特許第5997580号(P5997580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997580
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】3次元自然地物描画システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/00 20060101AFI20160915BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20160915BHJP
   G06T 17/05 20110101ALI20160915BHJP
【FI】
   G06T17/00
   G09B29/00 Z
   G06T17/05
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-234267(P2012-234267)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-85836(P2014-85836A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】502002186
【氏名又は名称】株式会社ジオ技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】岸川 喜代成
(72)【発明者】
【氏名】藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭史
(72)【発明者】
【氏名】池上 達也
【審査官】 千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−8547(JP,A)
【文献】 特開2002−74323(JP,A)
【文献】 特開2001−134778(JP,A)
【文献】 特表2011−512606(JP,A)
【文献】 沼口勇也,”Softimage ICE Garden”,CG WORLD,日本,株式会社ワークスコーポレーション,2012年 5月 1日,第165巻,p.112-115
【文献】 大西克彦, 外3名,”インタラクティブな生長シミュレーションによる3次元樹木モデルの生成”,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,日本,特定非営利活動法人日本バーチャルリアリティ学会,2006年 3月31日,第11巻, 第1号,p.143-151
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 17/00
G06T 17/05
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巨視的に面状を形成する自然地物を3次元的に描画する3次元自然地物描画システムであって、
前記自然地物の単位体を表す点群の発生態様を規定する自然地物データを記憶する自然地物データ記憶部と、
複数の前記単位体の配置を規定する地物データを記憶する地物データ記憶部と、
前記単位体の配置位置の基準となる代表点の周囲に、前記自然地物データ記憶部に基づき、該自然地物に応じた発生態様で演算により点群を3次元的に発生させることで、該単位体のモデルを生成する点群発生部と、
前記地物データに基づいて、前記単位体のモデルを配置することで、面状の自然地物を描画する自然地物描画部とを備える3次元自然地物描画システム。
【請求項2】
請求項1記載の3次元自然地物描画システムであって、
前記点群発生部は、前記自然地物データによって規定される所定の幾何学的立体形状の表面近傍に前記点群を発生させる3次元自然地物描画システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の3次元自然地物描画システムであって、
前記点群発生部は、前記自然地物データによって規定される発生態様に対し、不規則な誤差を反映させた発生態様で前記点群を発生させる3次元自然地物描画システム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の3次元自然地物描画システムであって、
前記自然地物描画部は、前記地物データに基づいて、前記単位体を配置すべき位置を自動的に設定する3次元自然地物描画システム。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の3次元自然地物描画システムであって、
前記地物データは、さらに前記自然地物以外の地物の3次元形状、および該地物および前記自然地物の地図上の位置を表すデータを記憶しており、
前記地物データに基づき、前記自然地物以外の地物を3次元的に描画する一般地物描画部を有し、
前記自然地物を含む3次元地図を描画する3次元自然地物描画システム。
【請求項6】
単位体の集合によって巨視的に面状を形成する自然地物を含む3次元地図を描画する3次元地図描画システムに用いられる地図データベースのデータ構造であって、
前記3次元地図描画システムは、
前記地図データベースに基づき、前記単位体の配置位置の基準となる代表点の周囲に、該自然地物に応じた発生態様で演算により点群を3次元的に発生させることで、該単位体のモデルを生成する点群発生部と、
前記地図データベースに基づいて、前記単位体のモデルを配置することで、面状の自然地物を描画する自然地物描画部とを備えており、
前記地図データベースは、
前記自然地物の単位体を表す点群の発生態様を規定する自然地物データと、
複数の前記単位体の配置を規定する地物データとを記憶している
地図データベースのデータ構造。
【請求項7】
巨視的に面状を形成する自然地物をコンピュータによって3次元的に描画する3次元自然地物描画方法であって、
前記自然地物の単位体を表す点群の発生態様を規定する自然地物データを参照するステップと、
複数の前記単位体の配置を規定する地物データを参照するステップと、
前記単位体の配置位置の基準となる代表点の周囲に、前記自然地物データ記憶部に基づき、該自然地物に応じた発生態様で演算により点群を3次元的に発生させることで、該単位体のモデルを生成するステップと、
前記地物データに基づいて、前記単位体のモデルを配置することで、面状の自然地物を描画するステップとを備える3次元自然地物描画方法。
【請求項8】
巨視的に面状を形成する自然地物をコンピュータによって3次元的に描画するためのコンピュータプログラムであって、
前記自然地物の単位体を表す点群の発生態様を規定する自然地物データを参照する機能と、
複数の前記単位体の配置を規定する地物データを参照する機能と、
前記単位体の配置位置の基準となる代表点の周囲に、前記自然地物データ記憶部に基づき、該自然地物に応じた発生態様で点群を演算により3次元的に発生させることで、該単位体のモデルを生成する機能と、
前記地物データに基づいて、前記単位体のモデルを配置することで、面状の自然地物を描画する機能とをコンピュータによって実現するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木、砂地などの自然地物を3次元的に描画する3次元自然地物描画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物や道路などの地物を3次元的に表示した3次元地図が普及している。かかる3次元地図では、リアリティ向上のため、建物等だけでなく、樹木などの自然地物も3次元的に表現している。
特許文献1は、予め用意された樹木の3次元モデルを利用して自然地物を表示する技術を開示している。特許文献2は、予め用意された樹木のモデルを用いつつ、配置、高さを不規則に変化させることによって、よりリアリティを向上させる技術を開示している。
3次元地図とは異なる分野でも自然地物の3次元表示は行われている。特許文献3は、樹木の生育のシミュレーションを行うシステムに関するものであり、樹木の幹を、円柱、直方体、球などのソリッドを組み合わせて表現する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−274994号公報
【特許文献2】特開2004−334850号公報
【特許文献3】特表2011−512606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自然地物は、単体で表示されることは希であり、多くを配置して表示されることが多い。
図1は従来技術における自然地物の表示例である。図中に示す樹木Tr1、Tr2は同じモデルを異なる配置で表示したもの。樹木Tr3は、樹木Tr1,Tr2と異なるモデルを用いて表示したものである。このように自然地物を表示する際には、モデルを線状、面状に多数配置することが多い。また、単一のモデルではなく、図1に示すように複数種類のモデルを併用することもある。ここでは、樹木の表示例を示したが、砂地などの自然地物を表示する場合も同様である。
このように多数のモデルを表示するためには、単体としての自然地物のモデルを簡素化することが望まれる。単体のモデルが多数のポリゴンで形成される複雑なものである場合には、リアリティは向上しても、自然地物のデータ容量が多大となり、また表示に長時間を要することになるからである。
【0005】
図1では、十字型に組み合わせた平面にテクスチャを貼り付けることによって樹木のモデルを生成しており、特許文献3は、円柱などの幾何学的形状の組み合わせで幹を表現するなど、自然地物のモデルの簡略化は図られている。しかしながら、従来技術では、更なる簡略化の余地が残されていた。また、樹木以外の自然地物についても簡略なモデルの形成が望まれていた。
自然地物を表示するモデルの簡略化は、3次元地図の表示だけでなく、例えば、ゲームの背景、種々のシミュレーションにおける風景の表示など、自然地物を含む3次元画像を表示する際に共通の課題であった。また、必ずしも3次元地図等をディスプレイに表示する場合だけでなく、紙その他の印刷媒体に表現する場合にも共通の課題である。
本発明は、かかる課題に鑑み、自然地物を簡易なモデルで描画する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、巨視的に面状を形成する自然地物を3次元的に描画する3次元自然地物描画システムであって、
前記自然地物の単位体を表す点群の発生態様を規定する自然地物データを記憶する自然地物データ記憶部と、
複数の前記単位体の配置を規定する地物データを記憶する地物データ記憶部と、
前記単位体の配置位置の基準となる代表点の周囲に、前記自然地物データ記憶部に基づき、該自然地物に応じた発生態様で演算により点群を3次元的に発生させることで、該単位体のモデルを生成する点群発生部と、
前記地物データに基づいて、前記単位体のモデルを配置することで、面状の自然地物を描画する自然地物描画部とを備える3次元自然地物描画システムと構成することができる。
【0007】
本発明の描画対象となる自然地物は、樹木、砂地、雪原、田園、海面、川面、山地、雲、岩石など巨視的には面状になるものである。例えば、街路樹のように樹木が線状に配置されているものであっても、配置された街路樹全体としては一定の細長い領域を有する面状となるため、本発明の描画対象となる。また、点在する雲も、それぞれの部分を見れば、一定の領域を有する面であるため、本発明の描画対象となる。
本発明は、3次元地図の一部として自然地物を描画するものだけでなく、ビデオゲームなどコンピュータグラフィックスによる架空の空間において自然地物を描画するものなどを含む。また、本発明には、自然地物をディスプレイ等に電子的に表示するものだけでなく、印刷媒体に印刷するシステムも含まれる。
【0008】
本発明によれば、点群によって自然地物の単位体を表現することができる。点群の発生態様、例えば、代表点に対する点群の相対的な位置、点群の色、形状、点群の密度などは、予め自然地物データとして規定されている。自然地物データはデータベースとして多様なアクセスが可能な形式で用意されていてもよいし、点群発生部が参照するためのパラメータ群として点群発生部の内部、または点群発生部専用の記憶部に用意しておいてもよい。
このように表現された単位体は、拡大して見た場合には、単なる点の集まりでしかないが、ある程度縮小した状態、かつ単位体が集合した状態で描かれると、一つのまとまった自然地物として視認されるようになる。また、点群で表現することにより、自然地物に特有の不規則な形状や色の変化を表すことも可能となる。
点群は、描画時に演算によって発生させるため、自然地物として予め用意しておくデータ容量が膨大になることも回避できる。また、点を発生させるだけであれば、比較的簡易な演算で済むため、描画の所要時間が増大することも回避できる。
これらの作用により、本発明によれば、比較的小さいデータ容量で、かつ過大な負荷をかけることなく、自然地物を描画することが可能となる。
【0009】
点群は、種々の態様で発生させることができる。
例えば、本発明の3次元自然地物描画システムにおいては、
前記点群発生部は、前記自然地物データによって規定される所定の幾何学的立体形状の表面近傍に前記点群を発生させるものとしてもよい。
幾何学的立体形状とは、球、円錐または角錐などの錘体、円柱または角柱などの柱体などが含まれる。こうすることにより、自然地物に応じて幾何学的立体形状を選択することにより、自然地物の形状に近い分布で点群を発生させることができ、より自然な表現を実現することができる。例えば、広葉樹を表現するためには球を選択し、針葉樹を表現するためには円錐や角錐を選択する方法をとることができる。また、砂地、雪原、雲のように柔らかい感じの自然地物を表現する際には球を選択し、山地や岩石など硬い感じの自然地物を表現する際には錘体や柱体を選択してもよい。
【0010】
また、本発明の3次元自然地物描画システムにおいては、
前記点群発生部は、前記自然地物データによって規定される発生態様に対し、不規則な誤差を反映させた発生態様で前記点群を発生させるものとしてもよい。
誤差を反映させる態様としては、例えば、規定される位置から不規則にずれた位置に点群を発生させるもの、規定された色から不規則に明度、色相、彩度を変化させるもの、規定された点のサイズを不規則に変化させるものなどが含まれる。これらの態様のいずれかのみを変化させてもよいし、組み合わせて変化させてもよい。
このような誤差を反映させることにより、自然地物特有の不規則な変化を自然に表現することができる。
【0011】
単位体の配置についても、予め座標値などで与えるものなど種々の態様が可能である。
例えば、本発明の3次元自然地物描画システムにおいては、
前記自然地物描画部は、前記地物データに基づいて、前記単位体を配置すべき位置を自動的に設定するものとしてもよい。
自動的に設定する方法としては、予め規定された関数により規則的に設定する方法、予め規定された領域内などでランダムに設定する方法などをとることができる。いずれの場合においても、予め設定された配置密度の範囲内となるよう、配置を制御してもよい。この場合、配置密度は一様である必要はなく、自然地物を配置すべき領域内で変化させてもよい。
【0012】
本発明の3次元自然地物描画システムにおいては、
前記地物データは、さらに前記自然地物以外の地物の3次元形状、および該地物および前記自然地物の地図上の位置を表すデータを記憶しており、
前記地物データに基づき、前記自然地物以外の地物を3次元的に描画する一般地物描画部を有し、
前記自然地物を含む3次元地図を描画するものとしてもよい。
これは、3次元地図を描画するシステムとしての態様に相当する。3次元地図においては、自然地物よりも、それ以外の地物(以下、「一般地物」という)の位置および形状が、地図としての機能を果たす上で重要となる。従って、一般地物のデータ容量が大きくなる傾向にあり、自然地物のために要するデータ容量の削減に対する要請は特に強い。かかる観点から、3次元地図の描画には、本発明の有用性が特に高い。
また、ナビゲーションシステムのように、ユーザの移動に伴って、3次元地図を表示する際の基準となる位置が動的に変化する地図の場合には、地図をリアルタイムで描画する高速性も要求される。従って、本発明のように自然地物を比較的軽い負荷で描画できるシステムは、かかる観点からも有用性が高い。
【0013】
本発明においては、必ずしも上述した全ての特徴を備えている必要はなく、適宜、一部を省略したり、組み合わせたりして構成することも可能である。
また、本発明は、3次元自然地物描画システムとしての態様だけでなく、種々の態様で構成可能である。
【0014】
例えば、本発明は、単位体の集合によって巨視的に面状を形成する自然地物を含む3次元地図を描画する3次元地図描画システムに用いられる地図データベースのデータ構造であって、
前記3次元地図描画システムは、
前記地図データベースに基づき、前記単位体の配置位置の基準となる代表点の周囲に、該自然地物に応じた発生態様で演算により点群を3次元的に発生させることで、該単位体のモデルを生成する点群発生部と、
前記地図データベースに基づいて、前記単位体のモデルを配置することで、面状の自然地物を描画する自然地物描画部とを備えており、
前記地図データベースは、
前記自然地物の単位体を表す点群の発生態様を規定する自然地物データと、
複数の前記単位体の配置を規定する地物データとを記憶している
地図データベースのデータ構造として構成してもよい。
かかるデータ構造を備える地図データベースを用意することにより、上述した方法で自然地物を軽い負荷により描画しつつ、3次元地図を表示することが可能となる。
【0015】
本発明は、その他、コンピュータによって3次元自然地物を描画する3次元自然地物描画方法として構成してもよいし、かかる描画をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また、かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術における自然地物の表示例である。
図2】点群による単位体の描画例を示す説明図である。
図3】樹木の表示例を示す説明図である。
図4】実施例1における3次元地図描画システムの構成を示す説明図である。
図5】地物データおよび自然地物データの構造を示す説明図である。
図6】配置店の生成方法を示す説明図である。
図7】3次元地図表示処理のフローチャートである。
図8】自然地物描画処理のフローチャートである。
図9】実施例2における3次元地図描画システムの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
実施例1として、3次元地図をディスプレイに表示する3次元地図描画システムとしての構成例を示す。まず、実施例における自然地物の表示例を示した後、システム構成および処理内容について説明する。
【0018】
A.表示例:
図2は、点群による単位体の描画例を示す説明図である。ここでは、単位体として、1本の広葉樹を表現した例を示した。
図2(a)は、点群の発生方法を示している。この例では、代表点Cを中心とする半径Rの球面Sを基本形状とし、その表面近傍に点群を発生させるものとしている。点群は、厳密に球面上に発生させるのではなく、表面近傍で位置を不規則にずらして発生させるものとした。
球面S上で点を発生させる位置は、極座標θ、φで表すことができる。角度φは、x軸からのヨー角であり、角度θは、z軸とのなす角である。このように極座標を用いれば、乱数を発生させてφおよびθを決めることにより、点を発生させる位置を決定することができる。
球面S上に点を発生させる場合には、上述の2つの角度が決定すれば、点の位置を一義的に決定することができるが、本実施例では、代表点Cから点までの距離Rpを不規則に変化させるものとした。具体的には、距離Rpは、乱数に基づいて定まる係数を半径Rに乗じることにより求める。ただし、距離Rpの範囲は、半径Rの所定の倍率(例えば、0.9〜1.1倍など)の範囲で変化するように規制してある。距離Rpを変化させる範囲は、任意に設定可能である。
【0019】
図2(b)には、点群の発生例を示した。樹木を表現するため、緑色の点群を発生させている。色の濃淡は、点群の表裏によって異なっている。点群を発生させる際に、緑色の基準色を中心にして、色相、明度、彩度を不規則に変化させるものとしてもよい。例えば、R,G,Bで規定された基準色の各成分を乱数に基づいて変化させる方法をとることができる。この場合も、基準色からかけ離れた色とならないよう、変化の範囲を制限しておくことが望ましい。
また、図2(b)の例では、点を一定サイズの矩形形状で発生させているが、点のサイズや形状も不規則に変化させても構わない。
本実施例では、このように生成された点群によって1本の樹木を表現する。樹木を構成する幹、枝などの要素を用いず、単純に点を配置するだけのシンプルなモデルとするところが特徴である。
【0020】
図3は、樹木の表示例を示す説明図である。図2に示した1本の樹木のモデルを山の表面に多数配置した状態を示した。ここでは、山の山頂付近を高い密度で、ふもと付近を低い密度で配置しているが、配置密度は種々の態様をとることができる。
図3(a)は、緑が濃い状態の山を表現している。図3(b)は、点群の色相を淡い色に変えることによって、春先の山、または雪山のように淡色の山を表現している。このように、点群で表現した単位体としての樹木のモデルを多数面状に配置することによって、自然地物を表現することができる。本実施例では、点群によって単位体を構成しているため、このように多数の樹木を配置した状態であっても、少ないデータ容量で高速に描画することが可能となる。
このように樹木を配置した山を表現する場合における、オブジェクトの区分は、種々考えられる。第1に、山の形状を表す3次元の地物において、その表面に自然地物としての樹木を配置するという「属性」を与える方法としてもよい。第2に、山の地肌のみの3次元オブジェクトを生成し、これとは別に、山と同一形状の領域に樹木を配置した「樹木」オブジェクトを生成する方法としてもよい。第3に、山の地肌のみの3次元オブジェクトと、樹木一本一本をオブジェクトとして生成する方法としてもよい。このように、自然地物を配置したオブジェクトは、種々の態様で定義することができる。
【0021】
B.システム構成:
図4は、実施例1における3次元地図描画システムの構成を示す説明図である。実施例1の3次元地図描画システム1は、図3に示したような形式で自然地物を含む3次元地図を、ディスプレイ2に表示するためのシステムである。
3次元地図描画システム1は、図示する各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、CPU、RAM、ROMを備えたコンピュータにインストールすることによってソフトウェア的に構成されている。これらの各機能の一部または全部を、ハードウェア的に構成してもよい。
また、3次元地図描画システム1は、スタンドアロンで稼働する装置としての構成例を示しているが、図示する各機能を、ネットワークで接続された複数のサーバ、端末によって実現するものとしてもよい。
【0022】
図中に示した各機能ブロックについて説明する。
地図データベース10は、3次元地図を表示するための地図データを格納している。地図データベース10には、大きく分けて文字データ11、地物データ12、自然地物データ13が格納されている。この他に、経路探索に用いるための道路ネットワークデータなどを格納してもよい。
文字データ11は、地図中に表示されるべき文字列を記憶するデータである。地図中の表示位置、表示すべき文字列、文字列の表示態様、即ちフォント、文字サイズ、文字色などのデータを記憶している。
地物データ12は、3次元地図に表示される地物の位置、形状等を記憶する。本実施例では、表示される地物は、自然地物とその他の地物(以下、「一般地物」という)に分けられる。自然地物とは、樹木、砂地、雪原、田園、海面、川面、山地、雲、岩石など、自然に存在する地物のうち、巨視的には面状になるものを言い、図2および図3で示した点群による表現の対象となるべき地物を言う。一般地物とは、建物、道路などの人工的な地物、および自然に存在するもののうち、上述の意味での自然地物として取り扱わないものを言う。
自然地物データ13は、自然地物を構成する単位体について、点群発生態様等を規定するデータである。地物データ12内に格納された自然地物を描画する際には、その自然地物に応じた自然地物データ13を参照して、点群を発生させる。
地物データ12、自然地物データ13のデータ構造は、後述する。
【0023】
指示入力部20は、ユーザからの指示を入力する。指示としては、例えば、3次元地図を表示する際の視点位置、視線方向などが挙げられる。
地図描画部30は、指示に応じて3次元地図を描画する。地図描画部30には、さらに、自然地物描画部31、一般地物描画部32、文字描画部33が用意されている。
自然地物描画部31は、自然地物データ13に基づいて発生させた点群により表される単位体のモデルを、多数配置して、自然地物を描画する。
一般地物描画部32は、自然地物以外の一般地物を3次元的に描画する。この処理は、通常の3次元地図において、地物のポリゴンを3次元的に描画する処理と同様である。
文字描画部33は、地図内に地物、行政界、方位、案内情報などの文字を描画する。
表示制御部40は、地図描画部30によって描画された地図を、ディスプレイ2に表示する機能を奏する。
3次元地図描画システム1は、図4に示す他にも追加の機能を備えても良い。例えば、経路探索用の道路ネットワークデータが用意されている場合には、これを用いて経路探索を行う経路探索部を設けても良い。また、ユーザの現在位置に応じて、探索された経路を案内する経路案内部を設けても良い。
【0024】
図5は、地物データ12および自然地物データ13の構造を示す説明図である。左側に地物データ12のデータ例を示し、右側に自然地物データ13のデータ例を示した。
地物データ12は、地物ごとに、位置や3次元形状等を記憶するデータである。図では、地物ごとのデータをカード形式のイメージで図示したが、データ形式は、テーブル形式、XML形式など種々の態様をとることができる。
地物データ12の上側に示したのは、一般地物のデータ例である。
「地物ID」は、地物固有の識別情報を表している。
「種別」は、一般地物、自然地物の区別である。上側のデータは「一般地物」であることが分かる。
「名称」は、地物の名称である。この例では、「○○ビル」という建物であることが分かる。
「形状」は、地物を表す3次元ポリゴンの頂点の点列である。図の例では、頂点をP1、P2、P3のように記載しているが、それぞれの点について3次元空間での座標が格納される。
「属性」は、地物に応じた特徴等を表す情報である。例えば、建物の場合は、色、表面に貼り付けるテクスチャ、建物の階数などが格納される。道路の場合は、国道・県道などの道路種別、道路の車線数・幅、一方通行その他の通行規制などが格納される。
【0025】
地物データ12の下側には自然地物のデータ例を示した。地物ID、種別、名称は、一般地物と同様である。
「配置領域」は、自然地物の単位体を配置する領域の形状である。配置領域を表す点列PN1、PN2、PN3の座標を格納している。
「配置密度」は、自然地物を配置する配置点の密度である。D(個/エリア)は、予め設定された単位面積のエリア内にD個の配置点が存在する密度であることを意味している。配置領域、配置密度については、種々の変形例を後述する。
「自然地物」は、配置すべき自然地物を表す自然地物データを特定する。図の例では、自然地物データ13に格納されている自然地物ID「N1」のデータを指定していることになる。
「サイズ」は、自然地物データで表される単位体の拡大/縮小率である。この例では、単位体を1.2倍して配置することを意味している。
【0026】
自然地物データ13は、自然地物の単位体を構成する点群の発生態様を規定するデータである。自然地物IDは、各自然地物データに固有の識別情報である。
「名称」は、自然地物の名称を表している。
「基本形状」は、点群を発生させる基準となる形状を表している。図の例は、先に図2に示したように、半径rの球を基本形状とすることを表している。基本形状は、自然地物の種類に応じて定めることができる。例えば、図に示すように、「広葉樹」としては基本形状「球」を用い、「針葉樹」としては基本形状「円錐」を用いることができる。
「色相」は、点群の基準となる色を赤(R)、緑(G)、青(B)の色成分で表している。
「許容誤差」は、点群の位置が基本形状の表面からずれる許容範囲を表すデータである。図の例は、図2(a)に示した半径Rpの範囲が、基本形状の半径rのE(%)に規制されることを表している。
「構成点数」は、自然地物を構成する点群の数である。
【0027】
図5では、「□□山」という地物に、自然地物ID「N1」の広葉樹を配置する例を示した。これは、地表面に樹木を多数配置した山という形で、全体を一つのまとまった3次元オブジェクトとして捉える(各樹木は、そのオブジェクトのパーツとなる)態様に相当する。
地物の設定としては、かかる態様だけでなく、例えば、樹木を配置しない地表面としての山を一つの3次元オブジェクトと考え、その山の表面の領域に多数配置された樹木を山とは別の3次元オブジェクトと捉える態様も可能である。この場合は、地表面の山としての地物データと、樹木の地物データが、それぞれ別個に用意されることになる。
また、山を一つの3次元オブジェクトと捉え、各樹木を個別の3次元オブジェクトと捉えても良い。この場合には、地表面の山としての地物データと、各樹木を表す複数の地物データが別個に用意されることになる。
ここでは、説明の便宜上、「山」を地物の一つとして説明したが、山を個別の地物として表すのではなく、地表面の起伏(アンジュレーション)として表すことも可能である。
【0028】
地物データ12における配置領域、配置密度については、図5に示した態様だけでなく、種々の変形例が考えられる。
図6は、配置点の生成方法を示す説明図である。3つのパターンを例示した。
パターン1は、自然地物を配置する領域と配置密度を指定する態様である。図5の地物データ12で示した態様に相当する。図中に、パターン1における自然地物の配置例を示した。このパターンでは、配置領域の形状が、点列P1、P2、P3によって特定されている。そして、この配置領域内で、指定された配置密度になるよう自然地物の配置点が自動生成される。かかる態様をとる場合には、右欄に示すように、配置領域の形状および配置密度を指定することになる。
パターン2は、自然地物を配置するラインと、配置密度を指定する態様である。例えば、街路樹や、川のように線状に自然地物を配置する場合に利用できる。図中に、パターン2における自然地物の配置例を示した。このパターンでは、自然地物を配置する配置ラインの形状が、点列PL1、PL2、PL3によって特定されている。そして、この配置ライン上で、指定された配置密度になるよう自然地物の配置点が自動生成される。かかる態様をとる場合には、右欄に示すように、配置ラインの形状および配置密度を指定することになる。
パターン3は、自然地物の配置点を直接指定する態様である。図中に、パターン3における自然地物の配置例を示した。このパターンでは、自然地物を配置する配置点1、2、3の座標値が直接指定されることになる。かかる態様によれば、配置点を自動生成する態様に比較し、予め設定した場所に自然地物を配置することができるため、意図通りの描画結果を得ることができる利点がある。かかる態様をとる場合には、右欄に示すように、緯度(LAT)、軽度(LON)、高さ(H)などの形式で配置点の座標を指定することになる。
図6で例示した種々のパターンは、いずれか一つを選択して利用してもよいし、これらを組み合わせて利用してもよい。例えば、パターン1、2で自然地物の配置点を自動生成させつつ、パターン3によって、当該領域内に部分的に自然地物を配置することで、意図通りの描画結果を比較的容易に得ることが可能となる。
【0029】
C.処理例:
図7は、3次元地図表示処理のフローチャートである。ユーザからの指示に従って、ディスプレイ2に3次元地図を表示するための処理であり、ハードウェア的には3次元地図描画システム1のCPUが実行する処理である。ユーザの現在位置に応じて、3次元地図を表示することにより、経路案内に利用することもできる。
処理を開始すると、3次元地図描画システム1のCPUは、視点位置および視線方向を入力する(ステップS10)。これらは、透視投影や平行投影によって3次元地図を表示するためのパラメータである。さらに地図として表示する範囲の指定などを入力するようにしてもよい。
そして、CPUは、地図データベース10から地図データ(文字データ11、地物データ12、自然地物データ13を意味する)を読込み(ステップS11)、一般地物を描画する(ステップS12)。この描画は、地物データ12に格納されたポリゴンデータを3次元的に描画する通常の処理である。
次に、自然地物描画処理を実行する(ステップS20)。この処理は、樹木などの自然地物について、自然地物データ13を参照して、点群を発生させつつ、多数配置することによって自然地物を描画する処理である。この処理内容については、後述する。
CPUは、さらに、文字描画を行い(ステップS30)、3次元地図表示処理を終了する。これによってユーザの指定に応じた3次元地図がディスプレイ2に表示される。
なお、3次元地図の出力は、必ずしもディスプレイ2上に電子的に表示する態様には限られない。プリンタ等によって印刷する態様をとってもよい。
【0030】
図8は、自然地物描画処理のフローチャートである。図7に示した3次元地図表示処理のステップS20の処理内容に相当する。
自然地物描画処理では、CPUは、配置領域の背景を描画する(ステップS21)。地物データ12で特定された配置領域を着色等して描画する処理である。例えば、図3に示した山肌の部分を茶色で描く処理に相当する。図の右側に処理例を示した。この例では、ハッチングを付して配置領域が描画されているが、かかる態様で配置領域を描画するのが、このステップでの処理である。
次に、CPUは、配置点を発生させる(ステップS22)。配置領域内に所定の関数によって規則的に配置点を発生させるようにしてもよいし、乱数によってランダムな位置に発生させるようにしてもよい。右側の図に例示した×印が、配置点である。
こうして配置点を発生させると、CPUは、その密度(以下、「配置密度」と言う)を算出する(ステップS23)。配置密度は、所定の領域内の配置点の個数で規定される(図5参照)。例えば、所定領域が半径rの円である場合の例を右側の図に示した。配置点PがステップS22で新たに生成されたものであるとすると、この配置点Pを中心として半径rの円Aを描き、その内部にある配置点の数を求め、これを配置密度とする。
こうして求められた配置密度が地物データ12で与えられた適正な値でない場合(ステップS24)、つまり、局所的に配置点が発生し、配置密度が規定された値を超えるときは、発生した配置点を無効としつつ、別の配置点を発生させる(ステップS22、S23)。
配置密度が適正な場合、即ち規定された値以下である場合には、CPUは自然地物データ13を読込み(ステップS25)、それに基づいて点群を発生させる(ステップS26)。こうすることで、単位体としての自然地物の描画が完成する。
CPUは、以上の処理を、終了条件を満たすまで(ステップS27)、繰り返し実行する。終了条件としては、配置領域内に自然地物が規定された配置密度で配置された状態を挙げることができる。かかる状態になると、新たに配置点を発生した場合に、配置密度が規定値を超える確率が高くなる。従って、ステップS24で「NO」となる確率、または回数を監視しておき、これが閾値を超えた場合に、終了条件(ステップS27)を満たすと判断する方法をとってもよい。終了条件としては、その他、配置点の数が閾値を超えるなど、種々の条件を用いることができる。
【0031】
D.効果:
以上で説明した3次元地図描画システムによれば、自然地物を点群で表すことにより、データ容量を抑制しつつ、高速での描画を実現することができる。また、点群によって、自然地物の不規則な凹凸感を表すことができ、リアリティの高い表現を実現することもできる。
【実施例2】
【0032】
自然地物を構成する点群の発生態様を規定する自然地物データは、実施例1のように地図データベース内に格納する態様には限られない。
図9は、実施例2における3次元地図描画システム1Aの構成を示す説明図である。実施例2では、自然地物データを、地図データベース外に格納する例を示す。
図示する通り、実施例2の3次元地図描画システム1Aにおける地図データベース10Aには、文字データ11、地物データ12が実施例1と同様に格納されているものの、自然地物データは格納されていない。
実施例2では、地図描画部30A内の自然地物描画部31Aが直接、参照可能な箇所に自然地物データ34が格納されている。自然地物データの内容は、実施例1(図5参照)と同様、点群の発生態様を規定するデータとすることができる。実施例2における自然地物データ34は、例えば、自然地物描画部31Aの内部にパラメータとして記憶させる態様をとってもよいし、自然地物描画部31Aとは別個に用意された記憶部として構成してもよい。
実施例2においても、3次元地図表示処理(図7)、および自然地物描画処理(図8)の処理内容は実施例1と同様である。自然地物描画処理(図8)において、自然地物データの読込み(ステップS25)の際に、CPUがアクセスする先が異なる程度である。
このように、実施例2によっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0033】
E.変形例:
以上の実施例1、2で説明した種々の特徴は、必ずしも全てを備えている必要はなく、適宜、一部を省略したり、組み合わせたりしてもよい。また、実施例1、2に追加の機能を設けることも可能である。
実施例1、2では、樹木を点群で表現する例を示したが、点群による自然地物の表現は、樹木の他、砂地、雪原、田園、海面、川面、山地、雲、岩石など広汎な自然地物に適用可能である。
さらに、実施例1、2では、3次元地図描画システムとしての構成例を示したが、本発明は、3次元地図を表示する場合に限らず、自然地物を点群によって描画する3次元自然地物描画システムとしての種々の構成をとることができる。例えば、3次元地図ではなく、ゲームの背景、種々のシミュレーションにおける風景の表示など、自然地物を含む3次元画像を表示する種々の3次元自然地物表示システムとして構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、自然地物を3次元的に描画するために利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1、1A…3次元地図描画システム
2…ディスプレイ
10、10A…地図データベース
11…文字データ
12…地物データ
13…自然地物データ
20…指示入力部
30、30A…地図描画部
31、31A…自然地物描画部
32…一般地物描画部
33…文字描画部
34…自然地物データ
40…表示制御部

図2
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図1
図3