(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反射板保持部材は、前記第1の支軸及び前記第2の支軸が前記第1のガイド溝及び前記第2のガイド溝にそれぞれ案内されて相対的に移動することで、前記反射板の傾動動作と昇降動作とを案内することを特徴とする請求項1に記載された車両用表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1を備えた車両の室内を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示すヘッドアップディスプレイ装置1の外観を模式的に示す斜視図である。
図3は、コンバイナ3を動作させるコンバイナ駆動ユニット30を模式的に示す正面図であり、
図4は、当該コンバイナ駆動ユニット30を模式的に示す斜視図である。ヘッドアップディスプレイ装置1(以下「HUD装置1」という)は、車両のインストルメントパネル200に配置され、車両情報やナビゲーション情報を表示する車両用表示装置である。インストルメントパネル200の運転席正面の部分には開口200aが設けられており、HUD装置1は、その上部を開口200aから露出するように配設されている。
【0013】
HUD装置1は、照射装置2、反射板であるコンバイナ3と、遮光板5と、収容ケース6と、シャッター7とを主体に構成されている。HUD装置1は、コンバイナ3を収納位置と展開位置とで移動可能に構成されており、当該動作を通じてコンバイナ3をインストルメントパネル200の上部に出し入れすることができる。
【0014】
照射装置2は、表示光L1(
図1参照)を照射する装置であり、例えば液晶表示装置を用いることができる。本実施形態において、照射装置2は車両の後方を臨むように配置されており、照射した表示光L1を折返しミラー(図示せず)にて車両の前方へと反射させ、当該反射光である表示光L1をコンバイナ3に照射する。
【0015】
コンバイナ3は、例えばハーフミラーであり、板ガラスと、この板ガラスの一方の面に蒸着された錫や銀などの光半透過膜とで構成されている。コンバイナ3は、半透過性を有しており、ドライバーがコンバイナ3を通して車両前方を目視できるように形成されている。
【0016】
遮光板5は、不要な光を遮光するための板状部材であり、コンバイナ3の近傍に配置されている。遮光板5は、その遮光機能により、コンバイナ3が展開することでその内部が視認可能になるといった見栄えの悪化を抑制することができる。遮光板5には、コンバイナ3の左右方向に延在する回動軸5a(
図7〜
図9参照)が設けられており、遮光板5は、当該回動軸5aを介して後述する左右のガイド板41,42に回動可能に支持されている。
【0017】
収容ケース6は、照射装置2、コンバイナ3、遮光板5、シャッター7などを収容するケースである。収容ケース6は、下ケース61と、上ケース62とで構成されて、上下に分割可能に構成されている。下ケース61は、上方が開口された箱型に形成されている。上ケース62は、下方が開口された箱型に形成されており、下ケース61の開口を塞ぐように設けられている。この上ケース62の上面には、コンバイナ3を出し入れするための開口部62aが形成されている。
【0018】
シャッター7は、上ケース62の上面の開口部62aを開放したり、閉鎖したりする部材である。シャッター7は、シャッター駆動ユニット80によって、開口部62aを開放する開放位置と当該開口部62aを閉鎖する閉鎖位置との間で移動可能に構成されている。シャッター7は、コンバイナ3が収容位置に存在する状態において閉鎖位置に存在しており、収容位置にあるコンバイナ3と重なり合うようにコンバイナ3の上方を覆っている。
【0019】
本実施形態において、HUD装置1は、コンバイナ3を収容位置と展開位置とに動作させるコンバイナ駆動ユニット30をさらに有している。コンバイナ駆動ユニット30は、駆動モータ32と、コンバイナ移動機構33とで構成されている。ここで、
図5及び
図6は、コンバイナ駆動ユニット30の要部を模式的に示す説明図である。
【0020】
駆動モータ32は、コンバイナ移動機構33に動力を伝達してコンバイナ3の移動動作を行う駆動源である。駆動モータ32としては、ステッピングモータなどを用いることができる。また、コンバイナ移動機構33は、後述する遮光板移動機構50と動力伝達可能に接続されており、この駆動モータ32は、遮光板移動機構50に動力を伝達して遮光板5の移動動作を行う駆動源としても機能する。
【0021】
コンバイナ移動機構33は、収容位置と、展開位置との間でコンバイナ3を移動させるものである。ここで、収容位置は、コンバイナ3が照射装置2(
図3参照)の上方を覆うように収容ケース6内に収容される位置であり、展開位置は、コンバイナ3が上ケース62の開口部62aを通して収容ケース6から突出する位置である。
【0022】
コンバイナ移動機構33は、コンバイナホルダ31と、回動アーム34と、駆動ギヤ35と、多段ギヤ36と、第1の従動ギヤ37と、第2の従動ギヤ38と、アーム駆動軸39と、ピニオンギヤ40と、左右のガイド板41,42と、第1の支軸44と、第2の支軸45とを主体に構成されている。
【0023】
コンバイナホルダ31は、コンバイナ3の下端部を保持する部材であり、その左右の両側には、左右のガイド板41,42と向き合う平面部31aを備えている。
【0024】
回動アーム34は、補助板43に回動自在に軸支された回動軸43aに固定さており、当該回動軸43aを中心して回動可能に構成されている。回動アーム34は、後述する第1の支軸44を介してコンバイナホルダ31と連結されてリンク機構をなしており、自己の回動動作を通じてコンバイナホルダ31を昇降動作及び傾動動作させる。回動アーム34のアーム部の先端側には、第1の支軸44を挿通するための溝部34aが形成されている。また、回動アーム34の基端部の一部にはラックが形成されており、当該ラックは後述するピニオンギヤ40と噛合する。
【0025】
駆動ギヤ35は、駆動モータ32の出力軸に固定されたウォームギヤである。駆動ギヤ35は、多段ギヤ36と噛合している。多段ギヤ36は、大径ギヤと小径ギヤとを同軸上に重ね合わせて構成されており、一方のギヤである大径ギヤが駆動ギヤ35と噛合し、他方のギヤである小径ギヤが第1の従動ギヤ37と噛合する。第1の従動ギヤ37は、アーム駆動軸39に固定された第2の従動ギヤ38と噛合する。アーム駆動軸39は、コンバイナ3の左右方向に延在しており、左右のガイド板41,42によって回転可能に軸支されている。アーム駆動軸39にはピニオンギヤ40が固定されており、ピニオンギヤ40は回動アーム34に形成されたラックと噛合している。
【0026】
左右のガイド板41,42は、コンバイナ3の左右に起立して設けられている。これらのガイド板41,42は、アーム駆動軸39を支持し、また、一方のガイド板41は、補助板43を固定している。補助板43は、ガイド板41の一部をなすものであり、駆動モータ32を保持したり、多段ギヤ36及び第1の従動ギヤ37を回転可能に支持したり、回動軸43aを回転可能に支持したりしている。
【0027】
また、ガイド板41には、第1のガイド溝41aと、第2のガイド溝41bとが形成されている。第1のガイド溝41aは、後述する第1の支軸44の移動をガイドするものであり、上下方向に傾斜して形成されている。また、第2のガイド溝41bは、後述する第2の支軸45の移動をガイドするものであり、上下方向に傾斜して形成されている。第2のガイド溝41bには、ラックが形成されており、また、その傾斜形状は、第1のガイド溝41aよりも大きな勾配に設定されている。
【0028】
第1の支軸44は、コンバイナホルダ31の下端部と回動アーム34のアーム部とを回動可能に連結して、リンク機構を構成する。具体的には、第1の支軸44は、コンバイナホルダ31の下端部に配設されており、その先端部が回動アーム34の溝部34aに挿通されている。当該溝部34aは、アーム部の延在方向に沿って所定の長さを備えており、第1の支軸44がその長さの範囲で摺動することができる構成となっている。また、第1の支軸44は、第1のガイド溝41aにも挿通されており、その移動範囲及び移動軌跡は、第1のガイド溝41aの形状範囲に制限される。
【0029】
第2の支軸45は、コンバイナホルダ31の上端部に配設されている。この第2の支軸45は、その先端部が第2のガイド溝41bに挿通されており、その移動範囲及び移動軌跡は、第2のガイド溝41bの形状範囲に制限される。また、第2の支軸45の端部にはピニオンギヤ46が回動可能に取り付けられており、このピニオンギヤ46は第2のガイド溝41bに形成されたラックと噛合するとともに第2のガイド溝41b内に沿って摺動する。
【0030】
かかるコンバイナ移動機構33において、コンバイナ3の移動動作は、コンバイナホルダ31と回動アーム34とで構成されるリンク機構によって達成される。ここで、第1の支軸44が第1のガイド溝41aの最上位置に位置づけられ、かつ、第2の支軸45が第2のガイド溝42bの最上位置に位置づけられると、当該リンク機構が最も伸展した状態となり、これにより、コンバイナ3が展開位置に位置づけられることになる。一方、第1の支軸44が第1のガイド溝41aの最下位置に位置づけられ、かつ、第2の支軸45が第2のガイド溝42bの最下位置に位置づけられると、当該リンク機構が最も屈曲した状態となり、これにより、コンバイナ3が収容位置に位置づけられることになる。
【0031】
また、本実施形態の特徴の一つとして、HUD装置1は、遮光板移動機構50を備えている。この遮光板移動機構50は、退避位置と正常位置との間で遮光板5を移動するものである。ここで、退避位置は、コンバイナ3の収容位置と対応して位置づけられる位置であり、正常位置は、コンバイナ3の展開位置と対応して位置づけられる位置である。遮光板移動機構50は、コンバイナ移動機構33と動力伝達可能に接続されている。
【0032】
遮光板移動機構50は、カム51と、係合部52とで構成されている。カム51は、コバイナ移動機構50をなすアーム駆動軸39に固定されており、アーム駆動軸30からの動力を係合部52へと伝達する。カム51は、例えば円板カムであり、当該カム51には係合部52が摺接されている。係合部52は、遮光板5においてカム51と向き合う面に設けられており、カム51の回転運動にしたがって揺動することで、遮光板5を回動軸5aを中心として傾動させる。
【0033】
以下、本実施形態に係るHUD装置1におけるコンバイナ3の移動動作を説明する。ここで、
図7から
図9は、コンバイナ3の展開動作を示す説明図である。コンバイナ3の展開動作は、収容位置にあるコンバイナ3を展開位置へと移動させる動作である。
【0034】
コンバイナ3が収容位置にある状態において(
図7参照)、回動アーム34及びコンバイナホルダ31からなるリンク機構は屈曲した状態となっている。駆動モータ32が回転駆動すると、駆動ギヤ35も同期して回転し、これにより、多段ギヤ36、第1の従動ギヤ37、第2の従動ギヤ38がそれぞれ回転する。第2の従動ギヤ38の回転はアーム駆動軸39へと伝達され、これにより、アーム駆動軸39に固定されたピニオンギヤ40及びカム51が回転する。
【0035】
ピニオンギヤ40の回転は、これに噛合する回動アーム34のラックへと伝達され、回動アーム34が回動軸43aを中心に回動する。回動アーム34の回動に伴い、第1の支軸44を介してアーム部の先端に連結されたコンバイナホルダ31も移動する。ここで、回動アーム34は第1の支軸44を上方へと持ち上げるように回転し、第1の支軸44は第1のガイド溝41aにガイドされながら斜め上方へと移動する(
図8参照)。第1の支軸44の上方への移動に従って、コンバイナホルダ31も相対的に上昇する。
【0036】
また、コンバイナホルダ31が上昇動作をする際には、第2の支軸45が第2のガイド溝41bによってガイドされることとなる。具体的には、コンバイナホルダ31が上昇すると、ピニオンギヤ46が第2のガイド溝41bのラックに転動されつつ、当該ギヤ46及び第2の支軸45が第2のガイド溝41bにガイドされながら斜め上方へと移動する。ここで、コンバイナホルダ31は第2の支軸45を中心に回動可能となっており、また、第1の支軸44がコンバイナホルダ31の下端部を押し出すように動作することから、コンバイナホルダ31は第2の支軸45を中心として起き上がるように傾動する。
【0037】
このようにコンバイナホルダ31は、回動アーム34の回動に応じて、第2の支軸45を中心として傾動しながら相対的に上昇することとなる。そのため、コンバイナホルダ31に支持されたコンバイナ3も傾動しながら相対的に上昇する。そして、コンバイナホルダ31の上昇に従い、第1の支軸44が第1のガイド溝41aの最上位置に到達し、かつ、第2の支軸45が第2のガイド溝42bの最上位置に到達することで、コンバイナホルダ31の上昇が停止する。これにより、コンバイナ3は展開位置に到達する。ここで、コンバイナ3の展開位置では、回動アーム34及びコンバイナホルダ31からなるリンク機構は最も伸展した状態となっている。また、コンバイナ3の傾斜角は、収容位置における傾斜角よりも立ち上がった角度へと変移している(
図9参照)。
【0038】
一方、アーム駆動軸39に固定されたカム51が回転すると、これに接触する係合部52が前方(図中左方向)へと押し出され、これにより、遮光板5が回動軸5aを中心に傾動する。かかる傾動動作を通じて、遮光板5は、退避位置から正常位置まで移動することとなる。
【0039】
これに対して、展開位置にあるコンバイナ3を収容位置へと移動させるコンバイナ3の収容動作は、駆動モータ32を逆転動作させることで、上述した手順とは逆の手順にしたがってなされることとなる。これにより、コンバイナ3が展開位置から収容位置へと移動し、併せて遮光板5が正常位置から退避位置へと移動することとなる。
【0040】
このように本実施形態において、HUD装置1は、上面に開口部62aを備える収容ケース6と、収容ケース6内に収容されて表示光を照射する照射装置2と、照射装置2から照射された表示光を反射するコンバイナ3と、照射装置2の上方を覆うように収容ケース6内に収容される収容位置と開口部62aを通して収容ケース6から突出する展開位置との間でコンバイナを移動させるコンバイナ移動機構33と、コンバイナ移動機構33に動力を伝達してコンバイナ3の移動動作を行う駆動モータ32と、を有している。ここで、コンバイナ移動機構33は、コンバイナ3の側方に立設されるとともに第1のガイド溝41a及び第2のガイド溝42aが形成されたガイド板41と、コンバイナ3の下端部を保持するコンバイナホルダ31と、ガイド板41に回動可能に支持されるとともに駆動モータ32からの動力で回動する回動アーム34と、コンバイナホルダ31と回動アーム34とを連結するとともに第1のガイド溝41aに挿通される第1の支軸44と、コンバイナホルダ31に設けられるとともに第2のガイド溝41bに挿通される第2の支軸45と、を有している。そして、コンバイナ移動機構33は、コンバイナホルダ31と回動アーム34とからなるリンク機構の屈曲動作又は伸展動作を行うことで、コンバイナ3を第2の支軸45を中心に傾動させながら展開位置と収容位置との間で昇降させている。
【0041】
係る構成によれば、コンバイナ3が第2の支軸45回りに傾動しながら昇降するので、小さなスペースで移動させることができる。また、コンバイナ3を照射装置2の上方を覆うようにして収容することで、収容ケース6内における上下方向の省スペース化を図ることができる。これにより、大きなサイズのコンバイナ3を省スペースで収容展開させることができる。また、展開位置に制約は無いので視認性に富み、意匠性の高いHUD装置1を提供することができる。
【0042】
また、本実施形態において、第1のガイド溝41aは、上下方向に傾斜して形成され、第2のガイド溝41bは、上下方向に傾斜して形成されるとともに第1のガイド溝41aよりも大きな勾配が設定されている。そして、コンバイナホルダ31は、第1の支軸44及び第2の支軸45が第1のガイド溝及び第2のガイド溝にそれぞれ案内されて相対的に移動することで、コンバイナ3の傾動動作と昇降動作を案内している。
【0043】
係る構成によれば、コンバイナホルダ31の動きを適切にコントロールすることができる。これにより、コンバイナホルダ31によって保持されたコンバイナ3を第2の支軸45の回りで傾動させながら相対的に昇降させることができる。
【0044】
また、本実施形態において、コンバイナ3が収容位置に存在する状態で収容ケース6の開口部62aを閉鎖するシャッター7をさらに有している。この場合、コンバイナ3は、開口部62aを閉塞したシャッター7の下方にシャッター7と重ねて配置されている。
【0045】
係る構成によれば、シャッター7と重ねてコンバイナ3を収容することができるので、収容ケース6内における上下方向の省スペース化を図ることができる。
【0046】
以上、本実施形態にかかる車両用表示装置について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その発明の範囲において種々の変更が可能である。