(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態であるハイブリッド車両の駆動装置つまりパワーユニット10を示す概略図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両に搭載されるパワーユニット10は、動力源としてエンジン11を備えるとともに、動力源として2つのモータジェネレータM1,M2を備えている。一方のモータジェネレータ(電動モータ)M1は主に走行用として機能しており、他方のモータジェネレータM2は主に発電用として機能している。
【0011】
エンジン11とモータジェネレータM2とは、遊星歯車列からなる動力分割機構12を介して接続されている。動力分割機構12は、エンジン11にダンパ機構13およびエンジン連結軸14を介して連結されるキャリア15と、キャリア15に回転自在に支持されるピニオンギヤ16とを有している。ピニオンギヤ16には、同軸上に配置される第1ギヤ部16aおよび第2ギヤ部16bが形成されている。第1ギヤ部16aには第1サンギヤ17が噛み合っており、第2ギヤ部16bには第2サンギヤ18が噛み合っている。第1サンギヤ17にはジェネレータ連結軸19およびギヤ列20を介してモータジェネレータM2のロータ21aが連結されており、第2サンギヤ18には中空軸22を介してシンクロハブ23が固定されている。また、ピニオンギヤ16の第1ギヤ部16aには、リングギヤ24が噛み合っている。また、リングギヤ24には中空軸25が連結されており、中空軸25にはスプライン歯26が固定されている。さらに、パワーユニット10のケース27にはスプライン歯28が固定されている。
【0012】
図1に示すように、シンクロハブ23の外周部には、軸方向に移動自在にシンクロスリーブ30が噛み合っている。シンクロスリーブ30には、フォーク部材31を介してアクチュエータ32が連結されている。シンクロスリーブ30を矢印a方向に移動させることにより、シンクロスリーブ30をスプライン歯26に噛み合わせることができ、第2サンギヤ18とリングギヤ24とを締結することが可能となる。一方、シンクロスリーブ30を矢印b方向に移動させることにより、シンクロスリーブ30をスプライン歯28に噛み合わせることができ、第2サンギヤ18とケース27とを締結することが可能となる。また、シンクロスリーブ30を
図1に示す中立位置に移動させることにより、シンクロスリーブ30はシンクロハブ23だけに噛み合った状態となる。
【0013】
これらシンクロハブ23、スプライン歯26およびシンクロスリーブ30によって、第2サンギヤ18とリングギヤ24とを締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられる直結クラッチCL1が構成されている。また、シンクロハブ23、スプライン歯28およびシンクロスリーブ30によって、第2サンギヤ18とケース27とを締結する締結状態と、締結を解除する解放状態とに切り換えられる増速クラッチCL2が構成されている。そして、アクチュエータ32を作動させ、シンクロスリーブ30を
図1の矢印a方向に移動させることにより、直結クラッチCL1は締結状態に切り換えられ、増速クラッチCL2は解放状態に切り換えられる。一方、シンクロスリーブ30を
図1の矢印b方向に移動させることにより、増速クラッチCL2は締結状態に切り換えられ、直結クラッチCL1は解放状態に切り換えられる。また、シンクロスリーブ30を
図1に示す中立位置に移動させることにより、直結クラッチCL1と増速クラッチCL2とは共に解放状態となる。
【0014】
図1に示すように、リングギヤ24に連結される中空軸25には、駆動ギヤ33が固定されている。この駆動ギヤ33には従動ギヤ34が噛み合っており、従動ギヤ34は前輪出力軸35に回転自在に支持されている。また、従動ギヤ34と前輪出力軸35との間には、エンジンクラッチユニット(エンジンクラッチ)CL3が設けられている。さらに、従動ギヤ34を支持する前輪出力軸35には、デファレンシャル機構36を介して駆動輪37が連結されている。このように、エンジン11と駆動輪37との間には、エンジン連結軸14、動力分割機構12、駆動ギヤ33、従動ギヤ34、前輪出力軸35、デファレンシャル機構36等によって構成されるエンジン動力伝達経路38が設けられている。そして、エンジン動力伝達経路38には、エンジン11と駆動輪37とを接続する締結状態と、エンジン11と駆動輪37とを切り離す解放状態とに切り換えられるエンジンクラッチユニットCL3が設けられている。
【0015】
エンジンクラッチユニットCL3は、並列接続される第1エンジン動力経路39と第2エンジン動力経路40とを備えている。第1エンジン動力経路39には、締結状態と解放状態とに切り換えられる
第1クラッチとしての第1クラッチC1aと、これに直列接続される
第1一方向クラッチ41とが設けられている。また、ワンウェイクラッチである一方向クラッチ41は、前進走行時にエンジン11から駆動輪37に向けて動力を伝達する一方、前進走行時に駆動輪37からエンジン11に向かう動力を遮断つまり切断している。さらに、第2エンジン動力経路40には、締結状態と解放状態とに切り換えられる
第2クラッチとしての第2クラッチC1bが設けられている。
【0016】
そして、エンジンクラッチユニットCL3の第1クラッチC1aを締結状態に切り換え、第2クラッチC1bを解放状態に切り換えることにより、一方向クラッチ41を介してエンジン11と駆動輪37とが接続される。これにより、エンジン11から駆動輪37に向けて動力が伝達されるドライブ時には、エンジンクラッチユニットCL3を自動的に締結状態に切り換えることが可能となる。一方、駆動輪37からエンジン11に向けて動力が伝達されるコースト時には、エンジンクラッチユニットCL3を自動的に解放状態に切り換えることが可能となる。また、第2クラッチC1bを締結状態に切り換えることにより、ドライブ時とコースト時との双方でエンジンクラッチユニットCL3を締結状態とすることが可能となる。さらに、第1および第2クラッチC1a,C1bを解放状態に切り換えることにより、ドライブ時とコースト時との双方でエンジンクラッチユニットCL3を解放状態とすることが可能となる。なお、第1および第2クラッチC1a,C1bについては、油圧式の摩擦クラッチや噛合クラッチによって構成しても良く、電磁式の摩擦クラッチや噛合クラッチによって構成しても良い。
【0017】
また、前輪出力軸35には従動ギヤ42が固定されており、この従動ギヤ42に噛み合う駆動ギヤ43がモータ連結軸44に固定されている。また、モータジェネレータM1のロータ45aには遊星歯車列46が連結されており、モータ連結軸44と遊星歯車列46との間には、モータクラッチユニット(モータクラッチ)CL4が設けられている。このように、モータジェネレータM1と駆動輪37との間には、遊星歯車列46、モータ連結軸44、駆動ギヤ43、従動ギヤ42、前輪出力軸35、デファレンシャル機構36等によって構成されるモータ動力伝達経路47が設けられている。そして、モータ動力伝達経路47には、モータジェネレータM1と駆動輪37とを接続する締結状態と、モータジェネレータM1と駆動輪37とを切り離す解放状態とに切り換えられるモータクラッチユニットCL4が設けられている。なお、モータジェネレータM1の中央部を貫通するモータ連結軸44には、トランスファクラッチ48を介して後輪出力軸49が連結されており、この後輪出力軸49には図示しない駆動輪が連結される。
【0018】
モータクラッチユニットCL4は、並列接続される第1モータ動力経路51と第2モータ動力経路52とを備えている。第1モータ動力経路51には、締結状態と解放状態とに切り換えられる
第3クラッチとしての第1クラッチC2aと、これに直列接続される
第2一方向クラッチ53とが設けられている。また、ワンウェイクラッチである一方向クラッチ53は、前進走行時にモータジェネレータM1から駆動輪37に向けて動力を伝達する一方、前進走行時に駆動輪37からモータジェネレータM1に向かう動力を遮断つまり切断している。さらに、第2モータ動力経路52には、締結状態と解放状態とに切り換えられる
第4クラッチとしての第2クラッチC2bが設けられている。
【0019】
そして、モータクラッチユニットCL4の第1クラッチC2aを締結状態に切り換え、第2クラッチC2bを解放状態に切り換えることにより、一方向クラッチ53を介してモータジェネレータM1と駆動輪37とを接続することが可能となる。これにより、モータジェネレータM1から駆動輪37に向けて動力が伝達されるドライブ時には、モータクラッチユニットCL4を自動的に締結状態に切り換えることが可能となる。一方、駆動輪37からモータジェネレータM1に向けて動力が伝達されるコースト時には、モータクラッチユニットCL4を自動的に解放状態に切り換えることが可能となる。また、第2クラッチC2bを締結状態に切り換えることにより、ドライブ時とコースト時との双方でモータクラッチユニットCL4を締結状態とすることが可能となる。さらに、第1および第2クラッチC2a,C2bを解放状態に切り換えることにより、ドライブ時とコースト時との双方でモータクラッチユニットCL4を解放状態とすることが可能となる。なお、第1および第2クラッチC2a,C2bについては、油圧式の摩擦クラッチや噛合クラッチによって構成しても良く、電磁式の摩擦クラッチや噛合クラッチによって構成しても良い。
【0020】
続いて、
図2はパワーユニット10の制御系を示すブロック図である。
図2に示すように、モータジェネレータM1のステータ45bにはインバータ60が接続されており、モータジェネレータM2のステータ20bにはインバータ61が接続されている。双方のインバータ60,61には、リチウムイオンバッテリ等のバッテリ62が接続されている。また、ハイブリッド車両には、電動機や発電機として機能するモータジェネレータM1,M2のトルクや回転数を制御するモータ制御ユニット63が設けられている。また、ハイブリッド車両には、バッテリ62の充電状態(SOC)、電流、電圧、温度等を監視するバッテリ制御ユニット64が設けられている。さらに、ハイブリッド車両には、エンジン11のトルクや回転数を制御するエンジン制御ユニット65が設けられている。
【0021】
各制御ユニット63〜65やクラッチCL1〜CL4等を制御するため、ハイブリッド車両には車両制御ユニット66が設けられている。車両制御ユニット66には、セレクトレバーの操作状況を検出するインヒビタスイッチ67、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルペダルセンサ68、ブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキペダルセンサ69、車速を検出する車速センサ70等が接続されている。車両制御ユニット66は、各種センサ67〜70からの情報に基づき車両状態を判定し、所定のモードマップを参照して車両状態に応じた走行モードを設定する。そして、車両制御ユニット66は、車両状態および走行モードに基づいて、制御ユニット63〜65やクラッチCL1〜CL4等に対して制御信号を出力することになる。なお、各制御ユニット63〜66は、通信ネットワーク71を介して相互に接続されている。また、各制御ユニット63〜66は、制御信号等を演算するCPU、制御プログラム、演算式およびマップデータ等を格納するROM、一時的にデータを格納するRAM等によって構成されている。
【0022】
続いて、ハイブリッド車両の各走行モードについて説明する。ここで、
図3は走行モード設定時に車両制御ユニット66によって参照されるモードマップの一例を示す説明図である。また、
図4(a)および(b)はEVモードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。
図5(a)および(b)はシリーズモードにおけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。なお、
図4(b)および
図5(b)の共線図において、符号S
αは第1サンギヤ17を示し、符号S
βは第2サンギヤ18を示し、符号Cはキャリア15を示し、符号Rはリングギヤ24を示している。
【0023】
図3に示すように、ハイブリッド車両は、走行モードとして、EVモード、シリーズモード、低中速モード、高速モード1、高速モード2を備えている。
図3に示すように、前進走行や後退走行の発進時には、車両制御ユニット66によってEVモードが設定される。
図4(a)および(b)に示すように、モータジェネレータM1のみを用いて走行するEVモードにおいては、直結クラッチCL1、増速クラッチCL2、エンジンクラッチユニットCL3が解放される一方、モータクラッチユニットCL4が締結される。また、モータクラッチユニットCL4は、第2クラッチC2bを締結することで締結状態に切り換えられている。これにより、モータジェネレータM1を力行状態に制御することで車両を走行させることが可能となり、モータジェネレータM1を回生状態(発電状態)に制御することで車両を制動させることが可能となる。なお、エンジン11およびモータジェネレータM2は停止状態となる。
【0024】
図3に示すように、後退走行において要求駆動力が引き上げられると、車両制御ユニット66によってシリーズモードが設定される。
図5(a)および(b)に示すように、シリーズモードにおいては、増速クラッチCL2およびエンジンクラッチユニットCL3が解放される一方、直結クラッチCL1およびモータクラッチユニットCL4が締結される。なお、EVモードと同様に、モータクラッチユニットCL4は、第2クラッチC2bを締結することで締結状態に切り換えられている。このように、シリーズモードにおいても、モータジェネレータM1を力行状態に制御して車両を走行させることが可能となり、モータジェネレータM1を回生状態に制御して車両を制動させることが可能となる。さらに、シリーズモードにおいては、直結クラッチCL1の締結によって動力分割機構12の差動動作が制限されており、エンジン11とモータジェネレータM2とは動力分割機構12を介して直結された状態となる。これにより、モータジェネレータM2をエンジン動力によって駆動することができ、モータジェネレータM2からバッテリ62に電力を供給することが可能となる。これにより、モータジェネレータM1に多くの電力を供給することができ、モータジェネレータM1の出力トルクを増大させることが可能となる。
【0025】
続いて、低中速モード、高速モード1および高速モード2におけるパワーユニット10の作動状態について説明する。これらの走行モードについては、
図6〜
図8を用いて直結クラッチCL1および増速クラッチCL2の作動状態について説明した後に、
図9〜
図13を用いてエンジンクラッチユニットCL3およびモータクラッチユニットCL4の作動状態について説明する。ここで、
図6(a)および(b)は動力分割機構12が動力分割状態となるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。
図7(a)および(b)は動力分割機構12が増速状態となるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。
図8(a)および(b)は動力分割機構12が直結状態となるパワーユニット10の作動状態を示す概略図および共線図である。なお、
図6(a)〜
図8(a)の概略図においては、エンジンクラッチユニットCL3、モータクラッチユニットCL4およびモータジェネレータM1等を省略して図示している。また、
図6(b)〜
図8(b)の共線図において、符号S
αは第1サンギヤ17を示し、符号S
βは第2サンギヤ18を示し、符号Cはキャリア15を示し、符号Rはリングギヤ24を示している。
【0026】
図6(a)および(b)に示すように、直結クラッチCL1および増速クラッチCL2を共に解放すると、動力分割機構12はパワースプリットとも呼ばれる動力分割状態となる。この動力分割状態においては、第2サンギヤ18およびリングギヤ24の拘束が解かれることから、動力分割機構12を介してエンジン動力をリングギヤ24とモータジェネレータM2とに分配することが可能となる。そして、動力分割状態においては、モータジェネレータM2の回転数を制御することにより、無段変速させながらエンジン動力をリングギヤ24から駆動輪37に向けて出力することが可能となる。この動力分割機構12の動力分割状態は、後述する
図9〜
図11に示す低中速モードで主に設定される。
【0027】
また、
図7(a)および(b)に示すように、直結クラッチCL1を解放して増速クラッチCL2を締結すると、動力分割機構12はオーバードライブとも呼ばれる増速状態となる。この増速状態においては、第2サンギヤ18がケース27に固定されることから、固定変速比で増速されたエンジン動力をリングギヤ24から駆動輪37に向けて出力することが可能となる。この動力分割機構12の増速状態は、後述する
図12および
図13に示す高速モード1および高速モード2の低駆動力領域で主に設定される。
【0028】
さらに、
図8(a)および(b)に示すように、直結クラッチCL1を締結して増速クラッチCL2を解放すると、動力分割機構12は直結状態となる。この直結状態においては、第2サンギヤ18とリングギヤ24とが締結されることから、前述した増速状態よりも大きな変速比でエンジン動力をリングギヤ24から駆動輪37に向けて出力することが可能となる。つまり、動力分割機構12を増速状態から直結状態に切り換えることにより、エンジン動力の変速比を増大つまりダウンシフトさせることが可能となる。この動力分割機構12の直結状態は、後述する
図12および
図13に示す高速モード1および高速モード2の高駆動力領域で主に設定される。
【0029】
次いで、エンジンクラッチユニットCL3およびモータクラッチユニットCL4の作動状態について説明する。ここで、
図9(a)および(b)は低中速モードのエンジン駆動状態におけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図である。
図10(a)および(b)は低中速モードのパラレル駆動状態におけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図である。
図11(a)および(b)は低中速モードのパラレル駆動状態におけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図である。この
図11にはバッテリ62の満充電時におけるパワーユニット10の作動状態が示されている。また、
図12(a)および(b)は高速モード1におけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図である。
図13(a)および(b)は高速モード2におけるパワーユニット10の作動状態を示す概略図である。なお、
図9(a)〜
図13(a)には動力伝達状態がドライブ状態のときのパワーユニット10が示されており、
図9(b)〜
図13(b)には動力伝達状態がコースト状態のときのパワーユニット10が示されている。また、
図9〜
図13には動力が伝達される経路を太線で示している。
【0030】
なお、
図9(a)〜
図13(a)に示すドライブ状態とは、前進走行時にエンジン11やモータジェネレータM1から駆動輪37に向けて動力が伝達される状態である。また、
図9(b)〜
図13(b)に示すコースト状態とは、前進走行時に駆動輪37からエンジン11やモータジェネレータM1に向けて動力が伝達される状態である。また、
図9に示すエンジン駆動状態とは、エンジン動力のみを用いて車両を走行させる状態である。また、
図10および
図11に示すパラレル駆動状態とは、エンジン動力およびモータ動力を用いて車両を走行させる状態である。さらに、
図11に示す満充電時とは、バッテリ62のSOCが所定上限値に達した状態であり、バッテリ62に対する充電が規制される状態である。
【0031】
図9(a)に示すように、低中速モードのエンジン駆動状態においては、エンジンクラッチユニットCL3のクラッチC1a,C1bのうち、第1クラッチC1aが締結されて第2クラッチC1bが解放される。また、モータクラッチユニットCL4のクラッチC2a,C2bは共に解放される。これにより、アクセルペダルが踏み込まれるドライブ状態においては、締結状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが接続される一方、解放状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが切り離される。このように、エンジン駆動状態で車両を走行させる際には、駆動輪37からモータジェネレータM1を切り離すことができるため、モータジェネレータM1の引きずりを防止して燃費性能を向上させることが可能となる。
【0032】
そして、
図9(b)に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト状態においては、エンジンクラッチユニットCL3の制御状態が維持される一方、モータクラッチユニットCL4の第2クラッチC2bが締結される。これにより、コースト状態においては、解放状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが切り離される一方、締結状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが接続される。このように、エンジン駆動状態で車両を減速させる際には、駆動輪37からエンジン11を切り離すことができるため、モータジェネレータM1によるエネルギーの回生効率を高めることが可能となる。
【0033】
このように、エンジン駆動状態においては、エンジンクラッチユニットCL3のクラッチC1a,C1bのうち、第1クラッチC1aを締結して第2クラッチC1bを解放した状態で維持されている。これにより、アクセルペダルが踏み込まれるドライブ状態においては、エンジンクラッチユニットCL3が自動的に締結状態に切り換えられ、エンジン動力によって車両を走行させることが可能となる。一方、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト状態においては、エンジンクラッチユニットCL3が自動的に解放状態に切り換えられ、駆動輪37からエンジン11を切り離して回生エネルギーを増大させることが可能となる。このように、エンジンクラッチユニットCL3の制御状態を維持したまま、自動的に締結状態と解放状態とに切り換えることができるため、エンジンクラッチユニットCL3におけるクラッチ制御の簡素化を達成することが可能となる。
【0034】
続いて、
図10(a)に示すように、低中速モードのパラレル駆動状態においては、エンジン駆動状態と同様に、エンジンクラッチユニットCL3のクラッチC1a,C1bのうち、第1クラッチC1aが締結されて第2クラッチC1bが解放される。また、モータクラッチユニットCL4のクラッチC2a,C2bのうち、第1クラッチC2aが解放されて第2クラッチC2bが締結される。これにより、アクセルペダルが踏み込まれるドライブ状態においては、締結状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが接続されるとともに、締結状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが接続される。このように、パラレル駆動状態で車両を走行させる際には、駆動輪37に対してエンジン11とモータジェネレータM1とが接続される。
【0035】
そして、
図10(b)に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト状態においては、エンジンクラッチユニットCL3およびモータクラッチユニットCL4の制御状態が維持される。これにより、コースト状態においては、解放状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが切り離される一方、締結状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが接続される。このように、パラレル駆動状態で車両を減速させる際には、駆動輪37からエンジン11を切り離すことができるため、モータジェネレータM1によるエネルギーの回生効率を高めることが可能となる。
【0036】
このように、パラレル駆動状態においても、エンジン駆動状態と同様に、エンジンクラッチユニットCL3のクラッチC1a,C1bのうち、第1クラッチC1aを締結して第2クラッチC1bを解放した状態で維持されている。これにより、アクセルペダルが踏み込まれるドライブ状態においては、エンジンクラッチユニットCL3が自動的に締結状態に切り換えられ、エンジン動力によって車両を走行させることが可能となる。一方、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト状態においては、エンジンクラッチユニットCL3が自動的に解放状態に切り換えられ、駆動輪37からエンジン11を切り離して回生エネルギーを増大させることが可能となる。このように、エンジンクラッチユニットCL3の制御状態を維持したまま、自動的に締結状態と解放状態とに切り換えることができるため、エンジンクラッチユニットCL3におけるクラッチ制御の簡素化を達成することが可能となる。
【0037】
続いて、
図11(a)に示すように、低中速モードのパラレル駆動状態における満充電時においては、エンジンクラッチユニットCL3のクラッチC1a,C1bのうち、第1クラッチC1aが解放されて第2クラッチC1bが締結される。また、モータクラッチユニットCL4のクラッチC2a,C2bのうち、第1クラッチC2aが締結されて第2クラッチC2bが解放される。これにより、アクセルペダルが踏み込まれるドライブ状態においては、締結状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが接続されるとともに、締結状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが接続される。このように、パラレル駆動状態で車両を走行させる際には、駆動輪37に対してエンジン11とモータジェネレータM1とが接続される。
【0038】
そして、
図11(b)に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト状態においては、エンジンクラッチユニットCL3およびモータクラッチユニットCL4の制御状態が維持される。これにより、コースト状態においては、接続状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが接続される一方、解放状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが切り離される。このように、バッテリ62の満充電時に車両を減速させる際には、駆動輪37からモータジェネレータM1を切り離すことができるため、バッテリ62の過充電を防止することが可能となる。
【0039】
このように、バッテリ62の満充電時においては、モータクラッチユニットCL4のクラッチC2a,C2bのうち、第1クラッチC2aを締結して第2クラッチC2bを解放した状態で維持されている。これにより、アクセルペダルが踏み込まれるドライブ状態においては、モータクラッチユニットCL4が自動的に締結状態に切り換えられ、モータ動力によって車両を走行させることが可能となる。一方、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト状態においては、モータクラッチユニットCL4が自動的に解放状態に切り換えられ、駆動輪37からモータジェネレータM1を切り離してバッテリ62の過充電を防止することが可能となる。このように、モータクラッチユニットCL4の制御状態を維持したまま、自動的に締結状態と解放状態とに切り換えることができるため、モータクラッチユニットCL4におけるクラッチ制御の簡素化を達成することが可能となる。
【0040】
続いて、
図12(a)に示すように、高速モード1においては、エンジンクラッチユニットCL3のクラッチC1a,C1bのうち、第1クラッチC1aが解放されて第2クラッチC1bが締結される。また、モータクラッチユニットCL4のクラッチC2a,C2bが共に解放される。これにより、アクセルペダルが踏み込まれるドライブ状態においては、締結状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが接続される一方、解放状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが切り離される。このように、高速モード1で車両を走行させる際には、モータジェネレータM1を駆動輪37から切り離すことにより、モータジェネレータM1の高回転領域での駆動を抑制して燃費性能を向上させることが可能となる。
【0041】
そして、
図12(b)に示すように、アクセルペダルの踏み込みが解除されるコースト状態においては、エンジンクラッチユニットCL3の制御状態が維持される一方、モータクラッチユニットCL4の第2クラッチC2bが締結される。これにより、コースト状態においては、締結状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが接続されるとともに、締結状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが接続される。このように、高速モード1で車両を減速させる際には、駆動輪37とエンジン11との接続状態が維持されるとともに、切り離されていたモータジェネレータM1が駆動輪37に接続される。これにより、回生エネルギーを増大させて燃費性能を向上させるとともに、エンジンブレーキによって十分な制動力を確保している。
【0042】
続いて、高速モード2について説明する。この高速モード2とは、モータジェネレータM1の許容回転数を超える車速領域で設定される走行モードである。
図13(a)および(b)に示すように、高速モード2においては、エンジンクラッチユニットCL3のクラッチC1a,C1bのうち、第1クラッチC1aが解放されて第2クラッチC1bが締結される。また、モータクラッチユニットCL4のクラッチC2a,C2bが共に解放される。これにより、ドライブ状態やコースト状態においては、締結状態となるエンジンクラッチユニットCL3によって駆動輪37とエンジン11とが接続される一方、解放状態となるモータクラッチユニットCL4によって駆動輪37とモータジェネレータM1とが切り離される。このように、高速モード2で車両を走行させる際には、常にモータジェネレータM1が駆動輪37から切り離された状態となる。これにより、許容回転数を超えてモータジェネレータM1を回転させてしまうことがなく、パワーユニット10の耐久性を向上させることが可能となる。
【0043】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、図示する場合には、エンジンクラッチユニットCL3の第2エンジン動力経路40に第2クラッチC1bのみを設けているが、これに限られることはなく、第2エンジン動力経路40に第2クラッチC1bとこれに直列接続される一方向クラッチを設けても良い。この場合には、一方向クラッチとして、前進走行時にエンジン11から駆動輪37に向けて動力を遮断する一方、前進走行時に駆動輪37からエンジン11に向かう動力を伝達する一方向クラッチが、第2エンジン動力経路40に設けられる。また、モータクラッチユニットCL4の第2モータ動力経路52に第2クラッチC2bのみを設けているが、これに限られることはなく、第2モータ動力経路52に第2クラッチC2bとこれに直列接続される一方向クラッチを設けても良い。この場合には、一方向クラッチとして、前進走行時にモータジェネレータM1から駆動輪37に向けて動力を遮断する一方、前進走行時に駆動輪37からモータジェネレータM1に向かう動力を伝達する一方向クラッチが、第2モータ動力経路52に設けられる。
【0044】
また、前述の説明では、第1エンジン動力経路39の一方向クラッチ41は、前進走行時にエンジン11から駆動輪37に向けて動力を伝達する一方、前進走行時に駆動輪37からエンジン11に向かう動力を遮断しているが、これに限られることはない。例えば、ドライブ状態においてエンジンクラッチユニットCL3の解放が求められる場合には、前進走行時にエンジン11から駆動輪37に向かう動力を遮断する一方、前進走行時に駆動輪37からエンジン11に向けて動力を伝達する一方向クラッチを第1エンジン動力経路39に設けても良い。また、前述の説明では、第1モータ動力経路51の一方向クラッチ53は、前進走行時にモータジェネレータM1から駆動輪37に向けて動力を伝達する一方、前進走行時に駆動輪37からモータジェネレータM1に向かう動力を遮断しているが、これに限られることはない。例えば、ドライブ状態においてモータクラッチユニットCL4の解放が求められる場合には、前進走行時にモータジェネレータM1から駆動輪37に向かう動力を遮断する一方、前進走行時に駆動輪37からモータジェネレータM1に向けて動力を伝達する一方向クラッチを第1モータ動力経路51に設けても良い。
【0045】
なお、図示する場合には、モータジェネレータM1以外に、主として発電用のモータジェネレータM2を備えているが、これに限られることはなく、モータジェネレータM2を省いてパワーユニット10を構成しても良い。また、図示するパワーユニット10は、四輪駆動用のパワーユニットであるが、これに限られることはなく、前輪駆動用や後輪駆動用のパワーユニットに対して本発明を適用しても良い。