【実施例】
【0024】
実施例に係る自動車の車体前部について説明する。なお、便宜上、車体前部の左側について説明するが、車体前部の右側についても左右対称で同様の構造とする。
【0025】
図1に示されるように、車両10は例えば乗用車である。車体11は、モノコックボディからなり、車両10の車幅方向中心に対し、略左右対称に形成されている。車体11の前部は、アッパメンバ12と、フロントバルクヘッド13とを含み、フロントバルクヘッド13の後方にエンジンルーム14が形成されている。
【0026】
フロントバルクヘッド13は、アッパメンバ12の車幅方向内側に位置して上下に延びるサイドメンバ15と、このサイドメンバ15の上端の角部16から車幅方向内側に延びるアッパクロスメンバ17とを含む。
【0027】
フロントバルクヘッド13の角部16には、ヘッドライト20が車幅方向外に延びるように設けられ、このヘッドライト20の内側にフロントグリル30が設けられ、このフロントグリル30の下端及びヘッドライトの下端にフロントバンパ40が設けられている。
【0028】
ヘッドライト20は、フロントバンパ40の上方に位置し、正面視で、内端にV字状に形成されるV字凸部21と、このV字凸部21の上端部から外方に延びるように形成される上縁22と、V字凸部21の下端部から外方に延びるように形成される下縁23と、この下縁23の外端と上縁22の外端を繋いで上下に延びるように形成される外辺部24とを有する。
【0029】
フロントグリル30は、ヘッドライト20のV字凸部21に対応するように形成されるV字凹部31と、このV字凹部31の上端部から内方に延びるように形成されるグリル上辺部32と、V字凹部31の下端部から内方に延びるように形成されるグリル下辺部33とを有する。
【0030】
フロントバンパ40は、ヘッドライト20の下縁23及びグリル下辺部33に沿うように形成されるバンパ上辺部41と、このバンパ上辺部41の外端部から下方に延びるように形成されるバンパ外辺部42とを有する。
【0031】
図2及び
図3に示されるように、ヘッドライト20は、ヘッドライトブラケット50によって、車体11のフロントバルクヘッド13に固定されている。ヘッドライト20では、V字凸部21の下側部は略水平に延びて下縁23に連続し、V字凸部21の上側部は外側へ若干傾斜するように上方へ延びている。
【0032】
ヘッドライトブラケット50は、ヘッドライト20の下縁23に沿って車幅方向に延びる水平部51と、この水平部51の車幅方向内側の端部52から上方に延びる上延部53とによって、前面視で略L字状に形成されている。ヘッドライトブラケット50は、L字状に形成されている内側が、ヘッドライト20のV字凸部21に沿うように形成されている。このため、ヘッドライトブラケット50とヘッドライト20を、一体的に扱うことができる。
【0033】
ヘッドライトブラケット50において、上延部53には、下向きの締結部材71によってヘッドライト20の上部25を固定するための上固定部54を有している。水平部51の中間外側部には、上向きの締結部材72によってヘッドライト20の下部26を固定するための下固定部55を有している。水平部51の前面中間部には、車両後方向きの締結部材73によって、ヘッドライトブラケット50の水平部51を、サイドメンバ15に固定するための下ブラケット固定部56を有している。
【0034】
また、フロントバルクヘッド13では、アッパクロスメンバ17の上面17aに、上固定部54を固定するためのステー18が設けられている。ステー18にウェルドナット18aが設けられており、このウェルドナット18aに下向きの締結部材71が締結される。
【0035】
フロントバルクヘッド13において、サイドメンバ15には、サイドメンバ15の前面15aに下ブラケット固定部56を当接させ、車両後方向きの締結部材73を締結するウェルドナット15bが設けられている。
【0036】
また、ヘッドライト20において、下部26にナット26aが設けられており、このナット26aに上向きの締結部材72が締結される。このように、ヘッドライト20を上下から挟み込んで固定するので、ヘッドライト20のヘッドライトブラケット50への取付精度を向上させることができる。ヘッドライト20のヘッドライトブラケット50への取付精度が向上するので、ヘッドライト20とヘッドライトブラケット50を一体的に扱い、車体11に取り付けることができる。
【0037】
図4及び
図5に示されるように、ステー18に、ヘッドライト20の上部25、ヘッドライトブラケット50の上固定部54の順に重ねられる。そして、上固定部54及びヘッドライト20の上部25は、下向きの締結部材71により、共締めされることによりフロントバルクヘッド13に固定される。
【0038】
ヘッドライト20の上部25は、上固定当接部25である。この上固定当接部25は、ヘッドライトブラケット50の上固定部54へ向かって突出する上位置決めピン25aを有し、上固定部54に重ねられる。上固定部54には、上位置決めピン25aを挿通する上位置決め孔54aが設けられており、結果、容易に位置決めできる。
【0039】
また、下ブラケット固定部56は、ヘッドライトブラケット50の端部52と、下固定部55との間に設けられている。車幅方向において、下固定部55は、ヘッドライトブラケット50の車幅方向の外端近傍に設けられ、上固定部54は、ヘッドライトブラケット50の車幅方向の内端近傍に設けられている。このため、ヘッドライトブラケット50の車幅方向全体を用いて、ヘッドライト20を支持することができ、上下のみならず、車幅方向においても安定して支持することができ、ヘッドライト20のヘッドライトブラケット50への取付精度がより向上させることができる。
【0040】
図3及び
図6に示されるように、ヘッドライト20の下部26は、下固定当接部26である。この下固定当接部26は、ヘッドライトブラケット50の下固定部55へ向かって突出する下位置決めピン26aを有し、下固定部55に重ねられる。下固定部55には、下位置決めピン26aを挿通する下位置決め孔55aが設けられており、結果、容易に位置決めできる。
【0041】
また、ヘッドライトブラケット50は、端部52から左外方に向かって後方に傾斜するように延びている。ヘッドライト20のレンズ20aも、内側端から左外方に向かって後方に傾斜するように形成されている。結果、底面視で、ヘッドライトブラケット50がヘッドライト20のレンズ20aに沿うように配置でき、ヘッドライトブラケット50とヘッドライト20を一体的に扱うことができる。なお、ヘッドライト20は、レンズ20aと、このレンズ20aの後部のハウジング20bとを有する。
【0042】
図7及び
図8に示されるように、ヘッドライトブラケット50は、水平部51の車幅方向内側の端部52に、車幅方向に開口する孔部57が形成されている。孔部57は、上下方向に長く形成されている。また、ヘッドライト20の車幅方向内側の側面に、孔部57に対応する位置に凸部27が設けられている。この凸部27は、車幅方向に突出して、孔部57に係合している。
【0043】
車両前後方向において、凸部27の幅よりも孔部57の横幅が若干大きく形成されているが、隙間は小さい。このため、前後方向のがたつきを防止することができる。上下方向において、凸部27の幅よりも孔部57の縦幅が大きく形成され、前後方向の隙間よりも大きい。このため、組み付け時に、凸部27を孔部57に容易に係合させることができる。
【0044】
図9に示されるように、凸部27は、ハウジング20bの壁面20cに設けられている。凸部27の前面27aは、凸部27の基端から先端に向かって車体後方に傾斜する傾斜面27aに形成されている。
【0045】
車両の正面軽衝突時に、フロントバンパ40(
図1参照)やフロントグリル30(
図1参照)を介して衝突荷重Fが、ヘッドライトブラケット50に入力される。衝突荷重Fを受けたヘッドライトブラケット50の係合部(孔部57)を、傾斜面27aによりスライドさせて、ヘッドライト20との係合を外すので、ヘッドライト20の損傷を防止することができる。
【0046】
図10〜
図12に示されるように、ヘッドライトブラケット50は、水平部51のなかの、下固定部55よりも車幅方向内側の部分にフロントグリル30を係止するための第1のフロントグリル係止部61が設けられている。第1のフロントグリル係止部61は、側面視で、水平部51から立ち上がり、この立ち上がりの上端から前方に突出するように略L字状に形成されている。形状が簡単であるため、第1のフロントグリル係止部61を形成することが容易である。フロントグリル30は、第1のフロントグリル係止部61に対応する位置に、第1の受け部34が形成されている。
【0047】
また、ヘッドライトブラケット50は、上延部53の中間部分にフロントグリル30を係止するための第2のフロントグリル係止部62が設けられている。第2のフロントグリル係止部62は、側面視で、上延部53から前面から前方に突出するように形成された爪である。形状が簡単であるため、第2のフロントグリル係止部62を形成することが容易である。フロントグリル30は、第2のフロントグリル係止部62に対応する位置に、第2の受け部35が形成されている。
【0048】
フロントグリル30のV字凹部31は、直線状に形成された部分に比較して剛性が低いが、V字凹部31の上下部をフロントグリルブラケット50に係止することで、補強することができる。
【0049】
また、ヘッドライトブラケット50は、水平部51の外端部にフロントバンパ40を係止するためのフロントバンパ係止部63が設けられている。フロントバンパ係止部63は、側面視で、水平部51から立ち上がり、この立ち上がりの上端から前方に突出するように略L字状に形成されている。形状が簡単であるため、フロントバンパ係止部63を形成することが容易である。フロントバンパ40は、フロントバンパ係止部63に対応する位置に、受け部(図示しない)が形成されている。
【0050】
図4及び
図13に示されるように、フロントグリル30のグリル上辺部32には、ヘッドライトブラケット50の上固定部54に対応する位置に車両後方に突出する突出フランジ36が設けられている。この突出フランジ36には、グリル側貫通孔37が設けられている。また、ヘッドライトブラケット50の上固定部54には、ブラケット側貫通孔64が設けられている。上固定部54に突出フランジ36を重ね合わせ、クリップ74を、グリル側貫通孔37及びブラケット側貫通孔64に挿通することで、突出フランジ36を上固定部54に固定することができる。
【0051】
また、上固定部54は、リブ65により補強されている。上固定部は、ヘッドライト50及びフロントグリル30を固定する部分であるが、リブ65により上固定部54の剛性を向上させることができる。
【0052】
以上に述べたヘッドライト固定構造の作用を次ぎに述べる。
図1、
図3及び
図11に示されるように、ヘッドライトブラケット50を、ヘッドライト20、フロントグリル30及びフロントバンパ40で共用することにより、部品同士が相互に補強し合うので、ヘッドライト20、フロントグリル30及びフロントバンパ40の車体11に対する取付剛性が向上する。
【0053】
以上に述べたヘッドライト固定構造をまとめて以下に記載する。
図1〜
図3に示されるように、ヘッドライトブラケット50は、ヘッドライト20の下縁23に沿って車幅方向に延びる水平部51と、この水平部51の車幅方向内側の端部52から上方に延びる上延部53とによって、前面視で略L字状に形成されている。上延部53には、ヘッドライト20の上部25を固定するための上固定部54を有し、水平部51には、ヘッドライト20の下部26を固定するための下固定部55を有しており、ヘッドライト20を上下から挟み込んで固定するので、ヘッドライト20のヘッドライトブラケット50への取付精度を向上させることができる。
【0054】
ヘッドライト20のヘッドライトブラケット50への取付精度が向上するので、ヘッドライト20とヘッドライトブラケット50を一体的に扱い、車体11に取り付けることができる。また、1個のL字状に形成されたヘッドライトブラケット50であるため、簡便な構成にできる。
【0055】
図2に示されるように、上固定部54及びヘッドライト20の上部25は、下向きの締結部材71により、車体11に共締めによって固定されている。ヘッドライト20とヘッドライトブラケット50を車体11に固定する締結部材71は共用であるので、部品点数を削減し、部品コストを低減することができる。また、部品点数を削減することで、ヘッドライト20周辺の部品の重量も低減することができる。
【0056】
図7に示されるように、凸部27は、車幅方向内方に突出して孔部57に係合しているので、上固定部54及び下固定部55から離れた部分に、3点目の固定点が形成することができる。ヘッドライト20は、3点でヘッドライトブラケット50に固定されるので、取付精度をより向上させることができるとともに、ヘッドライト20のヘッドライトブラケット50への取付剛性も向上させることができる。
【0057】
図11に示されるように、ヘッドライトブラケット50は、フロントグリル30を係止するためのブラケットも共用するので、部品点数を削減することができる。また、ヘッドライト20(
図3参照)とフロントグリル30の固定点が、ヘッドライトブラケット50に集約されるので、相互の位置決め精度を向上させることができる。また、ヘッドライトブラケット50を共用することにより、部品同士が相互に補強し合うので、ヘッドライト20及びフロントグリル30の車体11(
図3参照)に対する取付剛性も向上する。
【0058】
図11に示されるように、ヘッドライトブラケット50は、フロントバンパ40を係止するためのブラケットも共用するので、部品点数を削減することができる。また、ヘッドライト20(
図3参照)とフロントバンパ40の固定点が、ヘッドライトブラケット50に集約されるので、相互の位置決め精度を向上させることができる。また、ヘッドライトブラケット50を共用することにより、部品同士が相互に補強し合うので、ヘッドライト20及びフロントバンパ40の車体11(
図3参照)に対する取付剛性も向上する。
【0059】
図1及び
図9に示されるように、凸部27の前面27aは、凸部27の基端から先端に向かって車体後方に傾斜する傾斜面27aに形成されている。車両10の正面軽衝突時に、フロントバンパ40やフロントグリル30を介して衝突荷重がヘッドライトブラケット50に入力される。衝突荷重を受けたヘッドライトブラケット50の係合部を、傾斜面27aによりスライドさせて、ヘッドライト20との係合を外すので、ヘッドライト20の損傷を防止することができる。
【0060】
図4〜
図6に示されるように、ヘッドライト20は、上位置決めピン25aと、下位置決めピン26aとを有する。上固定部54には、上位置決めピン25aを挿通する上位置決め孔54aが設けられ、下固定部55には、下位置決めピン26aを挿通する下位置決め孔55aが設けられているので、ヘッドライトブラケット50に対する、ヘッドライト20の位置決めを容易にできる。また、上位置決めピン25a及び下位置決めピン26aが、ヘッドライトブラケット50に引っ掛かることで、組み付け時にヘッドライト20からのヘッドライトブラケット50が脱落することを防ぎ、ヘッドライト20及びヘッドライトブラケット50の車体11への組み付け性を向上させることができる。
【0061】
尚、実施例においては、車幅方向中心を対称にして、車幅方向左側の部品について説明したが、車幅方向右側であっても同様である。