【実施例】
【0036】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実験1>
(実施例1〜4及び比較例1)
超高速昇温電気炉を用い、石灰石を1000℃で3時間焼成して生石灰を生成した。その生石灰150gに80℃の純水1500gを加え、30分間攪拌しながら水化して水酸化カルシウムスラリーを調製した。水酸化カルシウムスラリー中の水酸化カルシウムについて、不純物金属の含有量を、ICP−AES分析法(島津製作所製、ICPS−8100)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例1〜4においては、水酸化カルシウムスラリーに、硝酸マグネシウムを添加し、マグネシウムを含有させた水酸化カルシウムスラリーを調製した。実施例1においては、水酸化カルシウム及び硝酸マグネシウムの合計量に対し、マグネシウムの添加量が500ppm(0.05質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。実施例2においては、マグネシウムの添加量が1000ppm(0.1質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。実施例3においては、マグネシウムの添加量が4000ppm(0.4質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。実施例4においては、マグネシウムの添加量が9000ppm(0.9質量%)となるように、硝酸マグネシウムを添加した。
【0039】
比較例1においては硝酸マグネシウムを添加せずに、水化して得られた水酸化カルシウムスラリーをそのまま用いた。表2に、水酸化カルシウムスラリー(原料)に対するマグネシウム添加量(Mg添加量)と、水酸化カルシウムスラリー(原料)中におけるマグネシウム含有量(Mg含有量)を示した。
【0040】
上記のようにして得られた実施例1〜4及び比較例1の各水酸化カルシウムスラリーに、室温下で、60%硝酸を攪拌しながらpHが10.0になるまで添加した。
【0041】
得られた各溶液を、濾紙で濾過し、濾液を得た。なお、濾紙としては、定量濾紙5C(ADVANTEC社製、直径110mm)を用いた。
【0042】
得られた各濾液について、中空糸膜モジュール(膜材質:ポリスルフォン、膜内径1.4mm、分画分子量10000)を用いて、濾過し、濾液を得た。
【0043】
得られた各濾液に、1モル/リットルの濃度の水酸化ナトリウム水溶液をpH12.5になるまで添加し、水酸化カルシウムを析出させた。
【0044】
次に、水酸化カルシウムが析出した各溶液を、80℃に加熱した後、上記と同様の濾紙を用いて、濾過した。濾過した後、濾紙上に残った水酸化カルシウムを乾燥させて、実施例1〜4及び比較例1の高純度水酸化カルシウムを採取した。
【0045】
〔高純度水酸化カルシウムの不純物含有量の測定〕
実施例1〜4及び比較例1で得られた高純度水酸化カルシウム中(精製水酸化カルシウム:製品)の不純物含有量を測定した。Na、Mg、Fe、Sr、Si、及びAlについては、上記と同様のICP−AES分析法により測定した。測定結果を表2に示す。また、原料中のMg含有量と製品中のMg含有量の関係を
図1に示す。
【0046】
〔収率〕
実施例1〜4及び比較例1において、最終的に得られた高純度水酸化カルシウム(精製水酸化カルシウム:製品)の収率を、水酸化カルシウムスラリー(原料)中の水酸化カルシウムに対して算出し、表2に収率として示した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、水酸化カルシウムスラリーにマグネシウムを添加した実施例1〜4においては、水酸化カルシウムスラリーにマグネシウムを添加していない比較例1に比べ、最終的に得られる精製水酸化カルシウム中のマグネシウム含有量を低減させることができる。
【0049】
実施例1〜4から明らかなように、マグネシウムの添加量が0.05質量%〜1質量%の範囲内であるときは、水酸化カルシウムに添加するマグネシウム添加量を増加することにより、最終的に得られる精製水酸化カルシウムにおけるマグネシウムの含有量を低減できることがわかる。この実施例では、pH10.0となるように水酸化カルシウムスラリーに酸を添加しているが、本発明のこのような効果は、pH9.5〜11.5の範囲内において得られることを確認している。
【0050】
<参考実験1>
(参考例1〜5)
生石灰に純水を加えて得られた上記実施例と同様の水酸化カルシウムスラリーに、硝酸マグネシウムに代えて、硝酸鉄(III)を添加し、表3に示す参考例2〜5の水酸化カルシウムスラリーを得た。参考例1においては、比較例1と同じ水酸化カルシウムスラリーを用いた。
【0051】
参考例1〜5の水酸化カルシウムスラリーに上記実施例と同様にして、硝酸を添加した後、濾過して、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、高純度水酸化カルシウムを得た。
【0052】
得られた高純度水酸化カルシウムについて、上記と同様にして、不純物含有量及び収率を求め、その結果を表3に示した。また、原料中のFe含有量と製品中のFe含有量の関係を
図2に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3に示すように、水酸化カルシウムスラリーに、鉄を添加した場合には、鉄の添加量が増えるに従い、得られる高純度水酸化カルシウム(精製水酸化カルシウム)における不純物としての鉄の濃度が増加しており、本発明の効果は得られていない。
【0055】
<参考実験2>
(参考例6〜10)
生石灰に純水を加えて得られた上記実施例と同様の水酸化カルシウムスラリーに、硝酸マグネシウムに代えて、硝酸アルミニウムを添加し、表4に示す参考例7〜10の水酸化カルシウムスラリーを得た。参考例6においては、比較例1と同じ水酸化カルシウムスラリーを用いた。
【0056】
参考例6〜10の水酸化カルシウムスラリーに上記実施例と同様にして、硝酸を添加した後、濾過して、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、高純度水酸化カルシウムを得た。
【0057】
得られた高純度水酸化カルシウムについて、上記と同様にして、不純物含有量及び収率を求め、その結果を表4に示した。また、原料中のAl含有量と製品中のAl含有量の関係を
図2に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示すように、水酸化カルシウムスラリーに、アルミニウムを添加した場合には、アルミニウムの添加量が増えるに従い、得られる高純度水酸化カルシウム(精製水酸化カルシウム)における不純物としてのアルミニウムの濃度が増加しており、本発明の効果は得られていない。
【0060】
以上の参考実験1及び参考実験2の結果から明らかなように、水酸化カルシウムスラリーに、不純物を添加することにより、最終物としての高純度水酸化カルシウム中における不純物濃度を低減することができるという効果は、不純物がマグネシウムである場合に得られる特有の効果であることがわかる。