(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転可能に設けられた回転子(114)と、圧粉磁性材料で円環状に形成されて周方向に配列された複数のスロット(131,231)を有し前記回転子の外側に径方向に対向して配置された固定子コア(130,230)、及び、前記固定子コアの前記スロットに巻装された固定子コイル(140,240)を有する固定子(120,220)と、を備えた回転電機において、
前記固定子コアは、軸方向の端面(130a,230a)から軸方向外方に突出し、前記固定子コイルのコイルエンド(141,142,241)に供給され下方に流動する冷媒の流動抵抗となる第1凸部(138)及び第2凸部(239)の少なくとも一方を有し、
前記第1及び第2凸部は、前記圧粉磁性材料を圧縮成形して前記固定子コアを形成する際に前記圧粉磁性材料で前記固定子コアと一体に形成されていることを特徴とする回転電機。
前記第1凸部は、前記固定子コアの軸方向が水平方向を向く状態に設置された際に、前記コイルエンドの反重力方向側において前記コイルエンドの内部に形成された空間部(147)に突出していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
前記第2凸部は、前記固定子コアの軸方向が水平方向を向く状態に設置された際に、前記コイルエンドの重力方向側において前記スロットの径方向外方側に周方向に連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の回転電機の
参考例及び実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
〔
参考例1〕
参考例1の回転電機1について
図1〜
図7を参照して説明する。
参考例1の回転電機1は、車両用モータとして用いられるものであって、
図1に示すように、ハウジング10と、回転軸13と、回転子14と、固定子20とを備えている。
【0016】
ハウジング10は、一端が開口する有底筒状に形成された筒状部材としてのリアハウジング10aと、リアハウジング10aの開口部を覆蓋するフロントハウジング10bとから構成されている。リアハウジング10aの内周面には、固定子20が嵌合固定される円環状の嵌合溝10cが設けられている。この嵌合溝10cの底部には、嵌合溝10cに嵌合される固定子20の外周面との間に周方向に1周する冷媒通路16が設けられている。
【0017】
このリアハウジング10aの、軸方向が水平方向を向く状態に設置されたときに反重力方向側(上方側)となる部位には、冷媒通路16に供給される冷媒の入り口16aが設けられている。また、リアハウジング10aの、軸方向が水平方向を向く状態に設置されたときに重力方向側(下方側)となる部位には、冷媒通路16から流出する冷媒の出口16bやハウジング10内の底部に溜まった冷媒の出口16cが設けられている。
【0018】
なお、この回転電機1には、出口16b,16cから流出した冷媒を回収して再度入り口16aから冷媒通路16に供給するように循環させる冷媒循環経路(図示せず)が設けられている。この冷媒循環経路の途中には、固定子20により加熱された冷媒を冷却する冷却器(図示せず)等が設けられている。これにより、冷媒循環経路を循環する冷媒によって固定子20を冷却する冷却機構が構築されている。なお、冷媒としては、従来の回転電機において使用される公知の液体冷媒(例えばATF等)を用いることができる。
【0019】
リアハウジング10aの底壁中央部及びフロントハウジング10bの中央部には、軸受け11,12を介して回転軸13の両端部が回転可能に支持されている。回転軸13の軸方向中央部の外周には、回転子14が嵌合固定されている。回転子14の外周部には、周方向に所定距離を隔てて配置された複数の永久磁石を有し、これら永久磁石により周方向に極性が交互に異なる複数の磁極が形成されている。回転子14の磁極の数は、回転電機1の仕様により異なるため限定されるものではない。
本参考例では、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
【0020】
固定子20は、
図2に示すように、円環状に形成され回転子14の外側に径方向に対向して配置される固定子コア30と、固定子コア30に巻装された3相(U相、V相、W相)の固定子コイル40とを備えている。なお、固定子コア30と固定子コイル40の間には、絶縁紙を配してもよい。
【0021】
固定子コア30は、
図3に示すように、周方向に分割された複数(
本参考例では24個)の分割コア32により円環状に形成され、その内周側に周方向に配列された複数のスロット31を有する。この固定子コア30は、円環状に組み付けられた分割コア32の外周に外筒30b(
図2参照)が嵌合されることにより円環状に固定(保形)されている。固定子コア30は、外周側に位置する円環状のバックコア部33と、バックコア部33から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース34とからなる。これにより、隣り合うティース34の周方向に対向する側面同士の間には、固定子コア30の内周側に開口し径方向に延びるスロット31が形成されている。
【0022】
スロット31は、
本参考例では固定子コイル40が2倍スロットの分布巻きであるため、回転子14の磁極数(8)に対し、固定子コイル40の一相あたり2個の割合で形成されている。つまり、8×3×2=48個のスロット31が形成されている。この場合、48個のスロット31は、スロット31と同数(48個)のティース34により形成されている。スロット31の径方向外方側には、固定子コア30の軸方向の両端面30a間を軸方向に貫通する軸方向溝35が設けられている。この軸方向溝35の周方向幅は、径方向内方側の開口から径方向外方側の底部に向かうにつれて徐々に小さくなるようにされている。
【0023】
固定子コア30を構成する各分割コア32は、
図4及び
図5に示すように、更に軸方向に2個に分割形成されており、軸方向一方側に位置する第1分割コア32aと、軸方向他方側に位置する第2分割コア32bとからなる。第1分割コア32a及び第2分割コア32bは、それぞれ圧粉磁性材料を圧縮成形することにより形成されている。
【0024】
第2分割コア32bの第1分割コア32aとの分割面には、径方向に延びる凹溝36が設けられている。凹溝36の第1分割コア32aと対向する開口は、第1分割コア32aの分割面により覆われて封止されている。これにより、凹溝36の延伸方向の両端が冷媒通路16とスロット31とに連通し、冷媒通路16からスロット31に冷媒を導入する導入通路37が設けられている。
本参考例では、全部のスロット31に対して導入通路37が設けられている。この導入通路37は、第2分割コア32bが圧粉磁性材料を圧縮成形して形成される際に同時に形成されている。
【0025】
固定子コイル40は、所定の波形形状に成形した所定数の導体線45を所定の状態に積み重ねて帯状の導体線集積体を形成し、その導体線集積体を渦巻き状に巻き付けることにより円筒状に形成されている。
本参考例では、固定子コイル40を構成する導体線45として、矩形断面の銅製の導体と該導体の外周を被覆する絶縁皮膜とからなる絶縁被覆された平角導体線が採用されている。
【0026】
この固定子コイル40は、次のようにして固定子コア30と組み付けられている。即ち、円筒状に成形された固定子コイル40の外周側から各分割コア32のティース34を挿入して、全ての分割コア32を固定子コイル40に沿って円環状に組み付けた後、分割コア32の外周に円筒状の外筒30bを嵌合して固定する。これにより、固定子コイル40は、
図2(b)に示すように、軸方向中央部でスロット31内に収容された複数の導体線45が径方向に積層されてなるスロット収容部(図示せず)と、軸方向両端で固定子コア30の軸方向両側の端面30aから軸方向外方へそれぞれ突出する第1及び第2コイルエンド41,42とを有する。
【0027】
固定子コイル40のスロット収容部は、
図6に示すように、固定子コア30の各スロット31内に複数本(
本参考例では8本)の導体線45が径方向1列に並んだ状態で収容されている。なお、各スロット31に設けられた軸方向溝35は、周方向幅が径方向内方側の開口から径方向外方側の底部に向かうにつれて徐々に小さくなるようにされているので、各スロット31の最外周側に位置する導体線45が軸方向溝35内に入り込んで軸方向溝35を完全に塞ぐことがない。これにより、導入通路37からスロット31に導入された冷媒が軸方向溝35を確実に流通可能となるようにされている。
【0028】
次に、
本参考例の回転電機1の作用について説明する。
本参考例の回転電機1は、冷媒通路16の入り口16aが反重力方向側(上方側)に位置するように、車両の所定位置に設置される。そして、固定子コイル40への通電により運転が開始されると、回転子14の回転に伴って回転軸13が回転し、回転軸13から他の機器に駆動力が供給される。
【0029】
回転電機1の運転開始と同時に、固定子20を冷却する冷却機構が作動し、冷媒循環経路の冷媒が入り口16aから冷媒通路16に供給される。冷媒通路16に供給された冷媒は、固定子コア30の外周面に沿って冷媒通路16を下方に流動する。これにより、固定子コア30を冷却しつつ冷媒通路16を流動した冷媒は、最下部の出口16bから冷媒循環経路に流出する。
【0030】
また、冷媒通路16の一部の冷媒は、冷媒通路16から導入通路37を介してスロット31内に導入され、軸方向溝35を軸方向外方に向かって流動する。このとき、スロット31内に収容された固定子コイル40の導体線45に冷媒が直接接触して、導体線45を効率良く確実に冷却する。
【0031】
その後、軸方向溝35を軸方向外方に向かって流動した冷媒は、第1及び第2コイルエンド41,42にそれぞれ到達すると、第1及び第2コイルエンド41,42の導体線45を伝って重力方向(下方)に流動する。このとき、第1及び第2コイルエンド41,42の導体線45に冷媒が直接接触して、第1及び第2コイルエンド41,42を効率良く確実に冷却する。その後、第1及び第2コイルエンド41,42の最下部に到達した冷媒は、ハウジング10内の底部に落下し、出口16cから冷媒循環経路に流出する。
【0032】
また、第1及び第2コイルエンド41,42の導体線45を伝って重力方向(下方)に流動する冷媒の一部は、スロット31内に流入し、スロット31内に収容された固定子コイル40の導体線45を冷却する。スロット31内に流入した冷媒は、軸方向溝35や導入通路37を介して出口16bから冷媒循環経路に流出する。
【0033】
その後、出口16b,16cから冷媒循環経路に戻された冷媒は、冷媒循環経路を経由して再度入り口16aから冷媒通路16に供給され、上記の流通動作を繰り返し行うことによって、固定子コイル40及び固定子コア30を冷却する。
【0034】
以上のように、
本参考例の回転電機1によれば、固定子コア30は、冷媒通路16とスロット31とを径方向に連通し冷媒通路16からスロット31に冷媒を導入する導入通路37を有する。これにより、固定子コア30のスロット31に収容された固定子コイル40のスロット収容部に、冷媒通路16から導入通路37を介して導入された冷媒を直接接触させて効率良く冷却することができる。そのため、圧粉磁性材料で形成された熱伝導率の低い固定子コア30を有する回転電機1において、冷却性能を大幅に向上させることができる。
【0035】
また、
本参考例では、周方向に分割された複数の分割コア32は、更に軸方向に2分割された第1及び第2分割コア32a,32bよりなり、一方の第2分割コア32bの分割面に導入通路37を区画する凹溝36が形成されている。そのため、導入通路37を区画する凹溝36を容易に形成することができる。特に、分割コア32を構成する第1及び第2分割コア32a,32bが圧粉磁性材料を圧縮成形して形成されたものであるため、圧縮成形時に凹溝36を容易に形成することができる。
【0036】
また、
本参考例では、固定子コア30は、スロット31の径方向外方側に形成された軸方向に延びる軸方向溝35を有する。そのため、冷媒通路16から導入通路37を介してスロット31に導入された冷媒を、軸方向溝35を介して第1及び第2コイルエンド41,42に流動させることができるので、固定子コイル40をより確実に冷却することができる。
【0037】
〔試験1〕
上記
参考例1の回転電機の冷却性能を調べるために、固定子コイル40の第1及び第2コイルエンド41,42における冷媒との温度差の周方向分布を測定した。この試験では、円環状の第1及び第2コイルエンド41,42の全周において、最上部の位置を0°とし、この0°の位置から時計回り方向に45°ずつ角度がずれたそれぞれの位置で温度を測定し、冷媒の温度との温度差を調べた。その結果は、
図7のグラフに黒丸で示した。
【0038】
また、比較例1として、前記特許文献1のように、固定子コア30の外周面に沿って設けられた冷媒通路16を有するが、
参考例1では設けられていた導入通路37を有しない点で異なる回転電機を準備し、この比較例1についても
参考例1と同じ条件で測定して調べた。その結果は、
図7のグラフに白丸で示した。
【0039】
なお、
図7のグラフにおいて、中心点は、温度測定位置での温度差が0であり、その中心点から径方向外方に向かって温度差が大きくなっている。また、温度測定位置での温度差が小さい程、より高い冷却効果が得られた状態となる。
【0040】
図7から明らかなように、
参考例1(黒丸)の場合には、比較例1(白丸)に比べ、全ての位置において温度差が小さくなっており、高い冷却効果が得られていることが解る。この場合、
参考例1は、比較例1に対して温度差が約20%低減されている。
【0041】
〔
実施形態1〕
実施形態1の回転電機2について
図8〜
図13を参照して説明する。
実施形態1の回転電機2は、車両用モータとして用いられるものであって、
図8に示すように、ハウジング110と、回転軸113と、回転子114と、固定子120とを備えている。
【0042】
ハウジング110は、有底筒状に形成された一対のリアハウジング110a及びフロントハウジング110bよりなり、それらの開口部同士が接合された状態でボルト118により締結されている。回転子114は、ハウジング110に軸受け111,112を介して回転自在に両端を支承された回転軸113の外周に嵌合固定されて、ハウジング110内に収容配置されている。固定子120は、回転子114の外周側に径方向に対向するようにしてハウジング110の内周に固定されている。
【0043】
また、この回転電機2には、固定子120の固定子コイル140に冷却用の冷却媒体を供給する一対の管路115、116を備えた冷媒供給手段が設けられている。管路115、116は、ハウジング110の内部と外部を連通するようにして、リアハウジング110a及びフロントハウジング110bにそれぞれ貫通した状態で取り付けられている。各管路115、116の先端部には、冷却媒体を吐出する吐出口115a、116aが設けられている。吐出口115a、116aは、ハウジング110内に収容された固定子120の固定子コイル140の第1及び第2コイルエンド141、142の鉛直上方に開口している。
【0044】
なお、この回転電機2には、吐出口115a、116aから吐出した冷媒を回収して再度吐出口115a、116aから第1及び第2コイルエンド141、142に供給するように循環させる冷媒循環経路(図示せず)が設けられている。この冷媒循環経路の途中には、固定子120により加熱された冷媒を冷却する冷却器(図示せず)等が設けられている。これにより、冷媒循環経路を循環する冷媒によって固定子120を冷却する冷却機構が構築されている。なお、冷媒としては、従来の回転電機において使用される公知の液体冷媒(例えばATF等)を用いることができる。
【0045】
回転子114は、固定子120の内周側と向き合う外周側に、周方向に所定距離を隔てて配置された複数の永久磁石を有し、これら永久磁石により周方向に極性が交互に異なる複数の磁極が形成されている。この回転子114は、磁極の数が8極(N極:4、S極:4)のものが用いられている。
【0046】
固定子120は、
図9に示すように、圧粉磁性材料で円環状に形成されて周方向に配列された複数のスロット131(
図11,
図13参照)を有する固定子コア130と、固定子コア130のスロット131に巻装された3相(U相、V相、W相)の固定子コイル140と、を備えている。
【0047】
固定子コア130は、圧粉磁性材料を圧縮成形することにより一体となった円環状に形成されている。この固定子コア130は、
図11に示すように、円環状のバックコア部133と、バックコア部133から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース134とを有する。そして、隣り合うティース134の周方向に対向する側面同士の間にはスロット131が形成されている。
【0048】
スロット131は、本実施形態の場合にも固定子コイル140が2倍スロットの分布巻きであるため、回転子114の磁極数(8)に対し、固定子コイル140の一相あたり2個の割合で形成されている。つまり、8×3×2=48個のスロット131が形成されている。この場合、48個のスロット131は、スロット131と同数(48個)のティース134により形成されている。
【0049】
図11及び
図12に示すように、固定子コア130のティース134の基端部(付け根部)には、軸方向の両端面130aから軸方向外方にそれぞれ突出する第1凸部138が設けられている。この第1凸部138は、
図13に示すように、スロット131内において最外周側に収容された導体線145の周方向両側に設けられている。この場合、第1凸部138は、固定子コア130の軸方向が水平方向を向く状態に設置された際に、円環状の第1及び第2コイルエンド141,142の反重力方向側(上方側)半分の範囲に設けられている。
【0050】
固定子コイル140は、所定の波形形状に成形した所定数の導体線145を所定の状態に積み重ねて帯状の導体線集積体を形成し、その導体線集積体を渦巻き状に巻き付けることにより円筒状に形成されている。本実施形態では、固定子コイル140を構成する導体線145として、矩形断面の銅製の導体と該導体の外周を被覆する絶縁皮膜とからなる絶縁被覆された平角導体線が採用されている。
【0051】
この固定子コイル140は、例えば導体線巻回装置(図示せず)などを用いて、固定子コア130のスロット131に導体線145を所定の状態に巻回することにより固定子コア130に巻装されている。これにより、固定子コイル140の軸方向中央部には、スロット131内に収容された複数の導体線145が径方向1列に積層されてなるスロット収容部(図示せず)が形成されている。また、固定子コイル140の軸方向両端部には、固定子コア130の軸方向両側の端面130aからそれぞれ軸方向外方へ突出する第1及び第2コイルエンド141,142(
図8参照)が形成されている。
【0052】
第1及び第2コイルエンド141,142の内部には、
図10に示すように、周方向に隣接するスロット131からそれぞれ延出する導体線145同士の間に空間部147が形成されている。そして、各第1凸部138は、それらの空間部147に突出するように形成されている。これにより、第1凸部138は、第1及び第2コイルエンド141,142に供給された冷媒が下方に流動する際に流動抵抗となって、冷媒が短時間で通過するのを防止し、第1及び第2コイルエンド141,142に冷媒がより長時間滞在するようにされている。
【0053】
以上のように構成された本実施形態の回転電機2は、冷媒の吐出口115a、116aが反重力方向側(上方側)に位置するようにして、車両の所定位置に設置される。そして、固定子コイル140への通電により運転が開始されると、冷媒供給手段により管路115、116の吐出口115a、116aから冷却用の冷媒が吐出される。吐出された冷媒は、第1及び第2コイルエンド141、142の上方部(反重力方向側)に供給され、第1及び第2コイルエンド141,142を下方に流動する。
【0054】
このとき、固定子コア130に設けられた第1凸部138が冷媒の流動抵抗となることによって、冷媒は、第1及び第2コイルエンド141,142を短時間で通過することなく、より長い時間滞留するようになる。そのため、第1及び第2コイルエンド141、142は、冷媒とより長い時間接触することが可能となるので効率良く冷却される。
【0055】
以上のように、本実施形態の回転電機2によれば、固定子コア130は、端面130aから軸方向外方に突出し、固定子コイル140の第1及び第2コイルエンド141、142に供給され下方に流動する冷媒の流動抵抗となる第1凸部138を有する。そのため、固定子コイル140の第1及び第2コイルエンド141、142に供給された冷媒が下方に流動する際に、固定子コア130に設けられた第1凸部138が冷媒の流動抵抗となることによって、第1及び第2コイルエンド141、142に冷媒をより長い時間滞留させ接触させることができる。これにより、第1及び第2コイルエンド141、142を効率良く冷却することができるので、圧粉磁性材料で形成された熱伝導率の低い固定子コア130を有する回転電機2において、冷却性能を大幅に向上させることができる。
【0056】
また、第1凸部138は、圧粉磁性材料を圧縮成形して固定子コア130を形成する際に形成されているので、圧縮成形時に第1凸部138を容易に形成することができる。
【0057】
また、第1凸部138は、固定子コア130の軸方向が水平方向を向く状態に設置された際に、第1及び第2コイルエンド141,142の反重力方向側において第1及び第2コイルエンド141,142内に形成された空間部147に突出している。これにより、第1及び第2コイルエンド141,142の反重力方向側(上方側)に導入された冷媒を、反重力方向側においてより長時間滞留させることが可能となる。
【0058】
また、第1凸部138は、スロット131内において最外周側に収容された固定子コイル140の導体線145の周方向両側に設けられているので、第1凸部138を最適な位置に設けることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、第1凸部138は、固定子コア130の軸方向両側の端面130aに設けられているが、軸方向の何れか一方の端面130aに設けてもよい。但し、第1凸部138を設けることによって、より良好な冷却効果を得るためには、本実施形態のように、第1凸部138を軸方向両側の端面130aに設けるようにするのが好ましい。
【0060】
〔
実施形態2〕
実施形態2の回転電機について
図14〜
図16を参照して説明する。
実施形態2の回転電機は、
実施形態1の回転電機2と基本的構成が同じであり、固定子コア230の構成が
実施形態1のものと異なる。よって、
実施形態1の回転電機2と共通する部材や構成については詳しい説明は省略し、異なる点及び重要な点について説明する。なお、
実施形態1と共通する部材は同じ符号を用いる。
【0061】
実施形態2の固定子220は、
図14に示すように、圧粉磁性材料で円環状に形成されて周方向に配列された複数のスロット231を有する固定子コア230と、固定子コア230のスロット231に巻装された3相(U相、V相、W相)の固定子コイル240と、を備えている。なお、
実施形態2の固定子コイル240は、
実施形態1の固定子コイル140と同一であるため、詳しい説明は省略する。
【0062】
固定子コア230は、
実施形態1と同様に、圧粉磁性材料を圧縮成形することにより一体となった円環状に形成されている。
図15に示すように、この固定子コア230は、
実施形態1と同様に、円環状のバックコア部233と、バックコア部233から径方向内方へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数(48個)のティース234とを有する。そして、隣り合うティース234の周方向に対向する側面同士の間にはスロット231が形成されている。
【0063】
固定子コア230は、
実施形態1の第1凸部138に相当するものは設けられておらず、これに代わり第2凸部239が設けられている点で
実施形態1の固定子コア230と異なる。第2凸部239は、バックコア部233の軸方向の両端面230aから軸方向外方にそれぞれ突出し、周方向に連続して延びる半円弧状に形成されている。即ち、第2凸部239は、スロット231、第1コイルエンド241及び第2コイルエンド(図示せず)の径方向外方側で、バックコア部233の内周端部に沿って周方向に延びるように形成されている。この第2凸部239は、固定子コア230の軸方向が水平方向を向く状態に設置された際に、円環状の第1及び第2コイルエンド241の重力方向側(下方側)半分の範囲に設けられている。
【0064】
以上のように構成された
実施形態2の回転電機は、
実施形態1の場合と同様に、冷媒の吐出口115a、116aが反重力方向側(上方側)に位置するようにして、車両の所定位置に設置される。そして、固定子コイル40への通電により運転が開始されると、冷媒供給手段により管路115、116の吐出口115a、116aから吐出された冷媒が、第1及び第2コイルエンド241の上方部(反重力方向側)に供給され、第1及び第2コイルエンド241を下方に流動する。
【0065】
このとき、固定子コア230に設けられた第2凸部239が冷媒の流動抵抗となることによって、冷媒は、第1及び第2コイルエンド241を短時間で通過することなく、より長い時間滞留するようになる。そのため、第1及び第2コイルエンド241は、冷媒とより長い時間接触することが可能となるので効率良く冷却される。
【0066】
以上のように、
実施形態2の回転電機によれば、固定子コア230は、固定子コイル240の第1及び第2コイルエンド241に供給され下方に流動する冷媒の流動抵抗となる第2凸部239を有する。そのため、第2凸部239が冷媒の流動抵抗となることによって、第1及び第2コイルエンド241に冷媒をより長い時間滞留させ接触させることができるなど、
実施形態1と同様の作用及び効果を奏する。
【0067】
なお、
実施形態2では、第2凸部239は、固定子コア230の軸方向両側の端面30aに設けられているが、軸方向の何れか一方の端面230aに設けてもよい。但し、第2凸部239を設けることによって、より良好な冷却効果を得るためには、
実施形態2のように第2凸部239を軸方向両側の端面230aに設けるようにするのが好ましい。
【0068】
また、
実施形態2の第2凸部239は、
実施形態1の第1凸部128と併設してもよい。このようにすれば、第1凸部138及び第2凸部239により、第1及び第2コイルエンド241の周方向全域に亘って冷却することができるので、更に良好な冷却効果を得ることができる。
【0069】
〔他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。例えば、
参考例1では、固定子コア30は、周方向に分割された複数の分割コア32により構成されているが、分割されていない一体型のものであってもよい。また、分割コア32は、更に軸方向に2個に分割されているが、3個以上の複数個に分割してもよい。
【0070】
また、
参考例1では、導入通路37を区画する凹溝36は、第2分割コア32bのみに設けられているが、第1分割コア32aのみに設けてもよく、それらの両方に設けてもよい。即ち、軸方向に複数に分割された分割コア32の互いに対向する2つの分割面のうちの少なくとも一方の分割面に、凹溝36を設けることができる。
【0071】
また、
上記の参考例1と実施形態1及び2では、
参考例1に係る発明と、
実施形態1及び2に係る発明とをそれぞれ別個の回転電機に適用した例を説明したが、一つの回転電機に対して、
参考例1に係る発明と
実施形態1及び2に係る発明を同時に適用することができる。このようにすれば、更に良好な冷却効果を得ることが可能となるので、冷却性能を更に向上させることができる。
【0072】
また、このようにした場合、
参考例1に係る発明においては、冷媒通路16に供給された冷媒が導入通路37からスロット31の軸方向溝35を介して第1及び第2コイルエンド41,42に導入されるように構成されているので、
実施形態1及び2に係る発明において、冷媒を供給するために設けられる管路115、116や吐出口115a、116aを排除することができる。
【0073】
なお、上記の
参考例1と実施形態1及び2は、本発明に係る回転電機をモータ(電動機)に適用した例であるが、本発明は、車両に搭載される回転電機として、電動機あるいは発電機、さらには両者を選択的に使用しうる回転電機にも利用することができる。