(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997451
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】バイアルキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/18 20060101AFI20160915BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
B65D51/18 G
A61J1/00 315D
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-25543(P2012-25543)
(22)【出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2013-159394(P2013-159394A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511118090
【氏名又は名称】エヌ・エム・ピイビジネスサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(74)【代理人】
【識別番号】100125933
【弁理士】
【氏名又は名称】野上 晃
(72)【発明者】
【氏名】平野 圭市
【審査官】
佐野 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−246713(JP,A)
【文献】
特表2001−508680(JP,A)
【文献】
特開平08−173506(JP,A)
【文献】
特開2002−052067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/18
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム栓(1)で閉止されたバイアル(2)の口部(22)に取り付けられるソケット部材(3)と、前記ソケット部材(3)に挿入されて係合するプラグ部材(4)とからなり、前記ソケット部材(3)は取り付け時にバイアル(2)の口部(22)から上方に延びる管状部(31)を備え、前記プラグ部材(4)は前記ソケット部材(3)の管状部(31)内に挿入されて前記ソケット部材(3)と係合した時に自身の先端部(41)をバイアル(2)のゴム栓(1)に当接させることにより該ゴム栓(1)を固定するバイアルキャップであって、前記ソケット部材(3)の管状部(31)内に、前記プラグ部材(4)の前記先端部(41)が通過する狭窄部(34,37)を設けて前記ゴム栓(1)が前記管状部(31)から抜け出るのを防止したことを特徴とするバイアルキャップ。
【請求項2】
前記狭窄部は、前記管状部(31)の内周壁から内方に張り出した鍔(34)を形成することにより設けられた請求項1に記載のバイアルキャップ。
【請求項3】
前記鍔(34)は、環状に連続的に設けられている請求項2に記載のバイアルキャップ。
【請求項4】
前記鍔(34)は、断続的に設けられている請求項2に記載のバイアルキャップ。
【請求項5】
前記プラグ部材(4)は前記ソケット部材(3)に螺合することにより係合する請求項1に記載のバイアルキャップ。
【請求項6】
前記プラグ部材(4)は前記ソケット部材(3)にスナップ式に嵌合することより係合する請求項1に記載のバイアルキャップ。
【請求項7】
前記ソケット部材(3)はバイアル(1)の口部(22)にスナップ式に嵌合することにより取り付けられる請求項1に記載のバイアルキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の反応容器や保管容器として用いられているバイアル、より詳しくは、フランジ状の口部を備え、該口部にゴム栓を嵌合させて閉止する形式のバイアルの該ゴム栓を固定するためのキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の形式のバイアルは、薬剤の収容時、口部にゴム栓を嵌合させて閉止した後、該口部の周りにアルミキャップや樹脂製キャップを施してシールされる(特許文献1、特許文献2)。しかし、ゴム栓にPEEKチューブを穿刺した状態で加熱装置に取り付けると、PEEKチューブとゴム栓の隙間から真空漏れが生じたり、ヒーターとの位置関係がずれて加熱条件に変動が生じる等の問題があった。
【0003】
そこで、本発明者は、
図5に示すように、ゴム栓1で閉止されたバイアル2の口部22にスナップ式に嵌合させて取り付けられるソケット部材3と、このソケット部材3に螺合して挿入されたプラグ部材4とからなるバイアルキャップであって、ソケット部材3は取り付け時にバイアル2の口部22から上方に延びる管状部31を備え、プラグ部材4を自身の先端部41がバイアル2のゴム栓1に当接するまでソケット部材3の管状部内31にねじ込むことによりゴム栓1を固定するとともに、この状態でPEEKチューブをゴム栓1に穿刺できるようにプラグ部材4に複数の挿通穴43を設けたものを既に発明し、特許出願(特願2009−98880号公報)している。
【0004】
図5のようなバイアルキャップを用いることにより、上述した真空漏れや加熱条件の変動の問題は解決した。しかし、このバイアルキャップを、口部22のゴム栓1をアルミキャップや樹脂製キャップ(図示せず)でシールしていないバイアル2に使用すると、プラグ部材4を外す際にゴム栓1がプラグ部材4の先端部41の端面42に貼り付いて、プラグ部材4と一緒に回転してバイアル2の口部22から外れ、場合によってはソケット部材3の管状部31から抜け出すという問題が発生することが判った。この問題を解決するためには、プラグ部材4の端面42の面積を小さくしたり、端面42にテフロン(登録商標)加工を施してゴム栓1との貼り付きを防止することも考えられるが、何れも上記問題を十分に解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−230928号公報
【特許文献2】特開2008−050057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のバイアルキャップにおいて、プラグ部材の取り外しの際にゴム栓がプラグ部材と一緒にバイアルの口部から外れる課題を解決する他の方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、前記バイアルキャップのソケット部材の管状部内の内側壁の形状を工夫することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ゴム栓で閉止されたバイアルの口部に取り付けられるソケット部材と、前記ソケット部材に挿入されて係合するプラグ部材とからなり、前記ソケット部材は取り付け時にバイアルの口部から上方に延びる管状部を備え、前記プラグ部材は前記ソケット部材の管状部内に挿入されて前記ソケット部材と係合した時に自身の先端部をバイアルのゴム栓に当接させることにより該ゴム栓を固定するバイアルキャップであって、前記ソケット部材の管状部内に狭窄部を設けて前記ゴム栓が前記管状部から抜け出るのを防止したことを特徴とするバイアルキャップを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイアルキャップのプラグ部材を外す際にプラグ部材の先端部にゴム栓が貼り付いたとしても、ゴム栓は狭窄部によってソケット部材の管状部を通過することが阻止される一方で、プラグ部材の先端部は狭窄部を通過できるので、ゴム栓はプラグ部材から剥離され、ゴム栓がバイアルの口部から外れるのを防止できる。
また、本発明のバイアルキャップをバイアルに取り付けて使用する際には、ゴム栓の十分なシール性も担保できるので、バイアルにアルミキャップを施す必要もなくなる。したがって、本発明のバイアルキャップは、バイアルを一時保管容器として使用する場合のアルミキャップの代替としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のバイアルキャップの一実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】本発明のバイアルキャップの他の実施形態を示す縦断面図である。
【
図3】本発明のバイアルキャップの更に他の実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】
図1のバイアルキャップのソケット部材を底部から見た斜視図である。
【
図5】先願で提案されたバイアルキャップを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明のバイアルキャップの実施形態について説明するが、本発明は当該実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明のバイアルキャップの一実施形態を示す縦断面図であり、
図1において、
図5に示されるバイアルキャップと同様の要素には同様の符号が付されている。特に、
図1において、ゴム栓1、バイアル2及びプラグ部材4の構成は
図5と同じであるが、ソケット部材3が管状部31の内部にその側壁から内方に突出する鍔34を備えることにより狭窄部を形成している点で
図5と異なる。この狭窄部は、プラグ部材4の小径となった先端部41よりも大きな寸法を備えるため、該先端部41の通過は許容するが、ゴム栓1の上面部12の幅よりも狭い寸法を備えるため、プラグ部材4を取り外す際にゴム栓1の上面部12がプラグ部材4の端面42と貼り付いた場合でも、ゴム栓1の上面部12に当接してプラグ部材4とゴム栓1を剥離するように機能するので、ゴム栓1が口部22から抜け出たり、管状部31を通過してソケット部材3から抜け出ることが防止される。狭窄部の通路の寸法は、概略的には、ゴム栓1の上面部12の最大幅より0.1mm以上狭ければ本発明の目的を達成できる。
【0013】
以下、
図1の実施形態についてさらに詳細に説明する。
図1において、バイアル2は、公知のとおり、口部22に向けて先細となった円筒状の本体21を備え、その先端には、外側に環状に張り出すように形成されたフランジ状の口部22を備える。また、ゴム栓1は、口部22に嵌入される小径の円筒状の挿入部11と、フランジ状の口部22の端面23に当接して載置する大径の円盤状の上面部12とを備え、概略きのこ状の縦断面形状を有する。
【0014】
図1のバイアルキャップにおいて、ソケット部材3は、プラグ部材4と係止する管状部31と、該管状部31をバイアル2の口部22の上方に延びるように配置する取付部32とを備えることが必要である。この必要条件を満たす限り、ソケット部材3の形状は特に制限されず、管状部31の横断面形状も円形以外ものであってもよいが、通常、ソケット部材3は円筒状の形状を有することが好ましく、同様に、管状部31も円筒状であることが好ましい。したがって、以下、
図4に示されるように、ソケット部材3及びその管状部31は円筒状であることを前提に説明する。
【0015】
取付部32は、バイアル2のフランジ状の口部22の外径よりもわずかに小さな内径を有する内方張出部33を備えてスナップ式に口部22と嵌合するようにしても良く、また、
図4に示すように、ソケット部材3の側壁を一部切欠いてスロット35を形成し、バイアル2の口部21を側方から該スロット35に挿入し、ソケット部材3内にスナップ式に嵌合できるようにしても良い。また、適当な締結具を使用してソケット部材3をバイアル2の口部21に取り付けてもよい。尚、
図4に示すように、ソケット部材3の操作性を向上させるため、その外周面36にはローレット加工、粗面化処理等によって凹凸を設けてもよい。
図4の例では、鍔34はソケット部材3の内周壁から内方に向けて環状に連続的に張り出すように形成されているが、本発明が目的とする狭窄部を形成できれば断続的に形成してもよく、例えば、鍔34を断続的な複数の弧状の張出部として形成しても良い。鍔34は、通常、ゴム栓1の上面部12の外周よりも0.05mm以上内方に張り出していれば、本発明の目的を達成できる。
【0016】
図1のバイアルキャップにおいて、ソケット部材3の円筒状の管状部31の内周壁にはねじ山が設けられて、円筒状のプラグ部材4の外周壁に設けられたねじ山と螺合するように形成されている。したがって、
図1のソケット部材3をバイアル2の口部22に取り付けて両者の中心軸がほぼ一致するように配置した後、プラグ部材4をソケット部材3の管状部31にねじ込むことにより、プラグ部材4の先端部41が鍔34で形成された狭窄部を通過し、端面42がゴム栓1の上面に当接することにより、ゴム栓1を固定してバイアル2を密閉することができる。この状態で、加熱装置内に装着して内容物を反応させてもよいし、又は、内容物を一時保存してもよい。その際、PEEKチューブを挿通穴43を介してゴム栓1に穿刺させたままにしてもよい。その後、内容物を使用に供するためにプラグ部材4を逆回転させて緩める際、万一プラグ部材4の端面42がゴム栓1の上面部12に貼り付いたとしても、鍔34で形成された狭窄部にゴム栓1が当接して抜け出ることが防止されるので、プラグ部材4の取り外しに際して使用者の意図に反してゴム栓1がバイアル2から外れることはない。
【0017】
なお、
図1のソケット部材3とプラグ部材4との係合は、
図1では螺合により行われるが、プラグ部材4をソケット部材3に押し込むことにより、両者のスナップ式の嵌合で行われるようにしてもよい。このスナップ式の嵌合方式の場合、例えば、プラグ部材4をソケット部材3にワンタッチで嵌め込むことでゴム栓1を押し付ける構造を採用することができる。
【0018】
図2は、本発明のバイアルキャップの他の実施形態を示す縦断面図であり、
図1と同様の要素は同様の符号で示す。
図2のバイアルキャップは、ソケット部材3の管状部31のねじ切りされた部分をそれよりも下の部分よりも小径にすることで、狭窄部を形成している点で、
図1のバイアルキャップと異なる。その結果、
図2では、ソケット部材3の内周壁に内方に張り出した段部37が形成されるので、プラグ部材4を取り外す際に、万一プラグ部材4の端面42がゴム栓1の上面部12に貼り付いたとしても、狭窄部すなわち段部37にゴム栓1が当接して抜け出ることが防止される。段部37は、通常、ゴム栓1の上面部12の外周よりも0.05mm以上内方に張り出していれば、本発明の目的を達成できる。
【0019】
図3は、本発明のバイアルキャップの更に他の実施形態を示す縦断面図であり、
図1と同様の要素は同様の符号で示す。
図3のバイアルキャップは、ソケット部材3の外周面にねじ山が設けられ、プラグ部材4の内周面にねじ山が設けられ、これにより両者が螺合することにより係合する構成とした点で、
図1のバイアルキャップと異なる。もちろん、螺合の代わりに、両者がスナップ式に嵌合することにより係合する構成とすることもできる。このスナップ式の嵌合方式の場合、例えば、プラグ部材4をソケット部材3にワンタッチで嵌め込むことでゴム栓1を押し付ける構造を採用することができる。
図3では、
図2と同様に、ソケット部材3の内壁に段部37が形成されているので、プラグ部材4を取り外す際に、万一プラグ部材4の端面42がゴム栓1の上面部12に貼り付いたとしても、段部37で形成された狭窄部にゴム栓1が当接して抜け出ることが防止される。
【0020】
本発明のバイアルキャップは、ソケット部材及びプラグ部材の何れも金属、プラスチック等の適当な材料で作成することができるが、プラスチックで作成することが好ましい。本発明のバイアルキャップは図示及び上記の実施形態に限定されるものではなく、当業者であればその各要素を均等物に置き換えることで上記以外の種々の変形を行うことが可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のバイアルキャップは、バイアルに複数の薬剤を収容して反応させる場合や、バイアルに薬剤を収容して一時保存する場合などに有用であり、放射線医薬品をはじめその他各種の化合物の合成や保存の用途の他、バイアルを使用する各種分野で広く利用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 ゴム栓
11 挿入部
12 上面部
2 バイアル
21 本体
22 口部
23 端面
3 ソケット部材
31 管状部
32 取付部
33 内方張出部
34 鍔(狭窄部)
35 スロット
36 外周面
37 段部(狭窄部)
4 プラグ部材
41 先端部
42 端面
43 挿通穴