(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
加工面を研削するための研削砥石としては、円板部材の外周面に環状の砥石部材を取り付けたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような研削砥石では、円板部材の円中心を回転中心として回転させ、砥石部材の外周面を加工面に接触させることで、加工面を研削することができる。また、加工面が凹形状である場合には、砥石部材の側面によって加工面を研削することもできる。
【0003】
しかしながら、前記した研削砥石では、砥石部材の側面と加工面との間に研削液が浸入し難いため、加工面の温度が過度に上昇し易くなっている。そこで、高圧かつ大量の研削液を砥石部材の側面と加工面との間に吹き付けることで、砥石部材の側面と加工面との間に研削液を浸入させているが、研削液の供給量を多く必要とするとともに、研削液を高圧で吹き付けるため多くの研削液が研削砥石に反射して飛散してミストの発生が多くなるという問題があった。
【0004】
そこで、本発明者等は、研削液を砥石部材に効率的に供給できる研削砥石を発明した(特許文献2参照)。
図6に示すように、研削砥石100は、円板部材101と環状の砥石部材102とを備えており、円板部材101を厚さ方向に貫通した給液孔110が形成されている。給液孔110の一端は流入口111となり、他端は吐出口112となっている。給液孔110の流入口111よりも円板部材101の径方向の外側に、外周壁部120が形成されている。このような構成によって、研削液は外周壁部120に沿って流入口111に誘導されるので、効率的に砥石部材102に供給される。したがって、研削液の供給量を減らすことができるとともに、ミストの発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0015】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係る研削装置1aは、研削砥石2と外枠部材3aと、研削液の供給装置4とを備えてなる。研削装置1aは、研削砥石2の回転軸5が縦方向に配置された縦型研削装置である。
研削砥石2は、円板部材10と、円板部材10の下面10A(一方の側面)の外周縁部に装着された環状の砥石部材20と、を備えている。
【0016】
円板部材10は、回転軸5が中心部に連結されることで、円中心を回転中心として回転する部材である。この円板部材10は、鋼材などを用いた金属部品であり、十分な剛性を有している。
【0017】
図1および
図2に示すように、円板部材10の上面10B(他方の側面)の外周縁部には、周壁部11が形成されている。周壁部11は、円板部材10の外周縁部に沿って立ち上げられている。詳しくは、周壁部11は、上面10Bの法線方向(
図1の上方向)に立ち上げられている。周壁部11の内周面12(周壁部11の内側の周壁面)は、周壁部11の基端側(
図1の下側)から先端側(
図1の上側)に向かうに従って縮径された逆テーパー状の傾斜面にて形成されている。そして、円板部材10の上面10Bと、周壁部11の内周面12とによって楔状の隅部が形成されている。周壁部11と上面10Bとの境界部分は、段差部分13を構成している。
なお、周壁部の内周面は、傾斜する構成に限定されるものではなく、周壁部の表面と垂直になっていてもよい。
【0018】
円板部材10には、下面10A(一方の側面)から上面10B(他方の側面)に貫通した給液孔15が形成されている。給液孔15は、ワークWの加工位置Pに研削液を誘導して供給するための流路である。給液孔15は、下面10Aの外周縁部に開口した吐出口16と、上面10Bに開口した流入口17を備えている。給液孔15は、下面10Aから上面10Bに直線状に穿設された円形断面の貫通孔にて構成されている。流入口17は、吐出口16よりも、円板部材10の径方向の内側に形成されている。つまり、給液孔15は、流入口17から吐出口16に向かうに従って円板部材10の外側に進むように傾斜して形成されている。本実施形態では、給液孔15の傾斜角度と、周壁部11の内周面12との傾斜角度とが一致している。
【0019】
流入口17は、周壁部11よりも円板部材10の径方向の内側部分に形成されている。流入口17は、その外周線が周壁部11の内周面12に接するように、上面10B上に開口している。これによって、周壁部11の内周面12と、給液孔15の外側面とが直線状に繋がる(
図1参照)ので、研削液が給液孔15内に円滑に流れ込む。
給液孔15は、複数形成されており、円板部材10の周方向に等間隔ピッチで放射状に配置されている(
図2参照)。
【0020】
図2に示すように、砥石部材20は、円筒状の砥石である。本実施形態では、CBN(立方晶窒化ホウ素)砥石を用いているが、その素材は限定されるものではなく、各種公知の砥石を用いることができる。砥石部材20の上端面は、円板部材10の下面10Aの外周縁部に固着されている。砥石部材20の外周径は、円板部材10の外周径と等しくなっている。
【0021】
外枠部材3aは、研削砥石2の周囲に設けられ、円板部材10の下面10Aに流れた研削液が外部に流出するのを防止する部材である。外枠部材3aは、研削砥石2を囲うように外形円柱形状の箱状に形成されている。外枠部材3aは、上板部30と側板部31と底板部32とを備えてなる。外枠部材3aは、円板部材10を囲って装着可能なように、上板部30、側板部31および底板部32が適宜分割され部分的に一体化されている。
【0022】
例えば、側板部31と底板部32が有底筒状に一体形成され、上板部30は別体で平板状に形成されている。上板部30には、回転軸5が挿通する挿通孔33が形成されている。上板部30は、回転軸5を回転可能に支持する軸受部(固定系)に固定されている。側板部31は、円筒状に形成されている。底板部32は、側板部31の外径と同等の直径を有する略円板状に形成されている。なお、後記するように円板状の一部は、切りかかれている。外枠部材3aの一部である底板部32は。円板部材10の下方に位置し、円板部材10の下面10A(一方の側面)に対向して配置されている。底板部32は、円板部材10の下側の砥石部材20に干渉しない範囲で、下面10Aに接近している。底板部32は、研削液が下方に落下するのを防ぐとともに、研削液をワーク加工位置Pに向かって誘導する役目を果たす。
【0023】
図1および
図3に示すように、側板部31の下端部および底板部32の周縁部のうち、ワーク加工位置Pに相当する部分には、開口部35が形成されている。開口部35は、砥石部材10の一部を外部に臨ませるとともに、ワークWを外枠部材3a内に挿入させてワーク加工位置Pに設置するためのものである。開口部35は、ワークWの形状に応じて形状および大きさが適宜設定される。
なお、外枠部材3aの形状は前記形状に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0024】
ワークWは、外枠部材3aの外部に設けられた支持装置7によって支持されている。外部から支持されたワークWは、その一部が、外枠部材3aの内側のワーク加工位置Pに向けて、開口部35内に挿入される。つまり、ワークWは、一部が外枠部材3aからはみ出した状態で、ワーク加工位置Pに設置される。
【0025】
供給装置4は、例えば噴射ノズル40と供給管41とを備えて構成されている。噴射ノズル40は、円板部材10の上面10Bに対向して配置されている。噴射ノズル40は、上面10Bのうち、周壁部11よりも円板部材10の中心側に研削液を噴き付ける。供給管41は、上板部30または側板部31に形成された貫通孔(図示せず)を貫通している。供給管41の一端は、噴射ノズル40に接続され、供給管41の他端は、研削液の供給源(図示せず)に接続されている。
【0026】
以上のような構成の研削装置1aにおいては、円板部材10の円中心を回転中心として回転させながら、上面10Bに対して、供給装置4の噴射ノズル40から垂直に研削液を噴き付ける。すると、研削液は、遠心力によって円板部材10の周方向に広がりながら、流入口17へ流れ、給液孔15を通過して吐出口16から、円板部材10の下面10A側へと流される。
【0027】
このとき、ワーク加工位置Pの近傍に流れた研削液は、直接ワークWと砥石部材20との間に流れるが、ワーク加工位置Pから離れた位置に流れた研削液は、円板部材10の下面10Aから落下してしまう。本実施形態では、落下した研削液を、外枠部材3aの底板部32で受け止めることで、研削液の流出を抑制できる。ここで、研削液は、
図3に示すように、底板部32の外周縁部で受け止められる。ところで、底板部32上では、円板部材10の回転によって空気が共回りし、回転気流Rが発生している。この回転気流Rによって、底板部32の外周縁部で受け止められた研削液は、
図3中、矢印にて示すように、底板部32上を回転方向へ沿って流され、最終的にワーク加工位置Pへと誘導される。そして、ワーク加工位置Pに流れた研削液は、ワークWの側面等に当たってワークWの上面の加工部分に飛散して供給されることとなる。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る研削装置1aによれば、ワーク加工位置Pから離れた場所に流れた研削液は、外枠部材3aの底板部32で受け止められるとともに、円板部材10の回転によって発生した回転気流Rにより、ワーク加工位置Pに誘導される。つまり、研削液は、開口部35以外から外部に流出することはなく、流出する場合は必ずワーク加工位置Pを経由(通過)する。したがって、研削液を効率よくワーク加工位置Pへと供給でき、ひいては、研削液の供給量を低減することができる。
また、開口部35を設けたことによって、ワーク加工位置PへのワークWの設置を外部から容易に行うことができる。
【0029】
(変形例)
前記実施形態では、底板部32は、段差のない円板状に形成されていたが、これに限定されるものではない。
図4に示すように、底板部32aの中心寄りの部分に、上方に突出する突出部34を形成して、段差を持たせてもよい。突出部34の上面は、円板部材10の下面10Aと干渉しない程度に接近するようになっている。突出部34は、底板部32aの一部をプレス加工して形成してもよいし(
図4参照)、平板状の底板部の上面にブロック状の突出部を固定するようにしてもよい。
なお、その他の部分は、
図1の構成と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0030】
このように、底板部32aに突出部34を形成したことによって、円板部材10の下面10Aと、底板部32aとの隙間が狭くなるので、円板部材10の回転による回転気流が発生し易く、研削液をより一層効率的にワーク加工位置Pへと誘導することができる。
【0031】
また、図示はしないが、その他の変形例として、底板部を、開口部の近傍が低くなるように傾斜させてもよい。このような構成によれば、底板部上に落下した研削液を重力によってワーク加工位置に流すことができる。
【0032】
(第二実施形態)
図5に示すように、第二実施形態に係る研削装置1bは、上下一対の研削砥石2,2と外枠部材3bと、上下一対の供給装置4,4とを備えてなる。研削装置1bは、研削砥石2,2が上下方向に対象配置され、ともに水平方向に設置されている。研削装置1bは、ワークWの両面を研削する縦型両面研削装置である。研削砥石2を支持する回転軸5と、供給装置4も上下方向に対称配置されている。
【0033】
研削砥石2は、
図1のものと同等の構成である。なお、下側に配置される研削砥石2は、天地が
図1のものと逆になるので、第一実施形態で「下面10A」と称していたものを、第二実施形態では「加工側面10A」(一方の側面)と言い換え、第一実施形態で「上面10B」と称していたものを、第二実施形態では「供給側面10B」(他方の側面)と言い換える。つまり、上側に配置される研削砥石2では、円板部材10の下側の面が、加工側面10Aとなり、上側の面が供給側面10Bとなる。一方、下側に配置される研削砥石2では、円板部材10の上側の面が、加工側面10Aとなり、下側の面が供給側面10Bとなる。
【0034】
上下一対の研削砥石2,2は、砥石部材20,20同士が互いに対向しており、砥石部材20,20間に隙間をあけて配置されている。ワークWは、砥石部材20,20間の隙間に設置されて、両面研削される。
【0035】
外枠部材3bは、上下一対の研削砥石2,2を囲うように外形円柱形状の箱状に形成されている。外枠部材3bは、上板部36と側板部37と底板部38とを備えてなる。外枠部材3bは、上下の円板部材10を囲って装着可能なように、上板部36、側板部37および底板部38が適宜分割され部分的に一体化されている。
本実施形態では、例えば、側板部37が上下に分割されており、上側の側板部(以下「上側板部」という)37aと上板部36とが有蓋筒状に一体形成され、下側の側板部(以下「下側板部」という)37bと底板部38が有底筒状に一体形成されている。上板部36および底板部38には、回転軸5が挿通する挿通孔33がそれぞれ形成されている。上板部36は、上側の回転軸5を回転可能に支持する軸受部(固定系)に固定され、底板部38は、下側の回転軸5を回転可能に支持する軸受部(固定系)に固定されている。上側板部37aおよび下側板部37bは、ともに円筒状に形成されている。上側板部37aは、下側板部37bよりも小径になっており、上側板部37aの下端部が、下側板部37bの上端部の内側に挿入される。
【0036】
上側板部37aの下端は、下側の研削砥石2の砥石部材20よりも下方まで延在しており、上側板部37aの下端部が、砥石部材20,20間の隙間を側方から覆うように構成されている。上側板部37aの下端部のうち、ワーク加工位置Pに相当する部分には、開口部39が形成されている。開口部39は、ワークWを挿入させてワーク加工位置Pに設置するための開口部である。開口部39は、ワークWの形状に応じて適宜形状および大きさが設定される。
【0037】
ワークWは、外枠部材3bの外部に設けられた支持装置7によって支持された状態で、開口部39からワーク加工位置P(上下の砥石部材20,20間)へ挿入される。支持装置7の支持部は、開口部39に挿入可能な形状となっている。ここで、ワークWは、一部が外枠部材3bからはみ出した状態で、ワーク加工位置Pに設置される。
【0038】
下側板部37bの上端は、下側の研削砥石2の砥石部材20の高さの中間部まで延在しており、下側板部37bの上端部と上側板部37aの下端部とが重なっている。下側板部37bの上端は、砥石部材20よりも上方に突出しないので、ワーク加工位置Pに設置されたワークWに干渉しない。
なお、外枠部材3bの形状は前記形状に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0039】
以上のような構成の研削装置1bにおいては、上下の円板部材10,10を回転させながら、各供給側面10Bに対して、上下の供給装置4,4の噴射ノズル40,40から垂直に研削液をそれぞれ噴き付ける。すると、研削液は、遠心力によって円板部材10の周方向に広がりながら、流入口17へ流れ、給液孔15を通過して吐出口16から、円板部材10の加工側面10A側へと流される。下側の円板部材10においても、周壁部11の内周面12と給液孔15とが、研削液の供給の流れの下流側に向かうに従って円板部材10の外側に進むように傾斜して形成されているので、遠心力によって研削液が加工側面10Aへと流される。
【0040】
このとき、上側の研削砥石2において、ワーク加工位置Pの近傍に流れた研削液は、直接ワークWと砥石部材20との間に流れるが、ワーク加工位置Pから離れた位置に流れた研削液は、円板部材10の加工側面10Aから落下してしまう。本実施形態では、落下した研削液を、下側の研削砥石2の円板部材10の加工側面10Aで受け止めることで、研削液の流出を抑制できる。
【0041】
ここで、下側の研削砥石2の円板部材10の加工側面10Aに落下した研削液は、下側の供給装置4から供給された研削液と合わさって、円板部材10の回転によってワーク加工位置Pへと運ばれる。
【0042】
ワーク加工位置Pにおいては、特に下側の研削砥石2の円板部材10の加工側面10Aから多くの研削液が流れてくるので、研削液がワークWの側面等に当たってワークWの両面の加工部分に飛散して供給されることとなる。
【0043】
一方、遠心力によって、上下の砥石部材20,20の隙間から外側へ飛ばされた研削液は、上側板部37aに堰き止められて、外部に飛散するのを防止できる。上側板部37aに堰き止められた研削液は底板部38上に落下した後、回収されて再利用される。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る研削装置1bによれば、ワーク加工位置Pから離れた場所に流れた研削液が、下側の円板部材10の加工側面10Aに堰き止められて、ワーク加工位置Pへ誘導される。したがって、研削液を効率よくワーク加工位置Pへと供給でき、研削液の供給量を低減することができる。さらに、外側へ飛ばされた研削液は、外枠部材3bの上側板部37aによって堰き止められて外部に流出することがない。
また、開口部39を設けたことによって、ワーク加工位置PへのワークWの設置を容易に行うことができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。例えば、前記実施形態では、縦型の研削装置1a,1bを例に挙げて説明したが、本発明は、研削砥石の回転軸が横方向に配置される横型の研削装置においても適用可能である。この場合、外枠部材は、研削砥石の周囲を覆うように設置し、開口部は、外枠部材の下方に形成するのが好ましい。このような構成にすれば、外枠部材で堰き止めた研削液は、重力によって開口部に流れ、ワーク加工位置へと誘導される。
【0046】
さらに、前記実施形態では、供給装置4は、噴射ノズル40を備えて構成されているが、前記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、回転軸5の中心に研削液の供給路を形成し、円板部材10の中心部に貫通する給液孔(図示せず)を形成して、円板部材10の下面10A(加工側面10A)の中心部から研削液を供給するような構成であってもよい。