特許第5997584号(P5997584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997584
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】工具取付具および工具取付機構
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/50 20060101AFI20160915BHJP
   B23B 31/20 20060101ALI20160915BHJP
   B23B 31/06 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B25B13/50 D
   B23B31/20 Z
   B23B31/06
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-238264(P2012-238264)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-87867(P2014-87867A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼▲崎▼ 淳
(72)【発明者】
【氏名】神野 ゆみ
(72)【発明者】
【氏名】長井 修
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−177975(JP,A)
【文献】 実開昭57−43973(JP,U)
【文献】 特開2011−237880(JP,A)
【文献】 特開2005−177982(JP,A)
【文献】 実開昭47−30097(JP,U)
【文献】 特開2006−88294(JP,A)
【文献】 実開平2−23910(JP,U)
【文献】 実開昭62−174865(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0110229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/00 − 19/00
B23B 31/00 − 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具を挿入可能な筒状のコレットと、該コレットの径方向外側に配置され、回転することにより該コレットを縮径可能であって、被係合部を有するナットと、を有し、工作機械のタレットに配置される工具ホルダに、該回転工具を取り付ける工具取付具であって、
前記工作機械は、ワークに加工を施す加工室を備え、
前記回転工具は、前記タレットに取り付けられた状態で、所定の移動経路で、該加工室内を移動可能であり、
前記工具ホルダに対する前記回転工具の突出量を工具突出量、該回転工具の軸方向における該工具ホルダと前記工作機械を構成する部材との間の、該移動経路における最短距離を干渉距離として、
前記ナットを締め付け可能であって、前記被係合部に係合可能な係合部を有するレンチ部と、該レンチ部に対して所定の基準距離だけ離間して配置されるゲージ部と、該レンチ部と該ゲージ部とを連結する連結部と、を有し、
該基準距離は、該工具突出量が該干渉距離以上である場合に、該ゲージ部に該回転工具が当接し、該係合部が該被係合部に係合不可能なように、設定されていることを特徴とする工具取付具。
【請求項2】
単一の前記工作機械に対して、一つだけ割り当てられる請求項1に記載の工具取付具。
【請求項3】
回転工具を挿入可能な筒状のコレットと、該コレットの径方向外側に配置され、回転することにより該コレットを縮径可能であって、被係合部を有するナットと、を有し、工作機械のタレットに配置される工具ホルダと、
該工具ホルダに該回転工具を取り付ける工具取付具と、
を備える工具取付機構であって、
前記工作機械は、ワークに加工を施す加工室を備え、
前記回転工具は、前記タレットに取り付けられた状態で、所定の移動経路で、該加工室内を移動可能であり、
前記工具ホルダに対する前記回転工具の突出量を工具突出量、該回転工具の軸方向における該工具ホルダと前記工作機械を構成する部材との間の、該移動経路における最短距離を干渉距離として、
前記工具取付具は、前記ナットを締め付け可能であって、前記被係合部に係合可能な係合部を有するレンチ部と、該レンチ部に対して所定の基準距離だけ離間して配置されるゲージ部と、該レンチ部と該ゲージ部とを連結する連結部と、を有し、
該基準距離は、該工具突出量が該干渉距離以上である場合に、該ゲージ部に該回転工具が当接し、該係合部が該被係合部に係合不可能なように、設定されていることを特徴とする工具取付機構。
【請求項4】
前記工具取付具は、単一の前記工作機械に対して、一つだけ割り当てられる請求項3に記載の工具取付機構。
【請求項5】
前記工作機械は、主軸を備え、
前記回転工具は、該主軸の延在方向である主軸方向と軸方向とが一致するアキシャル工具、および該主軸方向と軸方向とが直交するラジアル工具であり、前記工具取付具は、該アキシャル工具用の前記基準距離を有するアキシャル工具取付具、および該ラジアル工具用の該基準距離を有するラジアル工具取付具である請求項3に記載の工具取付機構。
【請求項6】
前記アキシャル工具用の前記工具ホルダはアキシャル工具ホルダであり、前記ラジアル工具用の該工具ホルダはラジアル工具ホルダであり、前記アキシャル工具取付具の前記レンチ部の前記係合部は、該ラジアル工具ホルダの前記ナットの前記被係合部に、係合不可能であり、前記ラジアル工具取付具の該レンチ部の該係合部は、該アキシャル工具ホルダの該ナットの該被係合部に、係合不可能である請求項5に記載の工具取付機構。
【請求項7】
前記アキシャル工具用の前記工具ホルダはアキシャル工具ホルダであり、前記ラジアル工具用の該工具ホルダはラジアル工具ホルダであり、前記アキシャル工具取付具および前記ラジアル工具取付具のうち、前記基準距離が小さい方を短軸取付具、該基準距離が大きい方を長軸取付具として、該アキシャル工具ホルダおよび該ラジアル工具ホルダのうち、該短軸取付具の前記係合部が係合する前記被係合部を有する方を短軸用工具ホルダ、該長軸取付具の該係合部が係合する該被係合部を有する方を長軸用工具ホルダとして、該長軸取付具の該係合部は、該短軸用工具ホルダの被係合部に、係合不可能であり、該短軸取付具の該係合部は、該長軸用工具ホルダの被係合部に、係合可能である請求項5に記載の工具取付機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の工具ホルダに回転工具を取り付ける工具取付具、および工具取付機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、工作機械の工具ホルダには、工具が交換可能に配置されている。工具ホルダに工具を取り付ける際には、工具ホルダに対する工具の突出量を管理する必要がある。特許文献2には、セットスピンドルを用いて、焼き嵌め方式の工具ホルダに対する工具の突出量を、設定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58164号公報
【特許文献2】特開2005−313264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コレット方式の工具ホルダの場合、単一の工具ホルダに対して、複数の工具が交換可能である。また、取付時のコレットに対する工具の挿入量は可変的である。このため、工具ホルダに対する工具の突出量も可変的である。当該突出量は、各工具ごとに予め設定されている。当該突出量は、工具取付後に工具が移動する際に、工具が工作機械を構成する部材(例えば、全体カバー、仕切壁など)に干渉しないように、設定されている。
【0005】
ところが、工具の実際の突出量が、当該工具用の設定突出量よりも、大きくなってしまう場合がある。すなわち、工具ホルダに工具を取り付ける際には、当該工具用の設定突出量を測定可能な、専用のゲージを用いている。当該ゲージを用いて、工具の実際の突出量が、当該工具用の設定突出量であることを確認してから、工具ホルダに工具を取り付けている。しかし、ゲージは、工具の種類ごとに用意されている。このため、任意の工具用のゲージを、他の工具に誤使用してしまう場合がある。また、ゲージは、突出量の測定機能を有しているに過ぎない。このため、ゲージを用いなくても(突出量の確認を怠っても)、例えばレンチを用いれば、工具ホルダに工具を取り付けることはできる。このような理由から、工具取付後に、工具の実際の突出量が、当該工具用の設定突出量よりも、大きくなってしまう場合がある。この場合、工具の移動経路において、工具が工作機械を構成する部材に干渉しやすくなる。
【0006】
本発明の工具取付具および工具取付機構は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、工作機械を構成する部材に、工具が干渉しにくい工具取付具および工具取付機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明の工具取付具は、回転工具を挿入可能な筒状のコレットと、該コレットの径方向外側に配置され、回転することにより該コレットを縮径可能であって、被係合部を有するナットと、を有し、工作機械のタレットに配置される工具ホルダに、該回転工具を取り付ける工具取付具であって、前記工具ホルダに対する前記回転工具の突出量を工具突出量、該回転工具の軸方向における該工具ホルダと前記工作機械を構成する部材との間の最短距離を干渉距離として、前記ナットを締め付け可能であって、前記被係合部に係合可能な係合部を有するレンチ部と、該レンチ部に対して所定の基準距離だけ離間して配置されるゲージ部と、該レンチ部と該ゲージ部とを連結する連結部と、を有し、該基準距離は、該工具突出量が該干渉距離以上である場合に、該ゲージ部に該回転工具が当接し、該係合部が該被係合部に係合不可能なように、設定されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の工具取付具によると、工具ホルダに対する回転工具の挿入状態が不適切な場合、係合部が被係合部に係合しないように、基準距離が設定されている。具体的には、回転工具の挿入状態が不適切な場合、「工具突出量≧干渉距離」となる。この場合、工具取付具を用いて工具ホルダに回転工具を取り付けようとしても、ゲージ部に回転工具が当接してしまい、係合部が被係合部に係合できなくなる。このため、レンチ部を回転させても、レンチ部の回転トルクをナットに伝達することができない。したがって、ナットが回転せず、コレットを縮径させることができない。すなわち、工具ホルダに回転工具を取り付けることができない。
【0009】
このように、本発明によると、工具突出量の測定作業(工具突出量と干渉距離との比較)と、回転工具の取付作業と、を単一の工具取付具を用いて行うことができる。また、本発明の工具取付具によると、「工具突出量≧干渉距離」の場合に、強制的に回転工具の取付作業を禁止することができる。このため、工具ホルダに回転工具を取り付けた後、工作機械を構成する部材に、回転工具が干渉しにくい。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、単一の前記工作機械に対して、一つだけ割り当てられる構成とする方がよい。例えば、回転工具の種類ごとに、専用の工具取付具を割り当てることは可能である(この場合も、勿論、上記(1)の構成に含まれる)。しかしながら、この場合、回転工具と工具取付具との組合せを、間違えてしまうおそれがある。例えば、当該組合せが間違っているために、見かけ上「工具突出量<干渉距離」となり、工具ホルダに回転工具を取り付け可能となってしまう場合がある。この場合、工具ホルダに回転工具を取り付けた後、工作機械を構成する部材に、回転工具が干渉しやすい。
【0011】
この点、本構成によると、単一の工作機械に対して単一の工具取付具が割り当てられている。すなわち、工作機械が複数の回転工具を備えている場合であっても、工具取付具は共用である。このため、工作機械を構成する部材に、回転工具が干渉しにくい。
【0012】
(3)上記課題を解決するため、本発明の工具取付機構は、回転工具を挿入可能な筒状のコレットと、該コレットの径方向外側に配置され、回転することにより該コレットを縮径可能であって、被係合部を有するナットと、を有し、工作機械のタレットに配置される工具ホルダと、該工具ホルダに該回転工具を取り付ける工具取付具と、を備える工具取付機構であって、前記工具ホルダに対する前記回転工具の突出量を工具突出量、該回転工具の軸方向における該工具ホルダと前記工作機械を構成する部材との間の最短距離を干渉距離として、前記工具取付具は、前記ナットを締め付け可能であって、前記被係合部に係合可能な係合部を有するレンチ部と、該レンチ部に対して所定の基準距離だけ離間して配置されるゲージ部と、該レンチ部と該ゲージ部とを連結する連結部と、を有し、該基準距離は、該工具突出量が該干渉距離以上である場合に、該ゲージ部に該回転工具が当接し、該係合部が該被係合部に係合不可能なように、設定されていることを特徴とする。
【0013】
上記(1)の場合と同様に、本発明の工具取付機構によると、工具突出量の測定作業(工具突出量と干渉距離との比較)と、回転工具の取付作業と、を単一の工具取付具を用いて行うことができる。また、本発明の工具取付機構によると、「工具突出量≧干渉距離」の場合に、強制的に回転工具の取付作業を禁止することができる。このため、工具ホルダに回転工具を取り付けた後、工作機械を構成する部材に、回転工具が干渉しにくい。
【0014】
(3−1)好ましくは、上記(3)の構成において、前記回転工具は、主軸方向と軸方向とが一致するアキシャル工具、および該主軸方向と軸方向とが直交するラジアル工具であり、前記工具取付具は、該アキシャル工具用の前記基準距離を有するアキシャル工具取付具、および該ラジアル工具用の該基準距離を有するラジアル工具取付具である構成とする方がよい。
【0015】
仮に、「ラジアル工具用の干渉距離>アキシャル工具用の干渉距離」の場合、ラジアル工具とアキシャル工具とで単一の工具取付具を共用すると、アキシャル工具用の干渉距離に合わせて、基準距離を設定する必要がある。このため、ラジアル工具用の干渉距離に対して、ラジアル工具の工具突出量が、過度に小さくなってしまう。したがって、ラジアル工具のデッドスペースが大きくなる。
【0016】
反対に、「ラジアル工具用の干渉距離<アキシャル工具用の干渉距離」の場合、ラジアル工具とアキシャル工具とで単一の工具取付具を共用すると、ラジアル工具用の干渉距離に合わせて、基準距離を設定する必要がある。このため、アキシャル工具用の干渉距離に対して、アキシャル工具の工具突出量が、過度に小さくなってしまう。したがって、アキシャル工具のデッドスペースが大きくなる。
【0017】
この点、本構成によると、アキシャル工具取付具と、ラジアル工具取付具と、が別々に用意されている。このため、アキシャル工具取付具の基準距離を、アキシャル工具用の干渉距離を基準に、設定することができる。同様に、ラジアル工具取付具の基準距離を、ラジアル工具用の干渉距離を基準に、設定することができる。
【0018】
このように、本構成によると、アキシャル工具用とラジアル工具用とで、別々に基準距離が設定されている。このため、ラジアル工具とアキシャル工具とで単一の工具取付具を共用する場合と比較して、アキシャル工具およびラジアル工具のうち、干渉距離が大きい方の工具のデッドスペースを、小さくすることができる。
【0019】
(3−2)好ましくは、上記(3−1)の構成において、前記アキシャル工具用の前記工具ホルダはアキシャル工具ホルダであり、前記ラジアル工具用の該工具ホルダはラジアル工具ホルダであり、前記アキシャル工具取付具の前記レンチ部の前記係合部は、該ラジアル工具ホルダの前記ナットの前記被係合部に、係合不可能であり、前記ラジアル工具取付具の該レンチ部の該係合部は、該アキシャル工具ホルダの該ナットの該被係合部に、係合不可能である構成とする方がよい。
【0020】
本構成によると、ラジアル工具ホルダに対するアキシャル工具取付具の誤使用を防止することができる。同様に、アキシャル工具ホルダに対するラジアル工具取付具の誤使用を防止することができる。
【0021】
(3−3)好ましくは、上記(3−1)の構成において、前記アキシャル工具用の前記工具ホルダはアキシャル工具ホルダであり、前記ラジアル工具用の該工具ホルダはラジアル工具ホルダであり、前記アキシャル工具取付具および前記ラジアル工具取付具のうち、前記基準距離が小さい方を短軸取付具、該基準距離が大きい方を長軸取付具として、該アキシャル工具ホルダおよび該ラジアル工具ホルダのうち、該短軸取付具の前記係合部が係合する前記被係合部を有する方を短軸用工具ホルダ、該長軸取付具の該係合部が係合する該被係合部を有する方を長軸用工具ホルダとして、該長軸取付具の該係合部は、該短軸用工具ホルダの被係合部に、係合不可能であり、該短軸取付具の該係合部は、該長軸用工具ホルダの被係合部に、係合可能である構成とする方がよい。
【0022】
本来、短軸用工具ホルダには、短軸取付具により、回転工具が取り付けられる。並びに、長軸用工具ホルダには、長軸取付具により、回転工具が取り付けられる。ここで、短軸取付具よりも長軸取付具の方が、基準距離が大きい。このため、短軸用工具ホルダに取り付けられる回転工具よりも、長軸用工具ホルダに取り付けられる回転工具の方が、工具突出量を大きくすることができる。
【0023】
本構成によると、短軸用工具ホルダ用の回転工具を、短軸用工具ホルダに取り付ける際に、長軸取付具を用いることができない。このため、当該回転工具の工具突出量が、誤って大きく設定されてしまうおそれがない。
【0024】
ただし、長軸用工具ホルダ用の回転工具を、長軸用工具ホルダに取り付ける際に、短軸取付具を用いることはできる。このため、当該回転工具の工具突出量が、誤って小さく設定されてしまうおそれはある。しかしながら、この場合、回転工具は、より工作機械を構成する部材に干渉しにくくなる。
【0025】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記工具取付具は、単一の前記工作機械に対して、一つだけ割り当てられる構成とする方がよい。上記(2)の場合と同様に、本発明の工具取付機構によると、工作機械が複数の回転工具を備えている場合であっても、工具取付具は共用である。このため、工作機械を構成する部材に、回転工具が干渉しにくい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、工作機械を構成する部材に、工具が干渉しにくい工具取付具および工具取付機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の工具取付機構の一実施形態である工具取付機構の工具ホルダが配置される、CNC旋盤の上面図である。
図2図1のII−II方向断面図である。
図3】同工具取付機構のラジアル工具ホルダの斜視図である。
図4】同ラジアル工具ホルダのコレット付近のX軸方向断面図である。
図5】同工具取付機構の工具取付具の斜視図である。
図6図1の円VI内の拡大図である。
図7図1の円VII内の拡大図である。
図8】同工具取付機構の斜視図である。
図9】同工具取付機構のコレット付近のX軸方向断面図である。
図10】同工具取付機構のコレット付近のX軸方向断面図である(ラジアル工具の挿入状態が不適切な場合)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の工具取付機構の実施の形態について説明する。
【0029】
<CNC旋盤の構成>
まず、本実施形態の工具取付機構の工具ホルダが配置される、CNC旋盤の構成について説明する。以下の図において、Z軸方向は、左右方向(主軸方向)に対応している。X軸方向は、後上−前下方向に対応している。
【0030】
図1に、同CNC旋盤の上面図を示す。図2に、図1のII−II方向断面図を示す。なお、図1においては、壁部3を断面で示す。また、図1においては、ラジアル工具TXの移動経路において、X軸方向にラジアル工具TXが最も壁部3に接近する状態を細線で示す。並びに、アキシャル工具TZの移動経路において、Z軸方向にアキシャル工具TZが最も壁部3に接近する状態を細線で示す。
【0031】
図1図2に示すように、CNC旋盤1は、壁部3と、工具台4と、主軸台6と、ベッド7と、を備えている。壁部3は、全体カバー30と、仕切壁31と、を備えている。CNC旋盤1は、本発明の「工作機械」の概念に含まれる。
【0032】
全体カバー30は、CNC旋盤1の外殻を構成している。仕切壁31は、後述する主軸台6の主軸台本体60と主軸61とを仕切っている。すなわち、全体カバー30と仕切壁31とにより、ワークWに加工を施す加工室Aが区画されている。
【0033】
ベッド7は、工場の床面に配置されている。ベッド7の上面後方には、傾斜部70が配置されている。傾斜部70は、後方から前方に向かって下るスロープ状を呈している。主軸台6は、ベッド7の上面左側に配置されている。主軸台6は、主軸台本体60と、主軸61と、チャック62と、を備えている。主軸61は、主軸台本体60の右面から右側に突設されている。主軸61は、左右方向に延在している。主軸61は、自身の軸周りに回転可能である。チャック62は、主軸61の右端に配置されている。チャック62には、着脱可能に、ワークWが固定されている。
【0034】
工具台4は、工具台本体40と、タレット41と、X軸スライド42と、X軸下スライド43と、Z軸スライド44と、Z軸下スライド45と、を備えている。Z軸下スライド45は、傾斜部70に配置されている。Z軸スライド44は、Z軸下スライド45に対して、左右方向に移動可能である。X軸下スライド43は、Z軸スライド44の上面に配置されている。X軸スライド42は、X軸下スライド43に対して、後上−前下方向に移動可能である。工具台本体40は、X軸スライド42に固定されている。タレット41は、工具台本体40の左側に配置されている。タレット41は、10角形状を呈している。タレット41には、後述するアキシャル工具ホルダ20Z、ラジアル工具ホルダ20Xを、合計10個取り付けることができる。タレット41は、工具台本体40により、36°ずつ回転可能である。
【0035】
<工具取付機構の構成>
次に、本実施形態の工具取付機構の構成について説明する。本実施形態の工具取付機構2は、アキシャル工具ホルダ20Zと、ラジアル工具ホルダ20Xと、工具取付具と、を備えている。アキシャル工具ホルダ20Z、ラジアル工具ホルダ20Xは、各々、本発明の「工具ホルダ」の概念に含まれる。
【0036】
[アキシャル工具ホルダ20Z、ラジアル工具ホルダ20X]
アキシャル工具ホルダ20Z、ラジアル工具ホルダ20Xは、各々、タレット41に取り付けられている。アキシャル工具ホルダ20Zには、アキシャル工具TZが回転可能に取り付けられている。アキシャル工具TZの軸方向は、左右方向である。アキシャル工具TZは、本発明の「回転工具」の概念に含まれる。ラジアル工具ホルダ20Xには、ラジアル工具TXが回転可能に取り付けられている。ラジアル工具TXの軸方向は、後上−前下方向である。ラジアル工具TXは、本発明の「回転工具」の概念に含まれる。アキシャル工具ホルダ20Zの構成とラジアル工具ホルダ20Xの構成とは同様である。ここでは、代表して、ラジアル工具ホルダ20Xの構成について説明する。
【0037】
図3に、本実施形態の工具取付機構のラジアル工具ホルダの斜視図を示す。図4に、同ラジアル工具ホルダのコレット付近のX軸方向断面図を示す。図3図4に示すように、ラジアル工具ホルダ20Xは、コレット200Xと、ナット201Xと、ストッパ202Xと、ホルダ本体203Xと、を備えている。
【0038】
図3に示すように、ホルダ本体203Xは、タレット41に取り付けられている。ホルダ本体203Xの内部には、タレット41からラジアル工具TXに回転力を伝達するための、動力伝達機構(図略)が収容されている。
【0039】
図4に示すように、ホルダ本体203Xの前下側の面(X軸方向端面)からは、凸部203Xaが突設されている。凸部203Xaの径方向内側には、工具収容孔203Xbが穿設されている。工具収容孔203Xbには、円筒状のコレット200Xが収容されている。工具収容孔203Xbの内周面と、コレット200Xの外周面と、は共にテーパ状を呈している。ナット201Xは、コレット200Xを工具収容孔203Xbに押し込み可能な状態で、凸部203Xaの外周面に螺着されている。図3に示すように、ナット201Xの外周面には、合計6個の被係合部201Xaが凹設されている。図4に示すように、ストッパ202Xは、工具収容孔203Xbの内部に配置されている。なお、ストッパ202Xの後上−前下方向の位置は、後述するラジアル工具TXの種類に応じて、調整することができる。
【0040】
[工具取付具]
図5に、本実施形態の工具取付機構の工具取付具の斜視図を示す。図5に示すように、工具取付具21は、CNC旋盤1に一つだけ配置されている。工具取付具21は、レンチ部210と、ゲージ部211と、連結部212と、被把持部213と、を備えている。
【0041】
レンチ部210は、係合部210aと延在部210bとを備えている。延在部210bは、半円弧状(C字状)を呈している。係合部210aは、延在部210bの先端(C字一端)に配置されている。係合部210aは、図3に示すナット201Xの被係合部201Xaに対して、径方向外側から係脱可能である。係合部210aと被係合部201Xaとが係合した状態で、レンチ部210は、ナット201Xに、回転トルクを伝達可能である。
【0042】
被把持部213は、延在部210bのC字他端から延在している。アキシャル工具ホルダ20Zに対してアキシャル工具TZを着脱する際、またはラジアル工具ホルダ20Xに対してラジアル工具TXを着脱する際、被把持部213は、作業者に把持される。
【0043】
連結部212は、延在部210bから前下方向(延在部210bの軸方向)に突設されている。連結部212は、半円筒状(C字筒状)を呈している。ゲージ部211は、連結部212の先端開口を覆っている。
【0044】
<工具ホルダに対する工具の適切な取付状態>
次に、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの適切な取付状態について説明する。なお、アキシャル工具ホルダ20Zに対するアキシャル工具TZの適切な取付状態についても同様である。
【0045】
図4に示すように、ラジアル工具TXは、丸棒状を呈している。ラジアル工具TXは、工具収容孔203Xbに収容されている。ラジアル工具TXの後上側端(収容側端)は、ストッパ202Xに当接している。すなわち、ストッパ202Xは、ラジアル工具TXの収容量(言い換えると、後述するラジアル工具TXの工具突出量)を決定している。
【0046】
また、ラジアル工具TXは、径方向外側からコレット200Xにより保持されている。すなわち、ナット201Xを締め付けると、コレット200Xが工具収容孔203Xbの内部に押し込まれる。ここで、工具収容孔203Xbの内周面と、コレット200Xの外周面と、は共にテーパ状を呈している。このため、コレット200Xに対する押込力は、テーパ界面を介して、コレット200Xを縮径させる方向に作用する。したがって、ラジアル工具TXは、径方向外側からコレット200Xにより保持されている。
【0047】
このように、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの取付状態が適切な場合、ラジアル工具TXの収容側端は、工具収容孔203Xb内部において、ストッパ202Xに当接した状態で、径方向外側からコレット200Xにより保持されている。
【0048】
図6に、図1の円VI内の拡大図を示す。図6に示すのは、Z軸スライド44、X軸スライド42、タレット41を適宜駆動し、ラジアル工具TXを、全体カバー30に最も近づけた状態である。
【0049】
図6に示すように、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの取付状態が適切な場合、ラジアル工具TXの工具突出量(ナット201Xからラジアル工具TX先端までのX軸方向長さ)L1Xは、ラジアル工具TX用の干渉距離(ナット201Xから壁部3までのX軸方向長さ)L2X未満になるように、設定されている。このため、ラジアル工具TXは全体カバー30に干渉しない。
【0050】
図7に、図1の円VII内の拡大図を示す。図7に示すのは、Z軸スライド44、X軸スライド42、タレット41を適宜駆動し、アキシャル工具TZを、仕切壁31に最も近づけた状態である。
【0051】
図7に示すように、アキシャル工具ホルダ20Zに対するアキシャル工具TZの取付状態が適切な場合、アキシャル工具TZの工具突出量(ナット201Zからアキシャル工具TZ先端までのZ軸方向長さ)L1Zは、アキシャル工具TZ用の干渉距離(ナット201Zから壁部3までのZ軸方向長さ)L2Z未満になるように、設定されている。このため、アキシャル工具TZは仕切壁31に干渉しない。
【0052】
<工具ホルダに対する工具の取付方法>
次に、工具ホルダに対する工具の取付方法について説明する。取付方法は、アキシャル工具ホルダ20Zにアキシャル工具TZを取り付ける場合と、ラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付ける場合と、で同様である。ここでは、代表して、ラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付ける場合について説明する。
【0053】
[ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が適切な場合]
まず、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が適切な場合について説明する。図8に、本実施形態の工具取付機構の斜視図を示す。図9に、同工具取付機構のコレット付近のX軸方向断面図を示す。
【0054】
図8図9に示すように、まず、ラジアル工具TXを、コレット200Xの径方向内側に挿入する。この際、ラジアル工具TXの後上側端を、ストッパ202Xに突き当てる。次に、作業者が被把持部213を把持し、工具取付具21でラジアル工具TXを覆う。具体的には、ゲージ部211により、ラジアル工具TXの先端を前下側から覆う。また、連結部212により、ラジアル工具TXの外周面の右半分を右側から覆う。
【0055】
ここで、図9に示すように、ラジアル工具TXの挿入状態が適切な場合、ナット201Xとゲージ部211との間の距離は、干渉距離L2Xに設定されている。ラジアル工具TXの工具突出量L1Xは、干渉距離L2X未満になる。この場合、工具取付具21の係合部210aを、ナット201Xの被係合部201Xa(6個の被係合部201Xaのうちいずれかの被係合部201Xa)に、係合させることができる。言い換えると、基準距離L3は、「工具突出量L1X<干渉距離L2X」の場合に、ゲージ部211がラジアル工具TXの先端を前下側から覆い、係合部210aが被係合部201Xaに係合できるように、設定されている。
【0056】
それから、作業者は、被把持部213を捻ることにより、ナット201Xを回転させる。ナット201Xを回転させると、コレット200Xが凸部203Xaの内部に押し込まれる。コレット200Xに対する押込力は、コレット200Xを縮径させる方向に作用する。ラジアル工具TXは、軸方向からストッパ202Xにより、径方向からコレット200Xにより、保持される。
【0057】
このように、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が適切な場合、工具取付具21でラジアル工具TXを覆い、係合部210aを被係合部201Xaに係合させ、被把持部213を捻ることにより、ラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付けることができる。
【0058】
[ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が不適切な場合]
次に、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が不適切な場合について説明する。図10に、本実施形態の工具取付機構のコレット付近のX軸方向断面図を示す。
【0059】
図10に示すように、挿入状態が不適切な場合、ラジアル工具TXの後上側端がストッパ202Xに当接しない。なお、作業者は、目視では、この状態を把握することが困難である。作業者が被把持部213を把持し、工具取付具21でラジアル工具TXを覆うと、係合部210aが被係合部201Xaに係合しない。このため、作業者が被把持部213を捻っても、ナット201Xが回転しない。
【0060】
このように、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が不適切な場合、工具取付具21でラジアル工具TXを覆うと、係合部210aを被係合部201Xaに係合させることができない。このため、被把持部213を捻っても、ラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付けることができない。
【0061】
なお、ラジアル工具ホルダ20Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が適切な場合であっても、図10の状態になる場合がある。この場合は、ラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付けることができない。例えば、挿入したラジアル工具TXが、CNC旋盤1用の工具ではない場合が考えられる。
【0062】
<作用効果>
次に、本実施形態の工具取付機構2の作用効果について説明する。図10に示すように、本実施形態の工具取付機構2によると、コレット200Xに対するラジアル工具TXの挿入状態が不適切な場合、係合部210aが被係合部201Xaに係合しないように、基準距離L3が設定されている。具体的には、ラジアル工具TXの挿入状態が不適切な場合、「工具突出量L1X≧干渉距離L2X」となる。この場合、工具取付具21を用いてラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付けようとしても、ゲージ部211にラジアル工具TXの先端が当接してしまい、係合部210aが被係合部201Xaに係合できなくなる。このため、レンチ部210を回転させても、レンチ部210の回転トルクをナット201Xに伝達することができない。したがって、ナット201Xが回転せず、コレット200Xを縮径させることができない。すなわち、ラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付けることができない。
【0063】
このように、本実施形態の工具取付機構2によると、工具突出量L1Xの測定作業(工具突出量L1Xと干渉距離L2Xとの比較)と、ラジアル工具TXの取付作業と、を単一の工具取付具21を用いて行うことができる。また、本実施形態の工具取付機構2によると、「工具突出量L1X≧干渉距離L2X」の場合に、強制的にラジアル工具TXの取付作業を禁止することができる。このため、図6に示すように、ラジアル工具ホルダ20Xにラジアル工具TXを取り付けた後、全体カバー30に、ラジアル工具TXが干渉しにくい。
【0064】
また、本実施形態の工具取付機構2によると、単一のCNC旋盤1に対して単一の工具取付具21が割り当てられている。また、図9図10に示す工具取付具21の基準距離L3は、図6に示すX軸方向の干渉距離L2Xおよび図7に示すZ軸方向の干渉距離L2Zのうち、小さい方を基準に設定されている。
【0065】
すなわち、CNC旋盤1が複数の回転工具(ラジアル工具TX、アキシャル工具TZ)を備えているにもかかわらず、工具取付具21は共用である。このため、回転工具ごとに工具取付具21が用意されている場合と比較して、回転工具と工具取付具21との組合せを、間違えてしまうおそれがない。したがって、図6図7に示すように、ラジアル工具TX、アキシャル工具TZ共に、壁部3に干渉しにくい。
【0066】
<その他>
以上、本発明の工具取付具および工具取付機構の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0067】
上記実施形態においては、ラジアル工具TX、アキシャル工具TZに対して共用の工具取付具21を用いた。しかしながら、ラジアル工具TX専用の工具取付具21(ラジアル工具取付具)、アキシャル工具TZ専用の工具取付具21(アキシャル工具取付具)を用いてもよい。この場合、ラジアル工具取付具の基準距離L3は、図6に示す干渉距離L2Xを基準に設定すればよい。また、アキシャル工具取付具の基準距離L3は、図7に示す干渉距離L2Zを基準に設定すればよい。こうすると、アキシャル工具TZ、ラジアル工具TXに対して単一の工具取付具21を共用する場合と比較して、アキシャル工具TZおよびラジアル工具TXのうち、干渉距離L2Z、L2Xが大きい方の工具のデッドスペースを、小さくすることができる。
【0068】
また、ラジアル工具TX専用の工具取付具21(ラジアル工具取付具)、アキシャル工具TZ専用の工具取付具21(アキシャル工具取付具)を用いる場合、ラジアル工具取付具専用のナット201X、アキシャル工具取付具専用のナット201Zを用いてもよい。具体的には、ラジアル工具取付具の係合部210aと、アキシャル工具取付具の係合部210aと、の延在部210bの延在方向(円弧の周方向)の幅を、広狭異なるように設定してもよい。並びに、ラジアル工具ホルダ20Xの被係合部201Xaと、アキシャル工具ホルダ20Zの被係合部と、のナット201X、201Zの周方向の幅を、広狭異なるように設定してもよい。こうすると、アキシャル工具ホルダ20Zに対するラジアル工具取付具の誤使用を抑制することができる。並びに、ラジアル工具ホルダ20Xに対するアキシャル工具取付具の誤使用を抑制することができる。
【0069】
この場合、図6に示すX軸方向の干渉距離L2Xおよび図7に示すZ軸方向の干渉距離L2Zのうち、小さい方に対応する工具取付具(前記(3−3)の構成の短軸取付具)の係合部210a、工具ホルダ(前記(3−3)の構成の短軸用工具ホルダ)の被係合部の幅を、大きい方に対応する工具取付具(前記(3−3)の構成の長軸取付具)の係合部210a、工具ホルダ(前記(3−3)の構成の長軸用工具ホルダ)の被係合部の幅よりも、狭くしてもよい。
【0070】
こうすると、長軸取付具(図9に示す基準距離L3が大きい方の工具取付具)を、短軸用工具ホルダに、用いることができない。このため、短軸用工具ホルダに取り付けられる回転工具の工具突出量L1Xが、誤って干渉距離以上の長さに設定されることを、防止することができる。
【0071】
例えば、干渉距離L2Z>干渉距離L2Xの場合、ラジアル工具取付具(短軸取付具)の係合部210a、ラジアル工具ホルダ20X(短軸用工具ホルダ)の被係合部201Xaの幅を、アキシャル工具取付具(長軸取付具)の係合部210a、アキシャル工具ホルダ20Z(長軸用工具ホルダ)の被係合部の幅よりも、狭くする。こうすると、アキシャル工具取付具(係合部210aの幅が広い)をラジアル工具ホルダ20X(被係合部201Xaの幅が狭い)に用いることができない。このため、図9に示すラジアル工具TXの工具突出量L1Xが、誤って干渉距離L2X以上の長さに設定されることを、防止することができる。
【0072】
図8に示すナット201Xは、六角ナットであってもよい。この場合、レンチ部210は、六角レンチであってもよい。すなわち、係合した場合に、レンチ部210からナット201Xに、回転トルクを伝達可能であればよい。
【0073】
図8に示す連結部212、ゲージ部211は、棒状であってもよい。連結部212は、レンチ部210とゲージ部211との間に、図9に示す基準距離L3を確保できればよい。ゲージ部211は、ラジアル工具TX、アキシャル工具TZの先端に、外側から当接可能であればよい。すなわち、ラジアル工具TXを取り付ける場合は、X軸方向から見て、ラジアル工具TXとゲージ部211との間に、重複部分があればよい。また、アキシャル工具TZを取り付ける場合は、Z軸方向から見て、アキシャル工具TZとゲージ部211との間に、重複部分があればよい。
【0074】
回転工具の種類は特に限定しない。自身の軸周りに回転可能な工具であればよい。回転工具は、例えば、ドリル、リーマ、センタードリル、エンドミル、タップなどであってもよい。
【0075】
図1に示すように、上記実施形態においては、CNC旋盤1の壁部3に対するアキシャル工具TZ、ラジアル工具TXの干渉を防止する場合を例示したが、例えば、主軸61、加工室Aの扉など、他の部材であってもよい。すなわち、本発明の「工作機械を構成する部材」の種類は特に限定しない。例えば、Z軸スライド44、X軸スライド42、タレット41を適宜駆動した場合のアキシャル工具TZ、ラジアル工具TXの移動経路において、アキシャル工具TZに対してZ軸方向に最も接近する部材、ラジアル工具TXに対してX軸方向に最も接近する部材であってもよい。
【0076】
CNC旋盤1の主軸方向は特に限定しない。すなわち、横型旋盤、正面旋盤、立型旋盤に本発明の工具取付機構2を配置してもよい。また、フライス盤、ボール盤、ミーリングセルに本発明の工具取付機構2を配置してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1:CNC旋盤(工作機械)。
2:工具取付機構、20X:ラジアル工具ホルダ(工具ホルダ)、200X:コレット、201X:ナット、201Xa:被係合部、202X:ストッパ、203X:ホルダ本体、203Xa:凸部、203Xb:工具収容孔、20Z:アキシャル工具ホルダ(工具ホルダ)、201Z:ナット、21:工具取付具、210:レンチ部、210a:係合部、210b:延在部、211:ゲージ部、212:連結部、213:被把持部。
3:壁部、30:全体カバー、31:仕切壁。
4:工具台、40:工具台本体、41:タレット、42:X軸スライド、43:X軸下スライド、44:Z軸スライド、45:Z軸下スライド。
6:主軸台、60:主軸台本体、61:主軸、62:チャック。
7:ベッド、70:傾斜部。
A:加工室、L1X:工具突出量、L1Z:工具突出量、L2X:干渉距離、L2Z:干渉距離、L3:基準距離、TX:ラジアル工具(回転工具)、TZ:アキシャル工具(回転工具)、W:ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
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