特許第5997568号(P5997568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997568
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】巻き上げ機の制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   H02P27/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-223076(P2012-223076)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-75941(P2014-75941A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西川 和弘
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−029589(JP,A)
【文献】 特開平06−107390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/00−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作指令ボタンからの入力を受けて、モータを駆動させるための制御信号をインバータに出力する制御部と、
前記動作指令ボタンから前記制御部への信号と、前記制御部から前記インバータに出力される前記モータを駆動させるための制御信号の入力を受け、その両方がONのときのみ前記モータを駆動させるためのON信号を前記インバータに出力する第1の回路と、
前記動作指令ボタンから前記制御部への信号と、前記制御部から前記インバータに向けて出力される前記モータを駆動させるための制御信号の入力を受け、その両方の信号が一致していないときにのみ、ON信号を前記インバータに出力する第2の回路と、
を備え、
前記インバータは、前記第1の回路からON信号が入力された場合のみ前記モータを駆動し、かつ、前記第2の回路からのON信号の入力により前記制御部の暴走を検出する
ことを特徴とする巻き上げ機の制御回路。
【請求項2】
前記モータにより巻き上げ、または、巻き下げられるフックの位置が、予め定められた上限位置または下限位置となった場合に動作するリミットスイッチをさらに備え、
前記インバータは、緊急停止信号の入力を受ける緊急停止端子を備え、
リミットスイッチが動作した場合、前記制御部に信号が入力されるとともに、前記インバータの前記緊急停止端子に信号が入力される、
ことを特徴とする請求項1に記載の巻き上げ機の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き上げ機の制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイスト、クレーン等の産業用機器に用いられる巻き上げ機は、一般的に、「巻き上げ」「巻き下げ」等の操作ボタンの押下によって、作業者の操作入力が行われるようになされている。
【0003】
従来の電動巻上機の制御装置においては、複数の操作ボタンのスイツチ信号をマイクロプロセッサ(または、マイクロコンピュータ、以下、マイコンと称する)等で構成される制御部に入力させて、巻き上げ機を制御する技術がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、従来の電動巻き上げ機の制御装置においては、巻き上げ過ぎあるいは巻き下げ過ぎを防止するために、リミットスイッチを設け、リミットスイッチの状態を監視して、巻き上げ幅が上限に達した場合、または、巻き下げ幅が下限に達した場合、無条件に運転を停止するようになされている技術がある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61‐23100号公報
【0006】
【特許文献2】特開2001−251892号公報
【0007】
図1を参照して、従来の電動巻上機の制御回路の一例について説明する。
【0008】
押しボタン1に設けられている上昇ボタン21および下降ボタン22は、それぞれ、通常の押下状態と、さらに、強く押し込む状態との2つの状態をとることができるようになされている。上昇ボタン21が通常の押下状態にされた場合は、通常速度(低速)での上昇、すなわち、正転指令信号が、マイコンなどを含んで構成される制御部2に入力され、下降ボタン22が通常の押下状態にされた場合は、通常速度(低速)での下降、すなわち、逆転指令信号が制御部2に入力される。また、上昇ボタン21が強く押し込む状態にされた場合は、高速での上昇、すなわち、正転指令信号および高速運転指令信号が制御部2に入力され、下降ボタン22が強く押し込む状態にされた場合は、高速での下降、すなわち、逆転指令信号がおよび高速運転指令信号が制御部2に入力される。
【0009】
制御部2は、押しボタン1に設けられている上昇ボタン21および下降ボタン22による操作入力を受け、モータ4を駆動するための、正転、逆転、高速運転(図中、高速と示す)、無負荷高速運転等の制御信号をインバータ3に出力する。例えば、制御部2は、インバータ3から、モータ4の荷重を示す信号の入力を受け、無負荷状態であり、かつ、高速運転指令信号が入力されていた場合、無負荷高速信号をインバータ3に出力し、巻き上げ速度を、高速運転よりもさらに早くする。また、制御部2は、インバータ3から、モータ4の荷重を示す信号の入力を受け、荷重が所定の値以上の場合は、過加重状態であることを検出し、モータ4の運転を停止させるために、正転、逆転、高速運転、または、無負荷高速運転等の制御信号のインバータ3への出力を停止する。
【0010】
また、フックの動作範囲を限定するために、フックの巻き上げにおける上限位置、および、フックの巻き下げにおける下限位置を、あらかじめ設定しておくことができる。制御部2は、後述するエンコーダ5からモータ4の回転数の入力を受け、モータ4によって巻き上げられるフックの位置を検出し、フック位置が、上限位置または下限位置に達すると、モータ4の運転を停止させるために、インバータ3に出力されていた、正転、逆転、高速運転、または、無負荷高速運転等の制御信号の出力を停止する。または、制御部2は、フック位置が上限に達した場合は、逆転を指令する制御信号のみをインバータ3に出力可能とし、フック位置が下限に達した場合は、正転を指令する制御信号のみをインバータ3に出力可能とするようにしてもよい。さらに、制御部2は、後述するエンコーダ5からモータ4の回転数の入力を受け、フックの移動方向および移動速度を検出することができる。制御部2は、正転指令信号の入力を受けているときにフックが下降していたり、逆転指令信号の入力を受けているときにフックが上昇している場合、または、高速運転をするべきときにフックの移動速度が遅すぎたり、低速運転をするべきときにフックの移動速度が早過ぎる場合には、インバータ3に出力されていた、正転、逆転、高速運転、または、無負荷高速運転等の制御信号の出力を停止する。
【0011】
また、さらに、制御部2は、後述する上下限リミットスイッチ6と接続されており、上限リミット接点31、または、下限リミット接点32が動作した場合、運転を停止するようにインバータ3を制御するようになされている。
【0012】
インバータ3は、制御部2の制御に基づいて、モータ4を駆動する。また、インバータ3は、モータ4の荷重情報を制御部2にフィードバックする。
【0013】
モータ4は、インバータ3により駆動されて、正転および反転、ならびに、それぞれの回転方向の高速運転が可能なモータ4であり、電動巻き上げ機のフックを上下動させる。
【0014】
エンコーダ5は、モータ4に組み込まれ、モータ4の回転数を検出して、制御部2に入力する。
【0015】
上下限リミットスイッチ6は、制御部2と接続されており、上限リミット接点31および下限リミット接点32の二つの接点を有している。上限リミット接点31は、モータ4により巻き上げられたフックの位置が上限のリミット位置に到達したとき、接点が動作するようになされている。そして、下限リミット接点32は、モータ4により巻き下げられたフックの位置が下限のリミット位置に到達したとき、接点が動作するようになされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
電動巻き上げ機の制御装置に制御部2を用いた場合、制御部2が、例えば、外部ノイズや熱、または、ソフトウェアのバグなどの理由によって暴走してしまうと、制御が困難な状態に陥ってしまうことが懸念される。
【0017】
そこで、本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、制御部2が暴走するという不測の事態であっても安全を確保することができる巻き上げ機の制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の巻き上げ機の制御回路の一側面は、動作指令ボタンからの入力を受けて、モータを駆動させるための制御信号をインバータに出力する制御部と、動作指令ボタンから制御部への信号と、制御部からインバータに出力されるモータを駆動させるための制御信号の入力を受け、その両方がONのときのみモータを駆動させるためのON信号をインバータに出力する第1の回路と、動作指令ボタンから制御部への信号と、制御部からインバータに向けて出力されるモータを駆動させるための制御信号の入力を受け、その両方の信号が一致していないときにのみ、ON信号をインバータに出力する第2の回路と、を備え、インバータは、第1の回路からON信号が入力された場合のみモータを駆動し、かつ、第2の回路からのON信号の入力により制御部の暴走を検出することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の他の側面は、モータにより巻き上げ、または、巻き下げられるフックの位置が、予め定められた上限位置または下限位置となった場合に動作するリミットスイッチをさらに備え、インバータは、緊急停止信号の入力を受ける緊急停止端子を備え、リミットスイッチが動作した場合、制御部に信号が入力されるとともに、インバータの緊急停止端子に信号が入力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御部が暴走した場合であっても安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来の巻き上げ機の制御回路を示す図である。
図2】巻き上げ機の制御回路の第1の例を示す図である。
図3】巻き上げ機の制御回路の第2の例を示す図である。
図4】巻き上げ機の制御回路の第3の例を示す図である。
図5】巻き上げ機の制御回路の第4の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態の巻き上げ機の制御回路について、図2図5を参照しながら説明する。
【0024】
図2を参照して、巻き上げ機の制御回路の第1の例について説明する。
【0025】
なお、図1と対応する部分は、同一の番号とする。
【0026】
押しボタン1に設けられている上昇ボタン21および下降ボタン22は、それぞれ、通常の押下状態と、さらに、強く押し込む状態との2つの状態をとることができるようになされている。上昇ボタン21が通常の押下状態にされた場合は、通常速度(低速)での上昇、すなわち、正転指令信号が、マイコンなどを含んで構成される制御部2に入力され、下降ボタン22が通常の押下状態にされた場合は、通常速度(低速)での下降、すなわち、逆転指令信号が制御部2に入力される。また、上昇ボタン21が強く押し込む状態にされた場合は、高速での上昇、すなわち、正転指令信号および高速運転指令信号が制御部2に入力され、下降ボタン22が強く押し込む状態にされた場合は、高速での下降、すなわち、逆転指令信号がおよび高速運転指令信号が制御部2に入力される。
【0027】
なお、ここでは、押しボタン1から制御部2への正転指令信号および逆転指令信号は、ONの場合にHi(1)であり、OFFの場合にLow(0)であるものとする。また、押しボタン1から制御部2への正転指令信号入力には、接点41が設けられ、後述するAND回路51と接続されるようになされている。そして、押しボタン1から制御部2への逆転指令信号入力には、接点42が設けられ、後述するAND回路52と接続されるようになされている。
【0028】
制御部2は、押しボタン1に設けられている上昇ボタン21および下降ボタン22による操作入力を受け、モータ4を駆動するための、正転、逆転、高速運転(図中、高速と示す)、無負荷高速運転等の制御信号を出力する。高速運転および無負荷高速運転等の制御信号は、制御部2から直接インバータ3へ出力される。なお、ここでは、制御部2から出力される正転指令信号および逆転指令信号は、ONの場合にHi(1)であり、OFFの場合にLow(0)であるものとする。
【0029】
制御部2からインバータ3への正転指令信号入力は、AND回路51に入力される。AND回路51には、上述したように、接点41を介して、押しボタン1から制御部2への正転指令信号が入力されている。AND回路51の出力は、インバータ3の正転指令の入力に接続されている。すなわち、制御部2からインバータ3への正転指令信号と、押しボタン1から制御部2への正転指令信号とがいずれもONでなければ、AND回路51からの出力信号はOFFとなる。
【0030】
したがって、制御部2が、例えば、外部ノイズや熱、または、ソフトウェアのバグなどの理由によって暴走してしまい、押しボタン1から正転指令信号が制御部2に入力されていない場合に制御部2から正転指令信号が出力されてしまっても、インバータ3には、正転指令信号が入力されることはない。
【0031】
そして、制御部2からインバータ3への逆転指令信号入力は、AND回路52に入力される。AND回路52には、上述したように、接点42を介して、押しボタン1から制御部2への逆転指令信号が入力されている。AND回路52の出力は、インバータ3の逆転指令の入力に接続されている。すなわち、制御部2からインバータ3への逆転指令信号と、押しボタン1から制御部2への逆転指令信号とがいずれもONでなければ、AND回路52からの出力信号はOFFとなる。
【0032】
したがって、制御部2が、例えば、外部ノイズや熱、または、ソフトウェアのバグなどの理由によって暴走してしまい、押しボタン1から逆転指令信号が制御部2に入力されていない場合に制御部2から逆転指令信号が出力されてしまっても、インバータ3には、逆転指令信号が入力されることはない。
【0033】
また、制御部2は、インバータ3から、モータ4の荷重を示す信号の入力を受け、無負荷状態であり、かつ、高速運転指令信号が入力されていた場合は、高速運転よりさらに早い無負荷高速運転を指令する、無負荷高速信号をインバータ3に出力して、巻き上げ速度をさらに早くし、荷重が所定の値以上の場合は、過加重状態であることを検出し、モータ4の運転を停止させるために、インバータ3に出力されていた、正転、逆転、高速運転、または、無負荷高速運転等の制御信号の出力を停止する。
【0034】
また、フックの動作範囲を限定するために、フックの巻き上げにおける上限位置、および、フックの巻き下げにおける下限位置は、あらかじめ設定しておくことができる。制御部2は、後述するエンコーダ5からモータ4の回転数の入力を受け、モータ4によって巻き上げられるフックの位置を検出し、フック位置が、上限位置または下限位置に達すると、モータ4の運転を停止させるために、インバータ3に出力されていた、正転、逆転、高速運転、または、無負荷高速運転等の制御信号の出力を停止する。または、制御部2は、フック位置が上限に達した場合は、逆転を指令する制御信号のみをインバータ3に出力可能とし、フック位置が下限に達した場合は、正転を指令する制御信号のみをインバータ3に出力可能とするようにしてもよい。さらに、制御部2は、後述するエンコーダ5からモータ4の回転数の入力を受け、フックの移動方向および移動速度を検出することができる。制御部2は、正転指令信号の入力を受けているときにフックが下降していたり、逆転指令信号の入力を受けているときにフックが上昇している場合、または、高速運転をするべきときにフックの移動速度が遅すぎる場合や、低速運転をするべきときに、フックの移動速度が早過ぎる場合には、インバータ3に出力されていた、正転、逆転、高速運転、または、無負荷高速運転等の制御信号の出力を停止する。
【0035】
また、さらに、制御部2は、後述する上下限リミットスイッチ6と接続されており、上限リミット接点31、または、下限リミット接点32が動作した場合、運転を停止するようにインバータ3を制御するようになされている。
【0036】
インバータ3は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等から構成されるインバータ回路のほかに、出力電圧対出力周波数比特性(V/f特性)等の各種設定値を記憶することができるメモリ、各種設定の入力を受けるオペレータ、周波数指令の入力を受ける周波数指令入力回路、および、インバータ回路、メモリ、オペレータ、周波数指令入力回路等を制御するマイクロプロセッサ(MPU)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit、)等を備え、制御部2の制御に基づいて、モータ4を駆動する。また、インバータ3は、モータ4の荷重情報を制御部2にフィードバックする。
【0037】
モータ4は、巻き上げ機用のブレーキ付モータであって、インバータ3により駆動されて、正転および反転、ならびに、それぞれの回転方向の高速運転が可能なモータ4であり、電動巻き上げ機のフックを上下動させる。また、モータ4は、インバータ3からの駆動電流が遮断された場合、ブレーキが作動し、フックの上下動を停止させるようになされている。あ
【0038】
エンコーダ5は、モータ4に組み込まれ、モータ4の回転数を検出して、制御部2に入力する。
【0039】
上下限リミットスイッチ6は、制御部2と接続されており、上限リミット接点31および下限リミット接点32の二つの接点を有している。上限リミット接点31は、モータ4により巻き上げられたフックの位置が上限のリミット位置に到達したとき、接点が動作するようになされている。そして、下限リミット接点32は、モータ4により巻き下げられたフックの位置が下限のリミット位置に到達したとき、接点が動作するようになされている。
【0040】
このような構成にすることにより、制御部2が、例えば、外部ノイズや熱、または、ソフトウェアのバグなどの理由によって暴走してしまった場合においても、押しボタン1の上昇ボタン21または下降ボタン22の操作を中止すれば、インバータ3への正転指令信号または逆転指令信号の入力がなくなるため、モータ4を停止させることが可能となる。
【0041】
次に、図3を参照して、巻き上げ機の制御回路の第2の例について説明する。
【0042】
なお、図2と対応する部分は、同一の番号とし、その詳細な説明は省略する。
【0043】
すなわち、図3の制御回路においては、押しボタン1に代わって、押しボタン61が設けられている。押しボタン61には、上昇ボタン21および下降ボタン22に加えて、緊急停止ボタン71が設けられている。
【0044】
押しボタン61の上昇ボタン21または下降ボタン22は、一般的に、機械的な押しボタンスイッチが用いられるので、例えば、機械的な引っかかり等の故障により、押下状態のままになってしまう場合がないとは言い切れない。
【0045】
そこで、押しボタン61には、上昇ボタン21および下降ボタン22に加えて、緊急停止ボタン71をさらに設けるようにしてもよい。緊急停止ボタン71が押下された場合、その信号は、制御部2に入力されず、直接、インバータ3の緊急停止入力用の端子に入力され、モータ4が停止されるようになされている。
【0046】
緊急停止ボタン71およびインバータ3の緊急停止入力機能のそれぞれは、従来広く用いられてきた技術であるが、図2を用いて説明した制御回路に、緊急停止ボタン71およびインバータ3の緊急停止入力の機能を加えることにより、上昇ボタン21および下降ボタン22のいずれかが機械的な故障により押下状態のままになってしまった場合においても、モータ4の緊急停止を行うことが可能となり、さらに安全を担保することが可能となる。
【0047】
なお、図2および図3を用いて説明した制御装置においては、上昇ボタン21および下降ボタン22が機械的に正常に機能していた場合、制御部2が暴走していても、上昇ボタン21および下降ボタン22の押下状態が解除されることで、モータ4が停止されるようになされていたため、安全である反面、制御部2が暴走していることが、ユーザにとって分かりにくい。特に、制御部2の暴走の原因が無くなり、再び制御部2が正常に動作した場合などにおいては、制御部2の暴走があった事自体が分からないようになってしまう。メンテナンス時などにおいて、制御部2が暴走している、または、暴走していたことが検出できれば、より好適である。
【0048】
次に、図4を参照して、制御部2が暴走していた場合、これを検出可能な、巻き上げ機の制御回路の第3の例について説明する。
【0049】
なお、図2または図3と対応する部分は、同一の番号とし、その詳細な説明は省略する。
【0050】
すなわち、図4の制御回路においては、AND回路51の2つの入力信号に接点81および接点82が設けられ、AND回路52の2つの入力信号に接点83および接点84が設けられ、接点81および接点82のそれぞれがExNOR(エクスクルーシブノア)回路91に接続され、接点83および接点84のそれぞれがExNOR回路92に接続されている。
【0051】
すなわち、AND回路51の2つの入力信号の論理が同一でなかった場合、ExNOR回路91の出力がONとなり、AND回路52の2つの入力信号の論理が同一でなかった場合、ExNOR回路92の出力がONとなる。制御部2が暴走していない場合、AND回路51の2つの入力信号の論理、および、AND回路52の2つの入力信号の論理は同一であるので、ExNOR回路91およびExNOR回路92の出力を監視することにより、制御部2が暴走していることが検出される。
【0052】
図4においては、ExNOR回路91およびExNOR回路92の出力は、インバータ3に入力されている。インバータ3には、必要に応じて、ExNOR回路91またはExNOR回路92の出力がONとなったこと、すなわち、制御部2が暴走したことをログとして残すことができるようにしても良い。
【0053】
また、必要に応じて、ExNOR回路91およびExNOR回路92の出力を、図示しない記録部に接続することにより、インバータ3とは異なる記録部などに、制御部2が暴走したことをログとして残すようにしても良い。
【0054】
また、例えば、ExNOR回路91およびExNOR回路92の出力に、図示しないLEDを接続し、AND回路51の2つの入力信号の論理が同一でなかった場合、または、AND回路52の2つの入力信号の論理が同一でなかった場合には、LEDが点灯するようにして、使用者に制御部2の暴走を通知することができるようにしても良い。
【0055】
このような構成にすることにより、制御部2が、例えば、外部ノイズや熱、または、ソフトウェアのバグなどの理由によって暴走してしまった場合に、そのログを残したり、ユーザに通知することが可能となる。
【0056】
次に、図5を参照して、制御部2が暴走した場合であっても、上下限リミットスイッチ6の動作に応じてモータ4を緊急停止することが可能な、巻き上げ機の制御回路の第4の例について説明する。
【0057】
なお、図2または図3と対応する部分は、同一の番号とし、その詳細な説明は省略する。
【0058】
すなわち、図5の制御回路においては、上下限リミットスイッチ6の上限リミット接点31から制御部2への入力信号に接点101が設けられ、下限リミット接点32から制御部2への入力信号に接点102が設けられている。そして、接点101および接点102のそれぞれは、OR回路103に接続され、OR回路103の出力は、インバータ3の緊急停止用入力端子に接続されている。
【0059】
したがって、制御部2が、例えば、外部ノイズや熱、または、ソフトウェアのバグなどの理由によって暴走してしまい、上下限リミットスイッチ6の上限リミット接点31、または、下限リミット接点32が動作しているにもかかわらず、制御部2から正転指令信号や逆転指令信号が出力されてしまっても、インバータ3の緊急停止用入力端子に緊急停止信号が入力されるため、モータ4の動作を停止させることが可能となり、安全を担保することが可能となる。
【0060】
上述した技術は、巻き上げ機の動作を制御する制御回路に適用することができる。
【0061】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…押しボタン、 2…制御部、 3…インバータ、 4…モータ、 5…エンコーダ、 6…上下限リミットスイッチ、 21…上昇ボタン、 22…下降ボタン、 41,42…接点、 51,52…AND回路、 61…押しボタン、 71…緊急停止ボタン、 81,82,83,84…接点、 91,92…ExNOR回路、 101,102…接点、 103…OR回路
図1
図2
図3
図4
図5