特許第5997501号(P5997501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイゾーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997501
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】パウダー含有エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20160915BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20160915BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160915BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20160915BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160915BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61K8/25
   A61K8/34
   A61Q5/06
   A61Q19/00
   C09K3/30 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-114873(P2012-114873)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-241358(P2013-241358A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100110984
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 敬子
(74)【代理人】
【識別番号】100111279
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】菊地 典子
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−201797(JP,A)
【文献】 特開2010−189303(JP,A)
【文献】 特開2000−212051(JP,A)
【文献】 特開平04−066525(JP,A)
【文献】 特開2004−323361(JP,A)
【文献】 特開2011−225559(JP,A)
【文献】 日本アエロジル株式会社,製品案内
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C09K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性パウダーと液化ガスとを含有するパウダー含有エアゾール組成物であって、
前記多孔性パウダーの嵩密度が10〜300g/lであり、
多孔性パウダーに溶媒および有効成分を担持させた担持パウダーを5〜70質量%、
前記液化ガスを30〜95質量%含有し、
前記溶媒は、水溶性溶媒であり、水と多価アルコールとの混合物であり、
水と多価アルコールの含有比(質量比)は、1/99〜40/60であり、
前記多孔性パウダーの表面が疎水性であり、
前記有効成分が親水性有効成分である、
パウダー含有エアゾール組成物。
【請求項2】
前記担持パウダーが、
多孔性パウダーを4〜40質量%、
溶媒を50〜95質量%、
有効成分を1〜20質量%含有する
請求項1記載のパウダー含有エアゾール組成物。
【請求項3】
前記有効成分が、スタイリング用樹脂である
請求項1または2記載のパウダー含有エアゾール組成物。
【請求項4】
前記液化ガスが親油性液化ガスである
請求項1〜のいずれか1項に記載のパウダー含有エアゾール組成物。
【請求項5】
前記液化ガスが親水性液化ガスである
請求項1〜のいずれか1項に記載のパウダー含有エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダー含有エアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、有効成分を多孔性パウダー内に安定して担持することができ、さらに吐出されたパウダーに摩擦による熱や力を加えることで有効成分の効果を均一に得ることのできるパウダー含有エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平均粒子直径が10〜120μm、BET比表面積が40〜400m2/gおよび突固め密度が220〜700g/lである熱分解法シリカに、化粧品活性成分および補助物質を吸着させた化粧品用吸着体が記載されている。しかし、この吸着体は、例えば高温環境下に置かれたりすることで、吸着している化粧品活性成分や補助物質が、シリカからしみ出してしまい、保存状況や使用状況によってシリカに吸着している成分が不均一になるという問題がある。また、特許文献1には化粧品用吸着体を液化ガスとともに含有することについては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4102757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有効成分を多孔性パウダー内に安定して担持することができ、さらに吐出されたパウダーに摩擦による熱や力などを加えることで有効成分の効果を均一に得ることのできるパウダー含有エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパウダー含有エアゾール組成物は、多孔性パウダーと液化ガスとを含有するパウダー含有エアゾール組成物であって、前記多孔性パウダーの嵩密度が10〜300g/lであり、多孔性パウダーに溶媒および有効成分を担持させた担持パウダーを5〜70質量%、前記液化ガスを30〜95質量%含有するパウダー含有エアゾール組成物である。
【0006】
前記担持パウダーが、多孔性パウダーを4〜40質量%、溶媒を50〜95質量%、有効成分を1〜20質量%含有することが好ましい。
【0007】
前記多孔性パウダーの表面が疎水性であり、前記溶媒が水溶性溶媒であり、前記有効成分が親水性有効成分であることが好ましい。
【0008】
前記水溶性溶媒が、水と多価アルコールとの混合物であることが好ましい。
【0009】
前記有効成分が、スタイリング用樹脂であることが好ましい。
【0010】
前記液化ガスが、親油性液化ガスまたは親水性液化ガスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、嵩密度が10〜300g/lの多孔性パウダーに溶媒および有効成分を担持させた担持パウダーを5〜70質量%、前記液化ガスを30〜95質量%含有するパウダー含有エアゾール組成物とすることで、有効成分を多孔性パウダー内に安定して担持することができるため、長期間の保存や、高温環境化での保存がされた場合も、均一な成分の吐出物を得ることができる。また、担持パウダーに担持された有効成分等は温度の上昇により多孔質パウダーからしみ出す傾向があるが、吐出直後の吐出物は液化ガスの気化熱により冷却されて安定的に担持されており、吐出されたパウダーに摩擦力や、体熱を加えると有効成分がしみ出し、使用感に優れたワックス状、クリーム状の吐出物が得られ、さらに吐出時のパウダーの舞い上がりが抑制されたパウダー含有エアゾール組成物を提供することができる。
【0012】
前記担持パウダーが、多孔性パウダーを4〜40質量%、溶媒を50〜95質量%、有効成分を1〜20質量%含有する場合は、溶媒と有効成分を担持させてもパウダー状態を維持しやすくなる。
【0013】
前記多孔性パウダーの表面が疎水性であり、前記溶媒が水溶性溶媒であり、前記有効成分が親水性有効成分である場合は、吐出物を塗り広げると担持パウダーから溶媒と有効成分が容易にしみ出し、ワックス状ないしはクリーム状になりやすい。
【0014】
前記水溶性溶媒が、水と多価アルコールとの混合物である場合は、多孔性パウダーに有効成分を安定して担持することができる。
【0015】
前記有効成分が、スタイリング用樹脂である場合は、担持パウダーに接着性を付与し、スプレーしたときに塗布面での飛散を防止し、付着しやすくなる。
【0016】
前記液化ガスが親油性液化ガスである場合は、親油性液化ガスが多孔性パウダーの外部から加圧して細孔内に水溶性溶媒と水溶性有効成分を閉じ込めることができ、安定性が高くなる。
【0017】
また、前記液化ガスが親水性液化ガスである場合は、パウダー状に付着した後で発泡するため塗り伸ばしやすく、またすぐに透明になって白残りしない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のパウダー含有エアゾール組成物は、多孔性パウダーと液化ガスとを含有するパウダー含有エアゾール組成物であって、所定の多孔性パウダーに溶媒および有効成分を担持させた担持パウダーおよび液化ガスを所定量含有することを特徴とする。
【0019】
前記多孔性パウダーは、表面に多数の細孔が設けられたパウダーであり、この多孔性パウダーの細孔に溶媒および有効成分を担持させた担持パウダーとして用いる。多孔性パウダー、溶媒および有効成分を担持パウダーとして含有するエアゾール組成物とすることで、パウダー状に吐出されるが、該パウダーに摩擦力や、体熱が加わることで、担持された溶媒と有効成分がしみ出し使用感に優れた吐出物を得ることができ、さらに吐出時のパウダーの舞い上がりを抑制することができる。
【0020】
多孔性パウダーとしては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタンなどが挙げられる。なかでも、多量の溶媒を吸着しやすく、パウダー状態を維持できるという点から乾式法により調製されたシリカを用いることが好ましい。
【0021】
多孔性パウダーは担持させる有効成分や、エアゾール組成物に求められる性質に応じて、表面処理をした疎水性パウダーや、未処理の親水性パウダーを用いることができる。表面処理としては、ジメチルシリコーンオイルや、オクチルシラン、メタクリロキシシラン、アルキルシリルなどによる疎水処理が挙げられる。特に疎水処理した多孔性パウダーを用いることで、有効成分を多孔性パウダー内に安定して担持することができるという本願発明の効果を発揮することができ、吐出されたパウダーから有効成分が容易にしみ出すので使用感の優れるパウダー含有エアゾール組成物とすることができる。
【0022】
多孔性パウダーの嵩密度は10〜300g/lであり、20〜200g/lが好ましく、30〜150g/lがより好ましい。嵩密度が10g/l未満の場合はパウダー状態を維持したままで溶媒や有効成分を担持できる量が少なくなる傾向がある。また、300g/lを超える場合はパウダーが軽すぎ溶媒や有効成分と混ざりにくく、担持しにくくなる傾向がある。なお、本発明における多孔性パウダーの嵩密度は、ISO787−11に定義された方法により測定される嵩密度とする。
【0023】
多孔性パウダーの比表面積は20〜400m2/gが好ましく、30〜300m2/gがより好ましく、50〜250m2/gがさらに好ましい。比表面積が20m2/g未満の場合は溶媒と有効成分の担持量が少なくなる傾向がある。また、400m2/gを超える場合は小さな細孔が多く、細孔に担持された溶媒や有効成分がしみ出しにくくなる傾向がある。なお、本発明における多孔性パウダーの比表面積は、窒素を用いた吸着等温線からBET法により算出される比表面積とする。
【0024】
担持パウダー中の多孔性パウダーの含有量は、4〜40質量%が好ましく、5〜35質量%がより好ましい。多孔性パウダーの含有量が4質量%未満の場合は、パウダー状態を維持しにくくなる傾向がある。また、40質量%を超える場合は、吐出されたパウダーに摩擦を加えてもしみ出しにくく、ワックス状やクリーム状に変化しにくくなる傾向がある。
【0025】
前記溶媒は、後述する有効成分を溶解する溶剤として用いられる。溶媒としては、水、アルコール類などの水性溶媒と、炭化水素油、エステル油、シリコーンオイルなどの油性溶媒が挙げられる。
【0026】
前記水としては、精製水、イオン交換水などが挙げられる。また、前記アルコール類としては、エタノール、イソプロパノールなどの1価の低級アルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
【0027】
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどが挙げられる。前記エステル油としては、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどが挙げられる。前記シリコーンオイルとしては、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0028】
なかでも、有効成分を配合しやすく、吐出したパウダーに摩擦を加えたときにしみ出しやすく、ワックス状やクリーム状に変化しやすいという点から水性溶剤を用いることが好ましく、特に水と多価アルコールとの混合物とすることが好ましい。また、前記溶媒として水と多価アルコールの混合物を用いる場合の水と多価アルコールの含有比(質量比)は1/99〜40/60が好ましく、3/97〜30/70がより好ましい。水の含有比が1よりも小さい場合はべたつきやすくなり、40よりも大きい場合は吐出物がパウダー状を維持しにくく、摩擦を加える前にクリーム状に変化してしまいやすくなる傾向がある。
【0029】
担持パウダー中の溶媒の含有量は、50〜95質量%が好ましく、60〜92質量%がより好ましい。溶媒の含有量が50質量%未満の場合は、吐出物に摩擦を加えてもしみ出しにくく、ワックス状やクリーム状に変化しにくくなる傾向がある。また、95質量%を超える場合は、パウダー状を維持しにくく、摩擦を加える前に液状に変化してしまう傾向がある。
【0030】
前記有効成分は、溶媒に溶解して多孔性パウダーに担持され、吐出後、多孔性パウダーからしみ出すことで効果を発揮するという目的で使用される。
【0031】
前記有効成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル/メタクリル酸エチルアミンオキシド)コポリマー、ビニルピロリドン/N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、(アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマー、N−ビニルピロリドン/メタクリルアミド/N−ビニルイミダゾール共重合体、(ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーなどのスタイリング用樹脂;コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、DL−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤;パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノールなどの防腐剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸;パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウムなどの水溶性ビタミン;メントール、カンフルなどの清涼化剤;水溶性香料;などの前述の水性溶媒に溶解する水溶性有効成分、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどの油溶性ビタミン;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルなどの紫外線吸収剤;油溶性香料などの前述の油性溶媒に溶解する親油性有効成分が挙げられる。なかでも担持パウダーに粘性を付与してスプレー状に吐出した場合に飛び散りがなく、付着しやすいという点から、スタイリング用樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
担持パウダー中の有効成分の含有量は、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。有効成分の含有量が1質量%未満の場合は、有効成分の効果が得られにくくなる傾向がある。また、20質量%を超える場合は、担持した有効成分がエアゾール組成物中でしみ出しやすくなる傾向がある。
【0033】
前記担持パウダーは、多孔性パウダー表面の細孔に、溶媒および有効成分が担持されたものである。なお、多孔性パウダーに担持されるとは、多孔性パウダーの細孔に吸着されたものであっても、挿入されたものであってもよい。
【0034】
担持パウダーの製造方法は特に限定されないが、例えば、溶媒に有効成分を溶解または分散させて、これを多孔性パウダーに添加し、ミキサーなどで混合・攪拌することで、多孔性パウダーに溶媒および有効成分を担持させて調製することができる。
【0035】
担持パウダーの含有量は、パウダー含有エアゾール組成物中5〜70質量%であり、7〜60質量%がより好ましい。担持パウダーの含有量が5質量%未満の場合は、パウダーが付着しにくくなる傾向がある。また、70質量%を越える場合は、吐出通路で詰まりやすくなる傾向がある。
【0036】
前記液化ガスは、耐圧容器内では蒸気圧を有する液体であり、噴射剤として作用し、さらに大気圧下に吐出されると気化して吐出物を冷却することができる。
【0037】
液化ガスとしては、親油性液化ガス、親水性液化ガスなどが挙げられる。含有する液化ガスに応じて吐出物の挙動(発泡の有無等)が変化することから、パウダー含有エアゾール組成物の用途・目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
前記親油性液化ガスとしては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エン、トランス−2,3,3,3−テトラフルオロプロパ−1−エンなどのハイドロフルオロオレフィン、前記液化石油ガスとハイドロフルオロオレフィンの混合物などが挙げられる。
【0039】
液化ガスとして親油性液化ガスを用いることで、保存中に担持パウダーから溶媒および有効成分がしみ出すことを効率的に抑制することができ、特に水溶性溶媒と親水性有効成分を用いたときはその効果が高い。また、吐出物が吐出直後は冷却されたパウダー状であり、これに摩擦力や体熱が加わることで、担持パウダー中の溶媒と有効成分がしみ出してワックス状や、クリーム状に変化するという挙動を示す。なお、発泡はほとんどしない。
【0040】
前記親水性液化ガスとしては、ジメチルエーテルが挙げられる。
【0041】
液化ガスとして親水性液化ガスを用いた場合の吐出物は、吐出直後は冷却されたパウダー状であり、その後、摩擦力や体熱により担持パウダー中の溶媒や有効成分がしみ出すことで発泡し、さらに破泡によりワックス状や、クリーム状に変化するという挙動を示す。
【0042】
液化ガスの含有量は、パウダー含有エアゾール組成物中30〜95質量%であり、40〜93質量%がより好ましい。液化ガスの含有量が30質量%未満の場合は、吐出通路で詰まりやすくなる傾向がある。また、95質量%を越える場合は、吐出したときにパウダーが付着しにくく、舞い散りやすくなる傾向がある。
【0043】
本発明のパウダー含有エアゾール組成物は、用途や目的などに応じて、前記の担持パウダー(多孔性パウダー、溶媒、有効成分)および液化ガス以外に、界面活性剤、油分、有効成分などを含有することができる。なお、これらの成分は担持パウダーや液化ガスと共に用いることができる。
【0044】
前記界面活性剤は、エアゾール組成物中での担持パウダーの分散性を調整するなどの目的で用いられる。
【0045】
前記界面活性剤としては、例えば、POEモノラウレート、POEモノステアレート、POEモノオレエートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、POEソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、POEグリセリルモノステアレート、POEグリセリルモノオレエートなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットテトラステアレート、POEソルビットテトラオレエートなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、デカグリセリルモノラウレート、デカグリセリルモノミリステート、デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルモノオレエート、デカグリセリルジオレエート、ヘキサグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリルモノステアレート、ヘキサグリセリルモノオレエートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、およびこれらの混合物などの非イオン性界面活性剤、ベヘントリモニウムメトサルフェートなどのカチオン性界面活性剤、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、などのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤、サーファクチンナトリウム、シクロデキストリン、水添酵素大豆レシチンなどの天然系界面活性剤、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸カリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウムおよびN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸、N−ステアロイル−L−グルタミン酸などのN−アシルグルタミン酸、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウムなどのN−アシルグリシン塩、N−ヤシ油脂肪酸アシル−DL−アラニントリエタノールアミンなどのN−アシルアラニン塩などのアミノ酸系界面活性剤などが挙げられる。
【0046】
前記界面活性剤を含有する場合の含有量は、パウダー含有エアゾール組成物中に0.1〜10質量%であることが好ましく、さらには0.5〜8質量%であることが好ましい。前記界面活性剤の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は界面活性剤を含有する効果が得られにくくなる傾向がある。また、10質量%よりも多い場合は界面活性剤が皮膚上に残りやすく、べたつくなど使用感が悪くなる傾向がある。
【0047】
前記油分は、エアゾール組成物中での担持パウダーの分散性を調整する、吐出したパウダーを皮膚に付着しやすくするなどの目的で用いられる。前記油分としては、前述の多孔性パウダーに担持させることができる溶媒として挙げた炭化水素油、エステル油、シリコーンオイルを用いてもよく、さらには脂肪酸、高級アルコール、ワックスなどの固形油分を用いることができる。
【0048】
前記油分を含有する場合の含有量は、パウダー含有エアゾール組成物中0.1〜10質量%であることが好ましく、さらには0.5〜8質量%であることが好ましい。前記油分の含有量が0.1質量%よりも少ない場合は前記油分の効果が得られにくくなる傾向がある。また、10質量%よりも多い場合は乾燥性が悪くなる、べたつきやすくなるなど使用感が低下する傾向がある。
【0049】
前記有効成分は、多孔性パウダーが担持する有効成分による効果以外の効果を得るなどの目的で用いられる。前記有効成分としては、前述の多孔性パウダーに担持させることができる有効成分として挙げた親水性有効成分、親油性有効成分を用いてもよく、さらにはパウダー状の有効成分を用いてもよい。
【0050】
前記パウダー状の有効成分としては、例えば、クロロヒドロキシアルミニウムなどの制汗剤、酸化チタンなどの紫外線散乱剤などが挙げられる。
【0051】
前記有効成分を含有する場合の含有量は、多孔性パウダーが担持する有効成分の含有量以外に、パウダー含有エアゾール組成物中に1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましい。有効成分の含有量が1質量%未満の場合は、有効成分を含有する効果が得られない傾向がある。また、10質量%を超える場合は、人体に使用する場合、有効成分によっては人体に悪影響をあたえる可能性がある。
【0052】
本発明のパウダー含有エアゾール組成物は、例えば、耐圧容器(エアゾール容器)に担持パウダーを充填してバルブを固着し、バルブのステムから液化ガスを充填することにより調製することができる。
【0053】
なお、耐圧容器内の圧力を調整するために、炭酸ガス、チッ素ガス、圧縮空気、酸素ガス、亜酸化窒素ガスなど圧縮ガスなどをさらに充填してもよい。
【0054】
本発明のパウダー含有エアゾール組成物は、多量の液化ガス中にパウダーを分散させているにも関わらず、吐出時のパウダーの舞い散りを抑制することができ、吐出直後は冷却されたパウダー状であるが、摩擦力や体熱が加わることで、ワックス状ないしはクリーム状に変化するため、スタイリング剤、トリートメント剤、カラーリング剤などの頭髪用吐出製品や、皮膚保護剤などのスキンケア用吐出製品として好適に用いることができる。
【0055】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
評価方法を下記に示す。
【0057】
(1)外観(パウダー)
表1に示す担持パウダーを調製し、外観を目視で観察した。
○:サラサラのパウダー状になった。
△:ややしっとりしたパウダー状になった。
×:水溶液がしみ出し、パウダー状にならなかった。
【0058】
(2)吐出状態
透明なガラス製の耐圧容器(満注量100ml)に表2に示すエアゾール組成物を40g充填したエアゾール製品を25℃の恒温水槽中に1時間保持した。その後、エアゾール製品を振とうすることで担持パウダーと液化ガスが均一に分散させたものを手のひらに吐出し、吐出状態を評価した。
○ :舞い散りが無く、手のひらに均一に付着した。
×1:パウダーがほとんど付着せずに舞い散った。
×2:吐出通路内で詰まってしまい吐出できなかった。
【0059】
(3)使用感
前記(2)と同様に25℃の恒温水槽中に1時間保持したエアゾール製品を用い、手のひらに1g吐出し、吐出直後と、摩擦を加えたときの吐出物の状態を評価した。
○1:吐出直後は冷たいパウダー状で、摩擦を加えるとクリーム状に変化した。
○2:吐出直後は冷たいパウダー状で、体温により一部が発泡し、摩擦を加えるとクリーム状に変化した。
△1:吐出直後に一部がクリーム状に変化し、摩擦を加えることで全てクリーム状に変化した。
△2:吐出直後はパウダー状で、摩擦を加えても一部がパウダー状のまま変化しなかった。
×1:付着量が少なすぎ、摩擦を加えてもクリーム状に変化しなかった。
×2:吐出できなかったため、評価しなかった。
×3:多孔性パウダーに溶媒および有効成分が担持できなかったため、評価しなかった。
【0060】
担持パウダーの調製
表1に示す配合に従い、溶媒に有効成分を溶解し、得られた水溶液を多孔性パウダーと共にミキサーにより混合・攪拌することで担持パウダーA〜Fを調製した。得られた担持パウダーについて前記(1)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
*1:アエロジルR202(商品名)、日本アエロジル株式会社製、嵩密度60g/l、BET比表面積100m2/g、平均粒子径14nm
*2:クラウンタルクPP(商品名)、松村産業株式会社製、嵩密度340g/l、
BET比表面積2m2/g、
*3:PVA−6450(商品名)、大阪有機化学工業株式会社製
【0062】
実施例1〜8、比較例1〜6
表1の担持パウダーおよび液化ガスを表2および表3に示す処方で耐圧容器に充填し、試験用エアゾール製品を製造した。得られた試験用エアゾール製品について前記(2)および(3)の評価を行った。評価結果を表2および表3に示す。
【0063】
【表2】
*4:ノルマルブタンとイソブタンの混合物(25℃での蒸気圧が0.15MPa)
*5ジメチルエーテル
【0064】
【表3】
【0065】
処方例1 ヘアワックス
下記のパウダー含有エアゾール組成物1をアルミニウム製耐圧容器に充填し、バルブを取り付け、エアゾール製品を製造した。
【0066】
<エアゾール組成物1>
表1の担持パウダーA 30.0
油溶性香料 0.1
LPG(*4) 69.9
合計(質量部) 100.0
【0067】
処方例2 スキンケアクリーム
下記のパウダー含有エアゾール組成物2をアルミニウム製耐圧容器に充填し、バルブを取り付け、エアゾール製品を製造した。
【0068】
<エアゾール組成物2>
表1の担持パウダーA 30.0
水溶性香料 0.1
1,3−ブチレングリコール 1.0
DME(*5) 68.9
合計(質量部) 100.0
【0069】
処方例3 スキンケアクリーム
下記のパウダー含有エアゾール組成物3をアルミニウム製耐圧容器に充填し、バルブを取り付け、エアゾール製品を製造した。
【0070】
<エアゾール組成物3>
表1の担持パウダーA 30.0
水溶性香料 0.1
l−メントール 0.1
DME(*5) 69.8
合計(質量部) 100.0
【0071】
前記の処方例1〜3で得られたエアゾール製品について前記(2)および(3)の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0072】
【表4】