(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997625
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】車両用ドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-22970(P2013-22970)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-151763(P2014-151763A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 亮
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 基裕
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−061622(JP,U)
【文献】
特開2003−154853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00− 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に形成される開口部に対して上下端を回動支点として上下方向にそれぞれ回動開閉可能に配置された上部ドア及び下部ドアとを有する車両用ドア開閉装置において、
上部ドアと下部ドアとを連結するリンク機構であって、一端が下部ドアに固定され、他端が自由端である第1リンクアームと、一端が第1リンクアームの自由端に回動可能に接続されるとともに、他端が上部ドアに回動可能に接続される第2リンクアームとを有するリンク機構を有し、
前記リンク機構は、上部又は下部ドアのいずれか一方のドアの開閉動作に連動して、他方のドアを開状態または閉状態へ作動させる、
ことを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドア開閉装置において、
第1リンクアームは、下部ドアが閉状態から開状態へ回動するとき、第1リンクアームの自由端が上方に向けて移動するように下部ドアに固定される、
ことを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ドア開閉装置に関し、特に開閉機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に形成される開口部に対して上下端を回動支点として上下方向にそれぞれ回動開閉可能に配置された上部ドア及び下部ドアとを有する車両用ドア開閉装置が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、車両後方の開口に対して開閉可能に設けられた上側ドアと下側ドアとを有する車両用バックドア開閉装置が記載されている。上側ドアは、上端にヒンジが設けられ、このヒンジを介して車両本体の上部に回動可能に連結される。下側ドアは、下端にヒンジが設けられ、このヒンジを介して車両本体の下部に回動可能に連結される。この特許文献1のドア開閉装置は、上側又は下側ドアのいずれのドアからでも開閉操作が可能なリンク機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−5965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献のドア開閉装置においては、上側又は下側のいずれのドアからでも開閉操作することができる。しかしながら、両方のドアを開閉するときは、ユーザが両方のドアを作動させなければならず、手間がかかるという問題がある。一方、従来から、車両本体とドアとの間にガススプリングなどを設け、このガススプリングの反力により、ドアを開状態へと作動させる方法が知られている。しかし、ドアの閉状態のときにドア自体にかかるガススプリングの反力によりドアが変形してしまうことを防止するため、ドアの剛性を補強しなければならならず、車両重量が増加してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、車両に形成される開口部に対して上部ドアと下部ドアとが設けられる車両用ドア開閉装置において、簡易な構造で、これらのドアを容易に開閉することができる車両用ドア開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に形成される開口部に対して上下端を回動支点として上下方向にそれぞれ回動開閉可能に配置された上部ドア及び下部ドアとを有する車両用ドア開閉装置において、上部ドアと下部ドアとを連結するリンク機構を有し、前記リンク機構は、上部又は下部ドアのいずれか一方のドアの開閉動作に連動して、他方のドアを開状態または閉状態へ作動させることを特徴とする。
【0008】
また、前記リンク機構は、一端が下部ドアに固定され、他端が自由端である第1リンクアームと、一端が第1リンクアームの自由端に回動可能に接続されるとともに、他端が上部ドアに回動可能に接続される第2リンクアームとを有することを特徴とする。
【0009】
また、第1リンクアームは、下部ドアが閉状態から開状態へ回動するとき、第1リンクアームの自由端が上方に向けて移動するように下部ドアに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ドア開閉装置によれば、簡易な構造で、上部及び下部ドアを容易に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るバックドアの全閉状態における車両の後方斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るバックドアの半開状態における車両の後方斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るバックドアの全開状態における車両の後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用ドア開閉装置の実施形態について、図を用いて説明する。一例として、車両後部に形成された開口を開閉するバックドアを挙げ、このバックドアの開閉装置について説明する。なお、本発明は、上記のようなバックドアに限らず、例えば車両の側面に形成された開口を開閉するドアにも適用できる。
【0013】
まず、本実施形態に係る車両用ドア開閉装置について
図1−3を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るバックドアの全閉状態における車両の後方斜視図であり、
図2は、本実施形態に係るバックドアの半開状態における車両の後方斜視図であり、
図3は、本実施形態に係るバックドアの全開状態における車両の後方斜視図である。
【0014】
本実施形態の車両用ドア開閉装置(以下、単に「ドア開閉装置」と記す)10は、
図1−3に示されるように、車両12の後部に設けられる。車両12の後部には、
図2,3に示されるような開口部14が形成されている。そして、ドア開閉装置10は、開口部14を開閉するドアを有する。このドアは、上部ドア16と下部ドア18とから成る上下2分割構造に構成されている。なお、開口部14は、上部及び下部ドア16,18を全閉状態にしたときにこれらのドア16,18と対向するように形成される。
【0015】
上部ドア16は、上端に車幅方向へ延びるヒンジ(図示せず)が設けられている。そして、上部ドア16は、このヒンジを介して車両12の上部、すなわち開口部14の上側縁14aに回動可能に連結される。一方、下部ドア18は、下端に車幅方向へ延びるヒンジ(図示せず)が設けられている。そして、下部ドア18は、このヒンジを介して車両12の下部、すなわち開口部14の下側縁14bに回動可能に連結される。そして、これらのヒンジを中心に各ドア16,18がそれぞれ回動することで、開口部14の開閉が行われる。
【0016】
本実施形態のドア開閉装置10は、上部ドア16と下部ドア18とを連結するリンク機構20を有する。リンク機構20は、上部又は下部ドア16,18のいずれか一方のドアの開閉動作に連動して、他方のドアを開状態または閉状態へ作動させる。
【0017】
このようなリンク機構20という簡易な構成により、ユーザが下部ドア18を開ければ、上部ドア16も開状態になり、ユーザが上部ドア16を開ければ、下部ドア18も開状態になるので、ユーザが両方のドア16,18を開けるという手間を省くことができる。また、ユーザが下部ドア18を閉じれば、上部ドア16も閉状態になり、ユーザが上部ドア16を閉じれば、下部ドア18も閉状態になるので、ユーザが両方のドア16,18を閉じるという手間を省くことができる。そして、ユーザの手によらずに下部ドア18の自重によって下部ドア18の開動作が半開状態から全開状態まで行われる。つまり、この間においては、ユーザが下部ドア18を開けるという手間を省くことができる。また、リンク機構20を設けることにより、従来から採用されている、上側に開くドアの開動作を補助するガススプリングを省くことができるので、上部ドア16の剛性を小さくすることができる。その結果として、車両重量を軽量化することができる。
【0018】
次に、リンク機構20の具体的な構成について、
図4−6を用いて説明する。
図4は、ドア開閉装置を示す図であり、
図5は、全閉状態のドア開閉装置を示す図であり、
図6は、全開状態のドア開閉装置を示す図である。
【0019】
リンク機構20は、上部ドア16と下部ドア18を連結している。また、リンク機構20は、車幅方向における上部及び下部ドア16,18の両端にそれぞれ一対もしくは一方に連結される。すなわち、リンク機構20は、上部及び下部ドア16,18の両側部にそれぞれ一対もしくはどちらか片側に連結される。例えば、リンク機構20は、上部ドア16の回動支点16aと上部ドア16の下部ドア18側における端部16bとを結ぶ間の部分と、下部ドア18の回動支点18aと下部ドア18の上部ドア16側における端部18bとを結ぶ間の部分とを連結している。なお、本発明はこの構成に限定されず、リンク機構20が上部ドア16と下部ドア18を連結するのであれば、他の連結構造とすることができる。
【0020】
リンク機構20は、第1リンクアーム22と第2リンクアーム24とを有する。第1リンクアーム22の一端22aは、下部ドア18に固定される。一方、第1リンクアームの他端22bは、自由端であり、第2リンクアーム24に接続される。
【0021】
第2リンクアーム24の一端24aは、第1リンクアームの他端22bに回動可能に接続される。具体的には、第2リンクアーム24の一端24aは、第1リンクアーム22の他端22bに支持ピン26を介して回動自在に支持される。一方、第2リンクアーム24の他端24bは、上部ドア16に回動可能に接続される。他端24bは、上述したように、上部ドア16の回動支点16aと上部ドア16の下部ドア18側における端部16bとを結ぶ間の部分であって、上部ドア16の側部に設けられた支軸28に回動自在に支持される。
【0022】
第1リンクアーム22は、下部ドア18が閉状態から開状態へ回動するとき、第1リンクアーム22の他端22bが上方に向けて移動するように下部ドア18に固定される。この第1リンクアーム22の他端22bの上方向への回転トルクが、第2リンクアーム24を介して上部ドア16の開方向(上方向)への移動運動に変換される。
【0023】
また、第1リンクアーム22の他端22bと第2リンクアーム24の一端24aは、下部ドア18の開閉動作中、第2リンクアーム24の他端24bと下部ドア18の回動支点18aとを結ぶ線より車両前側に位置し、第2リンクアーム24の他端24bは、下部ドア18の開閉動作中、上部ドア16の回動支点16aと、第1リンクアーム22の他端22b及び第2リンクアーム24の一端24aとを結ぶ線より車両後側に位置することが好適である。この構成により、開閉動作をスムーズに行うことができるとともに、下部ドア18又は上部ドア16のいずれかのドアからでも開閉操作を行うことができる。
【0024】
次に、ドア開閉装置10の動作について説明する。まず、ドアの全閉状態から全開状態までの動作について説明する。ユーザにより、下部ドア18の開操作が行われる。開操作の途中から、下部ドア18は自重により開方向へと回動する。この動作に連動し、リンク機構20を介して、上部ドア16が開方向へと回動する。これにより、上部及び下部ドア16,18が全開状態となる。
【0025】
ドアの全開状態から全閉状態までの動作について説明する。ユーザにより、下部ドア18の閉操作が行われる。下部ドア18が閉方向へ回動するのに連動し、リンク機構20を介して、上部ドア16が閉方向へと回動する。これにより、上部及び下部ドア16,18が全閉状態となる。なお、ユーザは、下部ドア18を閉操作するのではなく、上部16ドアを閉操作することによっても、両ドア16,18を閉状態とすることができる。
【0026】
本実施形態のドア開閉装置10によれば、上部又は下部ドア16,18のいずれか一方のドアを開閉操作することで、この操作に連動して他方のドアを開閉することができるので、ユーザの操作による手間を省くことができる。特に、開操作においては、下部ドア18の自重により、上部及び下部ドア16,18双方を自動的に全開状態にすることができるので、開操作の効率性が大幅に向上する。また、リンク機構20を設けることにより、従来から用いられるガススプリングを省くことができるので、ドア剛性の簡略化とともに、車両重量の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 車両用ドア開閉装置、12 車両、14 開口部,16 上部ドア、18 下部ドア、20 リンク機構、22 第1リンクアーム、24 第2リンクアーム、26 支持ピン、28 支軸。