(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
施設外に排出されることなく施設内を循環して流れる洗浄液により、土壌汚染物質を含む汚染土壌を洗浄して浄化するクローズドシステム型の土壌浄化施設が配設された浄化施設敷地に降下し前記土壌浄化施設から前記浄化施設敷地に散逸又は漏出した土壌汚染物を含んでいる雨水を処理する雨水処理装置を用いた雨水処理方法であって、
前記土壌浄化施設は、前記汚染土壌を前記洗浄液で浄化しつつ分級して、清浄な粗骨材と砂と土とを生成するように構成され、
前記雨水処理装置は、
前記浄化施設敷地に降下した雨水を受け入れて貯留する雨水貯槽と、
地上に設置され砂又は土を収容する容器状の砂収容部と、
前記砂収容部の上方に配設され、前記砂収容部への雨水の降下を阻止する屋根と、
前記雨水貯槽に貯留されている雨水を、前記砂収容部に収容されている砂又は土に散布する雨水散布装置と、
前記砂収容部に収容されている砂又は土の粒子の間隙を流下した余剰の雨水を前記雨水貯槽に還流させる雨水還流機構とを備えていて、
前記雨水散布装置は、前記砂収容部の上方において前記屋根の下方に配置され下向きに開口する複数の放水ノズルが取り付けられた送水パイプと、前記雨水貯槽に貯留されている雨水を雨水供給管を介して前記送水パイプに供給する雨水供給ポンプとを有し、
前記雨水還流機構は、前記砂収容部の底壁の上面に形成された排水溝と、前記排水溝と前記雨水貯槽とに接続された集合排水溝とを有し、
該雨水処理方法は、
前記砂収容部に収容された砂又は土の上に前記雨水散布装置から雨水を散布する一方、該砂又は土に付着している雨水を空気中に蒸発させて前記砂収容部から除去し、
前記土壌浄化施設で生成された清浄な砂又は土の一部を、前記砂収容部に収容する砂又は土として用い、
前記砂収容部で所定の期間用いられて土壌汚染物質が蓄積された砂又は土を前記土壌浄化施設に導入し、前記汚染土壌とともに浄化して前記蓄積された土壌汚染物質を除去し、
前記雨水散布装置からの雨水の散布量を、前記砂収容部に収容された砂又は土の含水比が30〜35%に維持されるように設定することを特徴とする雨水処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大量の汚染土壌(例えば、1000トン/日)を浄化する土壌浄化施設はかなり大規模な施設であり、その設置面積及び高さがかなり大きいので、このような土壌浄化施設を収容する建屋を設置することは実用的ではなく、また設置する場合は多大な建設費を必要とする。そこで、このような土壌浄化施設は、一般に浄化施設敷地内に露天で設置される。ところで一方、浄化施設敷地には時々雨が降るが、このような敷地内には土壌浄化施設から汚染土壌が散逸ないしは漏出している可能性があるので、浄化施設敷地に降下した雨水は土壌汚染物質を含んでいる可能性がある。したがって、浄化施設敷地に降下した雨水をそのまま外部に排出することは好ましくない。
【0007】
なお、汚染土壌を洗浄した洗浄廃水に何らかの廃水処理を施して無害化し、外部に排出するようにした非クローズドシステム型の土壌浄化施設の場合は、浄化施設敷地に降下した雨水を洗浄廃水とともに処理すれば、雨水中の土壌汚染物質が未処理で外部に排出されることはない。しかしながら、洗浄水を施設外に排出しないクローズドシステム型の土壌浄化施設では、施設敷地内に降下した雨水をこのような簡便な手法で処理することはできない。一方、クローズドシステム型の土壌浄化施設の浄化施設敷地に降下した雨水に含まれる土壌汚染物質は非常に希薄であるので、このような土壌汚染物質を通常の廃水処理手法で除去するのはかなり困難であるといった問題がある。なお、このような問題は、有害金属等以外の土壌汚染物質を含む大量の汚染土壌を浄化する土壌浄化施設においても生じるのはもちろんである。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、洗浄液を施設外に排出しないクローズドシステム型の土壌浄化施設の浄化施設敷地に降下した雨水を、これに含まれる有害金属等あるいはその他の土壌汚染物質を未処理で外部へ排出することなく、確実に処理することを可能にする手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る雨水処理装置は、施設外に排出されることなく施設内を循環して流れる洗浄液により、土壌汚染物質を含む汚染土壌を洗浄して浄化するクローズドシステム型の土壌浄化施設が配設された浄化施設敷地に降下した雨水を処理する。この雨水処理装置は、浄化施設敷地に降下した雨水を受け入れて貯留する雨水貯槽と、地上に設置され砂又は土を収容する容器状の砂収容部と、砂収容部の上方に配設され砂収容部への雨水の降下を阻止する屋根と、雨水貯槽に貯留されている雨水を砂収容部に収容されている砂又は土に散布する雨水散布装置と、砂収容部の底部の雨水を雨水貯槽に還流させる雨水還流機構とを備えている。土壌汚染物質としては、例えば有害金属等(有害金属及び/又はその化合物)などが挙げられ、この場合洗浄液としては、例えばキレート剤を含む水を用いることができる。
【0010】
ここで、雨水散布装置は、砂収容部の上方において屋根の下方に配置され下向きに開口する複数の放水ノズルが取り付けられた送水パイプと、雨水貯槽に貯留されている雨水を雨水供給管を介して送水パイプに供給する雨水供給ポンプとを有している。また、雨水還流機構は、砂収容部の底壁の上面に形成された排水溝と、排水溝と雨水貯槽とに接続された集合排水溝とを有する。
【0011】
本発明に係る雨水処理装置を用いて、土壌浄化施設が配設された浄化施設敷地に降下した雨水を処理する本発明に係る雨水処理方法は、砂収容部に収容された砂又は土の上に雨水散布装置から雨水を散布する一方、該砂又は土に付着している雨水を空気中に蒸発させて砂収容部から除去する。そして、砂収容部で所定の期間用いられた砂又は土を土壌浄化施設に導入し、浄化すべき汚染土壌とともに浄化する一方、土壌浄化施設で汚染土壌を浄化することにより得られた清浄土壌の一部(例えば、洗い砂)を、砂収容部に収容する砂又は土として用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る雨水処理装置によれば、浄化施設敷地及び雨水貯槽自体に降下した雨水はすべて雨水貯槽に貯留される。そして、雨水貯槽に貯留されている雨水を、雨水散布装置により、砂収容部内の砂又は土の上に散布し、砂又は土に付着している雨水を大気中に蒸発させて砂収容部から除去することができる。他方、雨水に含まれている土壌汚染物質は、蒸発せず砂収容部内に残留する。したがって、クローズドシステム型の土壌浄化施設の浄化施設敷地に降下した雨水に含まれる土壌汚染物質の外部への排出を確実に防止することができる。すなわち、浄化施設敷地に降下した雨水を、これらに含まれる有害金属等あるいはその他の土壌汚染物質を未処理で外部へ排出することなく、確実に外部に排出することができる。
【0013】
さらに、砂収容部で用いられ土壌汚染物質が付着している砂又は土を適宜に土壌浄化施設に導入し、浄化すべき汚染土壌とともに浄化することができるので、雨水に含まれていた土壌汚染物質を処理することができる。また、土壌浄化施設で汚染土壌を浄化することにより得られた清浄土壌の一部(例えば、洗い砂)を、砂収容部に収容する砂又は土として用いることができるので、砂収容部で用いる砂又は土を容易に調達することができる。
【0014】
本発明に係る雨水処理方法によれば、砂収容部に収容された砂又は土の上に雨水散布装置から雨水を散布する一方、該砂又は土に付着している雨水を空気中に蒸発させて砂収容部から除去する。このとき、雨水に含まれていた土壌汚染物質は、蒸発せず砂収容部内に残留するので、クローズドシステム型の土壌浄化施設の浄化施設敷地に降下した雨水に含まれる土壌汚染物質の外部への排出を確実に防止することができる。また、砂収容部で所定の期間用いられた砂又は土を土壌浄化施設に導入し、浄化すべき汚染土壌とともに浄化する一方、土壌浄化施設で汚染土壌を浄化することにより得られた清浄土壌の一部(例えば、洗い砂)を、砂収容部に収容する砂又は土として用いるので、雨水に含まれていた土壌汚染物質を処理することができ、かつ砂収容部で用いる砂又は土を容易に調達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を具体的に説明する。
図1に示すように、汚染土壌処理場1(以下、略して「処理場1」という。)の土壌浄化施設敷地2(以下、略して「施設敷地2」という。)には、施設敷地2外に排出されることなく施設敷地2内の所定の循環経路を循環して流れる洗浄液により、土壌汚染物質を含む汚染土壌を洗浄して浄化するクローズドシステム型の土壌浄化施設3が露天で配置されている。そして、処理場1内において施設敷地2の近傍には、施設敷地2内に降下した雨水(雪解け水を含む)を処理する雨水処理装置Sが設けられている。
【0017】
雨水処理装置Sには、施設敷地2に降下した雨水を、雨水排出通路4を介して受け入れる雨水貯槽5が配設されている。雨水貯槽5は、地面に埋設された、平面形状が矩形であるコンクリート製の貯水池である。なお、以下では処理場1内における施設ないしは装置の位置関係を簡明に示すため、
図1中において雨水貯槽5と施設敷地2とが並ぶ方向(
図1中の位置関係では左右方向)に関して、雨水貯槽5が位置する側を「左」といい、施設敷地2が位置する側を「右」ということにする。
【0018】
さらに、雨水処理装置Sには、処理場1内において雨水貯槽5に対して、左右方向と垂直な方向に適度に離間して、砂又は土を収容する容器状の砂収容部6が配設されている。なお、以下では、処理場1内における施設ないしは装置の位置関係を簡明に示すため、雨水貯槽5と砂収容部6とが並ぶ方向(左右方向と垂直な方向)に関して、雨水貯槽5が位置する側を「前」といい、砂収容部6が位置する側を「後」ということにする。
【0019】
砂収容部6は、前端壁7と後端壁8と左側壁9と右側壁10と底壁11とを有し、左右方向の長さが比較的短く、前後方向の長さが比較的長い長方形の平面形状を有し、適量の砂又は土を収容することができる深さを有する、地上に設置され又は地中に埋設されたコンクリート製の箱状の容器である。さらに、雨水処理装置Sには、砂収容部6の上方に配設され該砂収容部6への雨水の降下を阻止する屋根12(
図3参照)と、雨水貯槽5に貯留された雨水を砂収容部6に収容されている砂又は土に散布する雨水散布装置13と、砂収容部6の底部の雨水を雨水貯槽5に還流させる雨水還流機構14とを備えている。なお、雨水貯槽5、砂収容部6、屋根12、雨水散布装置13及び雨水還流機構14の具体的な構成は後で詳しく説明する。
【0020】
以下、施設敷地2に設置された土壌浄化施設3の構成及び機能を具体的に説明する。
図2に示すように、施設敷地2の外周部には、敷地全周にわたってコンクリート製の外周溝15が配設されている。そして、施設敷地2内に降下した雨水は、種々の雨水排水路(図示せず)を経由して又は地表を流れて外周溝15に流入するようになっている。したがって、施設敷地2内に降下した雨水は、外周溝15を介することなく施設敷地2の外部に流出することはない。なお、外周溝15に流入した雨水はすべて、雨水排出通路4を介して雨水貯槽5(
図1参照)に流入する。
【0021】
土壌浄化施設3においては、有害金属等(有害金属及び/又はその化合物)で汚染され、あるいはその他の汚染物質(例えば、フッ素、ホウ素、シアン等の第二種特定有害物質)で汚染された地盤の掘削等により採取された土壌(汚染土壌)が、投入ホッパ16に受け入れられる。そして、投入ホッパ16内の土壌はまず混合装置17に投入され、混合装置17内で洗浄液と混合される。ここで、土壌は、細粒土(粒径が0.075mm以下のシルト又は粘土)を含むとともに、種々の粒径の土石ないしは土砂、例えば石(粒径が75mm以上)、礫(粒径が2ないし75mm)及び/又は砂(粒径が0.075ないし2mm)等を含むものである。
【0022】
投入ホッパ16内の土壌は有害金属等で汚染され、場合によってはさらにその他の汚染物質で汚染されている。ここで、有害金属等としては、例えばクロム、鉛、カドミウム、セレン、水銀、金属砒素及びこれらの化合物などが挙げられる。その他の汚染物質としては、例えば、フッ素又はその化合物、ホウ素又はその化合物、シアン化合物等の第二種特定有害物質などが挙げられる。洗浄液は、このような土壌から有害金属等を除去するためのものである。
【0023】
土壌から有害金属等を除去するための洗浄液としては、例えばキレート剤水溶液などを用いることができる。キレート剤としては、例えばEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、あるいは生分解性を有するHIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などを用いることができる。これらのキレート剤は、いずれも土壌に付着している有害金属等ないしはこれらのイオンを効果的に捕捉する(キレートする)ことができるものである。
【0024】
混合装置17で生成された土壌と洗浄液の混合物(以下「土壌洗浄液混合物」という。)はミルブレーカ18に移送される。ミルブレーカ18としては、例えばロッドミルを用いることができる。ロッドミルは、詳しくは図示していないが、ドラムの中に複数のロッドが配置された破砕装置であり、ドラムの回転によってロッドが互いに平行に転動して線接触し、その衝撃力、剪断力、摩擦力等により比較的粒径の大きい石、礫、砂等を破砕するとともに、これらに付着し又は含まれている有害金属等あるいはその他の汚染物質を剥離して洗浄液中に離脱させる。なお、洗浄液中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質の一部ないしは大部分は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に付着するので、土壌中の有害金属等あるいはその他の汚染物質の大部分は、細粒土の表面に集約される。
【0025】
ミルブレーカ18から排出された土壌洗浄液混合物はトロンメル19に導入される。トロンメル19は、詳しくは図示していないが、洗浄液を貯留することができる受槽と、水平面に対して傾斜して配置された略円筒形のドラムスクリーンとを有する篩分装置であって、ドラムスクリーンは、モータによりその中心軸まわりに回転することができるようになっている。また、ドラムスクリーン内に、洗浄液をスプレー状で噴射することができるようになっている。
【0026】
トロンメル19の回転しているドラムスクリーンの内部を土壌洗浄液混合物が流れる際に、ドラムスクリーンの網目より細かい土壌粒子は、洗浄液とともにドラムスクリーンの網目を通り抜け、ドラムスクリーン外に出て受槽内に入る。他方、ドラムスクリーンの網目より粗い土壌粒子すなわち粗骨材は、ドラムスクリーンの網目を通り抜けることができないので、ドラムスクリーンの下側の開口端を経由して、ドラムスクリーン外に排出される。トロンメル19内では、土壌洗浄液混合物中の土壌粒子同士が互いに擦れ合うので、土壌粒子の表面に残留・付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質が剥離され、洗浄液中に離脱させられる。このように洗浄液中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質の一部ないしは大部分は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に付着する。
【0027】
ドラムスクリーンの網目の分級径(目開き)は、例えば粒径が2mm未満の土壌粒子がドラムスクリーンの網目を通り抜けるように設定される。したがって、トロンメル19では、粒径が2mm以上の土壌粒子(主として礫)が土壌洗浄液混合物から分離される。前記のとおり、比較的粒径が大きい土壌粒子に付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質が洗浄液中に剥離されるので、粒径が2mm以上の土壌粒子は、ほとんど汚染物質を含まない。なお、トロンメル19のドラムスクリーンの網目の寸法(目開き)は前記のものに限定されるわけではなく、得ようとする比較的粒径が大きい土壌粒子の粒径に応じて、任意に設定することができるのはもちろんである。
【0028】
トロンメル19の受槽内に収容された粒径が2mm未満の土壌粒子と洗浄液とを含む土壌洗浄液混合物はサイクロン20に導入される。サイクロン20は、詳しくは図示していないが、下方に向かって狭まる略円錐状のシリンダ内に土壌洗浄液混合物をポンプで圧送して旋回流を生じさせ、これによって生じる遠心力を利用して、土壌洗浄液混合物を、比較的粒径が小さい(例えば0.075mm未満)細粒土と洗浄液の混合物と、比較的粒径が大きい(例えば0.075mm以上)土壌粒子とに分離する。そして、細粒土と洗浄液の混合物(以下「細粒土含有液」という。)はサイクロン20の上端部から排出され、比較的粒径が大きい土壌粒子はサイクロン20の下端部から排出される。細粒土含有液はpH調整槽21に輸送される。細粒土含有液に含まれる細粒土は、例えば粒径が0.075mm未満のシルト又は粘土である。
【0029】
他方、サイクロン20の下端部から排出された比較的粒径が大きい土壌粒子は分級機22に導入される。なお、この比較的粒径が大きい土壌粒子は、例えばその粒径が0.075〜2mmの砂であり、ある程度の洗浄液を含んでいる。分級機22は、所定の圧力及び液量で洗浄液を流動させて、比較的粒径が大きい土壌粒子すなわち砂にすすぎ洗浄処理を施すとともに、残留している浮遊物ないしは異物を捕集する。
【0030】
分級機22から排出された洗浄液はpH調整槽21に導入され、細粒土含有液に加えられる。そして、pH調整槽21では、細粒土含有液(加えられた洗浄液を含む)のpHが、pH調整剤、例えば酸性液(例えば、硫酸、塩酸等)及びアルカリ性液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)を用いて、ほぼ中性又は所定のpH(例えば、pH7〜8)となるように調整される。なお、図示していないが、pH調整槽21では、細粒土含有液のpHはpHメータ等を備えたpH自動制御装置により自動的に調整される。
【0031】
pH調整槽21でpHが調整された細粒土含有液は凝集槽23に一時的に貯留される。凝集槽23では、細粒土含有液にポリ塩化アルミニウム液(PAC)と、高分子凝集剤と、pH調整剤(酸性液又はアルカリ性液)とが添加される。これにより、凝集槽23内に非水溶性の金属水酸化物と細粒土とが混在する多数のフロックが生成される。
【0032】
凝集槽23内の細粒土含有液はシックナ24に導入される。シックナ24は、詳しくは図示していないが、細粒土含有液がほぼ静止している状態でフロックないしは細粒土を重力により沈降させ、下部に位置するスラッジ層(例えば、固形分の比率が5〜10%)と、上部に位置しほとんどフロックないしは細粒土を含まない上澄液(洗浄液)とを形成する。なお、上澄液の表面に浮遊している浮上油は、例えばシックナ24の水面にオイル吸収マットなどを浮遊させて適宜にこのオイル吸収マットを回収することにより、除去することができる。
【0033】
シックナ24内の上澄液は、洗浄液槽25に導入されて貯留される。洗浄液槽25に貯留されている洗浄液は、キレート剤再生装置26でキレート剤が再生された後、混合装置17とトロンメル19と分級機22とに供給される。なお、洗浄液槽25に貯留されている洗浄液が目減りしたときには、適宜に洗浄液槽25に水及びキレート剤が補給される。なお、キレート剤再生装置26の構成及び機能は、本発明の要旨ではないのでその詳しい説明は省略するが、例えば本願発明者らに係る特許文献1〜4には、種々のキレート剤再生装置26の具体的な構成及び機能が開示されている。
【0034】
他方、シックナ24の下部に堆積しているスラッジは、中間タンク27に移送され、一時的に貯留される。そして、中間タンク27内のスラッジは、適宜に又は連続的に、フィルタプレス28に移送される。フィルタプレス28は、詳しくは図示していないが、バッチ式又は半連続式の加圧式濾過器であって、中間タンク27から受け入れたスラッジを加圧濾過し、濾過ケークと濾液とを生成する。フィルタプレス28の濾過圧力は、例えば濾過ケークの含水率が30〜40%となるように好ましく設定される。ここで、フィルタプレス27の濾液はシックナ24に戻される。このように、洗浄液は、土壌浄化施設3内で再生しつつ循環使用され、外部には排出されない。すなわち、土壌浄化施設3はクローズドシステム型の土壌浄化施設である。
【0035】
以下、
図3〜
図4を参照しつつ、雨水貯槽5、砂収容部6、屋根12、雨水散布装置13及び雨水還流機構14を備えた雨水処理装置Sの構成及び機能を具体的に説明する。
図3〜
図4に示すように、砂又は土を収容するための砂収容部6は、コンクリートで作成され、処理場1(
図1参照)内においてその上端部近傍部が大気中に露出するようにして地面30に埋設されている。砂収容部6は、平面視では左右方向の長さが比較的短く(例えば10〜20m)、前後方向の長さが比較的長い(例えば50〜150m)長方形の形状を有し、その深さが適量の砂又は土を収容することができるように設定され(例えば0.4〜0.8m)、一体形成された前端壁7と後端壁8と左側壁9と右側壁10と底壁11とを有する箱状の容器である(
図1参照)。なお、砂収容部6の左右方向及び前後方向の長さは、該砂収容部6で蒸発させる雨水の量及び処理場1の寸法(面積)等に応じて好ましく設定される。
【0036】
底壁11の上面には、互いに所定の間隔を隔てて前後方向に平行に伸び、所定の深さ(例えば5〜10cm)を有する複数の排水溝31が設けられている。これらの排水溝31は、砂収容部6の前端部近傍に設けられた集合排水溝32(
図1参照)に接続されている。集合排水溝32の前端は雨水貯槽5に接続されている。なお、排水溝31及び集合排水溝32は雨水還流機構14を構成する。
【0037】
かくして、各排水溝31内に流入した雨水(すなわち、蒸発しなかった余剰の雨水)は、重力で集合排水溝32を介して雨水貯槽5に還流する。そして、左右方向に関してこれらの排水溝31間に位置する複数の凸部33の上には、雨水は通過させるが砂又は土は通過させない多孔板34が配設されている。ここで、多孔板34は単一の板状部材ではなく、製作及び運搬に適した寸法の多数の多孔板(例えば、左右1〜2m、前後2〜5m、厚さ5〜10mmの多孔板)で構成されている。そして、多孔板34の上に、砂又は土からなる所定の厚さ(例えば30〜60cm)の砂層35が設けられている。
【0038】
砂収容部6の左側壁9の上に、前後方向に適当な間隔(例えば、5〜10m)をあけて複数の左側鉛直フレーム37が配設される一方、右側壁10の上に、前後方向に適当な間隔(例えば、5〜10m)をあけて複数の右側鉛直フレーム38が配設されている。なお、左側鉛直フレーム37と右側鉛直フレーム38は、前後方向に関して同一位置に配置されている。そして、前後方向に関して同一位置に配置された左側鉛直フレーム37の上端近傍部と右側鉛直フレーム38の上端近傍部とは、左右方向に水平に伸びる横フレーム39によって連結されている。また、前後方向に隣り合う左側鉛直フレーム37の上端近傍部同士は前後方向に伸びる縦フレーム(図示せず)によって連結され、前後方向に隣り合う右側鉛直フレーム38の上端近傍部同士は前後方向に伸びる縦フレーム(図示せず)によって連結されている。
【0039】
このように、左側鉛直フレーム37と右側鉛直フレーム38と横フレーム39と縦フレーム(図示せず)とによって構成される檻状のフレーム構造の上に、屋根12が取り付けられている。屋根12は、通常の降雨時における砂収容部6への雨水の降下を阻止できるように、砂収容部6に比べてやや大きい平面形状を有している。なお、図示していないが、屋根12上に降った雨は、樋などの雨水排出具により、砂収容部6の外に排出され、雨水貯槽5には導入されない。
【0040】
雨水散布装置13は、砂収容部6の上方において屋根12の下方に配置され、前後方向に伸びる複数の送水パイプ41を備えている。詳しくは図示していないが、各送水パイプ41は、固定具を用いて横フレーム39によって支持されている。これらの送水パイプ41は、左右方向に適当な間隔(例えば、1〜2m)を隔てて平行に配置されている。そして、各送水パイプ41には、前後方向に適当な間隔(例えば、1〜2m)を隔てて、下向きに開口する複数の放水ノズル42が取り付けられている。
【0041】
前後方向に伸びる各送水パイプ41の前端部は、左右方向に伸びる中間パイプ43を介して雨水供給管44の後端部に接続されている。なお、各送水パイプ41の後端部は閉止されている。雨水供給管44の前端部は雨水貯槽5内の雨水に浸漬されている。そして、雨水貯槽5の近傍において、雨水供給管44に雨水供給ポンプ45が介設されている。ここで、雨水供給ポンプ45は、雨水供給管44(雨水供給ポンプ45より雨水貯槽側の部分)を介して雨水貯槽5内の雨水を吸い込んで加圧し、雨水供給管44(雨水供給ポンプ45より砂収容部側の部分)と中間パイプ43とを介して各送水パイプ41に供給する。かくして、各放水ノズル42から、砂収容部6内の砂層35(砂又は土)の上面に向かって雨水を放出することができる。
【0042】
以下、土壌浄化施設3が配設された施設敷地2に降下した土壌汚染物質を含む可能性がある雨水を、雨水処理装置Sにより処理する方法を具体的に説明する。施設敷地2に降下した雨水(雪解け水を含む)は、空気中に自然に蒸発(気化)する水を除いて、すべて雨水排出通路4を介して雨水貯槽5に流入し、貯留される。この雨水には、土壌浄化施設3から施設敷地2に散逸ないしは漏出した有害金属等あるいはその他の土壌汚染物質が若干含まれている可能性がある。なお、雨水貯槽5自体に降下した雨水も雨水貯槽5に貯留される。
【0043】
雨水貯槽5内に貯留された雨水は、雨水供給ポンプ45により、雨水供給管44と中間パイプ43とを介して、各送水パイプ41に供給され、各放水ノズル42から砂収容部6内の砂層35の上面に向かっておおむね下向きに滴状で放出され、砂層35に万遍なく散布される。このように、放水ノズル42により、砂収容部6内の砂層35の上に雨水が散布され、砂層35を構成する砂又は土の粒子は、常に粒子間に雨水が保持され、ないしは粒子が雨水の薄膜により被覆された飽和水分状態(例えば、含水比30〜35%)に維持される。
【0044】
そして、砂層35中に保持された雨水は、空気中に蒸発(気化)する。かくして、雨水貯槽5に流入する雨水は、すべて砂層35から空気中に蒸発する。その際、雨水に含まれていた有害金属等は、砂層35内に残留し、外部には排出されない。したがって、施設敷地2に降下した雨水は、これらに含まれる有害金属等を外部に排出することなく、確実に処理される。なお、施設敷地2及び雨水貯槽5に降下した雨水をすべて砂層35から蒸発させるために必要とされる砂収容部6の面積ないしは寸法は、後で説明する。
【0045】
雨水散布装置13(放水ノズル42)から砂層35への雨水の散布量は、砂層35からの雨水の蒸発量よりも多くなるように好ましく設定される(例えば、蒸発予測量の1.2〜2.0倍)。これにより、砂層35を構成する砂又は土は飽和水分状態(例えば、含水比30〜35%)に維持される。ここで、余剰の雨水は、砂層35内の砂又は土の粒子の間隙を流下し、多孔板34を通り抜けて排水溝31に流入する。そして、排水溝31内の余剰の雨水は、集合排水溝32を介して雨水貯槽5に還流する。
【0046】
このような雨水の蒸発処理を繰り返し実施すると、砂収容部6内の砂層35には、有害金属等又はその他の土壌汚染物質が次第に蓄積されてゆく。そこで、所定の期間が経過するごとに(例えば2〜6か月ごとに)、砂収容部6内の所定の領域ないしは区画(例えば、100〜200m
2の領域)の砂又は土を除去して土壌浄化施設3に導入し、浄化すべき汚染土壌とともに浄化する。
【0047】
そして、砂収容部6の砂又は土が除去された区画ないしは領域には、土壌浄化施設3で汚染土壌を浄化することにより得られた清浄土壌の一部である洗い砂を導入する。すなわち、砂収容部6内の所定の区画ないしは領域の有害金属等を含む砂又は土を洗い砂と交換する。このように、施設敷地2内に降下した雨水に含まれる有害金属等又はその他の土壌汚染物質は土壌浄化施設3で処理され、未処理で外部に排出されることはない。したがって、クローズドシステム型の土壌浄化施設3の施設敷地2に降下した雨水を、これに含まれる土壌汚染物質を外部に排出することなく、確実に処理することができる。
【0048】
例えば施設敷地2の面積が2000m
2(例えば、平面視で左右40m×前後50mの矩形の土地)であり、土壌処理施設3の汚染土壌処理量が500m
3/日(約850トン/日)ある場合、雨水貯槽5、砂収容部6及び雨水散布装置13の仕様は、例えば下記のように設定してもよい。ここでは、便宜上、土壌浄化施設3及び雨水処理装置Sは、1日24時間、365日稼働するものとする。なお、下記の具体例は、あくまでも一例であり、施設敷地2の面積又は土壌処理施設3の汚染土壌処理量、あるいは稼動時間がこれらと異なる場合でも、同様の手法で雨水貯槽5及び砂収容部6の寸法及び雨水散布装置13の雨水散布量を設定することができるのはもちろんである。
【0049】
(1) 雨水貯槽5
・直方体状貯槽(左右寸法:15m、前後寸法:30m、深さ:3m)
・上面面積 450m
2
・最大貯水量 約1300m
3
(2) 砂収容部6
・直方体状(左右寸法:15m、前後寸法:120m、深さ:0.8m)
・上面面積 1800m
2
・砂収容量 約1000m
3
(3) 雨水散布装置13
・散水量 1〜3m
3/時
【0050】
<降水量>
雨水貯槽5には、施設敷地2に降下する雨水と、雨水貯槽5自体に降下する雨水とが一時的に受け入れられることになる。他方、2013年における日本の平均年間降水量が1847mmであることに鑑み、処理場1における平均年間降水量をやや余裕をもって2000mm(すなわち、2.0m
3/m
2・年)と想定すれば、施設敷地2と雨水貯槽5とには、年間4900m
3の雨水が降下するものと推定される。
2.0m
3/m
2・年×(2000m
2+450m
2)=4900m
3/年
【0051】
<雨水貯槽>
前記のとおり、雨水貯槽5の最大貯水容量は約1300m
3であるが、これは施設敷地2と雨水貯槽5と砂収容部6とに降下する雨水の約3.2か月分に相当する。他方、雨水貯槽5内に貯留されている雨水は、日々砂収容部6で処理され減少してゆくので、雨水貯槽5は、施設敷地2と雨水貯槽5とに降下する雨水を、溢流させることなく十分な余裕をもって貯留することができる。また、一般に、湖沼や溜池などにおける水面からの水の蒸発量は、一般に水面1m
2あたり年間0.5〜1.0m
3であることが知られている。したがって、雨水貯槽5(上面面積450m
2)からは、少なくとも年間225m
3の雨水が蒸発するものと推定される。
0.5m
3/m
2・年×450m
2=225m
3/年
【0052】
<砂層における雨水蒸発量>
砂収容部6内の砂層35における雨水の蒸発量は、以下で説明するように3.15m
3/m
2・年(すなわち、3.15トン/m
2・年)であると推算される。すなわち、まず非特許文献1には、温度が14.2℃であり、相対湿度が59%であり、空気の流速が250cm/秒であるときにおける、含水比が32.1%(飽和水分状態)の土壌からの水の蒸発速度は11.3×10
−6g/cm
2・秒であると開示されている。また、温度が14.8℃であり、相対湿度が57%であり、空気の流速が170cm/秒であるときにおける、含水比が32.9%(飽和水分状態)の土壌からの水の蒸発速度は7.9×10
−6g/cm
2・秒であると開示されている。
【0053】
このような非特許文献1の開示事項に鑑みれば、日本における平均的な気候状態を、温度15℃、相対湿度60%、風速2m/秒程度と想定したときには、砂収容部6内の飽和水分状態にある砂層40(砂又は土)からの平均的な雨水の蒸発量は、おおむね10.0×10
−6g/cm
2・秒であるものと推定される。この蒸発量は、実用的な単位に換算すれば、3.15m
3/m
2・年となる。
10.0×10
-6g/cm
2・秒
=10.0×10
-6×10
-6×10
4トン/m
2・秒=1.0×10
-7トン/m
2・秒
=1.0×10
-7×3600×24×365トン/m
2・年=3.15トン/m
2・年
したがって、砂収容部6内の砂層35からは、年間5670トン(5670m
3)の雨水が蒸発する。
3.15トン/m
2・年×1800m
2=5670トン/年
【0054】
<雨水処理装置における水の収支>
前記のとおり、施設敷地2と雨水貯槽5とには、年間4900m
3の雨水が降下するものと推定される。他方、雨水貯槽5では少なくとも年間225m
3の雨水が蒸発し、砂収容部6では年間5670m
3の雨水が蒸発し、雨水処理装置S全体では合計5895m
3の水が蒸発するものと推定される。このように、雨水処理装置Sでは、1年間で全体的には、施設敷地2と雨水貯槽5とに降下する雨水より多くの量の雨水を蒸発させることができるので、基本的には、施設敷地2と雨水貯槽5とに降下する雨水を、おおむね995m
3の余裕(余裕率20%)をもってすべて蒸発させて処理することができる。しかしながら、とくに降水量が多い年もあり、また冬季には雨水の蒸発量が少ないので、万全を期して、前記の具体例における砂収容部6の前後方向の寸法(120m)を、20〜30%程度長くしてもよい。
【0055】
前記の実施形態では、砂収容部6の平面形状は長方形あるが、
図1中に破線Rで示すように、平面形状が円形の砂収容部を用いてもよい。なお、
図1中の破線Rで示す円は、平面形状が長方形である砂収容部6の平面形状と同一の面積をもつ。このように、平面形状が円形である砂収容部を用いれば、雨水処理装置Sの前後方向の長さを短くすることができ、処理地1が比較的狭い場合は、そのレイアウトが容易となる。
【課題】クローズドシステム型の土壌浄化施設の浄化施設敷地に降下した雨水を、これに含まれる土壌汚染物質を未処理で外部へ排出することなく、確実に処理することを可能にする手段を提供する。
【解決手段】クローズドシステム型の土壌浄化施設3の施設敷地2に降下した雨水を処理する雨水処理装置Sは、雨水貯槽5と、屋根付きの砂収容部6と、雨水散布装置13と、雨水還流機構14とを備えている。雨水散布装置13は、砂収容部4の上方において屋根の下方に配置され下向きに開口する複数の放水ノズルが取り付けられた送水パイプと、雨水貯槽5に貯留されている雨水を雨水供給管46を介して送水パイプに供給する雨水供給ポンプ45とを有している。雨水還流機構14は、砂収容部6の底壁の上面に形成された排水溝と、排水溝と雨水貯槽とに接続された集合排水溝32とを有する。