力の大きさに反映した場合には、作業の違いにより作業出力とエンジン出力の間に過不足が生じ、この過不足を補うために電動機の出力が大きくなる。その結果、バッテリ充電量の変化が大きくなり、バッテリ充電量が所定の使用範囲を超えそうになると、電動機の出力を制限する必要が生じるために、所望の作業出力を発生できない可能性が高まる。
【0008】
この課題について、図7を用いて詳しく説明する。図7は、作業モード、ポンプ出力、およびバッテリ充電量の動作を示すタイムチャートである。図7において、横軸は時間を示しており、縦軸は上から順に運転者の操作に応じて選択される作業モード、油圧ポンプの出力、バッテリの充電量を示している。また、油圧ポンプの出力を示すチャートには、エンジンの出力を点線で重ねて示しており、これらの出力はエンジンの最大出力を100%として正規化した値で示している。
【0009】
まず、時刻t0において、運転者が燃費重視モードを選択して作業を開始すると、油圧ポンプの出力が発生する。ここで、エンジンの出力を90%程度に設定し、燃料重視モードにおける油圧ポンプの平均出力が90%より小さい場合について考える。図7に示すように、エンジンの出力に対して油圧ポンプの出力が小さい場合には発電機モータによる発電を行い、エンジンの出力に対して油圧ポンプの出力が大きい場合には発電機モータによるパワーアシストを行う。運転者によって燃費重視モードが選択されている時刻t0から時刻t1においては、油圧ポンプの出力がエンジンの出力よりも小さい状態が多いため、発電機モータの発電電力によってバッテリの充電量が増加していく。
【0010】
次に、時刻t1以降において、運転者が標準モードを選択して作業を行うとき、時刻t1までの油圧ポンプの出力の平均値を時刻t1以降のエンジンの出力に反映した場合について考える。前述のように時刻t1までは油圧ポンプの出力がエンジンの出力よりも小さい状態が多いため、エンジンの出力は90%よりも小さく設定される。
【0011】
ところが、時刻t1以降は運転者によって標準モードが選択されているため、油圧ポンプの出力が時刻t1以前に比べて高くなっている。この状態では、油圧ポンプの出力がエンジンの出力よりも大きい状態が多いため、発電機モータの力行電力によってバッテリの充電量が急激に減少していく。その後、運転者がこの作業を継続して時刻t2になると、バッテリの充電量が下限値に到達して使用可能範囲を超えるため、バッテリの充電量低下を抑制するために発電機モータの力行出力が制限されてパワーアシスト不可の状態になる。したがって、時刻t2以降は、図の実線で示すような油圧ポンプの出力とすることができなくなる。
【0012】
このように、燃料重視モードで算出した油圧ポンプの出力の平均値を標準モードのエンジンの出力の大きさに反映した場合には、運転者によって設定する作業モードとその作業の違いにより油圧ポンプの出力とエンジンの出力の間に過不足が生じ、この過不足を補うために発電機モータの出力が大きくなる。その結果、バッテリの充電量の変化が大きくなり、バッテリの充電量が所定の使用範囲を超えそうになると、発電機モータの出力を制限する必要が生じるために、油圧ポンプの出力を制限することになる。
【0013】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、作業モード毎にエンジン出力の大きさを好適に設定することができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る建設機械は、エンジンと、前記エンジンによって発電可能な発電機モータと、前記エンジンおよび前記発電機モータによって駆動可能な油圧ポンプと、前記油圧ポンプの動力で作業機を駆動操作する油圧アクチュエータと、前記発電機モータを駆動する電力の供給および前記発電機モータで生成した電力の充電を行うための蓄電デバイスと、運転者の操作に応じて複数の作業モードの中から何れかの作業モードを選択する作業モード選択装置と、前記作業モード選択装置により選択された作業モードに応じて前記エンジンの目標出力を設定するエンジン出力設定部と、を備え、過去に出力された前記油圧ポンプの作業出力前記作業モード毎に記憶し、前記エンジン出力設定部は、今回選択された前記作業モードと同じ作業モードに対する前記過去の前記油圧ポンプの作業出力に応じて、今回選択された前記作業モードにおける前記エンジンの目標出力を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成を備えることにより、運転者の操作に応じて選択される作業モード毎にエンジン出力の大きさを好適に設定することができる。なお、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2図1に示す油圧ショベルの主要電動・油圧機器のシステム構成図である。
図3図2に示すコントロール・ユニット(HCU100)の電気的構成を示すブロック図である。
図4図2に示すコントロール・ユニット(HCU100)の処理内容を示す制御フローチャートである。
図5図1に示す油圧ショベルにおいて、作業モード、ポンプ出力、およびバッテリ充電量の動作を示すタイムチャートである。
図6図1に示す油圧ショベルにおいて、運転者の操作に応じて選択される作業モードの判定方法とその実施例を示すチャートである。
図7】従来技術に係る油圧ショベルにおいて、作業モード、ポンプ出力、およびバッテリ充電量の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る建設機械の一実施形態について、図を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。図1に示す油圧ショベルは、主に、下部走行体10、下部走行体10に旋回可能に設けられる上部旋回体20、運転室5、上部旋回体20に設けられ、各種作業を行う作業機30、および作業機30を駆動する油圧アクチュエータを備えて構成される。
【0018】
下部走行体10は、一対のクローラ11およびクローラフレーム12、各クローラ11を独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータと減速機構等(図示しない)で構成されている。
【0019】
上部旋回体20は、旋回フレーム21、旋回フレーム21上に設けられたエンジン22、エンジン22によって発電可能な発電機モータ23、旋回用油圧モータ(以下、旋回モータと称する)25、発電機モータ23と電気的に接続されたバッテリ(蓄電デバイス)24、旋回モータ25の回転を減速する減速機構(図示せず)、旋回モータ25の駆動力により下部走行体10に対して上部旋回体20(旋回フレーム21)を旋回駆動させるための旋回機構26等で構成されている。
【0020】
作業機30は、主に、ブーム31、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33、アーム33の先端部近傍に回転可能に軸支されたバケット35を備えて構成される。作業機30は、油圧アクチュエータによって駆動される。具体的には、ブームシリンダ32によってブーム31が駆動され、アームシリンダ34によってアーム33が駆動され、バケットシリンダ36によってバケット35が駆動される。
【0021】
また、上部旋回体20の旋回フレーム21上には、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ25、および走行用油圧モータ(図示しない)等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧を発生する油圧ポンプ41、および各油圧アクチュエータを駆動制御するためのコントロールバルブ42を含む油圧システム40が搭載されている。油圧源となる油圧ポンプ41は、エンジン22および発電機モータ23によって駆動される。
【0022】
運転室5には、ブーム31、アーム33、バケット35等を操作するレバーや、作業モードを選択する作業モード選択装置としてのスイッチ(PWRモードスイッチ45、ECOモードスイッチ46)などの運転者が操作する各種操作装置が設けられている(図3参照)。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態である油圧ショベルの主要電動・油圧機器のシステム構成図である。エンジン22の動力は発電機モータ23を介して油圧ポンプ41に伝達される。また、コントロールバルブ42は、運転者によって操作されるレバー201からの指令に応じて、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ25、および走行用油圧モータ13、14への作動油の吐出量および吐出方向を制御する。
【0024】
バッテリ24からの直流電力はパワー・コントロール・ユニット55(以下、PCUと称する)内の図示しないチョッパ等によって所定の直流電圧に昇圧され、発電機モータ23を駆動するためにPCU55内の図示しないインバータ等に入力される。また、発電機モータ23の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、バッテリ24は充放電されることになる。
【0025】
ハイブリッド・コントロール・ユニット100(以下、HCUと称する)は、PCU55やエンジン・コントロール・ユニット57(以下、ECUと称する)、マシン・コントロール・ユニット80(以下、MCUと称する)で検出した回転速度信号、レバー信号、圧力信号等に基づいて、PCU55、ECU57、MCU80に対して指令を行い、エンジン22、発電機モータ23、油圧ポンプ41、およびコントロールバルブ42を統括的に制御する。
【0026】
例えば、運転者がレバー201を操作してブーム上げ動作を行う場合には、MCU80が電磁比例弁75を制御し、コントロールバルブ42によって油圧ポンプ41の動力をブームシリンダ32に伝達する。ここで、電磁比例弁75は、MCU80からの電気信号を油圧信号に変換するデバイスである。このとき、HCU100は、MCU80で検出したレバー信号と油圧ポンプ41の圧力信号等に基づいて油圧ポンプ41に必要な動力を推定し、PCU55で検出したバッテリ24の電圧値に基づいてバッテリ24の蓄電残量(以下、SOCと称する)を推定する。
【0027】
HCU100は、油圧ポンプ41に必要な動力をエンジン22と発電機モータ23で適切に配分するため、推定した油圧ポンプ41の動力とバッテリ24のSOCに基づいてエンジン回転速度指令および発電機モータ出力指令を演算し、それぞれECU57とPCU55に対して指令を行う。
【0028】
また、HCU100は、油圧シリンダや油圧モータの負荷が大きくなり、油圧ポンプ41が過負荷状態になった場合には、エンジン22のストールを防止するためにエンジン24の回転速度に応じて油圧ポンプ41の動力を制限する指令をMCU80に出力する。MCU80は、HCU100からの指令に応じて電磁比例弁75を制御し、油圧ポンプ41の動力を制限する。
【0029】
次に、図3図4を用いて、本発明の一実施形態である油圧ショベルに搭載されたHCU100の処理内容について説明する。図3は、HCU100の電気的構成を示すブロック図である。なお、以下に示す処理の内容は、HCU100にプログラミングされ、あらかじめ定められた周期で繰り返し実行される。また、以降の説明において、発電機モータ23の出力は力行側を正の値、回生側(発電側)を負の値として定義し、バッテリ24の出力は放電側を正の値、充電側を負の値として定義する。
【0030】
図3に示すように、HCU100は、主に、作業モードを判定する作業モード判定部401、作業モード毎に出力の平均値を算出する平均値算出部(作業出力演算部)402,404,406、および各平均値算出部402,404,406の算出値に応じてエンジンの出力の大きさを設定するエンジン出力設定部403,405,407を備えて構成される。
【0031】
HCU100は、運転者によるモードスイッチ45,46の操作やレバー操作量に相当する信号を検出し、作業モード判定部401により標準モード(以下、PWRモードと称する)や燃費重視モード(以下、ECOモードと称する)等の作業モードを判定する。また、HCU100は、油圧ポンプ41の吐出圧を検出し、運転者のレバー操作量に応じて推定した油圧ポンプ41の吐出流量を用いて油圧ポンプ41の出力を算出する。さらに、HCU100はエンジン22の回転数とトルクを検出し、エンジン22の出力を算出する。
【0032】
次に、平均値算出部402では、油圧ポンプ41の出力に応じてPWRモードにおける出力の平均値を算出する。エンジン出力設定部403では、平均値算出部402で算出したPWRモードにおける出力の平均値(演算値)に応じてエンジン22の出力(本実施形態では回転数)を設定し、油圧ポンプ41の出力に応じて発電機モータ23の目標出力を設定する。そして、設定した発電機モータ23の目標出力とエンジン22の回転数に応じて発電機モータ23の目標トルクを算出し、作業モード判定部401により判定された作業モードがPWRモードの場合に、発電機モータ23の目標トルクをPCU55に送信する。
【0033】
同様に、平均値算出部404では、油圧ポンプ41の出力に応じてECOモードにおける出力の平均値(演算値)を算出する。エンジン出力設定部405では、平均値算出部404で算出したECOモードにおける出力の平均値に応じてエンジン22の出力(本実施形態では回転数)を設定し、油圧ポンプ41の出力に応じて発電機モータ23の目標出力を設定する。そして、設定した発電機モータ23の目標出力とエンジン22の回転数に応じて発電機モータ23の目標トルクを算出し、作業モード判定部401により判定された作業モードがECOモードの場合に、発電機モータ23の目標トルクをPCU55に送信する。
【0034】
なお、本実施形態では、エンジン22の目標出力として回転数を設定するようにしているが、回転数の代わりにトルクを設定するようにしても良い。
【0035】
また、運転者の操作に応じて判定される作業モードが他に存在する場合には、平均値算出部406、エンジン出力設定部407にて、平均値算出部402,404、エンジン出力設定部403,405と同様の処理を実行する。
【0036】
図4は、HCU100の処理内容を示す制御フローチャートである。図4では、作業モードとしてECOモードとPWRモードの2つが存在する場合について説明している。
【0037】
最初に、図4(a)を用いて、作業モード判定部401、平均値算出部402,404、およびエンジン出力設定部403,405の処理内容について説明する。まず、ステップ501において、現在の作業モードがECOモードか否かの判定が作業モード判定部401によって行われ、当該判定がECOモードの場合はステップ502に進み、ECOモード以外(PWRモード)の場合はステップ512に進む。
【0038】
ステップ502において、前回の作業モードがPWRモードであったか否かの判定が作業モード判定部401によって行われ、PWRモードの場合はECOモード開始時であると判定してステップ503に進み、PWRモード以外(ECOモード)の場合はECOモード実行中であると判定してステップ505に進む。ステップ505では、ECOモードでの作業時間を計測するためのタイマをインクリメントする処理が行われる。次いで、ステップ506に進み、ステップ506では油圧ポンプ41の出力を積分する処理が実行される。
【0039】
その後、ステップ507において、油圧ポンプ41の出力の平均値が平均値算出部404によって算出される。具体的には、平均値算出部404は、ステップ506で算出した積分値をステップ505で算出したタイマ(ECOモードでの作業時間に相当)で除算する処理を実行する。このステップ507で演算された油圧ポンプ41の出力の平均値の履歴は、HCU100の図示しない記憶領域(例えばRAM)に記憶される。なお、ステップ503では、ECOモード開始時にECOモードでの作業時間を計測するためのタイマや油圧ポンプ41の出力を積分した値をクリアするための初期化処理が実行される。また、ステップ504は、前回までの作業モードにおける出力の平均値を更新する処理であり、詳細については後述する。
【0040】
一方、ステップ512に進んだ場合、このステップ512において、前回の作業モードがECOモードか否かの判定が作業モード判定部401によって行われる。ECOモードの場合はPWRモード開始時であると判定してステップ513に進み、ECOモード以外(PWRモード)の場合はPWRモード実行中であると判定してステップ515に進む。ステップ515では、PWRモードでの作業時間を計測するためのタイマをインクリメントする処理が行われる。次いで、ステップ516に進み、ステップ516では油圧ポンプ41の出力を積分する処理が実行される。その後、ステップ517において、油圧ポンプ41の出力の平均値が平均値算出部402によって算出される。具体的には、平均値算出部402は、ステップ516で算出した積分値をステップ515で算出したタイマ(PWRモードでの作業時間に相当)で除算する処理を実行する。
【0041】
なお、ステップ513では、PWRモード開始時にPWRモードでの作業時間を計測するためのタイマや油圧ポンプ41の出力を積分した値をクリアするための初期化処理が実行される。また、ステップ514は、前回までの作業モードにおける出力の平均値を更新する処理であり、詳細については後述する。
【0042】
次に、ステップ504およびステップ514にて行われる処理の詳細について説明する。ステップ504は、前回のECOモードの状態(第1の作業モードを選択している第1の状態)からPWRモードの状態(第2の作業モードを選択する第2の状態)に遷移した後、今回のECOモードの状態(第2の状態から第1の作業モードを選択する第3の状態)に遷移したタイミングで行う処理であるため、まず、エンジン出力設定部405は、前回のECOモードの状態(第1の状態)における油圧ポンプ41の出力の平均値を読み出し、その平均値を、今回の処理に用いるための値として設定する。
【0043】
即ち、PWRモードからECOモードに切り替わった際には、エンジン出力設定部405は、ステップ504において、過去のステップ504の処理において設定された古い平均値から、直近のECOモードの状態において算出された新しい平均値に更新する処理を実行する。
【0044】
さらに、ステップ504において、エンジン出力設定部405は、更新された平均値に応じて、今回のECOモードにおけるエンジン22の目標出力を設定する処理を行う。即ち、ステップ507で算出したECOモードにおける油圧ポンプ41の出力の平均値(Pave_eco)を、ECOモードにおけるエンジン22の目標出力(Pe_eco)に反映する処理を実行する。具体的には、式(1)によりエンジン22の目標出力(Pe_eco)を更新する。
【0045】
Pe_eco = Pave_eco × β + Pe_eco_old ×(1−β) ・・・(1)
【0046】
ここで、Pe_eco_oldは更新前のエンジン22の目標出力であり、β(0≦β≦1)は出力の平均値(Pave_eco)をエンジン22の目標出力(Pe_eco)にどれだけ反映させるかを決定するパラメータである。
【0047】
一方、ステップ514は、前回のPWRモードの状態(第1の作業モードを選択している第1の状態)からECOモードの状態(第2の作業モードを選択する第2の状態)に遷移した後、今回のPWRモードの状態(第2の状態から第1の作業モードを選択する第3の状態)に遷移したタイミングで行う処理であるため、まず、エンジン出力設定部403は、前回のPWRモードの状態(第1の状態)における油圧ポンプ41の出力の平均値を読み出し、その平均値を、今回の処理に用いるための値として設定する。
【0048】
即ち、ECOモードからPWRモードに切り替わった際には、エンジン出力設定部403は、ステップ514において、過去のステップ514の処理において設定された古い平均値から、直近のPWRモードの状態において算出された新しい平均値に更新する処理を実行する。
【0049】
さらに、ステップ514において、エンジン出力設定部403は、更新された平均値に応じて、今回のPWRモードにおけるエンジン22の目標出力を設定する処理を行う。即ち、ステップ514では、ステップ517で算出したPWRモードにおける油圧ポンプ41の出力の平均値(Pave_pwr)を、PWRモードにおけるエンジン22の目標出力(Pe_pwr)に反映する処理を実行する。具体的には、式(2)によりエンジン22の目標出力(Pe_pwr)を更新する。
【0050】
Pe_pwr = Pave_pwr × α + Pe_pwr_old ×(1−α) ・・・(2)
【0051】
ここで、Pe_pwr_oldは更新前のエンジン22の目標出力であり、α(0≦α≦1)は出力の平均値(Pave_pwr)をエンジン22の目標出力(Pe_pwr)にどれだけ反映させるかを決定するパラメータである。
【0052】
このように、図4(a)で示した処理を実行することにより、運転者の操作に応じた作業モード毎に作業出力に相当するパラメータ(例えば、油圧ポンプ41の出力)の平均値を算出し、作業モード毎に各々の平均値に応じてエンジン22の出力を設定することが可能となる。
【0053】
次に、図4(b)を用いて発電機モータ23の目標トルクの算出方法について説明する。最初に、ステップ521において、HCU100で検出したレバー操作量に応じて油圧ポンプ41から吐出される作動油の吐出流量(Q)が算出され、さらにステップ522では、HCU100で検出した油圧ポンプ41の吐出圧(P)とステップ521で算出された吐出流量(Q)に基づいて、油圧ポンプ41の出力(Pp)が式(3)に従って算出される。
【0054】
Pp = Q × P ・・・(3)
【0055】
次に、ステップ523では、モータ目標出力算出部410が、ステップ522で算出された油圧ポンプ41の出力(Pp)とエンジン出力設定部403,405で設定されたエンジン目標出力(Pe_ref)とに応じて、発電機モータの目標出力(Pa_ref)を式(4)に従って算出する。なお、式(4)において、作業モード判定部401によりPWRモードと判定されている場合にはPe_ref=Pe_pwrであり、作業モード判定部401によりECOモードと判定されている場合にはPe_ref=Pe_ecoとなる。
【0056】
Pa_ref = Pp − Pe_ref ・・・(4)
【0057】
そして、ステップ524では、HCU100で検出したエンジン22の回転数に応じて算出した発電機モータ23の回転数(Na)とステップ523で算出された発電機モータ目標出力(Pa_ref)とに基づいて、モータ目標トルク算出部411が、発電機モータ目標トルク(Ta_ref)を算出する。そして、ステップ524で算出された発電機モータ目標トルク(Ta_ref)に基づいて発電機モータ23の駆動を制御すれば、作業モードに応じてエンジン22の出力を平準化させることができる。
【0058】
次に、図5を用いて、本発明の実施形態に係る油圧ショベルの効果について説明する。図5は、作業モード、ポンプ出力、およびバッテリ充電量の動作を示すタイムチャートである。図の横軸は時間を示しており、縦軸は上から順に運転者の操作に応じて選択される作業モード、油圧ポンプ41の出力、バッテリ24の充電量を示している。また、油圧ポンプ41の出力を示すチャートには、エンジン22の出力を点線で重ねて示しており、これらの出力はエンジン22の最大出力を100%として正規化した値で示している。
【0059】
まず、時刻t0において、運転者がECOモードを選択して作業を開始すると、油圧ポンプ41の出力が発生する。ここで、エンジン22の出力を90%程度に設定し、ECOモードにおける油圧ポンプ41の平均出力が90%より小さい場合について考える。
【0060】
図5に示すように、エンジン22の出力に対して油圧ポンプ41の出力が小さい場合には発電機モータ23による発電を行い、エンジン22の出力に対して油圧ポンプ41の出力が大きい場合には発電機モータ23によるパワーアシストを行う。運転者によってECOモードが選択されている時刻t0から時刻t1においては、油圧ポンプ41の出力がエンジン22の出力よりも小さい状態が多いため、発電機モータ23の発電電力によってバッテリ24の充電量が増加していく。
【0061】
次に、時刻t1からt3までの間において、運転者がPWRモードを選択して作業を行う場合について考える。時刻t1からt3までは運転者によってPWRモードが選択されているため、油圧ポンプ41の出力が時刻t1以前に比べて高くなっているが、本実施形態では、時刻t1までのECOモードにおける油圧ポンプ41の出力の平均値は時刻t1からt3までのPWRモードにおけるエンジン22の出力には反映されないため、エンジン22の出力は時刻t1までと同様に90%程度に設定される。
【0062】
このとき、従来技術のECOモード(図7中の燃費重視モード)からPWRモード(図7中の標準モード)の遷移を示す図7のように、時刻t1においてエンジン22の出力を下げていないため、油圧ポンプ41の出力がエンジン22の出力よりも大きい状態が少なくなり、発電機モータ23の力行電力によるバッテリ24の充電量変化が抑制される。したがって、バッテリ24の充電量が下限値に到達して使用可能範囲を超えることを未然に防止できる。その後、時刻t3以降で、運転者が再びECOモードを選択して作業を行うときは、時刻t1までのECOモード(直近のECOモード)における油圧ポンプ41の出力の平均値がエンジン22の出力に反映されるため、エンジン22の出力が90%から若干下がることになる。
【0063】
このように、ECOモードで算出した油圧ポンプ41の出力の平均値をPWRモードのエンジン22の出力の大きさに反映しないことによって、運転者が選択する作業モードに応じた作業の違いを考慮することになり、油圧ポンプ41の出力とエンジン22の出力の間の過不足を低減することができる。その結果、発電機モータ23の出力を抑制することが可能となり、バッテリ24の充電量の変化を抑えることができる。したがって、バッテリ24の充電量が所定の使用範囲を超えて発電機モータ23の出力を制限するような機会が少なくなり、所望の作業出力を発生することができる。
【0064】
なお、上記実施形態においては、作業出力に相当するパラメータの平均値として油圧ポンプ41の出力の平均値を一例として挙げているが、バッテリ24の充放電傾向に応じてエンジン22の出力を設定する方式も考えられる。例えば、運転者の操作によりECOモードからPWRモードに切り替わる時刻t1のバッテリ24の充電量(Ebfn)とECOモードでの作業が開始される時刻t0のバッテリ24の充電量(Ebst)の差分(Ebfn−Ebst)に応じてバッテリ24の充放電傾向を判定することにより、このECOモードにおけるエンジン22の出力設定の妥当性を判定することができる。
【0065】
例えば、Ebfn−Ebstの値が正のときは、バッテリ24は充電傾向にあるため、エンジン22の出力は油圧ポンプ41の出力に対して平均的に大きいことになる。したがって、時刻t0から時刻t1までのエンジン22の出力に対して時刻t3以降のエンジン22の出力を小さくすることが望ましい。一方、Ebfn−Ebstの値が負のときは、バッテリ24は放電傾向にあるため、エンジン22の出力は油圧ポンプ41の出力に対して平均的に小さいことになる。したがって、時刻t0から時刻t1までのエンジン22の出力に対して時刻t3以降のエンジン22の出力を大きくすることが望ましい。
【0066】
そこで、エンジン出力設定部405は、時刻t0から時刻t1までのECOモードの状態(第1の作業モードを選択している第1の状態)から、時刻t1から時刻t3までのPWRモードの状態(第2の作業モードを選択する第2の状態)に遷移した後、時刻t3以降のECOモードの状態(第2の状態から第1の作業モードを選択する第3の状態)に遷移したタイミングで行うステップ504(図4参照)の処理において、時刻t0から時刻t1までの間の油圧ポンプ41の出力の平均値だけでなく、その間のバッテリ24の充放電傾向の判定結果をも反映させて、t3以降のECOモードにおけるエンジン22の目標出力を設定するようにする。こうすることで、t3以降に行われるECOモードにおいて、エンジン22の出力がより一層平準化されるという効果がある。
【0067】
勿論、PWRモードからECOモードに切り替えられた後、再びPWRモードに切り替えられた場合においても、ステップ514において、同様に油圧ポンプ41の出力の平均値だけでなく、バッテリ24の充放電傾向の判定結果をも反映させて今回のPWRモードにおけるエンジン22の目標設定をすれば良い。
【0068】
次に、図6を用いて、運転者の操作に応じて選択される作業モードについて説明する。図6は、運転者の操作に応じて選択される作業モードの判定方法とその実施例を示すチャートである。
【0069】
まず、図6(a)を用いて作業モードの判定方法とその実施例について説明する。運転者の操作によりモードスイッチがPWRモードとなっているときは、作業モード判定部401は、PWRモード判定を行う。作業モード判定部401は、このPWRモード判定において、作業の違いによる油圧ポンプ41の出力の変動を考慮して掘削または非掘削の状態を判定することにより、より細分化された作業モードを判定する。
【0070】
例えば、掘削状態のときは油圧ポンプ41の出力が高くなることが予想されるため、作業モード判定部401は作業モードを「A」と判定する。この判定に基づいて、HCU100は、エンジン22の出力基準値を100%に設定する。また、非掘削状態のときは油圧ポンプ41の出力が掘削状態に比べて若干低くなることが予想されるため、作業モード判定部401は作業モードを「B」と判定する。この判定に基づいて、HCU100は、エンジン22の出力基準値を80%に設定する。
【0071】
また、運転者の操作によりモードスイッチがECOモードとなっているときは、作業モード判定部401は、ECOモード判定を行う。作業モード判定部401は、このECOモード判定において、PWRモード判定と同様に作業の違いによる油圧ポンプ41の出力の変動を考慮して掘削または非掘削の状態を判定することにより、より細分化された作業モードを判定する。
【0072】
例えば、掘削状態のときは油圧ポンプ41の出力が高くなることが予想されるため、作業モード判定部401は作業モードを「C」と判定する。この判定に基づいて、HCU100は、エンジン22の出力基準値を90%に設定する。また、非掘削状態のときは油圧ポンプ41の出力が掘削状態に比べて若干低くなることが予想されるため、作業モード判定部401は作業モードを「D」と判定する。この判定に基づいて、HCU100は、エンジン22の出力基準値を70%に設定する。
【0073】
次に、図6(b)を用いて、図6(a)の掘削または非掘削状態を判定する方法について説明する。条件No.1は、前回の非掘削判定フラグがオン、すなわち非掘削状態の場合を示している。No.1において、ポンプ吐出圧が所定値以上、かつ、アームクラウド(アーム引き)操作量が所定値以上で、ブーム上げ操作量とバケットクラウド(バケット引き)操作量の何れかが所定値以上の場合に、HCU100は、非掘削判定フラグをオフ、すなわち掘削状態であると判定し、それ以外の場合は非掘削状態の判定を継続する。
【0074】
条件No.2は、前回の非掘削判定フラグがオフ、すなわち掘削状態の場合を示している。No.2において、ポンプ吐出圧が所定値以上、かつ、アームクラウド(アーム引き)操作量が所定値以上の場合は、HCU100は、非掘削判定フラグをオフ、すなわち掘削状態の判定を継続し、それ以外の場合は非掘削判定フラグをオンして非掘削状態であると判定する。
【0075】
これにより、非掘削状態のときは、作業負荷およびアームクラウド(アーム引き)とブーム上げ・バケットクラウド(バケット引き)との複合操作で状態を判定し、掘削状態のときは、作業負荷およびアームクラウド(アーム引き)の単独操作で状態を判定することにより、掘削/非掘削の状態を精度良く判定することが可能となる。
【0076】
そして、図6で示したように、運転者によるモードスイッチの操作だけでなく、レバー操作量や油圧ポンプ41の負荷などを考慮して作業モードを細分化し、作業モード毎にエンジン22の出力基準値を設けることにより、作業の違いによるエンジン22と油圧ポンプ41の出力の過不足をより一層低減することができる。
【0077】
なお、上記した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0078】
例えば、上記の実施形態では、作業モード毎に油圧ポンプ41の出力の平均値を算出する構成としたが、この構成に代えて、油圧ポンプ41の出力値の中で頻度の一番高い値、即ち、最頻値(本発明の演算値に相当する)を作業モード毎に算出する構成としても良い。
【0079】
また、上記の実施形態では、エンジン出力設定部が、油圧ポンプ41の出力の平均値にバッテリ24の充放電傾向の判定結果を反映させてエンジン22の目標出力を設定する構成を説明したが、エンジン出力設定部は、バッテリ24の充放電傾向の判定結果のみに応じてエンジン22の目標出力を設定しても良い。勿論、この構成によっても、作業モード毎にエンジン22の出力を平準化できる。
【0080】
なお、本発明は、エンジンで油圧ポンプを駆動し、エンジンの駆動をモータでアシストする構成の建設機械であれば、あらゆる種類の建設機械に対して適応できる。例えば、ホイールローダやクレーンに本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0081】
22…エンジン
23…発電機モータ
24…バッテリ(蓄電デバイス)
30…作業機
32…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
34…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
36…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
41…油圧ポンプ
45…PWRモードスイッチ(作業モード選択装置)
46…ECOモードスイッチ(作業モード選択装置)
100…ハイブリッド・コントロール・ユニット(HCU)
401…作業モード判定部
402,404,406…平均値算出部(作業出力演算部)
403,405,407…エンジン出力設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図6