特許第5997391号(P5997391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997391減圧射出圧縮成形によってコンポジット熱可塑性部品を製造するための方法、この実施のためのデバイス、および得られる部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997391
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】減圧射出圧縮成形によってコンポジット熱可塑性部品を製造するための方法、この実施のためのデバイス、および得られる部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/16 20060101AFI20160915BHJP
   B29C 45/13 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B29C45/16
   B29C45/13
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-538530(P2015-538530)
(86)(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公表番号】特表2015-532229(P2015-532229A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】FR2013052509
(87)【国際公開番号】WO2014064376
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】1260090
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】515110292
【氏名又は名称】ル・ポル・ドゥ・プラスチュルジー・ドゥ・レスト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コショワ,ジャン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】オシュステテール,ジル
(72)【発明者】
【氏名】グロタン,ミシェル
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−251492(JP,A)
【文献】 特表2012−509381(JP,A)
【文献】 特表平10−503439(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/123280(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化材および熱可塑性ポリマーマトリックスを構造的または半構造的なコンポジット部品を製造するための方法であって、
(i)プリフォームの形態である前記繊維強化材を、片方が固定されており、他方が移動する2つの部品を含み、気密性密閉部を有する鋳型に、減圧デバイスを用いて鋳型を減圧下に置くことによって圧縮可能なシール部を用いることによって配置する工程と、
ここで、鋳型内の分圧は1mbarから10mbarであり、前記鋳型は通気口を備えていない、
(ii)反応性熱可塑性プレポリマーに由来する前記熱可塑性ポリマーの前駆体である二成分反応系の最終部品を得るのにちょうど必要なあらかじめ計量した量を、乾燥状態の前記強化材の上に溶融状態で射出することによって、減圧下で前記閉じられた鋳型を充填し、前記鋳型を、射出温度より低い温度での等温条件に維持することができ、前記射出が、溶融状態の2種類の反応性成分それぞれについて2つの別個の区画を備える射出デバイスを用いて行われ、スタティックミキサーヘッドのチャンバ内に射出する前に、前記チャンバ内の滞留時間が2分未満であり、180℃から400℃の範囲温度で、前記反応性成分を混合し、前記繊維強化材の含浸および1mbar未満の圧力で前記二成分反応系の含浸に従う同時に起こる反応、強化材全体への樹脂のクリープ変形は、射出終了時の圧縮圧力によって達成され、通気口を有さない鋳型の完全な充填を確保する工程と、
ここで、前記二成分反応系は、2つの同じ官能基(互いに反応性ではない)を有する少なくとも1つの反応性熱可塑性プレポリマーと、前記反応性プレポリマーの官能基と反応性の2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの非ポリマー性鎖延長剤とを含む、または
前記二成分反応系は、2つの同じ官能基(互いに反応性ではない)を有する少なくとも1つの第1の反応性プレポリマーと、重付加または重縮合によって前記第1の反応性プレポリマーの官能基と反応性の2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの第2の反応性プレポリマーとを含む、
(iii)なんら仕上げ処理を行うことなく、前記部品を鋳型からはずす工程とを含む、方法。
【請求項2】
工程(ii)の後に、まだ工程(ii)の鋳型の中で、作成された部品に対し、L/Dアスペクト比が1000未満の強化短繊維または強化長繊維を含む溶融状態での熱可塑性ポリマーを別個の射出によってオーバーモールド成形する工程も含み、前記ポリマーは、ここでは、ポリマーが溶融する前に、顆粒形態で使用され、すでに前記強化繊維を含んでおり、熱可塑性プラスチックが、前記反応性プレポリマーに由来する二成分反応系から得られるポリマーと適合性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に定義されるような工程(ii)の部品、または請求項2に定義されるようなオーバーモールド成形される部品が、互いに接続し、異なる性質を有し、プラスチック部品および/または金属部品から選択される他の構成部品を含む複雑な部品の一部であり、この方法が、最終的な複雑な部品を作成するように同じ鋳型または異なる鋳型の中の構成部品の「インモールド」アセンブリによって成形するための方法の工程の一部であるか、または一部を構成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維強化材が、特定の鋳型による前記プリフォームの作成によってコンポジット部品を成形する前の工程で作られるプリフォームの形態であり、このプリフォームは、場合により、前記プレポリマーに由来する二成分反応系から得られるポリマーと適合性のポリマーバインダーとともに、または、同じ二成分反応系とともにあらかじめ含浸された前記強化材の圧縮成形によって、同じ鋳型の中で作られるか、または前記プリフォームが、異なる鋳型の中で熱生成によって作られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スタティックミキサーヘッドの出口で射出されるような二成分反応系の粘度は、50Pa・s未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性マトリックスのポリマーは、半結晶性であり、ガラス転移温度Tgが90℃より高く、融点Tmが320℃未満である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記オーバーモールド成形熱可塑性ポリマーは、半結晶性であり、融点が200℃より高い、請求項2からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)180℃から400℃の温度範囲で、二成分反応系を射出することができる、2つの別個の供給区画を有し、それぞれ、加熱制御システムおよび温度制御システムが取り付けられており、この温度が、上述の範囲内であり、それぞれがスタティックミキサーヘッドのチャンバに供給する供給ポンプが取り付けられており、これにも加熱制御システムおよび温度制御システムを有し、このミキサーヘッドが、少なくとも1つの射出点で、以下に定義されるような成形デバイス(b)に供給する、少なくとも1つの溶融射出デバイスと、
(b)2つの部品で構成され、片方が固定されており、他方が移動し、圧縮可能なシール部によって分割されており、このため、気密性成形空洞を生成し、射出温度より低い温度で、加熱し、等温条件で制御するためのシステムと、減圧下に置くためのシステムとが設置されており、圧縮されていない気密性空洞が、射出された材料のクリープ変形を可能にし、減圧下で鋳型を閉じると発生する圧縮によって、1mbar未満の圧力で、空洞部内のこれらすべてにおいて、前記空洞部の完全な充填と、さらに、強化という観点で材料の横方向へのクリープ変形の両方を確保し、前記鋳型は、減圧下で気密性密閉部を有し、通気口を備えておらず、スタティックミキサーヘッドの出口面での供給を介し、射出デバイス(a)によって直接供給される、減圧圧縮成形デバイスとを含む、請求項1からのいずれか一項に定義されるような方法を実施するための製造デバイス。
【請求項9】
アスペクト比が1000未満の短繊維または長繊維が保持された溶融状態の熱可塑性プラスチックをオーバーモールド成形するために、一成分系のための少なくとも1つの第2の射出デバイスを備え、この第2の射出デバイスは、同じ成形デバイス(b)に直接接続しており、熱可塑性プラスチックを、前記繊維が保持された顆粒の形態で、前記射出デバイスに、場合により供給ホッパーを用いて供給することができ、前記第2の射出デバイスが、1要素の射出機または押出成形機であることを可能にする、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
この使用のために、鋳型からはずした後にさらなる機械加工または仕上げを必要としない、「正味の形状」の構造的または半構造的なコンポジット部品の製造方法であって、請求項1からのいずれか一項に記載されるような方法および/または請求項またはに記載されるようなデバイスの使用を含む、方法。
【請求項11】
「インモールド」アセンブリによる複雑で多要素のコンポジット部品の製造に関する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応性プレポリマーがポリアミドである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記スタティックミキサーヘッド内の前記滞留時間が10秒未満である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記Tgが100℃より高く、前記Tmが200℃から280℃である、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記熱可塑性マトリックスが半結晶性ポリアミドである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧状態に維持される閉じられた2部品の鋳型において射出圧縮による特定の成形を含む、構造的または半構造的なコンポジット部品を製造するための特定の方法、さらに、この製造方法を実施するための特定のデバイス、これらから得られる構造的または半構造的な部品、例えば「インモールド」アセンブリ方法と組み合わせた前記方法の特定の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
強化長繊維が入れられた反応性組成物から成形したコンポジット部品を製造するために用いられる現行の方法は、一般的に、鋳型からはずした後の再加工操作および仕上げ操作を必要とし、これによって、最終部品の空隙率が比較的高いままとなるため、これらの部品を使用するときの部品の機械性能レベルに影響を与えるという事実に加え、最終部品のためのサイクルタイムが長くなり、生産性がかなり低下する。特に、自動車部品の場合には、成形された部品が、なんら問題を起こすことなく、電気泳動条件での処理に耐えることができることが必須である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、この方法を実施するための新規デバイスの使用を介する特定の新規方法を提供することによって、これらの欠点を改善することを目的とする。
【0004】
従って、解決すべき問題は、鋳型からはずした後に、仕上げのための再加工操作および/または機械加工操作を必要とせず、良好な機械強度を有し、成形温度で50Pa・s未満、好ましくは、5Pa・s未満、さらに優先的には1Pa・s未満の溶融粘度を有する反応性熱可塑性プレポリマーの使用を可能にする、構造的または半構造的な最終コンポジット部品を迅速に製造するという問題である。さらに特定的には、自動車部品の場合には、この部品は、なんら特定の困難または問題なく、電気泳動を通過することができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決策は、片方が固定されており、他方が移動し、圧縮可能なシール部によって分割された2部品の鋳型を含み、このため、減圧下で気密性のある成形空洞部を形成する射出成形デバイスシステムを提案する。これにより、液体樹脂を迅速に射出することができ、通気口の存在によって分配することができ、これによって、この部品を鋳型からはずした後に機械加工を必要とするスプルーの生成を回避することができる。最終用途のための仕上げ加工または機械加工を必要とせず、「正味の形状に」成形された部品を得ることができる方法である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
樹脂を鋳型に射出した後、この鋳型の2つの面を互いに対して移動させることができる。これにより、溶融した樹脂と繊維からなる組み合わせを密に詰めることができ、最終的に、空隙度が非常に小さいコンポジットを得ることができ、これによって、良好な機械強度を有する成形物品が得られる。この圧縮は、鋳型の面に加えられる1mbar程度、特に、1mbar未満に対応するさらなる圧力低下によって行われる。
【0007】
密に詰められていない(即ち、圧縮されていない)気密性の成形空洞部は、材料の容易なクリープ変形を可能にし、射出時間を短くし、このことは、本発明の重要な利点である。鋳型を閉じることに起因する(作られた圧力低下の影響下で)密に詰めること、または圧縮は、約1mbarの圧力、特に、1mbar未満の圧力で、空洞部内のこれらすべてにおいて、前記成形空洞部の完全な充填と、さらに、強化という観点で材料の横方向へのクリープ変形を確保する。前記鋳型は、減圧下で気密性密閉部を有し、通気口を備えておらず、以下の射出システムについて記載されるようなスタティックミキサーヘッドの出口面での供給を介し、射出デバイスによって直接供給される。
【0008】
減圧が存在し、インサートが存在せず、樹脂と繊維の組み合わせを最終的に密に詰めることができるため、部品を製造するのに必要で、十分な量の樹脂のみを射出することができ、このことが、この方法の節約の源であり、本発明の方法のさらなる利点である。
【0009】
密に詰めることができるため、「LCM」(液体コンポジット成形)方法、例えば、RTMに従来から使用される熱硬化性樹脂よりも溶融状態で粘度が高い熱可塑性樹脂を使用することもできる(典型的には、熱可塑性RTMの場合に1Pa・s未満であるのと比較して、1Pa・sから50Pa・s)。これに加え、前記鋳型を(圧力低下によって)閉じるための圧力によって、製造するのにもっと安く、軽く、もっと現実的な材料から作られた鋳型を使用することができる。
【0010】
樹脂射出システムは、二成分反応系を使用することができ、2種類の化合物が互いに独立して循環し、従って時間制限がない(可使時間がない)2つの独立したネットワークからなる。このシステムは、鋳型に射出する直前に、混合時間が2分未満、好ましくは、1分未満、さらに特定的には、10秒未満で、2種類の構成要素の迅速な混合を可能にする機械的なシステムによって制御されるスタティック混合チャンバ(例えば、スタティックミキサーヘッドチャンバ)も備えている。前記鋳型に射出する前のスタティックミキサーヘッド内の滞留時間(二成分の混合時間)は、この特定の成形システムに射出する前の混合物の重合および凝固を回避するように、前記二成分系の反応性によって調節されることが明らかである。
【0011】
このシステムによって、反応性熱可塑性プレポリマー(特に、半芳香族または半脂環式のポリアミド)および鎖延長剤の使用が可能となり、このシステムは、プレポリマーおよび鎖延長剤の反応後に作られる最終的なポリマーのTgが高いため、良好な機械特性を有する部品を得るための手段である。ある好ましい態様において、このポリマーは、半結晶性であり、結晶化温度が200℃より高く、好ましくは、220℃より高く、成形される部品を電気泳動方法に通すことができる。
【0012】
これに加え、高Tgを有するポリアミド(HT PA)の使用と、高温で、典型的には、180℃から400℃、好ましくは、200℃から300℃で操作する射出方法の使用によって、典型的には、5分未満、好ましくは、2分未満、さらになお優先的には、1分未満の重合を伴う迅速な反応系を使用することが可能になり、最終的に、成形のサイクルタイムを短くすることが可能になる。
【0013】
このシステムによって、長さ対直径のL/Dアスペクト比が1000より大きく、好ましくは、2000より大きい長い強化繊維網目構造を構成するプリフォームを使用することができる。
【0014】
例えば、固定タブまたはインサートを備える複雑な形状の部品を製造することができるように、樹脂、成形されるポリマーをあらかじめ含浸したプリフォームのオーバーモールド成形が可能である。オーバーモールド成形に使用されるポリマーは(顆粒の形態で)、好ましくは、例えば、ガラスまたは炭素で作られる短い強化繊維または長い強化繊維(L/Dが1000未満)を保持しており、連続繊維の網目構造を含浸するために用いられる樹脂(または二成分反応性組成物)と同じ化学的性質を有する(か、またはこれらと適合性である。)。特に、前記オーバーモールド成形されるポリマーは、オーバーモールド成形される部品と、連続繊維を含むコンポジット部品との良好な接着性を与えるように、連続した長繊維を含むコンポジット部品を製造するために半結晶性樹脂が用いられる場合には、コンポジットと、オーバーモールド成形される部品との組み合わせが、電気泳動を通過するのを確保するように、化学的および物理的に適合性である。
【0015】
本発明は、この独創性という観点で、現在の従来技術と比較して、以下に示すような関連する利点を有する。
【0016】
溶融成形工程。従って、熱可塑性プラスチックに適しており、プレポリマーを使用することができるため、迅速であり、重合工程の持続時間を所定範囲内に抑え、モノマーから出発する方法によって生じる残留モノマー含有量の問題を生じず、後硬化または過度な重合時間を回避し、特に、融点が高い半結晶性プレポリマー(好ましくは、ポリアミド)の場合に、重合終了前に鋳型からはずすこともできる。また、この方法は、射出システムを高温で操作し、HT PA型のプレポリマーを使用することができるため、迅速である。この種のプレポリマーは、高温で重合するため迅速な重合速度を有し、これに加え、得られるポリマーは、高いTgを有し、コンポジットに良好な機器特性を得ることができ、好ましくは、半結晶性であり、結晶化温度が200℃より高く、この結果、成形されるコンポジット部品は電気泳動を通過することができる。この種の方法は、現時点では存在しない。
【0017】
鋳型からはずした後に再び触る必要がなく、同時に、複雑な形状を有し、良好な機械的耐性を有し、繊維の含浸に必要で十分な(あらかじめ計量する。)量の樹脂のみを使用することができる最終部品を得ることができる、熱可塑性成形方法およびオーバーモールディング成形方法。この種の方法は、現時点では存在しない。
【0018】
さらに特定的には、本発明の解決策は、自動車分野の部品に対し、さらに特定的には、複雑な部品に対し、もっと特定の関心を有する。電気泳動を通過する条件に耐性があり、さらに特定的には、複雑な部品、例えば、自動車産業で用いられる一般的な用語に従うと、車の「ボディインホワイト」に関していてもよい。ドア、エンジンおよび車体は、この部品に接続しており、この部品は、コンポジットと金属を合わせて含む。実際に、アセンブリは、コンポジットと金属を合わせて含むため、電気泳動による処理に耐える。
【0019】
本発明の方法および/または本明細書に記載するデバイスを用いて得られる本発明の部品の最終用途は、さらに一般的には、以下の分野での用途に関する。自動車産業、道路輸送(トラック)、鉄道産業、海事産業、航空学、風力発電、太陽(熱)産業(太陽発電所を含む。)、宇宙産業、光電池、建築産業および土木、都市の設備および装置、標識、スポーツおよびレジャー。
【0020】
従って、本発明の第1の主題は、減圧下、通気口を有さない特定の鋳型に繊維強化材を配置する工程、次いで、前記強化材に、熱可塑性プレポリマーに由来する二成分反応性組成物を溶融状態で、射出によって、スタティックミキサー中の前記成分を混合しつつ、二成分それぞれについて2つの区画を有する特定の射出デバイスを用いて射出することによって、減圧下で前記鋳型を充填する工程、充填の後に、前記鋳型の2つの部品に働く圧力および前記鋳型の2つの部品を分割するシール部の圧縮によって射出された材料を密に詰めることができるさらなる圧力低下、最後に、仕上げ加工または機械加工をさらに必要とすることなく、鋳型から前記部品をはずす工程を含む、構造的または半構造的なコンポジット部品を処理または製造するための具体的な方法に関する。
【0021】
本発明の第2の主題は、特定の射出デバイスと特定の成形デバイスとを本発明の同じデバイス中に併せもち、本発明の第1の主題である前記方法の実施を可能にする特定のデバイスに関する。
【0022】
本発明は、さらに、特に、本発明の方法を用いることによって、特に、鋳型からはずした後に仕上げ処理を含まない本発明の方法を用いることによって得ることができる構造的または半構造的なコンポジット部品を包含する。実際に、この部品は、このシステムを減圧下で操作するため、この方法が通気口を有さない鋳型を用いるという事実に起因して、型からはずしたとき、さらなる機械加工および仕上げを必要とする通気口に関連するスプルーを有さない。
【0023】
最後に、本発明は、「インモールド」アセンブリ方法(「インモールド」という用語は、この種の方法に一般的に用いられる。)、即ち、インモールドの方法、特に、この使用に適した同じインモールドの方法において、コンポジットから、一般的なプラスチックから、および金属から作られる部品を備えていてもよい複雑で多要素のコンポジット部品の製造に非常に適し、柔軟性のある限り、本発明の方法の使用を包含する。
【0024】
従って、本発明の第1の主題は、もっと詳細な様式では、繊維強化材および熱可塑性ポリマーマトリックス、好ましくは、ポリアミドに由来する熱可塑性ポリマーマトリックスを含み、複雑な形態を有していてもよい構造的または半構造的なコンポジット部品を製造するための方法であって、
(i)プリフォームの形態であってもよい前記繊維強化材を、片方が固定されており、他方が移動する2つの部品を含み、気密性密閉部を有する鋳型に、減圧デバイスを用いて鋳型を減圧下に置くことによって圧縮可能なシール部を用いることによって配置し、鋳型内の分圧が1mbarから10mbarであり、前記鋳型が通気口を備えていない工程と、
(ii)反応性熱可塑性プレポリマー、好ましくは、反応性ポリアミドプレポリマーに由来する前記熱可塑性(マトリックス)ポリマーの前駆体である二成分反応系(二成分反応性組成物とも呼ばれる。)の最終部品を得るのにちょうど必要なあらかじめ計量した量を、乾燥状態の前記強化材の上に溶融状態で射出することによって、減圧下で前記閉じられた鋳型を充填し、前記鋳型を、射出温度より低い温度での等温条件に維持することができ、前記射出が、溶融状態の2種類の反応性成分それぞれについて2つの別個の区画を備える射出デバイスを用いて行われ、スタティックミキサーヘッドのチャンバ内に射出する前に、前記チャンバ内の滞留時間が2分未満、好ましくは、1分未満、さらに優先的には、10秒未満であり、180℃から400℃、好ましくは、200℃から300℃の範囲であってもよい温度で、前記反応性成分を混合し、前記繊維強化材の含浸および1mbar未満の圧力で前記二成分反応系の含浸に従う同時に起こる反応、強化材全体への樹脂のクリープ変形は、射出終了時の密に詰める圧力によって達成され、通気口を有さない鋳型の完全な充填を確保する工程と、
(iii)なんら仕上げ処理を行うことなく、前記部品を鋳型からはずす工程とを含むことを特徴とする、方法に関する。
【0025】
ある特定の選択肢によれば、工程(ii)の後に、まだ工程(ii)の鋳型の中で、作成された部品に対し、L/Dアスペクト比が1000未満の強化短繊維または強化長繊維を含む溶融状態での熱可塑性ポリマーを別個の射出によってオーバーモールド成形する工程も含み、前記熱可塑性ポリマーは、ここでは、ポリマーが溶融する前に、顆粒形態で使用され、既に前記強化繊維を含んでおり、熱可塑性プラスチックが、前記反応性プレポリマーに由来する二成分反応系から得られるポリマーと適合性である。
【0026】
前記方法の特定の一態様によれば、工程(ii)の部品は、オーバーモールド成形されていないか、または上に定義されるようにオーバーモールド成形されており(オーバーモールド成形された部品)、この部品は、互いに接続し、異なる性質を有し、プラスチック部品および/または金属部品から選択される他の構成部品を含む複雑な部品の一部(さらに特定的には、一体型部品であってもよい。)であり、この方法が、最終的な複雑な部品を作成するように同じ鋳型または異なる鋳型の中の構成部品の「インモールド」アセンブリによって成形するための方法の工程の一部であるか、またはこの方法の一工程である。
【0027】
本発明の方法の一変形例によれば、前記繊維強化材は、特定の鋳型による前記プリフォームの作成によってコンポジット部品を成形する前の工程で作られるプリフォームの形態であってもよく、このプリフォームは、場合により、前記プレポリマーに由来する二成分反応系から得られるポリマーと適合性のポリマーバインダーとともに、または、同じ二成分反応系とともにあらかじめ含浸された前記強化材の圧縮成形によって、同じ鋳型の中で作られるか、または前記プリフォームが、異なる鋳型の中で熱生成によって作られる。
【0028】
好ましくは、前記スタティックミキサーヘッドの出口で射出されるような前記二成分反応系の粘度は、50Pa・s未満であり、好ましくは、5Pa・s未満であり、さらに優先的には、1Pa・s未満である。
【0029】
第1の選択肢の二成分反応系に関し、2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの反応性熱可塑性プレポリマー、好ましくは、反応性ポリアミドプレポリマーと、好ましくは重付加(反応副生成物の脱離がないことを意味する。)によって前記反応性プレポリマーの官能基(のみ)と反応性の2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの非ポリマー性鎖延長剤とを含む。
【0030】
第2の選択肢によれば、前記二成分反応系は、2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの第1の反応性プレポリマー、好ましくは、反応性ポリアミドプレポリマーと、重付加または重縮合によって前記第1の反応性プレポリマーの官能基(のみ)と反応性の2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの第2の反応性プレポリマー、好ましくは、反応性ポリアミドプレポリマーとを含む。
【0031】
本発明の方法の好ましい一態様によれば、前記熱可塑性マトリックスのポリマーは、半結晶性であり、ガラス転移温度Tgが、90℃より高く、好ましくは、100℃より高く、さらに優先的には、120℃より高く、融点Tmが、320℃未満、好ましくは、Tmが、280℃未満、さらに優先的には、Tmが、200℃から280℃であり、特に、半芳香族および/または半脂環式の構造を有し(芳香族構造および/または脂環式構造を含むことを意味する。)、好ましくは、半結晶性ポリアミドである。この場合において、前記二成分反応性組成物(または二成分反応系)中の対応する熱可塑性プレポリマーも、半結晶性であり、同じ構造を有し、好ましくは、半結晶性反応性ポリアミドプレポリマーである。
【0032】
前記コンポジット材料の熱可塑性マトリックスの最終的な熱可塑性ポリマーの数平均分子量Mnは、好ましくは、10000から40000、好ましくは、12000から30000の範囲である。この構造は、前記熱可塑性マトリックスの熱可塑性ポリマーの前駆体である二成分反応性組成物(二成分反応系)の結果である。使用される対応する反応性プレポリマーの重量Mnは、熱可塑性マトリックスの最終的なポリマーよりも少なくとも2分の1小さい。
【0033】
マトリックスの熱可塑性ポリマーの前駆体である二成分反応系(または二成分反応性組成物)の一部である熱可塑性反応性プレポリマー(好ましくは、ポリアミドプレポリマー)の数平均分子量Mnは、500から10000、好ましくは、1000から6000の範囲であってもよい。
【0034】
このMn値は、前記プレポリマーによって生じる末端官能基の滴定(例えば、電位差滴定)および材料のバランスから決定されるプレポリマーの官能性、および反応性プレポリマーの調製に関与する反応剤の官能性からの計算によって決定される。
【0035】
前記マトリックスの前記熱可塑性ポリマーの前駆体である前記二成分反応系(または本明細書で(p)と示される二成分反応性組成物)は、それぞれ、2つの二官能の反応性熱可塑性プレポリマー(p11)および(p12)に由来する2つの選択肢(p1)に従って定義することができ、好ましくは、半結晶性であり、さらに特定的には、ポリアミド反応性プレポリマーであり、(p11)は、2つの同じ反応性官能基X’を有し、(p12)は、これも同じである2つの官能基Y’を有し、2つの官能基X’およびY’は、互いに反応性である。
【0036】
第2の好ましい選択肢によれば、前記前駆体組成物は、熱可塑性の二官能反応性プレポリマー(p21)に由来する(p2)に従って定義され、好ましくは、半結晶性であり、特に、ポリアミド反応性プレポリマーであり、2つの同じ反応性官能基Xを有し、非ポリマー性鎖延長剤(p22)について、好ましくは、分子量が500未満、特に、400未満であり、(p22)は、2つの同じ反応性官能基Yを有し、前記プレポリマー(p21)の前記官能基Xは、前記延長部(p22)の前記官能基Yと反応性である。
【0037】
(p11)、(p12)または(p21)に従って定義されるような前記二成分反応系(p)の反応性プレポリマーによって生じる好ましい官能基は、アミン(NHによってあらわされ、一級アミンおよび二級アミンの両方をあらわす。)、カルボキシ(COHによってあらわされる。)またはヒドロキシル(OHによってあらわされる。)、さらに優先的には、アミンおよびカルボキシから選択される。
【0038】
前記延長部(p22)の前記官能基Yは、前記プレポリマー(p21)の官能基Xに従って以下のように選択することができる。
【0039】
Xがカルボキシであるとき、Yは、オキサゾリン、オキサジン、イミダゾリン、アジリジンまたはエポキシから選択され;
Xがアミンであるときは、Yは、マレイミド、エポキシ、保護されたイソシアネート、オキサジノン、オキサゾリノン、カプロラクタムまたはカルボン酸無水物から選択され、後者の場合には、特に前記延長部が、環状芳香族および/または脂環式の酸無水物から選択されてもよい。
【0040】
本発明に適切な延長部(p22)の例を以下に述べる。2つの官能基(または基)Yを有する延長部(p22)の一部は、二価の−A’−によってあらわされてもよく、前記延長部は、全体的な式Y−A’−Yを有する。
【0041】
さらに特定的には、前記延長部Y−A’−Yが、オキサジノン、オキサゾリノン、オキサジン、オキサゾリンまたはイミダゾリンから選択される官能基Yに対応する場合、この場合において、Y−A’−Yによってあらわされる鎖延長剤において、A’は、アルキレン、例えば、−(CH−(mは1から14の範囲、好ましくは、2から10の範囲である。)をあらわしてもよく、または、A’は、置換(アルキル)または非置換のシクロアルキレンおよび/またはアリーレン、例えば、ベンゼンアリーレン、例えば、o−、m−またはp−フェニレンまたはナフタレンアリーレンをあらわしてもよく、好ましくは、A’は、アリーレンおよび/またはシクロアルキレンであってもよい。Yがエポキシである場合にも、このことは妥当なままである。
【0042】
鎖延長剤Y−A’−Yとしてカルボニル−またはテレフタロイル−またはイソフタロイル−ビスカプロラクタムである場合には、重合および溶融状態での成形中、好ましい条件によって副生成物(例えば、カプロラクタム)の脱離を防ぐ。
【0043】
Yが、保護されたイソシアネート官能基である場合には、この保護は、イソシアネート官能基のための保護剤、例えば、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトオキシム、ジメチルピラゾールまたはマロン酸ジエチルを用いて得ることができる。
【0044】
同様に、延長部が、X=アミンを有するプレポリマー(p21)と反応する酸二無水物である場合には、重合および溶融状態での成形(処理)中、好ましい条件によってイミド環の生成を防ぐ。
【0045】
X=アミンの場合、Y基は、好ましくは、保護されたイソシアネート、オキサジノンおよびオキサゾリノンまたはエポキシ、さらに優先的には、オキサジノンおよびオキサゾリノンから選択され、基として、A’は、上に定義されるとおりである。
【0046】
本発明の実施に適したオキサゾリンまたはオキサジン反応性官能基Yを有する鎖延長剤の例として、出願EP0581642号のページ7の参考文献「A」、「B」、「C」および「D」に記載されるものを参照してもよく、さらに、この調製方法、およびここに記載されるこれらの反応態様を参照してもよい。前記書類の「A」は、ビスオキサゾリンであり、「B」は、ビスオキサジンであり、「C」は、1,3−フェニレンビスオキサゾリンであり、「D」は、1,4−フェニレンビスオキサゾリンである。
【0047】
本発明の実施に適切なイミダゾリン反応性官能基Yを有する鎖延長剤の例として、出願EP0739924号のページ7から8、およびページ10の表1に記載されているもの(「A」から「F」)、さらに、この調製方法、およびここに記載されるこれらの反応態様を参照してもよい。
【0048】
本発明の実施に適した反応性官能基Y=オキサジノンまたはオキサゾリノンを有する鎖延長剤の一例として、出願EP0581641号のページ7から8の参考文献「A」から「D」に記載されるものを参照してもよく、さらに、この調製方法、およびここに記載されるこれらの反応態様を参照してもよい。
【0049】
適切なオキサジノン(6個の原子を含む環)およびオキサゾリノン(5個の原子を含む環)のY基の例として、ベンゾオキサジノン、オキサジノンまたはオキサゾリノンから誘導されるY基で作られるものを述べてもよく、A’は、ビス−(ベンゾオキサジノン)、ビスオキサジノンおよびビスオキサゾリノンであるそれぞれの対応する延長部との共有単結合であってもよい。
【0050】
A’は、C1からC14、好ましくは、C2からC10のアルキレンであってもよいが、A’は、好ましくは、アリーレンであり、さらに特定的には、フェニレン(1,2位または1,3位または1,4位で、Yで置換されている。)またはナフタレン基(Yで二置換されている。)またはフタロイル(イソフタロイルまたはテレフタロイル)であってもよく、またはA’は、シクロアルキレンであってもよい。
【0051】
オキサジン(6員環の環)、オキサゾリン(5員環の環)およびイミダゾリン(5員環の環)から選択されるY官能基の場合、A’基は、上述のものであってもよく、A’は、共有単結合であってもよく、それぞれの対応する延長部は、ビスオキサジン、ビスオキサゾリンおよびビスイミダゾリンである。A’は、C1からC14、好ましくは、C2からC10のアルキレンであってもよい。A’基は、好ましくは、アリーレンであり、さらに特定的には、フェニレン(1,2位または1,3位または1,4位で、Yで置換されている。)またはナフタレン基(Yで二置換されている。)またはフタロイル(イソフタロイルまたはテレフタロイル)であってもよく、または、A’は、シクロアルキレンであってもよい。
【0052】
Y=アジリジンであり(エチレンオキシドと等価な3つの原子を含む窒素系ヘテロ環、エーテル−O−が−NH−と置き換わっている。)、A’基は、フタロイル(1,1’イソフタロイルまたはテレフタロイル)であってもよく、この種の延長部の例として、1,1’−イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)であってもよい。
【0053】
前記プレポリマー(p21)と前記延長部(p22)の反応の触媒が、2つの上述の共反応剤の合計重量に対して0.001%から2%、好ましくは、0.01%から0.5%の範囲の含有量で存在することで、(重)付加反応を促進し、これによって、製造サイクルを短くすることができる。このような触媒は、4,4’−ジメチルアミノピリジン、p−トルエンスルホン酸、リン酸、NaOH、および場合により、EP0425341号のページ9、1行から7行に記載されるような、重縮合またはエステル交換について記載されるものから選択することができる。
【0054】
前記延長部の選択のさらに具体的な場合によれば、A’は、アルキレン、例えば、−(CH−(mは、1から14、好ましくは、2から10の範囲である。)をあらわしてもよく、または、アルキル置換または非置換のアリーレン、例えば、ベンゼンアリーレン(例えば、o−、m−またはp−フェニレン)またはナフタレンアリーレン(アリーレン:ナフチレン)をあらわす。好ましくは、A’は、ベンゼン系またはナフテン系であってもよい置換または非置換のアリーレンをあらわす。好ましくは、A’は、置換または非置換のベンゼン系またはナフテン系であってもよいアリーレンをあらわす。
【0055】
(p11)、(p12)または(p21)によって上に定義されるような反応性プレポリマーは、アモルファス構造または半結晶性構造を有していてもよく、半結晶性構造が好ましい。これらのプレポリマー(結果として、熱可塑性マトリックスのポリマー)の化学構造に関し、これらのプレポリマーは、例えば、ポリアミド−エーテル、ポリアミド−エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアリールエーテル、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)およびポリイミドのコポリマーを含め、ポリアミドのホモポリマーまたはコポリマーに由来する反応性プレポリマーから選択されてもよい。
【0056】
(p11)、(p12)または(p21)によって定義されるような熱可塑性反応性プレポリマーは、二官能の定義によるものであり、鎖伸長反応の後は、(熱可塑性)の定義によって直鎖ポリマーが得られる。
【0057】
これらのプレポリマーは、従来の経路、例えば、それぞれ、プレポリマー(p11)、(p12)および(p21)について、上に定義されるような前記官能基X’またはY’またはX、または上に定義されるようなX’、Y’またはXに後で改変される他の初期の反応性官能基を有する二官能の反応性モノマーからオリゴマーまたはプレポリマーを生成するように制限された(制御された)重付加または重縮合によって調製することができる。
【0058】
さらに特定的には、この好ましいポリアミド反応性プレポリマーの場合には、例えば、分子量のような最終的な機能を付与する2種類のモノマーの片方を過剰にしつつ、ジアミンと二酸との重縮合によって得ることができる。2つのジアミンおよび二酸モノマーに加え、アミノ酸またはラクタムが存在していてもよい。(p1)型の二成分反応性組成物の場合には、前記プレポリマー(p11)は、2つの同じアミンまたはカルボキシ官能基X’を有していてもよく、第2のポリアミドプレポリマー(p12)は、官能基X’とのみ反応性の2つの官能基Y’を有するだろう。組成物(p2)の場合において、官能基Yおよび対応する延長部(p22)の選択は、ポリアミドプレポリマー(p21)の官能基Xに関し、既に上に記載されている。
【0059】
前記熱可塑性コンポジット材料の繊維強化材という観点で、好ましくは、L/D(長さ−対−直径)アスペクト比が、1000よりかなり大きく、好ましくは、2000より大きい強化長繊維に由来する。
【0060】
繊維は、連続的であってもよく、プリフォームであってもよいアセンブリの形態で存在していてもよい。繊維は、一方向性(UD)または複数方向性(2D、3D)の強化材の形態であってもよい。特に、繊維は、衣類、布地、シート、布片、編み地の形態であってもよく、例えば、不織(マット)の形態またはフェルト地の形態に切断することもできる。
【0061】
これらの強化繊維は、以下のものから選択されてもよい。
【0062】
鉱物繊維、これらは、処理温度よりも高い融点Tm’を有する。
【0063】
融点Tm’を有するか、または、Tm’までいかず、ガラス転移温度Tg’が、処理温度よりかなり高いポリマーまたはポリマー繊維、
または上述の繊維の混合物。
【0064】
さらに特定的には、これらの強化繊維は、以下のものから選択されてもよい。
【0065】
鉱物繊維は、炭素繊維、カーボンナノチューブ繊維、ガラス繊維、特に、E、RまたはS2型、ホウ素繊維、セラミック繊維、特に、炭化ケイ素繊維、ホウ素カーバイド繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、玄武岩繊維、金属に由来する繊維またはフィラメント、および/またはこれらのアロイ、金属酸化物(例えば、Al)に由来する繊維、金属化された繊維、例えば、金属化されたガラス繊維および金属化された炭素繊維、または上述の繊維の混合物から選択することができ、および
ポリマーまたはポリマー繊維は、上述の条件下では、
熱可塑性ポリマーの繊維、さらに特定的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)から選択されるもの、
式6、11、12、6.10、6.12、6.6、4.6のいずれかに対応するポリアミドの繊維、
アラミド繊維(例えば、Kevlar(R))および芳香族ポリアミド、例えば、式PPD.T、MPD.I、PAAおよびPPAのいずれかに対応するもの(PPDおよびMPDは、それぞれ、p−およびm−フェニレンジアミンであり、PAAは、ポリアリールアミドであり、PPAは、ポリフタルアミドである。)、
ポリアミドのブロックコポリマー、例えば、ポリアミド/ポリエーテルの繊維、またはポリアリールエーテルケトン(PAEK)繊維、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)またはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)から選択される。
【0066】
好ましい強化繊維は、炭素繊維(金属化された炭素繊維を含む。)、ガラス繊維(E、RまたはS2型の金属化されたガラス繊維を含む。)、アラミド繊維(例えば、Kevlar(R))または芳香族ポリアミド繊維、ポリアリールエーテルケトン繊維(PAEK)、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)繊維、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)繊維、またはこれらの混合物から選択される長繊維である。
【0067】
繊維は、さらに特に好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびアラミド(例えば、Kevlar(R))繊維、またはこれらの混合物から選択される。
【0068】
前記繊維は、前記コンポジット材料の40体積%から70体積%、好ましくは、50体積%から65体積%の含有量をあらわしていてもよい。
【0069】
繊維のアセンブリは、ランダム(マット)、一方向性(UD)または複数方向性(2D、3Dなど)であってもよい。この坪量、即ち、平方メートルあたりの重量は、100g/mから1000g/m、好ましくは、200g/mから700g/mの範囲であってもよい。
【0070】
最も好ましい繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびアラミド繊維、またはこれらの混合物から選択される。
【0071】
前記強化繊維に加え、本発明の方法の熱可塑性コンポジットの組成物は、他のフィラーまたは添加剤を含んでいてもよい。
【0072】
適切なフィラーの中で、例えば、無機または有機のフィラー、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素ナノフィブリル、ガラスビーズまたは粉末、および粉末形態の粉砕したリサイクルしたポリマーから作られるものが述べられるだろう。
【0073】
適切な添加剤の中で、(UVまたはIR)レーザー技術によって得られるコンポジットの溶接を可能にするようなUVまたはIR範囲で吸収する添加剤、および立体的に嵩高いフェノールまたは立体的に嵩高いアミン型(HALS)の酸化防止剤から選択される熱安定化剤から作られるものが述べられるだろう。これらの安定化剤の機能は、得られるコンポジットのマトリックスポリアミドの熱酸化、この後の光酸化および分解を防ぐことである。
【0074】
さらに特定的には、上述のようなオーバーモールド成形される部品を製造する場合には、前記オーバーモールド成形熱可塑性ポリマーは半結晶性であり、融点が200℃より高く、好ましくは、半結晶性ポリアミドである。上述のように、前記オーバーモールド成形するポリマーは、熱可塑性コンポジットのマトリックス熱可塑性ポリマーと適合性である。
【0075】
本発明の第2の主題は、本明細書で上に定義されるような方法の実施を可能にする1セットの合わせた装置または機械であってもよい製造デバイス、または製造ユニットまたはワークショップであり、このデバイスは、
(a)180℃から400℃、好ましくは、200℃から350℃、さらに優先的には、200℃から300℃の温度範囲で、二成分反応系(二成分反応性組成物とも呼ばれる。)を射出することができる、2つの別個の供給区画を有し、それぞれ、加熱制御システムおよび温度制御システムが取り付けられており、(この温度が、上述の範囲内であり)、それぞれがスタティックミキサーヘッドのチャンバに供給する供給ポンプが取り付けられており、これにも加熱制御システムおよび温度制御システムを有し、このミキサーヘッドが、少なくとも1つの射出点で、以下に定義されるような成形デバイス(b)に供給する、少なくとも1つの溶融射出デバイスと、
(b)2つの部品で構成され、片方が固定されており、他方が移動し、圧縮可能なシール部によって互いに分割されており、このシール部は、好ましくは、フルオロエラストマーまたは弾性金属シール部に由来し、このため、気密性成形空洞(気密性空洞)を生成し、射出温度より低い温度で、加熱し、等温条件で制御するためのシステムと、密に詰められていない(即ち、圧縮されていない。)気密性空洞を減圧下に置くためのシステムとが設置されており、射出された材料のクリープ変形を可能にし、減圧下で鋳型を閉じると発生する密に詰めること(または圧縮)によって、1mbar未満の圧力で、空洞部内のこれらすべてにおいて、前記空洞部の完全な充填と、さらに、強化という観点で材料の横方向へのクリープ変形の両方を確保し、前記鋳型は、減圧下で気密性密閉部を有し、通気口を備えておらず、スタティックミキサーヘッドの出口面での供給を介し、射出デバイス(a)によって直接供給される、減圧圧縮成形デバイスとを含む。
【0076】
この2つの別個の区画を有する前記射出デバイス(a)は、適切な二成分反応性射出機、例えば、50Pa・s未満の適切な溶融粘度を有する熱可塑性プレポリマーに由来する二成分反応系に対するパラメータの調節を伴うRIM型の機械であってもよい。
【0077】
スタティックミキサーは、好ましくは、ミキサーヘッドのチャンバ内の滞留時間が約数十秒間、好ましくは、10秒未満で、系内で反応することなく、2つの反応性成分を迅速に、効果的に(密に)混合することができるミキサーである。
【0078】
この製造デバイスは、アスペクト比が1000未満の短繊維または長繊維が保持された溶融状態の熱可塑性プラスチックをオーバーモールド成形するために、一成分系のための少なくとも1つの第2の射出デバイスを備えていてもよく、この第2の射出デバイスは、同じ成形デバイス(b)に、特に、鋳型内で、特に、成形デバイス(b)内の少なくとも1つの第2の射出点を介して直接接続しており、熱可塑性プラスチックを、前記繊維が保持された顆粒の形態で、前記射出デバイスに、場合により供給ホッパーを用いて供給することができる。この第2の射出デバイスは、一成分射出機または押出成形機であってもよい。
【0079】
本発明の別の主題は、上述のような本発明の方法を用いることによって、または、上述のような本発明のデバイスを用いることによって得ることができる構造的または半構造的なコンポジット部品、特に、残留成形スプルーを含まず、なんら仕上げ処理を行うことなく鋳型からはずした後に使用することができる鋳型に関する。さらに特定的には、前記部品は、成形産業で一般的な用語に従って「正味の形状」であり、これは、最終的な使用の前に特定の機械加工または仕上げを必要としないことを意味する。これは、製造のための特定の条件、特に、減圧下で型の中で成形するための特定の条件に関係があり、この結果として、通常は(存在するときは)必要である通気口を必要とせず、鋳型からはずすとき、この通気口に関連して作られるスプルーの機械加工およびさらなる仕上げによる除去を必要としない。これは、最終的な構造の重要な差であり、この分野の従来技術と比較して、顕著なさらなる利点である。さらに特定的には、前記部品は、好ましくは、ポリアミド、第1の反応性成分A1)として、特に、半結晶性であり、2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの反応性熱可塑性プレポリマー、好ましくは、反応性ポリアミドプレポリマーと、第2の反応性成分A2)として、A2)についての第1の選択肢に従って、好ましくは重付加によって前記反応性プレポリマーの官能基と反応性の2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの非ポリマー性鎖延長剤、または、A2)のための第2の選択肢として、特に、半結晶性であり、好ましくは重付加または重縮合によって、特に、A2)が、A2)のための第1の選択肢に従って定義される、前記第1の反応性プレポリマーA1)と反応性の2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの第2の反応性プレポリマー、好ましくは、反応性ポリアミドプレポリマーとを含む、二成分反応性組成物から得られる熱可塑性ポリマーマトリックスを含む。
【0080】
特に好ましい1つの選択肢によれば、前記反応性プレポリマーA1)は、好ましくは、半芳香族および/または半脂環式であり、特に、半結晶性であり、2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有するポリアミドである。
【0081】
構造的または半構造的であってもよい本発明の前記部品は、種々の最終的な用途で、特に、以下の分野で、使用してもよい。自動車産業、トラックの部品としての道路輸送、鉄道産業、海事産業、航空学、光電池、太陽(熱)産業、特に、態様発電所の構成要素、風力、宇宙産業、建築産業および土木、都市の設備および装置、標識、スポーツおよびレジャー。
【0082】
さらに特定的には、前記部品は、エプロン、テールゲート、床、側壁、屋根、スプリングバー、フロント、リア、サイドクラッシュボックス、ドア構造およびフェンダーから選択される自動車部品であり、さらに特定的には、前記部品は、電気誘導を受けることができる。
【0083】
従って、本発明は、特に、製造方法を用いることによって、または本発明の上述のような製造デバイスの使用によって得ることができ、上述のように、電気泳動を受ける能力を有する、自動車のための構造的または半構造的な部品を包含する。
【0084】
ある特定の選択肢および好ましい選択肢によれば、本発明の構造的または半構造的な部品は、同じ成形デバイス(b)または幾つかの構成部品の異なるデバイス内の「インモールド」アセンブリによって得られる複雑な部品の一体型部品であってもよく、この中に、反応性プレポリマーとして、2成分反応系に由来し、熱可塑性反応性プレポリマー(特に、ポリアミド)に由来するプラスチック部品および/または金属部品がある。
【0085】
好ましい一選択肢によれば、前記構造的または半構造的なコンポジット部品は、前記熱可塑性マトリックスがポリアミドであり、前記熱可塑性マトリックスから誘導される二成分反応系が、好ましくは、半芳香族および/または半脂環式であり、特に、半結晶性であり、2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの反応性ポリアミドプレポリマーと、前記反応性ポリアミドの官能基と反応可能な2つの同じ官能基(互いに反応性ではない。)を有する少なくとも1つの非ポリマー性鎖延長剤とを含む。
【0086】
特定の一変形例によれば、前記部品は、オーバーモールド成形され、従って、L/Dアスペクト比が1000未満であり、二成分反応系に由来する前記部品にオーバーモールド成形された短繊維または長繊維を保持する熱可塑性ポリマーを含み、前記オーバーモールド成形熱可塑性ポリマーは、熱可塑性反応性プレポリマーに由来する二成分反応系から得られるポリマーと適合性である。
【0087】
最後に、本発明の部品も、「インモールド」アセンブリによって複雑な多要素コンポジット部品の製造における、上の本発明に定義されるような方法およびデバイスの使用である。
【0088】
同様に、この使用のために、鋳型からはずした後にさらなる機械加工または仕上げを必要としない、「正味の形状」の構造的または半構造的なコンポジット部品の製造のための本発明の上に定義されるような方法および特定のデバイスの使用は、本発明の一部である。
【実施例】
【0089】
述べられている特徴を決定するための方法
100s−1の剪断下、所与の温度で窒素を流しつつ、直径が50mmの2つの平行板を有する、使用する測定装置であるMCR301レオメーターの指示の参照マニュアルに従って、プレポリマーまたは前駆体組成物の溶融粘度を測定する。
【0090】
電位差滴定方法(NHまたはカルボキシのための直接的で定量的な決定)に従って、二官能モノマーのみから調製される直鎖プレポリマーおよびポリマーについて2である(末端官能基において)理論的な官能性から、末端官能基の滴定(定量的な決定)によって、熱可塑性ポリマーまたはプレポリマーのMnを決定する。
【0091】
使用する熱可塑性ポリマーのガラス転移温度Tgを、2回目の加熱の通過の後に、ISO11357−2に従い、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定する。加熱および冷却の速度は、20℃/minである。
【0092】
1回目の加熱の後、標準的なISO11357−3に従って、融点Tmおよび結晶化温度TcをDSCによって測定する。加熱および冷却の速度は、20℃/minである。