(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放電電極は、前記基板からの距離Lが距離L1よりも短い距離L2となる位置に設置され、前記距離L1は、針状の先端から前記基板に対して下ろした垂線の足が前記照射領域の中央と一致する位置に放電電極が設置されたときに前記照射領域に吸着する粒子量が最も多くなる距離である、請求項1〜3のいずれかに記載の粒子検出装置。
前記検出機構は、加熱前後の前記照射領域からの蛍光の変化量に基づいて前記照射領域に存在する生物由来の粒子を検出する、請求項1〜4のいずれかに記載の粒子検出装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】加熱前後における生物由来の粒子の蛍光強度の変化と、加熱前後における粉塵の蛍光強度の変化とを示すグラフである。
【
図2】生物由来の粒子を検出する捕集工程を示す図である。
【
図3】生物由来の粒子を検出する蛍光測定工程(加熱前)を示す図である。
【
図4】生物由来の粒子を検出する加熱工程を示す図である。
【
図5】生物由来の粒子を検出する蛍光測定工程(加熱後)を示す図である。
【
図6】生物由来の粒子を検出するリフレッシュ工程を示す図である。
【
図7】加熱前後の蛍光強度の増大量△Fと、生物由来の粒子濃度との関係を示すグラフである。
【
図8】第1の実施の形態にかかる粒子検出装置の構成の具体例を示す図である。
【
図9】粒子検出装置における放電電極の向きを説明するための図である。
【
図10】粒子検出装置における放電電極の向きを説明するための図である。
【
図11】粒子検出装置における放電電極の向きを説明するための図である。
【
図12】粒子検出装置の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【
図13】捕集室に導入された空気中の生物由来の粒子量を算出するための具体的な動作を表わしたフローチャートである。
【
図14】蛍光の増大量と生物由来の粒子量(濃度)との対応関係の具体例を表わした図である。
【
図15】粒子検出装置での捕集治具表面のダメージや付着物を抑える効果を説明するための図である。
【
図16】放電電極の針先直下が照射領域の中央にある場合の捕集治具の照射領域中央付近の顕微鏡写真である。
【
図17】放電電極の針先直下が照射領域の中央にあるが、針先の向きが捕集治具表面と平行になるように設置した場合の捕集治具の照射領域中央付近の顕微鏡写真である。
【
図18】第2の実施の形態にかかる粒子検出装置の構成の具体例を示す図である。
【
図19】捕集治具表面への垂線の足が照射領域の中央と一致する場合の放電電極の配置を説明するための図である。
【
図20】粒子検出装置における放電電極の配置を説明するための図である。
【
図21】粒子検出装置における放電電極の配置を説明するための図である。
【
図22】粒子検出装置における放電電極の配置を説明するための図である。
【
図23】放電電極の位置と捕集能力との関係を確認するための実験での、放電電極の第1の位置を説明するための図である。
【
図24】第1の位置として、放電電極が
図23に示された位置に設置されたときの捕集治具での捕集量の分布を表わした図である。
【
図25】第2の位置として、放電電極が照射領域の中央の直上に設置されたときの捕集治具での捕集量の分布を表わした図である。
【
図26】放電電極を先端が照射領域の中央の直上となるよう設置した場合の照射領域の中央付近の顕微鏡写真である。
【
図27】放電電極の先端の直下が捕集治具上であって照射領域外にあるように設置した場合の照射領域の中央付近の顕微鏡写真である。
【
図28】第1の変形例での放電電極の配置を説明するための図である。
【
図29】第1の変形例での放電電極の配置を説明するための図である。
【
図30】放電電極を先端の向きを捕集治具の表面に対して垂直として垂線の足が照射領域外となる位置に配置した場合の照射領域中央付近の顕微鏡写真である。
【
図31】放電電極の方向を捕集治具表面と平行として垂線の足が照射領域外となる位置に配置した場合の照射領域中央付近の顕微鏡写真である。
【
図32】放電電極の設置態様を変化させて捕集動作を行なったときの、捕集治具表面から迷光量の測定結果を表わした図である。
【
図33】捕集治具表面から放電電極の先端までを距離Lを説明するための図である。
【
図34】捕集治具表面から放電電極の先端までを距離Lを説明するための図である。
【
図35】捕集治具表面から放電電極の先端までを距離Lを説明するための図である。
【
図36】捕集治具表面から放電電極の先端までを距離Lを説明するための図である。
【
図37】捕集治具表面から放電電極の先端までを距離Lを変化させて照射領域での捕集能力(捕集密度)を測定する実験における、捕集治具および放電電極の形態を表わした図である。
【
図38】捕集治具および放電電極を
図37の関係として、距離Lを変化させて照射領域での捕集能力(捕集密度)を測定した測定結果を表わす図である。
【
図39】本願発明者が、特開2012−47427号公報で開示した粒子検出装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0016】
[生物由来の粒子の検出原理について]
本実施の形態における粒子検出装置は、花粉や微生物、カビといった生物由来の粒子を検出するための装置である。最初に、本実施の形態における粒子検出装置を用いて生物由来の粒子を検出する原理について説明する。
【0017】
図1は、加熱前後における生物由来の粒子の蛍光強度の変化と、加熱前後における粉塵の蛍光強度の変化とを示すグラフである。
【0018】
空気中に浮遊する生物由来の粒子に紫外光または青色光を照射すると、生物由来の粒子は蛍光を発する。しかしながら、空気中には化学繊維の埃など(以下、粉塵とも言う)の、同様に蛍光を発する粒子が浮遊しており、蛍光を検出するのみでは、生物由来の粒子からのものであるのか粉塵からのものであるのかが区別されない。
【0019】
一方、
図1中に示すように、生物由来の粒子および粉塵に対してそれぞれ加熱処理を施し、加熱前後における蛍光強度(蛍光量)の変化を測定すると、粉塵から発せられる蛍光強度が加熱処理によって変化しないのに対して、生物由来の粒子から発せられる蛍光強度は、加熱処理によって増加する。本実施の形態における粒子検出装置では、生物由来の粒子と粉塵とが混合する粒子に対して、加熱前後の蛍光強度を測定し、その差分を求めることにより、生物由来の粒子の量を特定する。
【0020】
図2〜
図6は、生物由来の粒子を検出する工程を示す図である。
図2を参照して、まず、粒子を捕集基板510に捕集する(捕集工程)。
【0021】
本工程では、捕集基板510を静電針530に対向配置すると共に、捕集基板510および静電針530間に電位差を生じさせる。ファン500の駆動により、空気を捕集基板510に向けて導入すると、空気中に浮遊する粒子600は、静電針530の周囲にて帯電される。帯電された粒子600は、静電気力によって捕集基板510の表面に吸着される。捕集基板510に捕集された粒子600には、生物由来の粒子600Aと、化学繊維の埃などの粉塵600Bとが含まれる。
【0022】
図3を参照して、次に、加熱前の粒子600から発せられる蛍光の強度を測定する(蛍光測定工程(加熱前))。本工程では、半導体レーザなどの発光素子550から捕集基板510に捕集された粒子600に向けて励起光を照射すると共に、粒子600から発せられた蛍光をレンズ560を通じて受光素子565にて受光する。
【0023】
図4を参照して、次に、ヒータ520を用いて、捕集基板510に捕集された粒子600を加熱する。加熱後、捕集基板510を冷却する(加熱工程)。
【0024】
図5を参照して、次に、加熱後の粒子600から発せられる蛍光の強度を測定する(蛍光測定工程(加熱後))。既に説明したように、粉塵600Bから発せられる蛍光強度が加熱処理によって変化しないのに対して、生物由来の粒子600Aから発せられる蛍光強度は、加熱処理によって増加する。このため、本工程では、
図3中の蛍光測定工程(加熱前)で測定された蛍光強度よりも大きい値の蛍光強度が測定される。
【0025】
図7は、加熱前後の蛍光強度の増大量△Fと、生物由来の粒子濃度との関係を示すグラフである。
図7を参照して、加熱前の蛍光強度と加熱後の蛍光強度との差から、蛍光強度の増大量△F1を算出する。予め用意した蛍光強度の増大量△Fと生物由来の粒子濃度Nとの関係に基づき、算出された増大量△F1に対応する生物由来の粒子濃度N1を特定する。なお、増大量△Fと生物由来の粒子濃度Nとの対応関係は、予め実験的に決められる。
【0026】
図6を参照して、次に、生物由来の粒子の検出を終えた粒子600を図示しないブラシで掻き出すことで捕集基板510から除去する(リフレッシュ工程)。
【0027】
[課題の説明]
本実施の形態における粒子検出装置では上述の検出原理を利用して、花粉や微生物、カビといった生物由来の粒子を検出する。
【0028】
発明者は、
図2に表わされたように、捕集基板510に対して静電針530の針先の向く方向を垂直として捕集基板510の法線方向と一致させることで捕集効率は最大となるものの、検出動作を繰り返すことで捕集基板510表面の放電等によるダメージ(損傷等)が発生することを発見した。また、放電時のエネルギーや発生するオゾンなどによって硝酸や硝酸性化合物などの化学物質が捕集基板510に生成され、その表面に付着することも発見した(第1の課題)。
【0029】
捕集基板510表面のダメージや付着物は迷光(ノイズ)を増加させるため、検出精度の低下を招く。
【0030】
また、発明者は、
図2に表わされたように、針先が捕集基板510の照射領域15の中央となるよう静電針530を設置することで、検出領域の捕集物は多くなるものの、捕集基板510表面のダメージや付着物の範囲が中央付近に集中することを発見した(第2の課題)。照射領域15の中央に生じる表面のダメージや付着物は、検出時の影響が大きいため、より検出精度の悪化を招くことになる。
【0031】
[発明の概要]
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、後述するように、針状電極の方向、位置を改善することで、繰り返し捕集動作を行なった場合でも捕集基板表面のダメージや付着物を抑え、検出精度を高精度に保つことのできる粒子検出装置を提供することを目的としている。
【0032】
上記目的を達成するための、本発明にかかる粒子検出装置は、上述の第1の課題および第2の課題を解消する構成とする。具体的に、上記第1の課題を解消するための粒子検出装置について第1の実施の形態で、上記第2の課題を解消するための粒子検出装置について第2の実施の形態で説明する。
【0033】
[第1の実施の形態]
<装置構成>
図8は、第1の実施の形態にかかる粒子検出装置100Aの構成の具体例を示す図である。
【0034】
図8を参照して、第1の実施の形態にかかる粒子検出装置100Aは、検出機構と捕集機構と加熱機構とを含む。
【0035】
詳しくは、
図8を参照して、粒子検出装置100Aは、孔5C’を有する区切り壁である壁5Cで隔てられた、捕集機構の少なくとも一部を含んだ捕集室5Aと、検出機構を含んだ検出室5Bとを備える。捕集室5Aには、捕集機構として針状の放電電極17および捕集治具12が配備され、検出室5Bには、検出機構として発光素子6、受光素子9、および集光レンズ8が配備される。
【0036】
捕集室5Aの放電電極17側および捕集治具12側には、それぞれ、捕集室5A内に空気を導入するための導入孔10および排出孔11が設けられる。
図8に示されるように、導入孔10にはフィルタ(プレフィルタ)10Bが設けられてもよい。
【0037】
排出孔11近傍には空気導入機構としてのファン50Aが設けられる。ファン50Aによって、吸引口からの空気が捕集室5Aに導入される。好ましくは、ファン50Aの駆動機構は、測定検出部40によって制御され、導入する空気の流速が制御される。好ましくは、ファン50Aで導入する空気の流速は1L(リットル)/minから50m
3/minである。ファン50Aは測定検出部40によって制御される図示しない駆動機構により駆動することで、図中の点線矢印で表わされたように、導入孔10から捕集室5A外の空気を捕集室5A内に導入し、捕集室5A内の空気を排出孔11から捕集室5A外に排気する。
【0038】
捕集機構は、針状電極である放電電極17、捕集治具12、および高圧電源2を含む。放電電極17は高圧電源2の正極に電気的に接続される。捕集治具12は高圧電源2の負極に電気的に接続される。放電電極17に用いられる素材としては、インコネル(登録商標)などのニッケル基の超合金、Au(金)、Ag(銀)、Pt(プラチナ)、SUS(Stainless Used Steel:ステンレス鋼)などが挙げられる。
【0039】
捕集治具12は、導電性の透明の皮膜を有する、ガラス板などからなる支持基板である。支持基板はガラス板には限定されず、その他、セラミック、金属等であってもよい。また、支持基板表面に形成される皮膜は、透明に限定されない。他の例として、支持基板は、金属皮膜をセラミック等の絶縁材料の上に形成して構成されてもよい。また、支持基板が金属材料の場合は、その表面に皮膜を形成する必要もない。具体的には、支持基板として、シリコン基板、SUS基板、銅基板などが利用できる。
【0040】
捕集治具12の皮膜側は高圧電源2の負極に電気的に接続される。これにより、放電電極17と捕集治具12と間に電位差が発生し、これらの間に
図8の矢印Eに示される向きの電界が構成される。
【0041】
ファン50Aの駆動によって導入孔10から導入された空気中の浮遊粒子は、放電電極17付近にて負に帯電される。負に帯電した粒子は静電気力で捕集治具12の方向に移動して導電性の皮膜に吸着されることで、捕集治具12上に捕集される。ここで、放電電極17として針状電極を用いることによって、帯電した粒子を捕集治具12の放電電極17に対面する、(後述する)発光素子の照射領域15に対応したきわめて狭い範囲に吸着させることができる。これにより、後述する検出工程において、吸着された微生物を効率的に検出することができる。
【0042】
検出室5Bに含まれる検出機構は、光源である発光素子6と、受光素子9と、受光素子9の受光方向に備えられ、捕集機構により捕集治具12上に捕集された浮遊微粒子に発光素子6から照射することにより生じる蛍光を受光素子9に集光するための集光レンズ(またはレンズ群)8とを含む。その他、発光素子6の照射方向に備えられ、発光素子6からの光を平行光にする、または所定幅とするためのレンズ(またはレンズ群)、アパーチャ、照射光が受光素子9に入り込むのを防ぐためのフィルタ(またはフィルタ群)などが含まれてもよい。これらの構成は、従来技術を応用できる。集光レンズ8は、プラスチック樹脂製またはガラス製でよい。
【0043】
検出室5Bは、好ましくは、少なくとも内部に、黒色塗料の塗布または、黒色アルマイト処理等が施される。これにより、迷光の原因となる内部壁面での光の反射が抑えられる。捕集室5Aおよび検出室5B筐体の材質は特定の材質に限定されないが、好ましくは、プラスチック樹脂、アルミもしくはステンレスなどの金属、またはそれらの組み合わせが用いられる。導入孔10および排出孔11は、直径が1mmから50mmの円形である。導入孔10および排出孔11の形状は円形に限定されず、楕円形、四角形など他の形状であってもよい。
【0044】
発光素子6は、半導体レーザまたはLED素子を含む光源であって、微生物を励起して蛍光を発させる波長光(たとえば300〜450nm)を発するものであればどのようなものであってもよく、フォトダイオード、イメージセンサなどが用いられる。
【0045】
発光素子6の発光は捕集治具12の表面に照射され、捕集治具12上に照射領域15を形成する。照射領域15の形状に限定はなく、円形、楕円形、四角形などであってよい。照射領域15は特定のサイズに限定されないが、好ましくは、円の直径または楕円の長軸方向の長さまたは四角形の1辺の長さが約0.05mmから50mmである。
【0046】
集光レンズ(またはレンズ群)8は、捕集治具12表面の照射領域15からの蛍光を受光素子9に集光する。従って、照射領域15は検出領域とも言える。
【0047】
受光素子9は信号処理部30に接続されて、受光量に比例した電流信号を信号処理部30に対して出力する。従って、導入された空気中に浮遊し、捕集治具12表面に捕集された粒子に発光素子6から光が照射されることによって該粒子から発光された蛍光は、受光素子9において受光され、信号処理部30においてその受光量が検出される。
【0048】
検出室5B内の、捕集治具12表面に触れる位置には、捕集治具12表面をリフレッシュするためのブラシ60が設けられる。ブラシ60は、測定検出部40によって制御される図示しない移動機構に接続され、図中の両側矢印Bに示されるように、すなわち、捕集治具12上を往復するように移動する。これにより、捕集治具12表面に付着した埃や微生物が取り除かれる。
【0049】
捕集治具12の一面(好ましくは、
図8に表わされたように、捕集治具12の放電電極17から遠い側の面)には、加熱機構に含まれるヒータ91が配備される。ヒータ91は測定検出部40に電気的に接続され、測定検出部40によって加熱量(加熱時間、加熱温度等)が制御される。ヒータ91としては、好適にはセラミックヒータが用いられる。その他、遠赤外線ヒータや遠赤外線ランプなどであってもよい。
【0050】
捕集治具12とヒータ91とを含んだユニットをここでは捕集ユニット12Aと称する。捕集ユニット12Aは測定検出部40によって制御される図示しない移動機構に接続され、図中の両側矢印Aに示されるように、すなわち、捕集室5Aと検出室5Bとの間を、壁5Cに設けられた孔5C’を通って行き来する。
【0051】
第1の実施の形態にかかる粒子検出装置100Aでは、上述の第1の課題を解消するための構成として、針状の放電電極17が捕集治具12表面の法線方向と一致しない方向に配置される。
【0052】
図9〜
図11は、粒子検出装置100Aにおける放電電極17の向きを説明するための図である。
【0053】
放電電極17の先端(針先)の捕集治具12表面に対する角度を角度θとすると、
図9に表わされたように、放電電極17の方向が捕集治具12表面と平行であるときにはθ=0°、捕集治具12表面の法線と一致するときにはθ=±90°となる。
【0054】
粒子検出装置100Aでは、捕集治具12表面に対する角度を角度θが−90°<θ<90°を満たす方向に放電電極17が設置される。−90°<θ<90°を満たす方向であれば、たとえば
図10の捕集治具12表面と平行する方向よりやや上向きの角度αの方向や、捕集治具12表面と平行する方向よりやや下向きの角度βとなるように放電電極17が設置されてもよい。好ましくは、θ≒0°となるように、つまり、捕集治具12表面と平行または略平行となるように設置する。
【0055】
なお、放電電極17と捕集治具12表面の法線とを含む面の捕集治具12に対する位置関係(回転方向)は特定の位置に限定されない。すなわち、
図11に表わされたように、放電電極17は、その先端の捕集治具12表面に対する角度θが−90°<θ<90°を満たす方向で捕集治具12の導入孔10に向く面側に設置されていればよく、放電電極17と捕集治具12表面の法線とを含む面の捕集治具12表面に含まれるある軸に対する角度γは0°≦γ≦360°のいずれの角度となってもよい。
【0056】
<機能構成>
図12は、上の原理を利用して空気中の微生物を検出する粒子検出装置100Aの機能構成の具体例を示すブロック図である。
図12では、信号処理部30の機能が主に電気回路であるハードウェア構成で実現される例が示されている。しかしながら、これら機能のうちの少なくとも一部は、信号処理部30が図示しないCPUを備え、該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される、ソフトウェア構成であってもよい。また、測定検出部40の構成がソフトウェア構成である例が示されている。しかしながら、これら機能のうちの少なくとも一部は、電気回路などのハードウェア構成で実現されてもよい。
【0057】
図12を参照して、信号処理部30は、受光素子9に接続される電流−電圧変換回路34と、電流−電圧変換回路34に接続される増幅回路35とを含む。
【0058】
測定検出部40は、制御部41、記憶部42、およびクロック発生部47を含む。さらに、測定検出部40は、スイッチ110の操作に伴ったスイッチ110からの入力信号を受け付けることで情報の入力を受け付けるための入力部44と、通信部150に接続された外部装置とのデータ等のやり取りに必要な処理を行なうための外部接続部46と、ファン50A、ヒータ91、捕集ユニット12Aを往復移動させるための図示しない機構、およびブラシ60を往復移動させるための図示しない機構を駆動させるための駆動部48とを含む。
【0059】
捕集治具12上に捕集された粒子に対して発光素子6から照射されることで、照射領域15にある当該粒子からの蛍光が、受光素子9に集光される。受光素子9から、受光量に応じた電流信号が信号処理部30に対して出力される。電流信号は、電流−電圧変換回路34に入力される。
【0060】
電流−電圧変換回路34は、受光素子9から入力された電流信号より蛍光強度を表わすピーク電流値Hを検出し、電圧値Ehに変換する。電圧値Ehは増幅回路35で予め設定した増幅率に増幅され、測定検出部40に対して出力される。測定検出部40の制御部41は信号処理部30から電圧値Ehの入力を受け付けて、順次、記憶部42に記憶させる。
【0061】
クロック発生部47はクロック信号を発生させ、制御部41に対して出力する。制御部41は、クロック信号に基づいたタイミングで、ファン50Aや捕集ユニット12Aを往復移動させるための機構などを駆動させるための制御信号を駆動部48に対して出力して、これらの動作を制御する。また、制御部41は発光素子6および受光素子9と電気的に接続され、それらのON/OFFを制御する。
【0062】
制御部41は計算部411を含み、計算部411において、記憶部42に記憶された電圧値Ehを用いて、導入された空気中の生物由来の粒子量が算出される。
【0063】
計算部411で算出された粒子量は、制御部41から外部接続部46に対して出力され、接続された図示しない表示装置に検出結果として表示されたり、通信部150を介して他の装置に送信されたり、接続された図示しない記録媒体に記録されたりする。
【0064】
<動作フロー>
図13は、制御部41での、捕集室5Aに導入された空気中の生物由来の粒子量を算出するための具体的な動作を表わしたフローチャートである。
【0065】
図13を参照して、検出動作が開始されると、ステップS1で、予め規定されている捕集時間である時間△T1の間、捕集室5Aでの捕集動作が行なわれる。ステップS1での具体的な動作としては、制御部41は駆動部48に対して制御信号を出力してファン50Aを駆動させて捕集室5A内に空気を取り込む。捕集室5A内に導入された空気中の粒子は、放電電極17により負電荷に帯電され、ファン50Aによる空気の流れと放電電極17および捕集治具12表面との間で形成される電界とにより、捕集治具12表面の照射領域15に対応した狭い範囲に捕集される。捕集時間△T1が経過すると制御部41は捕集動作を終了、すなわち、ファン50Aの駆動を終了させる。
【0066】
これにより、時間△T1の間、外部空気が捕集室5A内に導入孔10を通じて導入され、その空気中の粒子は、捕集治具12表面に時間△T1の間、捕集される。
【0067】
次に、ステップS3で制御部41は、駆動部48に対して制御信号を出力して捕集ユニット12Aを移動させるための機構を稼動させて、捕集ユニット12Aを捕集室5Aから検出室5Bに移動させる。移動が完了すると、ステップS5で検出動作が行なわれる。ステップS5で制御部41は発光素子6に発光させ、規定の測定時間△T2の間、受光素子9により蛍光を受光させる。発光素子6からの光は、捕集治具12の表面の照射領域15に照射され、捕集された粒子から蛍光が発光される。その蛍光強度F1に応じた電圧値が測定検出部40に入力されて記憶部42に記憶される。これにより、加熱前の蛍光量S1が測定される。
【0068】
ステップS5の測定動作が終了すると、ステップS7で制御部41は、駆動部48に対して制御信号を出力して捕集ユニット12Aを移動させるための機構を稼動させて、捕集ユニット12Aを検出室5Bから捕集室5Aに移動させる。移動が完了すると、ステップS9で加熱動作が行なわれる。ステップS9では、制御部41は予め規定した加熱処理時間である時間△T3の間、ヒータ91に加熱を行なわせる。この時の加熱温度は予め規定されている。
【0069】
加熱動作後、ステップS11で冷却動作が行なわれる。ステップS11では、制御部41は、駆動部48に制御信号を出力して、所定の冷却時間、ファン50Aを逆回転させる。捕集ユニット12Aに外部の空気を触れさせることで冷却する。加熱処理時間△T3、加熱温度、および冷却時間も、制御部41に予め設定されているものであってもよいし、スイッチ110などの操作や、ケーブルを介して通信部150に接続されたPC300からの信号や、通信部150に装着された記録媒体からの信号などによって入力、変更されるものであってもよい。
【0070】
ステップS9の加熱動作およびステップS11の冷却動作が終了すると、ステップS13で制御部41は、駆動部48に対して制御信号を出力して捕集ユニット12Aを移動させるための機構を稼動させて、捕集ユニット12Aを捕集室5Aから検出室5Bに移動させる。移動が完了すると、ステップS15で再度検出動作が行なわれる。ステップS15の検出動作はステップS5での検出動作と同じである。ここでの蛍光強度F2に応じた電圧値が測定検出部40に入力されて記憶部42に記憶される。これにより、加熱後の蛍光量S2が測定される。
【0071】
ステップS15で加熱後の蛍光量S2が測定されると、ステップS17で捕集ユニット12Aのリフレッシュ動作が行なわれる。ステップS17で制御部41は、駆動部48に対して制御信号を出力してブラシ60を移動させるための機構を稼動させて、捕集ユニット12A表面でブラシ60を所定回数往復移動させる。このリフレッシュ動作が完了すると、ステップS19で制御部41は、駆動部48に対して制御信号を出力して捕集ユニット12Aを移動させるための機構を稼動させて、捕集ユニット12Aを検出室5Bから捕集室5Aに移動させる。これにより、開始の指示を受けると直ちに次の捕集動作(S1)を開始することができる。
【0072】
計算部411は、予め増大量△Fと生物由来の粒子量(濃度)との対応関係を記憶しておき、記憶された蛍光強度F1と蛍光強度F2との差分である増大量△Fと該対応関係とを用いて得られる粒子量を、捕集室5Aに時間△T1の間に導入された空気中の生物由来の粒子量(濃度)として算出する。
【0073】
図14は、増大量△Fと生物由来の粒子量(濃度)との対応関係の具体例を表わした図である。この対応関係は、予め実験的に決められる。たとえば、1m
3の大きさの容器内に、大腸菌やバチルス菌やカビ菌などの微生物の一種を、ネブライザを利用して噴霧し、微生物濃度をN個/m
3に維持して、粒子検出装置100Aを用いて、上述の検出方法により時間△T1の間微生物を捕集する。そして、所定加熱量(加熱時間△T3、所定の加熱温度)で捕集した微生物に対してヒータ91によって加熱処理を施し、所定時間△T4の冷却の後、加熱前後の蛍光強度の増大量△Fを測定する。種々の微生物濃度について同様の測定がなされることで、
図14に示された増大量△Fと微生物濃度(個/m
3)との関係が得られる。
【0074】
増大量△Fと微生物濃度との対応関係は、スイッチ110などの操作によって入力されることで計算部411に記憶されてもよい。または、該対応関係を記録した記録媒体が通信部150に装着され、外部接続部46が読み込むことで計算部411に記憶されてもよい。または、PC300によって入力および送信され、通信部150に接続されたケーブルを介して外部接続部46が受け付けることで、計算部411に記憶されてもよい。または、通信部150が赤外線通信やインターネット通信を行なう場合には、外部接続部46が通信部150でのそれらの通信によって他の装置から受け付けることで、計算部411に記憶されてもよい。また、いったん計算部411に記憶された該対応関係が、測定検出部40により更新されてもよい。
【0075】
<第1の実施の形態の効果>
第1の実施の形態にかかる粒子検出装置100Aにおいて放電電極17が、
図10に表わされたように、その先端の捕集治具12表面に対する角度を角度θが−90°<θ<90°を満たす方向に設置されることで、捕集治具12表面のダメージや付着物を抑えることができる。
【0076】
図15は、粒子検出装置100Aでの捕集治具12表面のダメージや付着物を抑える効果を説明するための図である。すなわち、放電電極17の尖っている部分からの放電が最も多く、かつ、尖っている部分から最も近い場所に放電が集中しやすい。そのため、
図15(A)に表わされたように、放電電極17の先端が捕集治具12に向かう方向(θ=±90°)となるように放電電極17を設置すると、先端(針先)直下に放電などエネルギーが集中しやすいため、捕集治具12のダメージ(損傷等)や付着物が多くなる。
【0077】
しかしながら、
図15(B)に表わされたように、放電電極17の先端が捕集治具12に向かわない方向(−90°<θ<90°)となるように放電電極17を設置することで、先端(針先)直下への放電の集中を避けることができ、先端の向く方向に放電を分散させることができる。特に、捕集治具12表面と平行に近付けるに連れて(θ≒0°)捕集治具12表面に対する放電が均一化するため、捕集治具12のダメージ(損傷等)や付着物を抑えることができる。その結果、ノイズが低減されて検出精度を高めることができると共に、捕集治具12の長寿命化が可能となって繰り返し精度よい検出を行なうことができる。
【0078】
なお、この効果を検証するために、発明者は、放電電極17を先端が捕集治具12表面を向く方向に設置した場合(θ=90°)と、捕集治具12表面と平行に設置した場合(θ=0°)とのそれぞれの場合で捕集実験を行ない、捕集治具12表面を観察した。
図16および
図17は、それぞれ、放電電極17の針先直下が照射領域15の中央にある場合の捕集治具12の照射領域15中央付近の顕微鏡写真、および、放電電極17の針先直下が照射領域15の中央にあるが、針先の向きが捕集治具12表面と平行になるように設置した場合の捕集治具12の照射領域15中央付近の顕微鏡写真である。
【0079】
この実験に用いられた捕集治具の面積は10mm×10mm、電極針先端と捕集治具表面との間の距離は8〜12mm、電圧は約5〜10kV程度であり、検出動作を100回繰り返した時点で撮影した。これらの数値は実験実施の際に定めた数値であり、集塵機構の規模や目的によってはこの範囲に留まらない。
【0080】
図16および
図17の実験結果より、放電電極17の針先の向きを捕集治具12に向かう方向としないように設置することで、捕集治具12に向かう方向としたときよりも捕集治具12表面検出のダメージ(損傷等)や付着物が軽減されたことが検証された。
【0081】
[第2の実施の形態]
<装置構成>
図18は、第2の実施の形態にかかる粒子検出装置100Bの構成の具体例を示す図である。
【0082】
図18を参照して、第2の実施の形態にかかる粒子検出装置100Bは、
図8に表わされた粒子検出装置100Bと概ね同じ構成であるが、放電電極17の設置態様が異なる。すなわち、第2の実施の形態にかかる粒子検出装置100Bでは、上述の第2の課題を解消するための構成として、針状の放電電極17が、捕集治具12表面への垂線の足が照射領域15の中央(中心)と一致しない位置に配置される。
【0083】
図19は、捕集治具12表面への垂線の足が照射領域15の中央と一致する場合の放電電極17の配置を説明するための図であり、
図20〜
図22は、粒子検出装置100Bにおける放電電極17の配置を説明するための図である。
【0084】
粒子検出装置100Bにおいて、放電電極17は、
図20に表わされるように、先端から捕集治具12表面への垂線の足が照射領域15の中央には一致しないものの照射領域15に含まれるように配置されてもよいし、
図21に表わされるように、上記垂線の足が照射領域15にも含まれないように配置されてもよいし、
図22に表わされるように、上記垂線の足が捕集治具12上にも含まれないように配置されてもよい。放電電極17の配置は、垂線の足が照射領域15の中央に一致しなければ
図20〜
図22のいずれの配置であってもよい。
【0085】
発明者は、
図20〜
図22の配置のうちのよりよい配置を特定するために、放電電極17の位置と捕集能力との関係を確認するための実験を行なった。
図23(A)および
図23(B)は、この実験での放電電極17の第1の位置を説明するための図であって、
図23(A)は捕集治具12の真上から見た図、
図23(B)は捕集治具12の真横から見た図である。図中の丸印が、第1の位置に設置された放電電極17の先端(針先)の位置を表わしている。
【0086】
すなわち、第1の位置は、
図23(A)に示されたように、放電電極17の先端(針先)が、10mm×10mmの捕集治具12の1つの頂点から対角線と平行に3mm内側に移動した位置であって、
図23(B)に示されたように、捕集治具12表面から8mmの高さにある位置を指す。
【0087】
図24は、第1の位置として、放電電極17が
図23(A)および
図23(B)に示された位置に設置されたときの捕集治具12での捕集量の分布を表わした図である。
図24において丸印が放電電極17の先端の位置を表わしている。
【0088】
また、
図25は、第2の位置として、放電電極17が照射領域15の中央の直上に設置されたときの捕集治具12での捕集量の分布を表わした図である。
図25においても丸印が放電電極17の先端の位置を表わしている。
【0089】
図24および
図25を参照して、いずれの実験においても、放電電極17の先端の直下ほど捕集された粒子の個数が多く、放電電極17の先端から遠いほど個数が少ないことがわかった。つまり、放電電極17の先端の直下ほど捕集能力が高く、放電電極17の先端から遠いほど捕集能力が低くなることがわかった。これは、放電電極17が捕集治具12から遠ざかる程、捕集治具12と放電電極17との間の電界強度が低下するためと考えられる。
【0090】
また、
図24と
図25とを比較すると、前者の捕集能力は後者の捕集能力の80〜90%程度であり、放電電極17の先端を照射領域15外となるように設置しても捕集能力が大きく減少しないことがわかった。
【0091】
これらの実験より、照射領域15へのダメージや付着物を軽減させるためには可能な限り照射領域15から先端が遠くなるように放電電極17を設置したいものの、遠くなり過ぎると照射領域15内の捕集能力が低下することがわかった。そのため、
図20〜
図22の配置のうち、
図21に表わされた配置であって、
図23(A)および
図23(B)に示されたような位置関係での配置が最も適切な配置と言える。このように配置することで、照射領域15内の捕集能力を損なうことなく、基板へのダメージや付着物を抑えることができる。
【0092】
<機能構成および動作フロー>
第2の実施の形態にかかる粒子検出装置100Bの機能構成および動作フローは、第1の実施の形態にかかる粒子検出装置100Aと同様であるため、説明を繰り返さない。
【0093】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態にかかる粒子検出装置100Bにおいて放電電極17が、
図20〜
図22に表わされたように、捕集治具12への垂線の足が照射領域15の中央と一致しないように放電電極17が配置されることで、捕集治具12表面の、特に照射領域15の中央付近のダメージや付着物を抑えることができる。特に、
図21に表わされたように放電電極17の先端が捕集治具12上であって照射領域15外となる位置に設置することで、照射領域15内の捕集能力を損なうことなく、基板へのダメージや付着物を抑えることができる。その結果、ノイズが低減されて検出精度を高めることができると共に、捕集治具12の長寿命化が可能となって繰り返し精度よい検出を行なうことができる。
【0094】
なお、この効果を検証するために、発明者は、放電電極17を先端が照射領域15の中央の直上となるよう設置した場合と、放電電極17の先端の直下が捕集治具12上であって照射領域15外にあるように設置した場合とのそれぞれの場合で捕集実験を行ない、捕集治具12表面を観察した。
図26および
図27は、それぞれ、前者の場合および後者の場合の照射領域15の中央付近の顕微鏡写真である。
【0095】
この実験に用いられた捕集治具の面積は10mm×10mm、電極針先端と捕集治具表面との間の距離は8〜12mm、電圧は約5〜10kV程度であり、検出動作を100回繰り返した時点で撮影した。これらの数値は実験実施の際に定めた数値であり、集塵機構の規模や目的によってはこの範囲に留まらない。
【0096】
図26および
図27の実験結果より、放電電極17の垂線の足が照射領域15外となるように放電電極17を配置することで、照射領域15の中央に一致するように配置した場合と比較して表面のダメージや付着物が大幅に軽減されたことが検証された。
【0097】
<変形例1>
上記第1の課題と上記第2の課題との両方を解消するための構成として、第1の実施の形態に表わされた放電電極17の配置と、第2の実施の形態に表わされた放電電極17の配置とを組み合わせるようにしてもよい。
【0098】
図28および
図29は第1の変形例での放電電極17の配置を説明するための図であって、
図28は真横方向から見た図、
図29は斜め上方向から見た図である。
【0099】
図28および
図29に示されるように、第1の変形例では、放電電極17の先端(針先)の捕集治具12表面に対する角度を角度θとすると、角度θが−90°<θ<90°を満たす方向に放電電極17が設置される。さらに、放電電極17の先端(針先)から捕集治具12表面への垂線の足が照射領域15の中央に一致しないように放電電極17が設置される。このとき、好ましくは、上記垂線の足が照射領域15に含まれず、かつ、捕集治具12上となる位置に放電電極17を設置する。
【0100】
第1の実施の形態において説明されたように、角度θが−90°<θ<90°を満たす方向であれば、
図29に表わされた捕集治具12表面に平行な方向よりやや上向きの角度αの方向や、捕集治具12表面に平行な方向よりやや下向きの角度βとなるように放電電極17が設置されてもよい。また、放電電極17と捕集治具12表面の法線とを含む面の捕集治具12に対する位置関係(回転方向)も特定の位置に限定されない。
【0101】
このように放電電極17が配置されることで、上記第1の課題および第2の課題ともに解消される。すなわち、先端(針先)の向きを捕集治具12の表面に対して垂直にならないようにすることで捕集治具12の表面のダメージや付着物を抑えることができる。また、放電電極17の位置を照射領域15外となる位置に配置することで、特に、照射領域15の表面のダメージや付着物を大幅に軽減することが可能となる。その結果、ノイズが低減されて検出精度を高めることができると共に、捕集治具12の長寿命化が可能となって繰り返し精度よい検出を行なうことができる。
【0102】
なお、この効果を検証するために、発明者は、放電電極17を先端の向きを捕集治具12の表面に対して垂直として垂線の足が照射領域15外となる位置に配置した場合と、放電電極17の方向を捕集治具12表面と平行として垂線の足が照射領域15外となる位置に配置した場合とのそれぞれの場合で捕集実験を行ない、捕集治具12表面を観察した。
図30および
図31は、前者の場合および後者の場合の捕集治具12の照射領域15中央付近の顕微鏡写真、および、放電電極17の先端直下が照射領域15の中央にあるが、針先の向きが捕集治具12表面と平行になるように設置した場合の照射領域15中央付近の顕微鏡写真である。
【0103】
この実験に用いられた捕集治具の面積は10mm×10mm、電極針先端と捕集治具表面との間の距離は8〜12mm、電圧は約5〜10kV程度であり、検出動作を100回繰り返した時点で撮影した。これらの数値は実験実施の際に定めた数値であり、集塵機構の規模や目的によってはこの範囲に留まらない。
【0104】
図30および
図31の実験結果より、放電電極17の先端の位置を照射領域15外となるとなるように配置した場合でも照射領域15の中央のダメージや付着物は抑えられているものの、放電電極17の向きを捕集治具12表面に向かない方向とすることで、照射領域15の中央のダメージや付着物がより抑えられることがわかった。
【0105】
さらに、放電電極17の設置態様と検出精度との関係を検証するために、発明者は、放電電極17を先端の向きを捕集治具12の表面に対して垂直として捕集治具12への垂線の足が照射領域15の中央と一致する位置に設置した場合(ケース1)と、先端の向きを捕集治具12の表面に対して垂直として垂線の足が照射領域15外となる位置に配置した場合(ケース2)と、放電電極17の方向を捕集治具12表面と平行として垂線の足が照射領域15外となる位置に配置した場合(ケース3)とのそれぞれの場合で捕集実験を行ない、捕集治具12表面からの蛍光量のバックグラウンド量を迷光量として測定した。
図32は測定結果を表わした図である。
【0106】
図32を参照して、捕集動作の回数が多くなるに連れて迷光の増大量が大きくなる。そのため、1回の捕集動作での捕集治具12表面のダメージや付着物が捕集動作の回数が多くなるに連れて増大し、ノイズが増していることがわかる。
【0107】
また、
図32の結果より、放電電極17からの垂線の足が照射領域15外となる位置に配置した場合(ケース2、ケース3)の方が照射領域15の中央と一致する位置に配置した場合(ケース1)と比較して大幅にダメージや付着物が軽減出されていることがわかった。さらに、第1の変形例で説明されたように、放電電極17の方向を捕集治具12表面と平行として垂線の足が照射領域15外となる位置に配置(ケース3)することで、この実験のケースの中では捕集治具12表面のダメージや付着物を最も軽減できることがわかった。
【0108】
<変形例2>
図33に示されたように、捕集治具12表面から放電電極17の先端までを距離(高さ)Lとして、放電電極17の先端を照射領域15の中央直上からずらした場合、
図31の実験結果に示されたように最も捕集治具12表面へのダメージや付着物を少なくすることができる。
【0109】
しかしながら、放電電極17の先端を照射領域15の中央直上から単に平行移動させるだけでは、照射領域15全体での捕集量が減少する可能性がある。
図24、
図25の実験結果から検証されたように、放電電極17の先端の直下ほど捕集能力が高く、放電電極17の先端から遠いほど捕集能力が低くなる。さらに、距離Lが小さいほど、放電電極17の先端の直下での捕集量と放電電極17の先端から離れた位置での捕集量との差が大きくなる。
【0110】
従って、照射領域15で目的とする捕集量を確保するためには、距離Lを最適とするよう放電電極17を設置する必要がある。距離Lを最適とすることで、照射領域15全体での捕集量の減少を抑えることができる。
【0111】
距離Lが0に近づくほど、つまり、放電電極17の先端が捕集治具12表面に近づくほど放電電極17の先端直下の捕集量は増加すると考えられるが、逆に、電界の影響を受ける範囲が狭くなるために、放電電極17の先端から離れた位置では捕集治具12と放電電極17との間の電界強度(電気的な引力)が低下することで極端に捕集量が低下する。また、放電電極17の先端が捕集治具12表面に近づくほど捕集治具12表面のダメージが激しい。
【0112】
よって照射領域15全体での捕集量を確保する観点から、印加電圧、捕集量を最大にしたい範囲、および捕集の目的によって、距離Lとして最適な距離が求められる。
【0113】
図34〜
図36は、捕集治具12表面から放電電極17の先端までの距離Lを説明するための図である。
【0114】
図34に表わされたように、放電電極17の先端が照射領域15の中央直上にある場合の距離Lの最適値をL1(L=L1)とする。この場合、値L1をさらに小さくすることで捕集量は増加するものの、継続的に使用した場合の捕集治具12表面のダメージや付着物の影響が大きくなり過ぎるため、それらを考慮した上で値L1が決定される。
【0115】
図35に表わされたように、捕集治具12表面のダメージ等を低減するため放電電極17をその先端が照射領域15外となるまで移動した場合、距離L=L1を維持したままでは放電電極17の先端直下の捕集量は維持されても、放電電極17の先端から離れた位置では捕集量が低減してしまう可能性がある。
【0116】
そこで、その状態において、距離LをL1より小さくし、放電電極17を捕集治具12表面に近付けるようにする。
図34に表わされた、放電電極17の先端が照射領域15の中央直上にある場合には、捕集治具12表面への影響を回避するために放電電極17の先端を捕集治具12表面に距離L1よりも近付けないものとしていたが、
図35のように放電電極17の先端が照射領域15外となるまで移動させると、捕集治具12表面への影響が緩和されるため、放電電極17の先端を距離L1よりも近付けることが可能となる。
図36に表わされたように、放電電極17の先端が照射領域15外の位置にある場合の距離Lの最適値をL2(L=L2<L1)とする。
【0117】
このように距離Lを決定することで、放電電極17の先端を照射領域15外となるまで移動させて捕集治具12表面のダメージや付着物を軽減させる場合に、照射領域15での捕集量は損なうことなく、最適な設計が可能となる。
【0118】
ただし、放電電極17の先端を限りなく捕集治具12表面に近付けるほど(L≒0)放電電極17の先端直下での捕集量は増加するものの、先端から離れた位置での捕集量は減少するため、捕集量を確保する領域、捕集レベル、捕集治具12表面へのダメージや付着物による影響等すべて考慮した上で目的に合った距離Lを設定する必要がある。たとえば、同一の捕集治具12を使用して繰り返し捕集動作を行なう場合には捕集治具12表面へのダメージや付着物の検出結果への影響が大きいため、これらの低減に重点を置いて距離Lを設定すべきである。また、同一の捕集治具12を使用して複数回捕集動作を行なわない場合、つまり、一度の捕集動作のみに捕集治具12を用いる場合には、その表面のダメージ等を考慮しなくてもよいため、距離Lは捕集量が最大となるように設定することができる。ただし、電圧が高い場合には、放電電極17から捕集治具12表面への落雷の可能性があるため、落雷を回避できる距離Lとする必要がある。同様に、印加電圧も目的によって最適な電圧に設定することができる。
【0119】
たとえば、捕集治具12および放電電極17が
図37に表わされた形態であるものとする。すなわち、捕集治具12が10mm×10mmの導電性シリコンSi製であり、その中心を同一とした直径5mmの照射領域15が設けられているとする。この捕集治具12に対して放電電極17が、その先端から捕集治具12に下ろした垂線の足が1つの頂点から対角線に平行に3mm程度内側の位置にあるよう設置されているとする。
【0120】
発明者は、この関係において捕集治具12表面へのダメージ等を低減でき、かつ、照射領域15での捕集量を確保できる距離Lを特定するために、捕集治具12および放電電極17を
図37の関係とし、放電電極17の印加電圧を−4kV程度の一定として、直径3μmのポリスチレン標準粒子を用い、距離Lを変化させて照射領域15での捕集能力(捕集密度)を測定した。
図38は、測定結果を表わす図であり、横軸が距離L、縦軸が捕集能力を表わしている。
【0121】
図38の結果より、距離Lが8〜10mm付近で照射領域15での捕集能力が最大となることがわかった。また、距離Lがそれよりも小さくなり過ぎると照射領域15での捕集能力が低下することもわかった。
【0122】
この実験より、捕集治具12および放電電極17が
図37であり、放電電極17の印加電圧を−4kV程度の一定としたときに、捕集治具12へのダメージ等を低減でき、かつ、照射領域15での捕集量を確保できる距離Lが8〜10mmであることがわかった。
【0123】
<変形例3>
なお、以上の説明では、粒子検出装置が
図8や
図18に表わされたように、捕集機構と検出機構とが隣接してした空間に設けられる例が示されている。しかしながら、粒子検出装置はこの例に示される形態に限定されるものではない。
【0124】
他の例として、捕集機構と検出機構とが完全に分離した空間に設けられてもよい。この場合、分離された捕集機構と検出機構との間を捕集ユニット12Aを行き来させる機構がさらに設けられる。
【0125】
また、他の例として、捕集機構と検出機構とが同一の空間に設けられてもよい。この場合、捕集ユニット12Aは移動せずに、捕集動作の後に検出動作が行なわれる。なお、この場合には、放電電極17の位置は上述の捕集治具12表面へのダメージ等に対する影響のみならず、検出動作(照射範囲、受光範囲等)も考慮して特定されるべきである。
【0126】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。