特許第5997524号(P5997524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 5997524-高純度水酸化カルシウムの製造方法 図000006
  • 5997524-高純度水酸化カルシウムの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997524
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】高純度水酸化カルシウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/16 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   C01F11/16
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-155241(P2012-155241)
(22)【出願日】2012年7月11日
(65)【公開番号】特開2014-15368(P2014-15368A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】598039965
【氏名又は名称】白石工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信濃 豊起
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126772(JP,A)
【文献】 特開2010−184841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)石灰石を焼成して得られる生石灰に水を反応させるとともにマグネシウム塩を添加して、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーを調製する工程と、
B)マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーに、pH9.5〜11.5の範囲内となるように酸を添加する工程と、
C)酸を添加して得られた溶液を濾過して、濾液を得る工程と、
D)濾液にアルカリ金属水酸化物を添加し、水酸化カルシウムを析出させる工程と、
E)析出した水酸化カルシウムを濾過することにより、水酸化カルシウムを分離する工程とを備えることを特徴とする高純度水酸化カルシウムの製造方法。
【請求項2】
マグネシウムの添加量が、水酸化カルシウム及びマグネシウム塩の合計量に対し、0.05〜1質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の高純度水酸化カルシウムの製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の高純度水酸化カルシウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な工程で不純物を低減することができる高純度水酸化カルシウムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水酸化カルシウムは、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、硝酸カルシウムなどの原料として用いられており、これらのカルシウム化合物を電子部品や光学材料の原料として使用する場合には、不純物金属の含有量が極めて低いものが求められている。
【0003】
このため、水酸化カルシウムとしても不純物金属の含有量が少ない高純度水酸化カルシウムが求められている。
【0004】
本出願人は、特許文献1において、水酸化カルシウムスラリーに、pH9.5〜11.5の範囲内となるように硝酸を添加した後、これを濾過し、濾液に水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加して、水酸化カルシウムを析出させる方法を提案している。
【0005】
特許文献2においては、水酸化カルシウムスラリーに塩化マグネシウムを反応させて水酸化マグネシウムを塩化カルシウムとし、得られた塩化カルシウムに、反応率が5〜20モル%となるように水酸化ナトリウムを反応させて水酸化カルシウムを沈殿させ、濾液または上澄み液として精製塩化カルシウム水溶液を調製し、この塩化カルシウムに水酸化ナトリウムを反応させて高純度水酸化カルシウムを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−126772号公報
【特許文献2】特開2010−184841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法で、高純度水酸化カルシウムを収率良くかつ簡易な工程で、製造することができる。しかしながら、不純物をさらに低減することができる高純度水酸化カルシウムの製造方法が求められている。
【0008】
特許文献2に記載の方法では、塩化カルシウムを精製する段階で、収率が低下し、また製造工程が複雑になるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、不純物としてのマグネシウム濃度を、収率良くかつ簡易な工程で低減することができる高純度水酸化カルシウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の高純度水酸化カルシウムの製造方法は、A)石灰石を焼成して得られる生石灰に水を反応させるとともにマグネシウム塩を添加して、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーを調製する工程と、B)マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーに、pH9.5〜11.5の範囲内となるように酸を添加する工程と、C)酸を添加して得られた溶液を濾過して、濾液を得る工程と、D)濾液にアルカリ金属水酸化物を添加し、水酸化カルシウムを析出させる工程と、E)析出した水酸化カルシウムを濾過することにより、水酸化カルシウムを分離する工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
本発明においては、マグネシウム塩を添加して、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーを調製している。マグネシウム塩は、水酸化カルシウムスラリーを調製した後の水酸化カルシウムスラリーに添加してもよいし、あらかじめ生石灰にマグネシウム塩を添加しておき、これに水を反応させて、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーを調製してもよい。
【0012】
マグネシウム塩を添加して、水酸化カルシウムスラリーにおけるマグネシウム含有量を増加させておくことにより、最終的に得られる水酸化カルシウム中のマグネシウム濃度を減少させることができる。
【0013】
マグネシウムの添加量は、水酸化カルシウム及びマグネシウム塩の合計量に対し、0.05〜1質量%の範囲であることが好ましい。マグネシウムの添加量が少ないと、不純物としてのマグネシウム濃度を低減させる本発明の効果が十分に得られない場合がある。また、マグネシウムの添加量が1質量%よりも多くなっても、マグネシウムの添加量に比例してマグネシウム濃度を低減させる効果が得られない場合がある。
【0014】
本発明においては、水酸化カルシウムスラリーに、pH9.5〜11.5の範囲となるように酸を添加している。
【0015】
pH9.5〜11.5の範囲内となるように酸を添加しているので、不純物金属の含有量の少ない水酸化カルシウムを、収率良く製造することができる。pHが9.5未満であると、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)などの不純物の含有量が高くなる。pHが11.5を越えると、水酸化カルシウムを十分に溶解することができず、最終的な高純度水酸化カルシウムの収率が低下する。
【0016】
酸としては、硝酸、塩酸などの無機酸、酢酸などの有機酸を用いることができ、水溶性で、かつカルシウム塩も水溶性である酸が好ましい。特に、硝酸が好ましく用いられる。
【0017】
また、本発明の工程Dにおいては、水酸化カルシウムを酸によって溶解させた溶液にアルカリ金属水酸化物を添加し、水酸化カルシウムを析出させている。このアルカリ金属水酸化物は水酸化カリウム、水酸化リチウムなどでも良いが、反応性が良く安価な水酸化ナトリウムが望ましい。
【0018】
本発明の工程Eにおいては、析出した水酸化カルシウムを濾過することにより、水酸化カルシウムを分離している。本発明においては、濾過する前に、水酸化カルシウムが析出した溶液を60℃以上に加熱することが好ましい。水酸化カルシウムは、温度が上昇すると、溶解度が低下する。一方、ストロンチウム(Sr)などの金属化合物は、温度が上がると溶解度が上がるので、50℃以上に加熱することにより、Srなどの金属化合物をさらに溶解させることができ、濾過することによりこれらを濾液中に除去することができる。
【0019】
本発明においては、工程Eで得られた水酸化カルシウムを再び水中に分散させて水酸化カルシウムの分散液とし、この分散液を50℃以上に加熱し、濾過する工程を少なくも1回以上繰り返すことが好ましい。これにより、さらにストロンチウムなどの金属化合物を除去することができる。
【0020】
工程E、及び工程Eの後の上記工程における加熱温度は、50℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは60℃以上であり、80℃以下であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、工程Cにおける濾過として、中空糸膜などの濾過膜(以下、単に「濾過膜」という)を用いてもよい。濾過膜を用いることにより、Si、Alなどの不純物金属をさらに低減することができる。この場合、濾過する溶液のpHが高いため、濾過膜の膜の材質としては、例えば、PS(ポリスルフォン)製のものを用いることが好ましい。
【0022】
本発明においては、工程Eにおける濾過として、濾過膜を用いてもよい。濾過膜を用いることにより、さらに不純物濃度を低減させることができ、より高純度な水酸化カルシウムを製造することができる。
【0023】
本発明の工程Dにおいて添加するアルカリ金属水酸化物は、水溶液として添加することが好ましい。アルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、0.5モル/リットル以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.25モル/リットル以下である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、不純物としてのマグネシウム濃度を、収率良くかつ簡易な工程で低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に従い、マグネシウムを水酸化カルシウムスラリーに添加した場合の水酸化カルシウムスラリー(原料)中のマグネシウム含有量と精製水酸化カルシウム(製品)中の含有量の関係を示す図。
図2】水酸化カルシウムスラリーに鉄またはアルミニウムを添加した場合の水酸化カルシウムスラリー(原料)中の鉄またはアルミニウムの含有量と精製水酸化カルシウム(製品)中の鉄またはアルミニウムの含有量の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の高純度水酸化カルシウムの製造方法においては、工程Aにおいて、石灰石を焼成して得られる生石灰(酸化カルシウム)に水を反応させて水酸化カルシウムスラリーを調製する。例えば、石灰石をキルン内で約1000℃で焼成して、生石灰を生成し、この生石灰に約10倍量の熱水を投入し、30分間攪拌させることにより、水酸化カルシウムスラリーを調製することができる。上記の反応を、化学反応式で示すと以下の通りである。
【0027】
CaCO→CaO+CO
CaO+HO→Ca(OH)
本発明においては、上述のように、マグネシウム塩を添加して、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーを調製する。マグネシウム塩は、上述のように、水酸化カルシウムスラリーを調製する前に添加してもよいし、水酸化カルシウムスラリーを調製した後に添加してもよい。マグネシウム塩は、水溶性であっても非水溶性であってもよいが、好ましくは水溶性のマグネシウム塩を用いる。マグネシウム塩としては、例えば、硝酸マグネシウム、塩酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0028】
マグネシウムの添加量は、水酸化カルシウム及びマグネシウム塩の合計量に対し、0.05質量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜1質量%の範囲内であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%の範囲内である。マグネシウムの添加量が少なすぎると、最終的に得られる水酸化カルシウムにおけるマグネシウム濃度を十分に低減することができない場合があり、マグネシウムの添加量が多すぎると、マグネシウムの添加量に比例した効果が得られない場合がある。
【0029】
次に、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムのスラリーに、pH9.5〜11.5の範囲となるように硝酸などの酸を添加する。酸として硝酸を用いる場合、これにより、水酸化カルシウムと硝酸が反応して、硝酸カルシウムとなり水溶液中に溶解する。化学反応式で示すと以下の通りである。
【0030】
Ca(OH)+2HNO→Ca(NO+2H
硝酸カルシウムは水に易溶性であるため、水溶液中に溶解するが、pHを9.5〜11.5の範囲内としているので、鉄(Fe)やマグネシウム(Mg)などの不純物金属は、水酸化物の状態を維持しており、水に難溶性である。従って、次の工程Cで硝酸を添加して得られた溶液を濾過することにより、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)などの不純物金属を除去することができる。本発明においては、水酸化カルシウムスラリー中のマグネシウム量を増加させておくことにより、この工程において除去することができるマグネシウムの量を増加させることができるものと思われる。
【0031】
また、工程Cにおいて、濾過として、濾過膜を用いることにより、さらにSi、Alなどの不純物金属を高い精度で除去することができる。
【0032】
工程Dにおいては、濾液に、水酸化ナトリウムを添加し、水酸化カルシウムを析出させる。化学反応式で示すと、以下の通りである。なお、水酸化ナトリウムはpHが12.0以上となるまで添加することが好ましく、さらにはpHが12.5〜13.0の範囲となるまで添加することが好ましい。
【0033】
Ca(NO+2NaOH→Ca(OH)+2NaNO
次に、工程Eで、水酸化カルシウムが析出した溶液を50℃以上に加熱し、濾過することにより、水酸化カルシウムを分離する。水酸化カルシウムは、温度が上昇すると、溶解度が低下する。一方、ストロンチウム(Sr)などの金属化合物は、温度が上昇すると溶解度も高くなる。また、副生成物である硝酸ナトリウムも、温度が上昇すると、溶解度が高くなる。このため、工程Eにおいて、水酸化カルシウムが析出した溶液を50℃以上に加熱することにより、水酸化カルシウムの溶解度を低下させる一方で、ストロンチウムなどの不純物金属の化合物及び硝酸ナトリウムの溶解度を高めた状態で濾過することができ、効率的に不純物を除去することができる。
【0034】
また、工程Eで得られた水酸化カルシウムを再び水中に分散させて水酸化カルシウムの分散液とし、この分散液を50℃以上に加熱し、濾過する工程を少なくとも1回以上繰り返すことにより、さらに不純物の含有量を少なくすることができる。
【0035】
また、工程Eにおいて、濾過として、濾過膜を用いることにより、より効率的に濾過することができ、さらに不純物の含有量を少なくすることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実験1>
(実施例1〜4及び比較例1)
超高速昇温電気炉を用い、石灰石を1000℃で3時間焼成して生石灰を生成した。その生石灰150gに80℃の純水1500gを加え、30分間攪拌しながら水化して水酸化カルシウムスラリーを調製した。水酸化カルシウムスラリー中の水酸化カルシウムについて、不純物金属の含有量を、ICP−AES分析法(島津製作所製、ICPS−8100)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例1〜4においては、水酸化カルシウムスラリーに、硝酸マグネシウムを添加し、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーを調製した。実施例1においては、水酸化カルシウム及び硝酸マグネシウムの合計量に対し、マグネシウムの添加量が500ppm(0.05質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。実施例2においては、マグネシウムの添加量が1000ppm(0.1質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。実施例3においては、マグネシウムの添加量が4000ppm(0.4質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。実施例4においては、マグネシウムの添加量が9000ppm(0.9質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。
【0039】
比較例1においては硝酸マグネシウムを添加せずに、水化して得られた水酸化カルシウムスラリーをそのまま用いた。表2に、水酸化カルシウムスラリー(原料)に対するマグネシウム添加量(Mg添加量)と、水酸化カルシウムスラリー(原料)中におけるマグネシウム含有量(Mg含有量)を示した。
【0040】
上記のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1の各水酸化カルシウムスラリーに、室温下で、60%硝酸を攪拌しながらpHが10.0になるまで添加した。
【0041】
得られた各溶液を、濾紙で濾過し、濾液を得た。なお、濾紙としては、定量濾紙5C(ADVANTEC社製、直径110mm)を用いた。
【0042】
得られた各濾液について、中空糸膜モジュール(膜材質:ポリスルフォン、膜内径1.4mm、分画分子量10000)を用いて、濾過し、濾液を得た。
【0043】
得られた各濾液に、1モル/リットルの濃度の水酸化ナトリウム水溶液をpH12.5になるまで添加し、水酸化カルシウムを析出させた。
【0044】
次に、水酸化カルシウムが析出した各溶液を、80℃に加熱した後、上記と同様の濾紙を用いて、濾過した。濾過した後、濾紙上に残った水酸化カルシウムを乾燥させて、実施例1〜4及び比較例1の高純度水酸化カルシウムを採取した。
【0045】
〔高純度水酸化カルシウムの不純物含有量の測定〕
実施例1〜4及び比較例1で得られた高純度水酸化カルシウム中(精製水酸化カルシウム:製品)の不純物含有量を測定した。Na、Mg、Fe、Sr、Si、及びAlについては、上記と同様のICP−AES分析法により測定した。測定結果を表2に示す。また、原料中のMg含有量と製品中のMg含有量の関係を図1に示す。
【0046】
〔収率〕
実施例1〜4及び比較例1において、最終的に得られた高純度水酸化カルシウム(精製水酸化カルシウム:製品)の収率を、水酸化カルシウムスラリー(原料)中の水酸化カルシウムに対して算出し、表2に収率として示した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、水酸化カルシウムスラリーにマグネシウムを添加した実施例1〜4においては、水酸化カルシウムスラリーにマグネシウムを添加していない比較例1に比べ、最終的に得られる精製水酸化カルシウム中のマグネシウム含有量を低減させることができる。
【0049】
実施例1〜4から明らかなように、マグネシウムの添加量が0.05質量%〜1質量%の範囲内であるときは、水酸化カルシウムに添加するマグネシウム添加量を増加することにより、最終的に得られる精製水酸化カルシウムにおけるマグネシウムの含有量を低減できることがわかる。この実施例では、pH10.0となるように水酸化カルシウムスラリーに酸を添加しているが、本発明のこのような効果は、pH9.5〜11.5の範囲内において得られることを確認している。
【0050】
<参考実験1>
(参考例1〜5)
生石灰に純水を加えて得られた上記実施例と同様の水酸化カルシウムスラリーに、硝酸マグネシウムに代えて、硝酸鉄(III)を添加し、表3に示す参考例2〜5の水酸化カルシウムスラリーを得た。参考例1においては、比較例1と同じ水酸化カルシウムスラリーを用いた。
【0051】
参考例1〜5の水酸化カルシウムスラリーに上記実施例と同様にして、硝酸を添加した後、濾過して、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、高純度水酸化カルシウムを得た。
【0052】
得られた高純度水酸化カルシウムについて、上記と同様にして、不純物含有量及び収率を求め、その結果を表3に示した。また、原料中のFe含有量と製品中のFe含有量の関係を図2に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示すように、水酸化カルシウムスラリーに、鉄を添加した場合には、鉄の添加量が増えるに従い、得られる高純度水酸化カルシウム(精製水酸化カルシウム)における不純物としての鉄の濃度が増加しており、本発明の効果は得られていない。
【0055】
<参考実験2>
(参考例6〜10)
生石灰に純水を加えて得られた上記実施例と同様の水酸化カルシウムスラリーに、硝酸マグネシウムに代えて、硝酸アルミニウムを添加し、表4に示す参考例7〜10の水酸化カルシウムスラリーを得た。参考例6においては、比較例1と同じ水酸化カルシウムスラリーを用いた。
【0056】
参考例6〜10の水酸化カルシウムスラリーに上記実施例と同様にして、硝酸を添加した後、濾過して、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、高純度水酸化カルシウムを得た。
【0057】
得られた高純度水酸化カルシウムについて、上記と同様にして、不純物含有量及び収率を求め、その結果を表4に示した。また、原料中のAl含有量と製品中のAl含有量の関係を図2に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示すように、水酸化カルシウムスラリーに、アルミニウムを添加した場合には、アルミニウムの添加量が増えるに従い、得られる高純度水酸化カルシウム(精製水酸化カルシウム)における不純物としてのアルミニウムの濃度が増加しており、本発明の効果は得られていない。
【0060】
以上の参考実験1及び参考実験2の結果から明らかなように、水酸化カルシウムスラリーに、不純物を添加することにより、最終物としての高純度水酸化カルシウム中における不純物濃度を低減することができるという効果は、不純物がマグネシウムである場合に得られる特有の効果であることがわかる。
図1
図2