(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997570
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】圧力センサチップ
(51)【国際特許分類】
G01L 13/00 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
G01L13/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-227640(P2012-227640)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-81222(P2014-81222A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】徳田 智久
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 祐希
【審査官】
公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/040211(WO,A2)
【文献】
特開2005−069736(JP,A)
【文献】
特開昭59−174730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/08
G01L 9/00
G01L 13/00
G01L 19/06
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムの一方の面および他方の面にその周縁部を対面させて接合された第1および第2の保持部材を備えた圧力センサチップにおいて、
前記ダイアフラムは、
前記一方の面と前記他方の面との間に加わる圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムであり、
前記センサダイアフラムは、
前記一方の面が高圧側の測定圧の受圧面とされ、
前記他方の面が低圧側の測定圧の受圧面とされ、
前記第1の保持部材の周縁部の内縁は、
前記第2の保持部材の周縁部の内縁よりも外側に位置している
ことを特徴とする圧力センサチップ。
【請求項2】
請求項1に記載された圧力センサチップにおいて、
前記第2の保持部材は、
前記センサダイアフラムに過大圧が印加された時の当該センサダイアフラムの過度な変位を阻止する凹部を備えている
ことを特徴とする圧力センサチップ。
【請求項3】
ダイアフラムの一方の面および他方の面にその周縁部を対面させて接合された第1および第2の保持部材を備え、前記第1の保持部材の周縁部の内縁が前記第2の保持部材の周縁部の内縁よりも外側に位置している圧力センサチップにおいて、
前記ダイアフラムと前記第1の保持部材と前記第2の保持部材とからそれぞれ構成される第1および第2の構成体と、
一方の面を第1の面とし、他方の面を第2の面とし、この第1の面と第2の面との間に加わる圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムとを備え、
前記センサダイアフラムは、
前記第1の構成体の第2の保持部材と前記第2の構成体の第2の保持部材との間に配設され、
前記第1の構成体の第2の保持部材には、
前記第1の構成体のダイアフラムの一方の面に加えられる測定圧を前記センサダイアフラムの第1の面に導く第1の圧力伝達媒体が封入され、
前記第2の構成体の第2の保持部材には、
前記第2の構成体のダイアフラムの一方の面に加えられる測定圧を前記センサダイアフラムの第2の面に導く第2の圧力伝達媒体が封入されている
ことを特徴とする圧力センサチップ。
【請求項4】
請求項3に記載された圧力センサチップにおいて、
前記第1の構成体の第2の保持部材は、
前記第1の構成体のダイアフラムに過大圧が印加された時の当該ダイアフラムの過度な変位を阻止する凹部を備え、
前記第2の構成体の第2の保持部材は、
前記第2の構成体のダイアフラムに過大圧が印加された時の当該ダイアフラムの過度な変位を阻止する凹部を備えている
ことを特徴とする圧力センサチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイアフラムの一方の面および他方の面にその周縁部を対面させて接合された第1および第2の保持部材を備えた圧力センサチップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業用の差圧発信器(伝送器)として、圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムを用いた圧力センサチップを組み込んだ差圧発信器が用いられている。この差圧発信器は、高圧側および低圧側の受圧ダイアフラムに加えられる各測定圧を、圧力伝達媒体としての封入液によってセンサダイアフラムの一方の面および他方の面に導き、そのセンサダイアフラムの歪みを例えば歪抵抗ゲージの抵抗値変化として検出し、この抵抗値変化を電気信号に変換して取り出すように構成されている。
【0003】
このような差圧発信器は、例えば石油精製プラントにおける高温反応塔等の被測定流体を貯蔵する密閉タンク内の上下2位置の差圧を検出することにより、液面高さを測定するときなどに用いられる。
【0004】
図5に従来の差圧発信器の概略構成を示す。この差圧発信器100は、センサダイアフラム(図示せず)を有する圧力センサチップ1をメータボディ2に組み込んで構成される。圧力センサチップ1におけるセンサダイアフラムは、シリコンやガラス等からなり、薄板状に形成されたダイアフラムの表面に歪抵抗ゲージが形成されている。メータボディ2は、金属製の本体部3とセンサ部4とからなり、本体部3の側面に一対の受圧部をなすバリアダイアフラム(受圧ダイアフラム)5a,5bが設けられ、センサ部4に圧力センサチップ1が組み込まれている。
【0005】
メータボディ2において、センサ部4に組み込まれた圧力センサチップ1と本体部3に設けられたバリアダイアフラム5a,5bとの間は、大径のセンタダイアフラム6により隔離された圧力緩衝室7a,7bを介してそれぞれ連通され、圧力センサチップ1とバリアダイアフラム5a,5bとを結ぶ連通路8a,8bにシリコーンオイル等の圧力伝達媒体9a,9bが封入されている。
【0006】
なお、シリコーンオイル等の圧力媒体が必要となるのは、センサダイアフラムに対する計測媒体中の異物付着を防ぐこと、センサダイアフラムを腐食させないため、耐食性を持つ受圧ダイアフラムと応力(圧力)感度を持つセンサダイアフラムとを分離する必要があるためである。
【0007】
この差圧発信器100では、
図6(a)に定常状態時の動作態様を模式的に示すように、プロセスからの第1の測定圧Paがバリアダイアフラム5aに印加され、プロセスからの第2の測定圧Pbがバリアダイアフラム5bに印加される。これにより、バリアダイアフラム5a,5bが変位し、その加えられた圧力Pa,Pbがセンタダイアフラム6により隔離された圧力緩衝室7a,7bを介し、圧力伝達媒体9a,9bを通して、圧力センサチップ1のセンサダイアフラムの一方の面および他方の面にそれぞれ導かれる。この結果、圧力センサチップ1のセンサダイアフラムは、その導かれた圧力Pa,Pbの差圧ΔPに相当する変位を呈することになる。
【0008】
これに対して、例えば、バリアダイアフラム5aに過大圧Poverが加わると、
図6(b)に示すようにバリアダイアフラム5aが大きく変位し、これに伴ってセンタダイアフラム6が過大圧Poverを吸収するように変位する。そして、バリアダイアフラム5aがメータボディ2の凹部10aの底面(過大圧保護面)に着底し、その変位が規制されると、バリアダイアフラム5aを介するセンサダイアフラムへのそれ以上の差圧ΔPの伝達が阻止される。バリアダイアフラム5bに過大圧Poverが加わった場合も、バリアダイアフラム5aに過大圧Poverが加わった場合と同様にして、バリアダイアフラム5bがメータボディ2の凹部10bの底面(過大圧保護面)に着底し、その変位が規制されると、バリアダイアフラム5bを介するセンサダイアフラムへのそれ以上の差圧ΔPの伝達が阻止される。この結果、過大圧Poverの印加による圧力センサチップ1の破損、すなわち圧力センサチップ1におけるセンサダイアフラムの破損が未然に防止される。
【0009】
この差圧発信器100では、メータボディ2に圧力センサチップ1を内包させているので、プロセス流体など外部腐食環境から圧力センサチップ1を保護することができる。しかしながら、センタダイアフラム6やバリアダイアフラム5a,5bの変位を規制するための凹部10a,10bを備え、これらによって圧力センサチップ1を過大圧Poverから保護する構造をとっているので、その形状が大型化することが避けられない。
【0010】
そこで、圧力センサチップに保持部材として第1のストッパ部材および第2のストッパ部材を設け、この第1のストッパ部材および第2のストッパ部材の凹部をセンサダイアフラムの一方の面および他方の面に対峙させることによって、過大圧が印加された時のセンサダイアフラムの過度な変位を阻止し、これによってセンサダイアフラムの破損・破壊を防止する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
図7に特許文献1に示された構造を採用した圧力センサチップの概略を示す。同図において、11−1はセンサダイアフラム、11−2および11−3はセンサダイアフラム11−1を挟んで接合された第1および第2のストッパ部材、11−4および11−5はストッパ部材11−2および11−3に接合された台座である。ストッパ部材11−2,11−3や台座11−4,11−5はシリコンやガラスなどにより構成されている。
【0012】
この圧力センサチップ11において、ストッパ部材11−2,11−3には凹部11−2a,11−3aが形成されており、ストッパ部材11−2の凹部11−2aをセンサダイアフラム11−1の一方の面11−1Aに対峙させ、ストッパ部材11−3の凹部11−3aをセンサダイアフラム11−1の他方の面11−1Bに対峙させている。凹部11−2a,11−3aは、センサダイアフラム11−1の変位に沿った曲面(非球面)とされており、その頂部に圧力導入孔11−2b,11−3bが形成されている。また、台座11−4,11−5にも、ストッパ部材11−2,11−3の圧力導入孔11−2b,11−3bに対応する位置に、圧力導入孔11−4a,11−5aが形成されている。
【0013】
このような圧力センサチップ11を用いると、センサダイアフラム11−1の一方の面11−1Aに過大圧が印加されてセンサダイアフラム11−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ部材11−3の凹部11−3aの曲面によって受け止められる。また、センサダイアフラム11−1の他方の面11−1Bに過大圧が印加されてセンサダイアフラム11−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ部材11−2の凹部11−2aの曲面によって受け止められる。
【0014】
これにより、センサダイアフラム11−1に過大圧が印加された時の過度な変位が阻止され、センサダイアフラム11−1の周縁部に応力集中が生じないようにして、過大圧の印加によるセンサダイアフラム11−1の不本意な破壊を効果的に防ぎ、その過大圧保護動作圧力(耐圧)を高めることが可能となる。また、
図5に示された構造において、センタダイアフラム6や圧力緩衝室7a,7bをなくし、バリアダイアフラム5a,5bからセンサダイアフラム11−1に対して直接的に測定圧Pa,Pbを導くようにして、メータボディ2の小型化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−69736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、
図7に示された圧力センサチップ11の構造において、ストッパ部材11−2および11−3は、その周縁部11−2cおよび11−3cを対面させて、またその周縁部11−2cおよび11−3cの内縁L1およびL2の位置を合わせ、センサダイアフラム11−1の一方の面11−1Aおよび他方の面11−1Bに接合している。
【0017】
すなわち、ストッパ部材11−2の凹部11−2aを囲む周縁部11−2cをセンサダイアフラム11−1の一方の面11−1Aに対面させ、また、ストッパ部材11−3の凹部11−3aを囲む周縁部11−3cをセンサダイアフラム11−1の他方の面11−1Bに対面させ、ストッパ部材11−2の周縁部11−2cの内縁L1とストッパ部材11−3の周縁部11−3cの内縁L2との位置を合わて、センサダイアフラム11−1の一方の面11−1Aおよび他方の面11−1Bにストッパ部材11−2および11−3を接合している。
【0018】
このような構造の場合、片側から圧力が印加されセンサダイアフラム11−1が撓んだ際に、引っ張り応力が最も発生する圧力が印加された側のセンサダイアフラム11−1のエッジ付近(
図7中の一点鎖線で囲んだ部位)が両面とも拘束状態にあるため、その箇所に応力集中が発生し、期待される耐圧が確保できないという問題があった。
【0019】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ダイアフラムの拘束による応力発生を低減し、期待される耐圧を確保することが可能な圧力センサチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成するために本発明は、ダイアフラムの一方の面および他方の面にその周縁部を対面させて接合された第1および第2の保持部材を備えた圧力センサチップにおいて、
ダイアフラムは、一方の面と他方の面との間に加わる圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムであり、センサダイアフラムは、一方の面が高圧側の測定圧の受圧面とされ、他方の面が低圧側の測定圧の受圧面とされ、第1の保持部材の周縁部の内縁は、第2の保持部材の周縁部の内縁よりも外側に位置していることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、ダイアフラムの一方の面に高圧が
かかると、第1の保持部材の周縁部の内縁が第2の保持部材の周縁部の内縁よりも外側に位置しているので、ダイアフラムは、第1の保持部材の周縁部の内縁と第2の保持部材の周縁部の内縁との間で、拘束による過度な引っ張り応力が生じることなく撓むことができ、この部分に生じる応力を低減させることが可能となる。
【0023】
本発明において、低圧側の測定圧の受圧面に接合する第2の保持部材は、センサダイアフラムに過大圧が印加された時の当該センサダイアフラムの過度な変位を阻止する凹部を備えたストッパ部材とすることが好ましいが、必ずしもそのような凹部を備えていなくてもよく、センサダイアフラムを保持するだけの単純な形状の保持部材であってもよい。
【0024】
また、本発明において、ダイアフラムと第1の保持部材と第2の保持部材とからそれぞれ構成される第1および第2の構成体と、一方の面を第1の面とし、他方の面を第2の面とし、この第1の面と第2の面との間に加わる圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムとを設け、センサダイアフラムを、第1の構成体の第2の保持部材と第2の構成体の第2の保持部材との間に配設し、第1の構成体の第2の保持部材に、第1の構成体のダイアフラムの一方の面に加えられる測定圧をセンサダイアフラムの第1の面に導く第1の圧力伝達媒体を封入し、第2の構成体の第2の保持部材に、第2の構成体のダイアフラムの一方の面に加えられる測定圧をセンサダイアフラムの第2の面に導く第2の圧力伝達媒体を封入するようにした構成としてもよい。
【0025】
このような構成とする場合、第1の構成体の第2の保持部材は、第1の構成体のダイアフラムに過大圧が印加された時の当該ダイアフラムの過度な変位を阻止する凹部を備えたストッパ部材とし、第2の構成体の第2の保持部材は、第2の構成体のダイアフラムに過大圧が印加された時の当該ダイアフラムの過度な変位を阻止する凹部を備えたストッパ部材とすることが好ましいが、必ずしもそのような凹部を備えていなくてもよく、センサダイアフラムを保持するだけの単純な形状の保持部材であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ダイアフラムの一方の面および他方の面にその周縁部を対面させて接合された第1および第2の保持部材を備えた圧力センサチップにおいて、第1の保持部材の周縁部の内縁を第2の保持部材の周縁部の内縁よりも外側に位置させるようにしたので、ダイアフラムの拘束による応力発生を低減し、期待される耐力を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る圧力センサチップの一実施の形態(実施の形態1)の概略を示す図である。
【
図2】本発明に係る圧力センサチップの実施の形態2の概略を示す図である。
【
図3】本発明に係る圧力センサチップの実施の形態3の概略を示す図である。
【
図4】本発明に係る圧力センサチップの実施の形態4の概略を示す図である。
【
図5】従来の差圧発信器の概略構成を示す図である。
【
図6】この差圧発信器の動作態様を模式的に示す図である。
【
図7】特許文献1に示された構造を採用したセンサチップの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る圧力センサチップの一実施の形態(実施の形態1)の概略を示す図である。同図において、
図7と同一符号は
図7を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0029】
なお、この実施の形態1では、圧力センサチップを符号11Aで示し、
図7に示された圧力センサチップ11と区別する。また、この実施の形態1では、センサダイアフラム11−1上で高圧側の測定圧を受ける面が必ず決まっているものとする。この例では、測定圧Paが高圧側の測定圧として定められ、測定圧Pbが低圧側の測定圧として定められているものとする。
【0030】
この圧力センサチップ11Aでは、センサダイアフラム11−1の一方の面11−1Aが高圧側の測定圧Paの受圧面とされ、センサダイアフラム11−1の他方の面11−1Bが低圧側の測定圧Pbの受圧面とされる。
【0031】
また、この圧力センサチップ11Aでは、センサダイアフラム11−1の他方の面11−1Bにのみストッパ部材11−3を設け、センサダイアフラム11−1の一方の面11−1aには単純な形状の保持部材11−6を設けた構成としている。
【0032】
すなわち、ストッパ部材11−3は、センサダイアフラム11−1の変位に沿った曲面とされた凹部11−3aを有しているが、保持部材11−6にはそのような凹部は設けられておらず、過大圧を保護する部材としては機能しない。本実施の形態において、保持部材11−6はリング状とされている。また、本実施の形態において、保持部材11−6が本発明でいう第1の保持部材に相当し、ストッパ部材11−3が本発明でいう第2の保持部材に相当する。
【0033】
また、この圧力センサチップ11Aにおいて、保持部材11−6の周縁部11−6cの内縁L1は、ストッパ部材11−2の周縁部11−3cの内縁L2よりも外側に位置している。すなわち、保持部材11−6の中空部11−6aを囲む周縁部11−6cをセンサダイアフラム11−1の一方の面11−1aに対面させ、また、ストッパ部材11−3の凹部11−3aを囲む周縁部11−3cをセンサダイアフラム11−1の他方の面11−1Bに対面させ、ストッパ部材11−3の周縁部11−3cの内縁L2よりも保持部材11−6の周縁部11−6cの内縁L1を外側に位置させて、センサダイアフラム11−1の一方の面11−1Aおよび他方の面11−1Bに保持部材11−6およびストッパ部材11−3を接合している。
【0034】
この圧力センサチップ11Aでは、測定圧Paが高圧側の測定圧として必ず決まっているので、センサダイアフラム11−1はストッパ部材11−3の凹部11−3a側にしか撓まない。この場合、センサダイアフラム11−1は、保持部材11−6の周縁部11−6cの内縁L1(ダイアフラム支点)とストッパ部材11−3の周縁部11−3cの内縁L2(圧力印加側支点)との間で、拘束による過度な引っ張り応力が生じることなく撓むことができるので、この部分に生じる応力が低減されるものとなる。これにより、センサダイアフラム11−1の拘束による応力発生が低減され、期待される耐力を確保することが可能となる。
【0035】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、センサダイアフラム11−1の他方の面11−1Bにセンサダイアフラム11−1の変位に沿った曲面とされた凹部11−3aを有するストッパ部材11−3を保持部材として設けるようにしたが、そのような凹部を有さない単純な形状の保持部材を設けるようにしてもよい。
【0036】
図2に、実施の形態2として、ストッパ部材11−3に代えて、保持部材11−6と同様の単純な形状(リング状)の保持部材11−3’を設けるようにした例を示す。この実施の形態2の圧力センサチップ11Bでも、実施の形態1の圧力センサチップ11Aと同様、保持部材11−6の周縁部11−6cの内縁L1(ダイアフラム支点)を保持部材11−3’の周縁部11−3cの内縁L2(圧力印加側支点)よりも外側に位置させるようにして、センサダイアフラム11−1の拘束による応力発生を低減させるようにする。
【0037】
〔実施の形態3〕
図3はこの発明に係る圧力センサチップの他の実施の形態(実施の形態3)の概略を示す図である。なお、この実施の形態3では、圧力センサチップを符号12で示し、実施の形態1,2の圧力センサチップ11A,11Bと区別する。実施の形態1,2では、センサダイアフラム上で高圧側の測定圧を受ける面が必ず決まっていたが、実施の形態3では、センサダイアフラム上で高圧側の測定圧を受ける面は決まっていない。
【0038】
この圧力センサチップ12は、ダイアフラム(バリアダイアフラム)12−1と第1の保持部材12−2と第2の保持部材12−3とから構成される第1の構成体12Aと、ダイアフラム(バリアダイアフラム)12−4と第1の保持部材12−5と第2の保持部材12−6とから構成される第2の構成体12Bと、センサダイアフラム12−7とを備えている。
【0039】
第1の構成体12Aにおいて、第1の保持部材12−2には凹部12−2aが、第2の保持部材12−3には凹部12−3aが形成されており、第1の保持部材12−2の凹部12−2aを囲む周縁部12−2cをバリアダイアフラム12−1の一方の面12−1Aに対面させ、また、第2の保持部材12−3の凹部12−3aを囲む周縁部12−3cをバリアダイアフラム12−1の他方の面12−1Bに対面させ、第2の保持部材12−3の周縁部12−3cの内縁L2よりも第1の保持部材12−2の周縁部12−2cの内縁L1を外側に位置させて、バリアダイアフラム12−1の一方の面12−1Aおよび他方の面12−1Bに第1の保持部材12−2および第2の保持部材12−3を接合している。
【0040】
なお、第2の保持部材12−3は、その凹部12−3aがテーパ状とされ、バリアダイアフラム12−1への過大圧を保護する部材として機能するが、第1の保持部材12−2は、その凹部12−2aがテーパ状とされておらず、バリアダイアフラム12−1への過大圧を保護する部材としては機能しない。また、第1の保持部材12−2には凹部12−2aと連通する圧力導入孔12−2bが形成されており、第2の保持部材12−3には凹部12−3aと連通する連通路12−3bが形成されている。なお、第2の保持部材12−3の凹部12−3aは、バリアダイアフラム12−1の変位に沿った曲面(非球面)としてもよい。
【0041】
第2の構成体12Bにおいて、第1の保持部材12−5には凹部12−5aが、第2の保持部材12−6には凹部12−6aが形成されており、第1の保持部材12−5の凹部12−5aを囲む周縁部12−5cをバリアダイアフラム12−4の一方の面12−4Aに対面させ、また、第2の保持部材12−6の凹部12−6aを囲む周縁部12−6cをバリアダイアフラム12−4の他方の面12−1Bに対面させ、第2の保持部材12−6の周縁部12−6cの内縁L2よりも第1の保持部材12−5の周縁部12−5cの内縁L1を外側に位置させて、バリアダイアフラム12−4の一方の面12−4Aおよび他方の面12−4Bに第1の保持部材12−5および第2の保持部材12−6を接合している。
【0042】
なお、第2の保持部材12−6は、その凹部12−6aがテーパ状とされ、バリアダイアフラム12−4への過大圧を保護する部材として機能するが、第1の保持部材12−5は、その凹部12−5aがテーパ状とされておらず、バリアダイアフラム12−4への過大圧を保護する部材としては機能しない。また、第1の保持部材12−5には凹部12−5aと連通する圧力導入孔12−5bが形成されており、第2の保持部材12−6には凹部12−6aと連通する連通路12−6bが形成されている。なお、第2の保持部材12−6の凹部12−6aは、バリアダイアフラム12−4の変位に沿った曲面(非球面)としてもよい。
【0043】
この圧力センサチップ12において、センサダイアフラム12−7は、第1の構成体12Aの第2の保持部材12−3と第2の構成体12Bの第2の保持部材12−6との間に配設されている。また、第1の構成体12Aの第2の保持部材12−3の凹部12−3aおよび連通路12−3bには、第1の構成体12Aのバリアダイアフラム12−1の一方の面12−1Aに加えられる測定圧Pbをセンサダイアフラム12−7の一方の面(第1の面)12−7Aに導く圧力伝達媒体(第1の圧力伝達媒体)12−8が封入されており、第2の構成体12Bの第2の保持部材12−6の凹部12−6aおよび連通路12−6bには、第2の構成体12Bのバリアダイアフラム12−4の一方の面12−4Aに加えられる測定圧Paをセンサダイアフラム12−7の他方の面(第2の面)12−7Bに導く圧力伝達媒体(第2の圧力伝達媒体)12−9が封入されている。
【0044】
この圧力センサチップ12において、測定圧Paを高圧側の測定圧とし、測定圧Pbを低圧側の測定圧とした場合、バリアダイアフラム12−4の一方の面12−4Aに高圧側の測定圧Paがかかると、バリアダイアフラム12−4は、第1の保持部材12−5の周縁部12−5cの内縁L1(ダイアフラム支点)と第2の保持部材12−6の周縁部12−6cの内縁L2(圧力印加側支点)との間で、拘束による過度な引っ張り応力が生じることなく撓むことができるので、この部分に生じる応力が低減されるものとなる。
【0045】
また、この圧力センサチップ12において、測定圧Pbを高圧側の測定圧とし、測定圧Paを低圧側の測定圧とした場合、バリアダイアフラム12−1の一方の面12−1Aに高圧側の測定圧Pbがかかると、バリアダイアフラム12−1は、第1の保持部材12−2の周縁部12−2cの内縁L1(ダイアフラム支点)と第2の保持部材12−3の周縁部12−3cの内縁L2(圧力印加側支点)との間で、拘束による過度な引っ張り応力が生じることなく撓むことができるので、この部分に生じる応力が低減されるものとなる。
【0046】
このようにして、この実施の形態3の圧力センサチップ12では、バリアダイアフラム12−1および12−4の拘束による応力発生を低減させ、期待される耐圧を確保することができるようになる。
【0047】
〔実施の形態4〕
実施の形態3では、バリアダイアフラム12−1の他方の面12−1Bにテーパ状とされた凹部12−3aを有する第2の保持部材12−3を設けるようにしたが、またバリアダイアフラム12−4の他方の面12−4Bにテーパ状とされた凹部12−6aを有する第2の保持部材12−6を設けるようにしたが、そのような形状の凹部を有さない単純な形状の保持部材を設けるようにしてもよい。
【0048】
図4に、実施の形態4として、第2の保持部材12−3,12−6に代えて、第1の保持部材12−2,12−5と同様の単純な形状の第2の保持部材12−3’,12−6’を設けるようにした例を示す。この実施の形態4の圧力センサチップ12’でも、実施の形態3の圧力センサチップ12と同様、第1の保持部材12−2,12−5の周縁部12−2c,12−5cの内縁L1(ダイアフラム支点)を第2の保持部材12−3’,12−6’の周縁部12−3c,12−6cの内縁L2(圧力印加側支点)よりも外側に位置させるようにして、バリアダイアフラム12−1,12−4の拘束による応力発生を低減させるようにする。
【0049】
なお、上述した実施の形態では、センサダイアフラムを圧力変化に応じて抵抗値が変化する歪抵抗ゲージを形成したタイプとしているが、静電容量式のセンサチップとしてもよい。静電容量式のセンサチップは、所定の空間(容量室)を備えた基板と、その基板の空間上に配置されたダイアフラムと、基板に形成された固定電極と、ダイアフラムに形成された可動電極とを備えている。ダイアフラムが圧力を受けて変形することで、可動電極と固定電極との間隔が変化してその間の静電容量が変化する。
【0050】
また、上述した各実施の形態において、ダイアフラム支点と圧力印加側支点との間の位置のずらし量は、センサが満足すべき諸性能(耐圧性、大きさ、精度、感度など)を考慮して決定するものとする。ダイアフラム支点と圧力印加側支点との間の位置のずらし量を大きくすることは応力緩和効果を高め耐圧性が向上する反面、センサが大型化したり、製造上の制約が生じたりする可能性がある。したがって、センサの諸性能を満足する範囲でダイアフラム支点と圧力印加側支点との間の位置のずらし量を決定することが重要である。
【0051】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
11A,11B…圧力センサチップ、11−1…センサダイアフラム、11−1A…一方の面、11−1B…他方の面、11−3…ストッパ部材、11−3a…凹部、11−3b…圧力導入孔、11−3c…周縁部、11−4,11−5…台座、11−4a,11−5a…圧力導入孔、11−6…保持部材、11−6a…中空部、11−6c…周縁部、L1,L2…内縁、12…圧力センサチップ、12−1,12−4…ダイアフラム(バリアダイアフラム)、12−2,12−5…第1の保持部材、12−3,12−6…第2の保持部材、12A…第1の構成体、12B…第2の構成体、12−7…センサダイアフラム、12−8,12−9…圧力伝達媒体。