(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997466
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】マルチステージ油圧シリンダーアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/22 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
F15B15/22 E
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-58757(P2012-58757)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2012-193849(P2012-193849A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】10 2011 013 987.7
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108578
【氏名又は名称】リープヘル マイニング イクイップメント カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン マイケル ハーパー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス アーサー ホィットフィールド ジュニア
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−113794(JP,U)
【文献】
特表平06−508424(JP,A)
【文献】
特開2001−063336(JP,A)
【文献】
特開2010−281368(JP,A)
【文献】
特開平05−340408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるシリンダー力を有するマルチプルステージの変位を提供するマルチプルステージ油圧シリンダーであって、
シリンダーハウジング(2)と、
前記シリンダーハウジング(2)内に摺動自在に受け入れられて、第1ステージの変位に対して変位する第1ステージピストン(3)と、
前記第1ステージピストン(3)に接続されて、前記第1ステージの変位に対して前記第1ステージピストンと一緒に変位すると共に、第2ステージの変位に対して前記第1ステージピストン(3)に関連して変位する、第2ステージピストン(5)とを備えており、
前記第1ステージピストンと前記第2ステージピストンとは、互いに異なる有効圧力表面積を有しており、
さらに、ステージ変化を滑らかにするためのクッションアレンジメント(7)を備えており、
前記クッションアレンジメント(7)は、前記第1ステージの変位と前記第2ステージの変位との間の移行領域に接近するとき、少なくとも一つの前記ピストン(3、5)によって変位する移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材(9)を有する可変容積を持つ少なくとも一つの圧縮チャンバー(8)を含んでおり
前記圧縮チャンバー(8)は、前記チャンバー壁部材(9)の変位及び前記圧縮チャンバー(8)の圧縮に基づいて圧縮されるように、ガス容積に動作可能に接続されており、
前記圧縮チャンバー(8)の少なくとも一部は、前記シリンダーハウジング(2)に組み込まれており、前記移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材(9)は、前記シリンダーハウジング(2)内で摺動自在に受け入れられる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
拡張リミッタ(11)は、拡張方向において、前記チャンバー壁部材(9)の変位を制限するために設けられており、
圧縮リミッタ(12)は、圧縮方向において、前記チャンバー壁部材(9)の変位を制限するために設けられており、
これにより、前記チャンバー壁部材(9)は、より圧縮された位置とより膨張された位置との間における制限された変位のみが可能である、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記ガス容積は、前記圧縮チャンバー(8)内で受け入れられる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記圧縮チャンバー(8)は、実質的に非圧縮性の液体が充填されており、前記ガス容積は、導管(28)を介して前記圧縮チャンバー(8)に接続された外部ガススプリング(81)の可変容積を持つガスチャンバー(80)内で受け入れられ、前記導管を通じて、前記圧縮チャンバー(8)の圧縮によって前記圧縮チャンバー(8)から放出される非圧縮性液体が、前記ガススプリング(81)に与えられることで、前記ガス容積の圧縮がもたらされる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記チャンバー壁部材(9)は、前記第1ステージピストンの変位パスに配置されており、且つ、接続されて前記第1ステージピストン(3)の肩部又は顔部によってより圧縮される位置に向かって駆動される接触部分(13)を含んでいる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材(9)は、前記シリンダーハウジング(2)の端部の一つにおいて、前記第1ステージピストン(3)のための変位可能なストッパーを構成し、且つ、前記圧縮チャンバー(8)が0よりも大きい初期設定最少容積に到達したとき、前記チャンバー壁部材(9)の変位をストップさせる機械的ストッパー部(14)を含んでいる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材(9)は、前記シリンダーハウジング(2)の内周表面(16)と前記第1ステージピストン(13)に接続されるピストンロッド/スリーブ部(4)の外周表面との間に、摺動自在に受け入れられる変位リング(10)を含んでいる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記圧縮チャンバー(8)は、前記シリンダーハウジング(2)のシリンダーグランド(18)と前記移動可能チャンバー壁部材(9)との間にリング状の圧縮部(15)を含んでいる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材(9)は、変位可能に受け入れられ、且つ、前記シリンダーハウジング(2)及び/又は前記シリンダーハウジング(2)のシリンダーグランド(18)の内周壁のリセス(19)及び/又は階部分の内部に閉じ込められる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記第1ステージピストンの有効圧力表面積の、前記第2ステージピストン(5)の有効圧力表面積に対する有効圧力表面積率は、120%〜300%の範囲以内である、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項11】
請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記第2ステージピストン(5)は、前記第1ステージピストン(3)中、及び/又は前記第1ステージピストン(3)に接続された中空でスリーブ状のピストンロッド(4)中に形成されたシリンダーリセス(20)内に、摺動自在に受け入れられる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項12】
請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて、
前記第1ステージピストン(3)を駆動するための第1ステージ圧力チャンバーと、前記第2ステージピストン(5)を駆動するための第2ステージ圧力チャンバーとは、共通の圧力供給導管を介して互いに接続可能であり、及び/又は、共通の圧力コネクションに接続可能であり、それにより、前記第1ステージピストン(3)及び前記第2ステージピストン(5)を実質的に同じ圧力にさらす、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダー。
【請求項13】
油圧システムにおける請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーの使用であって、
前記マルチプルステージ油圧シリンダー(1)を動作させるための少なくとも一つの定容量形ポンプ又は可変容量形ポンプを含んでいる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダーの使用。
【請求項14】
請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載のマルチプルステージ油圧シリンダーの使用であって、
採鉱用トラック、採鉱用掘削機、又は類似の採鉱用機材に用いられる、
ことを特徴とする、マルチプルステージ油圧シリンダーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるシリンダー力を有するマルチプルステージの変位を提供するマルチプルステージ油圧シリンダーに関し、シリンダーハウジングと、上記シリンダーハウジング内に摺動自在に受け入れられて、第1ステージの変位に対して変位する第1ステージピストンと、上記第1ステージピストンと接続されて、上記第1ステージの変位に対して上記第1ステージピストンと一緒に変位すると共に、上記第2ステージの変位に対して上記第1ステージピストンに関連して変位する、第2ステージピストンとを備えており、上記第1ステージピストンと上記第2ステージピストンとは、互いに異なる圧力表面積を有しており、さらに、ステージ変化を滑らかにするためのクッションアレンジメントを備えている。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダーの所定のアプリケーションは、異なるステージの変位において異なる変位力を要求する。例えば、大型採鉱トラックでは、採鉱物質を収集及び輸送するためのダンプ本体は、その物質を投棄するために水平軸に関して傾いており、傾きの移動には、傾きの最初のステージにおいて大きな駆動力が要求される一方で、ダンプ本体が、重心が傾き軸により近いと共にすでに投棄された物質の一部に近い状態を有する、より直角な位置に到達するとき、要求される駆動力はかなり減少する。
【0003】
一つ又は複数の定容量形ポンプ又は可変容量形ポンプが、一つ又は複数のマルチステージ油圧シリンダーを動作させるために用いられ得るそのような油圧システムにおいて、ステージ変化のタイミングで機械的接触が存在する。シリンダーから要求される力が、拡張される長さの増加に伴って劇的に減少するアプリケーションでは、第1ステージよりもかなり小さい第2ステージを有することが望ましく、その結果、大面積率をもたらす。しかしながら、そのような大面積率は、第1ステージピストンが機械的ストップに到達するとき、衝撃を引き起こす。そのようなマルチステージ油圧シリンダーの所定のアプリケーションでは、基本的には同じ圧力が第1ステージピストン及び第2ステージピストンの双方に与えられ、その結果、第1ステージピストンが変位パスの端部に到達すると共に機械的ストップに衝突するときに、そのようなピストンの大面積率のせいで、かなり強い衝撃が引き起こされる。
【0004】
そのような衝撃を低減するために、ピストンが上記機械的ストップに衝突する前に、その変位パスの末端でピストンを減速するように、クッションアレンジメントが用いられてもよく、それにより、機械的ストップに衝突するときに上記ピストンの速度を低減する。そのようなクッションアレンジメントのための種々の解決方法が提案されてきた。例えば、特許文献1は、シリンダーからの液体フローを制限してスロットルで調整することにより、油圧シリンダー内のピストンを減速させて且つストップさせるクッション装置を開示している。より具体的には、上記シリンダー内におけるストロークが端部に到達すると、液体フローは減少する。プランジャーはフローパス内で摺動自在に受け入れられ、上記プランジャーは、その端部に近づくピストンにより、上記フローパス内に深く押し込まれ、プランジャーが深く差し込まれるに連れて、フローパスはさらに制限される。しかしながら、これに対する不都合な点は、特に定容量システムにおいて、シリンダー上で動作しない何らかの液体が、不要な熱を生成する安全弁を超えて流れるように要求されることである。
【0005】
さらに、特許文献2は、ピストンがそのストロークの端部に到達するときに、そのスピードを電気的に制御する方法を開示している。油圧シリンダーシステムは、油圧シリンダーの位置を示す信号を生成するように構成されたセンサーと、シリンダーへの、そしてシリンダーからの油圧液体のフロー割合を制御するために、シリンダーに接続されたバルブとを含んでおり、それにより、センサーに接続された電気的コントローラは、油圧シリンダー位置に応答してバルブの開閉を命令することができる。そのような電気的なセンシング及びコマンドシステムは非常に高価であって、複雑さを上昇させ、そして、厳しい環境条件下ではダメージや機能的エラーを生じやすい。
【0006】
さらに、特許文献3は、ピストンがエンドボスと衝突するのを完全に防止するクッション装置を開示している。ピストンストロークの端部において、圧縮チャンバーから放出される油圧オイルの一部は、スロットルクリアランスのみを介して、捕捉されて、且つ、放出されてもよい。加えて、ゴムからなる弾性クッションは、ピストンがエンドボスの上に直接衝突するのを防止するために、エンドボスとピストンとの間に配置されている。そのような弾性クッションは、しかしながら、多数の理由により、所定のアプリケーションにおいては望ましくない。特に、弾性クッション部材を有するために要求される間隔は、複数のピストンがシリンダーハウジング内に受け入れられるマルチプルステージシリンダーのような所定のシリンダーでは得られない。また、例えば採鉱トラックやその他の建設機械のような大きなアプリケーション用のシリンダー内に存在する力は、ゴムからなる弾性クッション部材の効果的な使用を禁止する。さらに、弾性クッション部材の耐用能力は、シリンダーが高周期で且つ高負荷で動作されるアプリケーションにおいてかなり制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4397218号公報
【特許文献2】米国特許第7104054号公報
【特許文献3】米国特許公開2006/0151269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、本発明の目的は、従来技術の不都合を回避し、且つ、公知の解決方法の改良を提供する、改良されたマルチプルステージ油圧シリンダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は、請求項1にかかるマルチプルステージ油圧シリンダーによって実現される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
ステージを変化させるときに機械的衝撃を緩和するために、油圧シリンダーのステージ間にガスクッションを組み込むことが提案されている。ガス容積は、各ピストンが変位パスの端部に到達するとき、圧縮されるように配置される。本発明によると、クッションの配置は、第1ステージの変位と第2ステージの変位との間の移行領域に近づくとき、ピストンの少なくとも一つによって変位する移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材を有する可変容積を持つ少なくとも一つの圧縮チャンバーを含んでおり、上記圧縮チャンバーは、上記チャンバー壁部材の変位と上記圧縮チャンバーの圧縮に基づいて圧縮されるガス容積に動作可能に接続されている。移動可能及び/又は変形可能なチャンバーとの接続に基づいて、ピストンを駆動する油圧液体は、シリンダーの各ステージを継続して拡張したり引き戻したりし、これにより、クッションチャンバーを圧縮させる。クッション装置が圧縮するに連れて、充填されるガスも圧縮する。ガスが圧縮されるので、クッション装置は、ピストンに対して力を戻すことにより、端部位置に到達するピストンと反応する。ピストンに対する圧力が他方のステージのピストンを移動させるのに必要な圧力よりも大きくなるまで、この力が生じる。そのとき、他方のステージは移動を開始する。このことは、変位パスの端部に到達するピストンとそれぞれのエンドボスとの間の機械的コンタクトがなされるまで、生じ、このため、機械的衝撃を防止する。そのようなガスクッションは、非常にコンパクトに設計され得、設計及び配置において大きな自由度を与える。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、圧縮チャンバーの少なくとも一部は、シリンダーハウジング内に組み込まれており、移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材は、好ましくは、シリンダーハウジング内で摺動自在に受け入れられ、これにより、接触に基づいて圧縮チャンバーの圧縮を有効する、又は減速するピストンによる作動を有効にする。そのようにシリンダー本体に圧縮チャンバーを組み込むことにより、非常にコンパクトな設計を提供すると共に、クッション装置を作動するのに必要な部材を減少させる。
【0012】
上記圧縮されたガス容積は、上記圧縮チャンバー内に受け入れられることが可能であって、この実施形態では、圧縮チャンバーは上記ガス容積を圧縮するためのガスチャンバーである。その結果、ガス容積は、少なくとも一部が、シリンダーハウジングの内部に組み込まれてもよい。
【0013】
代替として、ガスクッションをシリンダー内部に組み込む代わりに、ガスクッションは、外部に配置されて、適切なサイズのポーティングを介してシリンダーの油圧ラインに接続されることも可能である。より具体的には、上記圧縮チャンバーは、例えばオイルのような実質的に非圧縮性の液体で充填されてもよく、その場合、圧縮性のガス容積は、外部のガススプリングの圧縮性のガスチャンバー内に受け入れられるか、又は、導管を介して圧縮チャンバーに動作可能に接続されているガスクッション装置内に受け入れられ、該導管を通じて、圧縮に基づく圧縮チャンバーから放出される非圧縮性の液体が、そこで受け入れられるガス容積を圧縮するために上記外部のガススプリングに与えられえる。そのように圧縮性のガスクッションを外部に配置することは、シリンダーが、ガス容積を圧縮することから生じる熱に晒されることを防止する。加えて、ガスクッションのサイズは、シリンダーのサイズに影響を与えることなく、又は、シリンダーの長手方向の変位を減少させることなく、適切に選択され得る。
【0014】
上記移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材は、異なる方法で構成され得、このチャンバー壁部材は好ましくは、シリンダーの固定本体にポケットを形成するように形作られている。このポケットは、圧縮チャンバーの一部を少なくとも形成し、且つ、ガスクッションが外部に設けられるときには、固定シリンダー本体の外部に延伸するポートを介して、例えば窒素などの圧縮されたガス又は例えばオイルなどの非圧縮性液体で、事前に充填され得る。
【0015】
有利なことには、ガスチャンバーは、該ガスチャンバーのサイズに応じて変化可能な十分な圧力で、圧縮されたガスが初期充填されている。クッション装置は圧縮されたガスで初期充填されるので、クッション装置自身は通常は、完全に拡張した位置に存在する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によると、上記チャンバー壁部材は上記第1ステージピストンの変位パスに配置されており、且つ、第1ステージピストンによって接触される接触部分を含んでおり、上記第1ステージピストンは、上記ガスチャンバーの移動可能な壁部材を上記ピストンの肩部又は顔部に直接接触させてもよい。代わりとして、上記ピストンは、例えば、上記ピストンと上記移動可能な壁部材との間に設けられた中間作動部材を介して、上記壁部材と間接的に接触させることができる。シリンダーが変位するに連れて、第1ステージピストンとクッション装置との間の距離は、上記ピストンの上記移動可能な壁部材への接触が生じるまで、減少する。上記クッション装置と接触すると、ピストンは続けて変位を行い、このため、クッション装置の圧縮を引き起こす。
【0017】
好ましい実施形態によると、上記移動可能及び/又は変形可能なチャンバー壁部材は、上記固定シリンダー本体の内周表面とピストンロッドの外周表面又は上記第1ステージピストンに接続されるスリーブ部分との間に摺動自在に受け入れられる可変リングを含んでもよい。そのような可変リングを提供するとき、圧縮チャンバーは、特にガスで充填されているとき、シリンダーグランドと上記移動可能リングとの間のリング形状の圧縮部分を含んでもよく、好ましくは、上記圧縮チャンバーは、上記移動可能リング、シリンダーハウジングの外周表面、上記シリンダーグランド、及び第1ステージピストンのピストンロッドとの間に規定されたポケットによって形成されている。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態によると、上記クッション装置の圧縮チャンバーの上記移動可能及び/又は変形可能な壁部材は、上記第1ステージピストンの第1ステージの変位を制限するために、エンドストッパー又はエンドボスの一部を構成してもよい。このため、上記移動可能な壁部材は、二つの機能を実現することができる。一方で、上記移動可能な壁部材は、衝撃緩和を提供するクッションガスを圧縮する機能を果たす。他方で、上記移動可能な壁部材は、上記第1ステージの変位用のストップを規定する。
【0019】
好ましくは、上記ガスチャンバーは、圧縮され過ぎないように抑制されており、これにより、上記ガスチャンバー内の圧力は制限されている。言い換えると、ガスチャンバーは、最小容積よりも小さい容積にまで圧縮されることはないかもしれない。ガスチャンバーの圧力が、最大許容値を超えることがないように、上記移動可能及び/又は変形可能な壁部材の変位範囲は制限されている。好ましくは、拡張方向における上記チャンバー壁部材の変位を制限する拡張リミッタと、圧縮方向における上記チャンバー壁部材の変位を制限するための圧縮リミッタが設けられており、これにより、より圧縮された位置とより拡張された位置との間における上記チャンバーの限定的な変位のみを実現する。
【0020】
上記移動可能な壁部材が第1ステージピストン用の機械的ストップを形成する場合、上記移動可能な部材には好ましくは、上記ガスチャンバーが初期設定された最小容積に到達するときに上記チャンバーの壁部材の変位をストップさせる機械的ストッパー部分が設けられている。上記壁部材の上記ストッパー部分は、固定シリンダー本体で適切なサポート部分と係合し、例えば、上記移動可能な壁部材が最大の圧縮位置に到達したときに、上記ストッパー部分は上記シリンダーグランドに係合してもよい。上記ストッパー部分が上記固定本体のサポート部分に接触すると、上記ピストンからのいかなる更なる圧力は、追加のガス圧力に変換されることはないが、上記ストッパー部分を介して上記シリンダーの固定本体に伝達される。
【0021】
コンパクトな設計と、移動可能な壁部材に与えられる力の直接的なバックアップとを組み合わせるためには、上記移動可能な壁部材は、上記シリンダーハウジング及びそのシリンダーグランドの内周壁のリセス又は階段部分内に、変位可能に受け入れられて且つ捕捉され、それにより、好ましくはリング形状である上記チャンバー壁部材は、上記シリンダーハウジングの内壁の肩部と上記シリンダーグランドとの間で変位してもよい。
【0022】
シリンダーステージを変化させるときに機械的衝撃を低減するためのガスクッションは、異なるシリンダーの型に利用されてもよく、マルチプルステージピストンの有効圧力表面積の大面積率を有するマルチプルステージ油圧シリンダーにおいて特に有利である。そのようなピストンの表面積率は変化してもよく、典型的には120%よりも大きい。好ましくは、第1ステージピストンの有効圧力表面積の第2ステージピストンの有効圧力表面積に対する有効圧力表面積率は、120%〜300%の範囲、好ましくは、120%〜200%の範囲内にある。
【0023】
大きな軸変位をそれでも提供する小直径を有する、コンパクトで、スリム設計を実現するためには、マルチプルステージピストンが互いに組み込まれてもよい。より具体的には、第1ステージピストン及び/又は上記第1ステージピストンに接続される好ましくは中空で、スリーブ状のピストンロッドには、円筒穴が設けられてもよく、及び/又は、第2ステージピストンが摺動自在に受け入れられるシリンダーリセスを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1ステージピストン及び第2ステージピストンを有するマルチプルステージ油圧シリンダーの概略的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した油圧シリンダーのシリンダーハウジング内に組み込まれたクッション装置の一部が拡大された断面図である。
【
図3】
図3は、外部に配置されたガスクッションを有する別の好ましい実施形態に係るクッション装置の一部が拡大された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の好ましい実施形態が、図面に示された実施例を基礎として非常に詳細に説明される。
【0026】
図1に示すように、油圧シリンダー1は、円筒状でチューブ状のスリーブを構成することができるシリンダーハウジング2を含む固定シリンダー本体を含むことができる。一方で、上記シリンダーハウジング2は、閉じられていて、例えば溶接によって、コネクション又は例えばサポートボス21のようなサポート部材に固く接続されている。その閉じられた側とは反対にあるシリンダーハウジングの側には、主要なシリンダーピストンロッド4の出口となるシリンダーグランド18が設けられている。
【0027】
その内部端では、上記主要なピストンロッド4が、上記シリンダーハウジング2内で摺動自在に受け入れられる第1ステージピストン3と一緒に設けられていると共に、上記シリンダーハウジング2の内部をそれぞれ、上記シリンダーを拡張し、上記シリンダーを引き戻すための二つの圧力チャンバーに分離する。上記ピストン3は、上記シリンダーハウジング2の内周側面を用いて密閉に係合されており、この密閉係合はピストンの摺動を可能にする公知の方法で設けられる。
【0028】
図1から分かるように、上記第1ピストンロッド4は、中空のスリーブとして形成されており、第2ステージピストン5が摺動自在に受け入れられるシリンダーリセス20を構成するシリンダー穴を備えている。繰り返すと、上記第2ステージピストン5は上記スリーブ状の第1ステージピストンロッド4の内周表面と密閉係合されており、これにより、上記中空の第1ステージピストンロッド4の内部は、それぞれ拡張したり引き戻したりするための二つの圧力チャンバーに分離されている。
【0029】
上記第2ステージピストン5は、上記第1ステージピストンロッド4の開口端を越えて拡張する第2ステージピストンロッド6に接続されており、且つ、コネクションや例えば
図1のサポートボス22のようなサポート部材にしっかりと接続されている。
【0030】
図示していないが、シリンダーアレンジメントにさらなるステージやピストンを備えることができる。例えば、第3ステージピストンは、第2ステージピストンロッド6内で摺動自在に受け入れられ得、且つ、上記サポートボス22に接続される第3ステージピストンロッドに接続されている。しかしながら、例えば採掘機材や大型の建設機材のような所定のアプリケーションに対しては、2ステージ油圧シリンダーを有することが好ましい。
【0031】
図1から分かるように、シリンダーアレンジメントは、拡張圧力チャンバーに油圧を与えるための中央導管コネクションEXTを有すると共に、引き戻し圧力チャンバーに油圧を与えるためのもう一つの中央導管コネクションRETを有してもよい。記述された例では、拡張導管は第1ステージピストン3を通過して第1ステージ及び第2ステージピストンの双方に適用される。油圧オイルは、中央導管コネクションEXTから、第1ステージピストン3の前面に向き合う拡張チャンバーへ直接的に流れてもよい。第1ステージピストン3へ与えられる拡張圧力は、第2ステージステージピストン5に当てられる第1ステージピストン3を介して、伝達路25を通過することもできる。その結果、ピストン3及び5は、実質的に同じ拡張圧力に晒される。
【0032】
他方で、引き戻し圧力は、第1ステージピストンロッド4内へ上記第2ステージピストン5を引き込むために、第2ステージピストンロッド6を通じて引き戻しチャンバー内に流れてもよい。さらに、引き戻し圧力はまた、第1ステージピストン3を引き戻すために、引き戻しチャンバーに与えられる。
【0033】
図2から分かるように、グランド端には、固定本体に組み込まれたクッション装置7が存在する。より具体的には、上記クッション装置又はアレンジメント7は、少なくとも部分的に、シリンダーハウジング2の内部のグランド端に設けられた圧縮チャンバー8を含んでいる。グランド端において、シリンダーハウジング2には階部分26が設けられており、そこでは、シリンダーハウジング2の内周表面は増加する直径を持つ端部を有している。増加する直径部分内に挿入されるシリンダーグランド18は、上記階部分26にまで完全には伸びていない。その結果、上記シリンダーハウジング2の階部分26と上記シリンダーグランド18との間に規定されたリセス又はポケットが存在する。
【0034】
上記ポケット27内では、リング10が摺動自在に受け入れられ、上記リング10は上記ポケットの一部を規定する移動可能な壁部材を構成している。
図2に示されるように、上記リング形状の壁部材9、シリンダーグランド18、第1ステージピストンロッド4及びシリンダーハウジング2は、一緒になって、クッションアレンジメント7の圧縮チャンバー8を規定する。第1ステージピストンロッド4は、シリンダーグランド18及びリング10の双方に対して密閉係合し、且つ、第1ステージの変位を有効にするために上記シリンダーグランド18及びリング状の壁部材9に関連して摺動してもよく、それにより、圧縮チャンバー8の容積は、上記リング形状の壁部材9の軸方向の変位量に連れて変化する。
【0035】
圧縮チャンバー8はそれ自身、圧縮ガスで事前に充填されてもよく、それにより、移動可能なリング形状の壁部材9は、
図2に示された拡張位置に強いられる。ガスは、シリンダーハウジング2の外部に対して開口しているガス導管28を介して上記ガスチャンバー2内に充填されてもよい。
【0036】
代わりに、
図3に示すように、ガス容積は、シリンダーの外部に設けられてもよい。より具体的には、上記圧縮チャンバー8は、例えばオイルのような実質的に非圧縮性の液体で充填されてもよく、且つ、導管28を介して外部ガスアキュムレーター又はガススプリング81に接続されてもよく、それにより、圧縮に基づいて圧縮チャンバー8から放出される非圧縮性の液体を、圧縮ガスが受け入れられる外部ガスチャンバー80に与えられるようにすることが可能となる。上記外部ガスチャンバーにはまた、ガスチャンバー80の一部を規定する例えばピストンである移動可能及び/又は変形可能な部材が設けられている。上記導管28を介して供給される非圧縮性の液体は、上記ガスチャンバー80の移動可能及び/又は変形可能な壁部材に与えられ、それにより、非圧縮性の液体の圧力をガス容積に伝達する。
【0037】
図1、2及び3から明らかなように、第1ステージピストン3は、拡張されてその変位パスの端部に到達するとき、リング形状の壁部材9に到達する。第1ステージピストン3がリング形状の壁部材9と接触すると、油圧液体は上記シリンダーの第1ステージを拡張させ、このため、クッション装置を圧縮させる。クッション装置が圧縮するに連れて、充填されるガスも圧縮される。ガスが圧縮されるに連れて、クッション装置は、第1ステージピストンに対して力を戻すことにより、第1ステージピストン3と反応する。この力は、第1ステージピストン3に対する圧力が第2ステージピストン5を動かすために必要な圧力よりも大きくなるまで、生じる。そのとき、第2ステージピストン5は移動を開始する。このことは、固定本体と第1ステージピストン3との間の機械的な接続がなされる前に、生じ、これにより、機械的衝撃を回避する。
【0038】
クッション装置7は、圧力の傾斜によって定量化されるステージ変化に対して時間を与えることによって、ステージ変化中の衝撃を減少させる。これはガスが、そのような装置がないときのほぼ即時のステージ変化の代わりに、圧縮されるからである。
【0039】
最大拡張時において、クッション装置7は最大の圧縮がかけられる。この位置において、壁部材9の機械的ストッパー部14は、シリンダーグランド18に接される。このため、ハードストップは、ガスチャンバー内のガスの過圧及びシールに対するダメージを防止する移動可能なリング形状の壁部材9内に設計されている。
【0040】
最大拡張から引き戻すためにシリンダーが加圧されるとき、クッション装置7は、クッション装置7の移動可能なリングが階部分26によって形成される機械的ストップに到達するまで、第1ステージピストン3の裏側に対して圧力をかけるであろう。
【符号の説明】
【0041】
1 油圧シリンダー
2 シリンダーハウジング
3 第1ステージピストン
4 第1ステージピストンロッド
5 第2ステージピストン
6 第2ステージピストンロッド
7 クッション装置
8 圧縮チャンバー
9 リング形状の壁部材9
10 リング
18 シリンダーグランド
20 シリンダーリセス
22 サポートボス
RET 中央導管コネクション
EXT 中央導管コネクション
26 階部分
27 ポケット
28 ガス導管
80 ガスチャンバー
81 ガススプリング