(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5997629
(24)【登録日】2016年9月2日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】微気圧波低減装置及びその装置を用いたトンネル構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/38 20060101AFI20160915BHJP
E21D 9/14 20060101ALI20160915BHJP
E01F 8/00 20060101ALI20160915BHJP
B61D 17/02 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
E21D11/38 B
E21D9/14
E01F8/00
!B61D17/02
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-32040(P2013-32040)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-163042(P2014-163042A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 傑
【審査官】
桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4383271(JP,B2)
【文献】
実開昭50−073104(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/14
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E01F 3/00−8/02
B61D 17/02
E01B 1/00−26/00
E21F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルに列車が突入したときに生成される圧縮波の一部を取り込むように開口した入口部と、
前記入口部から取り込まれた圧縮波を通過させる通路と、
前記通路を通過してきた圧縮波を前記トンネル内に再び放出する出口部と、
前記通路の長さを前記入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも長くする隔壁と、
を有し、
前記隔壁は、前記通路を、前記トンネルの軸心方向に直交する線路直交方向の一方向に向かって空気を前記軸心方向の前後に折り返し流通させるつづら折り状に形成する構成であることを特徴とする微気圧波低減装置。
【請求項2】
トンネルに列車が突入したときに生成される圧縮波の一部を取り込むように開口した入口部と、
前記入口部から取り込まれた圧縮波を通過させる通路と、
前記通路を通過してきた圧縮波を前記トンネル内に再び放出する出口部と、
前記通路の長さを前記入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも長くする隔壁と、
を有し、
前記隔壁は、前記通路を、前記トンネルの軸心方向のうち一方向に向かって空気を前記軸心方向に直交する線路直交方向に折り返し流通させるように形成する構成であることを特徴とする微気圧波低減装置。
【請求項3】
トンネルに列車が突入したときに生成される圧縮波の一部を取り込むように開口した入口部と、
その入口部から取り込まれた圧縮波を通過させる通路と、
その通路を通過してきた圧縮波を前記トンネル内に再び放出する出口部と、
前記通路の長さを前記入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも長くする隔壁と、
を有する微気圧波低減装置を備え、
該微気圧波低減装置が前記トンネルの中央通路の箇所に設けられていることを特徴とするトンネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微気圧波低減装置及びその微気圧波低減装置を用いたトンネル構造に係り、特に、高速列車の走行するトンネルに好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線のような高速列車がトンネルに突入すると、トンネル内では圧力が上昇して圧縮波が生成される。そして、その発生した圧縮波がほぼ音速でトンネル内を伝播して高速列車の突入方向と反対側の坑口に到達すると、その坑口から微気圧波と呼ばれるパルス状の圧力波が放射される。この微気圧波がある程度大きくなると、坑口周囲で破裂的な空気音が発生するだけでなく、その発生した空気音を一次音として坑口近くの建屋の窓ガラス等を振動させる二次音が生じることがある。
【0003】
微気圧波の発生メカニズムについては、特許文献1に図を用いて説明されているので詳しい説明は省略するが、高速列車がトンネルに突入することで生じる圧縮波は、圧力が低いと伝播速度は遅く、圧力が高いと伝播速度は速い性質を有している。
すなわち、圧縮波の先端付近で圧力の低い部分は伝播速度が遅く、圧縮波の後方で圧力の高い部分は伝播速度が速いので、圧縮波の波形は、最初は緩やかであっても、伝播するうちに次第に切り立った形状に変化する。この圧縮波の波形の切り立った形状への変化に伴い、圧縮波の圧力勾配は大きくなり、圧力勾配が大きくなるほど微気圧波は大きくなる性質を有している。したがって、圧縮波の圧力勾配を緩くすることで微気圧波を低減できることが分かる。特許文献1では、後述するように、圧縮波の圧力勾配を緩くすることで微気圧波を低減するようにしている。
【0004】
一方、微気圧波の現象としては、(1)圧縮波の形成、(2)圧縮波の伝播、(3)微気圧波の放射の3段階に分けられ、これら3段階のうち、(1)については、列車先頭部の延伸や形状の最適化及び列車突入側のトンネル坑口側における緩衝工により微気圧波対策が施されている。
【0005】
特許文献1で提案されている微気圧波対策は、上記(2)に属していて、この提案に係る微気圧波低減の内容を
図6(a)〜(c)を用いて説明する。先ず、
図6(a)において、符号1は、図示しない高速列車の走行するトンネルの一部分であって、高速列車は、矢印で示されるように左側から右側方向に進行するように設定されている。そして、そのトンネル1内の左側に示される帯状の黒塗りは、高速列車がトンネル1に突入して生成された圧縮波(W0)を示していて、この圧縮波(W0)も高速列車の走行方向と同方向に、すなわち左側から右側方向に進行する。
【0006】
このトンネル1には、軸心方向がトンネル1の軸心方向、すなわち高速列車の進行方向と一致し、かつ、その進行方向と対向する側が開口し、反対側が閉止した筒状体からなる音響管30が設置されている。もちろん、この音響管30は、高速列車の走行の障害とならないようにトンネル1の建築限界の外側に配置されている。
【0007】
高速列車がトンネル1に突入して生成された圧縮波(W0)は、上述したように、圧縮波(W0)の先端付近で圧力の低い部分は伝播速度が遅く、圧縮波(W0)の後方で圧力の高い部分は伝播速度が速いので、圧縮波(W0)の圧力を示す線(P)の傾斜は、徐々に切り立ってくる。なお、特許文献1では、この線(P)を「波形線」として説明する。
【0008】
次に、上記構成からなる音響管30の微気圧波の低減作用について説明する。高速列車がトンネル1に突入して生成された圧縮波(W0)は、音響管30に達すると(
図6(b)参照)、圧縮波(W0)の一部は音響管30に取り込まれ、そのままトンネル1内を進行する圧縮波(W1)と、音響管30に取り込まれた圧縮波(W2)とに分離される。
【0009】
トンネル1内をそのまま進行する圧縮波(W1)は、音響管30設置部を過ぎると伝播する面積が拡大するので圧力が下がり、波形線(P)の傾きが小さくなり、音響管30に取り込まれた圧縮波(W2)は閉止部で反射して開口部から出でトンネル1内を進行することになる。この音響管30内を往復した圧縮波(W2)の圧力は、音響管30内では元の2倍となるがトンネル1内に出できたときには低下するので、波形線(P)の傾きは急峻となることはない(
図6(c)参照)。
【0010】
上記構成からなる音響管30は、トンネル1の軸心方向に所定の間隔を保って複数個設けられるので、高速列車の突入する方向と反対側のトンネル1の坑口でおいては、圧縮波(W1)及び圧縮波(W2)の波形線(P)の傾きを小さくすることができ、微気圧波の低減が図られる。したがって、坑口周囲での破裂的な空気音の発生を効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4383271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の提案に係る微気圧波低減装置は、音響管により圧縮波の一部分を取り込むとともに、その取り込んだ圧縮波が音響管の閉口端で反射するために、音響管内の圧力が高くなり、したがって音響管構造をその圧力に抗した構成にする必要があるとともに、微気圧波を十分に低減するためには、圧縮波の圧力が変化している部分の半分以上の長さに、音響管の長さを長くしなければならないという課題を有していた。さらに、設置場所の限られたトンネル内に如何にして微気圧波低減装置を設置するかという課題を有していた。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、装置内の圧力が高くなることがなく、しかも、長さを短くすることのできる微気圧波低減装置及びその装置を用いたトンネル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る微気圧波低減装置では、トンネルに列車が突入したときに生成される圧縮波の一部を取り込むように開口した入口部と、前記入口部から取り込まれた圧縮波を通過させる通路と、前記通路を通過してきた圧縮波を前記トンネル内に再び放出する出口部と、前記通路の長さを前記入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも長くする隔壁と、を有
し、前記隔壁は、前記通路を、前記トンネルの軸心方向に直交する線路直交方向の一方向に向かって空気を前記軸心方向の前後に折り返し流通させるつづら折り状に形成する構成であることを特徴としている。
【0015】
上記構成に係る微気圧波低減装置では、圧縮波の一部が入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも隔壁によって長くされた通路に取り込まれることで、圧縮波の圧力の傾きを小さくすることができ、これにより微気圧波を低減することができる。
【0017】
また、上記構成に係る微気圧波低減装置では、通路がつづら折り状に形成されているので、通路長さを長大化させることができる。
【0018】
また、本発明に係る微気圧波低減装置では、
トンネルに列車が突入したときに生成される圧縮波の一部を取り込むように開口した入口部と、前記入口部から取り込まれた圧縮波を通過させる通路と、前記通路を通過してきた圧縮波を前記トンネル内に再び放出する出口部と、前記通路の長さを前記入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも長くする隔壁と、 を有し、前記隔壁は、前記通路を、前記トンネルの軸心方向のうち一方向に向かって空気を前記軸心方向に直交する線路直交方向に折り返し流通させるように形成する構成であることを特徴としている。
【0019】
上記構成に係る微気圧波低減装置では、通路が上下に折り返す形状に形成されているので、通路長さを長大化させることができる。
【0020】
また、本発明に係る微気圧波低減装置を用いたトンネル構造では、トンネルに列車が突入したときに生成される圧縮波の一部を取り込むように開口した入口部と、その入口部から取り込まれた圧縮波を通過させる通路と、その通路を通過してきた圧縮波を前記トンネル内に再び放出する出口部と、前記通路の長さを前記入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも長くする隔壁と、を有する微気圧波低減装置を備え、該微気圧波低減装置が前記トンネルの中央通路の箇所に設けられていることを特徴としている。
【0021】
本発明では、トンネルの中央通路箇所に設けられる微気圧波低減装置により、圧縮波の一部が入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも長くされた通路に取り込まれることで、圧縮波の圧力の傾きを小さくすることができ、これにより微気圧波を低減することができ、坑口周囲での破裂的な空気音の発生が防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の微気圧波低減装置によれば、圧縮波の一部が入口部及び出口部を結ぶ直線距離よりも隔壁により長くされた通路に取り込まれることにより、圧縮波の圧力の傾きを小さくすることができ、これにより微気圧波が低減され、坑口周囲での破裂的な空気音の発生が防止される。
しかも、入口部及び出口部間は隔壁により長くできるから装置長さを短くすることができるとともに、入口部に取り込まれた圧縮波は出口部から排出されるので、通路内の圧力は高くならず、装置の簡易化を図ることができる。
また、本発明の微気圧波低減装置を用いたトンネル構造によれば、上記構成からなる微気圧波低減装置をトンネルの中央通路箇所に設けることができるので、坑口周囲での破裂的な空気音の発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による微気圧波低減装置を適用した高速列車の通過するトンネルの断面で示した側面図である。
【
図2】微気圧波低減装置の一部分を断面で示した側面図である。
【
図4】(a)〜(d)は、微気圧波低減装置の微気圧波低減作用を説明する説明図である。
【
図5】第2の実施の形態による微気圧波低減装置の断面図及びその微気圧波低減装置の微気圧波低減作用を説明する説明図である。
【
図6】(a)〜(c)は、従来の提案に係る微気圧波低減装置の微気圧波低減作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による微気圧波低減装置及びその装置を用いたトンネル構造の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明は、この実施の形態により限定されるものではなく、また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一ものも含まれる。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本第1の実施の形態による微気圧波低減装置を適用した高速列車の通過するトンネルの断面で示した側面図、
図2は、本実施の形態による微気圧波低減装置の一部分を断面で示した側面図、
図3は、
図1のX−X線拡大断面図である。なお、上述した
図6と同一構成要素には同一符号を付して説明する。
【0026】
図1に示すように、トンネル1は、新幹線で代表される高速列車Tが通過するように構成されている。ここでは、高速列車Tは、矢印で示されるように左側から右側方向に進行するように設定されている。そして、この高速列車Tが突入するトンネル1の坑口側(
図1において左側)には、トンネル1の開口面積よりも十分に広い開口面積を有し、かつ、トンネル1の軸心方向に所定距離だけ延びる筒状の周知の緩衝工2が設けられていて、その緩衝工2には、複数の窓3が設けられている。したがつて、このトンネル1では、後述する微気圧波低減装置10による微気圧波緩和に加えて、緩衝工2によっても微気圧波が緩和されるように構成されている。
【0027】
微気圧波低減装置10は、
図2に示すように、外形形状が直方体を呈し、その内部に空間を有して構成されている。そして、微気圧波低減装置10は、直方体の長手方向がトンネル1の軸心方向と平行するようにして、そのトンネル1の軸心方向側に所定の間隔を保って複数個設けられている(
図1参照)。
【0028】
トンネル1における微気圧波低減装置10の設置場所は、トンネル1内の保守点検用の中央通路を利用して設置される(
図3参照)。なお、この微気圧波低減装置10の設置に際しては、後述する入口部11及び出口部12がトンネル1内と連通できるように中央通路が構成される。
【0029】
なお、微気圧波低減装置10の設置場所が
図3に示されるように中央通路の路面より下側に設けられる場合、微気圧波低減装置10はトンネル1の建築限界の外側になるので設置上問題がないが、建築限界であればトンネル1の天井側あるいは側壁であっても微気圧波低減装置10を設置することができる。
【0030】
この微気圧波低減装置10は、トンネル1の軸心方向の一方側(
図2において左側)に入口部11が設けられるとともに、その他方側に出口部12が設けられている。そして、この微気圧波低減装置10内には2枚の隔壁13,14が水平方向で、かつ、高さ方向に所定の間隔を保つとともに、入口部11と出口部12とが連通するように配置されて、下から上の方向(トンネル1の軸心方向に直交する線路直交方向の一方向)に向かって空気を軸心方向の前後に折り返し流通させるつづら折り状の通路15が形成されている。このつづら折り状の通路15の長さは、当然に入口部11及び出口部12を結ぶ直線距離よりも長く形成される。なお、この微気圧波低減装置10は、鉄板を溶接して容易に製造することができる。もちろん、合成樹脂板等の他の板材で製造することもできる。
【0031】
この微気圧波低減装置10の具体的な寸法及び設置個数は、トンネル1内の高速列車Tの通過速度、トンネル1の長さ等に決められるが、ここで微気圧波低減装置10の形状の一例を示せば、例えば、
図6(a)〜(c)で示される微気圧波低減装置に相当する音響管30の長さが30m、断面積が1m
2で所定の微気圧波低減効果を得ていた場合は、その音響管30の有効長さは、圧縮波は音響管30内を折り返し移動するので60mとなる。
【0032】
この微気圧波低減装置10が音響管30と同一の微気圧波低減効果を得る場合は、入口部11及び出口部12の断面積がともに1m
2としたとき、長さが20mとされる。つまり、直方体の長さが20mのときにその直方体内に形成される通路15の長さは、隔壁13、14により、20m×3=60mとなり、20mの長さで音響管30と同一の微気圧波低減効果を得ることができる。
【0033】
上記構成からなる微気圧波低減装置10の微気圧波低減作用を
図4(a)〜(d)を用いて説明する。
図4(a)は、高速列車Tがトンネル1に突入して生成された圧縮波(W0)が生成された状態を示している。この場合、圧縮波(W0)が微気圧波低減装置10に達すると(
図4(b)参照)、圧縮波(W0)の一部は微気圧波低減装置10の入口部11から取り込まれ、そのままトンネル1内を進行する圧縮波(W1)と、微気圧波低減装置10に取り込まれた圧縮波(W2)とに分離される。
【0034】
トンネル1内をそのまま進行する圧縮波(W1)は、
図4(c)に示すように、微気圧波低減装置10の分だけ伝播する面積が拡大するので圧力が減少し、波形線(P)の傾きが小さくなる。
【0035】
微気圧波低減装置10に取り込まれた圧縮波(W2)は微気圧波低減装置10内に形成されたつづら折り状の通路15を通過して出口部12から出でトンネル1内を進行することになる。この微気圧波低減装置10で一時停滞した圧縮波(W2)の圧力は、トンネル1内に出できたときには低下するので、波形線(P)の傾きは急峻となることはない(
図4(d)参照)。
【0036】
上記構成からなる微気圧波低減装置10は、トンネル1の軸心方向に所定の間隔を保って複数個設けられるので、高速列車Tの突入方向と反対側のトンネル1の坑口でおいては、圧縮波(W1)及び圧縮波(W2)の波形線(P)の傾きが小さくでき、微気圧波の低減が図られる。したがって、坑口周囲での破裂的な空気音の発生を効果的に防止することができる。
しかも、入口部11及び出口部12間の距離を短くしても、通路15の長さをつづら折りで長くできるから装置長さを短くすることができるとともに、入口部11に取り込まれた圧縮波(W2)は出口部12から排出されるので、通路15内の圧力は高くならず、装置の簡易化を図ることができる。
【0037】
なお、上述の例では、微気圧波低減装置10内には2枚の隔壁13、14で3本のつづら折り状の通路15を形成する例を示したが、これら隔壁を4枚、8枚…のようにし通路長さを形成するようにしてもよい。
【0038】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態による微気圧波低減装置20の断面図、及びその微気圧波低減装置20の微気圧波低減作用を説明する説明図である。
【0039】
この微気圧波低減装置20は、上述した微気圧波低減装置10と同様に、外形形状が直方体を呈し、内部に空間を有して構成されているとともに、トンネル1の軸心方向の一方側(
図5において左側)に入口部21が設けられ、その他方側に出口部22が設けられている。そして内部には、トンネル1の軸心方向に所定の間隔を保ち、かつ、交互に上下(トンネル1の軸心方向に直交する路線直交方向に相当)に所定の空間を保つ隔壁23が配設され、入口部21から出口部22に向かって空気を上下に折り返し流通させるジグザグ状の通路24が形成されている。したがって、この上下に流通させる通路24の長さは、当然に入口部21及び出口部22を結ぶ直線距離よりも長く形成される。
なお、この微気圧波低減装置20は、上述した微気圧波低減装置10と同様に、鉄板や合成樹脂板等の板材により簡単に製造することができる。
【0040】
上記構成からなる微気圧波低減装置20は、上述した微気圧波低減装置10と同様に、高速列車Tがトンネル1に突入して生成された圧縮波(W0)(
図5で省略されている。)は、微気圧波低減装置20に達すると、その圧縮波(W0)の一部は微気圧波低減装置20の入口部21から取り込まれ、そのままトンネル1内を進行する圧縮波(W1)と、微気圧波低減装置20に取り込まれた圧縮波(W2)とに分離される。
【0041】
トンネル1内をそのまま進行する圧縮波(W1)は、微気圧波低減装置20内の分だけ伝播する面積が拡大するので圧力の上昇が抑制され、波形線(P)の傾きが小さくなる。
【0042】
微気圧波低減装置20に取り込まれた圧縮波(W2)は微気圧波低減装置20内に形成されたジグザグ状の通路24を通過して出口部12から出でトンネル1内を進行することになる。この微気圧波低減装置20で一時停滞した圧縮波(W2)の圧力は、トンネル1内に出できたときには低下するので、波形線(P)の傾きは急峻となることはない。
【0043】
上記構成からなる微気圧波低減装置20は、トンネル1の軸心方向に所定の間隔を保って複数個設けられるので、高速列車Tの突入方向と反対側のトンネル1の坑口でおいて圧縮波(W1)及び圧縮波(W2)の波形線(P)の傾きが小さくでき、微気圧波が低減される。したがって、坑口周囲での破裂的な空気音の発生を効果的に防止することができる。しかも、入口部21及び出口部22間の距離を短くしても、通路24の長さをジグザグとして長くできるから装置長さを短くすることができるとともに、入口部21に取り込まれた圧縮波(W2)は出口部22から排出されるので、通路24内の圧力は高くならず、装置の簡易化を図ることができる。
【0044】
なお、上述の実施の形態では、微気圧波低減装置20内には5枚の隔壁23で上下に連続する通路24を形成しているが、隔壁23を4枚以下又は6枚以上としてもよく、さらには直方体の高さ、及び隔壁の長さを変えて通路の長さを任意に形成するようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明による微気圧波低減装置及びその装置を用いたトンネル構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
例えば、本第1の実施の形態では、下から上に向かって空気を軸心方向の前後に折り返し流通させるつづら折り状の通路15としているが、これに限定されることはない。このようなつづら折り状の通路として、線路直交方向の一方向に向かって空気を前記軸心方向の前後に折り返し流通させるものであれば良いのである。
【0047】
また、第2の実施の形態の微気圧波低減装置20では、交互に上下に所定の空間を保つ隔壁23が配設された通路24を形成しているが、上下の通路であることに制限されることはなく、トンネル1の軸心方向に直交する路線直交方向の通路であれば良い。例えば、微気圧波低減装置20をトンネル壁面に対して横向きに配置し、交互に左右に所定の空間を保つ隔壁が配設された通路を形成させることも可能である。
【0048】
また、上述の実施の形態では、列車は新幹線のような高速列車としたが、高速列車はリニアモータカーであってもよい。また、微気圧波の生成される箇所は高速列車の通過するトンネルとしたが、微気圧波の発生する箇所であればトンネル以外の管状体構造であってもよい。したがって、本発明のトンネルにはそのような管状体を含み、また、高速列車には微気圧波を生成する他の物体も含んでいる。
【符号の説明】
【0049】
T 高速列車
(W0),(W1),(W2) 圧縮波
(X) 波形図
1 トンネル
2 緩衝工
3 窓
10,20 微気圧波低減装置
11,21 入口部
12,22 出口部
13,14,23 隔壁
15,24 通路