(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記構造上のコーティングは、前記1つまたは複数の溝を完全に架橋して、前記構造上のコーティングが、前記1つ以上のチャネルのそれぞれを密閉する、請求項1に記載の方法。
前記透過性のスロット(144)の各々が前記基材(110)の表面法線(52)に対して角度γで傾斜しており、前記角度γが前記基材(110)の前記表面法線(52)に対して約25度〜70度の範囲内にある、請求項6に記載の構成部品(100)。
前記コーティング(150)が2つ以上の層(50)を有し、前記層のうちの後で堆積される層(56)が、先に堆積された層(54)内に形成された前記透過性のスロット(144)を架橋し、それにより前記透過性のスロット(144)を実質的に密閉する、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の構成部品(100)。
前記透過性のスロット(144)が、前記1つまたは複数のそれぞれのチャネル(130)から前記構成部品の外部表面まで冷却剤流体を運ぶように構成され、前記コーティング(150)には、構造上のコーティング、ボンドコーティング、耐酸化性のコーティング、および、遮熱コーティングのうちの少なくとも1つが含まれる、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の構成部品(100)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「第1の」および「第2の」などの用語は本明細書では順番、量または重要性を一切示しておらず、1つの要素を別の要素と区別するのに使用される。本明細書で数詞がないときは量を限定することを示しておらず、参照する項目の少なくとも1つが存在することを示している。量に関連して使用される「約」という修飾語は、述べた値を含み、さらに、文脈によって決定される意味を有する(例えば、特定の量の測定値に伴われる誤差の程度を含む)。さらに、「組合せ」という用語は、ブレンド材、混合物、合金および反応生成物などを含む。
【0015】
また、本明細書では、「(複数可)」という接尾辞は、通常、それが修飾する用語の単数および複数の両方を含むことを意図しており、したがって、その用語の1つまたは複数を含むことを意図する(例えば、「通路孔」は、特に指定しない限り、1つまたは複数の通路孔を含んでよい)。本明細書を通して、「一実施形態」、「別の実施形態」および「実施形態」などに言及することは、その実施形態に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造および/または特性)が、本明細書で説明される少なくとも1つの実施形態に含まれ、別の実施形態に存在していても存在していなくてもよいことを意味する。さらに、説明される本発明の特徴は、様々な実施形態において任意の好適な形で組み合わせることができることを理解されたい。
【0016】
図1は、ガスタービンシステム10の概略図である。システム10は、1つまたは複数の、圧縮機12、燃焼器14、タービン16および燃料ノズル20を有することができる。圧縮機12およびタービン16は1つまたは複数のシャフト18によって連結することができる。シャフト18は、1つのシャフトであっても、シャフト18を形成するように一体に連結された複数のシャフトセグメントであってもよい。
【0017】
ガスタービンシステム10は複数の熱ガス経路構成部品100を有することができる。熱ガス経路構成部品は、システム10を通るガスの高温流に少なくとも部分的にさらされる、システム10の任意の構成部品である。例えば、バケット組立体(ブレードまたはブレード組立体としても知られる)、ノズル組立体(ベーンまたはベーン組立体としても知られる)、シュラウド組立体、トランジションピース、保持リング、および、圧縮機排気構成部品はすべて、熱ガス経路構成部品である。しかし、本発明の熱ガス経路構成部品100が、上記の例に限定されず、ガスの高温流に少なくとも部分的にさらされる任意の構成部品であってもよいことを理解されたい。さらに、本開示の熱ガス経路構成部品100が、ガスタービンシステム10内の構成部品に限定されず、高温流にさらされる可能性がある機械の任意の部品またはその構成部品であってもよいことを理解されたい。
【0018】
熱ガス経路構成部品100が熱ガス流80にさらされると、熱ガス経路構成部品100は熱ガス流80によって加熱され、故障する温度に達する可能性がある。したがって、システム10の効率および性能を向上させて、システム10が高い温度において熱ガス流80と共に運転されるのを可能にするために、熱ガス経路構成部品100のための冷却システムが必要となる。
【0019】
概して、本開示の冷却システムは、熱ガス経路構成部品100の表面内に形成される一連の小型チャネルすなわちマイクロチャネルを有する。熱ガス経路構成部品はコーティングを備えていてもよい。冷却流体がプレナムからこれらのチャネルに供給されてもよく、この冷却流体はチャネルを通って流れてコーティングを冷却することができる。
【0020】
図2〜9を参照して構成部品100を被覆する方法を説明する。
図3、4および7の実施例で示されるように、この方法は、基材100内に1つまたは複数の溝132を形成することを含む。示される実施例では、複数の溝132が基材110内に形成されている。例えば
図8および9に示されるように、溝132は、基材110の表面112に少なくとも部分的に沿って延在する。例えば
図3および4に示されるように、この方法は、基材110の表面112の少なくとも一部分の上にコーティング150を堆積させることをさらに含む。より詳細には、コーティング150は、基材110の表面112の少なくとも一部分の上において、溝132のうちの空いているもの(充填されていないもの)の上に直接に堆積される。ここで使用する「空いている」は、溝132が空であること、すなわち、溝132が犠牲充填材で充填されていないことを意味する。しかし、後で説明する代替のプロセス構成では、犠牲充填材が使用される。
【0021】
例のコーティング150は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,640,767号および米国特許第5,626,462号に提示されている。米国特許第5,626,462号で考察されているように、コーティング150は基材110の表面112の一部に接着される。コーティング150は1つまたは複数の層50を有する。
図3に示される例の配置構成では、層50のうちの少なくとも1つが、基材110の表面法線52に対して約20〜85度の範囲内の角度αで堆積されている。より詳細には、示される堆積角度αは、基材110の表面法線52に対して約45度〜80度の範囲内にあり、さらに詳細には、約50度〜70度の範囲内にある。より概略的には、層(50)のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の角度で堆積される。
図3に描かれるように、角度αは、
図4の角度βも同様に、基材110の表面法線52に対して画定される。
図3および4は、溝132を、これらのページの平面に対して垂直に示しており、すなわち、溝の方向を横切る断面として示している。しかし、異なる向きの溝がさらに基材110内に形成されていてもよく、そのような溝に対してはマイクロコート(micro−coat)を行うことは不可能であり、したがって、コーティングの堆積角度は常に溝方向に対して横向きであるが、コーティング角度は、実際には、表面法線に対する所定の角度αまたはβに加えて、局部的な溝方向に対する角度(図示せず)を有する複合角度である。
【0022】
図3、4、8および9に示されるように、例えば、溝132およびコーティング150は一体に、構成部品100を冷却するための複数のチャネル130を画定する。溝132およびチャネル130は
図3、4、8および9では長方形で示されているが、これらは別の形状であってもよい。例えば、溝132(およびチャネル130)は、
図7および10を参照して後で説明するように、窪み形の溝132(窪み形のチャネル130)であってもよい。さらに、溝132(チャネル130)の側壁は直線である必要はない。様々な用途において、溝132(チャネル130)の側壁は湾曲しても丸形であってもよい。
【0023】
基材110は、通常、基材110の表面112内に溝132が形成される前に注型される。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡された米国特許第5,626,462号で考察されているように、基材110は、本明細書では第1の材料として記載される任意の適当な材料から形成することができる。これには、構成部品100の意図される用途に応じて、Niベース、CoベースおよびFeベースの超合金が含まれてもよい。Niベースの超合金は、γ相およびγ’相の両方を含む超合金であってもよく、詳細には、これらのNiベースの超合金は、γ’相が超合金の体積の少なくとも40%を占めるように、γ相およびγ’相の両方を含む。所望される特性の組合せは高温強度および高温耐クリープ性を含むので、このような合金が有利であることは知られている。第1の材料にはNiAlの金属間化合物合金が含まれてもよく、これらの合金もやはり、高温強度および高温耐クリープ性を含む優れた特性の組合せを有することが知られており、航空機で使用されるタービンエンジンの用途で使用されるのが有利である。Nbベースの合金の場合、優れた耐酸化性を有する、Nb/Ti合金などのNbベースの合金が被覆されることが好適であり、これらの合金には、詳細には、原子百分率で表して、Nb−(27〜40)Ti−(4.5〜10.5)Al−(4.5〜7.9)Cr−(1.5〜5.5)Hf−(0〜6)Vが含まれる。第1の材料には、また、Nbを含有する金属間化合物、Nbを含有するカーバイド、またはNbを含有するホウ化物などの、少なくとも1つの二次相を含むNbベースの合金が含まれてもよい。このような合金は、これらが延性相(すなわち、Nbベースの合金)および強化相(すなわち、Nbを含有する金属間化合物、Nbを含有するカーバイド、またはNbを含有するホウ化物)を含むという点で、複合材材料に類似している。
【0024】
図2、8および9に示される例の配置構成では、コーティング150は、基材110のエーロフォイル形状の外側表面112に沿って長手方向に延在する。コーティング150はエーロフォイル形状の外側表面112に一致しており、マイクロチャネル130を形成する溝132を覆っている。
図8および9に示されるように、例えば、基材110およびコーティング150は複数の出口フィルム孔142をさらに画定していてもよい。
図9に示される例の構成では、マイクロチャネル130が、アクセス孔140からフィルム冷却孔142まで冷却剤を運ぶ。描かれているように、コーティング150が、単に、チャネルを覆う第1のコーティングすなわち構造上のコーティングであることに留意されたい。特定の用途では、1つのコーティングを使用するだけでよい。しかし、別の用途では、ボンドコートおよび遮熱コーティング(TBC)も使用される。
図8および9に示される例の配置構成では、マイクロチャネル130が、それぞれのアクセス孔140から出口フィルム孔142まで冷却流を流通させる。
図8および9に示される実施例では、溝が出口フィルム孔142まで流体を運ぶ。しかし、別の構成ではフィルム孔は伴われず、マイクロチャネルが単に基材の表面112に沿って延在し、後縁またはバケット先端部、あるいは端壁縁部などの、構成部品の縁部から抜け出る。また、
図8ではフィルム孔は丸形で示されているが、これは単に非限定の実施例であることに留意されたい。このフィルム孔は非円形形状の孔であってもよい。
【0025】
通常、マイクロチャネルの長さは、フィルム孔の直径の10倍から1000倍の範囲内、より詳細には、フィルム孔の直径の20倍から100倍の範囲内にある。好都合には、マイクロチャネル130は構成部品の表面のいかなる場所でも使用することができる(エーロフォイル本体、前縁部(lead edge)、後縁部(trail edge)、ブレード先端、端壁、プラットフォーム)。さらに、マイクロチャネルは直線の壁を有して示されているが、マイクロチャネル130は任意の構成であってもよく、例えば、これらは直線であっても湾曲していてもよく、あるいは複数の湾曲部などを有してもよい。コーティング150は、任意の適当な材料であってもよくまた基材110のエーロフォイル形状の外側表面120に接着される、第2の材料を有する。特定の構成では、コーティング150は、工業用部品の場合、0.1ミリメートル〜2.0ミリメートルの範囲内の、より詳細には0.1ミリメートルから1ミリメートルの範囲内の、さらに詳細には0.1ミリメートルから0.5ミリメートルの厚さを有する。航空機産業用の部品(aviation component)の場合、この範囲は通常0.1ミリメートルから0.25ミリメートルである。しかし、特定の構成部品100の要件に応じて別の厚さが使用されてもよい。
【0026】
図4に示される例の構成では、コーティング150は2つの層54、56を有する。
図4では2つのみのコーティング層54および56が示されているが、特定の用途において追加のコーティング層50が付着されてもよい。
図4に示される例の配置構成では、複数の層50の第1の層54が角度αで基材110上に堆積されており、複数の層50の第2の層56が角度βで第1の層56の上に堆積されている。特定のプロセス構成では、角度βは実質的に角度αと等しくてもよく(すなわち、β=α+/−10°)、それにより、第1の層54および第2の層56の向きが実質的に対称となる。別のプロセス構成では、堆積角度βおよびαはより大幅に異なっていてもよい。例えば、第2の層56は、第1の層54の堆積角度αより表面法線52により接近した角度βで堆積されてもよい。第1のコーティング層54がある角度αで付着されて第2のコーティング層56が反対の角度β=180−αで付着されるように、端から端までのコーティングの堆積角度を入れ替えるすなわち調整することにより、
図5および6の比較から明らかなように、単一方向のコーティングでは開いたままである領域を閉鎖することができるコーティングマイクロ構造が構築される。このような入れ替えは、2つの層または追加の層に対して実施することができる。
【0027】
図4に描かれる例の構成では、第1のコーティング層54および第2のコーティング層56はそれぞれの溝132を完全に架橋しており、したがってコーティング(150)がそれぞれのマイクロチャネル130を密閉している。しかし、別の構成では、第1の層54が1つまたは複数の透過性のスロット144を画定し、したがって、第1の層54は個別の溝132の各々を完全には架橋しない。例の多孔性の層54、56が
図5および6に示されている。
図5は、GTD444(登録商標)の基材内に形成された4つの例の冷却チャネルを示しており、Rene142C(登録商標)の第1のコーティング層54が基材110の表面法線52に対して約45度の角度αで堆積されている。
図6は、基材110の表面法線52に対して約45度の角度βで堆積されたRene142C(登録商標)の追加の第2のコーティング層56を備える、
図5の4つの例の冷却チャネルを示している。より詳細な構成では、第2の層56がさらに1つまたは複数の透過性のスロット144を画定し、したがって、第1の層54および第2の層56は個別の溝132の各々を完全には架橋しない。
図5に示されるように、コーティング150は付着されて一定の厚さを形成するので、通常、隙間(透過性のスロット)144は不規則な幾何形状を有し、隙間144の幅は変化する。最初に、コーティング54の第1の部分が基材110に付着されるときに、隙間144の幅はマイクロチャネル130の頂部136の幅の50%程度もあってもよい。次いで、コーティング150が形成されるときに、隙間144は頂部136の幅の5%以下まで狭くすることができる。詳細な例では、最も狭い箇所の隙間144の幅は、それぞれのマイクロチャネル頂部136の幅の5%から20%である。さらに、透過性のスロット144は多孔性であってもよく、この場合、「多孔性」の隙間144はいくつかの接続部、すなわち、隙間を有さないいくつかの箇所または場所を有する。好都合には、隙間144は、コーティング150の応力を除去することができる。
【0028】
第1のコーティング54内の隙間144によって応力を除去することを実現することは重要であるが、しかし、第1のコーティング層54内に得られる隙間144は元々の開口部136よりずっと小さい。したがって、第2のコーティング層56内の隙間の必要性は低い。したがって、明確に示されてはいないが、特定の構成では、第1のコーティング層54内の透過性のスロット144および連続した(隙間のない)第2のコーティング層56が存在する。この特定の構成は、第1のコーティング層54内に形成された透過性のスロット144の上を完全に被覆することを目的として、例えば、第2のコーティング層56が堆積される際に基材110を1つまたは複数の軸を中心に回転させることにより、あるいは、ほかには、基材110に対してほぼ垂直にまたはより概略的には基材110の表面法線52に対して約+/−20度の範囲内の角度βで第2のコーティング層56を堆積させることにより、実現することができる。この特定の構成(すなわち、連続した第2のコーティング層56を備える、第1のコーティング層54内の隙間144)を作るための別の技法は、空気プラズマ溶射コーティングなどの別のタイプの第2のコーティングを付着させることである。さらに、より厚い第2のコーティング層56を付着させることでも、最終的に隙間144は閉鎖される。より概略的には、透過性のスロット144は、これらのスロットを架橋する層が後で堆積されるように、1つまたは複数のコーティング層50内に形成されてもよく、それにより、スロット144が効果的に密閉される。したがって、透過性のスロット144は、それらの特定の機能に応じて、(1)すべてのコーティング層を通って、または、(2)すべてのコーティングではなく一部のコーティングのみを通って、のいずれかで延在してもよい。好都合には、透過性のスロット144は、構造上のコーティング(複数可)のために応力/ひずみを除去するように機能する。さらに、透過性のスロット144は、すべてのコーティングを通って延在する場合には冷却手段として機能することができ、すなわち、このような構成の場合、透過性のスロット144は、それぞれのチャネル130から構成部品の外部表面まで冷却剤流体を運ぶように構成される。さらに、透過性のスロット144は、上側のコーティングによって架橋されている場合に、これらのコーティングが損傷していたり破砕していたりする場合には受動的な冷却手段として機能する。
【0029】
図7に示される例の構成では、溝132の各々が底面134および頂部136を有し、底面134は頂部136より広くなっており、したがって、溝132の各々は窪み形の形状132を有する。詳細な構成では、それぞれ1つの窪み形状の溝132の底面134はそれぞれの溝132の頂部136の少なくとも2倍の幅を有する。より詳細な構成では、それぞれの窪み形状の溝132の底面134は、それぞれの溝132の頂部136の少なくとも3倍の幅、さらに詳細な構成では約3〜4倍の範囲内にある幅を有する。好都合には、上述したように、角度をつけてコーティングを堆積させることは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、GE整理番号246424−1に該当し、本願の譲受人に譲渡された、同時に出願された、Ronald S. Bunkerらの米国特許出願「Components with re−entrant shaped cooling channels and methods of manufacture」に提示される窪み形の溝132との組合せで使用することができる。好都合には、有意な堆積角度でコーティングを付着させることにより、コーティング150は、充填することなくまたは部分的に充填することなく窪み形の溝132の上を架橋することができる。さらに、窪み形の溝は、頂部136の幅が等しい単純な形状の溝(すなわち、幅がほぼ等しい頂部136および底面を有する溝)に対して冷却作用を向上させる。
【0030】
コーティング150は様々な技法を用いて堆積されてもよい。詳細なプロセスでは、コーティング150は、イオンプラズマ蒸着を行うことによって基材110の表面112の少なくとも一部分の上に堆積される。例のカソードアークイオンプラズマ蒸着(cathodic arc ion plasma deposition)の装置および方法が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡された、Weaverらの米国公開特許出願第20080138529号「Method and apparatus for cathodic arc ion plasma deposition」に提示されている。簡単に言うと、イオンプラズマ蒸着は、コーティング材料で形成されるカソードを真空チャンバ内の真空環境内に配置すること、基材110をこの真空環境内に用意すること、カソード表面上にカソードアークを形成してカソード表面からコーティング材料を浸食または蒸発させるために、カソードに電流を印加すること、および、カソードからのコーティング材料を基材の表面112上に堆積させることを含む。
【0031】
1つの非限定の例では、イオンプラズマ蒸着プロセスはプラズマ蒸着プロセスを含む。コーティング150の非限定の例には、米国特許第5,626,462号を参照して後でより詳細に考察するように、構造上のコーティング、ボンドコーティング、耐酸化性のコーティング、および、遮熱コーティングが含まれる。特定の熱ガス経路構成部品100では、コーティング150はニッケルベースまたはコバルトベースの合金を含み、より詳細には、超合金またはNiCoCrAlY合金を含む。例えば、基材110の第1の材料が、γ相およびγ’相の両方を含むNiベースの超合金である場合、米国特許第5,626,462号を参照して後でより詳細に考察するように、コーティング150はこれらと同じ材料を含んでよい。
【0032】
別のプロセス構成では、コーティング150は、溶射プロセスおよびコールドスプレープロセスのうちの少なくとも1つを実行することにより、基材110の表面112の少なくとも一部分の上に堆積される。簡単に言うと、コールドスプレーは非溶射プロセスであり、金属粉が不活性ガス噴射により加速される。金属粒子は、基材に衝突すると、塑性変形して基材の表面に固着される。例えば、溶射プロセスには燃焼溶射(combustion spraying)またはプラズマ溶射が含まれてもよく、燃焼溶射には高速フレーム溶射(high velocity oxygen fuel spraying(HVOF))または高速空気燃料溶射(high velocity air fuel spraying(HVAF))が含まれてもよく、プラズマ溶射には大気(空気または不活性ガスなど)プラズマ溶射または低圧プラズマ溶射(low pressure plasma spray(LPPS)、真空プラズマ溶射すなわちVPS(vacuum plasma spray)としても知られる)が含まれてもよい。1つの非限定の例では、NiCrAlYコーティングがHVOFまたはHVAFによって堆積される。コーティング150の1つまたは複数の層を堆積させるための別の例の技法には、限定しないが、スパッタリング、電子ビーム物理蒸着、無電解めっき、および、電気めっきが含まれる。
【0033】
特定の構成では、コーティングシステム150を形成するために複数の堆積技法が採用されることが望ましい。例えば、第1の層54はイオンプラズマ蒸着を用いて堆積され、第2の層56および任意選択の追加の層(図示せず)は、燃焼溶射プロセス(例えば、HVOFまたはHVAF)などの別の技法またはLPPSなどのプラズマ溶射プロセスを用いて堆積されてもよい。使用される材料に応じて、コーティング層50のための異なる堆積技法を用いることが、ひずみ耐性および/または延在にとって利益になる可能性がある。
【0034】
より概略的には、米国特許第5,626,462号で考察されるように、コーティング150を形成するのに使用される第2の材料は任意の適当な材料を含む。冷却式タービンの構成部品100の場合、第2の材料は約1150℃に耐えることができなければならず、TBCでは約1320℃に達することもある。コーティング150は、基材110のエーロフォイル形状の外側表面112に接着されることに適合性を有し、それに適応されなければならない。この接着は、コーティング150が基材110上に堆積されるときに形成されてもよい。接着作用は、堆積が行われる際に、堆積方法、堆積中の基材100の温度、堆積表面が堆積源(deposition source)に対して偏向されているか否か、および、別のパラメータ、を含めた多くのパラメータの影響を受ける可能性がある。接着作用はまた、その後の熱処理または別の処理の影響を受ける可能性もある。さらに、堆積が行われる前の基材110の表面性状、化学的性質および清浄度が、冶金学的な接着作用が起こる程度に影響する場合がある。コーティング150と基材110との間に強力な冶金学的接着を形成することに加えて、本明細書で説明するように、この接着が、経時的にまた高温において、相変化および相互拡散に対して安定した状態を維持することが望ましい。適合することにより、これらの要素間の接着が熱力学的に安定し、それにより、接着の強度および延性が、Niベース合金のエーロフォイル支持壁40およびエーロフォイルスキン42の場合には1,150℃程度の高温にさらされる場合でも、また、Nbベースの合金などのより高温の高温材料が使用される場合には1,300℃程度のさらに高温にさらされる場合でも、相互拡散または別のプロセスによって経時的に(例えば、最大で3年)大幅に劣化しないことが好ましい。
【0035】
米国特許第5,626,462号で考察されるように、基材110の第1の材料が、γ相およびγ’相の両方を含むNiベースの超合金またはNiAlの金属間化合物合金である場合、コーティング150用の第2の材料はこれらと同じ材料を含んでよい。コーティング150および基材110の材料のこのような組合せは、運転環境の最大温度が現行のエンジンの最大温度(例えば、1650℃未満)と同等であるような場合の用途において好適である。基材110の第1の材料がNbベースの合金である場合、コーティング150用の第2の材料も、同じNbベースの合金を含めた、Nbベースの合金を含んでよい。
【0036】
米国特許第5,626,462号で考察されるように、金属合金のコーティング150を使用することが望ましくないような温度、環境、または別の制約が課されるような用途などの、別の用途では、コーティング150は、金属合金のみの特性より優れた特性を有する、金属間化合物(I
S)/金属合金(M)相の複合材および金属間化合物(I
S)/金属間化合物(I
M)相の複合材の一般的な形態の複合材などの、材料を含むことが好ましい。金属合金Mは、エーロフォイル支持壁40に使用されるものと同じ合金であってもよく、または、エーロフォイルの要件に応じて別の材料であってもよい。これらの複合材は、一般的に言えば、両方の材料の利点を有するコーティング150を作るために、比較的多い延性相MまたはI
Mと比較的少ない延性相I
Sとを組み合わせるという点で、類似している。さらに、好結果の複合材を得るためには、これら2つの材料は適合性を有さなければならない。複合材に関連して本明細書で使用される場合、適合性という用語は、それらの材料が、それらの相の所望される初期分布を形成することできなければならず、さらに、複合材の強度、延性、靭性、および別の重要な特性が大幅に損なわれるような冶金反応を起こすことなく、1,150℃以上の使用温度において上述したように長時間その分布を維持することができなければならないことを意味する。このような適合性は相安定性という用語で表現されてもよい。すなわち、複合材の分離相は運転時にある温度で(at temperature)長時間にわたって安定性を有しなければならず、それにより、これらの相が分離して互いに異質である状態を維持し、それらの別個の独自性および特性が維持され、相互拡散により単一の相または複数の異なる相になることがない。適合性は、I
S/M複合材またはI
S/I
M複合材の層の間の相間境界面(interphase boundary interface)の形状安定性で表現されてもよい。不安定性は、いずれかの層の持続性を阻害するコンボリューション(convolution)によって明らかとなる場合がある。また、所与のコーティング150内で、複数のI
S/MまたはI
S/I
M複合材が使用されてもよく、このような複合材は2つの材料または2つの相の組合せに限定されないことに留意されたい。このような組合せを使用することは単に例示的なものであり、包括的なものではなく、すなわち、可能性のある組合せを限定しない。したがって、M/I
M/I
S、M/I
S1/I
S2(I
S1およびI
S2は異なる材料)および多くの別の組合せが可能である。
【0037】
米国特許第5,626,462号で考察されるように、基材110が、γ相およびγ’相の両方の混合物を含むNiベースの超合金を含む場合、I
Sには、Ni
3[Ti、Ta、Nb、V]、NiAl、Cr
3Si、[Cr、Mo]
XSi、[Ta、Ti、Nb、Hf、Zr、V]C、Cr
3C
2およびCr
7C
3の金属間化合物および中間相が含まれてもよく、Mには、γ相およびγ’相の両方の混合物を含むNiベースの超合金が含まれてもよい。γ相およびγ’相の両方の混合物を含むNiベースの超合金では、Ti、Ta、Nb、V、W、Mo、Re、HfおよびZrの様々な組合せと共に、元素Co、Cr、Al、CおよびBはほとんど常に合金成分として存在する。したがって、説明する例示のI
S材料の成分は、第1の材料として(基材110を形成するのに)使用することができ、したがって本明細書で説明する相および相互拡散の安定性(phase and interdiffusional stability)を実現するように適合され得るNiベースの超合金で通常見られる1つまたは複数の材料に一致する。第1の材料(基材110)がNiAlの金属間化合物合金を含む場合の追加の例として、I
Sには、Ni
3[Ti、Ta、Nb、V]、NiAl、Cr
3Si、[Cr、Mo]
XSi、[Ta、Ti、Nb、Hf、Zr、V]C、Cr
3C
2およびCr
7C
3の金属間化合物および中間相が含まれてもよく、I
Mには、Ni
3Alの金属間化合物合金が含まれてもよい。NiAlの金属間化合物合金でもやはり、Ti、Ta、Nb、V、W、Mo、Re、HfおよびZrの様々な組合せと共に、元素Co、Cr、CおよびBのうちの1つまたは複数が合金成分としてほぼ常に存在する。したがって、説明する例示のI
S材料の成分は、第1の材料として使用することができ、したがって本明細書で説明する相および相互拡散の安定性を実現するように適合され得るNiAl合金で通常見られる1つまたは複数の材料に一致する。
【0038】
米国特許第5,626,462号で考察されるように、基材110が、少なくとも1つの二次相を含むNbベースの合金を含めた、Nbベースの合金を含む場合、I
Sには、Nbを含有する金属間化合物、Nbを含有するカーバイド、または、Nbを含有するホウ化物が含まれてもよく、MにはNbベースの合金が含まれてもよい。このようなI
S/M複合材は、Tiを含むNbベースの合金のM相を含むことが好ましく、この場合、合金の、Nbに対するTiの原子比(Ti/Nb)が0.2〜1の範囲であり、I
S相には、Nbベースのケイ化物、Cr
2[Nb、Ti、Hf]、および、Nbベースのアルミナイドから構成される群が含まれ、Nb、TiおよびHfの中でもとりわけNbが、原子ベースでCr
2[Nb、Ti、Hf]の主成分となる。これらの化合物はすべて共通の成分としてNbを有し、したがって、米国特許第5,626,462号に記載される相および相互拡散の安定性を実現するのに適合され得る。
【0039】
付着時のコーティングは、コーティングを堆積させる際に犠牲充填材を使用することなくかつ溝の内部に堆積されるコーティング材料の量を最小にして溝132の開いた隙間136を架橋するための、十分な粒度、強度および付着力(接着作用)を有する。しかし、通常、例えば
図10に示されるように、コーティング材料の一部はやはり外側表面のわずかに下方の開口部内に充填されてしまう。この架橋の効果は、小さいサイズの開いた溝の上に堆積されるプラズマ蒸着(PVD)のTBCコーティングと共に上に記載されている。好都合には、溶射コーティングと共に、本発明の角度をつける堆積技法を使用することで、大きな隙間136サイズを架橋する能力を伴う非常に大きな粒子凝集が得られる。
【0040】
ここで
図3および4を参照すると、特定の構成では、コーティング150はそれぞれの溝132を完全に架橋し、したがって、コーティング150はそれぞれのマイクロチャネル130を密閉する。より詳細には、
図4および7に示される例の配置構成では、第1のコーティング層54および第2のコーティング層56がそれぞれの溝132を完全に架橋する。別の構成では、例えば
図5および6で示されるように、コーティング150は1つまたは複数の透過性のスロット144を画定し、したがって、コーティング150は個別の溝132の各々を完全には架橋しない。この多孔性の構成により、コーティング150のために応力を除去することが可能となる。
【0041】
好都合には、コーティング150を角度α、βで堆積させることで、コーティング150を基材110に付着させるのに犠牲充填材(図示せず)を使用する必要がなくなる。これにより、充填プロセスおよびより困難な除去プロセスが必要なくなる。さらに、例えば約10〜12ミルの範囲の幅の開口部136を有するような、狭い開口部136(頂部)を有する窪み形状の溝の上に角度をつけてコーティングを堆積させることで、犠牲充填材を使用することなく開口部136をコーティング150によって架橋することができ、それにより、従来のチャネル形成技法での主要な処理ステップのうちの2つ(充填および浸出)が排除される。
【0042】
コーティング150に加えて、溝132(すなわち、コーティング150の第1の(内側の)層が特に耐酸化性ではない場合の、マイクロチャネル130)の内部表面を、その耐酸化性および/または高温耐食性を向上させるようにさらに修正することができる。耐酸化性のコーティング(明確には示されない)を溝132の(すなわち、マイクロチャネル130の)内部表面に付着させるための適切な技法には、気相クロミジング(vapor−phase chromiding)またはスラリクロミジング(slurry chromiding)、気相アルミナイジングまたはスラリアルミナイジング、あるいは、蒸発、スパッタリング、イオンプラズマ蒸着、溶射および/またはコールドスプレーを介したオーバーレイ堆積(overlay deposition)が含まれる。例の耐酸化性オーバーレイコーティングには、MCrAlYの一群(M={Ni、Co、Fe})内の材料さらにはNiAlXの一群(X={Cr、Hf、Zr、Y、La、Si、Pt、Pd})から選択される材料が含まれる。
【0043】
しかし、特定のプロセス構成では、充填材が使用されてもよく、その後で浸出プロセスが用いられてもよい。これらのプロセス構成では、この方法は、コーティング150を堆積させる前に充填材(図示せず)で溝132を充填することをさらに含む。例えば、充填材は、金属スラリ(metallic slurry)の「インク」(図示せず)で構成部品100を浸漬被覆または溶射被覆するスラリによって付着することができ、それにより溝132が充填される。別の構成では、充填材はマイクロペンまたは注入器を使用して塗布することができる。特定の実施態様では、溝132は充填材材料によって過充填されてもよい。余分な充填材は、例えば拭き取られることによって除去することができ、それにより溝132が「見える」ようになる。充填材用の非限定の例の材料には、UV硬化樹脂、セラミック、有機溶剤のキャリアを有する銅またはモリブデンのインク、ならびに、ウォーターベース(water base)およびキャリアを有する黒鉛粉末が含まれる。より概略的には、充填材は、任意選択のバインダを備えるキャリア内に懸濁される対象の粒子を含むことができる。さらに、採用される充填材のタイプに応じて、充填材はアクセス孔140内に流れ込んでも流れ込まなくてもよい。例の充填材材料(すなわち、チャネル充填手段または犠牲材料)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、本願の譲受人に譲渡された米国特許第5,640,767号および本願の譲受人に譲渡された米国特許第6,321,449号で考察されている。このプロセス構成の場合、この方法は、コーティング150を堆積させた後に溝132から充填材を除去することをさらに含む。例えば、充填材は、化学浸出プロセスを用いてマイクロチャネル130から浸出され得る。米国特許第5,640,767号で考察されるように、充填材(すなわち、チャネル充填手段)は、例えば、融解/抽出、高温分解またはエッチングによって除去されてもよい。同様に、米国特許第6,321,449号で考察されている充填材材料(犠牲材料)は、水、アルコール、アセトン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは硝酸内で溶解されることによって除去することができる。
【0044】
図2〜10を参照して構成部品100を説明する。例えば
図2に示されるように、構成部品100は、外側表面112および内側表面116を備える基材110を有する。例えば
図2に示されるように、内側表面116は少なくとも1つの中空の内部空間114を画定する。例えば
図2〜4、7および8に示されるように、外側表面112は1つまたは複数の溝132を画定する。示される実施例では、基材110は複数の溝を画定する。例えば
図7〜9に示されるように、溝132は各々が基材110の表面112に少なくとも部分的に沿って延在し、また、底面134を有する。溝132の内部の側壁上にコーティングがいくらかでも堆積される可能性を軽減するために、頂部におけるチャネル開口部の幅は望ましくは0.010インチ(0.25ミリメートル)から0.02インチ(0.51ミリメートル)の範囲内にある。
【0045】
例えば
図3、4および7に示されるように、アクセス孔140が、溝132と中空の内部空間(複数可)114との間を流体連通させるために、溝132のそれぞれの底面134を通って延在する。アクセス孔140は通常断面が円形または楕円形であり、例えば、レーザ切削(レーザ穿孔)、研磨液噴射(abrasive liquid jet),放電加工(electric discharge machining(EDM))、および、電子ビーム穿孔のうちの1つまたは複数を用いて形成されてもよい。アクセス孔140は、それぞれの溝132の底面134に対して垂直であってもよく(
図3、4および7に示されるように)、また、より概略的には、溝の底面134に対して20度〜90度の範囲内にある角度で穿孔されてもよい。
【0046】
例えば
図3、4および7に示されるように、構成部品100は、基材110の表面112の少なくとも一部分の上に堆積されるコーティング150をさらに含み、コーティング150は1つまたは複数の層50を有する。上で考察したように、溝132およびコーティング150は一体に、構成部品100を冷却するための複数のチャネル130を画定する。例のコーティングは上で提示されている。例の構成では、コーティング150には、構造上のコーティング、ボンドコーティング、耐酸化性のコーティング、および、遮熱コーティングのうちの少なくとも1つが含まれる。
【0047】
図5および6に示される例の配置構成では、コーティング層50のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の透過性のスロット144を画定しており、したがって、それぞれの層50は個別の溝132の各々を完全には架橋していない。上で考察したように、特定の配置構成では、透過性のスロット144はすべてのコーティング層を通って延在し、チャネル130から構成部品の外部表面まで冷却剤を運ぶ。別の構成では、透過性のスロット144は、これらのスロットを架橋する層が後で堆積されるように、1つまたは複数のコーティング層50内に形成されてもよく、それにより、スロット144が効果的に密閉される。上で述べたように、透過性のスロット144は、コーティング150のために応力を除去することができる。さらに、これらの図では隙間144の1つ例の断面が示されているが、別の配置構成では、この多孔度(および、それに伴い断面)はマイクロチャネルの長手方向に沿って変化することに留意されたい。
【0048】
詳細な構成では、隙間144は、冷却流をコーティング(複数可)150を通して構成部品100の外部表面まで送るのに使用される。例えば、構造上のコーティングのみが付着されている場合には、チャネルの長さ全体に沿って冷却流が有益に抽気され、ある種の吹出し冷却が生じる。さらに、プラズマ蒸着(PVD)の遮熱コーティング(TBC)のみが付着されている場合には、TBCの柱状特性により、やはり冷却流を隙間144を通して抽気することが可能となる。透過性のスロット144を通る冷却流は、航空機産業用のタービンエーロフォイルを冷却するのに特に有益である。
【0049】
図5に示される例の構成では、透過性のスロット144の各々が基材110の表面法線52に対して角度γで傾斜しており、角度γは、基材110の表面法線52に対して約25度〜70度の範囲内にある。スロットの傾斜角度γは、以下の方程式を用いて堆積角度αに関連付けられ得る。
【0050】
tanα=2tanγ (式1)
より詳細な構成では、角度γは、基材110の表面法線52に対して約30〜55度の範囲内にある。
図5および6に示される構成が、通常、被覆プロセスの間動かない構成部品のみに対して得られることに留意されたい。さらに、湾曲した構成部品では、角度γは、構成部品の局部の曲率の結果としてチャネル130の長手方向に沿って変化してもよい。また、湾曲した構成部品では、角度γは、構成部品の局部の曲率に基づいて異なるチャネルごとに変化してもよい。
【0051】
図6に示される例の構成では、透過性のスロット144の傾斜角度はコーティング150の厚さ方向を通して変化する。
図6に示されるように、第2のコーティング層56内のスロット144の傾斜角度γ’(基材110の表面法線52に対する)は、第1のコーティング層54内のスロット144の傾斜角度γ(表面法線52に対する)とは異なる。スロットの傾斜角度γ’は以下の方程式を用いて堆積角度βに関連付けられ得る。
【0052】
tanβ=2tanγ’ (式2)
別の構成では、透過性のスロット144は基材110に対してほぼ垂直に方向付けられる。この構成は、通常、コーティングが堆積される際に基材110が1つまたは複数の軸を中心に回転される場合に得られる。本明細書で使用される場合、「ほぼ」という語は、局部の表面法線の+/−15度を意味することを理解されたい。
【0053】
図5および6に示される例の構成では、第1の層54は1つまたは複数の透過性のスロット144を画定することができ、したがって、第1の層54は個別の溝132の各々を完全には架橋しない。さらに、
図6に示される例の配置構成では、第2の層56がさらに1つまたは複数の透過性のスロット144を画定しており、したがって、第1の層54および第2の層56は個別の溝132の各々を完全には架橋しない。
【0054】
上で考察したように、チャネル130は直線の壁を有して示されているが、チャネル130は任意の構成であってもよく、例えば、これらは直線であっても湾曲していてもよく、または複数の湾曲部などを有してもよい。
図7および10に示される例の構成では、溝は窪み形状である。すなわち、
図7および10の配置構成では、各々の溝132の底面134がそれぞれの溝132の頂部136より広く、したがって溝132の各々が窪み形状の溝132となっている。より詳細には、それぞれの窪み形状の溝132の底面134は、それぞれの溝132の頂部136の少なくとも2倍の幅を有し、さらに詳細には約3倍〜4倍の範囲内にある幅を有する。詳細な構成では、それぞれ1つの窪み形状の溝132の壁138は、例えば
図10に示されるように、表面法線に対して約10度〜80度の範囲内にある角度φで方向付けられる。より詳細には、それぞれ1つの窪み形状の溝132の壁138は、表面法線に対して約10度〜45度の範囲内にある角度φで方向付けられる。
【0055】
上で述べたように、例えば約10〜12ミルの範囲内にある幅を有する開口部136を有するような、狭い開口部136(頂部)を有する窪み形状の溝の上に角度をつけてコーティングを堆積させることで、犠牲充填材を使用することなく開口部136をコーティング150によって架橋することができ、それにより、従来のチャネル形成技法での主要な処理ステップのうちの2つ(充填および浸出)が排除される。さらに、底面134が広くなるとチャネル130の冷却作用が向上する。
【0056】
構成部品100を製造する方法を
図2〜10を参照して説明する。
図3、4および7を参照して上で考察したように、この方法は、基材110の表面112内に1つまたは複数の溝132を形成することを含む。示される実施例では、複数の溝132が基材の表面112内に形成されている。例えば
図2に示されるように、基材110は少なくとも1つの中空の内部空間114を有する。基材110は、通常、基材110の表面112に溝132が形成される前に注型される。例の基材材料は上に提示されている。
図7〜9を参照して上で考察したように、溝132は各々が基材110の表面112に少なくとも部分的に沿って延在し、また、底面134を有する。
【0057】
この製造方法は、複数のアクセス孔140を形成することをさらに含む。より詳細には、1つまたは複数のアクセス孔140が溝132ごとに設けられる。示される実施例では、1つの溝132ごとに1つのアクセス孔140が設けられている。例えば
図3、4および7に示されるように、アクセス孔140は各々が、溝132と中空の内部空間114との間に流体連通を形成するために、それぞれ1つの溝132の底面134を通るように形成される。例のアクセス孔の幾何形状および形成方法は上に提示されている。
【0058】
例えば
図3に示されるように、この製造方法は、コーティング150を、基材110の表面112の少なくとも一部分の上において、空いている(充填されていない)溝132の上に直接に堆積させることをさらに含む。上で述べたように、「空いている」は、溝132が空であること、すなわち、溝132が犠牲充填材で充填されていないことを意味する。例のコーティングは上に提示されている。例の構成では、コーティング150には、構造上のコーティング、ボンドコーティング、耐酸化性のコーティング、および、遮熱コーティングのうちの少なくとも1つが含まれる。例えば
図3、4および7に示されるように、コーティング150はそれぞれの溝132を完全に架橋することができ、その場合、コーティング150はそれぞれのチャネル130を密閉する。別の構成では、例えば
図5および6に示されるように、コーティング150は1つまたは複数の透過性のスロット144を画定し、したがって、コーティング150は個別の溝132の各々を完全には架橋しない。
【0059】
詳細な構成では、この方法は、コーティング150が堆積される際に少なくとも1つの軸を中心に基材110を回転させることをさらに含み、この場合、コーティング150は連続的に変化する角度で堆積される。本明細書で使用される場合、「連続的に変化する」という言葉は、時間的に連続的に変化することとして理解されたい。基材は、単一軸の回転固定具または多軸の(遊星の)回転固定具などの、回転固定具(図示せず)の上に装着されてもよい。したがって、タービンブレードなどの、曲率が変化する複雑な部品の場合、コーティングが堆積されるときの表面法線に対する角度は時間的に連続的に変化し、それにより、得られる透過性のスロット144は基材の表面に対してほぼ垂直になる(すなわち、局部の表面法線の+/−15度の範囲内にある)。
【0060】
図7に示される例の構成では、溝の底面134は溝の頂部136より広くなっており、したがって、溝132の各々は窪み形状の溝132を有する。窪み形状の溝132は、研磨液噴射、プランジタイプの電解加工(electrochemical machining(ECM))、回転する電極棒を用いる放電加工(EDM)(ミリングEDM)、および、レーザ切削(レーザ穿孔)のうちの1つまたは複数を使用して形成することができる。窪み形状の溝132を基材110内に形成する技法はBunkerらにより提示されている。Bunkerらの
図3〜5に示されているように、例えば、窪み形状の溝132は、研磨液噴射が最初に通過するときに基材110の表面112に対して外側に角度をつけて研磨液噴射(図示せず)を方向付けて、次いで次に通過するときにその外側の角度と実質的に反対の角度にして、適宜追加的に通過させることにより、形成されてもよく、研磨液噴射は、外側の角度および実質的に反対の角度の間の1つまたは複数の角度で溝132の底面134の方に向けられ、それにより、材料が溝132の底面134から除去される。噴射160のための別の工具経路構成が使用されてもよい。例えば、噴射160は半径に沿うように振られてもよく(
図5)、また、ジグザグの工具経路に従ってチャネルの長手方向に沿って移動されてもよい。このようにして、比較的狭い溝開口部136(溝の頂部)を形成することができる。噴射160を振る際に、開口部136が確実に狭くなるように噴射160の枢動点を制御するために、多軸の数値制御される(numerically controlled (NC))工具経路機能が使用されてもよい。チャネルの深さは、噴流圧力が設定されている場合の、振るときの速度、さらには、チャネルに沿った噴射の移動速度によって決定される。
【0061】
上で考察したように、コーティング150を角度α、βで堆積させることにより、コーティング150を基材110に付着させるために犠牲充填材(図示せず)を使用する必要がなくなる。これにより、充填プロセスおよびより困難な除去プロセスが必要なくなる。さらに、コーティング150を角度α、βで堆積させることは、構成部品の表面上の冷却チャネルの内部が部分的に被覆されるのを防止するのに役立つ。
【0062】
本明細書では本発明の特定の特徴のみを示して説明してきたが、当業者であれば多くの修正形態および変更形態を思いつくであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨の範囲内にあるこのようなすべての修正形態および変更形態を包含することを意図することを理解されたい。