【実施例】
【0063】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(合成例A)
炭酸カルシウムに表面処理する有機酸としては、脂肪酸を用いた。脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸を含有する脂肪酸混合物(いずれも和光純薬社製)を用いた。この脂肪酸混合物を、水酸化ナトリウム水溶液中に添加して、90℃で加温攪拌し、脂肪酸のナトリウム水溶液を調製した。
【0065】
走査型電子顕微鏡で観察したときの平均一次粒子径が0.15μmである合成炭酸カルシウムのスラリー(固形分濃度8重量%)をよく攪拌しながら40℃に加熱した。このスラリーに、上記の脂肪酸ナトリウム水溶液を、炭酸カルシウム100質量部に対し、脂肪酸として2.5質量部、四級アンモニウム塩(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、和光純薬社製)水溶液を、炭酸カルシウム100質量部に対して、四級アンモニウム塩0.3質量部となるように添加した。炭酸カルシウムスラリーに、脂肪酸ナトリウム水溶液を添加した後、四級アンモニウム塩水溶液を添加した。添加後攪拌し、攪拌後フィルタープレスにより脱水して、箱型乾燥機を用いて80℃の条件で乾燥した。得られた乾燥物をミクロンミル粉砕機を用いて粉砕し、ベース炭酸カルシウムを得た。
【0066】
このベース炭酸カルシウムをミキサーで攪拌しながら、炭酸カルシウム100質量部に対して、80℃に加熱溶融した無水マレイン酸2質量部を添加し、10分間攪拌混合し、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0067】
(合成例B)
脂肪酸、四級アンモニウム塩で表面処理しないこと以外は、上記合成例Aと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0068】
(合成例C)
四級アンモニウム塩で表面処理しないこと以外は、上記合成例Aと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0069】
(合成例D)
表面処理する有機酸として、脂肪酸の代わりに樹脂酸(アビエチン酸、和光純薬社製)を用いる以外は、上記合成例Aと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0070】
(合成例E)
無水マレイン酸の量を、炭酸カルシウム100質量部に対し、0.3質量部とする以外は、上記合成例Aと同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0071】
(合成例F)
無水マレイン酸の量を、炭酸カルシウム100質量部に対し、3質量部とする以外は、上記合成例Aと同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0072】
(合成例G)
平均一次粒子径が0.08μmである合成炭酸カルシウムを用いる以外は、上記合成例Cと同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0073】
(合成例H)
平均一次粒子径が0.05μmである合成炭酸カルシウムを用い、脂肪酸の量を、炭酸カルシウム100質量部に対し、3質量部とする以外は、上記合成例Cと同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0074】
(合成例I)
平均一次粒子径が0.03μmである合成炭酸カルシウムを用い、脂肪酸の代わりに樹脂酸を、炭酸カルシウム100質量部に対し、4質量部用いる以外は、上記合成例Cと同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0075】
(合成例J)
無水マレイン酸で表面処理しないこと以外は、上記合成例Aと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0076】
(合成例K)
無水マレイン酸で表面処理しないこと以外は、上記合成例Bと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0077】
(合成例L)
無水マレイン酸で表面処理しないこと以外は、上記合成例Cと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0078】
(合成例M)
無水マレイン酸で表面処理しないこと以外は、上記合成例Dと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0079】
(合成例N)
無水マレイン酸で表面処理しないこと以外は、上記合成例Gと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0080】
(合成例O)
無水マレイン酸で表面処理しないこと以外は、上記合成例Hと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0081】
(合成例P)
無水マレイン酸で表面処理しないこと以外は、上記合成例Iと同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0082】
(合成例Q)
無水マレイン酸の量を、炭酸カルシウム100質量部に対し、5質量部とする以外は、上記合成例Aと同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0083】
(合成例R)
無水マレイン酸の量を、炭酸カルシウム100質量部に対し、1質量部とする以外は、上記合成例Aと同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0084】
〔炭酸カルシウムゴム組成物の調製〕
(実施例1〜9、比較例1〜7)
上記合成例A〜Pで得られた表面処理炭酸カルシウム100質量部を天然ゴム(商品名「SMR−L」)100質量部に配合し、さらに天然ゴム100質量部に対し、亜鉛華5質量部、ステアリン酸1質量部、加硫促進剤CBS(N−シクロヘキシル2−2ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1.5質量部、及び硫黄2質量部を添加し、二本ロールで混練して、未加硫ゴムを得た。
【0085】
(実施例10)
上記合成例Qで得られた表面処理炭酸カルシウムを25質量部配合する以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0086】
(実施例11)
上記合成例Qで得られた表面処理炭酸カルシウムを50質量部配合する以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0087】
(実施例12)
上記合成例Rで得られた表面処理炭酸カルシウムを200質量部配合する以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0088】
(実施例13)
上記合成例Jで得られた表面処理炭酸カルシウムを100質量部と、無水マレイン酸を1質量部配合する以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0089】
(比較例8)
上記合成例Jで得られた表面処理炭酸カルシウムを25質量部配合する以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0090】
(比較例9)
上記合成例Jで得られた表面処理炭酸カルシウムを50質量部配合する以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0091】
(比較例10)
上記合成例Jで得られた表面処理炭酸カルシウムを200質量部配合する以外は、実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0092】
(比較例11)
無水マレイン酸の代わりにマレイン酸を1質量部配合する以外は、実施例13と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0093】
〔カーボンブラック配合ゴム組成物の調製〕
(比較例12)
表面処理炭酸カルシウムの代わりにFT級カーボンブラック(FTブラック、商品名「アサヒサーマル」)を用いる以外は、上記実施例1と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0094】
(比較例13)
表面処理炭酸カルシウムの代わりにFT級カーボンブラックを用いる以外は、上記実施13と同様にして、未加硫ゴムを得た。
【0095】
〔ゴム組成物の試験〕
実施例1〜13、比較例1〜13で得られた未加硫ゴム、プレス加硫シートを用いて、ムーニー粘度、及び動倍率を以下のようにして測定した。
【0096】
<ムーニー粘度>
JIS(日本工業規格)K 6300−1に規定された方法に従い、島津製作所製のムーニー粘度計を用いて測定した。試験温度は100℃であり、予熱1分後から測定を開始し、4分後の粘度を測定した。
【0097】
<動倍率(Kd/Ks)>
動倍率は、動バネ定数(Kd)、静バネ定数(Ks)を求め、その比(Kd/Ks)より求めた。
【0098】
動バネ定数(Kd)は、動的粘弾性測定装置(株式会社ユーピーアイ Rheogel−4000)を用い、以下の条件でE’(貯蔵弾性率)を測定し、これを動バネ定数(Kd)とした。
【0099】
温度 :25℃
動的歪:20μm
初期歪:2mm
周波数:100Hz
試験片:5w×2t×30l(チャック間距離20mm)
【0100】
静バネ定数(Ks)は、25%低伸張応力を測定し、下式より求めた。
【0101】
静的バネ定数Ks=3×Gs (Gs:静的弾性率(MPa))
Gs=1.639×σ25 (σ25:25%低伸張応力(MPa))
【0102】
測定結果を、表面処理炭酸カルシウム処理組成とともに、表1〜3に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表1〜3に示す結果から明らかなように、炭酸カルシウムを、無水マレイン酸で表面処理するか、あるいは無水マレイン酸と、脂肪酸類、樹脂酸類、及び四級アンモニウム塩化合物から選ばれる少なくとも1種の処理剤とで表面処理して得られた表面処理炭酸カルシウムを配合した実施例1〜13のゴム組成物は、いずれも低い動倍率を示している。従って、本発明によれば、ゴムの防振特性を飛躍的に向上させることができる。
【0107】
一方、比較例1〜11のゴム組成物は、同一の粒子径、同一の配合部数で比較した場合、動倍率が高く、防振特性の点で、実施例1〜13のゴム組成物より劣っていることがわかる。
【0108】
また実施例13においては、ゴム中に無水マレイン酸を添加することにより、脂肪酸及び四級アンモニウム塩化合物で表面処理した炭酸カルシウムを、さらに無水マレイン酸で処理している。このような方法によっても、動倍率が低くなっており、優れた防振特性が得られることがわかる。
【0109】
比較例11においては、無水マレイン酸に代えて、マレイン酸を用いているが、実施例13に比べ動倍率が高くなっており、良好な防振特性が得られていないことがわかる。
【0110】
炭酸カルシウムの代わりにカーボンブラックを用いた場合、比較例12と13の比較から、無水マレイン酸添加による動倍率低減の効果が得られないことがわかる。このことからも、実施例13のように、ゴムに無水マレイン酸と炭酸カルシウムを添加することにより、添加した無水マレイン酸が炭酸カルシウムと相互作用し、良好な防振特性が得られていると考えられる。