【実施例】
【0029】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1〜6)
〔地温上昇抑制剤の調製〕
白色無機粉末として、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、平均粒子径1.8μm)、炭酸マグネシウム(平均粒子径2.5μm)、酸化チタン(平均粒子径2.0μm)、または焼成クレイ(平均2.8μm)を用い、糊材としてα−デンプン、カルボキシメチルセルロース、またはグアガムを用い、表1に示す白色無機粉末と糊材の組み合わせ及び配合量で白色無機粉末と糊材とを混合し、地温上昇抑制剤を調製した。表1に示すように、白色無機粉末100質量部に対して、糊材を15質量部用いた。従って、白色無機粉末約87質量%、糊材約13質量%の配合割合となった。
【0031】
比較例1として、糊材を混合せずに、白色無機粉末としての炭酸カルシウムのみのものを調製した。
【0032】
【表1】
【0033】
〔地温上昇抑制剤の散布〕
上記のように調製した実施例1〜6の地温上昇抑制剤及び比較例1の炭酸カルシウムを、ホウレンソウを播種し、潅水した後のハウス内の圃場に、背負い式粉末散布器にて散布した。実施例1〜6の地温上昇抑制剤については、1平方メートル当たり115gとなるように散布した。比較例1の炭酸カルシウム粉末については、100gとなるように散布した。
【0034】
散布後の管理は、毎日1回1平方メートル当たり1リットルとなるように、自動潅水装置により潅水を実施した。
【0035】
〔土壌白色度の測定〕
実施例1〜6の地温上昇抑制剤の散布した区、比較例1の粉末を散布した区、及び地温上昇抑制剤及び炭酸カルシウムを散布していない比較例2の区において、土壌表面の白色度を、ハンディ型分光色差計を用いて毎日1回測定した。散布直後、散布1週間後、及び散布2週間後の土壌表面の白色度の測定結果を表2に示す。なお、表2に示す値は、比較例2の値を1.0とした場合の相対値である。
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示すように、本発明に従う実施例1〜6の地温上昇抑制剤を散布した区においては、土壌表面の白色度が高くなっており、散布1週間後及び散布2週間後においても高い白色度が得られている。
【0038】
これに対し、糊材を配合していない炭酸カルシウムを散布した比較例1においては、散布直後において高い白色度が得られているが、散布1週間後、散布2週間後になるにつれて、白色度が低下していることがわかる。
【0039】
また、散布していない比較例2の区においては、低い白色度の値が維持されている。
【0040】
〔地温の測定〕
上記と同様に各散布区について、土壌表面から5cmの深さにおける地温を、経時的に測定し、1日における平均の地温を求めた。
【0041】
表3に、散布直後、散布1週間後、及び散布2週間後における平均地温を示す。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に示すように、本発明に従う実施例1〜6の地温上昇抑制剤を散布した区においては、本発明の地温上昇抑制剤または炭酸カルシウムを散布していない比較例2に比べ、5〜6℃程度地温が低くなっており、地温上昇抑制の効果が認められている。
【0044】
地温上昇抑制の効果は、経時により低減するが、散布から2週間後においても、4℃程度の地温上昇抑制効果が認められている。
【0045】
糊材を含有していない炭酸カルシウムを散布した比較例1の区においては、散布直後において地温上昇抑制の効果が得られているが、散布1週間後、散布2週間後となるにつれて、地温上昇抑制の効果が著しく低減していることがわかる。このような効果は、表2に示す白色度の結果と相関性があるものと考えられる。
【0046】
〔発芽率、株数、株重、及び収量の測定〕
実施例1〜6の区、比較例1の区及び比較例2の区のそれぞれにおいて、播種したホウレンソウの発芽率、株数、株重、及び収量を測定し、表4にそれらの結果を示した。なお、発芽率は、(発芽数/播種数)×100の値である。また、表4における( )内の数字は、それぞれにおける比較例2の値を100とした場合の相対値である。
【0047】
【表4】
【0048】
表4に示す結果から明らかなように、発芽率、株数、株重、及び収量において、本発明に従う実施例1〜6の地温上昇抑制剤を散布した区は、散布しなかった比較例2の区、糊材を含まない炭酸カルシウム粉末を散布した比較例1の区に比べ、いずれにおいても、良好な結果が得られた。これは、本発明の地温上昇抑制剤の散布により、地温の上昇を抑制することができ、発芽抑制、生育抑制などの高温障害の発生が抑えられたためであると考えられる。
【0049】
(実施例7〜11及び比較例3〜5)
ここでは、白色無機粉末と糊材の配合割合による影響を検討した。
【0050】
白色無機粉末としての炭酸カルシウム100質量部に対し、糊材としてのα−デンプンを0質量部(比較例3)、3質量部(比較例4)、6質量部(実施例7)、10質量部(実施例8)、15質量部(実施例9)、40質量部(実施例10)、60質量部(実施例11)、及び80質量部(比較例5)となるように配合して混合粉末を調製した。
【0051】
これらの混合粉末を、上記と同様にして、ホウレンソウを播種した圃場に、1平方メートル当たりの白色無機粉末(炭酸カルシウム)の量が100gとなるように散布した。
【0052】
上記と同様にして、散布直後、散布1週間後、及び散布2週間後の地温を測定し、測定結果を表5に、ホウレンソウの発芽率、株数、株重及び収量を測定し、測定結果を表6に示した。表6における( )内の数字は、それぞれにおける比較例3の値を100とした場合の相対値である。
【0053】
【表5】
【0054】
表5に示す結果から明らかなように、糊材を増加することにより地温を抑制する効果が増大することがわかる。しかしながら、糊材を40質量%より多く配合した比較例5は、実施例11とほぼ同程度の地温上昇抑制効果であり、糊材を40質量%以上多く配合しても、それに比例した地温上昇抑制効果が得られなくなることがわかる。
【0055】
【表6】
【0056】
表6に示す発芽率、株数、株重及び収量の結果から、比較例5のように糊材を40質量%より多く配合することにより、収量が低下することがわかる。この原因としては糊材の多量の投与により、土壌表面に糊材の膜が生じ、根の呼吸が阻害されたため生育が阻害された結果と考えられる。