特許第5997396号(P5997396)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5997396合わせガラス用中間膜、合わせガラス及び合わせガラス用中間膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997396
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜、合わせガラス及び合わせガラス用中間膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20160915BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20160915BHJP
   B29C 47/06 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C03C27/12 D
   B32B17/10
   B29C47/06
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-553982(P2015-553982)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2015077703
(87)【国際公開番号】WO2016052603
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-202341(P2014-202341)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 章吾
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】川手 洋
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−001752(JP,A)
【文献】 特開平10−045438(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/016361(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B29C 47/06
B32B 17/10
B32B 3/26−3/30
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、
合わせガラスを作製する前の前記合わせガラス用中間膜が、
1の樹脂層を、該1の樹脂層が直接接する他の樹脂層から剥離した後、剥離した1の樹脂層の前記他の樹脂層に接していた側の表面における、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した十点平均粗さRz(μm)と凹凸の平均間隔Sm(μm)との比(Rz/Sm)が0.00110以下である
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
1の樹脂層を、該1の樹脂層が直接接する他の樹脂層から剥離した後、剥離した1の樹脂層の前記他の樹脂層に接していた側の表面における、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した凹凸の平均間隔Smが190μm以上であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
1の樹脂層を、該1の樹脂層が直接接する他の樹脂層から剥離した後、剥離した1の樹脂層の前記他の樹脂層に接していた側の表面における、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した十点平均粗さRzが2.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
各樹脂層の屈折率の差が0.03以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
1の樹脂層が熱可塑性樹脂を含み、
該1の樹脂層が直接接する他の樹脂層が該1の樹脂層が含む熱可塑性樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を含む
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
少なくとも一方の表面に多数の凹部を有し、
前記多数の凹部を有する表面のJIS B−0601(1994)に準拠して測定される十点平均粗さRzが10〜60μmである
ことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
車両用途に用いられるものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されていることを特徴とする合わせガラス。
【請求項9】
2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜を製造する方法であって、
前記2層以上の樹脂層の原料となる樹脂組成物を共押出機により共押出して2層以上の樹脂層が積層された積層体を得る工程を有し、
前記共押出機により共押出する際の各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.5%以下とすること
を特徴とする合わせガラス用中間膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層以上の樹脂層が積層された多層構造であって、高温下でも光学歪みの発生を防止できる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラス用中間膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のガラス板の間に、可塑化ポリビニルブチラール等の熱可塑性樹脂を含有する合わせガラス用中間膜を挟み、互いに接着させて得られる合わせガラスは、自動車、航空機、建築物等の窓ガラスに広く使用されている。
【0003】
合わせガラス用中間膜としては、ただ1層の樹脂層により構成されている単層構造だけではなく、2層以上の樹脂層の積層体により構成された多層構造の合わせガラス用中間膜が提案されている。多層構造として、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、かつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが異なる性質を有することにより、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。
例えば特許文献1には、遮音層と該遮音層を挟持する2層の保護層とからなる3層構造の合わせガラス用中間膜が開示されている。特許文献1の合わせガラス用中間膜では、可塑剤との親和性に優れるポリビニルアセタール樹脂と大量の可塑剤とを含有する遮音層を有することにより優れた遮音性を発揮する。一方、保護層は、遮音層に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして中間膜とガラスとの接着性が低下することを防止している。
【0004】
しかしながら、このような多層構造の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスでは、合わせガラス越しに外部の光線を視認したときに、光学歪みが認められたりすることがあるという問題があった。このような光学歪みの発生は、とりわけ、高温にされられたときに顕著になる。例えば、車両用フロントガラスでは、夏季にはガラスの温度が80℃以上に上昇することがある。室温(25℃)下ではほとんど光学歪みが認められない合わせガラスでも、80℃以上の高温下では顕著に光学歪みが表れることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−331959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、2層以上の樹脂層が積層された多層構造であって、高温下でも光学歪みの発生を防止できる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラス用中間膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、JIS R3202(1996)に準拠した2枚のクリアガラスを用いて合わせガラスを作製した際に、前記合わせガラスを液体窒素により冷却後に前記クリアガラスと前記合わせガラス用中間膜を引き剥がした後、1の樹脂層を、該1の樹脂層が直接接する他の樹脂層から剥離した後、剥離した1の樹脂層の前記他の樹脂層に接していた側の表面における、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した十点平均粗さRz(μm)と凹凸の平均間隔Sm(μm)との比(Rz/Sm)が0.0018以下である合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、2層以上の樹脂層が積層された多層構造の合わせガラス用中間膜を用いた場合の光学歪みの発生の原因を検討した。その結果、樹脂層間の界面には微細な凹凸があり、該凹凸が光学歪みの発生の原因となっていることを見出した。
本発明者らは、鋭意検討の結果、該樹脂層間の界面の凹凸は、合わせガラス用中間膜を製造する工程において発生していることを見出した。即ち、多層構造の合わせガラス用中間膜の製造では、通常は各樹脂層の原料となる樹脂組成物を共押出機により共押出することにより樹脂層を積層した積層体を得ている。共押出の際には、押出速度等の押出条件が均一となるように設定するが、実際には押出条件には揺らぎがあって、大きく変動する。このような押出条件の変動が、押出された樹脂層間に歪みを生じ、該歪みにより樹脂層に凹凸が形成される。このような凹凸は常温下では目立たないとしても、高温下で樹脂層が柔軟化するに従い成長して、光学歪みを発生させていたものと考えられる。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、共押出機による共押出の際の、各押出機からギアポンプへの樹脂組成物の吸入圧の変動幅を一定以下に抑えることにより押出条件を均一化でき、樹脂層間の界面の凹凸の形状を制御することができて、光学歪みの発生を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の合わせガラス用中間膜は、2層以上の樹脂層が積層された多層構造を有する。例えば、2層以上の樹脂層として、第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、かつ、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが異なる性質を有することにより、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。例えば、合わせガラスの遮音性を向上させるために、遮音層と保護層として組み合わせることが考えられる。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜の2層以上の樹脂層は、各樹脂層の屈折率の差が0.03以下であることが好ましい。より好ましくは0.015である。これにより光学的な歪みをより一層抑えることができる。
【0011】
上記樹脂層は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましく、ポリビニルアセタールを含有することがより好ましい。
【0012】
上記樹脂層は、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含むことが好ましい。
上記可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤であれば特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤や、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
上記有機可塑剤として、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が挙げられる。なかでも、上記樹脂層はトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、又は、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0013】
上記樹脂層は、接着力調整剤を含有することが好ましい。特に、合わせガラスを製造するときに、ガラスと接触する樹脂層は、上記接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。合わせガラスを製造するときに、ガラスと樹脂層との接着力を容易に調製できることから、ガラスと接触する樹脂層は、接着力調整剤として、マグネシウム塩を含むことが好ましい。
【0014】
上記樹脂層は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変成シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0015】
本発明の合わせガラス用中間膜では、2層以上の樹脂層として、少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールAという。)の水酸基量が、上記第2の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールBという。)の水酸基量と異なることが好ましい。
ポリビニルアセタールAとポリビニルアセタールBとの性質が異なるため、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より低い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より高い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0016】
更に、上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層が可塑剤を含む場合、上記第1の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Aという。)が、上記第2の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Bという。)と異なることが好ましい。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより多い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより少ない場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0017】
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する2層以上の樹脂層の組み合わせとしては、例えば、合わせガラスの遮音性を向上させるために、上記第1の樹脂層として遮音層と、上記第2の樹脂層として保護層との組み合わせが挙げられる。合わせガラスの遮音性が向上することから、上記遮音層はポリビニルアセタールXと可塑剤とを含み、上記保護層はポリビニルアセタールYと可塑剤とを含むことが好ましい。更に、2層の上記保護層の間に、上記遮音層が積層されている場合、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜(以下、遮音中間膜ともいう。)を得ることができる。以下、遮音中間膜について、より具体的に説明する。
【0018】
上記遮音中間膜において、上記遮音層は遮音性を付与する役割を有する。上記遮音層は、ポリビニルアセタールXと可塑剤とを含有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。また、上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、得られる遮音中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、遮音層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0019】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が4〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0020】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0021】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の下限は65モル%がより好ましく、68モル%以上が更に好ましい。
上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0022】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は8モル%、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0023】
特に、上記遮音層に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が65モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。また、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが、より好ましい。
【0024】
上記遮音層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールX100質量部に対する好ましい下限が45質量部、好ましい上限が80質量部である。上記可塑剤の含有量を45質量部以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができ、80質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトが生じて、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は50質量部、更に好ましい下限は55質量部、より好ましい上限は75質量部、更に好ましい上限は70質量部である。なお、上記遮音層における可塑剤の含有量は、合わせガラス作製前の可塑剤含有量であってもよく、合わせガラス作製後の可塑剤含有量であっても良い。なお、合わせガラス作製後の可塑剤の含有量は、以下の手順に従って測定できる。合わせガラスを作製した後、温度25℃、湿度30%の環境下で4週間静置する。その後、合わせガラスを液体窒素により冷却することでガラスと合わせガラス用中間膜を引き剥がす。得られた遮音層を、厚さ方向に切断し、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した後、保護層と遮音層との間に指又は機械を入れ、温度25℃、湿度30%の環境下で剥離し、保護層および遮音層それぞれについて10gの長方形状の測定試料を得る。得られた測定試料について、ソックスレー抽出器を用いて12時間、ジエチルエーテルで可塑剤を抽出した後、測定試料中の可塑剤の定量を行い、保護層及び中間層中の可塑剤の含有量を求める。
【0025】
上記遮音層の厚さの好ましい下限は50μmである。上記遮音層の厚さを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層の厚さのより好ましい下限は80μmである。なお、上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は300μmである。
【0026】
上記保護層は、遮音層に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下するのを防止し、また、合わせガラス用中間膜に耐貫通性を付与する役割を有する。
上記保護層は、例えば、ポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することが好ましく、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することがより好ましい。
【0027】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。また、上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、保護層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0028】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。
上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0029】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0030】
上記ポリビニルアセタールYは、アセタール基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記保護層とガラスとの接着力を確保することができる。上記アセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0031】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、保護層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。なお、ポリビニルアセタールA、B、及び、Yの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0032】
上記保護層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールY100質量部に対する好ましい下限が20質量部、好ましい上限が45質量部である。上記可塑剤の含有量を20質量部以上とすることにより、耐貫通性を確保することができ、45質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトを防止して、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30質量部、更に好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は43質量部、更に好ましい上限は41質量部である。合わせガラスの遮音性がよりいっそう向上することから、上記保護層における可塑剤の含有量は、上記遮音層における可塑剤の含有量よりも少ないことが好ましい。なお、上記保護層における可塑剤の含有量は、合わせガラス作製前の可塑剤含有量であってもよく、合わせガラス作製後の可塑剤含有量であっても良い。なお、合わせガラス作製後の可塑剤の含有量は、上記遮音層と同様の手順によって測定することができる。
【0033】
合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、ポリビニルアセタールYの水酸基量はポリビニルアセタールXの水酸基量より大きいことが好ましく、1モル%以上大きいことがより好ましく、5モル%以上大きいことが更に好ましく、8モル%以上大きいことが特に好ましい。ポリビニルアセタールX及びポリビニルアセタールYの水酸基量を調整することにより、上記遮音層及び上記保護層における可塑剤の含有量を制御することができ、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
また、合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、上記遮音層におけるポリビニルアセタールX100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記保護層におけるポリビニルアセタールY100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)より多いことが好ましく、5質量部以上多いことがより好ましく、15質量部以上多いことが更に好ましく、20質量部以上多いことが特に好ましい。含有量X及び含有量Yを調整することにより、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
【0034】
上記保護層の厚さは、上記保護層の役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。ただし、上記保護層上に凹凸を有する場合には、直接接する上記遮音層との界面への凹凸の転写を抑えられるように、可能な範囲で厚くすることが好ましい。具体的には、上記保護層の厚さの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記保護層の厚さの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層の厚さを確保するためには、実質的には500μm程度が上限である。
【0035】
上記遮音中間膜を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記遮音層と保護層とを、押し出し法、カレンダー法、プレス法等の通常の製膜法によりシート状に製膜した後、積層する方法等が挙げられる。
【0036】
本発明の合わせガラス用中間膜は、JIS R3202(1996)に準拠した2枚のクリアガラスを用いて合わせガラスを作製した際に、前記合わせガラスを液体窒素により冷却後に前記クリアガラスと前記合わせガラス用中間膜を引き剥がした後、1の樹脂層を、該1の樹脂層が直接接する他の樹脂層から剥離した後、剥離した1の樹脂層の前記他の樹脂層に接していた側の表面における、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した十点平均粗さRz(μm)と凹凸の平均間隔Sm(μm)との比(Rz/Sm)が0.0018以下である。
上述のように、光学歪みの発生の原因は樹脂層間の界面の凹凸にあるが、樹脂層間の界面の凹凸を直接観察することは極めて困難である。樹脂層間の界面の凹凸を直接観察する代わりに、樹脂層を剥離し、剥離後の樹脂層の表面の凹凸を測定することで、樹脂層間の界面の凹凸を間接的に評価することができる。そして、該剥離後の樹脂層の表面の凹凸の十点平均粗さRz(μm)と凹凸の平均間隔Sm(μm)との比(Rz/Sm)を一定以下とすることにより、樹脂層の界面の凹凸に起因する光学歪みの発生を抑制できる。これは、レンズのように光を屈折させて飛散又は集束する効果を低減するためと考えられる。上記Rz/Smは、0.0164以下であることが好ましく、0.00120以下であることがより好ましく、0.0110以下であることが更に好ましく、0.0100以下であることが特に好ましい。
【0037】
本発明の合わせガラス用中間膜は、光学歪の発生を最も抑制できることから、合わせガラス用中間膜の全面で上記Rz/Smを満たすことが最も好ましいが、合わせガラス用中間膜の一部の領域で上記Rz/Smを満たしていてもよい。例えば、本発明の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを車両用のフロントガラスに用いる場合、図3に示すように、少なくとも該車両用のフロントガラスの下端から15〜30cmの領域における合わせガラス用中間膜が、上記Rz/Smを満たすことが好ましい。合わせガラス用中間膜を伸展した場合、Rz/Smの値が高くなる傾向が有る。また、車両用のフロントガラスの下端に近いほど合わせガラス用中間膜が伸展される傾向があり、中でも、車両用のフロントガラスの下端から15〜30cmの領域は、伸展されやすく、かつ、運転者の視界に入りやすい領域であることから、より顕著に光学歪が感じられる。そのため、少なくとも車両用のフロントガラスの下端から15〜30cmの領域における合わせガラス用中間膜が上記Rz/Smを満たすことにより、光学歪の抑制をより一層顕著に感じることができる。
【0038】
図1の合わせガラス用中間膜は、樹脂層20と樹脂層30が積層された2層構造の合わせガラス用中間膜である。本発明では、この2層構造の合わせガラス用中間膜と2枚のクリアガラス1を用いて合わせガラスを作製した際に、該合わせガラスを液体窒素により冷却後にクリアガラス1と合わせガラス用中間膜を引き剥がした後、2層構造の合わせガラス用中間膜の樹脂層30から樹脂層20を剥離した後に、剥離した樹脂層20の樹脂層30と接していた側の表面21の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定する。
【0039】
図2の合わせガラス用中間膜は、樹脂層20と樹脂層10と樹脂層30がこの順に積層された3層構造の合わせガラス用中間膜である。本発明では、この3層構造の合わせガラス用中間膜と2枚のクリアガラス1を用いて合わせガラスを作製した際に、該合わせガラスを液体窒素により冷却後にクリアガラス1と合わせガラス用中間膜を引き剥がした後、3層構造の合わせガラス用中間膜の樹脂層10から樹脂層20を剥離した後に、剥離した樹脂層20の樹脂層10と接していた側の表面21の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定する。
【0040】
上記樹脂層間の剥離は、以下の手順に従って行なう。まず、合わせガラスを液体窒素により冷却することでガラスと合わせガラス用中間膜を引き剥がす。次に、引き剥がした合わせガラス用中間膜を、縦5cm×横5cmに切り出し、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置する。A層とB層との間に指又は機械を入れ、温度25℃、湿度30%の環境下で速度1〜5cm/sの条件で剥離する。温度、湿度及び剥離速度を一定とすることにより、測定値のバラツキを抑えることができる。剥離は、この条件を満たす限り機械を用いて行ってもよいし、指を使って手動で行ってもよい。
上記樹脂層間の剥離を行った直後に表面の十点平均粗さRzや凹凸の平均間隔Smを測定すると、測定値にバラツキが発生することがある。従って、十点平均粗さRzや凹凸の平均間隔Smの測定は、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した後に行うことが好ましい。
このように一定の条件下で樹脂層を剥離し、静置した後に、剥離した樹脂層の表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定する。
なお、本明細書において十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smは、JIS B 0601(1994)「表面粗さ−定義及び表示」に規定に準拠して測定されるものである。また、上記十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smは、例えば、高精度形状測定システム(キーエンス社製「KS−1100」、先端ヘッド型番「LT−9510VM」)等を用いて容易に測定することができる。この際、測定条件を、ステージ移動速度は1000μm/s、X軸の測定ピッチを10μm、Y軸の測定ピッチを10μmとし、測定視野を合わせガラス用中間膜製造時の押出時の流れ方向に2.5cm、前記流れ方向と垂直な方向に1cmとして評価することが好ましい。得られたデータは、解析ソフト(例えば、キーエンス社製、KS−Analyzer)にて解析することができる。線粗さ(1994JIS)解析にて水平線条件で粗さプロファイルを計測する。計測したプロファイルを、カットオフ2.50mm、単純平均±12の高さスムージング補正を実施した後に、Rz及びSmを計測する。Rz、Smは画像の垂直方向に、1mm以上離れた任意の3点の平均値を使用した。B層とC層の間についても同様の方法により剥離し、剥離したC層のB層側の表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定した。
【0041】
上記剥離した樹脂層の表面の十点平均粗さRzは2.0μm以下であることが好ましい。上記Rzが2.0μm以下であることにより、よりいっそう光学歪みの発生を防止することができる。上記Rzは1.8μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは1.35μm以下、特に好ましくは1.1μm以下、最も好ましくは0.9μm以下である。
【0042】
上記剥離した樹脂層の表面の凹凸の平均間隔Smは190μm以上であることが好ましい。上記Smが190μm以上であることにより、よりいっそう光学歪みの発生を防止することができる。上記Smは300μm以上であることがより好ましい。
【0043】
2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜であって、合わせガラスを作製する前の該合わせガラス用中間膜が、1の樹脂層を、該1の樹脂層が直接接する他の樹脂層から剥離した後、剥離した1の樹脂層の前記他の樹脂層に接していた側の表面における、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した十点平均粗さRz(μm)と凹凸の平均間隔Sm(μm)との比(Rz/Sm)が0.00110以下である合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである。
合わせガラスを作製する前の前記合わせガラス用中間膜の上記Rz/Smが上記値であっても、高温下での光学歪の発生を抑制することができる。合わせガラスを作製する前の前記合わせガラス用中間膜の上記Rz/Smは、0.00100以下であることが好ましく、0.00080以下であることがより好ましい。合わせガラスを作製する前の前記合わせガラス用中間膜の上記Rz/Smは、合わせガラスを液体窒素で冷却し、ガラス板と合わせガラス用中間膜を剥離しないこと以外は、合わせガラス作製後の上記Rz/Smと同様の方法により測定することができる。
【0044】
合わせガラス作製前の上記剥離した樹脂層の表面の十点平均粗さRzは1.5μm以下であることが好ましい。上記Rzが1.5μm以下であることにより、よりいっそう光学歪みの発生を防止することができる。上記Rzは1.2μm以下であることがより好ましく、更に好ましくは1.0μm以下である。
【0045】
合わせガラス作製前の上記剥離した樹脂層の表面の凹凸の平均間隔Smは190μm以上であることが好ましい。上記Smが190μm以上であることにより、よりいっそう光学歪みの発生を防止することができる。上記Smは300μm以上であることがより好ましい。
【0046】
合わせガラス作製後の上記剥離した樹脂層の表面のRz/Smを0.0018以下とし、また、合わせガラス作製前の上記剥離した樹脂層の表面のRz/Smwo0.00110以下とするための方法としては、上記各樹脂層の原料となる樹脂組成物を共押出機により共押出する際の各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.5%以下に制御する方法が考えられる。30秒以内の吸入圧の変動幅を0.5%以下とすることにより、押出された樹脂層間に歪みが生じるのを抑え、樹脂層間の界面の凹凸の形成を抑えることができる。上記吸入圧の変動幅は0.3%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。
なお、上記吸入圧変動の制御は、例えば、共押出機のギアポンプの入り口に圧力測定装置を設置し、該圧力測定装置により測定した吸入圧のデータをリアルタイムでコンピュータに送信し、該データをもとに押出速度を精密に変動させる方法等が挙げられる。
【0047】
2層以上の樹脂層が積層された合わせガラス用中間膜を製造する方法であって、上記2層以上の樹脂層の原料となる樹脂組成物を共押出機により共押出して2層以上の樹脂層が積層された積層体を得る工程を有し、上記共押出機により共押出する際の各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.5%以下とする合わせガラス用中間膜の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0048】
本発明の合わせガラス用中間膜は、合わせガラスの製造時における脱気性を確保することを目的として、少なくとも一方の表面に多数の凹部と多数の凸部とを有してもよい。これにより、合わせガラスの製造時における脱気性を確保することができる。上記凹凸は、一方の表面にのみ有してもよいし、合わせガラス用中間膜の両面に有してもよい。
【0049】
本発明の合わせガラス用中間膜は少なくとも一方の表面に多数の凹部を有することが好ましい。光学歪の発生をより一層抑制する観点からは、前記多数の凹部を有する表面のJIS B−0601(1994)に準拠して測定される十点平均粗さRzが60μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。合わせガラスの製造時における脱気性をより一層良好にする観点からは、前記多数の凹部を有する表面のJIS B−0601(1994)に準拠して測定される十点平均粗さRzが10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。
【0050】
本発明の合わせガラス用中間膜が少なくとも一方の表面に多数の凹部と多数の凸部とを有する場合、上記凹凸を付与する方法としては特に限定されず、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法、メルトフラクチャーを利用した押出リップエンボス法等が挙げられる。ただし、凹凸を付与する際に、各樹脂層間の界面に凹凸が転写されない条件を選択することが重要である。近年では、共押出機により共押出する際の金型の口金の形状を工夫することにより凹凸を付与する、いわゆるリップ法も提案されており、各樹脂層間の界面に凹凸が転写されないことから好適である。
【0051】
本発明の合わせガラス用中間膜は、車両用途に好適に用いることができ、車両用のフロントガラスに特に好適に用いることができる。
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層を有する紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、2層以上の樹脂層が積層された多層構造であって、高温下でも光学歪みの発生を防止できる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラス用中間膜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】2層構造の合わせガラス用中間膜において、十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定する表面を説明する模式図である。
図2】3層構造の合わせガラス用中間膜において、十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定する表面を説明する模式図である。
図3】車両用のフロントガラスに用いた場合に、合わせガラス用中間膜が本発明で規定するRz/Smを満たすべき少なくとも一部の領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
(1)中間層用樹脂組成物の調製
平均重合度が2400のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量12.0モル%、ブチラール基量65.0モル%、水酸基量23.0モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。
【0056】
(2)保護層用樹脂組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量1.0モル%、ブチラール基量69.0モル%、水酸基量30.0モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、保護層用樹脂組成物を得た。
【0057】
(3)合わせガラス用中間膜の作製
得られた中間層用樹脂組成物と保護層用樹脂組成物を、共押出機を用いて共押出することにより、保護層用樹脂組成物からなる厚さ350μmのA層(保護層)、中間層用樹脂組成物からなる厚さ100μmのB層(中間層)及び保護層用樹脂組成物からなる厚さ350μmのC層(保護層)がこの順に積層された3層構造の合わせガラス用中間膜を得た。この際に用いた共押出機には、ギアポンプの入り口に圧力測定装置を設置し、該圧力測定装置により測定した吸入圧のデータをリアルタイムでコンピュータに送信し、該データをもとに押出速度を精密に変動させる方法により各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.4%以下に抑えた。
【0058】
(4)凹凸の付与
第1の工程として、下記の手順により合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。まず、鉄ロール表面に、ブラスト剤を用いてランダムな凹凸を施した後、該鉄ロールをバーチカル研削し、更に、より微細なブラスト剤を用いて研削後の平坦部に微細な凹凸を施すことにより、粗大なメインエンボスと微細なサブエンボスをもつ同形状の1対のロールを得た。該1対のロールを凹凸形状転写装置として用い、得られた合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。この時の転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を80℃、上記ロールの温度を145℃、線速を10m/min、プレス線圧を50〜100kN/mとした。賦型後の合わせガラス用中間膜の表面粗さはJIS B 0601(1994)の十点平均粗さRzで測定した結果、35μmであった。測定は表面粗さ測定器(小坂研究所社製、SE1700α)を用いて測定されるデジタル信号をデータ処理することによって得た。測定方向は刻線に対して垂直方向とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行った。
【0059】
第2の工程として、下記の手順により合わせガラス用中間膜の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)の凹凸を付与した。三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールと45〜75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の工程でランダムな凹凸形状を転写した合わせガラス用中間膜をこの凹凸形状転写装置に通し、合わせガラス用中間膜のA層の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)である凹部が平行して等間隔に並列した凹凸を付与した。このときの転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を75℃、ロール温度を130℃、線速を10m/min、膜幅を1.5m、プレス圧を500kPaとした。
次いで、合わせガラス用中間膜のC層の表面に、凹凸形状の異なる金属ロールを用いた以外は上記と同様の操作を施し、底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部を付与した。その際、A層の表面に付与した底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部と、C層の表面に付与した底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部との交差角度が10°となるようにした。
【0060】
最終的に得られた合わせガラス用中間膜の表面粗さをJIS B 0601(1994)の十点平均粗さRzで測定した結果、50μmであった。測定は表面粗さ測定器(小坂研究所社製、SE1700α)を用いて測定されるデジタル信号をデータ処理することによって得た。測定方向は刻線に対して垂直方向とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行った。
【0061】
(5)合わせガラスの製造
得られた合わせガラス用中間膜をJIS R3202(1996)に準拠した二枚のクリアガラス板(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、得られた合わせガラス構成体をゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に−60kPa(絶対圧力16kPa)の減圧下で10分間保持し、合わせガラス構成体の温度(予備圧着温度)が70℃となるように加熱した後、大気圧に戻して予備圧着を終了した。
予備圧着された合わせガラス構成体をオートクレーブ中に入れ、温度140℃、圧力1300kPaの条件下で10分間保持した後、50℃まで温度を下げ大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを得た。
【0062】
(6)界面の凹凸の測定
得られた合わせガラスを液体窒素により冷却することでガラスと合わせガラス用中間膜を引き剥がした。引き剥がした合わせガラス用中間膜を、縦5cm×横5cmに切り出し、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した。
A層とB層との間に指を入れ、一方の手はA層を、他方の手はB層をつかみ、両手で1〜2cm/sの速度で剥離した。剥離後、更に温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した。その後、剥離したA層のB層側の表面を、JIS B 0601(1994)に準拠し、高精度形状測定システム(キーエンス社製、「KS−1100」先端ヘッド型番「LT−9510VM」)を用いて測定し、合わせガラス作製後の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定した。なお、測定条件は、ステージ移動速度は1000μm/s、X軸の測定ピッチを10μm、Y軸の測定ピッチを10μmとし、測定視野を合わせガラス用中間膜製造時の押出時の流れ方向に2.5cm、前記流れ方向と垂直な方向に1cmとして評価した。得られたデータを解析ソフトKS−Analyzer(キーエンス社製)にて解析した。解析ソフトにて水平線を使用し、線粗さ(1994JIS)を計測した。カットオフ2.50mm、単純平均±12の高さスムージング補正を実施し、線粗さを計測した。Rz,Smは画像の垂直方向に、1mm以上離れた任意の3点の平均値を使用した。B層とC層の間についても同様の方法により剥離し、剥離したC層のB層側の表面の十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smを測定した。また、合わせガラスを作製する前の界面の凹凸も、合わせガラスを液体窒素により冷却する工程を省略したこと以外は、同様の方法により測定した。
【0063】
(7)可塑剤の含有量の測定
合わせガラスを作製した後、温度25℃、湿度30%の環境下で4週間静置した。その後、合わせガラスを液体窒素により冷却することでガラスと合わせガラス用中間膜を引き剥がした。得られた保護層及び中間層を、厚さ方向に切断し、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した後、保護層と中間層との間に指又は機械を入れ、温度25℃、湿度30%の環境下で剥離し、保護層および中間層それぞれについて10gの長方形状の測定試料を得た。得られた測定試料について、ソックスレー抽出器を用いて12時間、ジエチルエーテルで可塑剤を抽出した後、測定試料中の可塑剤の定量を行い、保護層及び中間層中の可塑剤の含有量を求めた。
【0064】
(実施例2)
各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.2%以下に抑えた以外は実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、界面の凹凸を測定した。
【0065】
(実施例3)
第2の工程を省いた以外は実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0066】
(実施例4)
各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.4%以下に抑え、かつ、凹凸の付与において第1の工程のプレス線圧を5〜49.9kN/mに変更した以外は、実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0067】
(実施例5)
各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.2%以下に抑えた以外は実施例4と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、界面の凹凸を測定した。
【0068】
(実施例6)
共押出機により共押出する際の金型としてリップ法用の口金形状を有するものを用い、この際、リップ金型としてリップの間隙が0.7〜1.4mmのものを用い、金型入口の樹脂組成物の温度を150〜270℃、リップ金型の温度を210℃に調整し、ラインスピード10m/分、各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.4%以下に抑えたこと以外は、実施例2と同様の条件で押出しを行った。また、凹凸の付与の第1の工程を省略した以外は、実施例2と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、界面の凹凸を測定した。
【0069】
(実施例7)
工程2を省略した以外は実施例6と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0070】
(実施例8)
実施例4の合わせガラス用中間膜の膜表面温度が120℃になるようにギアオーブンで加熱し、加熱前の長さの1.3倍になるように5cm〜15cm/sの速度で伸展し、1.3倍伸展が維持されるように治具で固定した後、25℃の水にて冷却した。冷却した膜を固定した状態で、温度25℃、湿度30%の環境下に12時間静置し、乾燥させた。乾燥後、実施例1と同様の方法で合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0071】
(実施例9)
実施例4の合わせガラス用中間膜の代わりに、実施例7の合わせガラス用中間膜を使用した以外は、実施例8と同様の方法で、合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0072】
(実施例10)
実施例3の合わせガラス用中間膜の膜表面温度が120℃になるようにギアオーブンで加熱し、加熱前の長さの1.3倍になるように5cm〜15cm/sの速度で伸展し、1.3倍伸展が維持されるように治具で固定した後、25℃の水にて冷却した。冷却した膜を固定した状態で、温度25℃、湿度30%の環境下に12時間静置し、乾燥させた。乾燥後、実施例1と同様の方法で合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0073】
(実施例11、12)
中間層に用いるポリビニルブチラールのアセチル基量、ブチラール基量、水酸基量を変更した以外は、実施例3と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0074】
(実施例13、14)
保護層及び中間層に用いるポリビニルブチラールのアセチル基量、ブチラール基量、水酸基量を変更し、且つ、工程2に用いる三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールを変更した以外は、実施例6と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0075】
(実施例15、16)
保護層及び中間層に用いるポリビニルブチラールのアセチル基量、ブチラール基量、水酸基量を変更し、リップ金型の温度を195〜209℃に調整した以外は、実施例6と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作成し、界面の凸凹を測定した。
【0076】
(比較例1)
共押出機により共押出する際に、吸入圧変動の制御を行わなかった以外は実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜を作製し、界面の凹凸を測定した。
なお、ギアポンプの入り口に設置した圧力測定装置で測定したところ、各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅は1.0%以上であった。
【0077】
(比較例2)
各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅を0.8%以下に制御した以外は実施例1と同様にして合わせガラス用中間膜を作製し、界面の凹凸を測定した。
【0078】
(比較例3)
金型入口の樹脂組成物の温度を100〜145℃に変更し、且つ、吸入圧変動の制御を行わなかった以外は実施例6と同様にして合わせガラス用中間膜を作製し、界面の凹凸を測定した。なお、ギアポンプの入り口に設置した圧力測定装置で測定したところ、各押出機の30秒以内の吸入圧の変動幅は1.0%以上であった。
【0079】
(評価)
実施例及び比較例で得られた合わせガラスについて、以下の方法により光学歪みの発生の評価を行った。結果を表1、2に示した。
なお、各実施例及び比較例で用いたポリビニルブチラールのアセチル基量をAcとして、ブチラール基量をBuとして、水酸基量をOHとして略記し表1、2に記載した。
【0080】
(1)光学歪みの評価(目視評価)
観測者から7m離れた地点に蛍光灯(パナソニック社製 FL32S.D)を置き、蛍光灯と観測者を結んだ直線上の観測者から40cm離れた地点に、得られた合わせガラスを水平面に対して20°になるように、傾けて設置した。合わせガラスを通して、蛍光灯が歪んで見えた場合を「×」、見えない場合を「〇」と評価した。
光学歪みの評価は、25℃及び80℃の条件下で行った。
【0081】
(2)光学歪み値の評価
特開平7−306152号公報に記載された装置、即ち、透光性を有する被検査物に向けて照明光を照射する光源ユニットと、被検査物を透過した該照明光を投影する投影面と、投影面を撮像して濃淡画像を生成する画像入力部と、画像入力部で得られた濃淡画像の濃淡レベルのばらつきの度合いに基づいて歪の有無を判定する画像処理部とを有する光学的歪検査装置を用いて、光学歪み値を測定した。具体的には、光源として岩崎電気社製のEYE DICHO−COOL HALOGEN(15V100W)を用い、JIS R 3211(1988)での可視光線透過率(A光Y値、A−Y(380〜780nm))が88%(日立ハイテクテクノロジー社製、商品名:U4100、を使用)の単層膜から構成される合わせガラスの光学歪み値が1.14、ガラスなしの状態の光学歪み値が1.30になるように光源の照度、光学歪み像が投影されるスクリーンの角度、カメラの角度を調整して光学歪み値を評価した。光学歪みの評価は前記の可視光線透過率が87〜89%となるように作製した合わせガラスを測定雰囲気温度23℃、合わせガラスの温度が25℃及び80℃の条件下で行い、オートクレーブから24時間経過後に実施した。光学歪み値として、縦と横の値が算出されるが、数値の低い方を採用した。なお温度計として接触式温度計を使用した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、2層以上の樹脂層が積層された多層構造であって、高温下でも光学歪みの発生を防止できる合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該合わせガラス用中間膜の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 クリアガラス
10 樹脂層
20 樹脂層
21 樹脂層20の樹脂層10と接していた側の表面
30 樹脂層
40 車両
41 合わせガラス
42 ボンネット
43 本発明におけるRz/Smを満たすべき少なくとも一部の領域
図1
図2
図3