特許第5997579号(P5997579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997579
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】放射性金属廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20160915BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   G21F9/30 551C
   G21F9/30 S
   G21F9/28 571B
   G21F9/28 571D
   G21F9/28 571J
   G21F9/28 531A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-231571(P2012-231571)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-85122(P2014-85122A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 昌典
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 晋
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−088991(JP,A)
【文献】 特開平05−203795(JP,A)
【文献】 特開昭61−132899(JP,A)
【文献】 特開昭63−145995(JP,A)
【文献】 特開平05−256996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/30
C25F 1/00−1/06
B09B 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼からなる第1の放射性金属廃棄物と炭素鋼からなる第2の放射性金属廃棄物を処理する方法であって、
リン酸溶液を含有する電解液を使用して前記第1の放射性金属廃棄物を電解研磨する電解研磨工程と、
前記第2の放射性金属廃棄物の表面をブラストにより処理するブラスト工程と、
電解研磨後のリン酸を含有する廃液と、前記ブラスト工程によって生じる研削材及び前記第2の放射性金属廃棄物の剥離物を共に溶融炉に投入し、溶融固化する溶融固化工程と、
を有する放射性金属廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記電解研磨工程の後であって前記溶融固化工程の前に、電解研磨後の廃液を濾過する濾過工程をさらに有しており、
前記濾過工程によって濾過された濾液が、前記電解研磨工程の電解液として利用され、
前記濾過工程によって濃縮された廃液が、前記溶融固化工程によって溶融固化されることを特徴とする、請求項1記載の放射性金属廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記電解研磨工程の後であって前記濾過工程の前に、電解研磨後の廃液にシュウ酸を添加するシュウ酸添加工程をさらに有していることを特徴とする、請求項に記載の放射性金属廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、放射性金属廃棄物を処理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や放射性物質を取り扱う施設において、設備の廃止や解体、或いは運転に伴い発生する金属廃棄物の中には、放射能レベルが基準値以上の金属廃棄物(以下、放射性金属廃棄物とも称する)が含まれる。処分の観点からは、これらの金属廃棄物はその表面を除染して放射能レベルを基準値以下に下げてから処理されることが望ましい。放射性金属廃棄物の除染方法には例えば電解研磨やドライブラストがある。非特許文献1には、電解研磨を用いて放射性金属廃棄物の表面を除染する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ノルベルト・アイケルパッシェ(Norbert Eickelpasch)、他3名、「グンドレミンゲンの2つのドイツ製沸騰水型原子炉、ユニットA(KRB)及びKAHL(VAK)、の解体により得た教訓(Lessons Learned by Dismantling Two German BWR’s in Gundremmingen, Unit A (KRB), and KAHL (VAK))」、放射性廃棄物マガジン(Radwaste Magazine)、(アメリカ)、米国原子力学会(American Nuclear Society)、1997年1月、p.17−36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示される技術では、主に鉄を含む放射性金属廃棄物を、リン酸を電解液として電解研磨する。電解研磨終了後は、電解液(即ち、リン酸廃液)にシュウ酸を添加して電解液中の鉄をシュウ酸鉄として沈殿させる。その後、シュウ酸鉄を酸化鉄に熱分解し、酸化鉄をドラムに装填して廃棄(貯蔵)する。一方、リン酸廃液は蒸発処理を施して電解研磨の電解液として再利用する。
【0005】
非特許文献1の技術では、シュウ酸を用いてリン酸廃液中の鉄を沈殿させた後で蒸発処理を施し、再生したリン酸溶液を電解研磨の電解液として再利用する。そうすることで、二次廃棄物の量を減らすことができる。しかしながら、熱分解により生成した酸化鉄はそのまま廃棄されるため、廃棄施設のスペースが多く必要になるという問題が生じる虞がある。そこで、酸化鉄を溶融して減容することが考えられるが、酸化鉄の融点は一般に高いため、溶融処理が難しい。
【0006】
本明細書では、放射性金属廃棄物の表面除染により生じる二次廃棄物を適切に溶融することで、二次廃棄物をさらに減容化・安定化することを可能にする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する放射性金属廃棄物の処理方法は、電解研磨工程と、溶融固化工程を有する。電解研磨工程では、リン酸溶液を含有する電解液を使用して放射性金属廃棄物を電解研磨する。溶融固化工程では、電解研磨後のリン酸を含有する廃液を溶融炉に投入して、廃液中の溶解物を溶融固化する。
【0008】
上記の処理方法では、リン酸溶液を含有する電解液を使用して放射性金属廃棄物を電解研磨する。これによって、放射性金属廃棄物の表面が溶解し、電解液中に溶出する。即ち、電解研磨後の電解液(以下、リン酸廃液又は廃液とも称する)には、放射性金属が溶解している。電解研磨によりリン酸廃液中に溶解している溶解物は、リン酸廃液と共に溶融炉に投入され、溶融固化される。溶解物をリン酸と共に溶融することで、リン酸が溶解物の融点を低下させる。このため、溶解物のみを溶融する場合と比較して、溶解物を低い温度で溶融して減容することが可能になる。一般に、放射性金属廃棄物の表面除染後の二次廃棄物は放射能が濃縮されているが、二次廃棄物を溶融することで、二次廃棄物を安定した状態で廃棄(貯蔵)することが可能になる。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細、及び、さらなる改良は、発明を実施するための形態、及び、実施例にて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に係る放射性金属廃棄物の処理方法のフローチャートを示す。
図2】ステンレス鋼の電解研磨装置の模式図を示す。
図3】リン酸廃液の濾過装置の模式図を示す。
図4】フィルターの内部構造の模式図を示す。
図5】放射性金属廃棄物の二次廃棄物を高周波溶融する装置の概略図を示す。
図6】実施例2に係る放射性金属廃棄物の処理方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0012】
(特徴1) 本明細書が開示する放射性金属廃棄物の処理方法は、ブラスト工程をさらに有してもよい。放射性金属廃棄物は、第1の放射性金属廃棄物と、第2の放射性金属廃棄物を有してもよい。ブラスト工程では、第2の放射性金属廃棄物の表面をブラストにより処理してもよい。電解研磨工程では、第1の放射性金属廃棄物の表面を電解研磨により処理してもよい。溶融固化工程は、電解研磨工程によって生じる廃液と、ブラスト工程によって生じる研削材及び第2の放射性金属廃棄物の剥離物が共に溶融固化されてもよい。一般に、原子力発電所や放射性物質を取り扱う施設において生じる放射性金属廃棄物は、ステンレス鋼などの比較的に硬度の高い金属と、炭素鋼などの比較的に硬度の低い金属に分別されることがある。このような場合、第1の放射性金属廃棄物を、上記の比較的に硬度の高い金属としてもよく、一方、第2の放射性金属廃棄物を、上記の比較的に硬度の低い金属としてもよい。金属の硬度に応じて、異なる表面除染の方法を実施することで、放射性金属廃棄物の表面を適切に除染できる。また、ブラスト工程では鋳鉄グリッドなどの研削材を用いて第2の放射性金属廃棄物の表面を剥離することにより除染する。ブラスト工程によって生じる研削材や剥離物は、電解研磨工程によって生じるリン酸廃液と共に溶融炉に投入され溶融固化される。この方法によると、リン酸が研削材や剥離物の融点を下げるため、研削材や剥離物を低い温度で溶融して減容することが可能になる。また、研削材や剥離物は二次廃棄物であるため放射能が濃縮されているが、溶融することで安定して廃棄(貯蔵)できる。即ち、溶融固化工程では、電解研磨工程によって生じるリン酸廃液中に溶け出している溶解物に加えて、ブラスト工程によって生じる研削材や剥離物もまとめて溶融処理する。そうすることで、異なる表面除染の方法によって生じる二次廃棄物(即ち、リン酸廃液中の溶解物、研削材、及び剥離物)を、一度に減容化することができる。また、二次廃棄物の融点を下げる物質として、電解研磨工程によって生じるリン酸廃液を用いるため、二次廃棄物の融点を下げるための溶融助剤を新たに準備する必要がない。
【0013】
(特徴2) 本明細書が開示する放射性金属廃棄物の処理方法は、濾過工程をさらに有していてもよい。濾過工程は、電解研磨工程の後で、溶融固化工程の前に実施されてもよい。濾過工程では、電解研磨後の廃液を濾過してもよい。濾過工程によって濾過された濾液は、電解研磨工程の電解液として利用されてもよい。一方、濾過工程によって濃縮された廃液は、溶融固化工程によって溶融固化されてもよい。この方法では、電解研磨後のリン酸廃液は、濾過装置によって濾過される。濾過された濾液は、必要であれば蒸発処理を経て電解研磨に適した濃度に調整された後で、電解液(即ちリン酸溶液を含有する溶液)として再利用される。一方、濾過されずに濃縮された廃液(以下、リン酸濃縮廃液又は濃縮廃液とも称する)は、二次廃棄物(即ち、リン酸濃縮廃液中の溶解物、研削材、及び剥離物)と共に溶融固化工程において溶融固化される。この方法によると、リン酸廃液の一部を再利用するため、溶融固化工程に投入されるリン酸廃液の量を低減することが可能になる。
【0014】
(特徴3) 本明細書が開示する放射性金属廃棄物の処理方法は、電解研磨工程の後であって濾過工程の前に、電解研磨後の廃液にシュウ酸を添加する工程をさらに有していてもよい。電解研磨後のリン酸廃液中には、第1の放射性金属廃棄物の表面を構成する物質が溶解物として含まれる。リン酸廃液にシュウ酸を添加することにより、その溶解物とシュウ酸が反応して沈殿物を生成する。この方法によると、濾過工程において電解研磨後の廃液から溶解物を容易に分離することができる。
【実施例1】
【0015】
原子力発電所などの原子力関連施設において、設備の廃止や解体、運転に伴い金属廃棄物が生じる。ほとんどの金属廃棄物は一般廃棄物として処理可能であるが、一部の金属廃棄物(例えば、汚染水処理施設の解体に伴い生じる金属廃棄物等)は、その放射能レベルが基準値を上回っている場合がある。このような放射能を有する金属廃棄物(以下、放射性金属廃棄物とも称する)は、除染して放射能レベルを下げることにより、一般廃棄物と共に処理されるか、或いは溶融して再利用されることが可能となる。また、放射能レベルが一般廃棄物の基準値レベルまでは下がらない場合でも、廃棄(処分)を簡易にすることができる。一般に、放射能汚染した金属の放射能レベルは、金属の表面の放射性物質を除去することで低減することができる。本実施例では、放射性金属廃棄物としてステンレス鋼及び炭素鋼を処理する場合を説明する。ステンレス鋼は「第1の放射性金属廃棄物」の一例であり、炭素鋼は「第2の放射性金属廃棄物」の一例である。以下に、これらの放射性金属廃棄物の表面除染に伴い生じる二次廃棄物の処理方法について説明する。
【0016】
(電解研磨工程)
図1は、実施例1の放射性金属廃棄物の処理方法のフローチャートを示す。まず、ステップS2において、放射性金属廃棄物を電解研磨する。電解研磨による除染方法を、図2を参照して説明する。図2は、電解研磨装置の模式図を示す。電解槽32には、電解液34が満たされている。電解液34はリン酸溶液を含有している。電解液34に、放射能を有するステンレス鋼36(以下、放射性ステンレス鋼とも称する)を浸漬させる。電解槽32を陰極に接続し、放射性ステンレス鋼36を陽極に接続して電流を流すと、放射性ステンレス鋼36の表面が電気化学的に溶解する。即ち、放射性ステンレス鋼36の表面を構成する鉄などの金属、及び表面に付着した放射性物質が電解液34中に溶解する。放射性ステンレス鋼36の表面を電解研磨によって平滑化することにより、放射性ステンレス鋼36を除染することができる。除染を終えたステンレス鋼36は電解槽32から引き上げられ、一般廃棄物と共に処理されるか、溶融して再利用されることが可能となる。また、放射能レベルが一般廃棄物の基準値レベルまでは下がらない場合でも、廃棄(処分)を簡易にすることができる。一方、放射性ステンレス鋼36の除染に伴い電解液34中に溶解した鉄などの溶解物は、放射能を有する物質を含有している。電解液34中における放射性ステンレス鋼36の溶解物の存在形態は、イオンに限られない。例えば、一部が電解液34と反応して沈殿物を生成していてもよい。本実施例では、それらをまとめて溶解物と称することに留意されたい。また、本実施例では電解研磨後の電解液34を、リン酸廃液と称する。
【0017】
(シュウ酸添加工程)
図1に戻って説明を続ける。ステップS2でステンレス鋼36の電解研磨が終了すると、ステップS4でリン酸廃液(電解研磨後の電解液34)にシュウ酸を添加する。シュウ酸は、リン酸廃液中の鉄イオンと反応してシュウ酸鉄として沈殿する(ステップS6)。本実施例ではリン酸廃液中の鉄イオンを沈殿させる物質としてシュウ酸を用いたが、リン酸廃液中の各種イオンを沈殿させる物質はこれに限られない。
【0018】
(濾過工程)
続いて、ステップS8では、シュウ酸添加後のリン酸廃液が濾過される。リン酸廃液の濾過について、図3を参照して説明する。図3は、リン酸廃液を濾過する濾過装置50の一例を示す。濾過装置50は、容器38とポンプ40と濾過器41を有している。容器38は、電解研磨によって生じるリン酸廃液(詳細には、シュウ酸が添加されたリン酸廃液)を貯留する。容器38は配管38aによってポンプ40に接続されている。ポンプ40は配管40aによって濾過器41に接続されている。ポンプ40は、容器38内のリン酸廃液を濾過器41に送り出す。濾過器41は配管42aによって容器38に接続されている。濾過器41は、クロスフロー式の濾過器であり、フィルター収容部42、透過液管43、及びフィルター44を有する。フィルター収容部42は筒状に形成されており、その内部に収容空間が設けられている。収容空間には、複数のフィルター44が収容可能となっている。フィルター収容部42は、その両端にフィルター44を固定するための機構(図示省略)が形成されている。フィルター収容部42の外周面には透過液管43が接続されている。フィルター44は円柱状の棒状の部材であり、その両端が図3に示すようにフィルター収容部42に固定されている。即ち、フィルター44の表面(円柱の側面)は、フィルター収容部42の内部の空間に露出している。
【0019】
フィルター44の内部構造について、図4を参照して説明する。図4は、円柱状のフィルター44の部分斜視図を示す。フィルター44は、円柱状の基材44aを有している。基材44aはアルミナ(Al)で構成されるが、基材44aを構成する物質はこれに限られず、例えばチタニア(TiO)で構成されてもよい。基材44aには、長手方向に伸びる円柱状の空洞45が形成されている。空洞45の径は、基材44aの底面の径より小さい。空洞45の内周面には、中間層44bが、内周面の全体を覆うように形成されている。中間層44bの上面には、膜層44cが、中間層44bの内周面の全体を覆うように形成されている。中間層44bは、例えばアルミナ(Al)で構成される。膜層44cは、例えばアルミナ(Al)で構成される。中間層44b及び膜層44cを構成する物質は、いずれもアルミナ(Al)に限られず、例えばチタニア(TiO)で構成されてもよい。
【0020】
上記の濾過装置50を用いてリン酸廃液を濾過する際の動作を説明する。ステップS6でシュウ酸鉄を沈殿させた後のリン酸廃液は、図示しない配管を通って容器38に送られる。容器38内のリン酸廃液は、ポンプ40によって配管38a及び配管40aを通って濾過器41に送られる。濾過器41に送られたリン酸廃液は、フィルター44によって濾過される。即ち、濾過器41に送られたリン酸廃液は、フィルター収容部42の一端に流入する。フィルター収容部42の一端に流入したリン酸廃液は、フィルター44の一端から他端に向かって流れる。この際、図3の部分拡大図に示すように、リン酸廃液の一部がフィルター44によって濾過される。具体的には、リン酸廃液の一部は、膜層44c、中間層44b及び基材44aを通過することで溶解物が除去され、基材44aの外周面よりフィルター収容部42の収容空間に透過液48として流れ出る。フィルター44を透過した透過液48は、フィルター収容部42の収容空間から透過液管43を通って外部に排出される(ステップS10)。透過液48は、「濾過された濾液」の一例に相当する。一方、リン酸廃液の残りは、フィルター44を軸方向に流れ、フィルター44の他端より流出する。したがって、リン酸廃液中の溶解物の濃度は、フィルター44の一端(流入端)より他端(流出端)の方が高くなる(即ち、濃縮される)。フィルター44の他端より流出されたリン酸廃液は、配管42aを通って容器38に送られる。容器38に送られたリン酸廃液(濃縮された廃液)は、再びポンプ40によって濾過器41に送られ、クロスフロー濾過によって透過液48と濃縮された廃液に分離される。この工程を繰り返すことで濃縮された廃液がさらに濃縮されて、最終的に容器38にリン酸濃縮廃液46が貯えられる(ステップS12)。リン酸濃縮廃液46の少なくとも一部は、粉状のリン酸濃縮粉末となるまで乾燥される(ステップS13)。
【0021】
なお、本実施例では、クロスフロー式の濾過器を用いるため、フィルター44の表面(空洞45の表面)の堆積物はリン酸廃液の流れによって常時洗浄される(いわゆる、セルフクリーニング機能を備えている)。なお、フィルター44の空洞45表面に堆積した堆積物は、定期的に透過液48を逆流させることにより、表面より剥離してもよい。即ち、フィルター44の空洞45の表面に堆積物がある程度付着すると膜透過流量が低下するので、定期的に透過液48を逆流させることによりフィルター44の空洞45の表面の堆積物を剥離させ洗浄(いわゆる、逆洗)してもよい。また、本実施例では、クロスフロー式の濾過方法について説明しているが、濾過方法はこれに限られず、直濾過式であってもよい。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。ステップS10においてフィルター収容部42の内部空間から透過液管43を通って排出された透過液48は、ステップS14で蒸発される。蒸発されて濃度が高くなった透過液48は、電解槽32に送られ、電解液34として電解研磨工程で再利用される(ステップS2)。ステップS14では、電解液34に適した濃度になるように透過液48を蒸発させる。即ち、ステップS10の透過液48の濃度が電解液34に適した濃度であれば、ステップS14は実施しなくてもよい。
【0023】
(ブラスト工程)
次に、本実施例におけるもう一つの除染方法について説明する。ステップS16において、放射能を有する炭素鋼(以下、放射性炭素鋼とも称する)にドライブラストを実施する。ドライブラストは従来公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。本実施例のドライブラストは、バレル式及び/又はコンベア式のドライブラスト装置を用いて実施する。バレル式のドライブラストは、比較的にサイズが小さい放射性炭素鋼に実施することが好ましく、一方、コンベア式のドライブラストは、比較的にサイズが大きい放射性炭素鋼に実施することが好ましい。なお、ドライブラストの方法は、上記の装置によるものに限られない。例えば、上記の装置を用いてドライブラストを実施するのが困難な場合などには、室内で作業員がノズルを操作し、放射性炭素鋼にノズルの先端から直接研削材を噴射する方法で実施することもできる。何れのドライブラストにおいても、研削材として鋳鉄グリッドを用いることができる。また、放射性炭素鋼の表面は酸化しているため、剥離物は主に酸化鉄である。本実施例では上記の2種類のドライブラストを実施することにより、放射性炭素鋼の表面が剥離されるため、放射性炭素鋼を除染することができる。除染を終えた炭素鋼は、一般廃棄物と共に処理されるか、溶融して再利用されることが可能となる。また、放射能レベルが一般廃棄物の基準値レベルまでは下がらない場合でも、廃棄(処分)を簡易にすることができる。一方、ドライブラストによって放射性炭素鋼の除染を終えると、鋳鉄グリッドと、鋳鉄グリッドにより放射性炭素鋼から剥離された酸化鉄が生じる(ステップS18、S20)。鋳鉄グリッド及び酸化鉄は、放射能を有する物質を含有している。
【0024】
(溶融固化工程)
放射性ステンレス鋼36の電解研磨により生じるリン酸濃縮廃液46(ステップS12)及びリン酸濃縮粉末(ステップS13)と、放射性炭素鋼のドライブラストにより生じる鋳鉄グリッド(ステップS18)及び酸化鉄(ステップS20)は、ステップS22において高周波溶融装置にて溶融固化される。前述したように、リン酸濃縮廃液46は、シュウ酸により沈殿しきらなかった溶解物及びシュウ酸鉄などの沈殿物を含有している。以下に、図5を参照して、これらの二次廃棄物(即ち、リン酸濃縮廃液46、リン酸濃縮粉末、鋳鉄グリッド、及び酸化鉄)の溶融固化処理について説明する。
【0025】
図5は、高周波溶融装置2の概略図である。高周波溶融装置2は、炉本体11と、炉本体11の上端に取付けられた蓋体15と、炉本体11の下方に配置された昇降装置20を有している。炉本体11は、炉体12と、冷却ノズル13と、炉体12の外周面に沿って配置された誘導加熱コイル14を備えている。炉体12は、上端及び下端が開口した筒状に形成されており、その内部に収容空間12aが設けられている。収容空間12aには、溶融容器10が収容可能となっている。炉体12の上端部には投入口12bが設けられ、炉体12の下端部には開口部12cが設けられている。投入口12b及び開口部12cは、収容空間12aと連通している。開口部12cは、溶融容器10が通過可能な大きさに形成されている。投入口12bは、開口部12cより小さく形成されており、溶融容器10が通過不能な大きさに形成されている。冷却ノズル13は、炉体12の下部に、炉本体11の外壁及び炉体12を貫通するように配置されている。炉本体11の外壁と炉体12の間は空洞になっている。誘導加熱コイル14は、その空洞内で、図示しない保持アームによって保持されている。誘導加熱コイル14は、炉体12を介して溶融容器10の側面を覆うように配置されている。誘導加熱コイル14は、図示しない高周波電源(50〜3000Hz)に接続されている。
【0026】
蓋体15は、炉本体11の上端に取付けられている。蓋体15が炉本体11に取付けられると、炉体12の上端の投入口12bが閉じられる。蓋体15には、投入機16が設置されている。投入機16は、炉体12の投入口12b(即ち、収容空間12a)の上方に配置されている。投入機16には、溶融処理の対象となる二次廃棄物の内、固体状の廃棄物(即ち、リン酸濃縮粉末、鋳鉄グリッド、及び酸化鉄など)が装填される。投入機16は、収容空間12aに収容される溶融容器10内に二次廃棄物を投入する。また、蓋体15には、ノズル17が設けられる。ノズル17は、炉体12の収容空間12aに連通している。ノズル17は、溶融処理の対象となる二次廃棄物の内、液状の廃棄物(即ち、リン酸濃縮廃液46)を溶融容器10内に投入する。また、蓋体15には、排出ガス出口18が設けられる。排出ガス出口18は、炉体12の収容空間12aに連通している。排出ガス出口18は、溶融処理中に発生するガスを排出する。排出ガス出口18には、図示しない排ガス処理設備が接続されている。排出ガス出口18から排出される排ガスは、排ガス処理設備で無害化され、大気に排出される。
【0027】
昇降装置20は、平面台20aと、平面台20aを昇降する昇降機構(図示省略)を備えている。平面台20a上に支台24が載置され、支台24上に溶融容器10が載置される。平面台20aが昇降機構によって上端位置(図1の実線で示す位置)まで上昇すると、収容空間12aの下端が閉じられる。平面台20aが昇降機構によって下端位置(図1の二点鎖線で示す位置)まで下降すると、収容空間12aの下端が開かれる。
【0028】
溶融容器10は、有底の容器であり、カーボンを含有する導電性のセラミックでできている。誘導加熱コイル14に高周波電源を印加すると、溶融容器10内に渦電流が流れ、溶融容器10を好適に加熱することができる。溶融容器10の電気抵抗率や厚みなどを調節することで、溶融容器10の温度を制御することができる。例えば、溶融容器10は1550[℃]に加熱することができる。
【0029】
次に、上述した高周波溶融装置2により溶融処理の対象となる二次廃棄物を溶融固化処理する例を説明する。まず、昇降装置20を駆動して平面台20aを下端位置(図1の二点鎖線に示す位置)に位置決めする。次いで、平面台20a上に支台24を載置し、その支台24上に溶融容器10を載置する。溶融容器10には、予めリン酸濃縮粉末、鋳鉄グリッド、及び酸化鉄などの二次廃棄物を装填しておく。次に、昇降装置20を、平面台20aが炉体12の下面に当接するまで上昇させる。これによって、支台24上に配置された溶融容器10は、炉体12の収容空間12aに収容される。
【0030】
次いで、誘導加熱コイル14に高周波電源を印加する。これによって、溶融容器10に渦電流が発生し、溶融容器10が発熱する。溶融容器10の温度が上昇すると、溶融容器10の内部に装填された二次廃棄物が溶融する。即ち、リン酸濃縮粉末、鋳鉄グリッド、及び酸化鉄が溶融する。これらの二次廃棄物が溶融して減容すると、溶融容器10の上方にスペースができるため、投入機16を駆動してそのスペースに二次廃棄物を投入する。投入機16は固体状の二次廃棄物(即ち、リン酸濃縮粉末、鋳鉄グリッド、及び酸化鉄など)を投入するが、二次廃棄物の種類はこれに限られない。例えば、ステップS13ではリン酸濃縮廃液46が粉体化するまで乾燥されるが、リン酸濃縮廃液46の乾燥の程度はこれに限られず、リン酸濃縮廃液46がスラッジ状になった時点で乾燥を停止してもよい(以下、スラッジ状のリン酸濃縮廃液46をリン酸濃縮スラッジとも称する)。リン酸濃縮廃液46がスラッジ状である場合は、このリン酸濃縮スラッジを袋詰めして投入機16から投入してもよいし、溶融容器10が収容空間12aに収容される前に、予め溶融容器10にリン酸濃縮スラッジを装填しておいてもよい。投入機16から投入された二次廃棄物が溶融して減容すると、溶融容器10の上方にスペースができるため、ノズル17からそのスペースにリン酸濃縮廃液46を投入する。なお、投入機16とノズル17を駆動する順序はこれに限られない。例えば、ノズル17を投入機16に先立って駆動して、リン酸濃縮廃液46を先に投入してもよい。また、投入機16とノズル17とを交互に駆動する必要はなく、例えば投入機16から何回かに分けて連続して二次廃棄物を投入した後で、ノズル17を駆動してもよい。また、投入機16から投入する二次廃棄物は、常にリン酸濃縮粉末、鋳鉄グリッド、及び酸化鉄(リン酸濃縮スラッジも含む)が一括して投入される必要はなく、上記の廃棄物が別々に投入されてもよい。即ち、投入機16やノズル17から順次投入される二次廃棄物が適切に溶融して減容される限り、二次廃棄物を投入する順番や、一度に投入する二次廃棄物の種類などは、どのようであってもよい。上記の処理を繰り返すことで二次廃棄物が溶融処理される。この際、溶融容器10には、冷却ノズル13から冷却ガスが供給されて、溶融容器10が冷却される。冷却ノズル13を制御することで、溶融容器10の温度が溶融処理に適した温度に維持される。二次廃棄物の溶融温度は、例えば1200[℃]であるが、これに限られない。溶融処理中に発生するガスは、排出ガス出口18から排出され、排ガス処理設備(不図示)において処理される。溶融処理が終了すると、溶融容器10は高周波溶融装置2から搬出される。その手順は、溶融容器10を炉体12の内部に収容させる前述の手順と逆の手順である。次に、溶融処理を終了した溶融容器10は、冷却室22に移動され、その内部の溶湯が冷却固化される。溶湯を冷却固化した溶融容器10は、所定の貯蔵施設に廃棄される。本実施例では溶融容器10ごと廃棄されるが、所定の容器に溶融容器10ごと装填してから廃棄されてもよい。
【0031】
実施例1に係る放射性金属廃棄物の処理方法の利点を説明する。従来は、放射性金属廃棄物の表面除染後に生じる酸化鉄などの二次廃棄物は溶融処理が困難であった。具体的には、酸化鉄の融点が高いため、セシウムなどの放射性物質が揮発する、処理速度が遅くなる、といった問題があった。また、酸化鉄などの粉・粒状物をセメント固化する場合は少量ずつしか処理できないといった問題があった。そのため、これらの二次廃棄物は少量ずつセメント固化などにより処理するか、又はそのまま貯蔵されており、廃棄施設のスペースを多く必要とする点で問題があった。しかしながら、本実施例の放射性金属廃棄物の処理方法では、酸化鉄を始めとする二次廃棄物にリン酸濃縮廃液46を加えて溶融する。リン酸濃縮廃液46に含有されるリン酸は酸化鉄の融点を下げるため、酸化鉄を従来よりも低温で溶融することが可能となる。具体的には、通常の酸化鉄がおよそ1500[℃]で溶融するのに対し、リン酸を加えることでおよそ1200[℃]で溶融できる。従って、酸化鉄などの二次廃棄物の溶融処理に際し、前述した事象の発生を抑制でき、従来よりも比較的に容易に酸化鉄などの二次廃棄物を溶融することが可能となる。また、溶融固化処理により二次廃棄物を減容化できるため、廃棄施設におけるスペースの問題も改善される。また、減容化に伴い、廃棄に用いる溶融容器10の数が減少するため、溶融容器10に付随するコストも低減できる。さらに、放射性金属廃棄物の表面除染後に生じる酸化鉄などの二次廃棄物は放射能が濃縮されているため、溶融固化することで従来よりも安定した形で廃棄することができる。
【0032】
また、従来は、電解研磨後のリン酸廃液に関して、一部は電解研磨の電解液として再利用されるものの、残りのリン酸廃液(即ち、放射性金属廃棄物が溶解または沈殿している廃液)は、例えば中和・凝集沈殿処理して沈殿物はそのまま貯蔵されていた。しかしながら、本実施例の放射性金属廃棄物の処理方法では、ブラスト工程によって生じる酸化鉄などの二次廃棄物に、残りのリン酸廃液(即ち、リン酸濃縮廃液46)を加えて溶融処理する。これにより、これまで中和・凝集沈殿処理して沈殿物がそのまま貯蔵されていたリン酸濃縮廃液46を、酸化鉄の融点を下げるための溶融助剤として活用することができる。と同時に、リン酸濃縮廃液46自体も減容化することができる。即ち、電解研磨処理によって生じる二次廃棄物であるリン酸濃縮廃液46を用いて、ドライブラスト処理によって生じる二次廃棄物である酸化鉄や鋳鉄グリッドの融点を下げ、これらの二次廃棄物をまとめて溶融固化する。異なる除染方法に伴って生じる二次廃棄物をまとめて溶融するため、二次廃棄物を一度に処分することができ、放射性金属廃棄物の処理効率を向上することができる。また、溶融助剤として機能するリン酸として、二次廃棄物であるリン酸濃縮廃液46を用いるため、溶融助剤を製造するための新たな施設を設ける必要がなく、従来の設備を用いて実施することができる。
【0033】
また、シュウ酸添加工程により、電解研磨後のリン酸廃液中に存在する鉄イオンなどの各種イオンをシュウ酸の化合物として沈殿させる。濾過工程に先立ってリン酸廃液中に溶解している溶解物をある程度沈殿させることで、その後の濾過処理における負担が軽減する。濾過工程において、より高い精度で透過液48とリン酸濃縮廃液46に分離することができる。また、濾過工程に要する時間を短縮でき、作業性が向上する。
【0034】
また、電解研磨後のリン酸廃液は、濾過工程によって透過液48とリン酸濃縮廃液46に分離される。濾過工程では、耐食、耐薬品性に優れたセラミック膜を用いてクロスフロー濾過を行う。クロスフロー濾過方式を採用することにより、リン酸廃液はセラミック膜の表面に対し平行に流れるため、リン酸廃液中の溶解物やシュウ酸鉄などの沈殿物が膜面に堆積することを抑制できる。即ち、膜面を常時洗浄(セルフクリーニング)することができる。また、膜面に上記の物質が堆積した場合も、逆洗により堆積物を除去できるため、フィルター44を、高い精度を維持しながら長期的に使用することができる。また、濾過工程を設けることで、リン酸廃液中の溶解物や沈殿物を確実に除去できるため、透過液48を電解液として再利用できる回数が増え、結果として、二次廃棄物の量を低減することができる。
【実施例2】
【0035】
図6を参照して実施例2に係る処理方法について説明する。なお、実施例1と同一の工程についてはその説明を省略する。
【0036】
(電解研磨工程、濾過工程)
まずステップS32で放射性ステンレス鋼36の表面を電解研磨によって除染する。次に、ステップS38で電解研磨後のリン酸廃液を、濾過装置50を用いて濾過する。これによって、透過液48が生成される(ステップS40)と共に、リン酸濃縮廃液46が生成される(ステップS42)。リン酸濃縮廃液46の少なくとも一部は、粉状のリン酸濃縮粉末となるまで乾燥される(ステップS43)。透過液48はその後、電解研磨工程において電解液34として再利用される。
【0037】
(ブラスト工程、溶融固化工程)
一方、ステップS46では、放射性炭素鋼の表面をドライブラストによって除染する。ドライブラストが終了すると、二次廃棄物として鋳鉄グリッド(研削物)及び酸化鉄(放射性炭素鋼の表面の剥離物)が生じる(ステップS48、S50)。放射性ステンレス鋼36の電解研磨により生じるリン酸濃縮廃液46(ステップS32)及びリン酸濃縮粉末(ステップS43)と、放射性炭素鋼のドライブラストにより生じる鋳鉄グリッド(ステップS48)及び酸化鉄(ステップS50)は、ステップS52において高周波溶融装置にて溶融固化される。
【0038】
実施例2に係る放射性金属廃棄物の処理方法は、シュウ酸添加工程を含まない。セラミック膜を用いたクロスフロー濾過によりリン酸廃液中の溶解物を透過液48から分離できる場合は、本実施例の処理方法のようにシュウ酸添加工程を実施しなくてもよい。なお、濾過工程に先立って、リン酸廃液を遠心分離機を用いて遠心分離してもよい。遠心分離によりリン酸廃液から溶解物を分離した後にそのリン酸廃液を濾過することで、リン酸廃液を透過液48とリン酸濃縮廃液46に確実に分離することができる。リン酸廃液から溶解物を分離する方法は遠心分離に限られず、他の方法を用いて分離してもよい。また、本実施例の処理方法は、透過液48を蒸発させる処理を含まない。濾過工程を終了後の透過液48の濃度が電解液34の濃度範囲であれば、本実施例の処理方法のように蒸発処理を実施しなくてもよい。これらの処理を実施しないことにより、二次廃棄物の溶融固化処理に要する時間を短縮し、作業効率を向上することができる。
【0039】
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本明細書が開示する放射性金属廃棄物の処理方法は、上記の実施例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、電解研磨工程では電解槽32を直接陰極に接続したが、電解液34に陰極板を浸漬させてもよい。また、表面除染の方法は電解研磨やドライブラストに限られない。例えば、その他の方法を用いて放射性金属廃棄物を表面除染した結果生じる酸化鉄などの二次廃棄物も、リン酸濃縮廃液46と共に溶融処理してもよい。また、遠心分離処理は、シュウ酸添加工程を実施する場合にも実施してもよい。また、ステップS12(或いはステップS42)で生成された濃縮リン酸廃液46の全てを、ステップS13(或いはステップS43)にて乾燥、粉体化する場合は、リン酸濃縮粉末は投入機16から投入できるため、ノズル17は使用しなくてもよい。即ち、ノズルを備えない高周波溶融装置でも本明細書が開示する技術を実施することができる。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
2:高周波溶融装置
10:溶融容器
12:炉体
14:誘導加熱コイル
16:投入機
17:ノズル
18:排出ガス出口
20:昇降装置
20a:平面台
22:冷却室
24:支台
32:電解槽
34:電解液
36:放射性ステンレス鋼
38:容器
38a、40a、42a:配管
40:ポンプ
41:濾過器
42:フィルター収容部
43:透過液管
44:フィルター
44a:基材
44b:中間層
44c:膜層
45:空洞
46:リン酸濃縮廃液
48:透過液
52:濾過面
図1
図2
図3
図4
図5
図6