(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997393
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】蓋体、パッケージおよび電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20160915BHJP
H01L 23/06 20060101ALI20160915BHJP
H01L 23/26 20060101ALI20160915BHJP
G01P 15/08 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
H01L23/02 C
H01L23/06 Z
H01L23/26
!G01P15/08 102A
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-539239(P2015-539239)
(86)(22)【出願日】2014年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2014075207
(87)【国際公開番号】WO2015046209
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-201735(P2013-201735)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 隆二
【審査官】
秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−199622(JP,A)
【文献】
特開2009−260049(JP,A)
【文献】
特開2010−223661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/06
H01L 23/26
G01P 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む板状体と、
該板状体の主面に設けられた、接合用のろう材から前記板状体を保護する保護膜と、
該保護膜の外周部に設けられた、該保護膜を貫通する枠状の孔と、
該孔に充填するように設けられた、金属から成る封止用金属層とを有することを特徴とする蓋体。
【請求項2】
前記封止用金属層は、前記孔の深さよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記封止用金属層は、外縁部が前記保護膜の表面上に延出していることを特徴とする請求項2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記封止用金属層に、前記ろう材が前記蓋体へ拡散するのを抑制する拡散抑制層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蓋体。
【請求項5】
前記封止用金属層の幅が、前記拡散抑制層の幅よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の蓋体。
【請求項6】
前記封止用金属層に、酸化抑制層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蓋体。
【請求項7】
前記拡散抑制層に、酸化抑制層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の蓋体。
【請求項8】
請求項1に記載の蓋体と、
上面の外周部に前記封止用金属層に対応する接合用金属層が設けられた配線基板とを有することを特徴とするパッケージ。
【請求項9】
請求項8に記載のパッケージと、
該パッケージに搭載された電子部品とを有し、
前記配線基板の前記接合用金属層に前記蓋体の前記封止用金属層が前記ろう材で接合され、前記電子部品が気密封止されたことを特徴とする電子装置。
【請求項10】
前記電子部品が気密封止された空間内にゲッターが搭載されていることを特徴とする請求項9に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密封止や保護が必要な電子部品に用いられる電子部品用の蓋体、パッケージおよび電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサ、加速度センサ、ジャイロセンサおよび水晶振動子のような電子部品が内部に封止されたパッケージにおいては、上述の電子部品の特性を高めるため、パッケージ内部の内圧を低くすることが求められている。パッケージ内の内圧を低くするためには、特許文献1に開示されているように、パッケージ内にゲッター材を配設することが知られている。ゲッター材を配設することにより、パッケージ内に存在する気体分子がゲッター材に吸着されるので、パッケージ内の内圧を低くすることができる。また、特許文献1においては、パッケージを構成している配線基板と蓋体とをろう材によって封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−223661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているパッケージにおいては、例えばシリコン板からなる蓋体の表面に封止用金属層を設けて、配線基板と蓋体とをAuSnろう材を介して封止すると、AuSnろう材が封止用金属層の側面に回り込んで蓋体のシリコンに接触し、封止時の熱によって蓋体のシリコンとAuSnろう材とが反応して、蓋体のシリコンにAuSnろう材が拡散してしまい、蓋体のシリコンにクラックが発生して封止が不十分となり、パッケージ内の内圧を低くすることが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の蓋体は、シリコンを含む板状体と、該板状体の主面に設けられた接合用のろう材から前記板状体を保護する保護膜と、該保護膜の外周部に設けられた、該保護膜を貫通する枠状の孔と、該孔に充填するように設けられた、金属から成る封止用金属層とを有している。
【0006】
本発明のパッケージは、上記構成の蓋体と、上面の外周部に前記封止用金属層に対応する接合用金属層が設けられた配線基板とを有している。
【0007】
本発明の電子装置は、上記構成のパッケージと、該パッケージに搭載された電子部品とを有し、前記配線基板の前記接合用金属層に前記蓋体の前記封止用金属層がろう材で接合され、前記電子部品が気密封止されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蓋体は、シリコンを含む板状体と、板状体の主面に設けられた接合用のろう材から板状体を保護する保護膜と、保護膜の外周部に設けられた、保護膜を貫通する枠状の孔と、孔に充填するように設けられた、金属から成る封止用金属層とを有していることから、例えばAuSnろう材が蓋体のシリコンを含む板状体に接触するのを抑制し、蓋体の板状体にクラックが発生するのが抑制され、蓋体によるパッケージの封止が十分なものとなり、パッケージ内の内圧を効果的に低くすることが可能となる。
【0009】
本発明のパッケージは、上記構成の蓋体と、上面の外周部に封止用金属層に対応する接合用金属層が設けられた配線基板とを有していることから、パッケージの封止が十分なものとなり、パッケージ内の内圧を効果的に低くすることが可能となる。
【0010】
本発明の電子装置は、上記構成のパッケージと、該パッケージに搭載された電子部品とを有し、配線基板の接合用金属層に蓋体の封止用金属層がろう材で接合され、電子部品が気密封止されていることから、封止空間の内圧が低く、電子部品の動作が良好なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態における蓋体を示す下面図である。
【
図2】本発明の実施形態における電子装置を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態における電子装置の他の例を示す要部拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態における電子装置の他の例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1〜
図5を参照して本発明の実施形態における蓋体、パッケージおよび電子装置について説明する。本実施形態における電子装置は、パッケージ1と、電子部品2とを有している。
【0014】
パッケージ1は、蓋体3と、配線基板4とを有している。
【0015】
蓋体3は、配線基板4を封止するように配線基板4上に接合されており、シリコン(Si)を含む板状体5と、保護膜6と、保護膜6を貫通する枠状の孔7と、孔7に充填された封止用金属層8とを有している。なお、板状体5は、Siを含む板状の部材、例えば、Si単体、またはSi,Ge,ZnSまたはこれらの金属を含む合金を主成分とする板状の部材あるいはこれらの板状の部材を貼り合わせたものなどから成る。
【0016】
蓋体3は、板状体5の主面すなわち配線基板4との封止面に保護膜6が設けられており、配線基板4と蓋体3とを例えばAuSnから成る接合用のろう材10を介して接合する場合に、ろう材10が蓋体3の板状体5に接触しないように設けたものであり、例えばシリコン酸化膜から成る。保護膜6は、板状体5の主面のみに設けられてもよいし、さらに板状体5の上面および側面に設けられていてもよい。
【0017】
保護膜6は、蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法等の薄膜形成法あるいは熱処理等によって設けられている。
【0018】
板状体5の主面に設けられた保護膜6の外周部には、保護膜6を貫通する枠状の孔7が設けられており、この孔7は、封止用金属層8が板状体5に良好に密着するように保護膜6が除かれた部分である。この孔7に封止用金属層8が充填するように設けられている。
【0019】
封止用金属層8は、クロム(Cr),チタン(Ti)等から成り、板状体5に良好に密着するものであり、保護膜6と同様に、蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法等の薄膜形成法によって設けられている。
【0020】
なお、
図3〜
図5に示す例のように、封止用金属層8には、配線基板4と蓋体3とを例えばAuSnから成る接合用のろう材10を介して接合する場合に、白金(Pt),ニッケル(Ni)等から成る拡散抑制層8aが設けられていてもよい。このような構成とすることによって、ろう材10が蓋体3へ拡散するのを抑制することができる。
【0021】
また、
図3〜
図5に示す例のように、封止用金属層8または拡散抑制層8aには、金(Au)等から成る酸化抑制層8bが設けられていてもよい。このような構成とすることによって、封止用金属層8または拡散抑制層8aが酸化するのを抑制することができる。
【0022】
蓋体3は、シリコンを含む板状体5と、板状体5の主面に設けられた、接合用のろう材10から板状体5を保護する保護膜6と、保護膜6の外周部に設けられた、保護膜6を貫通する枠状の孔7と、孔7に充填するように設けられた、金属から成る封止用金属層8とを有していることから、ろう材10が板状体5上に接触することを抑えられるので、蓋体3の板状体5にクラックが発生するのが抑制され、蓋体3によるパッケージ1の封止が十分なものとなり、パッケージ1内の内圧を効果的に低くすることが可能となる。
【0023】
また、
図4に示す例のように、封止用金属層8の幅が拡散抑制層8aの幅よりも大きいものとすると、配線基板4と蓋体3とをろう材10を介して接合した場合に、ろう材10が拡散抑制層8aの側面に回り込んだとしても、ろう材10は封止用金属層8の表面に留まり、封止用金属層8の側面に回り込み難いものとなり、蓋体3を構成する板状体5に接触し難いものとなって、板状体5にクラックが発生するのが効果的に抑制されるものとなる。
【0024】
なお、
図3〜
図5に示す例のように、封止用金属層8は、孔7の深さよりも厚いのがよい。このような構成とすることによって、配線基板4と蓋体3とをろう材10を介して接合した場合に、ろう材10は封止用金属層8の側面に留まり易いものとなり、蓋体3を構成する板状体5に接触し難いものとなって、板状体5にクラックが発生するのが効果的に抑制されるものとなる。その結果、蓋体3によるパッケージ1の封止がより十分なものとなり、パッケージ1内の内圧をより効果的に低くすることが可能となる。
【0025】
また、
図5に示される例のように、封止用金属層8は、孔7の深さよりも厚く、外縁部が保護膜6の表面上に延出しているのがよい。このような構成とすることによって、配線基板4と蓋体3とをろう材10を介して接合した場合に、ろう材10が封止用金属層8の側面に回り込んだとしても、ろう材10は保護膜6の表面に留まり易いものとなり、蓋体3を構成する板状体5に接触し難いものとなって、板状体5にクラックが発生するのが効果的に抑制されるものとなる。その結果、蓋体3によるパッケージ1の封止がより十分なものとなり、パッケージ1内の内圧をより効果的に低くすることが可能となる。
【0026】
配線基板4は、例えば、セラミックスからなる絶縁基体の表面または内部に、後述する接合用金属層9、配線導体、外部端子が形成されたものである。また、絶縁基体は、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス),窒化アルミニウム質焼結体,ムライト質焼結体またはガラスセラミックス質焼結体等のセラミックスから成るものである。また、
図2に示す例のように、配線基板4は内部に電子部品2を搭載するための凹部を有しており、配線基板4の凹部と蓋体3とで封止空間を形成するものとなる。なお、配線基板4が凹部を有さない平板状である場合には、蓋体3として、配線基板4に搭載された電子部品2またはゲッター11が収容されるような凹部が形成されているもの、または配線基板4と蓋体3とを枠体を介して封止するようにすればよい。
【0027】
絶縁基体が、例えば酸化アルミニウム質焼結体からなる場合には、アルミナ(Al
2O
3),シリカ(SiO
2),カルシア(CaO),マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤および溶媒等を添加混合して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用してシート状に成形してセラミックグリーンシートを得た後、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層して積層体とし、これを高温(約1500〜1800℃)で焼成することによって製作される。
【0028】
接合用金属層9、配線導体、外部端子は、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn),銀(Ag)または銅(Cu)等の金属粉末メタライズから成り、絶縁基体用のセラミックグリーンシートに接合用金属層9、配線導体、外部端子用の導体ペーストをスクリーン印刷法等によって所定形状に印刷して、絶縁基体用のセラミックグリーンシートと同時に焼成することによって、絶縁基体の所定位置に形成される。配線導体のうち、セラミックグリーンシートを厚み方向に貫通する貫通導体は、導体ペーストを印刷することによってセラミックグリーンシートに形成した貫通孔を充填しておけばよい。なお、接合用金属層9は、絶縁基体の上面の外周部に枠状に形成されており、封止用金属層8に対応するように設けられている。このような構成とすることにより、蓋体3と配線基板4との封止がより効果的なものとなり、パッケージ1内の内圧をより効果的に低くすることが可能となるものである。
【0029】
このような導体ペーストは、上記金属粉末に適当な有機溶剤および有機バインダーを加え、必要に応じて分散剤等を加えてボールミル,三本ロールミル,プラネタリーミキサー等の混練手段によって混合および混練することで適度な粘度に調整して作製する。また、セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼成後の絶縁基体との接合強度を高めたりするためにガラスやセラミックスの粉末を添加してもよい。貫通導体用の導体ペーストは、有機バインダーや有機溶剤の種類や添加量によって、配線導体層用の導体ペーストよりも充填に適した高い粘度に調整される。
【0030】
接合用金属層9、配線導体、外部端子の露出する表面には、電解めっき法や無電解めっき法等のめっき法によって、めっき層が被着される。めっき層は、ニッケルおよび金等の耐蝕性や接続部材2a等との接続性に優れる金属からなるものであり、例えば、厚さ1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚さ0.1〜3μm程度の金めっき層とが順次被着される。これによって、接合用金属層9、配線導体、外部端子が腐食することを効果的に抑制することができるとともに、ろう材10を介して凹部を封止する蓋体3との接合、接続部材2aとの接合および外部端子と外部電気回路基板の配線との接続を強固にすることができる。
【0031】
電子部品2は、赤外線センサ、加速度センサ、ジャイロセンサおよび水晶振動子等からなり、例えば赤外線センサ用電子装置を作製する場合には、電子部品2として赤外線センサを凹部内に搭載すればよい。また、加速度センサ用電子装置を作製する場合には、電子部品2として加速度センサを凹部内に搭載すればよい。電子部品2として赤外線センサを凹部内に搭載する場合には、赤外線センサは、上面に赤外線を受光するための受光部を有しており、配線基板4の凹部の底面に、ろう材またははんだ等の接合材を介して接合されて配置されている。また、赤外線センサは、例えばボンディングワイヤからなる接続部材2aによって配線導体に電気的に接続されている。
【0032】
電子部品2が気密封止された電子装置の空間内には、
図2に示す例のように、封止空間内に存在する気体分子を吸着することが可能なゲッター11が搭載されており、パッケージ1内の内圧をより効果的に低くすることが可能となる。
【0033】
ゲッター11の材料としては、化学的に活性な部材を用いる。具体的には、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),鉄(Fe)およびバナジウム(V)を主成分とする金属を用いることができる。そして、これら金属の粉末をニトロセルロース樹脂およびエチルセルロース樹脂等の有機溶剤と混合して導体ペーストを作製し、この導体ペーストをスクリーン印刷法等の印刷法によって、貫通孔が形成された鉄(Fe),タングステン(W),ニクロムまたはステンレス等からなる金属板の表面に所望の位置および厚さに印刷した後、不活性ガス雰囲気中(例えばアルゴン(Ar)雰囲気中)や真空雰囲気中で250〜500℃で加熱して、有機溶剤を蒸発させて除去することによって、ゲッター材料を金属板の両面に配置したゲッター11を得ることができる。ゲッター材料を金属板の表面に配置する方法としては、一般的な蒸着法またはスパッタリング法で行なってもよい。
【0034】
電子装置は、パッケージ1と、パッケージ1に搭載された電子部品2とを有し、配線基板4の接合用金属層9に蓋体3の封止用金属層8がろう材10で接合され、電子部品2が気密封止されていることから、封止空間の内圧が低く、電子部品2の動作が良好なものとすることが可能となる。
【0035】
次に、本発明の電子装置の製造方法について詳細に説明する。
【0036】
凹部および接合用金属層9、配線導体、外部端子を形成した配線基板4を準備する。具体的には、アルミナセラミックスまたはムライトセラミックス等のセラミック材料を主成分とするセラミックグリーンシートを準備し、凹部の側壁となる部位の打ち抜き金型を用いた打ち抜き加工を施すとともに、セラミックグリーンシートにW,Mo,Mn,AgまたはCu等の金属粉末メタライズから成る接合用金属層9用の導体ペーストを凹部となる箇所の周囲に枠状に、同様に、配線導体および外部端子用の導体ペーストを所定形状に、スクリーン印刷法等によって印刷する。その後、導体ペーストを印刷したセラミックグリーンシートを積層して、凹部を有するように積層体を作製する。そして、この積層体を焼成することによって、配線基板4を作製することができる。また、接合用金属層9等と同様の形成方法により、配線基板4の凹部の底面に電子部品搭載用導体を形成する。
【0037】
次に、凹部の底面の電子部品搭載用導体に、Au,Ag,Zn,Sn,Cuおよびこれらの合金を主成分とする金属からなる、ろう材またははんだ等の接合材を介して、赤外線センサ等の電子部品2を搭載する。また、電子部品2は、配線基板4上に形成された配線導体にワイヤボンディングあるいはフリップチップ実装によって電気的に接続される。
【0038】
次に、配線基板4の凹部内にゲッター11を配置するとともに、凹部を封止するように配線基板4上に蓋体3を配置する。蓋体3は、電子部品2として赤外線センサを用いる場合には、赤外線を透過するとともに凹部を封止することができるものであるとよい。例えば、Si単体、またはSiを必須として、Ge,ZnSまたはこれらの金属を含む合金を主成分とする板状の部材あるいはこれらの板状の部材を貼り合わせたものなどを板状体5に用いることができる。
【0039】
このとき、ろう材10を用いて配線基板4と蓋体3とを接合する。AuSnから成る接合用のろう材10としては、例えば、プリフォームされたもの、蓋体3にクラッドされたものまたはペースト状のものを用いることができる。また、このようなろう材10は、配線基板4の接合用金属層9と蓋体3の封止用金属層8との接合面に配置してもよいし、ペースト状としたろう材10を用いて印刷法によって配線基板4と蓋体3との接合面に配置してもよい。そして、配線基板4と蓋体3との接合面に配置されたろう材10を、赤外線のランプヒータ,ヒータブロックまたはヒータープレート等を用いて加熱して溶融させることによって、配線基板4と蓋体3とをろう材10を介して接合することができる。
【0040】
なお、蓋体3を用いて凹部を封止する工程は、常圧よりも低い圧力の下で行なう。具体的には、真空チャンバー等の減圧装置を用いることにより、常圧よりも低い圧力の下で凹部を封止する。このときの真空度は、減圧装置を用いることによって、要求される封止空間の内圧に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
なお、このようにして電子装置を製造する過程において、ゲッター11を加熱する工程を備えていることが好ましい。ゲッター11を加熱することによって、ゲッター11の表面に新しい活性面を形成できるので、ゲッター11による気体分子を吸着する効果を向上させることができる。
【0042】
特に、蓋体3と配線基板4とを接合する工程においてゲッター11を加熱することによって、ゲッター11を活性化することが好ましい。蓋体3と配線基板4とを接合する工程においては、配線基板4および蓋体3を加熱することによって配線基板4と蓋体3とを接合するので、配線基板4および蓋体3ならびにろう材10からガスが発生しやすい。そのため、蓋体3と配線基板4とを接合する工程においてゲッター11を活性化させることによって、ゲッター11による気体分子を吸着する効果を高めることができるので、電子装置の封止空間の内圧をより低くすることができるからである。
【0043】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何ら差し支えない。